「待ーちーなーさああああい!!」背後からギャリギャリとローラーブーツが悪路を噛み砕くようにして追ってくる音が迫ってくる。「お姉さんとお話しましょう!? 美味しい料理たくさんご馳走してあげるから!!」「ガキか俺は!? テメェ人のこと舐めてんのか!!!」思わず一瞬だけ背後を振り返って青髪の女に怒鳴った。「あれー? おっかしいなぁ? ウチの子達だったら絶対に飛びついてくるのに……」「俺は食いしん坊万歳じゃねぇ!!」何やら不思議そうにしている青髪から視線を前方に向き直ると、足を動かす速度を上げる。「嘘!? また速度が上がった!! もう、一体どういう体力と脚力してんのよ!?」教えてやるつもりなど更々無いが答えは簡単、俺がギアだから。まあ、高位の法力使いでも身体強化を使えばこのくらいは速く走れる。聖戦時代、戦場を駆け抜ける足は必然的に高まるものだから。三人の魔導師と遭遇して、俺は戦うか逃げるか選択を迫られた結果、逃げることを選択した。叩きのめしても構わなかったのだが、流石に犯罪者でもない管理局員を倒してしまうと後々動き難くなると思ったので面倒事を避ける為にトンズラする。で、戦意を見せずに敵前逃亡を図った俺を管理局の人間がおめおめと逃がす訳にはいかない。俺は管理局内で悪評が蔓延っているらしい”背徳の炎”であり、一つの部隊が突入しようとしていた現場を引っ掻き回した張本人。重要参考人として、手荒い真似事は出来なくても事情聴取くらいはしないと給料泥棒と罵られるだろう。「そちらに交戦の意思が無いように、こちらにもその意思は無い、だから止まれ。事情を聞かせて欲しい」槍男が斜め後ろの上空から飛行魔法を駆使しながら勧告してくるが、俺は振り向きもせずに口を開いた。「テメェらに付き合ってられる程暇じゃ無ぇんだよ!!」ちなみに紫髪は居ない。自身で俺を追いかけて来なかったが、虫を数匹召喚しては俺の後を追い掛けさせていた。やっぱり施設内で見た羽虫はあの女の仕業だったのである……召喚術師か。俺も対抗して召喚してやろうか? ザ・ドリルを三体くらい。……無理か。この状況下で召喚したって、こいつらを足止め出来るかどうかそれすら分からん。なんせザ・ドリルだ。俺のサーヴァントの中で最弱を誇るサーヴァント。そんなのが高ランク魔導師に通用するのか?そもそもあれはゴーストを支配した時に得るマナをエネルギー源としている。第一”バックヤードの力”を五年前から今まで使えるかどうか一度も試してないどころか、兵を統率するという戦い方自体が俺の性に合っていないから試す気にもならなかった。だいたい召喚するまでの手順が面倒臭い。マスターゴーストを顕現し、それによって土地や空間に内在するマナをゴーストという眼に見える形で出現させ、それにキャプチャーを放ってゴーストを支配してマナを得る。それから得たマナを消費して兵種ごとにサーヴァントと契約を結び、更にコストとなるをマナを支払ってようやく召喚出来るのだ。確かに召喚したサーヴァント達は強力だし、マナを消費して練成するアイテムは非常に使い勝手が良い。これは一見すれば、部隊を際限無く編成出来る夢のような召喚術に映るかもしれないが、実際は制限や欠点だらけだ。まず、召喚出来るサーヴァントの数には上限がある。下級サーヴァントはともかく上級サーヴァントなんざ一つの兵種につき一体のみ。マスターゴーストが顕現している間は、マスターである俺が本体ではなく、マスターゴーストが俺の本体になる。つまり、俺という”兵”は死んでもサーヴァント達と同じように何度か復活出来るが、マスターゴーストが破壊されれば俺は死ぬ。本体であるマスターゴーストが建築物みたいなオブジェである以上、顕現し続けている間はその戦闘域からの移動は不可能。必然的に本体であるマスターゴーストを守らなければならないから。支配したゴーストからマナの供給が無いと何も出来ない。俺個人の力のみで召喚出来たとしても精々下級サーヴァントのザ・ドリルを一チーム、三体召喚するのが限界だろう。そもそも召喚自体が出来るかどうかも怪しいが。大量の敵を相手にしたり、一定範囲内を戦略的に制圧することに掛けてはそれなりに優秀な”力”だろうが、はっきり言ってそれだけだ。よって、現段階では試す価値も無い。やるだけ無駄だな。近接戦闘が本領の前衛二人に後方支援らしき召喚術師。厄介な連中に眼を付けられたもんだ。かれこれ走り続けて五分は経つ。胸中で舌打ちしながらどうやって振り切ろうか思考を巡らし、カイの時みたいに叩きのめせ、という悪魔の囁きが脳内で聞こえてくる。……やっちまおうか?ほんの少しだけ、怪我しないように封炎剣の先っぽで小突く程度なら良いよな?それくらいなら不可抗力だよな?(よし)心が決まると俺は小さく跳躍して身体の向きを百八十度変え、浮いた状態で封炎剣を地面に突き刺し急ブレーキを掛け、無理やり慣性を殺しながら着地、両足と剣で速度を一気に減退させ真後ろを疾走している青髪と真正面から向き合う。「「!?」」当然向こうは俺の突然の行動に驚いたようだが、流石はそれなりに訓練を受けているだけあってか急制動を掛けて止まろうとする。が、俺はそのまま止まろうとしていた青髪に突っ込んだ。これは流石に予想外だったのか驚いた表情をして、しかし訓練で染み付いた動きで何とか体勢を整えながら身構えようとした青髪。「フッ」「きゃっ!」軽く呼気を吐きながら俺はスライディングするように足払い。慣性を殺し切れなかった青髪は避けること叶わず両足ごと刈り取られ、頭から地面に突っ込み土煙を上げながら滑走していく。「貴様!!」俺が戦闘の意思を見せたと勘違いしたらしい槍男が手にした槍を上段に構え、上空から振り下ろしてくる。対して俺は一瞬で封炎剣を地面に深々と突き立て屈み、跳躍した。「ヴォルカニックヴァイパーッ!!!」燃え盛る剣と槍が交錯し、「ぐおっ!?」押し勝ったのは俺。知らないとはいえ、力勝負で人間がギアに勝とうというのがそもそも馬鹿げてる。槍男が突っ込んで来たベクトルを力任せに捻じ伏せ、その身体を火達磨にしながら上空へ持って行き、頂点まで来ると流れるように身体を回転させて踵落としを放つ。「隊長!!」地面に叩き付けられそうになった槍男を全身土塗れの青髪が何とか受け止める。「安心しろ、非殺傷だ」「何ですって!?」「……ぐ、どうやらそのようだ……受けたダメージは純粋な魔力ダメージ……怪我は無い、心配するな」犯罪者には殺傷設定で攻撃していたのに自分達には非殺傷を使っていることに眼を大きく見開く青髪と、痛みに顔を歪ませる槍男。「どうして?」理解が出来ないといった表情の青髪に俺は皮肉気な笑みを浮かべると、その疑問に答えてやる。「自分から好き好んで犯罪を繰り返すようなクズに人権は無ぇ」これは俺だけの持論だが。犯罪者にもたくさんの種類が存在する。切羽詰まって、突発的に犯行に及んでしまった者、どうしても金に困っていた者、かつての俺みたいな復讐者、色んな奴らが居る。俺はそういう輩を何年も見てきた。その中で唯一俺が許せないのは、私利私欲の為、特に理由も無く己の快楽の為、犯罪に手を染めてそれに味を占めたことによって犯行を繰り返し、弱者を食い物にして弄ぶような連中だ。俺は相手に応じて非殺傷と殺傷を切り替えて戦う。前者はシグナム達のようなどうしようもない理由がある奴ら、後者は腐った犯罪者共。人を見る眼には自信がある。そいつの眼を少しでも見れば、だいたいどんな人物なのか見当は付く。あくまで勘のようなもので確証は無く他人からすれば当てになど出来ない代物だが、俺は自分のそれを信じて生きてきた。故に、俺は俺個人の独断と偏見で区別する。許せる者と許せない者を。はっきり言って傲慢な差別以外の何物でもない。だからフェイトとアルフは管理局に渡さなかった、ヴォルケンリッターを守りたかった……木陰の君を殺さなかった。この考え方が管理局の正義とやらに相反するというのは重々承知している。だが、ならば正義とは一体何か?一人ひとりの人間が価値観や考え方が違うのは当たり前であり、違うからこそ衝突したり理解し合おうと歩み寄る。それが”人間”であり、”人”という生き物だ。(日本語ってのは上手ぇな)”正義”って言葉を集団や組織が使う場合、俺にとっては大衆を納得させる胡散臭い免罪符や他者に自己の考えを押し付ける見苦しいものでしかない。俺にとって真の意味での”正義”とは、己の信念を貫くこと、自分の信じた道を進むこと。この世に同じ人間が存在しないように、それぞれの人間が異なった”正義”を持って生きていると思う。だからこそ思想が違えば問題が発生する、争い合う、諍いが生まれる。人は常に他者と自分を比べながら生きている。自分と違うから排斥しようとするのか、違うから歩み寄るのか、なら逆に自分と同じだったり似ていた場合は? それはやはり個人の考え方の違いだろう。犯罪者を徹底的に排斥するのか、許してやるのか……つまりはそういうことである。他者から見れば俺は”悪”だろう。だが、それがどうした? 自分の”正義”と相反する存在が”悪”なのは当然のことだ。「あばよ」そのまま空中に浮きながらクイーンに命じて転移法術を発動すると、俺の言葉に呆然としている二人を捨て置き”ゲート”を潜り、奴らの前から姿を消した。背徳の炎と魔法少女 家出編 その三「っていうことがあったのよ!!」クイントはプリプリ怒りながら眼の前の料理にがっついた。「……食うか怒るかどっちかにしろよ」妻のあんまりな態度にゲンヤは呆れながら茶を啜る。「だって、だって、こんなに美味しいのにあの男の子ったら『テメェ人のこと舐めてんのか!?』って言ったのよ!! 此処のお店の料理がどれだけ美味しいか知らない癖に!! 舐めてるのはあの男の子の方よ!!!」「怒ってる理由はそっちかよ!!」クイントとゲンヤが夫婦漫才を繰り広げる横で、二人の最愛の娘達がガツガツと料理を食い散らかし、皿が綺麗になると口を揃えてこう言った。「「おかわりー」」「もう、ギンガとスバルは本当に食いしん坊ねー。私もおかわりしよっと……すいませーん、とりあえずメニューの此処から此処まで三つずつください」店員にメニューを見せながら、端から端まで指差して料理を注文する豪快なクイントの態度と、我が家の女性陣の胃袋の底無し具合にゲンヤは深い溜息を吐く。「で、結局その”背徳の炎”とやらには逃げられた訳だ」「そーなのよ。ゼスト隊長ですらあっさりあしらわれちゃったし、メガーヌの召喚虫でも追え切れなかったし、驚きの連続よ」ゼスト隊がソルと遭遇してから数日が経過したランチタイム。ナカジマ一家は久しぶりに多忙なクイントとゲンヤの休日が重なり、ゲンヤの先祖の料理を目玉とする定食屋で夕飯を楽しんでいた。「しかし……そいつは聞く限り犯罪者以外に対しては随分と甘いみたいだな?」「うん。助けられた人達はあの子に凄く感謝してるのは事実だし、実際に攻撃された私もゼスト隊長もピンピンしてるし……でも、犯罪者に人権は無いなんて考え方、かなり過激よ」表情を曇らせるクイントを見て、ギンガとスバルが不思議そうな顔をして聞く。「ねーお母さんお父さん、さっきから何のお話してるのー?」「してるのー?」「うーんとね、お仕事の話。ちょっと困った子が居てねー」無邪気な子ども達に微笑むと、クイントは二人の頭を撫でてやった。くすぐったそうにしながら、それでも気持ち良さそうにしているギンガとスバルを聖母のような眼差しで見つめてから、クイントは真面目な顔をしてゲンヤに向き直った。「今は噂になってるのは管理局内だけだし表沙汰になってないからいいけど、このことがマスコミにバレたらきっとマズイわ」そう言って周囲を見渡してから耳を貸せとゲンヤに合図すると、クイントは小さな声で耳打ちする。「普通だったら犯人側が話すのを待つか、決定的な証拠を見せ付けて話さざるを得ない状況にするのが管理局のやり方でしょ? それは正しいと思うし間違ってないわ。でも……此処から先は知り合いから聞いたんだけどね、どうやら”背徳の炎”は犯罪者相手に拷問してるらしいの」「……本当か? もしそうだとしたら異常にしか思えねぇハイペースで潰し回ってるのにも納得だ。でもそれが本当だったらマズイどころの騒ぎじゃねーぞ?」瞳を細め、厳しい表情になる。「そうなんだけどね、だからと言って”背徳の炎”に逮捕状を出そうにも出せないのが現状なのよ。死者が出た訳じゃ無いのに加えて、被害に遭ってるのは凶悪な犯罪者ばっかり、その中には今まで管理局じゃ捕まえられなかった犯罪者も居れば、反管理局組織の構成メンバーやテロリストだってたくさん居る。こんな言い方管理局員として言うのは私も嫌だし、貴方も聞いてて気分が良いものじゃないでしょうけど、結果的に見れば此処数日間の”背徳の炎”の方が私達管理局よりも世間の役に立ってる感じがしない?」「だがな……」「このまま”背徳の炎”を放置しておけば犯罪防止に、ひいては治安維持に繋がるんじゃないかって思ってる人も少なからず居るみたい……アンダーグラウンドの犯罪者達の間でも噂になってるらしいし」そこまで言うとクイントとゲンヤは内緒話の体勢から元の姿勢に戻り、全く同じタイミングで深い溜息を吐いて、追加の料理が来るまで黙り込んだ。やがて両手にたくさんの料理を載せた皿を手にした店員が「お待たせしましたー」とやってくる。わーい、と声を上げて喜ぶギンガとスバルの様子に苦笑し、クイントは箸を進ませゲンヤは茶を啜った。「話の続きになるんだが」少し躊躇いがちにゲンヤは口火を切る。「ん?」髪をかき上げながらクイントは眼で問う。「”背徳の炎”に実際会ってみて、どう感じた?」「それは管理局員としてではなくて、クイント・ナカジマ個人として?」ゲンヤがゆっくり頷くのを確認すると、クイントは一旦箸を止め「う~ん」と唸った。「そうね~……正義感に熱い」「ほう」「っていう感じではなかったわ、全く」「違うのかよ」ツッコミつつうんざりするゲンヤ。「なんていうか、獲物を狙う狩人って表現が一番ピッタリかな。彼にとって目的以外はどうでもよくて。あの時も私達なんて眼中になかったみたいだし」「狩人ねぇ……まだ十代前半の子どもなんだろ?」「見た目は確かに子どもなんだけど、眼つきがやたら鋭くて存在感があるから私はもっと大人に感じたなぁ」唐揚げを皿から引っ手繰ると口に放り込んで続ける。「……それに口も悪くて、不機嫌そうな仏頂面で、私達のこと見て面倒臭そうに溜息吐いてて、しかもその態度が凄く老成してるのよ……とにかく色々な意味で印象に残る子だったわ」モグモグと咀嚼しては飲み下すと、丁度その時店の入り口が開き、店員が「いらっしゃいませー」と新規の客に小走りで向かう姿が視界の端に映った。「身長は私より少し低いくらいで、ヒラヒラしたバリアジャケットで分かり辛かったけど体格は細身ね。でも痩せてるってイメージよりも無駄な肉を削ぎ落として鍛えてるって分かった」「その根拠は?」「少しだけ見えたんだけど、バリアジャケットのデザインが腕と足の部分だけは密着してる作りになってたからくっきりと筋肉の付き方が分かったのよ。あれは明らかに格闘技か何かやってる筋肉してたわ」同じ格闘技者である所為か何か感じるものがあったのか、クイントは鼻息を荒くする。興奮し始めてきた彼女と相対するゲンヤの後ろでは、先の新規の客が店員に案内されてナカジマ一家を横切って行った。「うんとね、例えるとあんな感じかな」その新規の客。赤いジャンパーを羽織り、黒いジーパンを穿いた出で立ちで、黒茶の長い髪を後頭部で結わえている少年を見てクイントは顎で示す。クイントが言う通り、少年は何が気に入らないのか常に不機嫌そうな仏頂面を貼り付け、やたらと尊大な態度で席に着くとその真紅の眼を鋭く細めて睨むようにメニューを見つめていた。「あの男の子が白と赤のバリアジャケットを身に付けて、額にヘッドギアを装着して髪を全体的にアップさせたら…………」「どうした?」少年を注視していたクイントが急に黙り込んでしまったことにゲンヤは訝しみ、ギンガとスバルは母と少年を不思議そうに見比べていた。次第にクイントの眼が大きく見開かれ、口からポツリと、呆然とした口調で言葉が紡がれる。「ウ……ソ……背徳の……炎」「何!?」「ま、間違い無いわ、この眼で確かに見たもの……でもまさか」この店に来るとは思っていなかった、と続けようとして驚きのあまり続けることが出来ない。「ちょっと私、行って話聞いてくる」「馬鹿よせ」おもむろに立ち上がろうとするクイントをゲンヤが慌てて止める。「どうして?」「もしこの場が俺とお前の二人っきりだけだったら勿論止めはしねぇよ。だが今この場にはギンガとスバルに加えて何も知らない一般市民がたくさん居る街のど真ん中だぞ? 万が一戦闘にでもなってみろ。二人を含めて周囲を巻き込むつもりか?」魔法を使えない一般人の常識的な意見を聞き、クイントは我に返ったようにはっとなった。彼も自分を高ランク魔導師と呼ばれる存在だ。ゲンヤが言うように戦闘にでもなってしまえば周囲に被害が及ぶのは眼に見えてる。でも。「きっと大丈夫よ」自信満々にクイントは夫に告げる。「彼は確かに犯罪者には容赦しないけど、それ以外には甘いもの。貴方だって自分で彼をそう評したじゃない」「しかしだな、それとこれとは別問題だ」渋面を浮かべるゲンヤにクイントは真摯な眼差しを向けた。「それに、管理局員としてじゃなくてクイント・ナカジマという一個人として少し話を聞かせてもらうつもりだから物騒なことにはならない筈よ」「お前がそうでも相手はそうだとは限らねぇだろが」「もう、心配性ね」「当たり前だ!! 俺が普段どれだけお前を心配してるか分かってて言ってんだろ!!」小さい声で怒鳴るという器用なことを披露するゲンヤに、クイントは柔らかい笑みを浮かべた。「ありがとう。あの時女の勘に従って貴方のプロポーズを受けて本当に良かったわ」「勘かよ!? 人の一世一代のプロポーズを勘で判断したのかよ!?」「でも、私の勘って当たるのよ。現にこうして幸せな家庭を築けてるし」泣きたいような心境になるゲンヤに向かってクイントは突然頭を下げた。「お願いします、彼と話をさせてください。今を逃したらきっとこんなチャンスは二度と来ないって思うから」そして必殺の上目遣い。ちなみにクイントの一撃必殺技をゲンヤは回避出来た試しが無い。「くっ……」悔しそうに歯噛みしてまだ渋るゲンヤは、数秒間黙考した後、苦々しげに口を開いた。「物騒なことにはならないって、それも女の勘か?」「うん」「ああもう!!」自分の頭を両手でグシャグシャにかき乱した後、ゲンヤは諦めたように溜息を吐く。「惚れた弱みだ……好きにしろよ」「流石私の旦那様!! 話が分かる!! 愛してるわ貴方!!!」「ば、馬鹿!? 声がでけぇ!!!」立ち上がって大声を上げるクイントと顔を真っ赤にするゲンヤ。そんな風に騒ぐナカジマ一家(というよりバカップル夫婦)に店内の視線が生暖かいものとなって集まるのであった。騒がしい店内の雑音など耳に入れず、俺はメニューを睨みながら必死に思考を巡らせていた。やはり此処は丼ものにしておくべきだろうか? この『熱々タマゴとあんかけ豚丼』がとても美味そうだ。しかし定食も捨て難い。『さくさく天ぷら定食』なんてご飯を玄米か白米、味噌汁を赤味噌か白味噌という風に選択出来るのがポイント高い。いやいや、ランチタイムメニュー限定の『肉汁たっぷり牛焼肉定食』も写真で見る限り美味そうな上、他の二つよりも若干安い。さて、どれにする?初めてこの店に来た時は内心で文句を言っていたのに、何だかんだ言って気に入っているのであった。「何を悩んでいるの?」そんな時、誰かが近付いてきて俺に問い掛けた。店員だろうか? 何処かで聞いたことがあるような声だから店員に違いない。特に疑問に思わず、俺はメニューから視線を外さずに答える。「これとこれとこれ、三つの内のどれを食おうか悩んでるだけだ」「そんなことで悩んでたの!? 答えなんて考えるまでも無いじゃない!!」「何だと?」そこで俺は初めて眼を店員らしき人物に向けた。「あ……テメェ……」呆然とする俺に対して、その女は高らかにアハハと笑いながら言う。「どれを食べるのか悩むくらいだったら全部頼んで全部食べればいいじゃない!!」あの違法研究所で遭遇した青髪の、両手にナックルを装備してクイントと呼ばれていた女が、俺の眼の前で両手に腰を当てて微笑みながら立っていた。後書きGG2のサーヴァントシステムにおける”マナ”や”ゴースト”の解釈は作者の独自のものです。魔力とはまた違ったエネルギー。風水で言う地脈・龍脈といった土地から汲み上げているエネルギーを、マスターであるソルの”根源的な力”=”マナ”に変換しているのでは? と思っています。あと、凄く今更なんですが、ソルの髪型はヘッドギアを装着していない状態だと長い髪を下ろしているだけの普通のヘアースタイルです。ヘッドギアを装着することによって髪が全体的にアップされて、皆さん御馴染みのやつになります。もしヘッドギアを装着してないソルの姿を見たいようでしたら、ニコニコ動画で『初代ギルティギア』と検索してみてください。初代GGソルのストーリーの動画があり、そのエンディングにてヘッドギア無しの絵が1カットのみですが存在します。P,S感想版にドラまた、リアルバウトハイスクールとあって吹いた。懐かしいなオイwww