結局、なし崩し的にはやてを除いた全員が模擬戦を行うことになり、俺達の実力をお披露目する名目で始まったそれは教会騎士団にとって非常に満足出来る内容だったらしい。ちなみに対戦カードはその場のノリで以下のようになった。第一試合 シグナム VS ヴィータ 時間切れによりドロー第二試合 フェイト VS なのは 時間切れ寸前でダブルノックダウン ドロー第三試合 ユーノ VS ザフィーラ○ 近接戦闘中に一瞬の隙を突かれたユーノが気絶 テクニカルノックダウン第四試合 ○シャマル VS アルフ アルフ優勢だったが、シャマルのバインドからの派生技「ブレイクバースト」が上手く決まり気絶 テクニカルノックダウン第五試合 俺 VS アイン 時間切れによりドロー第六試合 ○ユーノ VS ヴィータ 終始ヴィータ押し気味だったが、最後の最後でユーノのバインド→ブレイクバースト→関節技のコンボが決まりヴィータがギブアップ第七試合 俺 VS シグナム 時間切れによりドローこの次からはタッグ戦と二対一になる。第八試合 なのは&フェイト VS シャマル&ザフィーラ 時間切れによりドロー第九試合 ○アルフ&ヴィータ VS アイン アルフのバインドに拘束されてヴィータのギガントが振り下ろされる寸前にアインがギブアップデモンストレーションの意味合いが強かったので一つの試合に十分という制限時間を設けた。その所為で最後まで決着をつけられなかった試合があるのだが、実力を見せ付けるということには成功したようなので問題無いらしい。興奮が冷めない演習場を後にし、教会本部に戻って疲れを癒す。その後、カリムの提案で夕飯を馳走になった。食後のお茶とヴェロッサが俺達の為に手作りしたケーキを堪能していると、唐突に空間モニターが現れる。何だこれは? 疑問に思って口にする前にシャッハが説明してくれた。なんでも先程の模擬戦後に観客に対してアンケートなるものが行われていたらしく、丁度このタイミングで集計結果が出たのでそれを表示したらしい。そんなもんまで用意していたとは。アンケート内容はこんな感じだ。Q1 本日の模擬戦を見て教導を受けたいと思いましたか? 理由を簡単にお答えください。Q2 Q1で「はい」と答えた方に質問します。誰の教導を受けたいですか? 複数回答可。 (以下各々の名前が記載されている)Q3 Q2の理由を簡単にお答えください。また、感想や質問でも可。背徳の炎と魔法少女 聖王教会編 その四「結果はこちらです」シャッハが空間モニターを操作すると円グラフが二つ並ぶ。Q1で「教導を受けたい」と思った回答者は91%。理由は「あんな風に強くなりたい」「勉強になる」「今日の模擬戦を見て戦術の幅が広がると思ったから」が大半だ。逆に残りの9%は「絶対に無理だ」「訓練が死ぬ程厳しそう」というネガティブな回答理由。前者はともかく後者の意見は否定しない。Q2での割合では意外にも皆どっこいどっこいの票数だった。これはカリム達も同じだったらしく、皆で眼を丸くする。ぶっちゃけかなりバラつくと思っていたんだが。何故だと思いつつも、Q3の回答をいくつか見ることにした。俺とシグナムの場合、回答者のほとんどが二人を同時に選んでいて理由も同じようなものだったので一緒の扱いとなる。『どうして俺には炎熱変換が無いんだぁぁぁ!?』『騎士と言えば剣士だろ』『カッケェ』『御託は、要らねぇ!!!』『紫電一閃!!!』『お二人のような、真正面から敵を力ずくで叩き潰せるような騎士になりたいです』こんなのばっかりだ。実にミーハーな回答というか、素人が好みそうな戦い方を俺達はしていると実感する内容だった。「簡単なアンケートですから、怒らないでくださいね?」最早乾いた笑いを漏らしながら苦笑いを浮かべるしかない俺とシグナムへ、カリムが困ったように苦笑する。「これは、精神的に結構来るな」「……うむ。もっとこう、見た目の派手さや格好ではなく、立ち回りや技術的な側面を見て欲しかった」シグナムと視線を交差させ、溜息を吐く。「ま、まあ、教会騎士団の者達も若いのが多いですから」「次行きましょう、次!!」額にかいた汗を誤魔化すようにカリムが髪をかき上げ、取り繕うようにシャッハが促し次の画面が映し出される。ヴィータの場合。『ハンマーに魅せられました』『ベルカの騎士なのにオールラウンダーって凄いですね。私も距離にこだわることなく戦えるようになりたいです』『遠距離でも中距離でも近距離でも戦える。純粋に凄いと思います』『僕は近距離戦闘しか適正が無いと以前言われたのですが、訓練を積めばヴィータさんのような近距離寄りの万能型になれますか?』一部デバイスに関して何やら男心がくすぐられた文章が存在するが、概ねヴィータの戦闘スタイルを支持するような内容である。「へへ」本人も満更じゃなさそうに笑ってやがる。フェイトの場合。『正直速過ぎて何がなんだか分からなかった。でも相手より速く動けることは重要だと思う』『接近戦が得意なミッドチルダ式魔導師というよりも、射撃や砲撃が出来るベルカの騎士みたいな印象が強いです』『高速移動魔法を発動させている最中の動き方を教えてください』『以前任務で速い敵を相手に逃げられてしまい悔しい思いをしました。是非仮想敵として相手してください』やはり自慢の速度と接近戦を得意とする点が注目を集めている。こちらもなかなか高評価だ。「うぅ、ちゃんと教導出来るかな?」しかし本人には逆に変なプレッシャーが掛かってしまったらしい。なのはの場合。『薙ぎ払え!!!』『なのはさんって何時もあんな風に砲撃バンバン撃つんですか? だとしたら勝てる気がしないけど、模擬戦やってる内に普通の相手が楽になりますね』『リアルSTG』『射撃と砲撃魔法撃ち過ぎ、近寄れねぇよ。もし近寄れても今度は槍で接近戦とか、もう笑うしかない』『トリガーハッピーですね、分かります』「何これぇぇぇぇっ!?」一人憤慨するなのはを他所に、俺達全員は吹き出した。よく見ると、なのはを支持してる連中は『この人と模擬戦やり慣れればミッド式相手に楽勝出来るかも』という意見が大半を占めていた。他は微妙にコメントに困る内容だ。「まあそう怒るな」「だったらなんでお兄ちゃん顔がニヤついてるの!? バカッ!!」立ち上がったなのはが俺の後ろに回り込んで髪をグイグイ引っ張り始めたので、気が済むまで放置することに決める。アインの場合。『攻守、遠中近、全てに置いてバランスが取れていると思います』『文句無しの万能型』『こんな人実際に居るんですね』『色々な戦い方をするようなので、色々なことを教えてもらえそう』なんというか、本人以外にとっては少し面白くない内容だ。皆が横眼で胡散臭そうな視線を送ると、「て、照れるな」純粋に喜んでいた。その表情を見て毒気が抜かれてしまったのでシャッハに次を促した。「えっと、次なんですけど、これは残りの四人、ユーノさんとアルフさんとシャマルさんとザフィーラさんの全員が該当します」「俺とシグナムみたいにかぶってるってことか?」「はい」まあ、基本的に四人が本来得意とするのは前衛じゃなくて、後衛での補助だからな。一部性格的に前に出たがるが、バインド、回復、防御、その他諸々を主に使って基本的には前に出ないタイプだし。かぶるのはむしろ必然か。「では、こちらです」『バインドって捕縛以外にもあんな使い方出来るんですね!!』『俺は攻撃魔法適正無いんだけど、ユーノさんみたいな戦い方なら俺でも戦える』『今まで補助系の魔法って攻撃よりも劣るって馬鹿にして考えてたけど、そんなことこれっぽっちもないんですね。反省します』『補助メインの後衛って敵に近付かれたら終わりだと思ってた常識を覆すような戦いでした』『なんというか、発想が凄い』『攻撃魔法が無くても補助系の魔法と体術で十分戦えるなんて知らなかった』他にも四人を褒め称えるような文章が続く。ユーノがヴィータに勝ったというのが大きく評価された要因だろう。「いやぁー、見る眼がある奴ってのは居るもんだねー」「ヴィータに勝てたのは運みたいなもんなんだけどなぁ」「前衛の足手纏いにはなりたくないですから」「うむ」フハハハハと笑うアルフ、鼻の頭をかきながら少し恥ずかしそうにするユーノ、口元に手を当てクスッと笑うシャマル、腕を組んで大きく頷くザフィーラ。「これらはあくまでも匿名のアンケートですので鵜呑みにしないでください」全てを見終えてカリムが纏めるように口を開く。「具体的なクラス分けや担当の振り分けは、騎士達一人一人の意見と個人の適性と皆様のスタイルに照らし合わせながらこちらの方で検討させて頂きます。もしかしたら二人以上の複数人で一緒に教導してもらう可能性があることもご了承お願いします」むしろその方が多いかもしれません、と付け加えられる。続いてシャッハが申し訳無さそうに進言した。「その為には皆様の詳しいデータがもう少し欲しいのですけど、何か戦闘記録のようなものは無いでしょうか?」「此処一ヶ月の模擬戦データを後で纏めて送信するだけでいいか?」「それで十分です、ありがとうございます」俺の言葉に頭を下げるシャッハに気にするなと言い、疑問を口にする。「教導が始まるのはだいたい何時からだ?」「シャッハ」「そうですね……皆様がだいたい週一が週二でこちらに来て頂けるというお話ですから、スケジュールをまず計画してその後に騎士達の選定を行いますので、およそ一ヵ月後くらいかと」約一ヶ月か。時間があるようで無いな。「分かった。何か疑問があったり細かいことが決まったら逐一連絡しろ。詳しい話は一週間後、此処で」立ち上がり、身内の連中に帰るぞと促す。「待ってやソルくん」「あ?」帰ろうとしたところをはやてに呼び止められる。「私も何か皆に教えられることって無いやろか?」いきなり何を言い出すかと思えば随分と現実味が薄いことを。「教えるも何も、ついこの前まで松葉杖だった癖して何言ってやがる」「せやけど、魔法の勉強はちゃんとしとるで」「実戦経験が無いに等しいどころか模擬戦すら碌に無ぇだろうが。そんな奴がいきなり教壇に立って何を教えるってんだよ?」はやての意見を俺は一蹴する。確かにはやては魔導師として才能は十分持っているだろうが、それは潜在能力であって、今すぐ示して見せろと言われて見せられるよう代物ではない。教えを受ける側はド素人じゃない。仮にも教会騎士団に所属している聖王教会の実働部隊だ。そんな連中を相手にやっと一人で歩けるようになった少女が、しかも三ヶ月前に魔法に触れたばかりの少女が戦いを教えるなど、馬鹿にしていると思われても言い訳出来ない。「でも、悔しいんよ。皆は一ヵ月後に先生になるかもしれへんのに、私だけ何にも出来ないなんて……私一人だけ皆に置いてけぼり食らってるみたいやんか」悔しそうに唇を噛み締め、それでも強い意志をはっきりと宿らせた瞳で臆することなく俺を見るはやて。「ずっと思っとった。皆が訓練してる中、私だけ隅っこの方でリハビリして……しゃあないってことはよう分かっとったよ? 特にソルくんは治療からリハビリまで手伝ってもらってホンマ感謝しとる。せやけど、もう仲間外れは嫌なんや。私も皆と同じ位置に立ちたいんや」「……」「これが私の我侭っていうんは十分理解しとる。でももうアカン、我慢出来ん。私もやらせて欲しい……この通りや、お願いします」頭を深々と下げたはやての姿を見て、誰もが戸惑いの表情を浮かべ、最終的な決定を下す俺に視線が集まる。どうしたもんか?先の通りはやてには魔法の才能がある。それこそ管理局の人間がはやてを知れば即スカウトする程に。最後の夜天の王、古代ベルカ式の使い手、アインから魔導の全てを受け継ぎレアスキル『蒐集行使』を持っている。肩書きだけなら十分だろう。魔法の勉強は怠っていない。しかし、いかんせん経験が無い。実戦は一度だけ、それ以後はリハビリに集中させていたので模擬戦すらしていない。おまけにデバイスすら持ってない。だが。「準備期間はあと一ヶ月か。地獄を覚悟してんだったら構わねぇぜ」ガリガリと頭をかきながら、俺ははやてに問い詰めた。「ホンマ!?」喜色に染めた顔を上げるはやてを牽制するように付け加える。「ただし、明日から死にたくなるような訓練に耐え切れたらの話だ。更に一ヵ月後にテストを行い、俺が認めるだけの実力を身に付けてなかったらこの話は無しだ。ついでに、お前は誰かの補佐という形から始める。これで文句が無ければ許してやる」「分かった!! 絶対にソルくんを認めさせたる!!!」「口だけなら何とでも言える」「口だけやないのはソルくんが一番知っとる筈やで。私が今までリハビリで弱音吐いたことあった?」「……無ぇよ」溜息を吐くとカリムとシャッハに向き直った。「つーことだ。はやてが加わってもそうでなくても誤差が出ないように上手くスケジュール組んでくれ」「はい、了解しました」「期待してお待ちしています」「どうなるかは知らんがな」俺は肩を竦めると、身内の連中に囲まれて口々に「良かったね」やら「頑張ってください」と励まされているはやてに視線を注いだ。そして、はやての特訓が始まった。「じゃ、まず今日からこの重りを寝る時と風呂入る時以外両手足に付けてろ」「ベタや……」「でも地味に効果あるぜ。で、今から走れ」「いきなり? しかもこれ付けて?」「どんなに遅くてもいい、極端に言えば歩くくらいでもいいから自分のペースを保ちつつ、俺がいいと言うまで走り続けろ。だが歩くなよ。ちなみに拒否は受け付けねぇ」「わ、分かった。分かったけど……どうしてソルくん、セットアップして封時結界まで張って封炎剣持っとるの?」「ま、気にすんな」「……なんかとてつもなく嫌な予感するわ」十分後。「ガンフレイム」「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!? この鬼!! 悪魔!!! う、うし、後ろから炎が追っかけてきとるやないかぁぁぁぁぁっ!!!」「炎はお前の走る速度と同じだから安心しろ!! それよりもキビキビ腕を振れ!! もっと足を上げろ!! ゾンビみてぇに前屈みにならねぇで姿勢を正せ!! 教えた通りに呼吸と重心を意識しろ!! 無駄口叩いてペース落とすと追いつかれて焦げるぞ!!!」「し……死ぬ」「だれてる場合じゃねぇ、次は接近戦での身体の動かし方だ。親父、兄貴、姉貴、よろしく頼む。コースはスパルタ実戦詰め込み式『殴られて覚えろ』でな」了解、と応え準備する御神の剣士三人。「これ……明らかに、オーバーワークだと、私は思うんよ」「大丈夫だ。今無理やり魔法と法力、魔力供給で肉体疲労取るから」「それって……反動あるって前にシャマルが言うとったような……」「反動を無くす為に法力を使う。何の為に複合魔法使うと思ってんだ?」俺はうつ伏せ状態のはやての頭の上に手を置き、回復させる。「はぁぁぁ、嘘みたいに身体が軽くなるぅ~」「よし、じゃあ死んでこい」三十分後。「こ、殺される……」「回復してやるからもう一本行ってこい」「さっきからそればっかりやないか!! もう二十回は綺麗な花畑が見える川とこっち往復しとるで!!!」「あと二十、いや三十往復してこい」「……鬼畜やこの人」数日後。「これがお前のデバイスだ」「わーい!! 私にもついにデバイスが!! あんがとな、ソルくん!!! 名前は何て言うん?」「作業を手伝ってくれたアインが名付け親で、『シュベルトクロイツ』だとよ。融合デバイスの方はまだまだ先だが、今はこれで我慢しろ」先端の剣十字が特徴な杖型のデバイスを振り回して新しい玩具をもらった子どものように喜ぶはやて。「じゃ、デバイスが出来たことだし模擬戦するか」「ええよ!! 誰が相手でもドンと来いや!!!」「勿論相手は俺だ。つーか俺だけだ。今日一日中俺と模擬戦だ。ちなみに拒否権は無ぇ」それを聞いて、時間が止まったように動きを止めたはやての顔からサァーッと血の気が引く。「く、主はやて、なんて羨ましい……」「テメェはすっ込んでろ」渋々引き下がるシグナム。「……ええっと、ホンマにソルくんと一日中模擬戦するん?」「嘘言ってどうすんだ? それに今誰が相手でもドンと来いっつったろ」「そうやね……」一時間後。「……い、生きてる……これで今日何回目の奇跡やろ?」「最低でもあと十回は奇跡が起きるからな」「奇跡のバーゲンセールや……今日は奇跡が大安売りなんやなぁ」「そうだな」遠い眼をして仰向けになり青空を見上げるはやてに膝枕をしてやりながら、俺は回復魔法と治癒法術を発動させた。更に数日後。「今日の模擬戦の相手は俺じゃねぇ」「やったぁぁぁぁっ!! 初めてソルくん以外とや!!」「俺以外の全員とだ。それぞれサシで戦ったら、次はタッグ組ませて一対二。それが終わったら一対三。これを五セット」「………はい?」三時間後。「む、無理ゲーや……」「ん? ドラゴンインストールした俺とサシの方がいいか?」「次や次!! 誰が相手や!? はよう、掛かってきいや!!!」そんなこんなで、はやての特訓の日々は続いた。「やれやれだぜ」俺は溜息を吐きながらはやてを抱え上げて寝室に運ぶ。はやては一日の訓練に疲れ果て、夕飯を食い終わると即寝てしまう。それだけ内容が濃いことをしているのだ。無理はない。本当ならもっと大事に育ててやりたかった。時間を掛けてゆっくりと。実は諦めて欲しかったからこそ、かなり無理難題な訓練をやらせているのだが、はやては気合と根性で今のところ全てを乗り切ってみせた。生い立ちがあれなだけに、逆境に強い性格なんだろうか?どっちにしろ凄いの一言だが。はやてを優しくベッドに横たえると、俺もその隣で横になる。「この期間だけだからな。毎日頑張ってるご褒美ってことになるのか?」リンカーコアに掛かった負荷や肉体の疲労を次の日に残さないようにするには、寝ている間に魔力供給してやるのが一番良いらしい。疲労と魔力の回復。これは流石にはやてが起きている間には限界があるからだ。こうして同衾してやることについて、なのはとフェイトは「私も!!」と駄々を捏ね、シグナムとシャマルとアインは何か期待するような視線を向けてきた。当然、無視したが。華奢で小さな身体を抱き寄せる。「炎が、炎が……」うーんうーんと唸っているはやて。どうやら夢の中でも訓練しているらしい。それに俺は苦笑。「今はゆっくり休め。明日も容赦しねぇぜ?」そして、聖王教会を初めて訪れてから約一ヵ月後。はやては見事にテストを合格――俺との模擬戦で納得させるだけの戦闘能力を見せ付けた――ことにより、教導官を補佐するという立場でベルカ自治領に立つことに成功した。(これで文句は言えなくなっちまったな)本音を言えば、やり遂げやがったよこいつ、という微妙なもの。諦めさせる気満々だったってのに。俺としては教会騎士団と同じ教えを受ける側に居て欲しかったのだが、約束は約束だ。この一ヶ月で叩き込めるだけ叩き込んだが、まだまだ荒削りな部分が存在する。ま、それはこれから少しずつなんとかするとしよう。それよりも今は教導のことだ。仕事として金をもらう以上、結果を出す必要がある。これから教会騎士達を鍛えることに思考を切り替えると、俺は皆を引き連れて教会本部へと向かうことにした。