「これより、魔導師襲撃事件の容疑者。ソル=バッドガイの尋問を行う」クロノが鬼の首を取ったかのように勝ち誇って宣言した。せめて重要参考人にしろ。現在俺は、アースラ艦内で刑事ドラマでしか見たことないような狭くて薄暗い個室で、机を挟んでクロノと向かい合うように座っている。そして、魔法行使を不可能にする拘束具を手首に嵌められ、その上に何重にもバインドが施されている。「先に言っておくが俺は無実だ」「今なら僕の知り合いの腕の良い弁護士をつけると約束しよう。だから、洗いざらい吐くんだ。妹達の、なのはとフェイトの為にも」「人の話聞いてねぇだろテメェ」「キミに言われたくないぞ」睨み合う俺とクロノ。俺は馬鹿馬鹿しくなって視線を逸らし後ろに振り返る。そこには、涙眼になって悲しそうで辛そうな表情のなのはとフェイト。明らかに俺の今の姿を面白がってニヤニヤしているユーノとアルフ。なんでこいつらが此処に居るかと言うと、本人達の希望でもあり、クロノが気を利かせたとかなんとか。いや、余計なお世話だからな。つーか、俺はさっきも言ったように無実だ。「お兄ちゃん、どうしてこんなことを………」「私は待ってるから………ソルが罪を償って帰ってくるのを待ってるから」しくしくしく。「ソル、とりあえずCD借りていい? 実は僕も結構楽しみにしてたんだよ。今回の新作」ガサゴソ。「は~いこっち向いて~、写メ撮ったら知り合いにバラ撒くから。題して『補導されるソル』。良いね、絵になるよ。特にその手首のバインドが。ウケるよこれは。ククク」パシャッ、パシャッどいつもこいつも色々な意味で酷い態度だ。はぁ、と俺は盛大に溜息を吐いた。約三十分程前。嫌なベクトルで勘違いしたなのはとフェイトが、デバイスを構えて迫ってくる。シグナムとシャマルを放し、俺は二人の前に出た。「「あっ………」」後ろから呆然とした声が聞こえたが気にしなかった。今はそれどころじゃない。鬼気迫る勢いでこちらに向かってくる二人を何とかしないと色んな意味で危険だ。なのはとフェイトは怒りや悲しみ、その他の感情をごちゃ混ぜにしたような複雑そうな顔をする。「とりあえず頭冷やせ。俺の話を聞け」俺は敵意が無いことを示す為、クイーンに命じて封炎剣を仕舞いバリアジャケットを解除した。鉄拳制裁覚悟で突っ込んできたらしい二人は、そんな俺の態度に戸惑い動きを止める。その時、この空間にクロノの声が響き渡る。『全員動くな、そして武装を解除しろ。僕は時空管理局所属の執務官、クロノ・ハラオンだ。その権限により、これより戦闘行動の一切を禁ずる』声をした方を向くと水色の球体が浮かんでいる。どうやらあれがスピーカーの代わりらしい。時空管理局が出しゃばってくるとは分かっていたが、この時ばかりはなかなか良いタイミングでの介入だ、と思った。この瞬間だけ。『特にお前だソル=バッドガイ!! 一連の魔導師襲撃事件にお前も関わっているな!? どうせ今回もPT事件の時のように裏でコソコソと何かやってるんだろう!? ”闇の書”の守護騎士と一緒に居るのが何よりの証拠だ!!!』「ああン?」『とぼけたって無駄だ。お前にはアースラのデータバンクをハッキングしたという前科がある。まさか忘れたとか言うんじゃないだろうな?』忘れてた。正直、記憶の端っこに追いやってた。そういややったなそんなこと。クラッキングじゃなくてハッキングなだけまだマシだと思うが。『クロノくん、ストレス溜まってたんだね~。普段からガス抜きしないから』エイミィの暢気な声が聞こえてきた。『と・に・か・く!! もしキミに後ろめたいことが無いと言うなら、僕と武装隊が行くまでそこから指一本動かすな!!! なのは、フェイト、その男を自分達の一番好き方法で拘束してくれ!!』「「一番好きな方法?」」『抱きつくんだ!!!』「「っ!! 了解!!!」」嘘だろ!? 何だこの展開!! 折角シグナム達の事情が聞けると思ったってのに!!振り返れば「管理局とは関わってられません」と言わんばかりに、既にシャマルが転送魔法の準備をしていた。「待ちやがれテメェら!! まさか逃げるつもりじゃ―――」「こんな女達のことなんて見ないで、私を、私だけを見て!!」シグナム達に伸ばそうとした腕をフェイトに抱きかかえられる。「早く帰ってください、そして二度とお兄ちゃんの前に現れないでください」反対側の腕にしがみつきながら、シグナム達に向かってなのはがシッシッと手を振った。「わざわざ言われなくても退散する。管理局が出てきた以上、我らが此処に長居する理由は無い」逃げるというのに毅然とした態度でシグナムが言う。「残念なことがあるとすれば一つだけ。ソル、お前から奪えなかったことだ」魔力をか?「それと、お前との一時は苦しくもあったが、同時に血沸き肉踊った。あの時はそれどころではなかったが、今思い返すとあれはあれで楽しかった」三角形の魔方陣がシグナムとシャマルの足元に出現すると、輝き始めた。「さらばだ。ソル=バッドガイ」「えっと、あの、見逃してくれてありがとうって言えばいいのかしら? とりあえずさようなら」ふざけるな!! 後のこと全部俺に投げっぱなしで逃げるとか、いきなり襲い掛かってきた癖してどういう了見だ!? せめて事情っぽいの何か言え!!!次の瞬間には発動した転送魔法によって二人が光に包まれ流れ星のように飛んでいってしまった。他の二人の仲間も同様に。「くっ、一足遅かったか」タッチの差でクロノとアースラの武装隊が俺達の周囲に転移してきた。「”闇の書”の守護騎士は逃げられたが、手がかりがゼロな訳じゃ無いから良しとするか」ニヤリ、と暗い笑みを浮かべながら俺の顔を見るクロノ。「話を聞かせてもらえるな、ソル。何故守護騎士達と共に居たのか、洗いざらい」それを聞いて、俺は深々と溜息を吐いた。気分的には暴れたかったが止めた。暴れたら事態を悪化させ、よりややこしくなるだけだと分かっていたから。背徳の炎と魔法少女A`s vol.4 祭りの後始末シグナムとシャマルが急に結界を張って襲い掛かってきたことを何度も説明する。魔導師襲撃事件なんざ知らん、俺は被害者だ、シグナムは俺の魔力を”闇の書”の贄すると言って斬り掛かってきた、と。するとようやく渋々といった様子でクロノが俺の言い分を納得した。クロノが納得するまで尋問が始まって十分掛かった。早いのか遅いのか微妙だ。「ちっ、証拠不十分か」否、決して納得はしてなかった。俺はこいつからよっぽど嫌われているらしい。「キミの所為で振り出しに戻ったじゃないかっ!! しかも碌に情報持ってないし、全く紛らわしい!!! こんなことならキミなんて放って置いてあの四人を捕まえれば良かった」「知るか。つーか、なんで俺があの四人より捕獲優先順位が高いんだよ」「ソルだからだ」「誰か通訳呼べ」それでも一応、バインドと拘束具は外してくれた。後ろでほっと一息つくなのはとフェイト。ちなみに、クイーンは取り上げられている。確認することがあるとかなんとかで、先程エイミィに持ってかれた。別にそのことに対しては不満は無い。何故なら、クイーンは俺の手から離れたらオートロックが掛かるようになっている。だが故意にそのロックは中途半端で、それ故にデバイスとしての中身は見ることは出来ても、神器としての中身は見ることが出来ないように。これはある種のフェイク、と言うよりデコイか。魔導師がクイーンを見れば補助系のデバイスであることは分かっても、法力使いが使う神器だとは分からない。そして、あからさまに閲覧可能な内容があれば、大抵の人間は他に閲覧出来る部分があるとは思わない。そもそも、クロノを含めたアースラの乗組員には法力が一体どんなものかの説明をしていないし、なのは達には口外することを禁止にした上で『五つの属性を用いて”事象”を顕現する力』とかなり漠然とした情報しか提供していない。ユーノには一度基礎理論を教えたが理解し切れてなかったようだし。だから、クイーンのデバイスとしての機能面がいくら調べられようと困ったことがある訳じゃ無い。そして、神器としての機能があることに気が付かれる可能性は非常に低い。隠蔽もこれでもかと施した。気付かれることはまずあり得ない。もし気付かれても強力なプロテクトが存在する。アクセスコードの解析やディスペルは法力使いではないと絶対に解けっこない代物が。第一、根底の基礎理論が全く違う技術なのだ。普通自動車の運転免許しかを持っていない人間にいきなり気球に乗れと言うくらいに無理がある。クロノとリンディは俺があっさりクイーンを渡したことに訝しんだが、解析すれば分かるだろうと思い直したようだった。そんなことよりも、俺からも聞きたいことがある。「お前が言う”闇の書”ってのは一体何だ?」今まで苦虫を噛み潰したような表情でどうやって俺を陥れようか画策していたクロノが、急に真面目な顔になる。「………第一級捜索指定ロストロギア、”闇の書”。最大の特徴はそのエネルギー源にある。”闇の書”は魔導師の魔力とその魔力資質を奪う為に、リンカーコアを食うんだ」「リンカーコア?」「何だ? そんなことも知らずにソルは法力や魔法を使っているのか? リンカーコアとは魔導師が持つ魔力の源のことだ。キミの身体にもちゃんと存在するんだぞ………色々とアレだが」呆れたような、意外そうな顔をするクロノ。「闇の書はリンカーコアを食うと、蒐集した魔力の資質に応じてページが増えていく。そして、最終ページまで全てを埋めることで闇の書は完成する」「完成するとどうなる?」「………少なくとも、碌なことにはならない」そのまま俯いてしまうクロノを見ながら思案する。シグナム達は俺となのは達の魔力を狙ってきたことは明らかだ。そうして闇の書を完成させるつもりだったんだろう。だが、クロノの話を鵜呑みにするなら完成すると碌なことにはならないらしい。じゃあ、あの必死さは何だ?「それよりさ、あいつらの魔法、ちょっと変じゃなかった?」アルフが携帯電話を弄りながらどうでもよさそうに言った。「あれはたぶん、ベルカ式だ」とクロノ。「ベルカ式?」「その昔、ミッド式と魔法勢力を二分した魔法体系だよ」イヤホンから聞こえてくるであろう音楽に、リズムを合わせるように身体を揺らしながらユーノが補足する。「遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した魔法で優れた術者は”騎士”と呼ばれる」更なる補足をクロノが追加する。「そういやシグナムの奴、俺のことを騎士かって聞いてきやがったな」「確かに………ヴィータの戦い方、ソルにちょっと似てた」「うんうん」フェイトの言葉になのはが頷く。「最大の特徴は、デバイスに組み込まれたカートリッジシステムって呼ばれる武装。儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸を組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得る」「ますますソルに似てるじゃないか」ユーノの説明にアルフが感嘆の声を上げ、俺以外の全員がうんうんと首肯する。「何言ってやがる。俺は封炎剣に魔力を込めた弾丸なんて使って無ぇぞ」「でも、ヴィータちゃんがカートリッジシステムを使った時って、お兄ちゃんがタイランレイブとかを撃つ瞬間にそっくりだったよ」「魔力の高まり方が、だよ。なのは」「そう、それ」そう言われてもな。あれは必要な魔力が他の技と比べると桁違いに多いだけなんだが。「でも、さすが我が家のソルだね。二対一だってのに勝っちまうんだもん」カラカラ笑いながらアルフが俺の肩を叩いた。だが、「………」俺は応えなかった。もし、殺傷設定でシグナムが俺を殺すつもりだったら、どうなっていた?法力には無い魔法の便利な攻撃方法、非殺傷設定。純粋な魔力ダメージとするそれは、敵を無傷で無力化する時に重宝する。訓練の時に使ってるのもこれだ。普通の人間になら十分通用するだろうが、俺には通用しない。俺と言うよりギアには通用しにくいと言った方が語弊が無いか。ギアは本来、法力を使う兵器として生み出された存在だ。息をするように法力を使うのは当たり前。中には生命活動や生物としての生理現象にすら法力に依存し、法力を使い続けなければ死に至る個体すら存在した。鳥野郎なんてその典型だ。法力を使って自分の周囲を常に水で覆い尽くさないと満足に生きられないという欠点があった。無限に法力を行使し続ける。そんな人間には不可能なことを可能とするのがギア細胞。ギア細胞は条件さえ揃えば無尽蔵に魔力を生み出す代物だ。生き物が食物を摂取することによって体内で熱を生んで動くのと同じように生命活動の一環として。戦闘能力が高い個体程、一つの細胞が一度に魔力を生産する量が多い。魔力は、ギアにとって見れば純粋な意味でのエネルギーでしかない。勿論、生物である以上は魔力とは別に食物が必要だが。故に、純粋魔力ダメージである非殺傷設定での攻撃は俺を、ギアを無力化するには有効じゃない。だからこそ火炎や雷撃といった”事象”である法力が効く。魔力変換資質は非殺傷の攻撃魔法として使う以上、”火炎もどき””雷撃もどき”であって、似たような効果は期待出来ても本当の意味での効果は皆無だ。例えば、”火炎もどき”は熱であっても物質を炭化させることは出来ない、というように。殺傷設定にしてこそ、本当の”火炎”や”雷撃”に変わる。それなら法力と同じ効果が望める。話を戻す。確かに指向性を与えられた魔力には痛みがある。あの時のシグナムの攻撃だってとても痛かった。だが、それだけだ。人間だったら気絶くらいするんだろうが、生憎俺は人間じゃない。あまりにも痛くて気絶する、とかならあり得るが。そして、非殺傷は身体的な意味でのダメージにはならない。怪我を負わない。これはギアを相手に戦闘する上で致命的だ。いくら攻撃を受けようと、痛いだけだから。シグナムとの戦闘は、試合に負けて勝負に勝っただけだ。あれは殺し合いではなかった。シャマルの横槍の所為で正々堂々とは言い難いが、あれは”決闘”に近かった。もしシグナムが魔力を奪う云々を無しに”決闘”を挑んできて、紫電一閃とかいう技がさっきのように決まっていれば、俺は素直に負けを認めた。しかし、あいつは”戦い”を俺に挑んできた。命まで奪うつもりが無く、非殺傷設定で攻撃してきた時点でシグナムに”戦い”の勝ち目は無かった。純粋な勝ち負けを競うい合う”決闘”ならともかく、”戦い”ならば負けてやるつもりは無い。それこそ、どんな手段を使ってでも。負ける=死ぬ。それが俺の”戦い”だからだ。非殺傷を使う限り、魔導師が法力使いに勝つことは出来ても、ギアを倒すことは難しい。魔力によるダメージよりも、物理的なダメージの方が遥かに有効だからだ。極端な話、非殺傷設定で魔法攻撃するよりも、包丁やナイフで普通に腹を刺したり鈍器で頭殴った方がダメージに期待出来るということ。人類はギアを殺すつもりで戦わなければ倒せない。両者の間に横たわる『人と兵器の差』というものはそれだけ大きい。勿論、個体差や個人差というものは存在する。そう考えると、聖騎士団はギアを殺戮するプロ集団だ。そういう意味では本当に容赦が無かった。ギアを殺す場合、動かなくなるまで斬り刻み、脳を破壊し心臓を潰す。そして残った死体は焼く。このくらいは徹底していたからだ。実際、中途半端にダメージを与えた状態で放置すると、半永久的に不老不死の肉体を維持するギア細胞がたちどころに傷を癒してしまう。それだけギアは人類の敵として厄介な存在だった。魔導師は非殺傷という便利かつ覚悟を必要としないものを利用しているだけあって、自らの手が血で汚れることを嫌っている節がある。クロノは勿論、なのは達も同様だ。相手を傷つける覚悟が、殺し殺される覚悟が出来ていない。クロノは職務上殺される覚悟はあっても殺す覚悟は無さそうだ。そんな覚悟を子どもに強要したくはないが。だが、シグナム達はどうだろうか? 殺人を犯すことに覚悟はあるのか?あの時、シグナムが俺に勝つつもりで非殺傷設定を使うのではなく、殺すつもりで殺傷設定を使っていれば事態は変わっていたかもしれない。気絶くらいならしていた可能性がある。「ソル?」「なんでもねぇ」まあ、今更仮定の話をしても栓の無いことだ。魔導師襲撃事件を詳しく聞くと、地球を含めた他の複数の次元世界でシグナム達に襲われ魔力を奪われるという内容らしい。管理局の存在に気付くと逃げ出した点から、多少なりとも接点を持つ俺達にこれ以上関わろうとはしないだろう。もう二度と会うことは無い。魔導師襲撃事件も、闇の書も、シグナム達も、既に俺達には関係の無い話だ。SIDE シグナム「ぐはああああっ」眼の前に倒れ伏した男からリンカーコアを摘出し、それを闇の書に食わせる。「良し、次だ」次の獲物を求めて移動する。『シグナム、さっきからそんなペースで大丈夫? 一度休憩を挟んだ方が―――』『心配は無用だ。むしろ身体の奥底から力が漲るようだ』私の体調を気遣うシャマルからの通信。『だが、正直な話、カートリッジ無しで此処まで連戦を重ねても疲労を感じない自分が不思議でならん』『………』シャマルは何かを考えるように黙り込んだ。我らヴォルケンリッターの四人は、主が寝静まったのを見計らって地球から次元跳躍し、闇の書の完成の為に魔力を蒐集していた。ソルとその仲間達から魔力を奪えなかった以上、その分の埋め合わせはしっかりしなくてはいけない。(ソル………か。あの少年は一体どういうつもりだ?)時空管理局の介入から無事逃げ切れた後、私とシャマルは自身の身体の違和感に気付いた。ダメージを負っていない。それどころか、回復を施された上で魔力が溢れ返っている。先程言った通り、力が漲るのだ。私とシャマルにだけ。原因は不明。気が付けばこうなっていた。主に何かあったのかと心配もしたが、特に異常は見られなかった。それに、その場合はヴィータとザフィーラも同じようになる筈だった。ヴィータとザフィーラは普段と何も変わらない。先の戦闘で疲労し、ダメージを負った程度。何故私とシャマルだけが? そう思い、今日一日の行動を振り返る。そして、一つだけ思い当たる節が存在した。ソル=バッドガイ。私とシャマルは彼との戦闘に敗れ、その後意識を失っていた。眼が覚めて気が付くと、戦闘前よりも身体の調子が良く、魔力が潤沢な状態になっていた。つまり、彼が私達に何かしたということになる。念の為シャマルが調べてみたが、問題らしい問題は無かった。逆にすこぶる状態が良く、今すぐにでもソルに再戦を申し込みたいくらいに全身を魔力が駆け巡る。そのことを口にしたらシャマルに「冗談でもそんなこと言わないでちょうだい!!」と泣きつかれたので素直に謝った。『せめて今日の分の遅れを取り戻す』あの少年が何を考えていたのかは不明だ。何故、襲い掛かった私とシャマルを助けるような真似をした?何故、私達に”力”を与えるようなことをした?何故、管理局の執務官から私達の仲間と疑われていた?理由は分からない。考えても答えが出ない問いに首を振って頭から追い出す。今、ソルが私達の味方か敵かなどは些細なことだ。私達は主を救う為に戦うと決めたのだから。その為なら、どんなことにでも手を染めよう。謎の”力”も利用しよう。もう、後戻りなど出来ないのだから。決意を改めると、シャマルの指示に従って次元の海を跳んだ。一言後書きこっからヴォルケンズ側の逆襲が始まりますwww魔導プログラム体なので魔力との親和性は人体よりも遥かに高く、効率良く吸収出来るという設定です。