「ユ、ユーノか!? 生きておったのか!! 本物のユーノか!?」白髪と髭をふさふさに生やした初老が杖を振りかざして驚愕の声を上げた。「ご、ごめんなさい!! 色々あって帰ってくるのが遅れてしまいました!!!」「………皆ユーノのことをどれだけ心配したか分かっておるのか!!! おーい、ユーノが帰ってきたぞ!!」老人はかっと眼を見開くと怒鳴る。それによってわらわらと老若男女が集まってくる。全てスクライア一族か?口々に、ユーノが生きてた、心配させやがって、無事で良かったわ、と怒りながらも皆がユーノの姿を見て安堵していた。そりゃそうだ。単独でジュエルシードを確保しに行って一族を抜け出してから四ヶ月は経過している。俺はリンディ達がスクライア一族にどのような内容を知らせたのか気になって、近くに居た二十歳くらいの男を捕まえた。「おい、時空管理局はユーノのことなんつってた?」男は、俺と傍に居るなのはとフェイトとアルフを一瞥してから、鼻息荒くこう返事した。「時空管理局の奴ら、ロストロギアを探索中にそれらしい人物を発見したが結局保護出来なかったてよ。全く、子ども一人保護出来なくて何が管理局だよ」そう言うと、男はユーノの元へと小走りに向かった。ユーノは今どうなっているかというと、五体満足で帰還したことに喜ぶ者達に囲まれて胴上げされていたりする。(まずいな)俺は内心冷や汗をかいていた。スクライア一族に中途半端な情報しか行き渡らなかったのは、十中八九俺との契約の所為だ。それによってスクライア一族に要らぬ心労をさせてしまった。それだけじゃない。そもそもユーノに一緒に暮らそうと提案したのは俺だ。それもあってユーノは帰らなかった。ジュエルシードの事件解決後、俺は高町家の連中をどう説得しようかで頭一杯だったし、その後は家の増築の件で忙しかった。増築が終わると、全て一件落着したと思い込んで日常に戻っていた。せめて早急に連絡だけでもしておけば………それすらすっかり忘れてたんだけどな。ユーノに責任は無い。行方不明扱いはほぼ俺の責任だ。今更考えてみると、別にユーノの情報が公開されても支障は無かった気がする。(俺の身体や余計なこと以外は包み隠さず事情を説明する必要があるな)こちらに非がある以上、真摯な態度で話す必要がある。やれやれと溜息を吐くと、また近くに居た奴を捕まえて、自分達が何者か名乗ってから族長を呼んでくれと頼んだ。背徳の炎とその日常 4 ユーノ、里帰りをする 中編SIDE ユーノ「………つまりキミが、事件を担当した現場の最高責任者に対して情報の隠蔽を申し出たことにより、ユーノの安否が我々に伝わらなかったと、そういう訳かね?」説明が終わるまで一切喋らずに話を聞いていた族長が、重々しげに口を開いた。「そうなる」「そして今日までの間、キミの家でユーノは居候をしていたことでいいのかね?」「ああ」「………ふむ」族長は渋い顔になり、年季の入ったその顔に厳しい表情を浮かべる。ソルがジュエルシードの事件から今までの経緯を族長に説明した。ソルの身体についてとか、フェイトとアルフが犯人側(こんな言い方嫌だけど)だったことは省かれていたけど、それ以外は何一つ隠すことなく話した。「一つ聞かせて欲しい。何故、情報の隠蔽を?」顎に手を当て、長いのが自慢な髭を弄びながら族長はソルに問う。「簡単な話だ。時空管理局にいいように利用されるのを防ぐ為だ」その言葉を聞き族長が眼を細め、視線で続きを促した。「お前らには信じられん話だろうが、俺の魔導師ランクとやらは管理局の基準じゃオーバーS。妹のなのはとフェイトはAAA。詳しくは知らんが管理局内じゃ5%も存在しない実力者らしい。ユーノも妹達と互角に闘えるだけの技量は叩き込んだし、結界魔導師としては優秀だ。アルフも使い魔としての実力は並みじゃねぇ。そんな俺達の存在を知って、慢性的な人手不足である時空管理局が放って置くと思うか?」族長は黙ってソルの紡ぐ言葉を聞いている。「答えは否だ。実力があれば子どもであろうと遠慮無く戦場に投入するような組織だ。勧誘されてホイホイ入局しちまった日にゃ、毎日馬車馬みてぇに働かされるのがオチだ。最悪、危険な戦場に行かされて死ぬ可能性だってある」以前、ソルが時空管理局が気に入らないと言っていた理由の一つ。「確かに魔法主義の世界では当たり前かもしれん。子どもとは言え実力は一騎当千かもしれん。だが、こいつらはまだ”子ども”だ」子ども、というところが強調される。「まだ年端もいかない、肉体も精神も十分成長しきってない、殺し殺される覚悟も碌に出来てないような子どもに荒事をさせるような連中に、自分達の情報を与えられるか?」声には憤りがあった。ソルはよっぽど魔法主義的な考え方が気に入らないんだろう。「俺はご免だぜ。身内が死ぬのも、それに悲しむのも、誰かを憎むのもな………それが理由だ」族長から視線を一瞬たりとも外すことなく、ソルは強い意志を込めて言い切った。そんなソルの視線を受け止める族長は、今の短いやり取りでソルがどんな人物なのか見極めているようだった。やがて族長は深い溜息を吐くと、呆れたように口を開いた。「キミの言葉は一理あるかもしれないが、それでウチのユーノが帰って来ないこととどう関係するのかね?」「それについては今まで忘れていたとしか言いようが無ぇ。言い訳はしねぇ。すまなかった」そう言うと、ソルは族長に対して頭を下げた。「お兄ちゃん!?」「「「ソルッ!?」」」僕達はソルの行動が信じられなかった。あのプライド高いソルが、傍若無人で天上天下唯我独尊を絵に描いたようなソルが、決して何者にも屈さないソルが、頭を下げ謝罪しているのだ。事実を受け入れるよりも自身の眼球を疑った方が遥かに容易だった。「元々ユーノに一緒に暮らそうと言い出したのは俺だ。だから、ユーノが悪い訳じゃ無ぇ。責めるならユーノじゃなく、俺にして欲しい」「やめてよソル!! キミは僕の意思を尊重してくれただけじゃないか!! ジュエルシードの探索だって管理局が出てきてからは僕達を心配して手を引けって言ってくれた、キミ達の傍に居たいって思ってた僕を察して一緒に暮らさないかって言ってくれたんじゃないか!! キミが悪い訳じゃ無い、ただキミは僕の我侭を聞いてくれただけじゃないか!!」僕は思わずソルの両肩を掴んで頭を上げさせようとするが、ビクともしない。「どうしてキミはいつも最後に全ての責任を背負い込もうとするんだ!?」「責任取るのが責任者なんだよ」「でもっ!!」ソルは確かに僕達よりも大人だ。本当はずっと年上で、僕達の保護者で責任者なのかもしれない。だけど、ソルだけが責められるのは我慢ならない。僕はソルより弱いし、魔導師としても実力は格下だし、頭もソルみたいに良くないし、顔も身体つきも男らしくない。でも、だからと言って何時までもソルの庇護下に居るのは、キミに甘えているのは、そんなのは嫌だ。キミとは何時だって対等で居たいんだ。―――僕だって男なんだよ、ソル? 何時か必ずキミに認めてもらうって、僕は自分自身に誓ったんだよ!!!ソルが頭を上げないと分かると、僕はソルよりも深く族長に頭を下げた。「族長!! 全ての責任は僕に、このユーノ・スクライアにあります。なのはに魔法の力を与えたことも、ソル達を巻き込んで迷惑を掛けたことも、ソルの厚意に甘え続けた所為で一族の皆に心配をさせてしまったことも、魔導師として人間として男として未熟だった僕に責任があります!! どうかソルを責めないでください!! お願いしますっ!!!」「ユーノ、お前」隣からソルの視線を感じた。「キミの言う通り、確かにキミにも責任はあるかもしれない。でも、キミだけじゃない。少なくとも僕にも責任があると思う。だから、キミだけが頭を下げるなんて間違ってる」それだけ言うと、その姿勢のまま族長の判断を待った。「あ、あの、お兄ちゃんとユーノくんを許してあげてください。二人共悪気があって今まで皆さんに心配掛けた訳じゃ無いんです。お願いします」「その、ソルは何時だって私達のことを考えてくれていたんです。ただ、今回はそこまで頭が回らなかっただけで………ユーノも、特に悪いことした訳じゃないし………上手く言えないですけど、お願いします」「アタシは族長さんに偉そうなこと言えないけどさ、ソルとユーノを許しておくれよ」後ろでなのは達がそれぞれ頭を下げているのが気配で分かる。僕達は皆、揃って族長に頭を下げた。「………やれやれ。顔を上げなさい」族長の言葉に全員が顔を上げる。僕はジッと族長の眼を見つめていると、視線が絡み合う。「ユーノ」「はい」「少し見ない内に、随分と良い眼をするようになったな」「え?」言われた内容に間抜けな声を漏らしてしまう。「それに、良い友人達に巡り合えたようだ。その点に関しては、キミ達に感謝しなくてはならないな」族長が僕達全員に優しい眼を向ける。「良かろう。ソルくんの漢気とユーノの成長、そしてキミ達の絆に免じて今回の件は不問としよう」「ほ、本当ですかっ!?」「ワシは嘘を吐かんぞ、ユーノ」「ありがとうございますっ!!」僕はもう一度深々と頭を下げた。「恩に着るぜ」「ありがとうございますっ」「あ、ありがとうございます」「ありがとう、族長さん」ソル、なのは、フェイト、アルフが許してもらったことに礼を口にする。「フォフォフォフォ。だが、次は無いと思えよ、ユーノ?」「はい!! 肝に銘じます!!!」SIDE OUT族長との会談が終わり、ユーノが無事帰還したことを夕飯も兼ねて一族挙げて祝うことになった。祝杯は屋外で行う形となり、あちらこちらでテーブルが用意され、料理が運ばれてくる。俺達は快く参加させてもらった。主賓であるユーノはあっちこっちで引っ張りだこ、行く先々のテーブルで揉みくちゃにされていた。アルフは一人で先を争うかのように肉にがっついている。スクライア一族の女性陣に囲まれたなのはとフェイトは、コップ片手に談笑している。俺はそれを微笑ましく思いながら、喧騒から離れ一人になると、周囲を囲むように展開されたドーム状の”家”の群れを眺めた。遺跡を求めて流浪の旅をするスクライアは一箇所に定住しない。その為、”家”という存在は地球の遊牧民族みたいに移動式のものである。しかし、移動式と言っても転移魔法で建物そっくりそのまま移動させるので、モンゴルの遊牧民が使ってる家とは比較にならん。先程、俺達用に宛がわれた部屋なんて十畳一間の立派な客間で、ひなびた旅館よりも良い部屋だった。内部の構造は普通に洗面所とシャワールームとトイレがあり、簡易キッチンまでも備えていた。魔法文明の恩恵を受けたことと、地球よりも高い科学文明により、地球側と比べると遥かに高度なレベルのものを有している。俺達一人ずつに一部屋用意してくれたが、なのはとフェイトが『お兄ちゃん(ソル)と一緒に寝るので私達の分の部屋は構いません』とか言いやがったことにより、周囲に居た連中から非常に生暖かい眼を向けられた。その時のことを思い出して、俺は額に手を当て頭痛を堪えた。―――………外では絶対に言うな、って言ったのに。気を取り直して”家”の周りの外を見る。地平線まで草原が続いているような広く開けた場所で、その向こうには薄っすらと雲に隠れるように標高の高い山が見える。少しだけだがその山の山頂が白い。恐らく溶けずに残った雪だろう。あの山の山頂に遺跡が存在し、今はそこを調査している最中とのこと。明日になればその調査に参加させてくれるらしい。実に興味深い。今俺達が居る場所は日本の四月と同じくらいの気候と気温。湿度は若干低い。視界の奥に見える山は最低でも富士山よりは高いだろう。もうすぐ日暮れが訪れる所為か、夕日に彩られた山は幻想的な雰囲気を醸し出し、その姿は絶景だった。「どうした? お主も宴に参加せぬのか?」「………」真横から飛んできた声に振り返らず視線を向ける。スクライアの族長だった。酒瓶片手に無駄に伸ばした髭を弄りながら俺の隣に立つ。「騒がしいのは好きじゃねぇ」「ふむ、気が合うの、ワシもじゃ。どうも最近の若いもんにはついていけん。これも年か」族長は言って何処からともなくコップを二つ取り出し、一つを俺に投げ渡す。受け取ったコップに酒が注がれる。甘い、柑橘系の香り。間違い無く果実酒だろう。俺は躊躇せずに酒を煽った。「思ったよりも甘くないな?」口内に広がったのは甘さよりも酸っぱさ。炭酸に似た強い酸味と刺激。度数が高いのか、腹の中ですぐにかぁっと熱くなる。地球で言えばグレープフルーツの炭酸割りに近い。だが、酒としては非常に飲み易い部類に入る。アルコール独特の苦味や飲み難さといったものが少ないからだ。そういえば、酒なんて何時以来だろうか? とりあえず俺が高町家に居候するようになってからは一度も口にしなかった。というか出来なかった、桃子のおかげで。つーか、飲んだくれて潰れた間抜けを便所に連れて行ったりベッドに運んだり洗面器用意したりという損な役回りが多かった所為か、飲む機会が皆無だった。「フォフォフォ、スクライア一族秘伝の酒じゃ。何処の次元世界にも販売しておらん、一族にとって目出度いことがあった時のみに振舞われる酒じゃ。感謝して飲めよ」自分のコップに酒を注ぎながら言うと、一気に飲み干し、また注ぐ。俺も族長に倣ってコップを空にし、注いでもらう。「まずキミに謝っておく。ウチのユーノが色々と迷惑を掛けた。妹の、なのはと言ったか? その子に要らぬ”力”を与えてしまったようじゃな。すまなかった」「………」「それから礼を言わせてくれ。キミと妹さん達のおかげでユーノは今こうして五体満足で居る」族長は俺に身体を向き直り、頭を下げた。「何より、キミ達と共に居たことによりユーノが”男”を上げて帰ってきおった。ありがとう」「頭上げろ、礼言われるなんざ柄じゃねぇ。そもそも、さっきのはそれでチャラだったんだろ?」「む? 何のことかな?」顔を上げ、不思議そうな表情をする族長。「食えねぇ爺だぜ」俺はコップを空にすると、族長に注ぐように促した。「皆の所に戻る」と言って立ち去った族長から酒瓶一本譲り受け、そのまましばらくの間暮れなずむ美しい景色を眺めながら、一人黙って酒を飲んでいた。やがて夜の帳が下り辺りが暗くなるが、魔法の光が周囲を照らし、暗闇でも支障が無いようにされる。「お兄ちゃん」「ソル」そんな時、背後から気配がしたかと思えばなのはとフェイトが居た。「どうした? ………ん?」しかし、少し様子がおかしい。まず、顔が赤い。それから眼の焦点が微妙に合ってない。次に、重心が少しフラついている。そしてなにより、顔がマタタビを嗅いだ猫のように蕩け切っていて、手に持つ酒瓶の中から漂う柑橘系の香りと同じ匂いがする。―――まさか、こいつらっ!!!「えへへへ~♪ おに~ちゃ~ん」「ソルぅぅ~、ソルぅぅ~♪」二人はしがみついてくると、グイグイ俺の腕を引っ張る。「ちょ、待て、何処に行く気だ!?」「なのはといっしょにごはんたべる~」「ちがうよ、ソルはわたしといっしょにたべるんだよっ」「そんなことないよ、おにいちゃんたべるのなのはなんらから~」「そんなことなくないもん、ソルはわたしのほうがおいしくたべれるはずだもん」既に呂律が回ってない。言ってることが支離滅裂だ。喋ってる言葉の文法がおかしい。「と、とりあえずこんな所で喧嘩すんな、仲良くな?」「じゃあ、おにいちゃんおもちかえりします」「ということで、もってかえります」腕を引っ張る力が更に強くなり、俺は二人に引き摺られて一つのテーブルの前に連行され、無理やり座らせられる。「はい、あ~ん」「ソル、あーんしてあーん」口元に差し出される唐揚げのようなものが二つ。「いや、自分で食える―――」断ろうとした瞬間、「「ごたくは、いらないっ!!!」」「んごぉっ!?」欠片の躊躇も無く口の中に強制的に突っ込まれる唐揚げ。「シャッターチャンスッ!! いただきぃぃっ!!」声と同時にフラッシュの閃光が連続的に発生する。パシャパシャとシャッターを切る音の方向を見ると、顔を真っ赤にしたアルフがスペアリブのような肉を咥えながらデジカメを構えていた。「アハハハハッ!! このジュース最高っ!! 最高にハイってやつだよ!!!」口の中のものを咀嚼し終わり嚥下してから、それジュースじゃなくて酒だ馬鹿っ!! と言おうとした刹那、なのはとフェイトに無理やり食わされて喋れない。アルフは肉を食っては酒を飲み、高笑いを上げながらシャッターを切る。『食うか写真撮るかのどっちかにしろっ! つーか、二人を何とかしてくれ!!!』『ソルがそう言うなら食べるよ』試しに念話を送るとちゃんと返ってきたが、俺を助ける気は皆無らしい。―――誰だこいつらに酒飲ませたのはっ!? 飲み易い酒って悪酔いするんだぜ!!「あ!? おにいちゃん!!」「ソルがにげた~」俺はなのはとフェイトを振り切ってその場を離脱し、視線を巡らしユーノを探す。居た!! 顔を熟れたトマトのように赤く染めて、テーブルに突っ伏した状態で気持ち良さそうに鼻提灯膨らまして寝てやがる。マジで役に立たねぇ!!!「や~だ~、ソルがどこかいっちゃうなんてや~だ~。ずっとそばにいるぅぅぅ」「にがさないよ、おにいちゃん♪」キャピキャピ喚きながら走ってきたなのはとフェイトに捕まる。………しまった。「フハーッハハハッハッハハッハ!!! この肉は誰にも譲らないよぉぉ!!」テーブルの上で四つん這いになり、実にワイルドに肉を食い千切る姿を晒す狼形態となったアルフが雄叫びを上げ、周囲を威嚇していた。誰も盗らねぇよ。俺はまたもや二人にテーブルまで連行され、座らせられる。今度は逃げられないように、それぞれが俺の膝の上に座る。勿論、これでもかと言う程密着される。助けを求めようにも、周りに居る連中は皆完全に出来上がっていてどいつもこいつも酔っ払いと化している。俺達のことなど誰も気にも留めないどころか、視界に入れてる者が居るのかすら怪しい。(………ダメだこいつら、早くなんとかしねぇと)だが、結局どうにも出来なかった。次の日の朝。「あ~、頭が割れる~」「お兄ちゃんお水ちょーだーいー」「………気持ち悪い」「フェイト、しっかりぃ………」俺の眼の前には二日酔いでうんうん唸っている馬鹿が四人、仲良く布団の中で苦しんでいた。とりあえず、息も絶え絶えな四人からなんで酒なんてもんを飲んだのか話を聞くことにした。それらは全く呆れた内容だった。ユーノは仕方が無い。どうやら大人達に無理やり飲まされたらしいからな。完璧なアルハラだから飲ませた連中に後で文句の一つや二つは言わせてもらっても罰は当たらん。しかし、なのはとフェイトとアルフは完全に自業自得だ。なのはとフェイトは酒と分かっていながら飲んだ。酒という”大人の飲み物”に対して興味を捨て切れず、いけないと理解していながら好奇心に負け飲んだらしい。そして、実際飲んでみた感想はジュースみたいな味だったこと。これが二人を調子付かせた。果実酒は種類によっては普通の酒よりアルコール度高いのだってあるってのに。昨晩飲んだ酒はそれに該当するもんなのに。馬鹿が。四杯目が飲み終わってから俺が傍に居ないことを思い出し、二人で俺を探したとのこと。この時点で既に酔っ払っていたのだ。アルフは肉に夢中になっていて周りの話を聞いていなかったとか。ま、俺もこいつらの保護者としてしっかり監督してなかったのも悪いのだが。昨晩、酔い潰れた四人を引き摺って用意してもらった部屋に寝かせた。それぞれの顔の傍に洗面器を用意して。四人は二日酔いになると確信していたので、逆にバラバラに寝させると後始末が大変だと思ったからだ。んで、俺は寝ずの番で四人を見張り、案の定寝ゲロしそうになった奴を用意した洗面器に吐かせる。ちなみに、寝ゲロしていない奴は居ない。何度も吐瀉物を処理しながら、ふと俺は此処に何し来たのか疑問に思い、悲しくなってきた。なんでユーノの一族に挨拶しに来たら、その夜から酔っ払いの面倒見てんだよ。「やれやれだぜ」俺は深く溜息を吐いた。遺跡調査の参加は次の日に見送られることになった。後書きおおう、今回後編にして終わりにするつもりだったのに、いつの間にかシリーズ初の中編に………許してくれたまえ(ム○カ大佐っぽく)次回でユーノ帰省編は終わる筈です。ちなみに、この作品の二割はユーノくん成長日記ですwww