「契約内容の確認だ。まず一つ目、協力するのは戦力の貸与のみとすること。次に、俺達に関する情報の一切は報告しない、また、俺たちに関して詮索しないこと。三つ目、基本的にはそちらの指示に従うが、俺が従う必要無しと判断した場合は命令に対する絶対拒否権を行使させてもらうこと。五つ目、もし俺たちの中で万が一のことが起きた場合、全ての責任はそちらが負担すること。六つ目、報酬は必ずこちらの要求した通りに用意すること。最後に、後でごちゃごちゃ文句を言わないこと。以上だ」「ちょっと待ちたまえ!!!」「んだよ?」大声を上げてクロノが突っかかって来るので、面倒だが対応してやる。「二つ目のキミ達の関する情報のことで一言言いたいが、それよりも問題なのは六つ目の報酬のことだ!! 要求した通りに用意しろとか、いくらなんでも横暴だろう!!」「ていうか、ソルが今言ったことに横暴じゃない部分を探す方が難しいよ? はっきり言って無茶苦茶なこと言ってるし」ユーノがぼそっと何か言ったが気にしないことにした。「なのは、ユーノ、帰るぜ。どうやら俺達は必要とされてないようだ」「「は~い」」「言いたいことはそうじゃない!! あ、コラ、本当に帰ろうとするな!! か、艦長!! 何か一言言ってください!!!」「報酬は具体的にどのくらいのものを考えているの?」「安心しろ。それなりに現実的なものだ」「例えば?」「俺の場合は………そうだな、まず一つ目にデバイスの作り方を教えてくれりゃあそれでいい」拍子抜けした、という顔をするアースラ陣。「そんなことでいいの? デバイスを一つ要求するんじゃなくて、作り方を教えるだけ?」とエイミィ。「教本とかの紙媒体に加えて、実際に弄ったりバラしたり出来れば尚良い。本に関してはミッド語はこの艦に居る間に勝手に覚えるし、ユーノが居るからどうとでもなる」俺の言葉にあからさまにリンディとクロノが安堵の溜息を吐く。「なのはやユーノの二人はどうなんだ?」「私は別に報酬とか考えてないんだけど………」「僕は日本のお金かな? 高町家にお世話になっている以上今までの分の生活費くらいは払わないと、迷惑料とか込みで」クロノの言葉になのはが悩み、ユーノが世知辛いことを言う。「なのはは前に新しいパソコン欲しがってただろ? ユーノはこれからの生活費をそれに入れるから………二人でだいたい現金五百万くらいあれば十分か?」「「「「「五百万!?」」」」」なのは、ユーノ、リンディ、クロノ、エイミィが同時に喚く。「一人二百五十万!? 高っ!! どんなモンスターなパソコン買うつもりなのなのはちゃんは!? ユーノくんも生活費と迷惑料で二百五十万とか、普段は一体どういう生活してるの!?」テンパったエイミィが二人に詰め寄る。「ち、ちが、違います!! 私が欲しいのは二十万円くらいの今年の最新モデルのデスクトップです!!」「僕なんて日常生活ではフェレットだから食費なんて一ヶ月で一万円もいきませんよ!!」二人が慌てて弁明する。「キミのデバイスの件の方が明らかに安上がりじゃないか!!」クロノが食って掛かる。「だからだ。俺は安いがこいつらは高い。バランス取れてるだろ?」「いや、バランスとかいいから!!」「ま、くれるっつってんだからもらっとけ。金なんてあって困るもんじゃねぇし」ギャーギャー喚くクロノを捨て置き、あまりの単位のでかさにポカンとしているなのはとユーノに向き直る。「まだやるって言ってないぞ!!!」「ガタガタ抜かすな、危険手当だ。なんせ命懸かってるんだ。これでも安い方だぜ? それとも五百万程度も出せねぇのか時空管理局は? 九歳の子ども前線に立たせるってのに? この程度で出せねぇってんなら帰る」「待て!! 分かった、そういうことなら考慮するから、だから本当に帰ろうとするな!!!」「ちなみにユーロだからな」「円じゃないだとぉぉぉぉぉ!?」「さすがにそれはもらい過ぎ」「ぼったくりじゃないか」というなのはとユーノの援護射撃もあり。「せめて円にして欲しい」「ならデバイス使ってないのあるだけ寄越せ」「ていうか高過ぎる」「デバイスデータも寄越せば考慮してやる」「日本円で百万単位ならなんとか………」「この艦からアクセス出来る範囲での情報も寄越せばあるいは………」とかなんとか交渉した挙句。結局二人の報酬は現金五百万円ということになって契約成立となった。俺としてはこいつらの命は金で払える程度のもんじゃないと思ってるから、五百万ユーロくらいが妥当だと思ったんだが。背徳の炎と魔法少女 12話 Unreasonable事情聴取の後、とりあえずは高町家の面子に説明する必要があるので一旦帰宅。今までのこと、そしてこれからのことを説明したのだが、その時にまた一悶着あった。例によって例の如く恭也だ。世界が滅ぶ? ふざけるな!! 世界のことなんてその管理局とかいう組織に任せておけばいいじゃないか!! 何!? 偉そうな名前の割りには頼りない連中だから手伝ってやるだと!? そんなことよりソルはなのはをちゃんと守れるんだろうな!? とかなんとか。終いには俺も連れてけと喚き始めたので、俺は現実を教えてやる為に、仕方無しに法力ありで恭也と戦うことにした。なのはを除いた高町家の面子に初めて見せる戦闘用法力。法力を操る俺の姿に呆気に取られたような御神の剣士達&桃子。つーか、そもそも高町家の面子は俺が魔法使い(正確には法力使い)だということは知っていても、法力自体碌に見せたことなかったので、驚くなというのは酷な話だ。ユーノの正体を暴く時に、封炎剣に炎を纏わせた程度だし。そして、普段から法力を使っていない状態の俺に勝ったことの無い恭也。結果は言うまでもなく。ついでに、「遠距離からなら、なのはとユーノもお前に勝てる」と言ってやった。少し大袈裟に。結局は俺達が管理局を手伝うことを認めた恭也ではあるが、あまりの現実の厳しさに滅茶苦茶へこんでた。道場の隅っこで体育座りするとは思ってなかった。すまん恭也。強く生きてくれ。アリサとすずか、それと学校に関しては桃子に適当な言い訳を頼んでおいた。そんな経緯を経て、次の日の朝には管理局と合流した。「ディバインシューター!!」いくつもの桜色の魔弾が、ジュエルシードを取り込み凶暴化&巨大化した怪鳥に着弾する。「GIEEEEEEEEEEEEE!!」「今だ、チェーンバインド!!」怯んだところをユーノが緑色の鎖状のバインドで捕獲、そのまま絞め上げる。「GU,UUUEEE」怪鳥がもがき苦しむが、圧力がどんどん増すバインドの拘束から逃れられない。「続いて、ブレイクバースト」―――ドゴンッ!!ユーノのトリガーヴォイスと共に、怪鳥を縛る鎖が一際強い緑の魔力光を放った瞬間爆発する。それによって翼を根元からもぎ取られた怪鳥はそのまま墜落していく。「なのは、トドメだ!!」「オッケー、レイジングハート!!」<Lancer mode>デバイスを槍形態に変形させたなのはが、腰溜めに構えたレイジングハートで無抵抗の怪鳥に迫り、「落っちろぉ!!」ぶす、とその胴体を槍の穂先で貫いた。<ジュエルシード、シリアルNO,8。sealing>同時に封印されるジュエルシード。「俺が出るまでも無かったか………なのは、ユーノ、アースラに帰艦するぜ」「「は~い」」ジュエルシード集めは概ね順調だった。ソルくん達がアースラに乗艦して十日が経過した。こちら側が手に入れたジュエルシードの数は今日のを含めて計三つ。フェイトさん達に渡ったのは僅かに一つ。ソルくん達が管理局と協力する前に所持していたのが五つ。フェイトさん達も同様に五つ。クロノがこの前に回収したのが一つ。「あと六つね」「このままの調子で全部回収出来るといいんですけどね~」私の呟きにエイミィが暢気な声を出す。「そうね、このまま何事も無く終わってくれればそれに越したこと無いわね………」しかし、現実とは必ずしも思い通りになってくれない。「それよりエイミィ。あの子達は?」「なんかなのはちゃんが消化不良とかで、模擬戦するとか言ってそのまま皆連れて模擬戦ルーム行っちゃいましたよ。今日こそソルくんに勝つとかなんとか」「そう。映像出してくれる?」「了解♪」エイミィが楽しそうな声で模擬戦ルームの映像を出す。映し出されるのはバリアジャケットを纏ったなのはさんとユーノくんとクロノ、そして唯一バリアジャケットを展開していないソルくん。『今日こそお兄ちゃんに勝ぁぁぁぁぁつ!!』『おおおっ!!』『今日こそはキミに敗北を味合わせてやる!!』『………ったく、面倒臭ぇ』デバイスを振り上げるなのはさん、拳を高々と掲げるユーノくん、デバイスをソルくんに向けるクロノ、本当に面倒そうに溜息を吐くソルくん。『ルールは今までと同じ、お兄ちゃんVS私とユーノくんとクロノくんの連合チームで一対三。お兄ちゃんの勝利条件は時間内に私達全員を気絶させるか負けを認めさせるか、私達の場合は時間切れまでに誰か一人でも生き残るか、それともお兄ちゃんを気絶させるか負けを認めさせるか。これでいいよね!!』『………好きにしろ』『勝った方は負けた方に一つだけ命令が出来るっていうのも今までと同じ?』『もっちろんだよユーノくん!!』『俺が勝ったらなのはは学校の勉強な? ユーノも一緒にな。クロノは俺にデバイスルームの貸し出し許可を出す、これで構わねぇな』『上等だよ!!』『また日本語の勉強か、別にいいけど。でもどうせなら一緒に法力も教えて欲しいな』『キミは一体いくつデバイスをバラせば気が済むんだ? 既に予備のストレージはあるだけバラされたぞ。それに契約通りに、しかもキミに関しては前払いで!! 艦内にあるデバイスに関するデータは全部渡したし、その中には僕のS2Uも入ってるんだぞ。キミが弄ってないのは残すところ僕のS2Uとなのはのレイジングハートと武装局員達のだけだ。まさかそれもバラさせろとか言うんじゃないだろうな?』『ユーノにはこの前基礎理論教えてやったろうが。デバイスの方は今度は試しにいくつか作ってみてぇんだよ。安心しろ、材料は予備のバラした奴を使う』『もっと掻い摘んで教えてよ』『それなら構わないが、キミは少し遠慮とか覚えた方がいいと思うぞ』『ユーノくんクロノくん、勝てばいいんだよ勝てば。そうすればお兄ちゃんに命令出来るんだから』『………この男相手に随分簡単に言ってくれる』『あれ? もしかしてクロノは勝負する前から負けるつもり?』『っ!? そんなことは無いぞ!! 受けて立とうじゃないか!!』『クロノくんのテンションが漲ってきたところで作戦ターイム!! お兄ちゃん、少しだけ待っててね』『………ま、せいぜい足掻け』ソルくんがその場から離れ、なのはさんとユーノくんとクロノの三人が集まって作戦会議をしている。その間、ゴキゴキッと首を回してから、剣型のデバイスをビュンビュン振り回してウォームアップをして待つソルくん。『お待たせ!! 二人共、絶対勝つよ!!』『うん!!』『これ以上負け越すと、本当に僕のS2Uどころか武装局員のデバイスまでバラされそうだ』それぞれが決意を秘めた眼でソルくんを睨みつつ散開する。『じゃ、始めるか』『私が勝ったら一緒にお風呂入ってもらうんだからね!!!』『僕は一日付きっきりで法力について教えてもらう!!!』『予備のデバイスをバラされるどころか、こちらのデバイスのデータをあるだけ渡しているんだ。今度はキミの剣型デバイスを調べさせてもらうぞ!!!』『状況開始!!!』なのはさんの元気な声と共に模擬戦が開始された。荒れ狂う魔力に飛び交う閃光、爆音と共に立ち昇る火柱、吼えるような呪文詠唱と野生的な雄叫び、撃ち出される砲撃魔法と射撃魔法、爆裂する炎、展開される設置型の罠と捕縛魔法、激しい攻撃と防御の衝突。モニター越しに起こっている事実は、管理局内でも滅多にお目にかかれない程とんでもなくレベルの高い魔法戦。それが此処数日、アースラ内では毎日見ることが可能だった。切欠は些細なことだった。彼らがアースラに乗艦した初日。まず、模擬戦ルームの利用を申し込んできたソルくんにクロノが挑戦状を叩きつけた。きっとクロノのことだから、オーバーSランクの魔力値が観測されたソルくんにライバル意識が出たのだろう。『キミ達の実力がどの程度のものなのか見ておきたい』と上から目線だったが、私も他のクルー達もソルくん達の実力に興味があったので、あっさり許可を出した。そして、クロノは負けた。それはもう徹底的なまでに一方的にコテンパンに。”アースラの切り札”とまで言われたクロノは、蓋を開けてみれば僅か十分しか持たず、しかも一発もソルくんに触れずに模擬戦を終えた。その光景はクルー達にとってはまさに悪夢で、私も戦慄した。しかし、それで何かのスイッチが入ったクロノは執拗にソルくんに勝負を挑むようになった。それこそ一日に何度も何度も………その度に惨敗していたが。そんなクロノの姿に影響されたのか、なのはさんとユーノくんもそれに参戦。ソルくんと一対一での勝負を申し込み、それぞれがボッコボコにされていた。よく三人ともあれだけタコ殴りにされても、数時間後には平気な顔して再チャレンジしているから謎だ。これが若さか。『バンディットブリンガー!!』『ぐわぁぁぁぁっ!?』『やられたか!?』『ユーノくん!!』『………ま、まだまだぁぁぁぁ!!!』『………マジか? 手加減したとはいえ根性ついたな、ユーノ』『キミのおかげで根性だけは無駄についたよ、今度はこっちの番だ!!』『ちっ!!』何時の間にか勝ったら相手に一つ命令出来るとかいうルールも付随していた。一日に何度も何度も、それこそデバイスやミッド語に関する勉強する合間を縫うように模擬戦しなければいけなくなったソルくんは、ついに「一人ひとり相手にすんのも面倒だ、まとめてかかって来い」と言った。それが四日前のこと。その日以来、三人はそれぞれの長所を引き伸ばしつつ短所を補うようにフォローをしながらコンビネーションを重視して戦うようになる。『邪魔だ』『がっ!?』『クロノくん!!』『なのは、動きを止めないで退がって!!』しかし、それでも結果は変わらず。模擬戦を終える度にボロ雑巾のようになった三人が医務室に運ばれていった。かと言って何も得るものが無かった訳ではない。三人の動きは模擬戦をする度に良くなっていき、日増しに強くなっていることが眼に見えて分かった。信じられないスピードで成長している。でもやっぱり結果は変わらず。三人共誰もが羨む素晴らしい才能を必死の努力で磨き上げて強くなってはいるが、ソルくんが異常なまでに強過ぎる。圧倒的なパワーと火力、右に並ぶものなど居ないと言わんばかりの接近戦、明らかに一対多に慣れた戦い方、まるで全方位が見えているような対応力、無駄な動きが一切無い回避行動、無尽蔵の魔力と体力、一瞬で間合いを詰める瞬発力、なのはさんの砲撃魔法をものともしない鉄壁を誇る防御魔法。雨あられの如く降り注ぐ弾幕を掻い潜り、自身を捕縛しようとする魔法を全て炎で潰し、防御魔法をあっさり突き破る攻撃を繰り出す。そして何より一番気になるのが、彼の使う魔法がミッド式ではない、全く未知の技術の魔法だということ。彼が魔法を行使する時にどうにも違和感があると思ったら、私達が普段使っている魔法とは似て非なるものらしい。その力の名は『法力』。彼だけ唯一バリアジャケットを展開していない理由はそこにある。ソルくんは魔導師ではなく『法力使い』。似たような防護服は着たことはあっても、そういったものを魔力で構成すること自体経験が無いらしい。だからこそ彼はデバイスの作り方を要求したのかもしれないが、彼程の実力者であればデバイスにバリアジャケットを展開させなくても、自身の実力のみで十分な気がする。実際ユーノくんはデバイス無しでバリアジャケットを展開している。それとも他に何か意図でもあるのかしら?法力について詳しい話を聞かせてもらいたいが、契約内容にある通りソルくん達に対して詮索しないと約束した以上、こちらから教えてもらうことは出来ない。主にユーノくんが教えてもらいたがっているが、ソルくんはあまり積極的に教える気は無いらしい。近接を主とした戦い方から、ベルカ式に近いのではないかと推測されるが、詳細は一切不明。それだけではない。彼は数日でミッド語をマスターし、暇な時間を見つけてはデバイスを弄繰り回したり、デバイスマスターの教本を読んでいたり、オペレーターの席を勝手に占領してデータベースを漁っていたりしていた。戦いに関しても知能に関しても天才的としか言いようが無い。何処まで何でも出来るのこの子?『ディバイィィィン―――』『タイラン―――』「………ソルくん達、管理局に入ってくれないかしら」『バスターァァァァ!!!』『レイブ!!!』「艦長もソルくんに模擬戦挑んでみたらどうですか? もし勝ったら管理局に入れって命令するんです」『うそ!? 押し負けっ…きゃあああああああああ!?』『なのはぁぁぁぁぁぁぁ!!!』私はエイミィの言葉を聞いて思案してみるが、モニターが爆音と共に炎で真っ赤に染まるのを見て、「………遠慮するわ」深々と溜息を吐くのだった。「今日も先越されちまったみたいだね」「………」ご主人様はアタシの言葉に応えず、ただ虚空を見つめていた。恐らく、いや、きっと確実にほんの十数分前には此処にジュエルシードが存在していたのだろう。残留魔力で分かる。そして、同時にフェイトを心配してくれてるアイツも居た筈だ。フェイトはただ無表情に踵を返すと、アジトに向かって飛び立った。アタシもそれについて行く。ソル達が時空管理局に協力している。それは確認するまでもない。アタシだけではあるが、ソルからほとぼり冷めるまで出てくるなと言われたんだ。きっと、自分を餌に管理局の眼がアタシ達に向かないようにしてくれてるんだろう。何よりもフェイトの為に。その心遣いがアタシには感謝してもし切れない。でも、アイツの想いにフェイトは気が付いていない。それがもどかしい。そう思うと、アタシは黙っていられなくなった。「ねぇ、フェイト」「何?」無機質な感情の込められていない声。いや、溢れ出そうな感情を押し殺そうとしているという感じが近い。「もう、ジュエルシードを集めるのやめようよ?」「っ!?」フェイトは急停止して振り返り、怒ってるような悲しんでいるような、迷っているような顔をする。アタシはフェイトにそんな顔をさせてしまった自分自身にイラつきながら言葉を続けた。「もう潮時だよ。時空管理局が出てきた。これ以上続けるとロストロギア不法所持で逮捕される。アタシはフェイトの為なら自分がどうなったって構わないけど、このままじゃフェイトが犯罪者になっちまうよ」「でも、母さんが」「それに、ソルもフェイトが犯罪者になったら悲しむよ」アイツの名前を出した途端、フェイトが泣きそうな顔になる。卑怯だけど、フェイトがアイツに向ける感情を利用させてもらおう。「今ならまだ間に合うよ。管理局に集めたジュエルシード持ってって、これまでのことを話そう? そうすれば見逃してもらえるかもしれないし、ソルと敵対する必要だって無いよ」「ソル………」フェイトの表情に迷いが色濃くなる。しかし、「………ダメだよアルフ。私が此処で投げ出したら母さんの為にならないし、きっと私の為にもならない」アタシのご主人様は想像以上に頑固者だった。「アタシはただ、フェイトに笑って、幸せになって欲しいだけなんだ。なんで分かってくれないんだい? 此処最近、フェイトが笑ってる姿見たこと無いよ」「ごめんね、アルフ」謝りながらアタシの頭を撫でてくれる。どうしてフェイトはあの鬼婆にここまで肩入れするんだろう? フェイトに対して冷たくて、理不尽な命令して、酷いことまでするような女なのに。赤の他人のソルの方がよっぽどフェイトのことを大切に思ってくれるのに。フェイトの使い魔なのに、アタシは何も出来ない。それが何よりも悔しい。(なんとかしておくれよ………アタシには無理だよ………ソル)無力なアタシは、此処に居ない人物に縋るしか出来なかった。後書きタイトルの意味を調べてもらえると、今回の話がより深まるかも?