管理局地上本部の防御システムは、魔力障壁と物理隔壁の二重システム。甲羅に篭った亀の如き堅牢な守りであり、生半可なことで突破するのは非常に難しい。襲撃側であるソル達は、この二つの防御システムを何らかの方法で無力化する必要がある。定石を列挙すれば、予め内部に侵入しておきシステムを統括する施設を破壊するなり、クラッキングによるサイバー攻撃を仕掛けたり、などだ。しかし、今回はあえてその方法は取らない。自分達がいかに規格外で非常識であるか知らしめてやる。『おいソル。どうするつもりなんだ?』通信越しにゲンヤが探るような口調で質問する。「まあ見とけ」ソルは自信満々にいつもの不敵な笑みで応答すると、近くに控えていたはやてに視線を向けた。「はやて、出番だ」「そうなん?」こっちにおいで、と手招きする我らがリーダーの傍まで「何やろ?」と可愛らしく首を傾げながらはやては歩み寄る。手が届く距離まで近付くのを待ち、ソルは彼女の肩に手を回し軽く抱き寄せ、クラナガンに聳え立つ摩天楼を指差しながら短く指示を出す。「魔力障壁を展開しているシステムが、過負荷掛かりまくってオーバーヒートするくらいに派手なの、頼めるか?」「もし上手くいったらご褒美くれる? だったらええよ」期待が込められた眼差しを受け鷹揚に頷く。「ああ、約束だ」「えへへ、約束やからね」頬を染め、蕩けた表情を浮かべ、はやてはソルの傍を離れる。それから背に魔力で構成された黒い二対の翼を顕現し、「ほな、派手にぶちかましてくる」膝を屈め、爆発的な脚力による跳躍に合わせ飛行魔法を発動。カタパルトから射出されたかのような勢いで地上本部を見下ろせる高度に僅か数秒で達すると、左手に夜天の魔導書を、右手にシュベルトクロイツを構えた。一度瞼を閉じ、自ら視界を遮ることによって視覚以外の感覚を研ぎ澄ませ、意識を集中させる。「フルドライブ」リミッターを外すと同時に普段とは比べものにならない魔力が身体の奥底から解き放たれ、歓喜の声を上げるようにして溢れ出す。足元には古代ベルカ式を意味する三角形の魔法陣が浮かび上がり、高まる魔力に呼応して輝きを増す。「ドラゴンインストール」更に此処で、リンカーコアが長年吸収し続けたソルの魔力――ギアの力――を使うことにする。全身の血肉が、細胞が一つ残らず強大な“力”に満たされていく。リンカーコアが疼く。胸の鼓動が高まり、身体が火照ったように熱い。性的興奮にも似た高揚感と、神にでもなったかのような全能感がはやての精神を支配し、耐え難い破壊衝動と闘争本能が湧き上がってくる。自分の身体が、知らない何かによって侵食されているような感覚を覚えた。だが、それは決して不快ではない。むしろ快感だ。今の状態こそが自然であり、普段の制限を掛けた状態こそが不自然だと思えるくらいに。白銀の魔力光が血のように紅く染まり、古代ベルカ式の魔法陣を包むようにして円環法術陣が発生。「遠き地にて、闇に沈め」呪文を唱える。魔法が発動し、術式は構成された内容の通り、現実世界に術者の意図を顕す。夕暮れだった空が一瞬で夜になりクラナガンは闇に包まれた、と勘違いしてしまう程に巨大な暗黒球が上空に出現したのだ。空一面が全て黒。そう表現せざる得ないくらいに、大きい。世界の終焉がやって来たかのような、悪夢の如き膨大な魔力の、破壊の塊。「デアボリック・エミッション――エクステンド!!」その暗黒球が、はやての声に合わせて落ちてくる。超巨大な闇が、世界を覆い尽くす夜が地上本部目掛けて降ってきた。そして、耳元で雷が発生したかのような轟音を伴って、暗黒球が地上本部をドーム上に覆っている魔力障壁と衝突。超々規模の魔力と魔力が鬩ぎ合い、稲妻にも見える閃光が空間を駆け巡り、余波が暴風を生み出し荒れ狂う。「ハハハハハハッ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!」はやてが可笑しさに耐え切れず、口を大きく開けて哄笑する。彼女の眼には、自身の魔法の力に地上本部が小癪にも抵抗しようとしているように見えるからだ。それが堪らなく笑いを誘う。――我を一体誰と心得る? 火竜の隣を歩む夜天の王ぞ。王を前にして愚民の癖に頭が高いわ! 愚民は愚民らしく、地べたを這いずるようにして頭を垂れろ!!これまで散々違法研究を影で行ってきた地上本部に襲撃を掛けること、フルドライブに加えて擬似ドラインを使ったこと、ソルから直々に頼まれた上に後でご褒美が待っていることに、はやての心は色々な意味でアクセル全開、テンションマキシマムだった。まるで上から圧し掛かる重さに耐え切れずぺしゃんこになる卵のように、魔力障壁が完膚なきまでに粉砕され、霧散した。「なんて無茶苦茶な方法を取りやがるんだ馬鹿野郎!?」第108部隊が保有する指揮通信車の傍から肉眼で確認した光景に、ゲンヤは頭を抱えながら通信先のソルに文句を言ったが、相手は澄まし顔である。『相手側の戦意を喪失させる効果もあるぜ』「そりゃそうだ! あんなもんをいきなりぶち込まれたら誰だって戦う気なんて失せるわ!!」魔力資質を持たない一般人の意見を言わせてもらったが、魔導師からだろうと同じセリフを言うに違いない。ただでさえ地上は本局と比べて魔導師の平均ランクが低いのだから、高ランク魔導師でも尻込みするレベルの実力者が放った空間広域攻撃に、地上の魔導師達はなす術も無い。尻尾巻いて逃げるのが懸命だと思う。『ゲンヤがそこまで言うんなら効果絶大みたいだな。よくやった、はやて』『わーい! ご褒美ご褒美!!』『コラ、くっつくな。後でにしろ、後で』 じゃれついてくるペットのような態度のはやてに対して、落ち着くように言い聞かせるソル。ゲンヤは通信先の和気藹々とした様子に、コイツら超余裕だなぁ、緊張感なんて欠片も無いように見えるなぁ、と呆れていたらソルが全部隊に指示を飛ばす。『こちらソル=バッドガイ、全部隊に告ぐ。これより突入を開始しろ。当初の予定通り、無抵抗な者、抵抗出来なくなった者は片っ端からヴェロッサに送りつけて脳内査察を受けさせろ』各部隊から『了解』という返事が来て、数秒もしない内に全部隊全隊員に指示が行き渡る。『行くぜ野郎共、思う存分ぶちかませ』『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっっ!!』あちらこちらから待ってましたと言わんばかりに地鳴りのような雄叫びが上がる。なんとも頼もしい鬨の声だろう。その声のほとんどが管理局員達で、しかも本来ならば襲撃される側の地上本部――今日の陳述会を警備すべき者達だ。契約者達の草の根活動が実を結んだ結果、これまで管理局が隠蔽してきた真実を知った彼らは、“Dust Strikers”と共に戦うことを決意してくれた。(現場で働く若い連中が、こぞってこっち側に来てくれたってことは喜んでいいんだよな?)魔導師達はそれぞれが手にしたデバイスを高く掲げ、空戦魔導師は空を飛び、陸戦魔導師は装甲車両やヘリに乗り、地上本部に突撃していく。「私も行ってくるわ」既に隣でセットアップを済ませたクイントが静かに言うので、ゲンヤは身体ごと向き直り、ただ黙って頷き送り出した。始まったそれは、戦いと呼称するよりも狩りと呼んだ方が正しいと言わざるを得ない情景だ。先のソルとゲンヤのやり取りのように、警備に当たっていた魔導師達はほとんど抵抗することを許されなかった。はやての一撃で絶対防御と信じて疑わなかった魔力障壁が消滅し、茫然自失になっているところを攻め込まれ、挙句の果てに敵対しているのが今日共にこの場を守護するべき仲間と知れば、混乱している内にとっ捕まってしまっても非難することは出来ない。指揮管制室も警備担当の者達同様に大混乱している。飛び交う怒号と悲鳴、矢継ぎ早に上げられる悪い報告、抵抗虚しく無力化されていく警備、次々に捕虜として囚われる局員、突破される防衛ライン、展開した瞬間ぶち抜かれる緊急防壁。管理局始まって以来、これ程までに圧倒的力量差による迅速なアタックを受けたことなど無い。戦略も戦術もまったく感じさせない、純粋な力押し。しかし管理局史上この上なく恐ろしい強大な力押しだった。「魔力障壁、オーバーヒートによりシステムダウン、復旧不可能です!」「何故此処を守るべき魔導師が襲撃してくるんだ!?」「本局から緊急通信、こちらと同様に襲撃を受けています。敵は、嘘だろ!? 聖王教会騎士団と次元航行部隊、“海の英雄”だって!?」「クーデターか!?」「ええい、本局は後回しにしろ、地上を攻めてきているのは何処のどいつだ!」「現在判明しているのは、航空隊と陸士隊を含めた武装隊、救助隊といった他の隊、そのほとんどの部隊から今日失踪した者達だと考えられます。そして、それらを率いているのが“Dust Strikers”、“背徳の炎”です!」「あの戦闘狂の集まりか!!」「魔力値Sランク超えが多数発生……もうダメだ」「いけません、どんどん防衛ラインを突破されて……もう間も無く此処に来ます!」「退避、退避!」一人が逃げろと喚き走り出す。それを聞いた者達が持ち場を一斉に離れた時、集団心理が働き易い人間は誰もが我先にと足を動かすこととなる。だが、誰も逃げることなど出来なかった。出入り口となる扉が外から強力な物理攻撃によってぶっ飛んだと思ったら、大量の魔導師が一気に雪崩れ込んできたのだから。「無駄な抵抗はやめて大人しくお縄につけ。そうすれば命の保障だけはしてやる……くけけけけけ」ドヤァ、と悪役面で実に楽しそうな表情でアイゼンを振り回すヴィータに付き従いながらスバルは思う。この人達の本業は賞金稼ぎなんかじゃなくて本当はテロリストなんじゃないのだろうか、襲撃がやけに手馴れてるよ、と。脅しを掛ける姿があまりにも様になっていて。哀れな局員達を縛り上げると、運送班がやって来て数珠繋ぎになった彼らを連行していく。連行された先で待っているのは査察部が担当する尋問。そこで何か後ろ暗いことを隠していないか確かめるのだ。稀少技能“思考捜査”を保有するヴェロッサは大忙し。程なくして「こちら第二特攻隊長ヴィータ、指揮管制室を制圧した」と報告し、数名に此処を任せたと指示すると、ヴィータはスバルに振り返ってニカッと元気に笑う。「よーし、次行くぞ! 次!」現在、公開意見陳述会に用いられている時空管理局地上本部の中央議事センターに存在する大会議室は、出入り口の扉が全て隔壁によってロックされ、袋のネズミと化していた。通信妨害はされていないので完全に外界との情報のやり取りが断たれた訳では無かったが、そんなことが出来ようと出来なかろうとあまり関係はない。この会議室に居る自分達を守るものは存在せず――強いて挙げれば自分達を閉じ込めている隔壁がそれなのが皮肉だ――救助は呼べないし呼べたとしても誰も来ない、来れないのが分かるだけなのだから。外の状況は無残の一言。敵の圧倒的戦力を前に地上本部の警備はズタボロ。そもそも襲撃側のほとんどが警備を担当する筈の者達。情報が筒抜けだったとか以前の話、単純に警備する側の人間の数が少な過ぎた。次元世界史上に残る大規模なクーデターと称してもよさそうな事態を前にして、会議室内はパニック寸前。冷静に事態を受け止める一部の者達を除いて、誰もが口汚く罵るように喚き合っている。大抵の内容は“背徳の炎”率いるDust Strikersや、彼らと協力関係を結んでいる一部の管理局員達と聖王教会、そして彼らに寝返った(ようにしか見えない)管理局員達に対する罵倒。見苦しいことこの上ない、蜂の巣を突いたような有様を前にして、レジアス・ゲイズ中将は黙したまま何もかも諦めるように瞼を閉じた。来るべき時が来たか、と。やがて、室内で口を開いていた者全員を黙らせる衝撃が――まるで工事現場で杭打ち機を地中に叩きつけるような轟音と共に発生。建物そのものが巨人の一撃によって揺さぶられているかのような、局地的な大地震にも似た震動である。それは隔壁によって閉ざされた出入り口の扉から生まれる音。音が轟いたそこは、何かの冗談みたいに大きく膨らんでいた。否、膨らんでいるように見えただけで、本当は外部から常軌を逸した圧力が掛かったことによって鋼鉄が歪んでいるだけ、と気付くのに時間は要らなかった。正常な形ではなくなった分厚い隔壁が、内部に向かってゆっくりと倒れ、耳障りな音を伴って床に転がる。そして――皆が固唾を呑んで注目する中、長身の男性が無遠慮に、実に堂々とした立ち居振る舞いで入室してきた。若い、二十代中盤くらいの男だ。獲物に狙いを定めた猛禽よりも鋭い真紅の眼が、室内を睥睨する。踏み出す度にゴツゴツと重い音を鳴らす赤いブーツに、特徴的な額の赤いヘッドギア。バリアジャケットは白を基調としていながら全体的に赤が強い印象で、男の大柄で鍛え抜かれた肉体を包んでいる。黄色い紐のようなリボンで腰まで届く黒茶の髪を後頭部で束ね結ったヘアースタイル。首元から垂れ下がったネックレスのようなそれはデバイスで、鎖で繋がれた赤銅色をした歯車の形だ。左の手に握られているのは、鍔元が大小様々なギミックで複雑な構造をした大剣。次元世界において、最凶にして最悪と呼び声高い賞金稼ぎ“背徳の炎”、ソル=バッドガイその人だ。彼の登場により、耳が痛い程の静寂と息苦しさを覚える異常な緊張感が会議室を満たす。肌で感じるその圧倒的な存在感と威圧感は、自分達よりも遥かに高い領域に座す別種の生き物――しかも気性が荒い肉食獣――が放つ特有のものであり、皆が彼へ畏敬の念を抱く。生存本能が理性に必死になって警鐘を鳴らす。決して眼の前の化け物に逆らうな、反抗すれば命は無い、と。誰も声を出せない。もし何か口にすればこの場で即刻灰にされてしまいうという妙な確信と、いつまでこの状態が続くのかという底知れぬ不安が徐々に空間を支配する。まさしく蛇に睨まれた蛙、いや、敵意を迸らせる火竜の前に立たされた無力な人間の群れだ。時間にしてみれば僅か数秒。だが、気が触れてしまいそうな、いや、いっそのこと触れてしまった方が楽になれるとすら感じられる数秒の後、彼が漸く口を開く。静かでいながらよく通る、有無を言わせぬ口調で厳かに、「掃除だ、テメェらをな」短くそう言った。逆らう者、抵抗する者、異を唱える者、口答えする者などは誰一人として存在しなかった。したくても恐怖に慄き出来なかった、が正しいか。控えていた部下達によって暴れることが出来ないように手を拘束され、数人が纏まった数珠繋ぎとなって連行されていくのを見送りながら、ソルは床に座らされ大人しく連行されるのを待つ身となったとある人物に歩み寄る。近付いてくる彼に気付いた者達が身を硬くして怯える中で、目的の人物だけが分かっていたかのように落ち着いた態度で視線を向けた。レジアスである。ずんぐりと中年太りした体格を持つ『地上の守護者』を値踏みするように見下ろす男と、大剣を肩に担いだ賞金稼ぎを何か諦めた視線で見上げる男。暫しの睨み合いの末、ソルはこれ見よがしに「ちっ」と舌打ちしてから、苦虫を噛み潰したような表情で眉を顰めつつ問う。「結局テメェは何がしたかったんだ? 何が欲しかったんだ?」見損なったとばかりの視線と口調に耐え切れず俯き、レジアスは唇を噛み締める。肩が小刻みに震え、弱々しい嗚咽が喉の奥から零れ落ちる。「儂は――」自分は何がしたかったのだろう? 何が欲しかったのだろう?問われた内容を反芻する。すると、悔恨の念と尽きない疑問が次々と浮かんでは消えていく。どうしてこうなってしまったのだろうか? いつから間違ってしまったのか?親友と共に守りたかった世界は、夢見た正義は、欲しかった力は、一体何処へ行ってしまったのか?考えても分からない、記憶を探っても明確なものが見えてこない、どんなに後悔しても過ぎてしまった時間は元に戻らない。「テメェ……!!」なかなか答えない、答えようとしない、誰もが納得する答えを持たないレジアスに、ついに我慢の限界が訪れたソルが彼の襟首を乱暴に掴み、左腕一本で半ば宙吊りにするように強引に立たせた。「父さん!!」傍に居たオーリスが父を思って悲痛の声を上げる。周囲がざわつき、部下が慌てて止めに入ろうとしたが彼の怒気に当てられ尻込みした。紅蓮の魔導師から滲み出す殺気が、動かそうとしていた手足を凍りつかせてしまう。今の彼を止めることが出来るのは、彼を畏れない身内の人間と親しい仲間だけだろう。だが、生憎と此処に彼らは居なかった。「答えろ。テメェの望みは、正義は、手に入れようとした平和は、違法研究に手を染めて、親友や不特定多数の人間を犠牲にしなきゃ手に入らない程ご大層なもんなのかよ!?」「ぐっ、うぅ」締め上げられ苦しみ始めたレジアス。しかし彼は一切抵抗しようとはしない。これは罰だ、いずれ来るだろうと覚悟していた断罪の時がやって来ただけなのだから、自分はこれを甘んじて受け入れるべきなのだ。許しを請うつもりは無い、許してもらえるなど微塵も考えていないし、許して欲しいとも思わない。自分はそれだけのことを――守りたいと思って突き進んだ結果、余計な悲しみを生み出してしまった――犯した。だから、むしろこの時を待ち望んでいた。自身を断罪することが可能な、強大な権力すらいとも容易く踏み潰し、どんなに深い闇にも屈することのない太陽のような輝きと力を持つ、絶対的破壊者の存在を。この男になら、人間という生き物が抱える闇を憎むこの男になら、殺されるのも悪くない。――これでやっと楽になれる……ゼスト、今、そっちへ逝く。全身から力を抜き、瞼を閉じて覚悟を決めたその刹那、「お前の気持ちが俺には痛い程理解出来る。だが、そこまでにしてやってくれバッドガイ。そんな奴でも、レジアスは……俺の友だ」死んだ筈の友の声が鼓膜を叩き、思わず瞼を開き声が聞こえた方へ眼を向ける。そこには、忽然と姿を見せたゼスト――自分の所為で死んでしまった親友――がソルの肩に優しく手を置き、ゆっくり首を横に振っている、そんな光景が飛び込んできた。「クソが……」と忌々しそうに吐き捨ててソルは手を放し、苛立たしげにその場を離れ、何処かへ行ってしまった。解放され尻餅をついたレジアスは息苦しさを忘れ、大きく眼を見開き信じられないという眼差しでゼストを見つめている。「久しぶりだな。レジアス」「ゼスト、なのか?」「ああ。一度は死んだ身だが、お前の不甲斐無さを見ていられずあの世から舞い戻ってきた」穏やかな表情でかつての親友が頷く。「わ、儂は、今お前が戻ってきたおかげで、死に損なって、しまったぞ……ど、どうしてくれる」喉が上手く動いてくれず震えた声を絞り出すが、言いたいのはこんなことではない。もっと他に言いたいことが、言わなければならないことがたくさんある。眼の前のゼストが幻でも構わない、地獄から迎えに来た死神だろうと気にならなかった。もう二度と会うことは出来ないと、死んでも顔向け出来ないと思っていた人物に会えたことが、とてつもなく嬉しい。「ゼスト、ゼスト」涙が堰を切ったように溢れ出てきて、止まることを知らない。視界がぼんやりと歪んでいくのを感じながら、レジアスは赤子のように這いずってゼストに近付く。「許してくれとは言わん、だが、せめて謝らせてくれ……すまん、儂が間違っていた、儂が、どうしようもないくらいに愚かだった!!」慟哭が響き渡る。罪を認めた男の、心からの謝罪。「フッ。俺が言いたかったことは全てバッドガイに言われてしまったから、もう俺にはこれしか言えん」眼を細めゼストは苦笑すると、片膝をつきレジアスと視線の高さを合わせて静かに告げた。「罪を犯したからと安易に死を選ぶな。罪の意識があるのなら、俺と共に生きて贖ってくれ……俺を残してまだ逝くな、レジアス」こうして二人は数年ぶりの邂逅を果たした。薄暗く人気の無い、長い廊下で壁に背を預け、ソルはやれやれと溜息を吐く。レジアスとゼストのやり取りを離れた場所でサーチャーを用いて監視していた彼は、肩の荷が降りたとばかりに空間ディスプレイを消しサーチャーを止める。「ピエロか俺は……馬鹿みてぇだ」自らの行動を省みて、自嘲。心配する必要など無かったではないか。確かにゼストはソルと似たような境遇ではあったが、根底の部分で決定的に違う。そんなことなど初めから分かり切っていたではないか。(結局俺は奴を許せなかった。そして奴も許されることを善しとせず、俺に殺されることを望んだ)もしそうじゃなかったら、自分達も今のレジアスとゼストのようになれたのだろうか?一度頭の中に浮かんだ考えをそんな馬鹿なと切り捨て、あり得ないと首を横に振って脳内から叩き出す。叩き出した理由は、かつての奴とのやり取りの所為だ。――『戦士が必要なのだよ。百年の戦歴に、旧時代の叡智を持ち合わせた真の強者が』――今更、綺麗事をっ!!――『憎め。その憎しみがお前を鍛え上げる。暫しの別れだ、フレデリック』そして、五年後。――『いける。今のキミならば、“バックヤード”の調律でも適応出来るだろう……戦士となったね、フレデリック』――……貴様が、俺をそうしたんだ。結局何から何まで利用されていた。復讐を遂げる為に行ったありとあらゆる戦いが、原動力となった感情も、だ。“あの男”に向ける純粋な憎悪と殺意ですら、奴にとっては計画の内でありソルは手の平の上で踊り続ける優秀な駒としての役目を知らず担わされていた。「下らねぇ……!!」急に胸がムカムカしてきた。イラつく。自然と眉を顰めてしまう。燻っていた憎悪が再燃し始める。ギリッと奥歯を噛み締め、封炎剣を握る手に必要以上の力を込め、ドロドロとした黒い感情を抑制しようと試みる。どうしてこんなに不機嫌なんだ?どうしてこんなに気分が悪い?どうしてこんなに!!!――あの二人が羨ましいんだ!?自覚してしまった感情は、紛れもない嫉妬という負からなる醜いものであった。あの二人は過去の因縁を清算する可能性を持っていて、それと比べ自分達にはもう不可能であることが悔しいのだ。当時のソルにはかつての親友を殺すことしか考えられなかった。それ以外のことは頭に無かった。自分が人間を辞めてしまった直接的な原因は誰だ? 何故アリアは死んだ? どうしてこの手でアリアの成れの果てを何度も殺さなければならなかった? 聖戦によって何十億人もの人間が死んだ原因は? ジャスティスを造り聖戦を勃発させたのは一体誰だ?そもそも自分自身ですら全く許せなかった男が、どうやって全ての元凶を許せというのだ!? 否、許していい筈がない!!ソルにとって奴を殺すことが戦う理由であり、生きる意味であり、目的であり、贖罪であり、過去に囚われた己の運命に決着をつける為の手段だったのである。だから殺したことに後悔はしていない。おかげで全てが終わってくれた。百五十年以上続いた因縁と、それに付随していたその他諸々も。しかし、最も信頼していた親友を殺したことには変わりない。裏切られて、憎んで、利用されて、最後に殺した……それでも“あの男”はソルにとって友だった。どんなに恨んでもその事実はいつまで経っても変わらない。また、相手もそうだった。親友を裏切り、憎まれ、利用し駒扱いして、殺される程恨まれていたとしても“あの男”にとってソルは誰よりも頼りになる親友のままだった。――『……お兄ちゃんは、“あの男”と仲直り、したかった?』以前なのはに問われた言葉が脳裏を過ぎる。(本当は……したかったのかもしれねぇな)許せなかったけれど、殺さなければならなかったけれど、封炎剣を振り下ろす前に仲直りくらいはしておけば良かったかもしれない。そうすれば今みたいに悩み苦しむ必要は無かったかもしれない。ほんの僅かな時間でいいから、昔のように。(何を、今更)奴は、笑っていた。最期の瞬間、菩薩のように慈悲深くとても穏やかな微笑を浮かべて、ソルのことを優しい眼差しで見て、『フレデリック』と本名で呼んでから言った。――『生きろ、“背徳の炎”よ』大罪人が最期に遺した言葉は、親友に生きていて欲しい、という意思を示したささやかな願い。その願いを叶え続けているつもりは毛頭無いが、ソルは自らの死を望まず生きている。死を望まず生きてきたからこそ、今がある。それ故に大切なものを再び手に入れることが、取り戻すことが出来た。生きていようが死んでいようがこんなにも自分を悩ませてくれる存在は、後にも先にもきっと奴だけなのだろう。これ以上ないくらいに鬱陶しくて不快だと思うのに、どうしても忘れられない。そんな自分自身が少し腹立たしい。もし、あの時許せていたのなら、奴は一体どんな表情をして、どんな反応を見せただろうか?(野郎のことだ……鳩が豆鉄砲食らったような驚いた面見せてから『ありがとう』とか言いそうだ)あり得る筈のない妄想が湧き上がってきて、唇を歪ませ苦笑する。せめて今だけは、たとえ妄想の中でも奴を許してしまってもいいと思えてしまう。そのくらい感傷的になっていたのを自覚しないまま、ソルは仲間達に呼ばれるまで瞼を閉じ、暫しの間一人静かに佇んでいた。クロノの『本局制圧完了』の報告を受けると、ソルは地上本部をなのは達に任せ、誰も連れずに転送魔法を発動し本局へ向かう。「なんか問題あったか?」「特に無いな。むしろ楽だったよ。レティ提督が今日まで頑張ってくれたおかげでね。そっちだってそうだったろ?」ソルに問いにクロノは手をヒラヒラさせて答え、訊き返す。人事部所属という立場を最大限利用して信頼出来る人材を片っ端から説得し続け、ほとんどの局員を“海”、“陸”問わずこちら側に引き込めたのは彼女の手腕によるところが大きい。勿論、彼女だけではなく他の契約者達も貢献していたのは言うまでもない。「逆に言えば、管理局は俺達が予想していた程腐ってなかった訳だ」「あくまで現場で働く者と一部の高官を除いては、と付けなければいけないのが悲しいが」うんざりと肩を竦めたクロノと共にソルは本局の最奥部へと歩を進める。彼らが向かっている先は、本来ならば存在し得ない場所であり、入ることも許されない空間だ。ドゥーエの情報を基にして今日初めて進入を果たした最高評議会へ続く道のり、のようなもの。そこは結界魔法の一種で、現実世界と微妙に位相がズレている隔絶された世界。その最奥に最高評議会が待ち構えていると聞く。「長いこと局員やってるが、本局にこんな空間があるなんて知らなかった」「百五十年以上前の旧暦から続く時空管理局の最高機密にして最高意思決定機関。その実態が生体ポッドの中に浮かんでる人間の脳みそだってんだから、確かに表沙汰には出来ねぇな。何処の悪の秘密結社だ? 最近の特撮ヒーローでももっとマシな設定使うぞ」少々不満気に訴えるクロノにソルが呆れたように応じる。「何だお前、そういうの好きなのか? 見るのか、特撮ヒーロー?」意外にもクロノがソルの言葉が気に掛かったのか食いついてきた。「ウチの連中、この手の娯楽が好きでな。風呂上りに皆で見てることあんだよ……何故か知らんがわざわざ俺の部屋で」「いいじゃないか別に。僕だって子ども達と一緒に見るぞ、たまに。結構話が練り込んであって面白いし、大人でもはまったりするって聞くし」何だそういうことか、ソル本人がはまってる訳じゃ無いのかと納得。「見るのは構わねぇが、その後デバイス振り回して魔法使って『ごっこ遊び』に興じるのはやめて欲しいと切に願う」「……デバイスと魔法の使用は流石に」頭痛を堪えるように額に手を当てるソルの態度に、クロノはとびきり酸っぱい梅干を食べたかのような顔をした。「しかし悪の秘密結社か。言い得て妙じゃないか、次元世界を管理という名で征服してくれるわ、みたいな?」「皮肉で言ったつもりだったが、局員がそんな納得の仕方すんのもどうかと思うぜ、俺は」「まあ気にするな。お前と出会った僕だからこそ今のセリフは言えたんだ。感謝してるよ」「礼言われるなんざ柄じゃねぇ。やめろ気色悪い」軽口を叩き合いながら奥へ奥へと進んでいけば、やがてこれまでよりも広大な空間に出る。壁も無ければ床も無いし、天井だって無い。数メートルごとに足場となる床とでも言うべき薄っぺらい板のようなものがポツリポツリと浮いている程度。なんとなく雰囲気が無限書庫に似てる、と二人は同じ感想を抱く。「魔法使って飛べってか?」「移動用の装置か何かがあるって言ってなかったか? というか、どうして案内役にドゥーエを連れてこなかったんだ?」彼女は一時期、最高評議会の生命維持装置をメンテナンスする仕事を潜入時にしていたらしい。目的は諜報活動による情報収集と暗殺の為だ。しかし、何を血迷ったのか当初の目的をほっぽり出し、Dust Strikers設立時から食堂のおばちゃん兼寮母として働いていた。「ドゥーエが俺の近くに居るとアインが不機嫌になんだよ。お前だって知ってんだろ、アインが不機嫌になるとどうなるか」破壊衝動と闘争本能を有するギアになった所為か、それともソルの記憶を転写した所為か、はたまた細胞提供者のソルの性格に引き摺られているのか不明だが、アインは『夜天の魔導書』だった頃と比べ非常に気性が荒く、激しい性格だ。敵に対してはすぐに「殺す」とか「死ね」とか平気で言うし、実際怒ると天変地異が起きるくらいに大変である。そうならないように手綱を握るのがソルの役目なのだが、流石に他者の好き嫌いは矯正出来ない。アインが嫌っているのはあくまでドゥーエで、彼女がソルの傍に居ようとすること。しかし、なるべく彼女の機嫌を損ねないようにドゥーエが近く居ないようにすることは可能だ。好意を寄せられているが、ドゥーエの気持ちに応える気など皆無。これがフェレット形態のユーノだったり子犬形態のザフィーラだったりフリードだとしたら、『こいつらは俺のペットだから別にいいだろうが』と言い聞かせるところであるが。「あいつは俺の半身みてぇなもんだし、切っても切れねぇ関係だ。そんなアインがドゥーエを何故嫌うか分からんが、他の連中と一緒にこれから先何百年も傍に居てもらう俺としては、我侭の一つや二つ聞いて多少の不便を被るくらいどうってことねぇよ」それを聞いてクロノは微妙そうな表情で首を傾げる。「アインの気持ちを優先したっていうのは理解したが、本来優先すべきは彼女一個人の感情じゃなくて目的を確実に果たす為の手段なんじゃないか?」組織の上に立ち部下に指示を出す役職のクロノらしい発言だ。「正論言われると返す言葉も無ぇが、幸い今回の件は予めドゥーエから情報を提供してもらってたからな。あいつの機嫌を損ねず、特に支障が出なければ文句は言わん」フッ、と鼻で笑ってソルは飛行魔法を発動させ先に進む。彼に倣いながら、なんだかんだ言ってソルは家族を溺愛してるということを頭の片隅に留めておく。暫くの間、二人で他愛のない雑談に興じながらフヨフヨ飛び進んでいくと、視界の奥からぼんやりと光を放つ三つの生体ポッドが見えてくる。雑談を打ち切り頭を切り替え、生体ポッドから五メートル程度離れた距離で停止した。『話には聞いていたが、改めてこうやって間近で見ると、こんなのにいいように使われてた管理局に問題が無い訳無いな、と言わざるを得ない』『違いねぇ』表情こそ変わらないが、念話にて内心の苛立ちを隠そうともしない“海の英雄”に“背徳の炎”は冷笑を浮かべ同意を示す。『何だ貴様らは? 何故此処に? どうやって入ってきた?』肉声ではない合成音声が二人の鼓膜に響く。恐らく眼の前のポッドに浮かぶ脳みそが放つ電気パルスを機械が読み取り、外部との意思伝達を行っているのだろう。そう考えればカメラや集音マイクのようなものもあって、こちらの様子をリアルタイムで撮影し、信号として脳みそに送り込んでいるから接近に気付いたのだろうか。きっと味覚と触覚と臭覚は無くて、機械に視覚と聴覚を頼っているのだ。まあ、脳みその生体ポッドライフなど興味無い。ある程度のコミュニケーションが取れればそれでいい。前に数歩分進み出て、クロノが先程の質問を無視する形で口を開き、問う。「僕は時空管理局本局、次元航行部隊所属のクロノ・ハラオウン提督です。あなた方が時空管理局の最高評議会で間違いないですか?」一応、自分が身を預ける組織の最高権力者(だと思う)ではあるので敬語だ。『いかにも』『いくら“海の英雄”とはいえ此処に入る許可は持たない筈。誰の手引きで此処に居る?』『ふむ、“海の英雄”か。噂は聞いている』三つの合成音声がそれぞれ反応し、最終的な確認が済む。すると単刀直入に切り出した。「一人の局員として、あなた方から直接お聞かせ願いたい。何故、人造魔導師計画や戦闘機人計画を違法研究と理解していながら影で推し進めていたのですか?」「……」クロノのやや後方にはソルが腕を組んで無言のままポッドに厳しい視線を注ぐ。沈黙が両者の間に横たわり、生体ポッドが内部で立てるポコポコという泡の音だけが場を支配する中、程なくして三つ並んだポッドから順に合成音声が響いてくる。『我らが求めるは、優れた指導者によって統べられる世界。我らがその指導者を選び、その影で我らが世界を導かねばならん』『その為の生命操作技術、その為の“ゆりかご”』『旧暦の時代より、世界を見守る為に我が身を捨てて長らえたが、もうさほど長くは保たん』二人の顔が徐々に険しくなっていくのに気付いていないのか、それとも気にも留めていないのか分からないが更に続く。『だが次元の海と管理局は、未だ我らが見守っていかねばならん』『そんな我らに朗報があったのは数年前の戦闘機人事件でだ』『ソル=バッドガイ。貴様の存在だ』いきなり名前を呼ばれたが、ソルは半ば予想していたのか驚きはしない。が、とても嫌そうに眉根を寄せる。『全身の細胞がリンカーコアと同じ機能を持つ生物などどんな次元世界でも存在し得ないが、もし存在するのならば貴様の遺伝子データはこの世の何よりも価値がある』『そう。貴様の遺伝子は、我らが求める優れた指導者を生み出す苗床に相応しい』『しかしジェイルは当時から貴様の遺伝子データを入手するのは不可能だと抜かしおる。役に立たん奴よ』我慢の限界は自分達が思っていた以上に早く訪れた。「もういい!!」「黙れ……!!」いとも容易くキレたクロノが最高評議会の言葉を遮るように絶叫を上げ、ソルが底冷えする声音で唸る。思わず二人は顔を見合わせてしまう。何なんだこいつら……? 一体何様のつもりなんだろうか?彼らに対する怒りと嫌悪感で頭がどうにかなってしまいそうだ。自分の都合でしかものを考えない傲慢。いかにも自分達は世界の為を思ってやったと言わんばかりで、悪いことなど一つもしていないという狂った価値観。よりにもよって違法研究を憎むソル本人の眼の前で遺伝子データが云々と漏らす傲岸不遜な態度。全てが腹立たしい上に、その思考に吐き気がしてきた。そもそも状況を理解していないのだろうか? こちらがその気になればいつでもポッドを破壊出来るのに、へりくだったり卑屈な姿勢を見せようともしない。こちらの姿が視えている筈なのに、声が聞こえてる筈なのに、まるで遠く離れた世界の住人と通信しているような、眼の前に存在しているのに認識されていないと思わせるリアクションだ。もう逃げられないと覚悟を決めたのか? いや、それあり得ない。そんなものは全く感じられない。しかし不安も抱いていない様子。あるのは、自分達が絶対に正しいと信じて疑わない、根拠の見えない過信。やはり脳だけだからだろうか。こちらの表情を、抱いている感情を読み取れないのか? ポッドの中で暮らす生活が長過ぎて生存本能が、生物なら当たり前に持っている危機管理能力が欠落しているとしか考えられない。……こいつらは、ダメだ。何がダメなのか分からないくらいダメだが、一刻も早くこの世から消し去ってやらなければならないことだけは確か。実際に世の中の為にならないことは証明されたし、こんなものが存在していること自体が哀れであり、悲劇だ。塵も残さず消してやる、とソルが法力を発動させようするよりも一瞬早く、クロノが足元に魔法陣を展開し、デバイス――デュランダルを構えた。「クロノ?」「ソルは手を出すな……これは僕が、管理局の人間がつけなくちゃいけないケジメなんだ」クロノから滲み出す怒りと殺気を傍で感じ取りソルが動きを止める。『貴様!? 何のつもりだ!!』『まさか我らを!?』気付くのが致命的なまでに遅い。「うるさい黙れこの老害共!! 大人しく話を聞いていれば全く悪びれもせず次から次へと碌でもないことばかり並び立てて、次元世界はあんたらの思い通りになる箱庭なんかじゃない!! 百五十年以上も生きてる癖して人の人生を人形遊び感覚で弄ぶな!!!」デバイスをステッキのように振り回し、淡い水色に光り輝く魔力光が空間を迸る中、クロノがこれまで溜め込んでいた激情を一気に吐き捨てた。「悠久なる凍土、凍てつく棺の内にて、永遠の眠りを与えよ」呪文の詠唱と共に周囲の気温が急激に下がっていく。此処ら一帯を生体ポッドや生命維持装置などと纏めて氷漬けにすると察したソルが飛び退くように後方へ離脱。『や、やめろ!!』『自分が一体何をしようとしているのか分かっているのか!?』『おいソル=バッドガイ! 黙って見ていないでクロノ・ハラオウンを止めろ!! 我らは管理局の最高意思決定機関だぞ!!』今更になって命乞いをし、あまつさえソルに助けを求めるという醜態を晒す最高評議会に、クロノは容赦も躊躇も無く渾身の力で魔法を発動させる。「凍てつけ、エターナルコフィン!!!」鈴が鳴るような澄んだ音が、リンッと静かに響き、そこは絶対零度の凍った空間に早変わり。瞬く間にポッド内部の水分が凍りつく。それによって固体化した水分の体積が膨張し、容器を満たしていた液体だった頃と打って変わってポッド内部は加圧される。徐々に大きくなる内圧に耐えるポッドがギシギシ軋む音。その数三つ。音の発信源に向かってクロノは無言で魔力弾を一発ずつ撃ち込む。水色の射撃魔法が着弾すると、耳障りな音を伴ってポッドは内部から破裂するように崩壊し、中身は勿論、原形を留めず粉々になった。大量の氷の破片が光を乱反射し、薄暗い空間を彩ったが、散り様が美しいだけにその光景は酷く虚しい。後に残ったのは、ポッドを載せていた台座だけだ。「……」「……」居た堪れない沈黙が二人を包むように降りてきて、場を満たす。諸悪の根源は消えた。全てが終わったように見えたが、達成感も無ければこれっぽっちも嬉しくないし、喜ぶ気にもならなかった。代わりに胸の内に去来するのは、溜息を吐きたくなる遣る瀬無さだけ。かといっていつまでもこうしている訳にもいかない。ソルは口を噤んだまま微動だにしないクロノの肩に手を置き、言う。「戻るぜ」そう声を掛けても彼は動こうとしなかった。俯き、前髪で顔の上半分を隠して、弱々しく言葉を紡ぐ。「僕は、こんなことをする為に管理局に入ったんじゃない」感情を必死に押し殺す、震えた口調。「僕の魔法は、僕の戦う理由は、こんなことの為に――」「分かってる」最後まで言わせいようにソルは強引に遮ると、クロノの正面に回り込んで彼の項垂れた頭の上に手を置き、やや乱暴に撫でた。ツヴァイやエリオ、キャロやヴィヴィオが泣き喚いた時にそうするように。完全に子ども扱いだったが、実年齢なら二百前後離れているのでソルにとってクロノはまだまだ坊やだ。それに、振り払われることはなかった。「クロノ。さっきお前が言ったように、誰かが最後に落とし前をつけなきゃならなかったんだ。嫌な役を、な……俺がやろうと思ってたが、結局お前がやってくれた」すすり泣く声が、嗚咽を堪える音が聞こえてくる。それをなるべく聞かないようにしながら、「絶望してもいいが、諦めるな。お前は間違っちゃいねぇ、俺が保証する……だから前を見ろ、今のお前はそれでいい。前に言っただろ」まるで父親が息子を諭すように、そう告げる。そんなソルの態度が、クロノの記憶の奥底に眠っていた実父のクライド・ハラオウンを想起させた。普段忙しい父が珍しく帰ってきた時に、仕事で疲れているとよく理解していなかった当時のクロノが構って欲しくてちょっとした悪戯をしたら、母のリンディにこっ酷く怒られて、その後父にごめんなさいと謝り悪戯はもうしないと約束した時を。あの時も、こんな風に頭を撫でてもらっていた。とっくの昔に妻子持ちになった一家の大黒柱でありながら、親に甘える幼い子どもみたいで恥ずかしいと心の何処かで思う。だけど、「安心しろ、誰にも言わねぇ。落ち着くまでこうしててやる」声質が似ている所為だろうか? 口調もセリフも記憶の中の父とは全く違うが、何故かこの瞬間だけソルが父と重なるのだ。だから、今だけは、頭を撫でてくれる父のような大きな手に感謝した。管理局を地上、本局共に制圧し最高評議会を始末した、という報告を受けたグリフィスは足早に会議室へと向かう。向かう先に待っているのは、スカリエッティ、クアットロを除いたナンバーズとルーテシア親子などの関係者と、ツヴァイ、エリオ、キャロ、ヴィヴィオを含めたソルの子ども達。彼らは襲撃に参加させてもらえなかった組。もっと正確に言えば何もさせてもらえないハブられ組。子どもは当たり前だが、ナンバーズが戦線に加わることをソルが嫌ったのである。理由としては単純明快で、戦闘機人計画などの違法研究に手を染めていた管理局を粛清するのに、戦闘機人を投入するのはおかしい、とのこと。ドアを開ければ一斉に視線が自分に集まる。が、それに構わずこの場に居る全員に先程受けた報告をそのまま伝えた。スカリエッティは特に思うことはないらしく、至極当然のこととして受け流す。これは皆同じだったようだ。事前に決まっていたことが決まっていた通り成されたのだ、と。唯一、ヴィヴィオだけは何のことか分からず首を傾げていたが。「私達は、これからどうなるのですか?」その時、ナンバーズの一人、セッテが平坦な口調でポツリと零す。「以前からこれまで疑問に思っていたのです。罪を犯した者は管理局にその身柄を拘束され罪を償う、稼働時間が短く何もしていない者は更正プログラムを受講し自由を得る、それは分かっているのです。ですが私達は戦闘機人、戦う為に、人を殺す為に作り出された兵器。生体兵器として生きていけないならば生まれてきた意味は無いと考えます。そんな“生”に人間社会で生きていく価値があるのでしょうか? 人間の中で暮らす私達兵器を、世間は認めてくれるのでしょうか?」これからの生活や未来に不安を抱き口にした、といった感じではなく、純粋に彼女は問いを投げただけなのだろう。機械のように感情の色を見せない少女の眼と表情がそれを証明していた。そして、彼女の言葉は図らずも他のナンバーズ全員の不安を浮き彫りにする形でもある。最初期に稼動していた者達はそれなりに割り切っているようで渋面になる程度だったが、後発組は不安になってしまったのか視線を泳がせてしまう。いきなりこんなことを聞かされたグリフィスも、何処かでそういうことを察していたらしいスカリエッティも、かつて犯罪者を取り締まる側だったメガーヌも、誰も何も言えない。どうにかしてこの空気を吹き飛ばし場を明るくせねば、と頭を高速回転しようとした刹那、セッテの前にある人物が進み出て、彼女の両手を両手で握り、こう言った。「私が初めてお父さんに出会った時、お父さんは私に言ってくれました。『生きる価値の無い奴に、生まれてくる理由は無い』って」キャロだ。「意味が無いなんて、もう二度と言わないでください。価値が無いなんて、絶対に誰にも言わせません。たとえセッテさんが自分の出自に絶望して、世間から白い目で見られたとしても、私達はセッテさんの、あなた達の味方です」いつになく真剣な眼で、セッテを真正面から見つめつつ心の底から訴える。「確かに戦闘機人は戦う為に生み出された兵器です。ギアとして改造されたお父さんもアインさんも同じです。けど、それが一体何だっていうんですか? たかがその程度で何を馬鹿なことを。生まれた理由が生きる理由になるのは『道具』だけ、でも『人間』は違うんですよ」「……」「『人間』は自分が好きに選んだ理由で生きていいんです。『私達』“も”『あなた達』“も”『人間』だから、ただ一生懸命生きているだけで生きる価値なんて後からついてくるものなんです」「ただ、生きているだけで?」呆然としたようにキャロの言葉を反芻するセッテ。その無感情な表情に、初めて戸惑いのようなものが浮かぶ。「しかし、そうは言っても、私には人間として生きていく理由がありません。戦闘機人として生まれ、生きてきた私には……その場合、私はどうやって生きていけばいいのですか?」すると、キャロは夏に咲く向日葵のような満面の笑みで教えてあげた。「理由が無いならこれから探せばいいじゃないですか。すぐには見つからないと思いますけど、皆一緒だからきっと大丈夫ですよ。ね? エリオくんもツヴァイもそう思うでしょ?」突然話を左右に振るキャロであったが、エリオとツヴァイはそれが最初から分かっていたかのように頷き、微笑んだ。「ヴィヴィオも、ヴィヴィオもいっしょだよー!!」仲間外れは嫌なのか四人の中にヴィヴィオが『ソ竜』片手に飛び込んできて、キラキラ輝く宝石にも勝る光を放つ眼で、無垢な笑顔を振り撒く。「そうだね、ヴィヴィオも一緒だよ」「当たり前ですぅ」「ルーテシアもおいで」「え? 私も!?」「ホラ、早く!」「ちょちょ、ちょっと」エリオに半ば引き摺られるようにしてルーテシアも加わった。初めは驚き恥ずかしがっていたが、輪に加えてもらったことが何故か嬉しくなってきて、自ずと笑う。その様子をメガーヌが微笑ましそうに眺めている。そして、子ども達の暖かい笑顔につられるようにして、ぎこちないが確かな笑みをセッテが見せてくれる。それはスカリエッティや他のナンバーズですら初めて見る、彼女の笑顔だ。「……ありがとう」兵器としてではなく、一人の人間として。戦闘機人達は、今日になって全員が漸く『人間』として生まれ変わった。背徳の炎と魔法少女StrikerS 最終話 FREE新暦75年9月12日、公開意見陳述会当日に時空管理局の地上本部と本局を同時に襲撃する形で行われた『内部粛清』は、後に“9・12事変”と呼ばれることになる。次元世界に決して小さくない波紋を生み出したが、あくまで同じ組織による『内部粛清』でありクーデターではないので――詭弁に聞こえるかもしれないが――幸い世界間同士での余計な争いを勃発させることはなかった。当然この件によって公表された事実に民衆は管理局を見る目を一変させ、多少なりとも混乱を招き、度々抗議デモやそれに準ずる問題も起きてしまう。しかし、クロノの思惑通りその度にDust Strikersが次元世界を駆け巡り、睨みを利かせていたおかげで死傷者が出るような最悪の事態には陥らず、加えて『内部粛清』を行った側の契約者達によるマスメディアを用いた説明も功を奏したことで、時間が経過していく内に不平不満はあるものの不承不承といった形で民衆は落ち着いていく。管理局とその局員達はどうなったかというと。ヴェロッサの査察の結果、捕縛された局員の中で黒だった者達――つまり不正や何らかの犯罪に関与したいた連中は、一人残らず犯罪者の烙印を押され豚箱行き。然るべき裁きを待つ身となる。余談ではあるが、この為にレアスキルを使いまくったヴェロッサは、全てを終えると真っ白に燃え尽きた灰のようになってしまうが、後日、最も『内部粛清』に貢献した人物であるとソルから評価された。局員は大分減ってしまい、また今回の事件で管理局を辞める者達も少なからず存在した。人手不足に拍車が掛かるが嘆いても仕方が無いので、残った局員は愚痴を垂らしながらも抜けた穴を埋める為に四苦八苦する破目に。まあ聖王教会がこれを全面的にバックアップした甲斐あって、多少ではあったが緩和したらしい。因果応報、と評するには何の罪も無い局員達には酷だろう。消えた最高評議会の代わりになるものは、結局立ち上げられることはなかった。伝説の三提督はどうか? という意見もあったが、ソルとしてはどうしても彼らが優秀であり適任だとは思えなかった。確かに昔は素晴らしい功績を残し次元世界に貢献したかもしれないが、彼らは今回の事変が発生する直前まで最高評議会のこともレジアスの違法研究のことも何一つ情報を持っておらず、完全に蚊帳の外で何もしてこなかった。形的にはソル達の尻馬に乗っただけ。そんな名実共に『お飾り』な老人共に任せて大丈夫なのか? ならもっと若くて意欲があって暑苦しいくらいの正義感がある奴に任せた方が無難だと思うぞ? という発言が切欠になり、紆余曲折を経て評議会制は廃止になった。ていうかなってしまった。「いや、あんま俺の意見を鵜呑みにするなよ?」あくまで一つの意見として出したつもりのソルを放置して、クロノやリンディ、レティ、ゲンヤ、カリムらがどんどん話を推し進めていった結果である……もう二度と迂闊な発言はしないと心に決めた。たまにゴタゴタは起きたものの、次元世界は概ね平和を維持していた。そしてゆっくりと時間が流れ、年が明け、やがて四月の下旬が訪れる。それはDust Strikersを設立して丁度一年が経過し、ソル達“背徳の炎”が賞金稼ぎとしての活動に一区切り打ち、『休業』に入る日が到来したことを意味していた。「一年前と比べて随分増えたな」ソルは一年前の設立日にした挨拶の時と同じように皆を少し高い位置から見下ろせる場で、卓上マイクを前にして感慨深げに呟く。“9・12事変”以来、管理局を辞めた者の中にはDust Strikersで働くことを希望した者が多数現れた。賞金稼ぎの集団と名乗っていたが、その実態は何でも屋と人材派遣会社を足して二で割ったような存在だったので、再就職先としてはなかなか良い所に映ったらしい。元々デスクワークをしてくれる人間が少ない職場だったので、グリフィスを筆頭としたオフィス連中にとっては嬉しいことであり、まだ次元世界が慌しかったのもあって戦闘可能な元武装隊や元捜査官などの受け入れを拒否する理由も無かったのだ。数は当時のざっと三倍。一年前は管理局から出向中の者や、寮母兼食堂のおばちゃんを含めても五十より多くて百に満たない組織が、今は三百に届きそうだというのだから驚きである。本当は前のように演説だか何だかよく分からん真似などしたくはないのだが、何も言わずに姿を消すのもどうかと散々周りから言われ、結局折れて現在の状況に至った。彼のやや後ろには他の面子が横一列になって並んでいる。端から順に、アイン、なのは、シグナム、フェイト、シャマル、はやて、アルフ、ユーノ、ヴィータ、ザフィーラ、という風に。もう既に彼らは別れの挨拶を一人ひとり済ませており、最後の締めとしてソルを残すのみとなったのだ。こういうのは苦手だし慣れてないし、やりたくない類のものなのだが、これで最後だと割り切れば覚悟も決まる。そもそも一度前にやったんだから、それを思い出せばどうということはない。「ちっ、しゃあねぇな」舌打ちと溜息が卓上マイクを介してスピーカーから発せられこの場に集まった全員に聞こえてしまうが、気にしない。というか、此処に居る人間にはとっくにソルという人間がどんな人物か知れ渡っているので、誰も気にしないだろう。意を決して口を開く。「こういうのは柄じゃねぇし、湿っぽいのは鬱陶しくて嫌なんだが、お別れの挨拶ってやつみてぇだ」一度区切り、全体をゆっくり見渡してから続ける。「俺から頼みたいのは一つだけ。戦う理由を見失わず、初心を忘れないことだ。初心を忘れちまった管理局上層部の所業を知ってるお前らなら大丈夫だと思うが」正義の為、平和の為、大いに結構。戦う理由としては申し分ない。しかし、戦う理由は決して何をしてもいいという大義名分でもなければ、免罪符でもない。道を踏み外してしまった時の言い訳に使ってもいけない。それは絶対に許せない。「組織ってのは、大きくなればなるほど個人の意見を尊重しなくなる。上からの命令には逆らえず、大きな歯車を動かす為に一つの歯車としての役割を果たさなきゃなんねぇ。そういうもんだと理解はしているが、俺は生憎命令すんのは面倒臭ぇし命令されんのは嫌いだ。だからこそDust Strikersは個人の意思を優先し、緊急時を除きあえて命令系統を曖昧にして管理局みてぇな部隊を作っていない。無理強いはせず、あくまでも個人の意思と判断、価値観で戦って欲しい。黒いものを黒いと言えない、守りたいものを守れない組織なんて糞食らえだからな」だったら自分達は最初からこう宣言するだけだ。Dust Strikersは個人主義者で、犯罪者が気に入らないから戦う、と。「もしこのDust Strikersが道を踏み外したなら、今度は此処が潰される番だ。そん時はそれなりの覚悟を決めておけよ……俺が直々に叩き潰してやる」冗談でもなんでもなく戦闘時のように真剣な眼差しで睥睨するソルに、皆は恐れ多いと言わんばかりに背筋を伸ばす。彼らの様子を確認し満足気に頷くと、ソルも背筋を伸ばし、締め括る。「これで本当に最後だ。縁があったら、また何処かで会おう……今まで世話になった……ありがとう」一歩退き、感謝を込めて一礼する。するとそこら中から拍手が巻き起こり、音の大洪水となって空間を埋め尽くす。顔を上げたソルは、一仕事やり遂げたと言わんばかりに溜息を吐き、穏やかな表情で「やれやれだぜ」と微笑んだ。こうして一つの事件が発端となって始まったソル達の戦いは、一時的に幕を閉じる。また、以前のような海鳴で送っていた平穏な日々に戻るのだ。しかし、彼が、彼と共に生きる彼らが歩みを止めることはない。何故なら、彼の贖罪は彼の中でまだ終わっていないのだから。いつの日か、再び剣を手にするその日まで一休みするだけ。それまで――「あばよ」その後、それぞれがどのような道を歩んだのか、少しだけ見てみよう。「僕はあの人達みたいに戦えない。けど、あの人達が残してくれた意志を継いで、僕は僕なりに戦うことが出来る」グリフィス・ロウラン管理局から出向中の身であったが、本格的に籍をDust Strikersに移し、名実共にそこの最高責任者に。後にルキノと結婚を前提とした付き合いを経て、結婚。夫婦揃って仲良くDust Strikersを経営していくことになる。「あっ、私も師匠って呼んでいいですか?」シャリオ・フィニーノ元の所属の本局に戻る。それから暫くして、執務官試験に合格したティアナの補佐官として働くようになる。また、マリエルと共にソルが経営するデバイス工房にちょくちょく顔を見せてはその技術を盗もうと躍起になる迷惑な冷やかしと化す。「貴重な経験したっていうか、濃密な時間を過ごせました!!」アルト・クラエッタDust Strikersで事務要員として働いていたが、事変の当時ヘリの操縦をしていたことが切欠となり、以後は事務仕事ではなくヘリの整備と操縦に従事。ソル達が去った後は本格的にヘリパイロットとしての道を歩み、後にヴァイスと共に地上本部に籍を落ち着かせヘリパイロットとして暮らすことに。「まさか此処で結婚相手に巡り合うなんて思いもしませんでしたよ。申し訳無い話ですけど、此処に来る前は荒くれ者の集団だって勝手に妄想してましたから」ルキノ・リリエ本局所属ではあったものの、付き合い始めたグリフィスの傍を離れない為に本局へは戻らず彼の補佐として働き、彼と同様に籍をDust Strikersに移す。濃い面子ばっかり集まっている賞金稼ぎ達に囲まれながら、忙しくも充実した日々を送る。「感謝してるけど、絶対に旦那には礼は言わねぇ」ヴァイス・グランセニックソルと仲違いをしたまま結局仲直り出来ず――そもそも互いに仲直りする気が無い――最後まですれ違う度に睨み合って舌打ちし合う関係だったが、妹のラグナとは早々に仲直りしていたらしい。まともに向き合えなかった期間を埋めるように愛情を注ぎ、立派なシスコンへと変貌。“背徳の炎”の連中に触発されたのか、それともソル個人に触発されたのか不明だが、アルトと共に地上本部でヘリパイロットとして働きながら、返納していた武装局員資格を再取得。武装隊の緊急任務で指名を受ける際には積極的に赴くとのこと。「師匠、そろそろ私を本当の弟子にしてくれてもいい頃合だと思います」マリエル・アテンザ戦闘機人に関する知識と技術を研究、応用し彼女達の主治医を担当することになる。シャーリーと共にソルの工房に来訪しては大量のデバイスを購入し、本局に持って帰ってはバラして解析するのが趣味となる少し困った人物だ。「まだまだ若い子には負けないわよ!!」クイント・ナカジマこれを機に局員を辞職。が、主婦として家事に従事するだけでは物足りないと感じ、後にシグナムが経営する道場で師範代として働くことになる。シューティングアーツの腕前も局員だった頃と比べメキメキ上げていき、スバルとギンガが二人がかりでも全く敵わないくらいに強くなる。ついにはソルから「本当にこいつは人間なんだろうか?」発言を受けてしまう。恭也に次いで二人目である。聖王教会の騎士団にも相変わらず顔を出し、シャッハと楽しく殴り合ったりしている。元の関係に戻れたメガーヌとはよく連絡を取り合って家族ぐるみで遊ぶ。更正プログラムを終え出所したチンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディの保護者となり、毎日楽しく過ごしながら娘達と共に家庭のエンゲル係数を上昇させていく。「畜生。ソルの野郎、お膳立てするだけして上手く逃げやがって」ゲンヤ・ナカジマ地上本部上層部の大半が居なくなってしまった所為で一番苦労した御仁。事変の功労者であることと、“背徳の炎”と契約を結んでいた人格者というのもあって周囲から押し上げられるようにして一気に昇進し、無理やりレジアスの抜けた穴を埋める形のポストに就かされてしまう。彼としては望んだ昇進ではなかった。仕事が増えて忙しくなるし、何より家に居られる時間が減るし、と。先のセリフをよく愚痴として零す。せめてもの抵抗としてティーダを巻き込み、彼を自身の補佐にする。クイント同様ナンバーズの正式な保護者となり、仕事に行けば忙しく家に帰れば騒がしい日々に振り回される破目に。「ゲンヤさん。愚痴を吐く暇があったら口じゃなくて、書類を見る眼球とデータ入力する手を動かしてください」ティーダ・ランスターゲンヤのとばっちりを受ける形で彼の補佐官を務めることになるが、本人は予想だにしていなかった昇進に嬉しい様子。ティアナの執務官試験合格を嬉しく思いつつ、自分も負けていられないとこれまで以上に意欲的に働く。周囲の人間や仕事の仲間からそろそろ結婚を考えたらどうだと言われるが、まだ本人にその気は無いし、相手も居ない。せめてティアナに良い人が現れたら、と思っているがそんなことよりまずお前が所帯持って身を固めるのが先だろ、とよく酒の席でゲンヤから突っ込まれる。しかしウチの娘の中で誰かどうだ? とは言われない。「あの時僕は一生分働いた気がするから、もう働きたくないというのはダメかな?」ヴェロッサ・アコース事変においてレアスキルを使いまくった所為でぶっ倒れるが、割とすぐに復活し、元の本局所属のお気楽査察官に戻る。のんびりマイペースに仕事をこなし、たまにサボッてはシャッハにどやされる日常。趣味のケーキ作りの延長なのか、ちょくちょく色んな人達の所へ顔を出しては差し入れをして帰るということをしており、皆から個人的に人気が高い――特に甘いものが好きな連中から。しかし相変わらずチャラいので、本気で付き合おうとする女性は未だに現れない。「ダメに決まってるじゃないですか、このお馬鹿! そういう甘ったれたセリフは、ソル様みたいに百五十年以上戦ってから言いなさい!!」シャッハ・ヌエラ更正プログラムを終えたセインとセッテを引き取り、彼女らの保護者となり教会シスターとして育成していく。殴り合い好きは変わらず、同じ趣味を持つ者同士でつるんでは殴り合う、といったこれまでの教会シスターライフに戻る。「聖王教会のシスターは基本的に暴力シスター」とはソルの言であり、本人は否定しているが皆その通りだと勘違いさせているのは全部彼女の所為。カリムの補佐をこなす傍ら、次世代の教育に熱心に取り組んでいる。「お仕置きなら外でお願いしますよ、シャッハ」カリム・グラシア元の生活に戻りつつ、更正プログラムを終えたオットーとディードを引き取り、二人の保護者になる。レアスキルの預言はあくまで参考程度のものと考え、未来に踊らされないように今を生きると決め、教会騎士として勤めを果たす。ナカジマ家やハラオウン家、そして“背徳の炎”のような幸せ家族をこれまで何度も目の当たりにしていた上、グリフィスとルキノが付き合うという話を聞いて、そろそろ私も女の幸せを掴みたいなと内心思うようになるが、生憎と出会いが少なく、良い人が見つからない。「折角信頼されてるんですもの。その信頼に応えなきゃ燃やされちゃうわ」レティ・ロウラン事変によって管理局がこれまでに無い深刻な人手不足に陥って、一番頭を悩ませた人。その時に教会から人手を貸してくれたカリムには感謝している。陸と海の溝を発生させた人事の問題に取り組むようになるが、なかなか上手くいかない。不本意ながら今のところは足りない人員を聖王教会やDust Strikersから借りてなんとかなっているのが現実。周囲に手を貸してもらいながら、これは確かにレジアス元中将が違法研究に頼った訳だ、と深く同情。より良い世界を目指し、今日も彼女は優秀な人員を確保する為に忙しく働いている。「彼に比べれば私達はまだまだ若いのよ? 泣き言なんて言えないわ」リンディ・ハラオウンレティに協力しながら局内での派閥争いや、陸と海の溝、部隊や所属の違いによる軋轢を少しでも減らそうと予算や設備の面で尽力する。下手をすれば皆の中で一、二を争うくらいに忙しいが、育児から復帰したエイミィに支えられつつ毎日を過ごす。その際、「ウチは託子所じゃねぇぞ……」と文句を言いながらもカレルとリエラを自分達の仕事が終わるまで面倒見てくれるワイルド保父なソルに感謝している。しかしその代わり、孫二人が血の繋がった祖母よりも“背徳の炎”の面子に懐いているような気がして、二人の将来的な意味で若干不安を覚えている。「これが僕の正義だ」クロノ・ハラオウン事変後、他の者達と同様にこれまで以上に忙しく大変な日々を送る破目になるが、最も充実した顔の男だ。ゲンヤと同様に周囲から押し切られる形で昇進し、絶大な権力と発言力を手にするが、初志貫徹をモットーに態度をこれまでと変えず、次元世界の平和の為に働く。後にドゥーエ、トーレの保護責任者となる。また執務官試験に合格したティアナをソルの紹介でクラウディアに受け入れ、ビシバシ鍛えることに。外では偉大な管理局の功労者も、家に帰ればただのお父さん。たまに帰ってきては家族と過ごす時間を何よりも大切にしている。ソルがまた戦うその日まで彼の分まで頑張ろうと決意を固め、彼に言われた通り前だけを見て進んでいく。「安心しろ、レジアス。俺達が居なくても、俺達が守りたかった世界は若い力に守られている」ゼスト・グランガイツ一度死んだ人間、と己を自嘲し管理局には戻らず俗世と戦いから離れた、穏やかな生活を望む。その時、ルーテシアがゼストと離れ離れになることを拒んだ為に、アルピーノ親子と三人で第34無人世界の『マークラン』で暮らすことになる。ルーテシアにとっては父であり、籍は入れてないがメガーヌとは事実婚のような関係。時間があれば差し入れを手に服役中のレジアス、オーリスを訪問する。「……そうか、喜ばしいことだ。儂のように間違えないことを祈ろう」レジアス・ゲイズ服役中。違法研究、裏取引、その他諸々の罪により逮捕され、裁判にかけられる。武闘派と呼ばれていた頃の剣幕はすっかり鳴りを潜め、管理局の闇を葬ってくれた者達に感謝しつつ、模範囚として罪を償う日々を過ごす。「間違ったやり方で正しいことを成せる訳が無い、それを痛感しています」オーリス・ゲイズレジアス同様、服役中。裁判を待つ身である。罪を認め、償う為に模範囚として暮らしている。「ルーテシア、ご飯だからパパ呼んできて」メガーヌ・アルピーノちょっと過保護なお母さんとしてルーテシア、ゼストと三人で暮らす。俗世から離れた自然の中で伸び伸びと成長していく愛娘のことが可愛くて仕方が無い。ゼストとの仲も良好で、周囲の者達はいつになったら事実婚から籍を入れるのか賭けの対象としていることに、気付いていない。暇を見つけてはナカジマ家に遊びに行ったり、来てもらったりしている。かつて失ったを娘との時間を取り戻すように幸せを噛み締めている。「ああっ! 見て見てガリューッ!! エリオ達からメールが来たの!!」ルーテシア・アルピーノ母を取り戻し、ゼストを含めた三人で静かに暮らす。ガリューを含めれば三人プラス一匹か。一緒に暮らすようになってからは、ゼストのことを「パパ」と呼ぶ。人形のように無感情、無表情であったのが嘘のように年相応になり喜怒哀楽を溢れさせるようになる。エリオ、ツヴァイ、キャロの同い年が特に仲良しで、泊まりで遊びに行ったり来たりを休みの度に繰り返す。毎日が楽しくて仕方が無い様子。「シグナム……アタシのロードに、なってくれねぇか?」アギトゼストの勧めでシグナムのパートナーとして“背徳の炎”に加入。家族として迎え入れられる。一家の長であり、圧倒的な火の力を持つソルのことを「旦那」と呼び慕う。しかし、ユニゾンしようと誘っても断られるだけなのでちょっと悲しい。ソルやゼスト、ゲンヤといったおっさん連中が揃っている時は混乱しないようにそれぞれ「ソルの旦那」「ゼストの旦那」「ゲンヤの旦那」と呼び分けることに。他の面子は基本的に呼び捨て。唯一の例外はヴィータを姉御と呼ぶこと。やはり最初は家族というものに戸惑ったり恥ずかしがったりしていたが、段々“背徳の炎”色に染められてしまう。ヴォルケンリッターと同じでそれなりの年を食っている筈なのに、当然の如く子ども扱いを受け、おまけに家の中でのヒエラルキーは下から数えて二番目とヴィヴィオの次に低いので、それが少し不満。「生命とは、一体何なのだろうね?」ジェイル・スカリエッティかつて己の運命を呪い、絶望しながらも決して諦めず長い年月を戦ってきたソルの過去を知り、最も影響を受けた人物。狂的なまでの生命操作技術に対する研究意欲はもう既に無い。元々刷り込まれたものだったので未練も無い。もし残っていたとしても、自己進化能力を持ち戦えば戦う程強くなるギアには勝てないと分かってしまったので、諦めているだろうと本人は語る。積極的に捜査協力し、犯罪の為に使っていた技術や知識を医療技術向上の為に提供。ウーノを補佐に、罪を償い、生命とは何なのか自身に問い掛けながら医者として生きていく。ナンバーズ彼女達はクアットロを除き全員が捜査協力を行い、隔離施設にて更正プログラムを受講。また全員が正しい教育を受けていないことが認められる。稼働時間が浅く、まだ何も罪を犯していなかった者はそのままそれぞれの保護責任者に引き取られたのに対し、実際に局員などを殺害したり重い罪を犯した者は裁判にかけられた。「私はいつまでもドクターと共に」ウーノスカリエッティの補佐として彼と共に罪を償う日々。あえて保護責任者を拒否、厳重な監視や制限が付く窮屈な生活ではあるが、不満は特に無い様子。「ソル様……あなた様のことが忘れられません」ドゥーエはっきりとソルにフラれ、傷心のまま更正プログラムを受講。出所してDust Strikersに戻ってくると今まで通りアイナと共に寮母兼食堂のおばちゃんとして働くが、アイナ曰く「ソルさんが居ないから無理して空元気を出しているように見える」とのこと。陰のある女、ということで男性賞金稼ぎに非常に人気。しかし、誰とも付き合う気は無いとのこと。ソルを思い出しては枕を濡らしているとかなんとか。アインのことがやはり嫌いで憎らしいが、ソルにとって大切な人物なので逆恨みはしていない……らしい。「もう私は戦う為に生きるのはやめた。一人の『人間』として、ソル=バッドガイのように罪を償いながら自分以外の誰かの為に生きる、そう思えるようになって、そうなると決めたから」トーレ戦闘機人事件で最も多くの局員を殺害した罪は重く、出所するのにナンバーズの中で一番時間が掛かってしまうものの、積極的に捜査協力する模範囚であり、その甲斐あって刑期短縮や減刑され、本来よりも早く出られた。事変から数年後。彼女は手足を失っている間にシャマルから受けた介護に感銘を受け、服役中に介護福祉士を目指して勉強し、出所後すぐに専門学校へ入学。卒業後は、障害者や身体が不自由な人達の世話をしながら懸命に働いている。余談だが、彼女に元の戦闘能力は無い。取り戻せる可能性はあったが、本人が断固拒否した為だ。マリエル、スカリエッティが協同して作ってくれた新しい手足は一般人よりちょっと筋力が強い程度の代物。「……………………………………………………………………………………………………」クアットロ彼女はナンバーズで唯一、精神病院送りとなってしまった。ソルと相対した時に受けた精神的ダメージが強過ぎてトラウマとなった所為だ。肉体的なダメージは問題無く快復したが、昔のように他者を影で見下し高慢な態度を取ることはない。いつも何かに怯え、挙動不審で落ち着かない。火や赤色、大柄で長髪の男性といったソルを連想するものや似た特徴の人物を極端に怖がってしまう。本人も外に出ようとする意思を表さないので、社会復帰は難しい。「他の姉妹達が心配だが、まずは自分のことだな」チンクトーレと同様に戦闘機人事件で直接局員を殺害しているので、やはり罪は重い。出所もトーレを抜けば一番遅かった。しかし模範囚であり捜査協力に積極的だったので、それなりに刑期短縮や減刑はなされている。殺めてしまった局員の分まで平和の為に戦うと決め、ギンガを補佐する形で管理局に入り、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディと一緒にナカジマ家で騒がしくも楽しい毎日を送ることになる。「うわ~ん、シスターシャッハがいじめるぅぅぅぅっ!!」セイン比較的罪は軽いので、それ程時間を掛けず出所。シャッハに引き取られるも、厳しい礼儀作法やら教育的指導に上のようなセリフを吐いては泣き出し困らせている。明るい性格も相まって教会の中では「アホ可愛い」「バ可愛い」「あんな感じのアンポンタンな妹が欲しかった」と男女問わず人気。しょっちゅう仕事を抜け出し、サボる。その際、聖王教会からソルの工房やシグナムの道場が近い所為か、何故かいつも昼飯時に現れては、勝手に冷蔵庫にある材料を使って料理を作り、それを食って帰るというよく分からんことをする。ちゃんと皆の分も作ってくれて、やられる側としては昼飯や弁当を作る手間が無くなるので、助かると言えば助かるのだが……とりあえず見掛けたらシャッハに報告するように。「シスターシャッハ、またセイン姉様が逃亡を図りました」セッテ最後発組故に罪は犯していないので、更正プログラム受講後はすぐに聖王教会に引き取られ、シャッハの保護下に。セインと違い、厳しい礼儀作法を淡々と身に付け、何処に出しても恥ずかしくない教会シスターになる。相変わらず感情が乏しいと初対面の人間から見られてしまうが、実はキャロ達のおかげでかなり早い段階で喜怒哀楽の感情を手にしたので、無表情に映ってしまうのは単に感情が顔に出ないだけであり、慣れた人間にとってはかなり表情豊かなのが分かる。姿を消したセインを引き摺ってでも連れて帰り、シャッハのお説教を食らわせるのが彼女の役目。しかし、セインが勝手に作った食事はしっかり食べていく。本人曰く「無駄にしてはいけません」とのこと。とても教会のシスターらしい言葉だが、セインを連れ戻しに現れる彼女がいつも腹ペコなのは周知の事実。食いしん坊であることを必死に隠しているらしい。クールビューティーをそのまま絵にしたような人物なので、セインとはまた違った人気を持つ。一人の人間として生きながら、自分の価値と生きる理由を探している。「男でも女でもどっちでもいい、って言われることがあるんだけど……」オットーセッテとディード同様に罪を犯していないので、更正プログラム受講後はすぐにカリムの元に。他の姉妹と同じように礼儀作法を学ぶが、何故か一人だけ執事服を常に着用。男か女かパッと見では分からない。しかし、むしろそれが良いんじゃないか馬鹿野郎つーかもうこの際どっちでもいいオットー俺だ結婚してくれ!! と男性騎士から絶大な人気を誇る。本人は困っているが。保護してくれたカリムに恩義はあっても、この組織大丈夫か? と思わざるを得ない。「おかーさん、おとーさん、って呼べっつわれても……うぅ、恥ずかしい」ノーヴェやはり罪は軽く、セインやウェンディ、ディエチと同じタイミングで出所。それからナカジマ家に引き取られる。スカリエッティのラボとは全く異なる、普通の日常生活に最初は戸惑うが、スバルとギンガ、一緒に引き取られた他の姉妹、そしてクイントの存在もあってすぐに馴染む。特別救助隊に所属することとなったスバルの影響でそこの訓練に参加しつつ、アルバイトをこなしながらシューティングアーツを一から教えてもらっている。「ナカジマ……私の、新しい名前」ディエチはやてを殺しかけた前科があるものの、当の本人とその家族が特にこだわらなかった為に、早い段階で他の者と共に出所する。環境の激変に戸惑っていたノーヴェに比べ、すぐに日常生活に順応。自ら率先して家事を教えてもらい、ノーヴェやウェンディと同様にアルバイトで汗を流し救助隊の訓練などを受け、ナカジマ家の一員として暮らす。番号的には妹ながら、生まれた順番はチンクの次であり性格も落ち着いているので、他の姉妹に『お姉ちゃん』として振舞うことも。よくコンビを組んでいたクアットロが病院から出れない、というのが不憫でならないとは本人の談。「パパリン、ママリン、お腹減ったッス~」ウェンディ罪は軽いので出所は早かった。タイミングはノーヴェ達と同じ。チンクより一足先に、ノーヴェ、ディエチと一緒にナカジマ家へ。底抜けに明るい性格は一家のムードメイカー。何処に行っても何をやっても楽しそうにしているので、その明るさは恐らく天性のものなのだと思われた。アルバイトや救助隊の訓練を他の姉妹とこなす日々の中、楽しいことを求めてあっちこっちをフラフラするのが趣味。「ダメよオットー。あの手の男をまともに相手にしては」ディード最後発組なので罪は無い。オットーと共に更正プログラム受講後はカリムの保護を受け聖王教会に身を寄せる。見事に礼儀作法を身に付け、シスターらしい淑女然とした立ち居振る舞いをものにし、しっかりとしたものの考え方をするのでカリムとシャッハからの信頼も厚い。何故か男性騎士からの人気はオットーに負けているので、内心ちょっと悔しい。が、「男でもいい!」と公言してる妙な連中が混ざっているのでなるべく気にしないようにしている。「選びなさい。大人しく捕まってからボコボコになるまで蹴られるか、ボコボコになるまで蹴られてから捕まるか」ティアナ・ランスターソル達が去った後、執務官試験を受けてみたら一発で見事に合格。本局に所属を移し、夢であった執務官としての将来を現実のものにしていく。中、遠距離型のガンナーでありながら近接戦闘においてシュトルムヴァイパー、バンディットリヴォルバー、ライオットスタンプを好んで使い、やがて「足癖の悪い銃使い」「美脚蹴り執務官」「頼めば蹴ってくれる女性執務官ランキング一位」という風に本人にとって不本意な異名が蔓延ってしまう。封炎剣による斬撃よりも殴る蹴る頭突く投げるの体術を主体にして戦うソルが近接戦闘を師事した所為。この師にしてこの弟子あり、接近戦は半ばト○ファーキック。性格も考え方も“先生”に似てきてしまい、アリサとすずかの心配が見事に的中。シャマルにバックスの動き方と心得を教えてもらうだけで止めておけばこうはならなかったかもしれない。またお節介を焼いたソルによってクロノのクラウディアへ配属することになり、クロノから鍛えてもらう。そこでも炸裂するト○ファーキック。「なんて危険な技だ。癖になってしまうかもしれない」と膝蹴りを顔面に食らいドクドク鼻血を垂らすクロノに戦慄を与え、ハラオウン夫妻の間で二人の子どもがソルの家に避難してくる程の喧嘩を勃発させた原因となってしまうことがあったが、知ったことではない。兄にそろそろ良い人が見つかったらいいな、と思っている。今日も今日とて彼女は犯罪者に魔弾を撃ち込み、蹴りを入れる。「もう大丈夫! 安全な場所まで、一撃でぶち抜くからっ!!」スバル・ナカジマ本人の強い希望により、憧れであった特別救助隊へと正式に転属。転属先で「救助隊で働く為に生まれてきたんじゃないか」と高く評価される程に多くの人々を災害から救い、救助隊に籍を置く者からはスバル・ナカジマを知らない者は居ないとまで言われることに。しかし、ギンガと二人がかりで戦いを挑んでも全く歯が立たないクイントの存在があるので、天狗には決してならない。母曰く「ソルと殴り合った年季が違うのよ。二人はたったの一年間、私は十年間。ね?」とのこと。実は母も生体兵器なんじゃないかとたまに疑う今日この頃。新しく出来た妹達を快く受け入れ、仲の良い姉妹として暮らしている。「いいじゃないですか。ソルさんは『私達』の“先輩”みたいなものなんですから、あの娘達の更正プログラムを手伝ってください! アインさんだとドゥーエさんと喧嘩になってそれどころじゃないんです!!」ギンガ・ナカジマナンバーズの更正プログラムに参加。その時に面倒臭がるソルを半ば強引に連れて隔離施設に赴く。その甲斐あって、良い意味で彼女達に刺激を与える。更正プログラム終了後は、元の所属の捜査官に戻り、以前と同じような生活に。新しく出来た妹達を家族として迎え入れ、長女という立場から笑顔が絶えない生活を心から楽しむ。一年間ソルにみっちり鍛えてもらった筈なのに、クイント相手にスバルと二対一で戦っても勝てない。戦闘機人の自分達より強い母に、スバル同様、本当に純粋な人間なのか疑っている。ユーノに対する思慕は未だに残っているものの伝えられないでいる。背徳の炎ヴィヴィオ、アギトを新しく加え、平穏な日々を満喫する。「ヴィヴィオね、みんなのこと大好き!!」ヴィヴィオ正式にソルとなのはの娘として引き取られ、『高町ヴィヴィオ』と名乗るように。何故『高町』なのかと言うと、『バッドガイ』はあくまで偽名だから母親のなのはからまともな姓をもらって欲しい、とソルが言った為。個性が豊かというか濃い連中に囲まれながらもすくすく育ち、数年後にはザンクト・ヒルデ魔法学院に入学。友達に囲まれて普通の少女(?)らしい学校生活を送る。「兄さん今だ! ダブル、ライド・ザ・ライトニング!!」エリオ・モンディアルちゃんとサボらず真面目に学校を通うようになり、悪ガキも少しは落ち着いてきたと思ったら、数年後の初等科卒業後『見聞を広める為に 武者修行的な 旅に出ます アシカラズ BY エリオ』という書置きを残して忽然と姿を消す。全く同じタイミングでイリュリアから唐突にシンが姿を消した、という報告もあったので、間違いなく二人のアホ雷息子は一緒に放蕩生活を送っているのだと確信出来る。それを証明するように、Dust Strikersでは黒い雷と黄色い雷を使う二人のフリーの賞金稼ぎが出た、という噂が流れたり流れなかったり。まだあどけなさを残す少年が、カイに勝るとも劣らない超絶イケメンになって帰ってくるとは一体誰が予想しただろうか。「な、なんですかキャロ? ツヴァイの胸をじっと見て……」リインフォース・ツヴァイ一緒に中等科へ進学すると思っていたエリオが居なくなってしまったのを寂しいと感じながらも、再会した時にどんな素敵な男の子になっているのか楽しみつつキャロと二人で中等科へ。第二次性徴が顕著になってきたのか、身長も伸び腰もキュッと締まり胸も膨らんできて、子どもから大人の女性へと変わっていく過程に差し掛かる。そんな彼女をキャロとチンクとヴィータとアギトが羨ましそうに睨んでくるのが、ちょっと怖い。「く、悔しくなんか、悔しくなんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」キャロ・ル・ルシエツヴァイと共に進学。特に問題を起こすことの無い成績優秀、品行方正、明朗快活な生徒ではあるが、発育が遅い自身の幼児体系に不満があり、すぐ隣に居るツヴァイがどんどん魅力的になっていくのをグギギと歯軋りして見ることしか出来ない。来たれ第二次性徴!! 流れ星に願い、牛乳を大量に飲み、身長を伸ばし胸を大きくする為にありとあらゆることに手を出すものの、そんな彼女を嘲笑うが如くツヴァイのバストがサイズアップ……オメーじゃねぇ!!挙句の果てにはルーテシアまでが大きくなるかもしれない兆候を見せ始める始末。エリオが帰ってくる時に成長していないからと顔向けできない彼女にとっては、どいつもこいつも裏切り者である。「……専業主婦って、暇……」高町なのは賞金稼ぎを皆と共に辞めた後、専業主婦として家の中で一日の大半を過ごすことになるが、これまでの忙しかった生活と比べてあまりに暇なので、結局は以前のように聖王教会の騎士団で戦い方を教えることに。賞金稼ぎを辞めても魔王っぷりは健在。血は繋がっていないがヴィヴィオと合わせて「似たもの親子」と呼ばれる。「そうだね。暇だね」フェイト・テスタロッサ・高町なのはと同じ専業主婦に。でもやっぱり身体を動かすのが好きで、近接格闘が得意だからと昼間はシグナムの道場で師範代のアルバイト。男性なら誰もが見惚れてしまう笑顔で門下生にザンバーを振り下ろす。「暇やなぁ」八神はやて他の二人と同様に専業主婦になるが、暇を理由になのはと共に聖王教会でアルバイトを開始。事変のことがまだ尾を引いてるのか、怒らせたら世界を滅ぼす人と思われている……否定出来ないのが悲しい。「もっと踏み込め!!」シグナム『八神家道場』を経営し、そこの師範として門下生を厳しく指導。家族に手伝ってもらいながら、戦うとは何なのか、力とは何なのか、子ども達に大切なことを伝えていきたいと考えている。「あっ、いらっしゃいませ! 何をお求めですか?」シャマルソルが経営するデバイス工房の看板娘として日々を暮らす。家族が丹精込めて作ったものが、自分の接客によって売れていくのを間近で見るのはとても嬉しいと語る。「よし、これで完成だな」リインフォース・アインソルが経営するデバイス工房で、部品の組み立てとAI作りを担当。そこまで難しい作業ではないが、賞金稼ぎだった頃よりもやり甲斐があると感じている。「たっだいまー!! 二ヶ月ぶりの我が家だーい!! お土産たくさんあるよ!!」アルフ・高町当初の予定通り、ユーノと二人で遺跡探索の旅に出て、次元世界中を飛び回る。行く先々で問題があったり無かったりするが、培った経験と実力で未知なる難関を乗り越えていく。「あー、やっぱ家は良いなぁ~。ソルの肩の上が一番落ち着くよ」ユーノ・スクライアアルフと共に遺跡探索の旅に出る。一旦家を出ると、短い場合は数週間、長い場合は三ヶ月くらい帰ってこない。家に帰ってくると、フェレット形態になり真っ先にソルの肩の上に乗る。「よし、もう一本打ち込んでこい!!」ザフィーラシグナムが経営する道場で師範代として働く。強くてマッチョなのに可愛い子犬になれるので門下生に人気。ソルのマスターゴーストと契約し、はやてのヴォルケンリッターではなくなり彼のサーヴァントとなったが、これまでの人間関係に一切変化は無い。「鉄槌の騎士と鉄の伯爵を改め……カリスマデバイスマイスターのヴィータと、匠の相棒グラーフアイゼン、なんちって」ヴィータソルの工房で鍛冶師及び工匠――材料となる金属の加工や成形、細工などを担当――として働く。アイゼンを武器としてではなく、熱した金属を鍛える為に振るっていることが多い。普段着は専ら作業服でもある赤いつなぎ。ソルとお揃い。暇な時はシグナムの道場で門下生の面倒を見て、気骨がある奴を見つけると鉄は熱い内に打てとばかりにボコボコにする。「キュクルー」フリードリヒペット。ユーノが居ない時はソルの肩の上を独占している。「ああン? ……面倒臭ぇな……」ソル=バッドガイデバイス工房『シアー・ハート・アタック』を経営。名前の由来はソルの好きなイギリスのロックバンド“QUEEN”のレコード、『シアー・ハート・アタック』から。デバイスの製作、販売、メンテナンス、修理、買取を行っている。材料は業者に頼まず、自分で取りに行く。廃車とか見つけると喜び勇んで持って帰り、バラす。また、色んな火山に行っては熱々のマグマを採り、錬金術を駆使して欲しい素材に合成する。法力と錬金術を使い、大した労力もせず素材を手に入れるので、材料費がほとんどかからず、かなり安価な値段でデバイスを売ることが可能。他の同業者が聞いたらずるいと言われること間違いない。ヴィータと同じ作業に加え、設計も担当。デバイスだけではなく、包丁や鍋やフライパンのような台所用品、マグカップや皿、フォークやナイフなどの食器、指輪やネックレスやピアスなどのアクセサリー類、ガラス細工や小物といった様々な日用品を取り扱う。というか、頼まれれば大抵なんでも作ってしまう。なので、デバイス以外の目的の客層も多く、それなりに繁盛している。廃品、廃材、粗大ゴミの無料引き取りもやっている。無論、引き取った後に法力で分子レベルまで分解して材料にする為だ。ヴィータとお揃いの赤いつなぎで作業しているが、出掛ける時は彼女と違ってちゃんと普段着に着替える。休みの日はたまにヴィータと美術館へ行き、芸術品を観察してはその造形を参考にしている。暇が出来るとシグナムの道場へ赴き、門下生をいじめ抜く。面倒臭がり屋の癖して面倒見が割りと良いので、色々な人が工房に訪問し相談してくる場合も。家長として、父として、夫として愛する者達に囲まれながら平穏な日々を過ごす。To Be Continued後書きこれまでこの作品を読んでいただき、本当にありがとうございました。振り返って見れば、無印・A`s・空白期・STSと書き上げるのに約三年。いやー、実に長かった。よく自分でも途中で投げ出さなかったと褒めてあげたいです。まあ、書いてる間が何より楽しいですし、感想を少しでももらえると滅茶苦茶嬉しかったので、それがこれまで継続出来た原動力だと思っています。感想をくれた読者の方々には本当に感謝しています。以前、私の所為で感想版が荒れてしまったのを反省して、それ以来感想返しを控えているので、感想返しを希望している方は本当に申し訳ありません。STS編を書く上でのコンセプトは、『理想と現実のギャップ』という前の無印やA`sと比べ実に生々しい感じがまず最初に来て、その中で『自分なりにどういう折り合いをつけて生きるか』というもの。また、無印から全体を通してソルと相対した敵サイドが、彼に非常によく似ていながら少し違うことがミソとなっています。無印の場合プレシア→自身の研究の所為で愛する人を失ったことで、過去を取り戻そうと未来に目を向けず、過去に囚われて生きたソル→自身の研究の所為で愛する人を失い(ジャスティスとなってしまう)、自分も人ではなくなり全てを失うが、過去は過去でありもう取り戻せないと割り切っているA`sの場合グレアム→死んだ親友の仇を討つ為に復讐者となり、平和の為に修羅となって何の罪も無い少女を犠牲にしようとしたソル→アリアの仇を討つ為に親友だった“あの男”へ復讐を誓い、全てのギアを抹殺すると決意するが、ディズィーのような世界を滅ぼす危険性を持ちながらも無害なギアを、平和を乱すかもしれないからという理由だけでは殺せない(最後の場面で非情になり切れない)STSの場合レジアス&最高評議会→正しいことをしているつもりが、結局間違っていた(レジアスは途中で間違いに気付くが結局止められず、最高評議会はそもそも間違っていることに気付いていない)ソル→ギア計画の関係者であり最初の被害者として、ギアとその開発者及び全てのありとあらゆる違法研究関連を抹消する為に戦うゼスト→知らないところで親友に裏切られ生体兵器になってしまったので、親友に違法研究に手を染めた真意を問い詰めようとするソル→親友だった“あの男”に裏切られる形ではめられギア化、後に復讐を誓うスカリエッティ→生命操作技術の違法研究者で、最高評議会に生み落とされた駒ソル→ギア開発者戦闘機人→誰かの都合によって違法研究により生み出された人工生命ソル→“あの男”の駒として利用され続けた概要を纏めると大体こんな感じです。それぞれが全く違う人間なので、似たような経験をしていてもその後の行動が異なるのは当たり前ですが、だからこそ作中のソルは敵サイドへ敵意を前面に押し出して目の仇にしました(唯一ゼストは除く)。ぶっちゃけると単に気に入らないから、という理由が最大なんですがwwwとまあ、語り出すとキリがないのでこの辺にしておきましょうか。次からはシリアスなんてぶっ飛ばす勢いでギャグ&ほのぼのを突き進みたいと思います。もうシリアス書かなくていい! やったね!!時系列はSTSの後日談(事変後から四月までの約半年間)とViViDまでの空白期かな?こんな話読みたい、書いてくれ、ってのがあれば是非!!ではまた次回!!追伸にじふぁんに投稿するという予定でしたが、なんかサイトに大規模な規制が入って大変なことになってるので、ちょっと様子見ということで見送らせてください。期待していた読者の方、本当にすいません。