成り行きを見ていると、不意打ち染みた攻撃をされたことに怒るなのは。それを無視してジュエルシードを封印しようとするフェイト。そんなフェイトの態度にになのはが激怒(沸点低いな)。デバイスを槍に変形させて飛び掛る。フェイトもデバイスを鎌のように変形させて応戦。ベバイス同士がぶつかり合い、一瞬の拮抗の後、同時に離れる。「力ずくでも話を聞かせてもらうんだから!!」「答えても………たぶん、意味は無い」睨みあう両者。そろそろ止めに入ろうかと思った時、巨大猫が目を覚ましたのか「なおぉぉぉぉぉ」と鳴く。それに気を取られるなのは。あいつ、戦闘中に相手から眼を離すなんて。やはり才能があっても実戦慣れしていない。その一瞬の気の緩みが命取りになるってのに。初めて会った時から気付いていたが、やはり戦闘訓練を受けたことのありそうなフェイトは違う。なのはの隙を突く形で高速移動魔法を発動させ、瞬きする間になのはの頭上に移動する。さすがにこれ以上は不味いので俺は飛び出した。「ごめんね」呟いて振り下ろされたデバイスを封炎剣で受け止める。―――ギィィィィンッ!!耳障りな音が響く。眼を一杯に開いたフェイトが驚愕の表情で俺の名を口にする。「ソ、ソル」「久しぶりだな、フェイト」「え、あ、な、ソル、な………んで?」金魚みたいに口をパクパクさせて、何か言おうとして言えないフェイト。「お、お兄ちゃん、この子と知り合いなの!?」背後から詰め寄ってくるなのは。「とりあえず二人共デバイスを下ろせ」「う、うん」「………わかった」二人共素直に従う。さて、どうにかこうにか二人を止めることは出来たが、これからどうしたもんか。「なおぉぉぉぉぉ」俺が頭を捻っていると、猫がジタバタと動き始めた。「お前ら、下に降りて待ってろ」地面を指差す。「でも………」「お兄ちゃん?」「聞こえなかったのか? 二人共、下に、降りて、待ってろ」語気を荒くすると、渋々従う二人。「なおぉぉぉぉぉ」「いい加減うぜぇな」鬱陶しい巨大猫に向き直る。額に青い菱形の石。ジュエルシードだ。「一応、手加減はしといてやる」すずかの猫だろうしな。右の拳に魔力を込める。術式を構築、展開、構成した術式に必要な魔力量を計算、計算に基づいた魔力を術式に流す。ジュエルシードを無効化しつつ、猫が怪我しないように細心の注意を払って法術を完成させる。俺はその場から飛行魔法を駆使して巨大猫に向かって急降下。「バンディッドブリンガー!!!」炎を纏った拳を猫の額に位置するジュエルシードに叩きつける。「ぎに゛ゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」断末魔みたいな悲鳴を上げ、火達磨になりながらそのまま地面に衝突、勢いを殺せずにズザザァーッと滑っていく。やがてその巨体が止まると炎も消え失せる。そこに残るのはジュエルシードとぐったりしてピクリとも動かない子猫だった。「加減を間違えちまったか?」背徳の炎と魔法少女 4話 再会 後編フェイト視点暴走体の元になった子猫を抱えながら、ソルがこちらにやってくる。「ユーノ、怪我はしてねーと思うが若干衰弱してる。回復魔法かけてやってくれ」そう言って、フェレット―――ソルの使い魔かな?―――の前に子猫を優しく横たえる。「ソル、無茶し過ぎだよ。子猫が死んだかと思ったよ」それは私も思った。いきなり炎を纏った拳で殴りかかったと思ったら爆音、暴走体が火達磨になったもの。「安心しろ、手加減はした」「ソルの法力って非殺傷設定出来なかったよね? どうやって安心しろと?」え? ほうりき? ソルの使う魔法のこと? 非殺傷設定が出来ない? そんなことがありえるの? 確かにミッドチルダ式とは明らかに異質な”力”だとは思っていたけど………「なんとか非殺傷を術式に編み込むことには成功したぜ。最初は魔法と法力の相性が悪くて難儀はしたが、なんとかな。ただ扱いが難しくて力加減間違えると殺しちまうんだが、今回はぶっつけ本番で成功したから安心しろ」「ぶっつけ本番って………いや、キミのことだからそんなことだろうと思ってたけど、もういいや、何も言わない」フェレットはこれ以上は無駄だと悟ると、子猫に回復魔法をかけ始めた。「で、このジュエルシードなんだが、どっちでもいいからとっとと封印しろ」ソルが私と白い服の子に向き直ると、ジュエルシードを放り投げた。―――丁度、私と白い服の子の間に。その行動に、私も白い服の子も一緒にポカンッ、としていたけど慌ててデバイスを向けて封印する。「あ!!」「やった!!」ほんの一瞬私の方が早かった。ジュエルシードはバルディッシュのデバイスコアに吸い込まれる。「………って、ソル!? 何やってんの!?」フェレットは信じられないものを見たといった表情でソルに問い詰める。「ジュエルシードを封印させただけだが?」「それは見れば分かるよ!! そうじゃなくて、なんでなのはじゃなくてこの子に渡しちゃうんだよ!?」「そ、そうだよお兄ちゃん!! どうして!?」白い服の子も加勢する。だが、ソルは何がおかしいとばかりに首を傾げた。「ユーノには悪いが、俺にとってはジュエルシードなんてどうでもいいんだよ。海鳴市にばら撒かれた二十一個が無事に回収されればそれでいい。後は誰が持っていようとこの街に被害が出なければ知ったこっちゃねぇ。それだけだ」ソルの言葉は、この街に住む人の純粋な意見だと思う。確かにこの世界に住んでいる人達にとってジュエルシードなんて代物は迷惑以外の何物でもない。仕方が無いから回収してる、といった意味が込められていた。「だいたい、俺はなのはとフェイトの間に投げて『どっちでもいいから封印しろ』と言った筈だぞ? お前がフェイトより反応遅かっただけじゃねーか」「………」「むうぅぅ」正論と言えば正論なソルの発言にフェレットは沈黙し、白い服の子は低く唸っている。………あ、私もボーッとしてる場合じゃない。ソルにちゃんとお礼言わないと!「あ、あの、ソル、ありがとう」「ん。気にするな」「それと、この間は助けてくれてありがとう。まだちゃんとお礼言ってなかったから」「ああ、あん時は俺も急いでたからな。随分と御座なりな別れ方になっちまったから、そっちも気にすんな」そう言って、私の頭を撫でてくれる。(ああ、暖かくて気持ち良い)以前もそうだったけど、ソルに撫でられると凄く心地良い。暖かくて、優しくて、なんと言うか癒される。身体に溜まった疲れとかが何処かに飛んで行ってしまうような錯覚がする。―――ずっとこのままでいたい。しかし、現実はそうはいかないようだ。「そういえばお兄ちゃんこの子誰なの!? 知り合いなの!?」白い服の子がデバイスの矛先を私に向ける。私はその怒りに染まった形相に吃驚して、ソルの背後に回りこんで思わず腰にしがみついてしまった。私の行動で更に表情が険しくなる白い服の子。この子、なんか怖い。「そういや話してなかったな。ユーノには前に話したから知ってると思うが、こいつはフェイト、フェイト・テスタロッサ。お前が魔法を手にしたあの夜に、俺がジュエルシードの暴走体から助けたんだ」「………そんな話聞いてないの」「話してないっつったろ」「なんで秘密にしてたの?」「秘密にしてたっつーか、話すことを忘れてたな」「………むうぅぅ」白い服の子は不機嫌そうに低く唸ると、私を値踏みするように上から下まで眺める。その据わった視線がちょっと怖くて、ますますソルにしがみつく力を強くしてしまう。「………フェイトちゃん、でいい?」「へ? あ、ご自由に」話しかけられておっかなびっくり返事をする。「私は高町なのは。お兄ちゃん、ソル=バッドガイの妹です。なのはでいいよ」「あ、改めまして、フェイト・テスタロッサです………あれ? 妹? ファミリーネームが違うのに?」ソルの顔を見ると、「俺は数年前から高町家に居候してんだよ」と教えてくれた。その時のソルの顔の近さ、息も当たりそうな至近距離に顔が真っ赤になるのが分かる。「それでフェイトちゃんに聞きたいんだけど、何時までお兄ちゃんとそうしてるつもり?」「……っ!!」その言葉で今自分がどんな状態なのかを思い出した。ソルに後ろからしがみついて、彼の肩に顎を乗せるように顔を覗かせている格好。これでは顔が近いのは当然だ。慌てて離れる。少しだけ名残惜しいと思ったのは内緒だ。「ごごごごごめんソル!!!」「いや、別に構わねーけど」「っ! 構わないってどういうことなのお兄ちゃん!?」「お前で慣れた」「ぐぬぅ………」私はもう恥ずかしくなって頭が混乱してしまって、何がなんだか分からなくなってしまった。何かソルと白い服の子―――なのはだっけ?―――が言い合ってなのはがショック受けてるみたいだけど、私はそれすら見ていられない程余裕が無くなっていた。―――そそそうだ、もうジュエルシードは回収出来たから此処にはもう用は無い、たぶん。そういえばアルフも心配してるだろうし、は、早く帰らなきゃ!!「そ、ソソル、わわ私もう帰るね」「あ? ああ。またな」「あ! 逃げた!! 待って!! まだお話聞いてないよ!!」「そうだ!! まだ何故ジュエルシードを集めているのか聞いてないぞ!!」なのはとソルの使い魔のフェレットが何か言っていたけど、私の耳にはソルの言葉しか届いてなくて。「ま、またねソル!!」そう返すと、自慢のスピードで封時結界を文字通り飛び出した。顔が熱い、動悸が激しい、でもそれが不快じゃない不思議な感じ。何なんだろう、これ?………ソルなら分かるのかな?っと、至近距離でのソルの顔を思い出してまた体温が上がるのを実感する。心臓もズキズキと痛いくらいに脈打つ。ソルのことを考えると、他のことが何も考えられなくなる。でも、やっぱりそれがイヤじゃない。私………一体どうしちゃったんだろ?SIDE OUTフェイトが帰ってからどうなったかというと。バリアジャケットを解除したなのははずっと「私不機嫌です」的なオーラを纏っていた。そして俺の手を繋いで離そうとしない。移動中は俺の腕にずっと組み付いていた。それはアリサとすずかの元に戻っても変わらず。二人共どうしてなのはが不機嫌なのか問い質したいような気配を出していたが、なのはの不機嫌オーラの所為で結局それは出来なかった。『ユーノ、なんとかしろ』『なんで僕が!? キミが蒔いた種じゃないか』『後で賞味期限切れてカビ始めた酢昆布やるから』『要らないよそんなの!! 懐柔する気があるのか無いのか分からないよ!?………僕は知らないよ、何故なら今の僕はただのフェレットだから』ちっ、役に立たねぇ。ていうか、ユーノも微妙に不機嫌だ。フェイトにジュエルシードが渡ったことが気に入らないようだ。ま、確かにユーノが発掘したものだから所有権はユーノにあるんだろうが、俺としては先にも言ったようにあの厄介な青い石がこの街から消えてくれればそれでいい。そのままは微妙な空気でお茶会は続き、やがて解散となった。それからというもの、なのはは不機嫌のまま俺から決して離れようとしなかったが、久しぶりに一緒に風呂に入った(半ば強制的に桃子に入れられた)後は、機嫌が直ったのか急にニコニコし始めた。そしてそれは一緒に寝るまで続き、次の日には何時も通りに戻っていた。………やれやれだぜ。気まぐれ後書き今回お送りしたのは乙女回路全開で起動中のフェイト、ヤンデレ気味なのはでした。如何だったでしょうか?コメントにあったリクエストも微妙に反映させてありますwwwフェイトにとってソルは白馬に乗った王子様的な感じで、なのはにとってのソルは自分の全てを受け入れてくれる人です。で、ソルにとってなのはは愛娘、フェイトは『木陰の君』とダブってしまうのでどうしても甘く接してしまう、って感じですかね?これからこいつらの三角関係をお楽しみください。ではまた。ノシ