「先に言っておく。俺は管理局の人間でもなければ、正義の味方でもなんでもない。 はっきり言って、ミッドや次元世界の平和なんてどうでもいい。 青臭い正義感を振り翳して平和を唱えるのも、世界の為とか大それたこと抜かして戦うのも、正直面倒だ。 別に管理局で必死こいて働いてる連中を馬鹿にしてる訳じゃ無い。管理局は管理局で重要な仕事をこなしていると思う。 俺にはどうもそいつらの言う”正義”とやらが性に合わんだけだ。 ……だがな、理不尽な暴力に晒されて泣いてる奴を目の当たりにして、無関心を貫ける程俺は我慢強くねぇ。 気に入らねぇんだよ、犯罪者っていう存在がな……理由はどうあれ、他者を踏み躙る行為に手を染める連中が。 だから、昔の俺はこの稼業を選んだ時に決めた。犯罪者共が無辜の民を踏み躙るってんなら、俺が犯罪者共を踏み躙ってやる、ってな。 俺達は”Dust Strikers”。犯罪者と括られる存在を潰す為に、今、この場に存在している。 管理局が掲げる正義でもない、次元世界の平和の為でもない。 気に入らないから潰す。俺達が戦う理由なんざ、それだけで十分だ……!!」背徳の炎と魔法少女StrikerS Beat3 Brush Up?背に大量の拍手と歓声を浴びながら俺はロビーを後にし、誰も居ないことを確認してから溜息を吐き、クイーンに命じてバリアジャケットを解除する。シャマルめ……何が見栄えが肝心だ。わざわざバリアジャケットまで用意する程のことだったのか疑問が尽きない。「なかなか良い演説だったな」「もう二度とやらん」何時の間にか俺の背後に、影のようにヌッと姿を現したアインがからかうような口調でクスクスと笑っていた。「人から注目されるのがそんなに嫌か?」「知ってて言ってんだろ」「ああ」この女、いけしゃあしゃあと言いやがって。不機嫌が沸々と湧き上がってくる中、不意打ち気味に背後から抱き締められる。「まあ、そう怒るな。演説が良かったというのは本当だ」「はあ?」「”気に入らないから”、ただそれだけの理由で私は勿論、他の皆もお前の傍に居る、居ることが出来るようになった」からかう口調から一転して愛おしさが込められた声に毒気を抜かれ、不機嫌のやり所を失ったので溜息として吐き出す。「集まった賞金稼ぎ達も大半はそう。お前の行動によって救われた者達ばかりだ」振り返らずに十年近く前のことを思い出す。忌まわしいバレンタインデーの所為で家出することになり、クラナガンで偶然出くわした誘拐事件を切欠に次元世界中を暴れ回った時のことを。ちなみに、その時に紆余曲折を経てクイントと、ナカジマ家と交流を持つようになったのは余談。アインの言う通り、登録希望者リストの備考欄に大半が『子どもの頃に”背徳の炎”に助けてもらった』とコメントしていて、事務仕事中に気恥ずかしい思いを味わった。(ああ、なるほど。そういうことか)何故シャマルがバリアジャケットを用意しろと言ったのか、今になって漸く合点がいった。此処に集まっている連中は何年か前にフェイトが言っていたように、当時の俺の姿が眼に焼き付いているからだ。「俺ってそんなに印象強く残るか?」「何を今更。お前は格好から始まり、言うこともやることも、そして何より戦闘能力と戦い方が過激ではないか。例えば闇の書事件の時、シグナムとシャマルがお前と出会ってから数日間、お前のことが頭から離れなくなったのは知っているだろう」そういやそうだったな。当時の俺の所為で、あの二人は本人曰く魔導プログラム体としてほんの少しバグッた……らしい。戦闘後のリンカーコアが疲弊した状態で俺の”魔力供給”を受けたことによって。魔導プログラム体とは突き詰めて言っちまえば、魔力と情報が合わさったものが受肉した存在だ。であるが故に、俺の魔力の影響をモロに受ける。はやてから供給される魔力よりも、俺のギア細胞から生産される魔力の方が圧倒的に量が多く、純度も高い。主でもない赤の他人から、リンカーコア同士でリンクしていないのにも関わらず多大な魔力を供給されて、システムに狂いが生まれたとかなんとか。んで、闇の書事件が終わって以降は主のはやてよりも俺を優先してしまうので、これはプログラムとしてバグだから責任取って欲しい、と。……言いがかり以外の何物でもない。明らかに自分の都合の良いように解釈してるだけだろ……つーか、言うのが事件終了して七年後とか遅過ぎるし、その理論でいくならヴィータとザフィーラはどう説明すんだよ……しかし、ふざけんなと言えないのが実際のところだ。俺の魔力の影響の所為で皆のリンカーコアが徐々にではあるが、年々肥大化しているのはツヴァイが生まれる少し前に発覚した事実だし、魔力依存症みたいなことを訴える時だってある。夜天の書から守護騎士システムが切り離されたことによってプログラムが劣化してきているので、俺の魔力で補おうとしている、というのがシャマルの見解だ。だからと言って、フェレット形態のユーノを肩に、子犬形態のザフィーラを膝の上に、フリードを頭の上に乗せてくつろいでいる時に「ふざけるな、男はすっ込んでいろ!!」と喧嘩するのはやめて欲しい。フェレットと子犬と小竜が女二人と筆舌しがたい剣幕で睨み合っている図式は、なかなかにシュールだった。その後、「私も混ざる」と宣言する者達が続出して家族全員総当りの模擬戦に発展したので二度と拝みたくないが。嗚呼、どうしてこうなったんだろう……? 一体、何処から何をどう間違えたのか最早想像すら出来ん。バトルジャンキー共め……どいつもこいつも嬉々として相手に襲い掛かるなんて、頭どうかしてる。「で? これからの予定は?」これ以上考えると頭痛と共に鬱になりそうな気がするので無理やり話題を変える。「AMF対策関連が出来ているのなら高ランク者にはすぐにでも仕事に出てもらう。低ランク者はみっちり研修だな。なのはが張り切っていたぞ」地獄見ることになるのか。加減してやっても容赦はしてやらん、が俺達の流儀だからな。「俺達は教導がメインか」「そうだな。私達は奴のオモチャ、ガジェット・ドローンが出て来た時に即座に動けるように、今までの仕事は集まった賞金稼ぎ達と教会騎士団に引き継いでもらう。教導が無い時は基本的に此処で待機だ。何か不満は?」「無ぇよ」俺は肩を竦めてから歩き出す。アインも俺から離れて隣に並ぶ。「そろそろケリを着けてやるぜ……ジェイル・スカリエッティ」小さく、静かに宣言し、拳を強く握り締めた。組織としての力と、何時でも自由に動ける立場を手に入れた。あとはこれをどう使うかが鍵になる。……待ってろよ。必ず俺の手で焼き尽くしてやるからな。「皆、準備はいい?」サイドポニーを揺らしながらシャーリーを後ろに従えて問い掛けるなのはに、ギンガ、スバル、ティアナは「はい!!」と返事した。「三人の今日の訓練は私が担当します。曜日によって見てくれる人が変わるから、スケジュールのチェックは怠らないでね」三人が頷いたのを確認して満足そうに笑みを浮かべるなのは。「じゃあ、私としてはそろそろ訓練を始めたいんだけど」困ったように思案顔になり、「キミ達は此処で何をやってるのかな?」笑顔でいながらこめかみに青筋を立てて、なのはは背後に振り返る。そこには――「ふっ、はっ、せえええええいっ!!」ひたすらストラーダを振り回すエリオと、「ん? 何ですか? なのはちゃん」蒼天の書を楽しそうに捲りながら可愛く首を傾げるツヴァイと、「キュクー」「此処が痒いの? フリード」フリードを抱いて撫でているキャロの姿があった。「ねぇ、三人共私の話聞いてる? 此処で何してるの?」剣呑な雰囲気を醸し出し始めたなのはの様子に今頃気付いたかのように、エリオはストラーダを肩に担ぐとニカッと笑う。「今日は創立記念日で、学校休みです」「嘘でしょ」「はい、嘘です。でも学校には一週間くらい前から予め今日はサボるって伝えておきましたよ」全く悪びれることなく無邪気な笑顔で正直に話すエリオになのはは頭痛を覚えるのであった。だから一週間前にお兄ちゃんと壮絶な親子喧嘩してたんだね、と。「エリオ……何時からそんな良い笑顔でしれっと嘘吐くような子になったの? お兄ちゃんが泣くよ」「そしたら母さんとなのはさん達で父さんを慰めてあげてください」「それは当然だけど、私が言いたいのはそうじゃなくて……あーもう、どうしてこんな風に育っちゃったんだろう?」「育ての親と周りの人達のおかげです。あ、そう言えば前に父さんもなのはさん達に対して似たようなこと言ってましたよ。どうしてこうなった? って」「……あー言えばこー言う」なのははうんざりしながら額に手を当て、天を仰いだ。「あのー、聞いてもいいですか?」そんなやり取りを見ていたシャーリーが小さく挙手をするので、なのはは向き直って「何? シャーリー」と首を傾げる。「この子達は、一体?」シャーリーでなくとも疑問に思うのは当然だ。エリオ達は登録された賞金稼ぎでもなければ、スバル達のように管理局から出向してきた訳でも無い。事情を知らない者からすれば三人は完全に場違いとして映るだろう。「エリオとツヴァイとキャロは、お兄ちゃんの子どもだよ」「へー、ソルさんのお子さんなんですか……え? 子ども? ソルさんの? え?」コクコク頷く子ども達。「はあああアあああああああアあああああああああアあああ!?」突然絶叫するシャーリーに対して嫌な顔一つせず、むしろ元気一杯を絵に描いたような笑顔を浮かべ、子ども達はとても行儀良くお辞儀をして自己紹介をした。「僕の名前はエリオ・モンディアル。ご存知の通り、僕の父さんはソル=バッドガイです。母さんはシャマルです。趣味は模擬戦と修行と音楽鑑賞です」「シャマルさん!?」更に驚愕するシャーリー。「改めてリインフォース・ツヴァイですぅ。ツヴァイの父様はエリオと同じで、母様はアインですよ。ツヴァイのこと知ってますよね、シャーリー?」「知ってるけど……!!」「キャロ・ル・ルシエです。この中では私が末っ子になります。私のお父さんも二人と同じ――」「っ!? 分かった、それ以上は言わなくていいから!! 誰が母親かって言われなくても一目見れば分かるから!!!」頭から湯気を上げ、顔をこれでもかという程赤くさせたシャーリーがキャロの言葉を途中で遮る。誰がどう見ても完全無欠な勘違いをしている彼女は、この場に居る自分以外の人間を放置したまま、脳内で妄想をトップギアに入れて爆発的な速度で壊滅的な方向へと暴走させていた。「は、はは、腹違いの子どもが三人も……きゃあああああああ!! 女性関係まで”背徳”だなんてぇぇぇぇぇぇぇ!!」「「「「「「「……」」」」」」」そんなシャーリーのリアクションに対して、七人の前に沈黙と呆れが横たわる。(ああそっか。普通は知らないんだよね)なのはは胸中でひとりごちる。スバル、ギンガは家族ぐるみでの付き合いがあるのでエリオ達のことは当然知っているし、ティアナもスバル経由で話を聞いているので驚かない。が、プライベートでの付き合いが皆無なグリフィスやシャーリー、アルトやヴァイスは当然の如くこのことを知らない。他の賞金稼ぎ達も同様だ。知っていたとしてもツヴァイだけの筈だ。ツヴァイが仕事を休業するまでの記録はしっかり残っているが、エリオとキャロのデータは無い。そもそも仕事をしていないので当たり前だ。先のシャーリーのように勘違いする破目になる。まあ、シャーリーはツヴァイが融合デバイスだということをすっかり忘れているだけなのだが。唯一知っている例外はルキノくらいだろう。何年か前のクロノとエイミィの結婚式でエリオ達と顔を合わせている。当時の彼女もシャーリーと似たようなリアクションをしていた。……まあ、面白いから黙っていよう、となのはは考える。後でソルが頭を抱える姿を想像してほくそ笑む。愛する兄の困った表情は可愛いし、何かを諦めるように黄昏る後姿は退廃的な色香と魅力があってゾクゾクするので。「とりあえず訓練始めようか?」クスクスと蟲惑的な笑みは貼り付かせ、なのはは訓練を始めるのであった。空間に浮かび上がったコンソールを叩くと、海に面した何も無い区画が光に包まれ、建物郡が”生えてきた”。設定に応じて様々な”場所”や”シチュエーション”を擬似的に創造することが出来る、陸戦用の訓練シュミレータだ。今回なのはが設定したのは廃棄都市の一角を再現。ひび割れたアスファルトや崩れかけたビル、割れた窓ガラスなどがリアルに再現されている。「よしっ、と。皆、聞こえる?」ビルの屋上から真下に居る研修生に声を掛けた。『『『はい』』』応じる声はギンガ、スバル、ティアナの三人。「じゃあ、早速ターゲットを出していこうか。まずは軽く八体から」シャーリーに目配せし、”あれ”を出させる。なのはの意図を汲み取ってシャーリーはコンソールを叩く。すると、デバイスを構えたギンガ達から数メートル離れた先に魔法陣が浮かび、そこから俵型の青い機械が現れた。「私達の仕事の中には、捜索指定ロストロギアの保守管理も含まれているの。管理局からは勿論、スクライアから請け負う時もあるんだ。その仕事の時に私達と遭遇することが多いのが、これ」「自立行動型の魔導機械、ガジェット・ドローン。これは近付くと攻撃してくるタイプね。攻撃は結構鋭いよ」なのはの説明にシャーリーの補足が入る。これを聞いてティアナは、本当に何でも屋みたいな仕事をしていて、犯罪者をシバくだけじゃないんだ、と内心で少し感心していた。『犯罪者しょっぴくだけだと思ってたんですけど、それだけじゃないんですね』『『スバルッ!!』』思ったことを口にしてしまった正直者なスバルにギンガとティアナから叱責の声が飛ぶ。「あはははっ、気にしてないから気にしないで。私達”背徳の炎”に荒くれ者ってイメージが先行しちゃうのは当たり前だしね。お兄ちゃんも犯罪者は潰す、って公言してるし」『す、すいません』「スバルのイメージは間違ってないよ。お兄ちゃんが元々高額賞金首を優先して付け狙う賞金稼ぎだったっていうのは事実。今みたいな何でも屋をやるのようになったのは、お兄ちゃんの心境の変化みたいなものだから」謝罪を笑い飛ばして、心の中だけで十年前にね、と付け加えてから咳払いを一つする。「お喋りも此処まで、そろそろ始めようか。第一回模擬戦訓練、逃走するターゲットの破壊、または捕獲を十五分以内に」『『『はいっ!!』』』「それでは」とシャーリー。「ミッション」となのは。「「「スタートッ!!」」」傍に居たエリオ達三人が大きな声で合図を切った。モニター内でガジェット八体の逃走が始まり、ギンガ達三人がそれらを追いかける。「エリオくん達は参加しなくていいんですか?」「本人達にやる気が無いし、ご所望してるのは私との模擬戦だし、しょうがないよ」視線をモニターから外さずに問うシャーリーに、なのはは溜息を吐いて三人に振り返った。「だってつまんないですよ。あんなオモチャ相手に戦うなんて」「なのはちゃーん、これ終わったら模擬戦しましょうよー」「やっぱり模擬戦と言ったら対人戦が一番楽しいです」「キュクルー」エリオ、ツヴァイ、キャロがふてぶてしい態度で口々に不満をぶつけてくる。「あのね、真面目にやってる人に向かって失礼でしょ……特にエリオ」こめかみに青筋を浮かび上がらせピクピクさせるなのは。「だってあんなの、駆動系に一発ぶち込めばあっという間にオシャカに出来るじゃないですか。機械だから電気に弱いし」「防御をAMFに頼ってる時点で紙装甲です。一軒家と同じくらいの大きさの氷塊を上から落とせばオシマイですぅ」「対魔導師兵器としてはそれなりですけど、他の面が……」「キュクキュク」一般の魔導師が聞いたらあまりに傲慢過ぎる内容に卒倒ものだが、実際に子ども達はガジェットなど歯牙にも掛けない実力を持っていることをなのはは十分理解しているので、上手い切り返しの仕方が思いつかない。十年前のリンディさんから見たお兄ちゃんってこんな感じだったのかな、と此処には居ない契約者の苦労を今更噛み締めつつ、生意気な子ども達の天狗の鼻をどうやってへし折ってやろうか考えを巡らせる。やはり子ども達が言うように、後で模擬戦の相手をしてやるのが一番良いのだろうか? 何時ものようにボコボコしてやれば少しは静かになるかな?隣ではシャーリーが呆気に取られているので、この程度でイチイチ驚いていたら我が家の非常識っぷりにはついていけないよ、という意味を込めて肩をぽんぽん叩いてあげた。と、その時。「どうだ、調子は?」視界の外から声が掛かる。向き直ったそこには、ポケットに手を突っ込んだ状態で悠然と歩いてくるソルの姿がある。「父さん!!」「父様!!」「お父さん!!」「キュクキュク、キュックルー!!」ものの数秒で子ども達&フリードに纏わり付かれ、肩車をせがまれるその姿を見つつシャーリーは小さな声で「”背徳”な人が来た……」と一人戦慄していた。「仕事はどうしたのお兄ちゃん? もしかしてまたサボり?」「またって何だ。人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇ。様子を見に来たんだよ」「グリフィスくんに仕事押し付けて?」「ほう……流石にギンガは他の二人と比べて動きが良いな」あからさまに話題を自分のことから三人の研修生へと逸らすあたり、図星であることが見え見えだ。なのはは苦笑しながらソルの隣に立つ。「どう? お兄ちゃんの眼から見たあの三人は?」「フンッ……今後に期待、ってところだな」鼻を鳴らして簡潔に感想を述べ、その真紅の瞳を細めて品定めするようにモニター内を観察する。格好つけているような台詞だが、エリオを肩車してそれぞれの足にツヴァイをキャロを引っ付かせ、フリードを抱いて撫でている姿はどう見ても子煩悩なお父さんであった。「それにしてもナカジマ姉妹はクイントの娘だけのことはあるな。見事な脳筋だ」「強引で力任せなところは人のこと言えないでしょ」ナカジマ姉妹は、逃げるガジェットを追い掛け回して殴る、破壊したら次、って感じを繰り返している。後衛のティアナのことなど忘れているのではないだろうか。ギンガがなまじ上手く動いてガジェットを破壊する所為で、後衛が置いてきぼりになっているように見える。が、それはどうやら作戦の内だったらしい。二人に追い掛け回されていたガジェットが何時の間にかティアナが陣取る建物のすぐ傍を通ることに。と、ティアナが銃口の先に魔力弾を生成し、そのままの姿勢で足元に魔法陣を発生させた。「魔力弾? AMFがあるのに?」<いいえ、通用する方法があります>「うん。フィールド系の防御を突き抜ける、多重弾殻射撃」疑問を口にするシャーリーに、レイジングハートとなのはが答える。「確か、AAランク魔導師のスキルだったか? Bランクの奴がそんな芸当出来るとはな」「AA!?」ソルが少し感心したように呟き、それを聞いたシャーリーがちょっと驚いたのか若干大きな声を出す。次の瞬間、ティアナが気合の込められた声と共にトリガーを引く。「あ、撃った」「AMF突き抜けました」「ガジェットがガラクタと化しました」「キュクー」エリオ、ツヴァイ、キャロが状況を簡潔に口にし、最後にフリードがおめでとうと言わんばかりに鳴いた。SIDE スバル「父さん模擬戦、模擬戦しましょうよ!!」「うぜぇ……」ミッションを無事達成できたことに、私とギン姉とティアは一安心してなのはさんの所に戻ると、子ども達に囲まれて不機嫌な顔になっているソルさんを発見する。もしかして様子を見に来たのかな?「父様ケチですぅ、模擬戦の一回や二回いいじゃないですかー」「なんとでも言え」すると、エリオ達は親指を下に向けてブーブー言い始めた。「お父さんのケチー」「父さんのケチー」「父様ケチー」「うるせぇクソガキ共。学校サボった癖して偉そうに要求しやがって、丸焼きにしてやろうか?」「「「あっかんべろべろばー」」」「……良い度胸だ。そんなに灰になりてぇか?」子ども相手に沸点低っ!!「お兄ちゃん、それじゃあ子ども達の思惑通りだよ」やる気を全身から溢れ出させる子ども三人と、背筋も凍る程危険な光を眼から発するソルさんと、呆れている筈なのに何故かバリアジャケットを纏っているなのはさん。なのはさん、なんで準備運動してるんですか? ソルさんに向けている視線が狩人のそれなんですけど。ともかく、これからソルさんが子ども達相手に模擬戦するらしい。なのはさんとも、だよね?なんか急展開過ぎてついていけないけど、実はかなり興味がある。強い強いと聞いてはいるけど、私は実際にソルさんが戦っている姿を見たことが無い。見たことがあるのは、魔法無しでお母さんと殴り合っているのくらいだ。管理局の人間じゃないから戦闘データは最低限しか残さないらしいし、もし残っていたとしてもほとんどが秘匿扱い。ギン姉曰く、一般局員が見るには刺激が強過ぎるとのこと。更にソルさんは私に魔導師になって欲しくなかったから、そういう資料は一切くれなかった。それに、エリオ達がどのくらいの実力を持っているのかも気になるし、面白そう。ソルさんってプライベートと仕事をきっちり分けるタイプだから、ウチに遊びに来ても魔法の勉強とか何一つ教えてくれたりしなかったんだよなぁ。理由を聞くと「なんで仕事でもねぇのに俺がんなことしなくちゃなんねぇんだよ、面倒臭ぇ。いいか? 俺がナカジマ家に来る時は休養日だ。魔法はなるべく使わねぇって決めてんだよ」って一蹴された。「大丈夫なんですか、なのはさん? エリオ達がソルさんと模擬戦なんて」「大丈夫、心配要らないよ。何時ものことだし、お兄ちゃんってなんだかんだ言って手加減上手いし」ギン姉が心配そうになのはさんに耳打ちしてるけど、なのはさんは肩を竦めるだけ。「まあ、一応シャマルさんかユーノくんのどっちかを呼んではおくけど」心配要らないんじゃないんですか!?「あ、でもユーノくんって今研修中か。シャマルさんにしようっと」赤い宝玉の形をしたデバイス、なのはさんのレイジングハートが明滅した瞬間、突然空間モニターが現れた。モニターに映っているのはシグナムさんだ。一体どうしたんだろう? そんな風に皆が動きを止めてシグナムさんに向き直ると――『今、ソルが誰かと模擬戦を行おうとしていないか? だったら私もソルと模擬戦したいのだが……』真剣な表情でこんなことを言い始めた。「……エスパーかお前は」奇異な眼差しをモニターに向けるソルさん。『フフ、お前のことは何故か分かるんだ、なんとなくだが』「シグナム。何年も前から常々思ってたんだが、お前実はエスパーだろ。俺が毎回模擬戦しようって時に出てきやがって」『エスパーかどうか知らぬが……こちらは時間を持て余している。相手をして欲しい』言い終わるとモニターがシグナムさんの背後を映す。そこには死屍累々と転がる賞金稼ぎの人達。全員が山積みになって気絶している。「何があった?」『ソルに憧れていると言うので、どの程度の実力を持っているのか確かめてやったらこの様だ』暗に、全く情けない、と言っているようだ。「実力を見るのは別に構わねぇが、あんま潰すなよ」『お前が言うな。教会で新人殺しと謳われる鬼教官が』「お前も人のこと言えねぇだろが。ま、一度や二度叩きのめされたくらいで魔導師としての道を諦めるんなら、その方がそいつらにとって幸せかもしれねぇしな」なんか恐ろしい会話をさらっとしてる気がするんだけど。私は不安になってなのはさんの表情を窺うと、不思議そうな表情になって首を傾げる。『新人殺しの鬼教官?』なのはさんだけにこっそり念話を繋げてみた。『正確には鬼教官`Sだけどね』『なのはさんも鬼教官?』『勿論。私は”白い悪魔”って呼ばれてるよ。スバル達は魔導師辞めちゃった子達みたいに潰れないでね。明日から地獄だから』なのはさんは笑顔だ。でも、見ている者を不安にさせるような底冷えする綺麗な笑顔が、凄く怖い。……なのはさんから魔法戦を直接教えてもらえる、って感じに浮かれててそこまで気が回らなかった。教官は皆”背徳の炎”なんだった。今更だけど、とんでもない人達から師事を受けることになってしまったのだ。しかもお母さんの企みによって。(頑張れ、私超頑張れ!!)何かを誤魔化すように自分を鼓舞する私の視線の先では、ソルさん達は今日の仕事が一段落したら一家総当りで模擬戦しよう、と話し込んでいるのであった。SIDE OUT後書きソル=バッドガイがソル=ナイスガイに見えるのは仕様ですwwwwこの作品の設定では、”あの男”との決着がついた数年後にリリなの世界にやって来て、第0話から無印編にかけて五年という時間を戦いの無い平穏の中で過ごしていたので、初期の段階で原作より性格が軟化してます。そしてA`s編で生体兵器ギアである自分を受け入れてもらったことにより更に軟化。空白期中にツヴァイが制作され、エリオ、キャロを引き取ることによって自他共に認めるお父さんにクラスチェンジ。それがSTSに置けるソルです。でも、相変わらず子育てには絶賛頭抱え中www次元世界の平和なんてどうでもいい、と本編で言ってますが、そんなことはありません。GG2のキャンペーンモードでDr,パラダイムと戦闘中に交わされる会話で分かる通り、それなりに考えてはいます。(分からない人は、そういうもんだと納得してください)冒頭の発言はただ単に、ツンデレなだけですwwではまた次回!!