■06
「イヤッッホォォォオオォオウ!!」
お空からの急降下が恐ろしすぎてテンションがおかしくなっています。
僕は音速を超える速度で超高高度から降下し、そのまま次元航行船の外壁面に突入した。
正確には超高速人間弾丸と化した僕が壁ぶち抜いて中に突っ込んだだけです。
ぶっちゃけバリアジャケットなかったら死んでます、ミンチかひき肉になってます、あ、どっちも同じか。
ドガガガガッ、と無数の外壁を突き破りながら、しかし僕にはかすり傷ひとつありません。
僕にはこの出鱈目な防御力があるからこそ、こんなアホみたいなチート戦法が取れるわけですが正直気分は良くありません。
やたら頑丈なバリアジャケットに守られているとはいえ、かなり心臓に悪いです。
まあ、手っ取り早いのでこうゆう緊急時には便利ですが、あまり多用したい方法じゃありません。
ガァンッ、と最後の壁をぶち抜いて船内に出ました。
ズンッ、と落下の衝撃で床に大きな凹みをつけながら無事着地、顔を上げる。
同時に僕の目の前には今にもテロリストらしき柄の悪そうな茶髪男に射殺されそうな女性管理局員が見えました。
ワァーオ、いきなり修羅場ですか、そうですか。
本当ならこんなことに巻き込まれるのは御免なのですよ、殺し殺されの殺伐世界なんて嫌です。
大人しくどこか田舎で草花を育てて、密やかに花屋でも営めれば言うことなし。
そんな人畜無害な僕にこんなダイハードな世界観は肉体的にも精神的にも厳しすぎデス。
しかし、さすがにこの状況で見捨てるほど非情な人間ではありません。
見捨てたら後々夢見が悪そうですし。
非常に面倒ですが、人質を傷つけさせないようにして犯人を鎮圧しなければなりません。
ふと視界の端に、床にぶちまけられた無残な姿の花が写りました。
割れた花瓶、水浸しの床、その上に散らばる儚き花の命。
な、なんということをっ……!!?
……彼らに、いや、薄汚いテロリストどもに容赦する理由が今消えました。
見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!
見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!
美しき花の命を無下に扱う馬鹿どもにシヲ!!
さぁ、教育してやろう、チート主人公の闘争というものをっ!!
豚のような悲鳴をあげろ!!
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船内は高濃度AMFが満たされています、魔法が使えない事はないですが燃費は飛躍的に悪くなっています。
バリアジャケットを維持するだけでも結構な魔力が胡散霧消してしまいます。
僕としてはそんな状況でわざわざ燃費の悪い魔法を使いたくありません、疲れるだけですし。
というわけで、デバイスはバリアジャケット維持のみにリソースを使うようにして、左腰にさしておく。
それに非殺傷設定の『優しい』魔法など使う腹積もりなどありません、奴等は物理的に破壊してやりましょう。
精々、自分の犯した罪を悔い改めながら痛みに悶え苦しむといいのです。
そういうわけで、せっかくですから、ダウンロードされた格闘戦闘技能を使わせてもらいましょう。
「な、てめ、どこからきやが―――!?」
男が言い終わる前に手元の銃をすばやく掴み、同時にもう片方の手で男の手首をへし折ります。
支点と力点の作用を利用し割り箸を折るように力を込め、ゴキリ、と骨の折れる音といっしょに落ちた銃がポトリと僕の手に握られてあっさり形勢逆転。
念のため両手足の関節をすべて銃で打ち抜き無力化させておきます。
体重を支えるべき間接を破壊されて男の身体が床に崩れ落ちる。
この間僅か一秒、改めて自身がチートな存在だなと思い知らされます。
男が叫びだす前に側頭部に肘鉄をかまして意識を奪いました、男の悲鳴など聞きたくありません。
その際、ちょっと力を入れすぎて頭蓋骨に皹がはいったようですが、ま、どうでもいいです。
我ながらこの一連の所業になかなか残酷だなと思いますがもう慣れました、戦場で3年も過ごせば誰だってこうなりますよ。
それに哀れな花の命を散らしたコイツには容赦する理由がありませんし、別に死んでようがどうでもいいです。
まあ、骨と一緒に腱もブチ切ったし、両手足の関節も粉々だから、十分再起不能だね、ザマーミロ。
完全に男を無力化した後、先ほどまで銃口を向けられていた女性に向き直ります。
「お怪我はありませんか?」
見たところ外傷らしいものは見当たらないが一応確認をとっておく、助けた手前これくらいの気遣いは必要でしょう。
しかし女性は僕に返事を返す事もなく呆然と見つめ返してくるだけです。
ああ、恐怖心で混乱しているんですね、わかります、僕も初陣ではそうでしたから。
ただ僕の場合は条件反射で敵を殲滅してしまいましたけどね……ハハ、鬱だ。
それはともかく、女性の顔は酷いものです、鼻水とか涙とかで化粧が崩れてかなり見れたものじゃないです。
失礼ながら正直に感想を言うと、ぐちゃぐちゃで、腐ったゾンビみたいな顔してます。
もし恋人がこんな顔してたら100年の恋も冷めるというものです。
なんだか可愛そうなので服の袖で顔を拭ってあげました。
されるがまま年下の子供に顔を拭かれる大人の女性という姿はちょっと可愛かったです。
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