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※ちょっとイロイロきっつい描写とかあるんでR-15くらいにしときます、ご注意ください。
※アンチやグロ描写もあるので苦手な方は41話でダイジェストあらすじしますので飛ばしてください。
※ぶっちゃけ見なくてもストーリーに影響はありません、邪悪で腹黒なカガチが好きな人だけ楽しめる仕様になっています。
―Side:カガチ―
プレシアは正体不明の圧迫感に魔力も尽きはじめついに床へ膝をついてしまった、さらに吐血し床を赤く染める。
「あらあら、戦う前からそんなはしたない姿を見せられては私ついつい興奮してしまいますわぁ」
「ふ、ふざけっ……ゴホッゴホッ!?」
なんとか反論しようとするも、せりあがってきた血で咳き込んでしまい最後まで言えていない様子。
悔しそうに表情を歪ませるプレシアを見下ろしながら、私はこれからどう彼女を料理しようか考えていた。
全力で相手するとは言ったものの、あまり本気で攻撃してあっさり死なせてしまうのではつまらない。
長く苦しめて、苦しめて、苦しませ続けて、自分から死を願うようになっても苦しませて。
心が壊れて反応がなくなった頃にようやく殺してあげるのが最も楽しいのだ。
そして恐れ多くもエンハンスト様に手を出した罪を思い知らせるためにも、できるだけ苦しませたい。
だが今の弱りきったプレシアでは少し加減を間違えるとすぐに死んでしまいそうだ。
そのうえ今の私の武装は己の最強装備、手加減をするのもさらに難しくなってくる。
「それに本当なら、この力を使うと副作用(副作用:鳥頭)で少しの間お馬鹿になっちゃうので使うのを躊躇っていましたが、エンハンスト様を傷つけた貴女様は全力で嬲り殺すと決めたからそれもしかたないですわね」
少し悩んでいた所為か、つい考えていることが口に出てしまった。
まあ、つい殺してしまったらそれはそれで仕方が無いこと、精々長く苦しませるように努力するだけですわ。
目の前で床に膝をついているプレシアに向けて右手のデバイス(制御棒)を差し向ける。
こちらを睨み返す視線には未だ力が篭っており、彼女の心が折れていない証を私に教えてくれる。
「憎悪の篭った良い目ですわぁ、そんな素敵な目をしている貴女様の苦しむ表情をもっと見せてくださいな♪」
デバイスの先端に魔力を集中させて魔法発動に備える、同時に人工的な声でデバイスから警告が発せられた。
『☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢』
このデバイスで魔法を使用すると周囲に放射能が撒き散らされるため、スカリエッティがつけた機能だった。
だが今現在、周囲には私とプレシア以外に生命体はいない、私は誰に遠慮することなく魔法を放った。
「さぁ、究極の核融合で身も心もすべてフュージョンし尽くすがよいですわぁ! 『ニュークリアフュージョン』!!」
ギャゴォォォンッ、と金属が爆ぜるような爆音をたてながらプレシアの目の前の床が爆発。
その爆発で視界の全てが白熱に染まり、膨大な爆圧と熱が発生した。
数秒後、元に戻った視界に映ったのは歪みクレーターのように抉れた床と、熱で内装が全て融解した室内だった。
「あらあら、想像以上の威力が出てしまいましたわぁ、ちょっと力を入れただけでコレだなんて」
私はプレシアの目の前で小さな爆発をおこして軽く吹き飛ばす程度にしようと手加減したはずでしたが、予想以上に威力が出てしまいましましたわね。
彼女、生きていますでしょうか?
まさか、こんなことであっさり死なれては興ざめですわ。
プレシアの姿を探して部屋を見渡すと、隅の方で横たわる人影を見つける。
全身がボロボロで、皮膚は焼け焦げ、髪も半ば焼け落ちてしまい、無残な姿を晒している。
だが小さく胸が動いているのを確認して、まだ彼女の息があることに安堵の息がでた。
「……ぅ……ぐぁ……」
「ホッ、良かったですわぁ、なんとか生きていたご様子で私もとても嬉しいですわぁ♪」
バリアジャケットが彼女の命をかろうじて守ったのだろう、最早見る影もなくボロボロになっているが優秀な性能だったようだ。
勿論エンハンスト様のモノとは比べ物にならないレベルの性能ですが。
それにしても、やはりこのデバイスは強力ですが制御が難しいですわ。
戦いにおいてはすこぶる有利になれますが、相手を嬲ることにはあまり向いていませんわね。
現にプレシアはたった一撃でバリアジャケットがボロボロになり抵抗する力も失ってしまい、それ相応のダメージを受けて瀕死の状態になってしまった。
おそらくあと一撃同じような攻撃を受ければ消し炭と貸すこと間違いなし、ヘタすれば蒸発してしまうかもしれない。
それでは面白くない、残念ながらこのデバイスはもう使えないですわね。
もし使えるとしても、それはプレシアを散々痛めつけられた後、トドメを刺す時くらいしか出番はないでしょうし。
「あぁん、残念ですわぁ、せっかく使えると思ったのにたった一回で終わりだなんて、これじゃあ物足りませんわぁ」
「うぐっ……!」
ついゲシッ、と目の前で横たわるプレシアの脇腹に蹴りを入れてしまう。
それもこれも貴女様が貧弱な所為ですわ、まったくあれだけ大口はたいて大魔道士だなんて言っていたくせにふざけてますわ。
「ねぇねぇ、こうして馬鹿にした使い魔風情に足蹴にされるのはどんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?」
「ぅっ……ぐぅっ……あぐっ……ごほっ……!!」
ゲシッゲシッゲシッ、と何度も何度もプレシアの腹へ蹴りを入れる、つま先がめり込む度に彼女の口からゴポゴポ血が溢れるのが少し面白かったのでちょっとだけ気が晴れた。
「……? あらあら、汚いですわねぇ、こんなところでおもらしとは関心いたしませんわよぉ?」
異臭がしたのでプレシアの様子を見てみれば、彼女の下半身から血の混じった失禁が見られた。
腹を蹴りまくった影響だろうか、腎臓か膀胱が破裂したのかもしれませんわね。
つい気付かずに靴で踏んでしまった尿が不快だったので、彼女の顔に靴裏を擦り付けて汚れを拭った。
「あはは、汚れを取るつもりが貴女様の顔の血でもっと汚れてしまいましたわぁ、失敗失敗♪」
「がっ……!」
ガツンッ、とプレシアの鼻を強く踏みつける、軟骨の折れる感触が靴裏から伝わってきてとても心地よい。
彼女の口だけでなく鼻からも血が溢れ出す。
その所為で呼吸がしずらいのだろう、地上に打ち揚げられた鯉のように口をパクパクさせながら必死に呼吸している。
「アハッ、その姿とても面白いですわぁ♪ でもやはりこの程度じゃあちょっと物足りませんわねぇ、なにか貴女様をもっと愉しませてさしあげられることはできないものでしょうか……」
「ぐ、ぅぅ……!」
グリグリとプレシアの顔を床に踏みつけながら考える、どうすれば彼女をもっともっと苦しめてあげられるのだろうか。
肉体的にはこれ以上はちょっと難しいかもしれない、既に瀕死だしちょっとしたミスで簡単に死んでしまいそうだ。
ならば残された手段は精神的に苦痛を与える方法しかないわけですが……。
なにか良い方法はないかなと室内を見渡せば、部屋の片隅に転がっているガラスケースを見つけた。
よほど頑丈に作ってあるのだろう、ケースにはひびもなく歪みも無い。
その液体に満たされた中には女の子の亡骸が浮かんでいる、見た目に傷もなくまるで生きているような錯覚さえ覚える。
そこでふと名案が思いつく、プレシアの最も大切なもの、アリシア。
……コレは使えますね、私は自分の口がニヤリと三日月型に歪むのを自覚した。
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ボロボロになり身動きの取れないプレシアから放れ、アリシアのガラスケースへと向かう。
近寄ってみればなかなか大きい、全長で3メートルはあろうかというケースだ。
コンコンと表面を叩いてみるとやはりかなり頑丈に作られていることがわかる、生半可な攻撃では破壊は難しそうだ。
「……や……やめっ……アリしアに、近寄ら……でっ……!」
息も絶え絶えにプレシアから声がかけられる、さっきまで死んだみたいにぐったりしていたくせに急に元気になりましたわね。
やっぱりアリシアを使って彼女を精神的に苦しめるのは特に有効そうだ、ワクワクしてきた。
「ちょっと硬そうですが、今の私にはこの程度大したことありませんわぁ、えい♪」
ガラスケースに向かって空手チョップを振り下ろす。
ビシリッ、と硬質的な音を立てて一面に蜘蛛の巣状のひびが走った。
続いてひび割れたスキマから液体が漏れ出し、ついには雪崩れるようにケースは崩壊した。
バシャリ、と液体と一緒に床に投げ出されるアリシアの身体。
その濡れた金髪を掴んでプレシアのところまで引きずっていく。
ズルズルと床を引きずられた部分がこすれて傷つくが、どうせ死んでるんだし気にすることも無いでしょう。
「ア……アリシア……ッ!!」
私に引きづられてきた娘の姿をみてプレシアから悲鳴があがる、絶望と哀しみに満ちた良い声だ、もっと聞かせて欲しい。
プレシアの前まで来て私は片手でアリシアの髪を持ち上げその顔を見せつけた。
眠っているような表情、とても穏やかで、どんな死に方をしたのか知らないが顔には傷一つ無かった。
「さぁプレシア様、これからアリシア様がどうなっていくのかようく御覧になってくださいねぇ♪」
「や……やめっ……!」
ニコニコしながら私はまずアリシアの左腕を力任せに引き千切った。
ブチブチィッ、と肉の千切れる心地よい音が響き、取れた左腕はボトリと床に投げ捨てた。
既に死亡しているためでしょう、心臓が動いていないため血はほとんど出なかった。
「い、いやぁぁぁぁぁっ!! やめてぇぇぇぇっ!!!」
「アハ、そんなに大声が出せるなんてまだまだ元気一杯じゃあないですかぁ♪ その調子ですよ、ドンドンいきましょう」
たかが人間の屍骸を壊されたくらいで面白いくらいの反応です、これは楽しい。
もっと、もっと、そんな悲鳴を聞きたい、聞かせてください。
そのためにもアリシアをどんどん壊そう、できるだけ惨たらしく残酷に、見るに耐えないほど無残に。
「アハハハハッ!! さあ今度は右腕をやりましょうか? それとも足の方が宜しいですか? 内臓を引きずり出すのもいいですねぇ、いっそのこと首を捻じ切ってみましょうかぁ♪」
「お願いもう止めてっ! 私のアリシアを壊さないでっ!! そう、フェイト、フェイトの方を壊せばいいじゃない!!」
「だ~めぇですわぁ♪ 精々良い悲鳴をあげてくださいましぃ♪」
「そ、そうだわっ、アナタの条件を受け入れる! 投降する! だからお願いもう止めてっ!!」
「アハ、もう時間切れですわ、それにもともと私には貴女様を助ける気なんて毛頭ありませんの、エンハンスト様に手出しした時点で極刑確定ですわぁ♪」
「お願い、お願いよ、お願いします、私はどうなってもいいからぁぁぁぁっ!!」
「うふ、ふふふ、アハハハハハ!!」
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グチャリ、と肉の叩きつけられる音が室内に響く。
だがそれだけ、他には何の反応もなく静かなものだった。
「ハァ~、もう何の反応もしめさなくなってしまいましたわねぇ、まあそれなりに楽しめましたけど♪」
「………………」
プレシアの目の前でのアリシア解体ショーが始まってそろそろ30分。
既に原型がわからないほどグチャグチャに壊されてしまったアリシアの前で、プレシアは虚ろな目をして呆けていた。
最初の15分くらいは面白いほどに激しい反応をしてくれるので愉しんでいましたが、やがて心が壊れてしまったのか大人しくなり、ついには何の反応も返さなくなってしまった。
目の前でアリシアの心臓を喰らって見せても、頭をガジガジ齧っても反応しない、それに新鮮さがないので味も良くないですし。
プレシアは虚ろな目で口をあけたまま呆然とし、涎がこぼれてもまったく気にしていない。
まさしく廃人と呼ぶに相応しい姿になっていました。
「プレシア様、ご苦労さまでした、私とぉっても楽しめましたわぁ♪」
「………………」
ひとしきり余韻を愉しんだ後、一呼吸おくと私はもうすでにプレシアへの興味を失っていました。
久しぶりの楽しい時間でしたし、エンハンスト様のご命令も果たすことができた。
脱皮によって私自身の強化も図れましたし、今回は言うことなしの結果ですね。
「エンハンスト様へのご報告もありますし、そろそろ戻りましょうかねぇ」
そういって私がプレシアに背を向けた瞬間。
「……う、うわあああああああああああ!!!」
傍らに転がっていたデバイスを掴み、プレシアが奇声をあげて襲い掛かってきた。
最後に残った蝋燭の灯火のような命を絞りあげた魔力を込めた一撃。
だけどそれはにこやかな笑みを浮かべた私の左手によってあっさり止められてしまった。
「あらあら、壊れたのは演技だったのですね、最後の余興としてはなかなか面白かったですわぁ♪ バレバレでしたけど♪」
「ぐっ……ぐぅぅぅ……殺ス、殺してヤルっ!! アリシアの仇ぃ!!」
「ふふ、せっかくここまで頑張ってくださったのですから、お礼にプレシア様を私の栄養にしてさしあげますわぁ♪」
ミチミチと私の口が捕食用に変化してく、口元は大きく裂け、歯が鮫のようなノコギリ状のギザギザに変化、顎は胸元まで届くほど開かれた。
わかりやすく表現すると鮫か鰐のようなカンジ、捕食者の口と牙だ。
そういえば、一度エンハンスト様にこの姿を見せたら二度と見せるなと怯えながら必死の形相でお叱りを受けてしまいましたね。
この獲物から肉を食いちぎりるのに効率的な歯並びなんかとってもキュートだと思うのですがねぇ。
私は獲物を捕食しやすいように肉体を変化させると、一気にプレシアの胸元に齧り付いた。
二つの胸と肺、心臓を食い千切り、リンカーコアごと飲み込む、ゴクリと嚥下されたそれが体中に広がって私に潤沢な力を与えてくれた。
丸呑みしても良かったが、今回はあえて苦痛を味あわせるためにこうした。
……それに、試してみたいこともありますし。
「アハ、流石は大魔道士、とぉっても栄養満点で美味しいですわぁ♪ 私のナカでアリシア様とご一緒になると良いですわぁ♪」
「ごぷっ……!」
肺と心臓を失ったプレシアが血を吐きながら倒れる。
辛うじて即死だけはしなかった様子だが、心臓を失った今やあと数秒もせずに絶命するだろう。
このまま放って置いてもいいが、最後のトドメはせっかくデバイスを起動したのだからこれで決めておこうか。
「うふふ、プレシア様との楽しいお時間もこれで最後、少々名残惜しいですが、これでお別れですわぁ♪」
左手でプレシアのデバイスを掴んだまま、右手のデバイスをプレシアの眼前に突きつける。
そのまま魔力をデバイスの先端に集中させる。
『☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢』
デバイスからの警告音、私はかまわず魔法を発動させた。
「ではさようなら、『メガフレア』!!」
「ーーーーッ!!!」
至近距離から放たれた白熱の一撃は跡形も無くプレシアと側にあったアリシアの存在を消滅させた。
最後の瞬間、プレシアは悲壮な表情で『アリシア』と声にならない叫びをあげていたが、カガチにとっては全くどうでもいいことだった。
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アースラとの通信を妨害しているAMF装置解除スイッチを押す。
エンハンスト様も持っているAMF装置コントローラー、向こうで作動させ、私が解除する。
それは任務終了の合図であり、楽しい私刑(リンチ)時間の終わりでもある。
『エンハンスト様ぁ、全ての作戦終わりましたわぁ』
『……そうか、プレシアの説得はどうなった?』
『駄目でしたわぁ、真摯に説得してみましたが拒絶されてしまったので仕方なく処分いたしました』
『……そうか……仕方ない、か』
エンハンスト様から後悔の感情が伝わってくる、苦々しい感情だ。
このお方にしては珍しい、普段からほとんど私に感情を悟らせるようなことをしないというのに。
主にこんな感情をさせてしまったことを悔やむ以上に私の内心には喜びの心が湧きあがった。
こうして私に心を曝け出してくれることに無上の喜びを感じてしまったのだ。
『エンハンスト様が気になさる必要はございませんわぁ、救いの手を拒絶したのは彼女自身なのですから』
『……カガチ、ありがとう……』
『うふふ、使い魔として当たり前のことを言ったまでですわぁ♪』
エンハンスト様の心が落ち着くのがわかる、同時に私に対しての感謝の念も伝わってきた。
私の言葉でこんなふうに喜んでいただけるなんて嬉しすぎます! 思わず頭がフットーしそうですわ!
うふふ、うふふふふ、帰ったら言葉だけといわず是非肉体でもお慰めさせていただきますわ。
あぁ、すごく楽しみです。
『……もうすぐそちらにアースラから人員が向かうと思う、念のため顔を変えて変装でもしておいてくれ』
『わかっていますわぁ、秘密の協力者と言うことで正体は誤魔化すのでしたわね』
『……そうだ、詳しく聞かれても機密だから喋れないと言えば大丈夫だ、私からもそう言っておく』
『了解しましたわぁ、ではまた後でお会いいたしましょう♪』
『……ああ、大変な仕事、ご苦労だったな』
エンハンスト様との念話が途切れる、さあこれで私のお仕事は全部お仕舞い。
後は帰るだけですわね。
あ、それとエンハンスト様に言われたように局員に私の正体がバレるのを避けるようにしておきませんと。
変身魔法で姿をムキムキマッチョな筋肉男の姿に変える、私の趣味ではありませんがこれくらいかけ離れていれば誰も私の正体にはきがつかないでしょうしね。
その上に大きなマントとフードを被ってその顔自体も隠す、これだけ念入りにしておけば問題ないでしょう。
それと飲み込んでおいたジュエルシードも今のうちに出しておきませんとね。
花も恥らう雌蛇である私には人前で※はんすうする趣味などありませんし。
※一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むこと
私が変身して数分後、室内にドカドカと数人の局員達がやってきた。
みな室内の異様な惨状に驚き、次いで私の姿を見て警戒心を高めた。
中には緊張した表情でデバイスを向けてくる者までいる、あらあら、可愛い反応ですわね♪
「皆やめるんだ、この人はエンハンスト執務官の言っていた協力者だろう」
局員達の間から一人の少年が大声をあげる。
あの方はたしかエンハンスト様のお弟子さんのクロノ様でしたね。
なぜか頭に包帯を巻いているようですが、どこかでお怪我でもしたのでしょうか?
それに妙に力強い目をしています、私のいない間に何かあったのかもしれません。
「失礼しました、僕は時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンです、お名前を伺ってもいいでしょうか?」
「申し訳ありませんが機密ですので答えられません」
「……そうですか、ではここで何があったのか説明をして頂きたいのですが」
「申し訳ありませんがそれも機密ですので答えられません」
「……それも答えて頂けませんか」
クロノ様の表情が苦虫を噛み潰したように歪む。
でもその視線は私ではなくご自身の手に向けられ、「やはり今の僕では……」とか呟いてます。
よくわかりませんが申し訳ありませんね、エンハンスト様のご命令は私にとって最重要ですので。
でもちょっと気まずいのでさっさと帰りましょうか。
「これは確保したジュエルシードです、クロノ執務官に渡しておきます」
「はい……確認しました、確かに受け取りました……ところでなんでヌルヌルしてるんですかコレ?」
「機密です、では自分は任務が終了したので帰還します、よろしいですか?」
「え、ええ、仕方がありません……あ、最後に一つだけ」
「何でしょう?」
「貴方以外にまだ誰かここに残っていますか?」
「死体だけです」
「っ!!?」
「いや、正確には何も残ってません、プレシア・テスタロッサは跡形も無く消滅しました」
「……消滅……そう、ですか」
まあ、これくらいは言ってもかまいませんよね、どうせ調べれば血痕とかですぐにわかることですし。
クロノ様の顔色が先ほどよりも幾分悪いようにも見えますが、体調でも悪いのでしょうか?
くれぐれもヘマをしてエンハンスト様の足手まといにならないようにしてもらわなくては。
「では失礼します」
部屋から出ようとする私を避けるように局員の方々がザザザ、とよけていく。
その目には隠し切れない畏怖の感情が読み取れた。
うふふふ、心地よい視線ですわ。
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あぁ、それにしても楽しみですわねぇ、エンハンスト様の御褒美。
こんな簡単な仕事をするだけで『主様を一日自由にして良い権利』が手に入るだなんて超ラッキーですわ。
うふふ、今からいろいろ計画を立てておきましょうか。
いっそのことこれを機会に肉体関係まで一気に発展できれば私が卵を産むことができるのも意外と早くなりそうですし。
それもこれもプレシア様様ですわね、私を久しぶりに愉しませてくれましたし、本当にあの方には感謝ですわ。
「アハハ♪ 笑いが止まりませんわぁ~♪」
城主を失った時の庭園、その誰もいない通路でカガチの愉快そうな笑い声だけが木霊した。
変身を解除した彼女はぽっこりと膨らんだ下腹部を上機嫌に撫でながらクスクスと声を漏らす。
アリシアの亡骸を人質にプレシアを嬲り殺し、鬼畜外道な振る舞いを平然と行う邪悪な使い魔。
他者の苦しみを愉悦とし、弱者は全て餌と断じるその性根はまさしく人外の化け物と呼ぶに相応しい禍々しさを持っていた。
だが一つだけ救いがあるとすれば、この邪悪な使い魔の主に対する忠誠心だけは多少歪んだ形ではあるがまぎれもなく本物だということだった。
「あら、つい興奮しすぎて鼻血が♪」
ただし忠誠心は鼻から出る。
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