■37
アルフをオリ主必殺のナデポで一瞬にして沈黙させた後、バインドで縛って空中に放置した。
空間固定してあるので落ちることは無いだろう、まあ雨風に晒されることにはなるが。
さて、残るはフェイト嬢のみか、相変わらず服装が乱れまくっているので非常に目のやり場に困る。
できるだけ目線を他に逸らせて大事なところは見ないようにしているけど、いや紳士としては当たり前なんだけどさ。
べ、べつに後で皆からロリコン呼ばわりされるのが嫌だから紳士してるわけじゃないんだからね!
……ごめん、自重する。
ともかくモザイクもないものだから僕からはモロ、なんという裸の王様、これはちょっと大人として一言注意しておいた方が良いよな。
というか自分の状態に気がついていないのだろうか、さすがに下半身全裸ならわかると思うのだが。
いや、案外天然な子らしいから本気で気がついていないのかも。
でないとあんなに大胆な動きはできないだろうし、普通なら恥ずかしくて死ねる。
表情も目の前の竜巻相手に必死な様子で他に気を配る余裕はないのだろう。
ほら、また竜巻に吹っ飛ばされた。
こっちに向かってクルクル弾き飛ばされてくるフェイト嬢、丁度いいので受け止めておこう。
「うぁ! え?」
「……よっと、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫……です?」
「……それはよかった、私はエンハンスト・フィアット」
「えっと、フェイト・テスタロ って、貴方は誰!?」
今更かい、まあいいや、とりあえず君の出番はこれで終わりだから。
普通のオリ主ならここでフラグ立てとかするんだろうけど、今それどころじゃないし。
原作介入のためにもフェイト嬢にはここですみやかにリタイヤしてもらいます。
「……今は寝てなさい」
「っ!!? ……ぁ……」
フェイト嬢の額に手を当てて睡眠魔法で強制的に気絶させる。
本来の用途は医療用なんだけど、こういった時にはすごく便利だ。
フェイト嬢が気絶すると同時にデバイスが解除され、バリアジャケットも解除された。
そして現れる生まれたままの姿な美少女の裸体。
って、ぜぜぜ全裸やん!? こ、これはマズイ!
「ADA、彼女にバリアジャケットを」
『了解、アナザータイプを展開します』
一瞬にして構成されたバリアジャケットがフェイト嬢を覆う。
それは海賊の船長のような衣装で、まあ、ぶっちゃけ漫画『武装錬金』のやつそのまま。
いや、便利なんですよコレ。
重要人物の護衛とか、危険地帯で人命救助するときとかかなり重宝します。
とはいっても通常の2倍以上の維持魔力を要求されるわけだからデメリットもないわけじゃないけど、そう大したものじゃない。
眠ったフェイト嬢をアルフ同様にバインドで縛り空中に固定しておく。
これであと残すのは目の前で暴れ狂うジュエルシードの竜巻だけか。
ほっとくわけにもいかないし、封印する前に一度強力な魔力アタックで沈静化させないと。
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さてやりますか、何がいいかな、身体のこともあるからあんまり強力すぎるのは使えないし。
『バーストショットの使用を提案』
「……威力が足りなくないか?」
『最大値まで魔力チャージをすれば問題ありません』
「……よし、任せる」
デバイスを頭上にかかげる、先端に小さな球体が形成されていく。
本来ならこれをそのまま射出するが、今回は威力を上げるためにできるだけこの球に魔力を注ぎ込んでいく。
『チャージ開始』
グーーーン、とみるみる大きくなっていく魔力球、あれ、こういう光景どこかで見たことがあるような……。
そうだ、フリーザ様のデスボールだ、あれそっくりじゃん。
どうせならかめはめ波とか元気玉とかそっち方面が良かった、なぜよりにもよってフリーザ様なのか。
あれか、結局僕には悪役がお似合いとでもいうのだろうか? orz
『チャージ完了、撃てます』
ADAから発射合図の声がかかる、よし、できるだけ嵐の中心地を狙って。
「……バーストショット!」
デバイスを振り下ろし巨大魔力球を撃ちだす。
その巨大さゆえにゆっくりと海面に沈んでいくように見えるが実際はかなり早い。
乱立する竜巻を粉々に吹き飛ばし、海面に接触した瞬間からすべてを蒸発させていく。
球体は半分ほどまで海面に沈んだ辺りで強力な爆発を引き起こして周囲を薙ぎ払った。
後に残ったのは円形に抉れたクレーター上の海面とわずかに見える海底の底。
そこも、すぐに海水が押し寄せ見えなくなった、後に残されたのは今までどおりの海面のみ。
……ちょっとやりすぎたか、あれじゃあ嵐どころか海中の魚とかも全滅しちゃったかもしれん。
一瞬だけど海底の土が見えてたし、海産物たちよゴメンな。
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『ロストロギア、六個の封印を完了』
目の前にジュエルシードが浮かび上がってくる、そのうち一つを手にとってみた。
青くて綺麗なもんだ、こんなちっさな宝石が世界一つを崩壊させる危険性を孕んでいるというのだから物騒極まりない。
先ほどの爆発でついた汚れを払うようにズボンのポケットをパンパンと叩いて払った。
フェイト嬢とアルフのいる方向をみるとまだ気絶している様子だった、このままアースラにいくまでそうしてくれていると助かる。
そう思いながら二人のもとへ向かおうとした瞬間。
『次元干渉、別次元から魔力攻撃を感知』
どんよりした雲の向こうから紫色の雷光が降り注いできた。
すさまじい威力だ、さきほどフェイト嬢が放ったものよりも数段上の力が篭っている。
降り注ぐ雷光の一つが僕に直撃した、これを待っていた。
「……ぐわぁー」
わざとらしい悲鳴を出しながら海に落ちる、途中フェイト嬢にも雷光が落ちていたように見えたが問題あるまい。
なぜなら僕らはまったくダメージを受けていないのだから。
シルバースキンのチート防御力を舐めてもらっては困る、ちょっとだけ電気で痺れたけど。
空中に浮いていた六個のジュエルシードとフェイトのデバイスが空の雲に吸い込まれていく。
行き先はプレシア・テスタロッサの居城、時の庭園だろう。
さてと、ここからが原作介入の第二段階なわけだが、上手くやってくれよカガチ。
……あ、そういえばフェイトはともかくアルフは駄目じゃん。
案の定、フェイトの側で雷光の巻き添えを食らって感電していたアルフは今度は先ほどとは別の原因で気絶していた。
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気絶したままの二人を連れてユーノ君と一緒にアースラへと帰還した。
戦っている間ずっと描写がなくて空気扱いだったが、ちゃんとユーノ君も活躍していた。
結界を維持しながら周囲への被害を抑えるというあまりにも地味な役割だったわけだが、それゆえに大事な役割とも言える。
大丈夫、きっとなのは様ならその活躍だって見てくれているはずさ。
二人を抱えたまま転送ポートから出るとクロノとなのは様がこちらに駆け寄ってきた。
「二人とも無事か!? 特にエンハンストとそちらのフェイトとかいう子は攻撃をもろに受けていたようだが」
「エンハンストさん! け、怪我はありませんか!? それにフェイトちゃんもぐったりしてるし!?」
どうやら心配してくれていたらしい、こういう出迎えは地味に嬉しいよね。
それとなのは様、心配なのはわかるけど体中ところかまわずペタペタ触るのはカンベンしてくだしあ。
なんだかくすぐったくてむず痒いです、身長差的にも腰付近が重点的でなんか犯罪っぽいのでやめてくださいな。
「……大丈夫、怪我はない、心配してくれてありがとう」
「べ、べつにエンハンストのことを心配したわけじゃない、ただ確認のためだ、そう確認っ!!」
「よかった、二人に怪我がなくて本当によかったよぉ~!!」
せっかくお礼をいったのに誤魔化すクロノ、なんだかツンデレっぽくて気持ち悪いから自重しろ。
そして再び涙ぐむなのは様、この子最近泣き癖ついてないか、それほど心配してくれたのかと思うと嬉しくなるが。
どうせなら僕やフェイト嬢じゃなくて片思い中のユーノ君の心配をしてあげたらすごく喜ぶと思うんだけど。
「な、なのは、僕も怪我はないよ!!」
「え、あ、うん、よかったねユーノ君……」
「……………」
これはひどい、なんというスルー。
さっきまで張りきっていたユーノ君なんか orz と膝をついて落ち込んじゃったし。
いくらフェイト嬢のことが心配だったからといってこれではあまりにもユーノ君が不憫でならない。
元気を出せユーノ君、僕はこれからもなのは様と君の仲を応援するぞ。
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フェイト嬢とアルフはそれぞれ別室に閉じ込めておくことにした。
用心のためにもフェイト嬢は僕の自室に収容し、アルフは獣ということもあって簡単な治療を施して獣用の檻部屋に入れた。
気絶しているうえにバリアジャケット下は全裸なフェイト嬢の面倒を見るとなのは様が立候補してくれたので、彼女にも僕の自室に入ってもらうことになった。
申し訳ないがそうなるとなのは様には暫く部屋から出れなくなると説明したが、それでもかまわないと言われたので僕もOKを出した。
フェイト嬢のお世話をなのは様に頼み自室を出た後、僕はまずカードキーを使って室内からも室外からも出入りができないように設定した。
次に部屋全体に強力な結界を張った上ですべての情報をシャットダウンするようにもした。
これでこの部屋を出入りすることは僕を倒さない限り実質不可能となったわけだ。
ここまで厳重にしたのも万が一のことを心配しての処置である。
これからPT事件が終わるまで二人には絶対に外出してもらうわけにはいかない。
最終的にどういう結末になるにしても、これでフェイト嬢の出番はここまでとなる。
これは僕の考えた原作介入のためにも絶対条件といえる事だったからだ。
一通りの処置を終えて今度は艦橋へと向かう、リンディさんにもいろいろ説明するべきことがある。
と、いうよりぶっちゃけて言えば僕のお叱りタイムなわけだが、好き勝手している責任だと思えばしょうがないね。
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艦橋に入ると真っ先に目に付いたのは慌てた様子の局員達だった。
エイミィもコンソールに向き合いながら四苦八苦していた。
「……なにがあった?」
「エンハンスト執務官が攻撃された時、アースラも同じように次元跳躍攻撃を受けていて一部機能不全にされた」
クロノが苦虫を噛み潰したような表情で教えてくれた。
なるほど、原作でもそんな描写があったな、フェイト嬢のことばかり考えていてすっかり忘れていた。
「おかげで攻撃元の座標を追いきることができなかった、すなない……」
「……気にすることは無い、それに座標はわかっている」
「それはどうゆうことかしら?」
リンディさんが問い掛けてくる、視線が厳しいのは気のせいじゃないんだろうな。
先ほどの権力振りかざした僕の独断に対する非難も含めてその視線は絶対零度だ。
それにこれまでのこともあって警戒心100%って感じだし。
まあ、それが目的でもあったわけだからかまわないんだけど。
実際にこうやってその視線に晒されてみるとなかなかに辛いものがあるね。
思わず土下座でもして謝って気楽になってしまいたい気分になってくるよ。
どっちみち事件解決まではしたくてもできないんだけど、カガチの暗躍がバレる危険性があるし。
まだまだ悪人エンハンスト・フィアットを演じ続けなければいけないということか……トホホ。
「……この事件の首謀者、プレシア・テスタロッサの居場所はわかっていると言っているんですよ」
「そう、首謀者の名前まで特定しているわけね、まあ、それはこの十日間の調査で私達も薄々気がついていたことだけど」
「実際に見てもらった方が早いでしょう、座標 876c-4419-3312-b699-3583-4149-7792-f312 に合わせてみるといいですよ」
「エイミィ、お願い」
「ハイ、わっかりましたー!」
エイミィがすばやくコンソールをたたいていく、打ち込まれていく座標。
最後に決定キーを押すと同時に時の庭園の全体像がモニターに映し出される、周囲から驚きの声が上がった。
巨大な岩を削って作ったような形の建築物、今はその全体から禍々しい雰囲気が漂っている。
「これが……エイミィ、詳細な情報はわかるかしら?」
「すいません、そこまでは……」
「そう、仕方ないわね、エンハンスト執務官」
「……なんでしょう?」
「貴方がどうやってこの座標を特定したのかは後でじっくり伺うとして、これから私達はどうすべきだと思うかしら?」
「……それを判断するのはリンディ提督の仕事では?」
「あくまで参考までによ、率直な意見を聞かせて欲しいわ」
「……相手はジュエルシードを保持し、そのうえ次元跳躍魔法まで使いこなす強敵です、そのうえあそこは敵の本拠地、どのような戦力や罠があるかわかりません、それらの危険度を考えたら私とクロノの二人を同時に投入し早期に制圧すべきかと、少なくともどちらか一人はいかせるべきです、自分が貴女の立場ならそうしますね」
「ジュエルシードが相手の手に渡ったのは貴方の責任では? その所為で危険度が上がってしまったことについては言い訳はないのかしら?」
「……本当にそう考えているのですか? 私が何の考えもなしにただ見送ったと思っているのですか?」
「どういうこと? 貴方の自分勝手な行動の結果がこの」
「母さん! 今はそんなことを言い合ってる場合じゃないだろう!! まず目の前の事件解決に集中すべきだ!!」
「……そうね、その通りよ、皆ごめんなさいね、エンハンスト執務官、この話は事件解決後にまたしましょう」
「……わかりました」
とりあえずこれで一難去ったと考えるべきか。
まあ、あまり安心できる状況じゃないけどね。
つーか、リンディさんの問い詰めコエー ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル
「目標拠点に武装局員を二小隊送り込みます、急ぎ準備を整えてください、クロノ執務官はいざという時のためにここで待機、エンハンスト執務官も同様に願います、ただし指揮系統から外れているので強制はできませんから、あくまで要請といった形で言っておきます」
「母さ、リンディ提督、僕も行きます!」
「駄目よ、不確定要素が多すぎるわ、私達に失敗は許されないのよ」
「……くっ!」
原作どおりと言えばそこまでだけど、僕もいるんだからクロノを送り込んでもいいと思うんだけどな。
それともまさか僕のことを警戒してクロノを出せないとか?
そりゃあ過剰評価しすぎですよリンディさん、僕はこれ以上ナニカする予定はないですからね。
あとは全部僕の使い魔がやってくれることになってますし。
だけど、今ここでそんなことを言っても簡単には信じてもらえそうにないし。
リンディさんがかつて無いほど僕のことを警戒してるし、どうしたものか。
今後のことも考えるとカガチの存在を暴露するわけにも行かない、暗躍もしづらくなるだろう。
……でも一応、できる範囲で言うだけ言っておくか。
「……リンディ提督、無駄なことはやめておいた方が良い、先ほど意見を求められたので考えを述べたが、実は僕が既に対策は取ってある、詳しくは機密に関わるので話せないが部隊派遣は必要ない」
「だとしてもそれは貴方の勝手に行った対策です、必ず成功するという保証はありません、私達は貴方の行動にもう口出しできませんが逆に貴方が私達の作戦行動に口出しすることもやめてください、私達は自分の職務をまっとうしているだけなんですから」
「……わかりました、ご自由に」
「ええ、そうさせてもらいます」
やっぱ駄目だったか。
しょうがない、あとは成り行きを見守ろう。
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