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緊急特番!!
『新型艦ジャック事件』における人々の反応を突撃インタビュー!
事件解決に多大なる貢献し、単身で宇宙まで赴いた我らが英雄エンハンスト・フィアットの新事実!!
彼は古代ベルカ王族、聖王の末裔だった!!
我々クラナガン報道局はこれらの真実に迫り関係者の皆様に独占インタビューを成功させました!
本日は予定されていた番組を変更して、緊急特番を放送したいと思います!
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―Case①:時空管理局―
Q:地上本部に無人戦闘機が襲撃した時、皆さんは魔法が使えなかったと伺いましたが?
A:ええ、敵にはAMFという魔法を無効化する技術が搭載されていて、あの時は本当に絶望的状況でした。
Q:それでも皆さんは自力で戦い、地上を守りきったのですから凄い事ですね!
A:あの時は皆必死でした、でも怯える私達を守って一人孤独に生身で戦うエンハンスト執務官の鬼気迫る姿を見て勇気が湧きました、「自分達だって彼と同じ時空管理局員なんだ!」と思うといてもたってもいられなくて、実際に戦っている間は皆何か不思議な力に後押しされたように奮戦できましたし、結局地上本部は新しく立て直さなければいけないほど破壊されてしまいましたが、私達の正義に燃える熱い心は決して破壊されることはありませんでした。
Q:生身で戦った皆さんの中には、武闘派で知られるレジアス少将も混ざっていたと聞きましたが?
A:事実です、少将はもともと魔力を持たない方でしたが、その分我々よりも肉体的には鍛えていたのでしょう、エンハンスト執務官の覚悟を聞くやいなや敵軍に飛び掛り、その恐るべき胆力でベルカの騎士もかくやと言わんばかりの八面六臂の大活躍でした、なんと一人で敵機を18体も仕留めていました、今回の大手柄で中将に昇進するという噂もあるくらいです。
Q:そういえば、レジアス少将の娘さんは以前エンハンスト執務官に命を助けられた経緯があるとか?
A:ええ、私達の間では有名です、8年ほど前になりますがテロリストに占拠された航行艦に乗っていたオーリスさんが撃ち殺される寸前、突入してきた執務官が危機一髪で彼女を助けたそうです、そりゃあカッコよかったらしいですよ。
Q:ではオーリスさんにとってはエンハンスト執務官は命の恩人だということですね、もしかして彼女は熱烈なエンハンストファンだったりするんでしょうか?
A:熱烈なんて言葉じゃ生温いくらいですね(苦笑)、オーリスさんの近くで執務官の悪口でも言おうものならボコボコにされちゃいますよ、執務官がTVとかで放送されているときのオーリスさんの純情乙女(うっとり)した表情は普段の冷徹っぷりとのギャップもあって一見の価値ありですよ。
Q:では最後に、これからの抱負や目標などがあればお聞かせいただけますか?
A:そうですね、今回のことで我々は真の正義と勇気をもって事に当たれば魔力に頼らずとも戦うことができることを知りました、今後は魔法の才がない人材も積極的に鍛え武装局員として採用していく計画がレジアス少将を中心として動き始めています、変わりますよこれからの管理局は、期待していてください。
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―Case②:ジェイル・スカリエッティ及びナンバーズ―
Q:えーと、皆様はエンハンスト執務官のご親戚と伺いましたが、なぜ全体的にモザイクがかかっているのでしょうか?
A:気にしないでくれたまえ、こちらにも諸事情があってね、身元がバレるといろいろ危険なのだよ、君も報道に携わる者ならわかるだろ?
Q:え、ええ、テロリストなどに狙われる危険性もありますしね、ではさっそく質問ですが皆様とエンハンストさんのご関係は?
A:僕は兄的存在だね、こちらの皆は妹的存在と言ったところかな。
Q:妹さんたちは大人数ですね、エンハンスト執務官とは仲はよろしいのですか?
A:そうだね、毎月必ずいっか「あ、兄上大好きですっ!!」ちょ、チン(ピー)いきなり叫ばないでくれたまえよ。
Q:末の妹さんはちょっと緊張していらっしゃる様子ですね?
A:普段は落ち着いてる娘なんだが、エンハンストのこととなるとたまに暴走する時があってね。
Q:エンハンスト執務官が宇宙でテロリストと戦っているとき、皆様はどういう心境でしたか?
A:実はそれほど心配してなかったんだ、エンハンストなら必ず何とかしてくれる、そういう確信があったからね、でもまさかあそこまで大活躍してくれるとは嬉しい誤算だったよ。
Q:妹さん方はエンハンスト執務官をどう思っていますか?
A①:エンハンストお兄様には普段からご迷惑かけっぱなしでしたが、いやな顔もせずいつも私達を助けてくれる頼もしいお兄様です。
A②:もっと、もっと、仲良くなりたいですわね……性的な意味d(放送倫理上カット)。
A③:……目標。
A④:『お兄ちゃん♪』って呼ぶと凄く喜ぶんです、可愛い人でしょう?
A⑤:あ、兄上はもっとも尊敬し、敬愛する男性です! いつか兄上と、その、あ、あ、愛じn(放送倫理上カット)。
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―Case③:聖王教会―
Q:こんにちは、カリムさんはなんとあのエンハンスト執務官の婚約者とお伺いましたが?
A:ええ、本当ですわ、彼とは将来を誓い合う関係です。
Q:なんというか、同じ女性として凄く羨ましいですね、殴ってもいいですか? いいですよね?
A:ちょ、何この人!? 目つきが怖いんですけど!! あ、シャッハ(ドスッ、ドカッ、バキッ、ボコッ)。
Q:……すいません、少し取り乱しました、お話の続きですが、普段はエンハンスト執務官とはどのようにお過ごしになられているんですか?
A:え、ええ、彼も立場上あまり暇が取れないですから、二・三ヶ月に一度いっしょにデートに出かけたりするくらいですね、町に出かけたり、買い物したり、ごく普通のデートですよ、あ、でも彼はいつも世間知らずな私を男性らしくエスコートしてくれるので凄く助かっています、つい最近も二人で―――(以降1時間ほど惚気話しが続く)。
Q:なんだよそれ、十分羨ましいじゃん……あ、いえいえなんでもないです! では今回エンハンスト執務官が古代ベルカの王族に連なる聖王の末裔であることが判明しましたが、聖王教会での反応はどうなんでしょうか?
A:すごい反響ですね、いわば現人神になるわけですから、ベルカではどこもかしこもお祭り騒ぎですよ、上層部でもどういう対応をとるかでいろいろ揉めているようです、あとなぜか私の護衛が腹切自殺を遂げようとしました、未遂でしたけど。
Q:婚約者であるカリムさんはそのことをどうお考えで?
A:シャッハの腹切自殺のことですか? あ、ちがうんですね。 えっと、私個人的には聖王である立場の彼よりも、これまで接してきた婚約者であるエンハンスト・フィアット個人を大切にして接していきたいと思っています、なによりこれまでの二人で過ごしてきた楽しい思い出がありますから(頬を染める)、もちろん聖王である彼の立場も考慮していますが。
Q:うぐぐ……で、では今回テロリストとの戦いで危うい場面もありましたが、その時はやはり心配だったのでは?
A:ええ、あの時は本当に生きた心地がしませんでした、実際彼が砲撃に飲み込まれたときはショックで気絶してしまいましたし、その後彼が生きていたことを知って人目も憚らず泣いちゃいました、あの時の彼の黄金色に輝く雄姿、今でも忘れられません。
Q:では最後に婚約者であるエンハンスト執務官に何か一言あればどうぞ。
A:お体に気をつけて絶対無理をしないようにお仕事頑張ってください、あと先月いただいた花の苗がやっと開花したんですよ、こんど是非見にいらしてくださいね、両親も是非お会いしたいと言ってました。
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―Case④:クロノ・ハラオウン―
Q:クロノ執務官はエンハンスト執務官の唯一のお弟子さんと伺いましたが?
A:本当です、僕が以前管理局で問題をおこして腐っていた時に無理やり助け出してくれたのがエンハンスト執務官でした。
Q:失礼ながらクロノ執務官は未だに『ハラオウンの問題児』と揶揄されることが多々あると聞きます、本人はそのことについてどうお考えですか?
A:全て僕の自業自得です、反論のしようもありません、ですが過去の不始末は今後の活躍で挽回していくつもりです。
Q:そういえば、今回の事件でさっそく大活躍をされたそうですね? 最初に襲撃を受けた次元航行艦から乗務員を速やかに脱出させ艦ごと壁とすることで主砲から星を守るよう的確な指示を出し、その後は市街地を襲撃していた無人戦闘機をろくに魔法も使えない状況下にもかかわらず生身で、しかもたった一人で百機以上倒したとか。
A:いえ、まだまだ未熟です、たまたま乗艦していた艦が事件に巻き込まれたので乗組員の脱出を先導したのは執務官として当たり前のことをしたまでですし、それにとっさのこととはいえ貴重な艦を犠牲にしてしまいました、今回自分ができる精一杯を尽くしましたが民間人にも多くの被害がでました、反省点も多いです。
Q:そうですか、ところでエンハンスト執務官との訓練は辛かったですか?
A:正直に言えば地獄でした、訓練中によくエンハンスト執務官が口癖のように「痛くなければ覚えませぬ」とか言うほどでしたし、思い出したくもないような辛く厳しい内容ばかりでしたが、今になって思えばどれも見事に僕の糧になってくれています、今回のことでも魔法を使えない状況下を想定して徹底的に白兵戦の訓練をした結果が発揮できましたし。
Q:クロノ執務官の戦う姿を見ていた人達から『魔法でもない不思議な回転攻撃を繰り出していた』との話しを伺いましたが、それはどういったモノなのでしょうか?
A:アレは辺境の地で修行していたときにエンハンスト執務官が教えてくれた『超級覇王電影弾』です、管理外世界で編み出された奥義の一つなのですが、修行しだいでは魔力が無い人でも使える凄い技ですよ、そういえば今度地上本部の方でもこういった実践武術を局員に学ばせようという試みがあるそうです。
Q:未だ年若いクロノ執務官ですが、将来はやはり上の官僚職を目指すのでしょうか?
A:まだ将来的なことは何も考えていません、師であるエンハンスト執務官のように、ただただ今の職務に全力で臨むことだけをしばらくは考えていくつもりです。
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―Case⑤:一般市民(ミッドチルダ)―
Q:今回、市街地および一般市民にも多くの被害が出た事件ですが、当事者としてはどう思いますか?
A:確かに恐ろしい事件だった、事前に何か対策ができたのかもしれないと管理局を責めることもできるかもしれない、でも目の前で生身で戦い命がけで私達を守った管理局員の方々を見て誰もそんな気にはなれなかった。
Q:一般市民の中にも自発的に戦いに参加した方も多くいたと聞きましたが。
A:モニター越しにたった一人で勇敢に戦うエンハンスト執務官の「大切な存在を守る!」という言葉に皆が強く勇気付けられた、誰もが家族や友人を守ろうと立ち上がった結果だと思う。
Q:戦った人たちの中にはそのまま時空管理局に就職を希望する人も多くいるらしいですがどう思われますか?
A:良いことだと思う、最近はちょっとずつ解消してきているとはいえ、いまだ管理局は慢性的な人材不足だというし、今度の事件で戦う自信を身につけた人たちが今後も活躍してくれるのなら市民側としてもありがたい、あの事件の最後にエンハンスト執務官が犠牲者にたいして流した悔し涙を見て、彼一人にだけ重過ぎる責務を任せるわけにはいかない、と感じた人も多かったことも影響していると思う。
Q:今回の活躍でエンハンスト執務官人気がますます上がりそうですがどう思われますか?
A:彼ほどの大活躍なら当然だし社会的にも良い影響もあると思う、子供達がエンハンスト執務官をモデルにしたアニメや映画をみて彼を見習い道徳心を養ったおかげで犯罪率がグンとさがったし、彼に憧れて管理局に就職を希望する若者も激増した、ただ中高年の女性達が生み出したエン様ブームにはちょっとついていけない(苦笑)。
Q:エンハンスト執務官が古代ベルカ王族、聖王の末裔であることが判明しましたが今後どうなっていくと思いますか?
A:ベルカ自治領や聖王教会からすればなんとか彼を確保し自陣へ引き込みたいと考えるだろうが、一市民の立場から言わせてもらえばそういうことはあまり無理強いしないで欲しい、数百年前とは違い現代において優先されるべきはエンハンスト執務官個人の自由意思なのだから、でも正直なところはやっぱり彼にはこれからも執務官として頑張って活躍して欲しいかな。
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―Case⑥:一般市民(ベルカ自治領)―
Q:町中すごいお祭り騒ぎですね、やはり聖王様が見つかったことが大きいのですか?
A:ええ、勿論です! 数百年前に途絶えてしまったと思われた聖なる血筋がいまだ存続していたんですから、これほど喜ばしいことはありませんよ! さあ貴女もいっしょに祝いましょう!
Q:エンハンスト執務官は時空管理局所属の人物ですが、今後は聖王教会に所属することになるのでしょうか?
A:私達としてもそうしていただけるならばこの上なく嬉しい事ですが、一市民であり信徒の立場から言わせてもらえばあまり無理強いはしたくありません、これまでのご活躍や経歴からみても聖王様は時空管理局でこそ大活躍してこられたわけですし、規模の異なる聖王教会ではむしろ聖王様の足手まといになってしまう可能性すらあります、聖王様が望むのならばこれからも管理局にてご活躍することになるでしょう。
Q:ベルカ自治領全体としては新しい聖王にたいして歓迎ムードですが、反対勢力はいないのでしょうか?
A:当然、聖王様を快く思わない人たちも少なからずいます、悲しいことですが皆が皆信心深い者とも限りませんし、逆にアレは偽者だとか、時空管理局に所属しているので認められない、とかそういう卑小な者もいます。
Q:今後、聖王となったエンハンスト執務官に何を望みますか?
A:まずその御身を第一に大事にしていただきたいですね、今回の事件でも危うい場面もあって肝が冷えました、そして婚約者のカリム様と早く子を成していただきたいですね、大切な血筋ですので。
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―Case⑥:最高評議会―
Q:今回こうしてインタビューに答えていただき大変ありがとうございます、諸事情によって顔は移せず音声のみとなりますが皆様ご了承おねがいします、さて最高評議会の皆様は今度のエンハンスト執務官活躍をどう思われましたか?
A:素晴らしい活躍である、管理局員全員が手本とすべき人物と言ってよい。
Q:ここ最近の時空管理局の活躍は特筆すべき点がいくつもありますが、その成功の秘訣となったのは何だと思いますか?
A:まず人材不足の解消、これまで慢性的に悩まされてきた問題であるが、エンハンスト執務官をモデルとした番組を世界中に放送したところ、その影響で若者の志願率が激増したことだ、そのうえ犯罪率まで下がったのは嬉しい誤算だった、相対的に各次元世界における治安が向上した、これまで暗躍していたテロ組織がエンハンスト執務官の活躍で次々と摘発できたことも影響にあるな。
Q:エンハンスト執務官が聖王の末裔であることが判明しましたが、今後ベルカの聖王教会とはどういった関係になるのでしょうか?
A:エンハンスト執務官本人の意思はこのまま時空管理局で仕事を続けることである、そしてすでに聖王教会とは名家の子女カリム・グラシアと婚約しており強い繋がりができているので、これからは両組織にとってもより強固な連携と協力が期待できると思われる。
Q:今後の管理局はどう変わっていくのでしょうか?
A:ますますの治安向上と人々の意識改革を目指す、これまで我々時空管理局がほぼ単独で維持してきた平和を世界中の皆が一致団結して支えるように意識をシフトしていく、これには誰かに頼るのではなく自ら行動する意思が必要となる、そしてそれを纏める中心となる人物、おそらくそれはエンハンスト・フィアットになるだろう。
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いかがだったでしょうか?
今回の緊急特番、数多くの方から貴重なお話を聞くことができました。
残念ながらエンハンスト執務官本人からのコメントは現在多忙を極める状況らしく、いただけませんでしたが。
今後ますますの活躍が期待されるエンハンスト執務官を知るうえで今回のインタビューが参考になれば幸いです。
では、またいつかお会いしましょう!
―――この番組はクラナガン報道局がお送りしました。
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