「行ってきます!!!!!」「姉御~あんまり張り切らないでくれ~」「多分、聞いてないな。獲物を前にした狼のようだ」「あたしも嵐に呼ばれたから行ってくる」「ああ、気をつけていけよ」「アリシアは大丈夫かしら…」第72話「ニャンニャン…ニャン!?」side--少女、ヴィヴィオがアリシアに連れられ、物陰に隠された後すぐにヴィヴィオは目を覚ました。何だか暖かい手が自分の頭に乗った気がして目を開けてみると、そこには誰もいない。寂しくなってうろついている内に上から少しだけ明かりが漏れている場所を見つけ、そこを最後の力を振り絞り、上がったところで力尽きて再び気を失ってしまった。しかし、そこを運よくキャロとエリオに発見されて無事保護された。そして、六課の新人たちは、ヴィヴィオをシャマルに預けた後、ヴィヴィオの持っていたケースの鎖が断ち切られている跡を発見しもしかするとまだレリックの入ったケースがあるのかもしれないと考えていた矢先に地下からガジェットの反応が発見された。そして、現在スバルたちは地下を走ってレリックのケースを探している。「ケースの鎖を見てみると、明らかに切られたような跡だったから、魔導師が関わってると思うからみんな油断しちゃ駄目よ」ティアナがケースを見て気になったとこは、ずばり切られた断面だった。千切れたのだったら千切れた感じに鎖はなっている。しかし、あのレリックのケースについてあった鎖は明らかに切られたような跡だった。実際にアリシアとリニスによる魔法なのだが、リニスの細かすぎる魔力制御によってアリシアの手が名刀程の切れ味を持ってしまった故だが。「魔導師…もしかしてなのはさんの…」スバルは、以前自分たちの前に立ち塞がった敵。自分の尊敬する人を圧倒した人物、ナズナを思い浮かべた。あんな人物がこの先に待っているというなら、果たして自分たちで太刀打ちできるかと不安になっていくが、その考えはティアナに否定された。「その可能性もあると思って、なのはさんに相談してみたんだけど“これ”は絶対に違うらしい」「へ? どうして?」「なのはさんが言うには、“なんとなく”らしいわ」宿敵と書いて友と読むのかもしれない…。本人たちは絶対に嫌がるだろうが…「とうりゃ!!」倒された拍子に地面に手をつき、そのまま女性を蹴り付けるアリシア。敵はアリシアの足を掴み、攻撃を受け止める。しかし、それを見てアリシアは笑みを浮かべる。「食らえ!」≪脚部点火≫アリシアがリニスと同化しているときに使う地上での超加速。それは足に魔力を溜めて爆発させ、速度をつける。アリシアはそれを利用し、自分の足を掴んだ敵に向けて魔力を爆発させる。敵も危機を感じたのか、すぐにアリシアを投げ飛ばし、爆発から回避しようとする、ワンテンポ遅かった。「……!?」掴んでいる足の先が爆発し、敵を壁に吹き飛ばした後、アリシアはその爆破を利用して距離をとる。この作戦をナズナに見せれば少し考えが足らないと注意され、嵐に話せばそれ戴きと言われるんだろうなとアリシアはボンヤリと頭で考えながら、次の手も考えていた。この攻撃で相手が倒れるとは考えられない。恐らくすぐに起き上がってくるだろう。「……」「やっぱり~」≪文句言ってる場合じゃないでしょう≫敵は、まるで痛覚がないのかゆっくりと起き上がり、すぐにアリシアの方を睨んでくる。いくらバリアジャケットを纏っているとはいえ、壁に激突してすぐに顔色一つ変えないなんて普通では考えられなかった。さっきの爆発で、少し仮面が割れて顔の見える部分が増えたが、眼の部分は無事なので人物の特定は出来ないだろう。「レリックのケースも落としちゃうし…」≪だからちゃんと持っていなさいと言ったでしょう≫戦いの最中、いや、少女、ヴィヴィオを敵の意識から逸らすために逃げているときに攻撃を受けてしまい気づいたらレリックのケースを落としてしまっていた。すぐに拾いに行こうと考えたアリシアだが、敵はケースなどお構いなしに攻撃を仕掛けてきているため断念した。≪来ました!≫「一端引き返した方がいいね!」敵の攻撃をかわし、進んでいた方向の逆に走り始めるアリシア。もちろん黙って見ているはずもなく襲い掛かってくる青い髪の女性。ただアリシアにとって救いなのが、敵は飛行魔法が使えないのか飛んで自分に攻撃を仕掛けてくることはない。アリシア自身も飛行魔法が使えないが飛べないわけではない。しかし狭い空間では使いにくい飛行方法なので、これだけは助かったと思っていた。≪アリシア≫「遠距離攻撃は嫌いなんだけど…猫の爪!!」後ろから追跡してきている敵に向かって文字通り腕を振るう。するとアリシアの爪先からフェイト同じ色の魔力光が現れ、爪のような形の魔力が敵に向かい五つ飛んだ。アリシアの少ない遠距離魔法の一つ。猫の爪。簡単に言うと魔力刃を飛ばしているようなもの。魔力刃よりも些か威力は低い。敵はアリシアの未知の攻撃に一端動きを止めるが、すぐに動きを再開し、猫の爪をかわす。「爪爪! 爪!!」≪本当に遠距離攻撃は苦手ですね…≫連続で3回。爪の数は15発。だが綺麗に決まったのは0だった。全て掠ったり、撃墜されたりだ。「苦手なんだから仕方ないじゃんか~」このまま遠距離攻撃を仕掛けていても自分の魔力が尽きるだけだと判断したアリシアは、再び逃走。リニスの魔力はプレシア経由で繋がっているので、プレシアの魔力を持った使い魔と言っても過言ではない。魔力量に難ありだったアリシアもリニスと同化することによって解決されているが、それでも無駄撃ちは勿体無いということ。「嵐にかけっこだったら勝てるのに~」≪それが今の状況に役に立つ要素ですか≫「ううぅ~」愚痴を零しながらも、しっかりと敵との距離を離そうと走っているが、敵もローラーブーツを使用しているので遅いわけではない。しっかりとアリシアについてきているし、隙さえあれば追い抜かれるほどだ。「“あれ”は最終手段だし…」≪今は逃げることに専念してください。追いつかれますよ≫アリシアと青い髪の女性が戦闘をしている中、スバルたちはスバルの姉、ギンガと合流していた。合流した後もガジェットの攻撃は収まらず、激しい攻防を繰り広げながら奥に進んでいた。そして、ガジェットのⅢ型を破壊し、しばらく進んだところで大きな広場に出た。そこでキャロは、目的の物を見つけた。「あ! ありました!!」キャロの掛け声を聞き、全員がキャロに近づいていく。しかし、ティアナが何か音がしていることに気づいた。「何この音…」何かが壁を蹴って近づいてきているような音。突然のことで反応出来なかったが、次の瞬間キャロが何者かの攻撃によって弾き飛ばされた。「きゃあ!?」「キャロ!!」すぐにエリオが攻撃を仕掛けた人物に反撃するが、見えない何かに切り裂かれ肩を負傷する。「ぐっ」「エリオ君!!」だが、すぐにキャロの前に立って何者かから庇うように立ち塞がる。自分を攻撃した何者か。それは体型で人間と判断していたが、姿を見てみると自分の考えが間違っていたことに気づかされる。確かに肉体の形は人間に近いだろう。しかし、その体は明らかに人間ではなく、どちらかと言うと虫にちかい見た目を持っていた。キャロはそんな、エリオを見つめた後、自分が落としたケースを誰かに拾われるのを目撃し、急いで駆け寄る。「邪魔」「っ!?」駆け寄ると同時にケースを拾った人物に高出力の砲撃を放たれた。咄嗟にプロテクションを展開し、紫の髪を持った少女、ルーテシアの攻撃をガードするが「きゃああ!!」「キャロ!? ぐぁ!?」呆気なくプロテクションは砕け散り、壁に叩きつけられそうになるが、エリオに衝撃を緩和してもらって事なきを得た。ルーテシアの攻撃に応えるかのように、虫の体を持つ生物、ガリューも攻撃を再開する。「うおおおおおおおお!!!!」スバルがガリューに蹴りかかるが簡単にかわされる。そのかわした隙をつき、ギンガが追い討ちをかけた。さすがにこれをかわすのは不可能と判断したガリューは、自らの腕をクロスさせてギンガの一撃を防ぐ。「てええええ!! はあっ!!」ダメージを殺すことには成功したが、威力を殺すことは出来ず、そのまま吹き飛ばされるガリュー。その間にスバルはルーテシアに近づき、それを返すように注意を促そうとした。「こらぁー! そこの女の子! それ危険な物なんだよ! 触っちゃ駄目! こっちに渡して!」スバルの注意も空しく、ルーテシアはその場を離れて行ってしまう。だが「ごめんね、乱暴で。でもね、これ本当に危ない物なのよ」次の瞬間、空間がぼやけたかと思うと、ティアナがデバイスをルーテシアに突きつけている状態だった。幻影魔法を駆使し、ルーテシアとガリューに気づかれないように接近したんだろう。ルーテシアの顔に少し焦りの表情が浮かんだが、少しするとそれは収まりさっきまでの無表情に戻った。ティアナは、それに少し違和感があったが、気にしなかった。このままルーテシアを六課まで連れて行こうかと考えた途端――「スターレンゲホイル!!」轟音と閃光がティアナたちを襲った。「うにゃああああああああああああああ!!!!!!」…情けない叫び声も「ふっ! はっ!」敵に攻撃・防御・逃走などを繰り返しながら走っているせいで全然進んでいないアリシア。このままだとレリックを落とした場所に行くまでにかなり時間を食ってしまう。「こうなったら一気に行くよ!」≪初めから使えばよかったのに…≫「細かいこと気にしないの! 嵐の邪魔するんなら、倒しとく方がいいと思ったの!」アリシアと揉めながら、リニスは敵を捉える準備を整える。≪準備完了ですよアリシア≫「なら、私が指示したら思いっきりお願い!」敵の攻撃を捌きながら、アリシアは敵の隙を見逃さないように紅い眼を鋭くさせる。リニスと同化しているせいなのか、若干いつもよりも鋭さが増している。「てえい!!」敵の攻撃が止むと同時に、自分の蹴りを相手の肺の部分に向けて放つ。さすがに肺に攻撃を食らえばただでは済まないのか、肋骨の部分を腕でガードする。「今だ!」≪脚部点火≫「……!?」相手の体を蹴った反動を利用し、更にそれにブーストをかけ、その場から離脱に成功する。魔力の爆発に再び巻き込まれ、敵はしばらく動けない状態になった。それを知ってか知らずかアリシアは、敵から離れれたことを喜んでいた。己の出せる全速でレリックのケースを落とした場所に向かった。しかし、全力で走ったにも関わらず、アリシアを迎えたのは祝福ではなく、轟音と閃光だった。リニスと同化しているアリシアにとってこれほど熱烈な歓迎はなかった。「うにゃああああああああああああああ!!!!!!」恐ろしく早く目的の場所に到着したが、後一分遅かったほうがよかったかもしれない。「う、うにゃ…ほ、星が見える…」体をピクピクと痙攣させ、地面に倒れ伏すアリシア。ご丁寧にネコミミまでピクピクと動いている。そんなアリシアを見て、驚いているのはルーテシアたちもそうだが、スバルたちも一緒だった。「ふぇ、フェイトさん! どうしてここに!?」「フェイト隊長! 大丈夫ですか!」「そ、それと…どうしてネコミミ?」エリオ・ティアナ・スバルが倒れているアリシアに勘違いしながら駆け寄る。キャロは、さっきの壁に叩きつけられた衝撃で気を失っているのでエリオに運んでもらっていた。「…あれ?」フェイトに駆け寄った時、最初に違和感を発見したのはエリオだった。ネコミミもそうだが、フェイトよりも少し背が小さく感じた。それにバリアジャケットも黒を基調としているのではなく、どちらかと言うと白を基調としている気がする。エリオは知らないが、フェイトが見たら尋ねるだろう、何故リニスの服を着ているのかと。「こらぁ! お前らあたしを無視するな!」派手に登場したはずなのに、何者か分からない謎のネコミミ女に邪魔されたアギトは少し不機嫌だった。「あたしは、烈火の剣精のアギト様だぞ!!」怒りながら台詞を喋り、大声を出すたびに、彼女、アギトの背中に綺麗な花火が咲く。緊迫した空間に花火にネコミミ。一体さっきまでの緊迫した空気はどこに旅に出てしまったのか。「ああ、もういい! ネコミミもお前等も…まとめてかかって来やがれ!!」スバルたちがまだレリックのケースを見つけていないときなのはとフェイトは、さっきまでは空でガジェットと戦っていたが、はやての指示ではやての攻撃が当たらない安全空域まで避難していた。そして、なのはたちの避難が確認された途端、空を八神はやての魔法が覆った。「さすがはやてちゃん…」「うん。ここははやてに任して、私たちは急いで戻ろう」友人の相変わらずの魔法の切れに感心しながらフェイトは、すぐヘリに戻ろうとするが一緒に避難したなのはは、一向に動こうとしない。「なのは?」「フェイトちゃんはヘリに向かってくれるかな」「え?」さっきまでのなのはの温かい感じと違って、どこか冷たい印象を受ける。どことなく声質も冷たい。「私にお客さんが来たみたい」「お客?」フェイトは、周りを見渡してみると、空から黒い羽が落ちてくるのに気づいた。黒い羽といえば、はやてを想像したフェイトだが、はやてには空の殲滅をお願いしている。こんな場所にくる筈はない。「やっぱり来たんだね」「ええ、来ました」黒に染まった魔導師がなのはとフェイトの前に舞い降りた。「またナズナちゃんか~。本当に一匹見つけたらたくさんいるんだね」「ええ、あなたと同じでしつこいんです」「私ってしつこいかな?」「気づいてなかったんですか? これは滑稽ですね」会うたびに会話と会話のドッチボールを開始するなのはとナズナ。フェイトは、軽く冷や汗を流しながら二人の様子を伺っていた。「フェイトちゃん。ヘリ」「な、なのは。けれど…」「大丈夫。だからお願い」「うぅ…わかった。ナズナもなのはもあんまり喧嘩ばっかしてちゃ駄目だよ」ここは、なのはに任せ、自分はヘリに急ごうとしたとき、目の前にモニターが表示された。『フェイト』「コーデリアさん」フェイトと個人的に契約しているコーデリアだった。『私もヘリに駆けつけます』「本当!? ありがとう」コーデリアは、一応六課で待機していたのだが、雲行きが怪しくなってきたのを感じ、シャーリーに細かい話を聞き狙われる可能性の高いヘリの援護に向かうことにしたのだ。「それじゃあなのは、あまり無茶しないでね」「うん」フェイトは最後にナズナを見た後、今出せる最速でヘリに向かっていった。「お別れは済みましたか」「待っててくれたんだ。優しいね。あれ? ナズナちゃんの首飾りってベルツリーさんのとお揃いなんだね」「ベルツリー…(ベルツリー→ベルとツリー→鈴と木→鈴木!→マスター!!→高町なのはが知っている→にゃんにゃん→KILL)」嵐成分が足りないせいなのか、嵐に関係あることを瞬時に頭で計算する。若干想像(妄想)も混ざっているが。「この前以上にボロ雑巾にしてあげましょう。覚悟してください」「へえ、出来るのかな?」この前戦ったときに完膚なきまでに倒されたなのはは、負けたはずなのにどこか余裕を感じさせる笑みを浮かべている。「ミーティア」『Let's live always.(いつも通りにいきましょう)』ナズナがミーティアを構え、なのはに突きつける。「対シェファーズ パース 限定解除」なのはの体に本来の魔力が戻った。<あとがき>先に72話を投稿。今から修正を開始して終わったら引越しします。ヴィヴィオ編では、嵐も動くから、もう少し長くなりそうです。