「う゛~~~~~~~!!」「あ~。いい朝だ」「う゛う゛!! う゛っう゛う゛!!」「今日から頑張るぞ~」「う゛ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」第68話「伝説の掃除人 その名は…」一晩寝て昨日の疲れがすっきり取れたのを感じ、いつも通り軽い朝練に取り込む。これは、もうナズナのおかげでクセみたいなものだ。10年間欠かさず続けていたせいで体に染み付いている。顔を洗って寮の外に出て、軽く走りこんだ後、筋トレをこなし、ドクターソードの練習として、スカさんに用意しておいてもらった竹刀を素振りをする。まあ、剣道の才能なんて皆無な俺が剣術なんて出来るはずはない。数年間振り続けて、やっと相手の攻撃を受け流し攻撃が出来るくらいだ。「…ふう。そろそろ戻らないとな」一時間くらい体を動かした後、スカさんの待つ、一応の自分の部屋に戻り、部屋に設置されているシャワーを浴びて冷蔵庫を開けて中を探ると、お茶が入っているのを見つけたので、いただいておいた。そういえばミッドは、何を主に飲んでいるんだろう? お茶となんだろうか?せっかく六課に潜入したんだから、そういうことを調べてみるのもおもしろいかもしれないな。「う゛ーー!!」「うお!? まだ説得終わってなかったのか?」「説得するのは、面倒くさいから君に任せるって言っただろ…」朝に起きたら、目覚めていたデ・トさん。スカさんに説得を頼んでおいたのに…「それで、何が言いたかったんだ?」「何が目的だ! 僕を捕らえても、六課は何にもならないぞ!」どうやら何か勘違いしているみたいだ。俺が六課を襲撃でもしに来た敵だと思っているのか? まあ似たようなものだけど…それでも、六課を襲撃しようなんて考えてないし、するとしてもこんなアニメにいたのかどうかわからない奴は、襲わない。襲うんだったら、初めから新人とか隊長とか狙うだろ。「勘違いするな。別に六課をどうこうしようとしたわけじゃない」「な、なんだと! じゃあ何をしに来た! それに何故僕を縛る」縛ったのは、スカさんの話でお前に魔力があったからだよ。魔力はないと思ってたのに…「ちょっと六課で調べたいことがあってね」戦力とかは、まあわかっているからどうでもいいんだけど、未確認のコーデリアについて調べたい。原作にいないキャラだと、どんな戦い方をするのかもわからないからな。それが事前にわかっていると対策も練りやすいし、どんな人柄か出来れば知っておきたい。「お前に聞いてもいいんだけど、知らないだろ?」「お前等みたいな犯罪者が探している奴を僕が知るはずないだろう!!」えらく怒ってるな。やっぱり問答無用で縛ったのはまずかったか。「そう言うなよ。コーデリア・マセラティって知ってるか?」こんな奴でも、念のために聞いておいた。もちろん期待なんてこれっぽっちもしてなかったんだがこの名前を出した途端、デ・トの顔が強張った。…え? ビンゴか?「な、なな、何故そいつを調べてるんだ?」さっきの堂々としていた態度とは一変し、何だかオドオドした態度になり更には、顔中に汗が流れ出している。明らかに何か知っているか隠しているのがモロわかりだ。「ちょっとわけありでね」「…!! そうか! お前達もあいつに復讐しようとしたんだな?」何を勘違いしたのか、またもや態度を一変させて明るい感じになった。忙しい奴だな。それよりも復讐? もしかしてこいつって俺たちと似た位置にいるキャラなのか?「なら、こいつを解いてくれ。僕たちは協力出来る」…このままちょっと喋らしてみるか。「解けと言われても、信用ない相手を解くなんて無理だ」「そ、それもそうだな。今から僕のことも話す。だからこれを…」「話が先だ」俺の言葉に折れたのか、デ・トは、ぽつぽつと話し始めた。「実は、僕は昔バントをやっていて結構流行ってたんだ。それと同時にちょっと人には言えないこともやっていて、その一つにファンから金を盗んだことがあるんだ。何回目かやってるとバントの時にいきなりあいつが現れて僕たちのやってたこと全部ファンにバラしちゃったんだ。それからは、管理局に捕まるし、メンバーは散り散りになるし、最悪だったんだ。だから僕は、コーデリアに復讐する! 君たちの似たようなものだろう?」とりあえず、協力はできねえな。それに俺たちも似たようなものって…まあ似てるかもしれないけどさ。「さあ、解いてくれ」「スカさん」『了解』俺が解いてくれると思ったのか、物凄い笑顔で見られたけど別に解くつもりでスカさんに話しかけたわけじゃない。厳重に縛られていたロープの上から更にバインドが現れ、デ・トを縛り上げる。デ・トの顔が喜びから、絶望に変わって俺のことを睨みつけてくるが、縛られている奴に睨みつけられても怖くもなんともない。「どういうつもりだ! 全部話しただろう!」『誰も解くとは言ってない。勝手に君が話しただけだ』「そういうこと」デ・トの顔が怒りで真っ赤になる。騙されたことの怒りか、俺に向かっての怒りか。まあ、おそらく後者だろうな。「ずるいぞ! 僕にあんなに話させといて!」「そう言われても…」まあ、コーデリアのことを少し話してくれたのはありがたかったかな。「そうだ。スカさん、俺ってサラーブにあんまり戻れなくなるよな?」『ああ。いくらここが魔力を感知させないとはいえ、極力避けたほうがいい。連絡も此方から一方通行だ』昨日のうちにスカさんは、結界を張ってくれたらしく、一応は、この部屋で魔法を使ってもわからないようになっている。だけど、俺は大丈夫なんだが、ナズナやなのはなどの強大な魔力を持つ魔導師が放つ砲撃魔法などは、隠しきれない。まあ、砲撃魔法を放つなら魔力云々じゃなくて普通にバレるだろ。「なら、これを貼ってと…」デ・トの体にメッセージが書いてある紙を貼り付けた。「スカさん。こいつサラーブに送っといて」『…まあ、いいだろう。転移開始』魔法陣が浮かび上がり、デ・トは、光と消えてしまった。「がんばれよ…」『君もそろそろ仕事じゃないのかい?』おっと。なら、準備しないとな。着替えは、管理局の制服と掃除職員の着る汚れていい服の二種類だった。とりあえず掃除職員の着る服を着て、六課に出向いた。「ご苦労様です」「いえいえ」通り過ぎる人々に声をかけられるのは、ちょっと緊張した。今の俺の姿は、つばのついた帽子を深く被り、髪をわざと眼にかけるようにして、更に眼鏡まで装備している。そしてデ・トがしていたと思われるギターの形をしたアクセサリー、スカさんの話ではデバイスらしい。それも装備している。大丈夫だとは思うが念には念をというやつだ。しばらく歩いていると同じ服を着た奴が集まっているのが眼に入った。あれか?「おお、こっちだこっち!」どうやらこれだったらしい。ちょっと早足で駆け寄りその集団に加わった。「じゃあ今日も班に別れて各自掃除に励んでくれ」「ういーす」「了解っす」職員のやる気ない声と共に、ばらばらと散っていく。俺だけおいていかれた。すると、さっきまで声を出していたゴリラに似た男が話しかけてきた。「どうした?」「あ、いや、実は俺今日まで病気で職場に来てなくて、今日が初めてなんです」「ん? そんな話し聞いてないような…。ああ。お前、ずっと来てなかったデ・トとかいう奴なのか? 病気だったのか? 寮にいたと聞いてたが…」「じ、自宅療養だったんです」「む? そうか。なら今日は、俺と行動だ」「わかりました。ゴリさん」「なら、ついて来い。ん? ゴリ?」「行きましょう」「全く、お前も本名をちゃんと書類に書いてもらわないと困る」「いや、これが本名なんじゃ」「そんなわけないだろ!! 舐めているのか!」「そ、そっすよね」ゴリさん怖いよ。「俺は、このトイレを綺麗にしてくるから、お前はこの前の廊下を綺麗にしといてくれ」「了解」ゴリさんは、男子トイレに入っていった。俺は、清掃中の看板をトイレの前に立ててトイレ前の廊下の掃除を始めることにした。トイレ掃除は小学生の頃は大嫌いだったがその内、大して気にならなくなったよな…「情報収集したいんだけどな~」≪仕方ないだろう。仕事をしていないで六課をうろつくなんて怪しいにも、程がある≫濡らしたモップで廊下を掃除しながらスカさんに愚痴る。ここで話していてバレても困るので念話で。「よっ! ほっ!」掃除は、サラーブにいた時に結構やっていた。ナズナにばかりやらすわけにはいかないと思ったから。まさかなのはの世界で六課の掃除をするとは、思わなかったけどな。というか、リリカル世界に来て掃除しているってどうなんだろう? せっかく来たのに掃除って…そんな風に変なことを考えていたのがいけなかったのか、前から来ている人物に気づかないでそのままぶつかってしまった。「うおっ!?」「うわ!?」勢いよくぶつかったせいか地面に倒れそうになってしまうが、咄嗟のことで演技中のことを忘れてしまい戦いの癖で地面に手をつき、地面に倒れず普通に元の体制に戻ってしまった。…しまった。「いたた、ごめんなさい」「あ、ああ。気にしないでくれ」…しかも、スバルちゃんでしたー。泣きたいでーす。手を貸して起きるのを手伝う。「すみません。でも凄い運動神経でしたね!」「あ、ああ。うん。」早くどっか行ってくれーーーー!!!「スバルー! 何してるの! 行くわよ」「あ、は~い! それじゃあ、お仕事頑張ってください」…何とかなったか。「おう。掃除終わったか?」「ゴリさん。代わってくれ…」「何だ? いきなりどうした? ん? ゴリ?」「仕事を続けましょう」結局、ゴリさんは、コーデリアについては、名前くらいしか知らなかった。無駄な一日だったな…それと、食堂のご飯が意外においしかったことに感動した一日だった。「ん、ん~、朝か…」寮のデ・トの部屋で過ごしてから二日目か。『おはよう。朝の訓練に行くんだろう?』「昼は仕事で訓練出来ないからな。朝くらいはやっとかないと、ナズナに怒られる」スカさんを置いて、外に出た。そして数分後、後悔することになった。「…あぁ、止めとけばよかった」朝練なんて、そのくらいサボっとけばよかった。ナズナだって、気づかないだろう。そう、数分前の俺に忠告したい気分だ。「清掃員さんも朝練してたんですか?」「…まあ、体力が大事っすから」「そうなんですかー」ランニング中にスバルと再会してしまいました! 泣きそうだ! 神はよほど俺のことが嫌いと見える。「スバル、その人は?」「昨日ぶつかっちゃた人だよ」「ぶつかったって、あんたちゃんと謝ったんでしょうね」「謝ったよ~」…もう行っていいかな? ここで朝練するのは、精神的にキツイ。女二人で訓練するのに、そこに男が混ざるのはよくないよね! だから俺は部屋に帰ります!!「清掃員さんもあたしたちなんか気にしないで続けてください」「…あ、はい」とりあえず、昨日と同じ筋トレをした後、竹刀をカバンから取り出す。スバルたち二人は、ウイングロードまで使って訓練しているのが見える。朝からとばし過ぎじゃないか?それを尻目に俺は、竹刀を振り続ける。これも慣れてきたし、次は槌の練習に移したいな。槌はまだ練習不足かもしれないからな。だけどドクターソードの代わりは竹刀でいけるけど、ハンマーの場合何を代わりにしてすればいいんだろう。それにドクターソードのバリエーションを増やしたいところだけど、あれ結構難しいんだよな。どうしたもんか…「あの」「うぇい!?」ようやく集中してきた所にティアナが襲撃! お兄さんに何か用ですか!?いきなりのことだったのでかなり変な声を出してしまった。見られた…恥かしい。「清掃員さんは、魔導師なんですか?」「え、い、いや、昔は魔導師やってたんだけど、如何せん魔力がねえ」これは事実。嘘35% 事実65%だ。俺の言葉にティアナは、暗くなり、「やっぱり魔力か…」と呟いてる。「それでも訓練は続けているんですね」暗くなったティアナの代わりに、スバルが俺に質問してくる。「ああ、師匠的な人から、訓練は欠かさないことって言い聞かされてましたから」ナズナは、なのはに似て厳しいとこがあるからな。なのはと違うところは訓練のことを他の人に相談してから、答えを出すとこかな。よくプレシアさんと話し合ってたし。「清掃員さんは、格上の魔導師と戦ったことはありますか?」「あ、ありますけど」毎回毎回格上ばっかだよ。敵で格下だったのは、お前等くらいだ。とは言わない。「か、勝ちましたか!?」「え、あ~、一応」竜の時のあれは勝利といえるかどうかは微妙だけど、勝ったことは勝った。「どう戦いましたか!?」「どう?」どうって…「力じゃなくて、頭で戦ったっす」「ず、頭突きですか!?」「スバル! ちょっと黙ってなさい!」「格上の相手と戦う場合、何が相手より劣っているかを素早く見極めるのが先決っす。全て劣っている場合が多いけど。それと、相手の攻撃をなるべく食らわないようにしたいっすね。攻撃を食らい過ぎると、働く頭も働かないっすから。それに何も自分の力だけで、相手を倒さなくてもいいっすね。周りの地形全てを味方につける。それも大事っす」俺の戦闘スタイルは、大体これだからな。あとは、自分に出来ることをする。出来ないことを戦いでするのは、自殺行為だからな。これを言うと、なのはの模擬戦の時に、ややこしくなりそうだから、言わない。頑張ってくれ。「参考になります」「何に焦ってるか知らないけど、そんなに焦らなくてもいいと思うっす」何に焦っているのかも言うこと聞かないことも知ってるけどね。「ご忠告感謝します。だけど、あたしは、強くなりたいんです」「…まあ、頑張ってください」そろそろ頃合だし、戻るとしますか。「また明日!」…明日もここに来なきゃいけないのか。面倒くさいし、精神的にツライけど、今日見た限りでは、俺のことに気づかなかったみたいだし、いいかな?「あ! お名前なんて言うんですか」…言ってなかったな。鈴木嵐…これは、いろいろと面倒くさそうだよな…偽名にしておこう。だけどデ・トは、明らかにおかしいから嫌だな。他の名前にしておこう。「べ、ベルツリー・ストームだ。よろしく」伝説の掃除人 ベルツリー・ストームと呼んでもらおうか。おまけ今日のナズナさんサラーブに作られたくつろぎの間。そこに一人の少女が溜息をついていた。少女の名前は、ナズナ。鈴木嵐に従える従者であった。「マスター…無事でしょうか」何故、溜息をついているかというと、それは、主の安否を心配していたからだ。ちなみに、朝からこの調子で、シントラとの模擬戦最中ですら、溜息をつく程に主のことが心配で堪らなかった。「ナズナは心配性だな~。大丈夫だよ」「そうですよ」そして、その向かいに座っているのは、金色の髪を靡かせる少女、アリシアが薄茶色の毛色の猫、リニスを撫でながらナズナと一緒に、この間でくつろいでいた。「そうは言いましても…」「というかナズナ」「はい?」自分の愚痴を聞いてもらおうと思ったナズナだったが、アリシアに先に喋られてしまい、タイミングを逃した。「二人ってさ、付き合ってるんだよね?」「っ!? げ、ゲホッ!? な、何を突然!?」アリシアの言葉を聞いた途端、ナズナはむせ返った。思えば、ナズナは、アリシアの言葉に振り回されてばかりだった。幼少時と言い、今と言い。「え? 告白されてないの?」「こ、告白は…」確かに、ナズナは告白はされていないし、嵐も告白はしていない。本人たちは気づいてないが、うっかりプロポーズ紛いのことは口走っているが。「ふ~ん。ナズナももっとアタックしなきゃ盗られちゃうよ。帰ってきたら、告白してみようよ!」「こ、告白ですか!? だ、だけど…、それに盗られるなんて…」ナズナはむせ返った口内に、冷たいお茶を流し込む。「うん。 …私とか」「え? 何か言いましたか?」「いや、何も」「(…空気が重い…)」ナズナとアリシアは、ゆっくり休めたが、リニスは、あまり心休めなかった。おまけ2「どこだここは!?」「あら? 嵐からだわ」プレシアの研究室に直接送り込まれてきたのは、デ・トだった。「だ、誰だお前は!!」「ふんふん、なるほどね」デ・トに貼り付いてある紙を剥がして見てみると、メッセージが書かれていた。【任務に邪魔になっても困るんでしばらく雑用として使ってあげてください】「何をする気なんだ! 離してくれ!」周りの機材などを見て、改造でもされるのかと思ったデ・トは、体をクネクネと動かしてプレシアから距離をとろうとしていた。「あなたには、私の雑用を手伝ってもらうだけよ」「だ、誰がババアなんかに」次の瞬間、デ・トの顔スレスレにプレシアの指が通り過ぎ、地面に突き刺さった。指が。肉体強化と衝撃緩和、物質破壊を同時にデバイスを使わずに使うだけなのだが、並みの魔導師でさえ使うのは難しい技術だった。それ故に相手の強さがわかってしまったデ・トのとった行動は…「何か?」「犬とお呼びください」服従だった。