「…さて、足止めはナズナに任せてと」「あたしとお前は、レリックに向かっている三人の足止めをすればいいわけだな」『レリック回収は、しなくていいそうだ。まあ、戦闘力の確認をしたいんだと思うけどね』「この時の二人なら何とかなるだろ。…多分」「いざという時はあたしがいる。心配するな」第63話「星と雷と…何故か血液」「スカリエッティから、連絡よ」「こんな朝から?」手伝うと約束してから数日、スカさんたちに朝起こされたかと思うとどうやらスカリエッティから連絡が入ったみたいだ。朝のモーニングコールがスカリエッティ。今日も素敵な一日が過ごせそうだなぁ…「はい」『やあ。寝ていたのかな? これは悪かった』「いいから要件だけ話してくれ」スカリエッティの話を聞いてると、また眠気が出てくる。それにいきなり起こされて苛立っているのにデバイスのスカさんなら我慢できるが、このスカリエッティは我慢できない。『先ほどレリックらしきロストロギアが発見されたらしくてね。そこで君たちに頼みがある』半分寝てしまっている頭で何とかスカリエッティの話を理解する。つまり、前回約束したお手伝いなわけだ。面倒くさい…「頼み?」『用件は、簡単だよ。そのロストロギアは、リニアレールにあるらしい。そこを私の玩具が襲撃する。それを手伝って欲しいんだ』…リニア? あっ、これもしかして、新人たちの初出動のやつじゃね?「それを俺とナズナが回収すればいいのか?」あのレリックを俺とナズナで回収するだけなら、かなりチョロイ。さすがに、ナズナは、新人たちには手も足も出ない最強の敵となってしまうだろう。『まさか。いきなりそんな大役を頼んだりはしないよ』「はっ?」これじゃないのか? 絶対にそのレリックの回収だと思ったんだが。「レリックの回収は私の玩具に任せるよ。君たちは、それを邪魔しに来る管理局の足止めを頼みたい」…足止め? 何故そんなまどろっこしいことを…『駄目かな』「いや、それで機動六課の情報をもらえるなら」元々、それだけが狙いなわけだし。そのためには、レリックを回収してこいや、足止めなどあまり差異はない。『もちろんだよ。約束は守ろう』「わかった」『呼んだら、前と同じ場所に来てくれ。途中まで送るよ』「了解」スカリエッティは、俺に笑顔で手を振り、通信をきった。不気味すぎて鳥肌が…「手伝いって、どんな鬼畜なことをやらされるかと思ったら、案外普通ね」『今回は、試しみたいな物だと思う。』「試し?」『さっき君が機動六課の話をした時、私はニッコリ笑っただろう? 多分、これに機動六課が関わってくるのがわかっているんだと思う。それで、ナズナや、君のデータを計りたいんだ』つまり、スカリエッティなりの試験ってことか。「だったら、軽く手を抜いて相手すればいいんじゃないか?」これでスカリエッティが、俺たちに興味がなくなれば万々歳だ。『私たちに興味がなくなったら、いつ同盟を捨てるかわからないよ』「あ~、それがあったか」ややこしい話になってきたな。sideナズナついにマスターが帰るために必要な欠片が全て揃う年がやってきた。いままでやってきたロストロギアの回収が実を結ぶ。マスターは、今までと同じで、何事もなく回収できると言っていたけれど、ドクターは警戒していた。今までとは何か違う。自分たちのせいでイレギュラーが発生しているかもしれないと。だけどそんなことは関係ない。例えイレギュラーが出てきて、マスターを邪魔しようとしたなら私が消し去ればいいだけだ。ドクターの元になったスカリエッティからの命令で機動六課という私の記憶の奥にある組織の足止めをすることになった。あまり、高町なのはの記憶は残っていないけど、機動六課という単語だけは覚えていた。マスターが青髪とオレンジ髪を相手にすると言っていたので高町なのはを足止めすることに決めて、後ろから軽い魔力弾を放った。予想通り、高町なのはには、当たらずにそのまま通り過ぎていく魔力弾。そして高町なのはは、私に話しかけてきた。「こんにちは。久しぶりだねナズナちゃん」私と同じ声、全く同じに聞こえる不愉快な声。「ええ。久しぶりです高町なのは。元気そうで残念です」「にゃはは、ひどいな~」高町なのはは、笑いながらで振り返ったが、顔は全く笑っていない。「どうしてここにナズナちゃんがいるのかな」「どうしてだと思いますか」「質問を質問で返すのはよくないって教わらなかったかな」「質問に答える気がないだけじゃないですか」「ふふ、おもしろいなナズナちゃんは」「あなたは、おもしろくありませんね。不愉快です」互いに作り笑いをしながら会話を続けている。「もしかして、今度はレリックを盗みに来たのかな? 相変わらず手癖が悪いね」「相変わらず? 今まで盗んできた覚えはないんですが」「本当に?」「はい」私は私が出来る最高の笑顔を作り答える。この笑顔をマスターに向けたら、もしかしたら照れてくれるかもしれない。そんな大胆なこと出来もしないけど。「へえ、そうなんだ。ごめんね」「構いませんよ。そろそろ始めませんか? いい加減あなたと会話するのは面倒くさくなりました」「そうだね。フェイトちゃん一人にガジェットの相手さしておくのは悪いからね」これで時間を稼ぐのも悪くはないが、このまま穏便に会話を進められる自信はない。「あっ、聞きたいことが一つあったんだ」「なんですか? それくらいなら構いませんよ」私に聞きたいこと? もうクローンってことはばれている筈。ならば他に何か…「私が墜とされた時に、ナズナちゃんっていたよね」「…いましたが」あの時の会話は今も覚えている。「あの時のことが聞きたいんだけど」「…?」あの時? 何かあっただろうか? 特に聞くことなんてないはず…「あの時さ、ナズナちゃんの他にも誰かいたよね」「…ええ」「それって誰なのかな」「………………は?」今こいつはなんて言ったんだ?あの時にいたのはマスターだ。何故それを私に聞く。いや、何故それを聞く?「…何で?」「何でって…あの時、私のこと治療してくれてたのは、その人だから、お礼だけでも言っておこうかなと思っただけだよ」ああ、お礼を言いたいんですね。なら私が言っておきましょう。「伝えておきます」外側真っ白、中身真っ黒な魔法使いがお礼を言ってましたって。「直接言いたいな。ナズナちゃんだと、変なこと伝えそうだし」「ちっ」意外に鋭い…「さっきから、イライラしてたけど、ナズナちゃん、この人の話題が出てきてから、イライラ度が上がってない?」「そんなことありません」「…あやしいな。もしか『Accel Shooter』っわ!?」「高町なのは。軽く運動して帰ろうと思いましたが、気が変わりました。遊びましょう」sideout―――ズガアアァァン!!!!「…うおっ!? 何だ今の音!?」ガジェットから飛び降り、リニアの上に着地した途端、遠くから何かに衝突したような音が聞こえてきた。「なんだ。ビビッたのか? あたしは全然怖くなかったぞ」「俺のポケットで、何か震えているけどな」『あれは、高魔力の砲撃同士が衝突した音だね』「ということは、ナズナは、始めたわけか」軽く足止めしてくれって言っといたけど、案外本気だな。『君も和んでいる場合じゃないだろう? 来るよ』俺は、ドクターソードを作り出し、スバルたちに備える。…あれ?「俺って、普通にこの血の剣を作り出せてるけど、AMFとか、どうなんだ?」普通に展開したから気づかなかったが、何でだ?『ここはAMFが届きにくいっていうのもあるけれど、君の魔法は、君の血でコーティングしてある。魔法をキャンセルされにくいんだ。まあ、強力すぎるAMFには、適わないかもしれないけどね』「はあ~」「案外役に立つな。嵐とカルの魔法は」相変わらず器用貧乏な魔法だな…「リイン曹長! ここですか…!?」「ティア! お待たせ! どうかしたの?」俺の姿を見て、リインとティアナが口をポカンとあけている。スバルは、俺の姿を見ていないからか、二人が何故そんな顔をしているのか理解できていない。「こんにちは」「え!? あっ、こんにちは」律儀に挨拶を返してくれるのは嬉しいが、これでいいのかスバル…「あんた! 何者!」「魔導師兼医者兼泥棒です」ボイスチェンジャーで、声はガラガラ。ちょっと気持ち悪い。「仕事を聞いてるんじゃない! 何故ここにいるのかを聞いているの! 何かこいつ腹立つわ!」「ティ、ティア、落ち着いて。リイン曹長! …えっ」相棒の興奮を宥めながら、リインに話を振るが、リインは、そこにはいない。「む~、離せです! リインは仕事中ですよ! 公務執行妨害です!」「うるさい! あたしだって仕事中だ」「悪者に仕事も何もないです!」「うるさいぞお前! 銀ガキ!」「なっ!? リインをガキと言うなら、そっちだって!」「残念、あたしは、結構年取ってるんでね」「じゃあ、赤ババアです!」「な!? お、お前! 言ってはならないことを言ったな!!」「ババア! ババア! 赤ババア!!」「ガキ! ガキ! 銀ガキ!」カーミラと戯れて…じゃない。戦っている。「スバル! そっちは、リイン曹長に任せといて、あたしたちはこいつを相手するわよ!」任せてと言うか、この二人が争っているところに乱入してしまうと二人とも踏み潰してしまいそうだな。「りょ、了解!」スバルとティアナは、一瞬呆気ていたが、すぐに戻り俺に視線を戻した。「あたしが、援護するから、スバルは突っ込んで!」「わかった! いっくぞぉぉぉ!!」ローラーブーツで加速し、俺に突っ込んでくるスバル。空を飛べないかわりに空を走るとは、よく言ったものだ。「うっりゃあ!!!」拳を大きく振りかぶり、俺の顔面目掛けて攻撃してくるが俺は、ドクターソードを盾にして攻撃を防ぐ。中々の威力だけど、防げないほどじゃない。「か、硬い!?」見た目はただの赤い剣だったのに、その硬さに驚いたのか、スバルは、力を弱めた。俺は、それを好機と見て、剣を思いっきり振りかざし、スバルを弾く。「くらえっ!」そのスバルが弾かれるのを読んでいたのか、ティアナが援護射撃を俺に撃ってきた。さすが長年コンビを組んでいるだけある。お互いの行動を上手く把握してあるな。だけど…「甘い!」乗ってきた、ガジェットを、ブラッティ・ストリングで手繰り寄せティアナの攻撃を防ぐ。別にスカさんが作った物じゃないし、構わないよな。「嘘!?」「ず、ずるい!」「ずるい? 自分の乗り物をどう使おうが自由だ!」ガジェットは、AMFを発生しているおかげで、ティアナの魔法を打ち消すことが出来た。俺は、ブラッティ・ストリングで、右腕にガジェットをぐるぐる巻きにして、装着した。ちょっと重い…「行くぜ!」「う、うわ!?」そのままドクターソードで突っ込み、スバルに剣を振るって攻撃するが、スバルは、上手い具合にかわした。だけど俺の本当の攻撃目標はスバルじゃない。それを援護する狙撃手だ。「せえっのぉ!!」スバルに攻撃したドクターソードの回転を維持し、そのままティアナに投げつける。「えっ!?」「ティ、ティア!!」予想外に上手くいき、俺の投げつけたドクターソードは、ティアナに向かっていた。このまま顔面に命中すれば戦闘は出来ない状態になるだろう。「っく!?」前転し、ギリギリ回避に成功してティアナは、リニアの上を転がる。その体制のまま俺に向かって撃ってくるが、右腕に装着したガジェットシールド君で防ぐ。「ティア! 大丈夫!!」「ええ、大丈夫」すぐにスバルが駆け寄るが、ティアナは、手を借りずに立ち上がる。そして、俺を睨んでくる。「く…(こいつ、なのはさんたちみたいに圧倒的な力は感じないけど、…うまい)」「あれでいくか」相手は、こっちが遠距離に攻撃してこないと思っているのか、無防備だ。なら、新作の魔法を披露するのも悪くはないだろう。俺は、輪ゴムとかでよくやる手を銃の形にしてスバルに向ける。スバルは、俺の行動に首をかしげている。「っ!? スバル!」ティアナが、スバルを引っ張り自分の方に倒そうとするが、ちょっと遅かったな。俺の指先から、小さな、血の弾丸が発射された。「痛っ!!」スバルの肩に直撃するが、動けない程のダメージじゃないだろう。これは、カーミラに教えてもらった、カルさんがよく使っていたらしい魔法で、指先に血を集め凝縮し相手に放つ魔法。極限まで固められた血液は、下手すれば岩も砕く。「血弾ってとこだな」魔法同士のぶつけ合いには、向かない魔法だけどね。人に当てる専用だしね。「スバル! 大丈夫!?」「う、うん。戦えない程じゃないよ」肩を押さえながらゆっくりと起き上がる。まあ、これには、もう一つの使い方あるんだけど今のスバルたちに使う魔法じゃないな。難しいし。「じっとしてたら、危ない。動き続けてやるしかないってことね」「そうだよな。走るのはしんどいから嫌だよな」「っ!!」ダッシュでティアナに近づき、強化しかしていない拳で腹に一撃を入れる。「かはっ!(戦い方は、隊長たちじゃなくて、あたしたち寄りな筈。この実力差は…経験!?)」「正直、気が乗らない戦いなんだよな。勝ってるの今だけな気もするし」本当に主人公組は、優秀で羨ましい限りですな。「お前ええぇぇ!!!」ティアナを殴り飛ばされたので、ちょっぴりプッツンしたのか怒り顔だ。ウイングロードを利用して、高く飛翔。重力の力を足して俺に一撃を食らわすつもりか。「頼むぞ! ガジェット君!」ガジェット君で攻撃を受け止めるが、魔法の力を打ち消すことには成功するがスバルのそのままの拳と重力の力は消せない。ガジェットを粉砕しリニアの天井ごと砕き、俺に一撃を入れてくる。「…いてぇ」『自業自得だよ。…スカリエッティからだ』「繋いで」『いや、お疲れ様。面白い物が見れてよかったよ。その褒美に今回は、レリックは譲ろうと思うから、退散しても構わないよ。じゃあ、またよろしく。六課の情報は、明日までには送っておくよ』…そうですか。倒れている体をゆっくりと起こしてレリックのケースを発見する。このまま退散するのが無難だな。≪ナズナ、カーミラ。退散するけど、出来るか?≫≪楽勝に決まっているだろう! こんな銀ガキに遅れを取るあたしじゃないぞ!≫≪可能です≫≪じゃあ昔のスカリエッティの基地によろしく≫箱を持ったまま天井に出来た穴を通り、リニアの上に戻るとティアナとスバルは、お互い戦闘体制に戻っていた。さっきまでの時間に体制を立て直したんだろう。カーミラが俺の肩に戻ってくる。「それをどうするつもりですか!!」「今すぐ降参しなさい! 今なら罪もそこまで重くないわ」どうやら、全部終わりかけみたいだな。このままだとエリオたちまでやってきそうだ。早々にこの場から退散した方が身のためだな。「これが欲しいんだったけ? ならくれてやるよ!」「「「あっ!?」」」リニアの外に全力投球。スバルたちは、完全に気を取られている。「わわ~! ティ、ティア!? どうしよ!?」「スカさん。転移魔法を、昔の基地に」「落ち着け! エリオ! キャロ! 回収お願いできる?」「…もう準備完了? 早かったな」「よ、よかったです~。あれをあんな風に扱うなんて、命知らずにも程があるです」「あ、あれ? ティア、リイン曹長。あの人いませんよ」sideナズナ「はあ、はあ…」「時間が来ましたので、失礼します。ミーティア」マスターから、撤退命令だ。すぐに前のスカリエッティの基地に行かなければ。「に、逃げるの?」「逃げる?」何を言っているんだろう?「あなた、そんな体でまだやる気だったんですか?」高町なのはの体は、大きな外傷はないが、小さな傷でボロボロだ。致命傷になる攻撃だけは、うまい具合に避けているのがさすが私のオリジナルというべきか。「そろそろフェイトも来るでしょう。だから私はもう引きます」「私は…まだやれる」「勘違いしてませんか?」「な、何を」「あなたが今、無事に空に飛んでいるのは、私が手加減して戦ってたからですよ?」本気を出していたなら、今頃、高町なのはは、ここにはいない。治療室にでも、送られていたんじゃないだろうか?「っく…」『The preparation for the metastasis magic ended. It is possible to metastasize at any time.(転移魔法の準備が終わりました。 いつでも転移可能です)』「今のあなたじゃ、勝てませんよ。組織に縛られているので仕方ありませんが」本当なら高町なのはと私の戦闘力は、大して違いはない。どちらが勝ってもおかしくはない。だけど、今の高町なのはには、組織という枷がある。それを解除しない限り、私と互角に戦うのは難しいだろう。「さようなら。高町なのは」高町なのはの悔しそうな顔が見れた私は満足して、マスターの元へ帰っていった。「……はやてちゃんに相談しなきゃ」<あとがき>忙しい。猫の手というかもう猫を借りたいよ。なのはは、六課にいる限り、ナズナと渡り合うのは、キツイですね。今回の件で、少し改善されますが。限定解除は、さすがに初任務で出すのはしのびなかったのでしょう。それと、今回、嵐の声とかを曖昧にしているのは、ちょっと理由があります。潜入的な。