「…ここか?」「こんな場所で事件が起こるの?」『ああ、今日間違いなく起きる』「空港が事故になっちゃうなんて、怖いね~」「アリシア、あんまり動き回るなよ。逸れたらどうする」「リニスがいるから大丈夫!」第60話「無限の欲望+無限の欲望=混沌」臨海空港は、混雑しいていた。今から事故が起きるなんて思えない。まあ、起こるんだけどね。「それで、いつ頃事故は起きるんだ?」『今から30分くらいかな』「30分もあるの!? だったら何か食べに行こうよ~」「アリシア、間食はあまりよくありませんよ」「うぅ~」猫に注意されてうな垂れる人間ってのも珍しいよな。まあ、そこは、親子だし、娘に怒られてへこむ母だしな今、アリシアを注意したのは、リニス。俺と魂のじゃらし同盟を組んだ仲だ。リニスは必死で拒否しているが、俺にはわかる。あれはツンデレだと。そもそも、リニスがこの回帰組に入ったのは、一年も前の話だ。ちょうどカーミラが入ったくらい。――一年前「し、しんどいよ~」俺の怪我が完璧に完治して、カーミラとの、融合練習をしている時突然、ナズナから、今日から一緒に訓練する人が増えたと伝えられ、その人物はアリシアだった。「訓練の最初はこんなもんだ。姉御の訓練は、毎日やれば確実に強くなれるからな」「で、でもまだ終わらないんでしょ」「当たり前だ。それとも止めんのか?」確かに訓練の最初は、しんどくて止めたくなって来る。俺もその一人だ。アリシアも、そんな感じになって止めるのかと見ていると、アリシアは、俺の方向を見る。「…何?」「…止めない」…え? 何事? 俺には負けない的な意識ですか?いや、ライバル心は、いいことだと思うよ? でもそれを俺に向けなくてもいいんじゃないか?「なら、次は魔力制御に…あ、ちょっと待て」話の最中にシントラに連絡が入ったようだ。シントラは少し離れて連絡相手と会話している。空中に浮かんでいるモニターには、プレシアさんが写っている。「…? 今から、くるから準備しとけ? 何をだ? お、おい!プレシア…、あ~…」どうやら、一方的に切られてみたいだな。プレシアさんが訓練室に用事?アリシア絡みなのは、間違いないが一体なんだ?まあ、それは来てから聞いてみたらいいか…「来たわ!」「早いよ」転移魔法でも使ったのだろう。一瞬で訓練室にやってきた。そして、その手には、一匹の猫が摘まれている。「プレシアさん、それ何ですか?」「元使い魔よ」元使い魔…ああ、リニスね。「それ、どうしたんですか?」「研究の成果と言ってもらいましょう」プレシアさんは、いい汗かいたと言わんばかりにハンカチで頭を拭う。そして、手の中にいる猫は、何かを思い出したのか顔が真っ青になっている。「リニス…不憫だ…」「わかってくれる方がいるだけで…嬉しいです…」リニスは、猫状態のまま地面に着地し、アリシアを見ると驚いた顔をした。「ほ、本当にアリシアですね。フェイトじゃないみたいですし」「あら、あなた私の話を信じてなかったのかしら」「い、いえ! 半信半疑だっただけでってうわ!?」「リニスだ~」さっきまで、しんどいと言っていた筈のアリシアが一目散にリニスに駆け寄り抱き上げる。そしてポケットから折りたたみ式のじゃらしー君・サイクロン他の猫のためにそれを出すとは、認めることは出来んな。後で注意しておこう。「それで、プレシアさん、何の用だったんですか?まさか、リニスの紹介だけ?」「いえ、リニスの実験よ。リニス、準備を」「は、はい」「ふえ?」プレシアさんの合図と共にリニスの体が光を放ち、徐々にアリシアに融合…というより引っ付いていってる。「おお、おおお!!」俺のテンションも最高潮。アリシアは光に包まれ、光が収まったときには…「「…ぶはっ」」とりあえず、俺とプレシアさんが鼻血を出したということ。――臨海空港「あれは、良かった…」「おい! あたしにもクリームを食わせろ」「胸ポケットから顔を出すな。後で買ってやるから」椅子に座って、店で買ったソフトクリームを食いながら昔を思い出す。まだ、初期段階だから仕方なかったが、バリアジャケットの構成が出来なかったみたいで出てきたのは、素っ裸で、頭からネコミミ、そして、尻尾を生やしたアリシアだった。あの後、アリシアの顔が真っ赤になるとこは覚えているが、それ以外の記憶はない。「嵐~何考えてるの~」「…いや、別に」君の素っ裸の時のことさ! なんて口が裂けてもいえない。「今回は初めて私と組むんだから! ちゃんとシャキっとして!」今回はスカさん…じゃない。スカリエッティとの接触の日だ。誰と組んでいくかと言う話になり、カーミラは基本俺と行動している。それでカーミラと俺以外に誰かってことになりナズナは少しめんどくさい事態になりそうなのでスカさんがパスした。その時のナズナの視線だけで、スカさんのボディに罅が入りそうだった。危険性も少ないので今回はアリシアの実践テストと、シントラは言っていた。何だかんだ言いながらも一番、アリシアの訓練に付き合っていたのはシントラだしな。それに、スカリエッティと話をするなら、アリシアがいた方が都合がいい。『ここで、しばらくジッとしていてくれ』「え?」ソフトクリームも半分が食い終わり、次は何を食いに行こうか考えているときスカさんから忠告が入った。『もう少しでレリックが暴走を起こす』「そっか。アリシア、そろそろ始まるぞ」「えっ?」「アリシア、ほっぺにクリームがついてますよ。嵐、すみませんが、アリシアのクリームを取ってあげてください」「ああ」ポケットから、ハンカチを取り出し、アリシアのほっぺを拭く。アリシアは、ム~、と声を出しながら、目を瞑っている。こうしていると兄貴になった気分だ。悪くない。『防火。衝撃緩和。読み込み完了。結界を作動する』爆発の音が響いたのも、拭き終わった後だった。「…こりゃ酷い…」「うわ…」「熱いな…」爆発音が収まり、結界を解除して出てきたのは、真っ赤な炎に包まれた空間だった。さっきまでいた場所とは、到底思えない。「アリシア。早く私をセットしてください」「あ、うん。リニス、セット!」頭に乗っていたリニスが吸い込まれるようにアリシアに入っていく。そして、光が収まると昔のように裸ではなく、ちゃんと服を纏っているアリシアが出てきた。服は、リニスの服に似ているが、ほんのり露出が多いように見える。テスタロッサの一族は露出が好きなんだろうか?頭に帽子は被っていない。ネコミミが生えている。そして、、お尻からは、チョロンと尻尾が生えている。「完璧!」≪本番で失敗しないかひやひやしましたよ≫この融合は失敗しても取り込まれるなどの、心配はない。融合騎と違って使い魔と合体しているだけなので、割と簡単に解除できる。この姿になったアリシアは、素早くなる。それと耳と眼がよくなる。空中は飛べないが、独自の方法で飛ぶことも可能だ。戦闘体系は、言うならばスバル寄りだ。肉体で突っ込んでいく。他にも違う戦い方も出来るのだが、アリシアはこれが気に入ってる。「あたしと融合はしなくていいんだな?」「カーミラは緊急事態用だからな」カーミラとユニゾンしてしまうと、解除したときに30分くらい、魔法が使用不可になってしまう。無理にもう一度融合すると、次に解除したとき、体にどんな負担がかかるかわからない。それは避けたい。「嵐! そのスカリーの部下の人の場所まで行こう!」「そうだな」『この崩れている道を真っ直ぐに行ってくれ。曲がるときにまた声を掛けるよ』「じゃあ行く…」―――お母さん…眼を開けてよ!「い、行こ…」―――誰か、助けて…お兄ちゃん…怖いよ…「……」―――痛いよ。足が痛いよ…「嵐…」「ちょ、ちょっと寄り道しながら行こう! うん! それがいい!」「私もそう言おうと思ってたんだ! そうしよ!」『はあ…』…子供の声には弱いんだよ…この火災の時、暴走した危険物の爆心地に近かった子供たちや親が、何者かに治療されていることが話題になるのは別の話。「レリックは…喪失してしまいましたか」『お仕事ご苦労様だねウーノ』「っ!? ドクター!?」スカさんの案内を聞きながら、死なない程度に治療しながら進んでいると紫色の髪の女性がいると思ったら、まんまウーノだった。「…誰ですか?」俺がドクターじゃないとわかると、途端に警戒心を出しながら俺に尋ねてくる。しかし、アリシアが眼に入ると、驚愕の表情を浮かべる。「フェイトお嬢様!?」「むっ!? 違うよ! アリシアお嬢様だよ」いや、そこじゃないと思うよアリシア。『ウーノ。私の声を忘れたのかい? 悲しいね』「ド、ドクター…何ですか…」いいえ、ドクターですがドクターではありません。…心理テストみたいだな。『私は、君の言っているドクターとは違うんだけどね。私たちをスカリエッティの場所に連れて行ってくれるかい? ウーノ』ウーノは、少し呆然としながらもやはり、ドクターの言うことは絶対なのか、転移魔法を発動した。スカリエッティの基地っぽい場所に転移してくると、ウーノは黙って歩き出した。多分、ついて来いということなんだろう。そのままついて行ってると、ある扉の前で、止まり、こっちに振り向いた。「少しドクターに話を聞いてきます。ここでお待ちください」ウーノは、部屋に入っていってしまった。「ウーノ。レリックはどうだったんだい?」「レリックは喪失してしまいました。…それと、ドクターに会いたいと言う者を発見しました」「私にかい? おもしろそうだね。ウーノ。君は下がってくれて構わないよ。私に会いに来た人たちを通してくれ」「…わかりました。それでは」扉に耳を当てて、中の様子を探ってみると、どうやらスカリエッティは会ってくれるみたいだ。「どうぞ」「どうも」ウーノと入れ違いに部屋に入る。≪あ~懐かしい空気だね。この環境も結構好きだったんだけどね…≫こんな、死体とかたくさんいそうな場所に住むなんて俺はごめんだからな。夜に一人でトイレに行けなくなったらどうするんだ。「君たちかい、私に会いたいという酔狂な人は」…スカリエッティだ…なんかいつも見ていたんだけど、新鮮だ。案の定、隣でアリシアも呆然とスカリエッティの顔を見つめていた。『こんばんはスカリエッティ』「っ!? …これはこれは、丁寧にどうも。こんばんはスカリエッティ。まさか生きているうちに自分と挨拶するなんて思わなかったね」『だが…』「おもしろいね」『「フフフフフ…」』…何か、この空間にあまり長く過ごしたくない…さっきの火災現場の方がマシに見えてくるから困る。アリシアなんか、おもしろがって笑っちゃってるよ。凄いな。「それで、君たちは何者だい? 最高評議会から私に刺客かな?」ここでの会話は全てスカさんに任す方向で計画している。欲望には欲望だ。俺とアリシアは、スカさんに振られたことだけ喋ればいい。「それに、まさかアリシア・テスタロッサが生きているとはね。プレシア女史については聞いていたんだがね」『まあ、最高評議会なんかとは繋がりはない。私たちは私たちの目的があるんだ。君と一緒でね』「ほう…。それじゃあ君たちは何者だい? 私の人格を搭載したデバイスなんて、おもしろい」『秘密組織が作り出した存在だとでも言っておこう』スカさんは、俺たちが未来から来たことや、俺が並行世界の存在であることは黙っていることにしたみたいだ。話すのはよくないらしい。『今回は、少し頼みがあって来たんだ。管理局の情報を最高評議会にばれないように私たちに譲って欲しいんだ』これは、ジャブ。別にあってもなくても構わない。あった方が便利ってだけ。これにスカリエッティが乗ってくれれば…「情報? それはキツイね。無限の欲望が言うんだ。管理局の情報全てだろう?」『無限の欲望について詳しいね。ファンかい? サインあげようか?』「『フフフフフ』」なんだこの狂気2000万パワーズは…。技のスカさん! 力のスカリエッティ!!「…出来ないことはない。けど、条件がある」『なんだい?』「さっき私にも目的があると言っていたね。ならば知ってるだろう? 私の計画を。それに加担して欲しいんだ」『断るよ』「そう言うと思ったよ」二人の会話は、魔導師たちの戦いのようだった。どっちも先を読んで喋っている。「だったら、手伝いだけでいいんだ。私が頼んだとき、君たちが良ければ手伝いをしてくれないかい?」『…断る権利はあるんだね?』俺たちの目的は、スカリエッティとの敵対を避けること。さすがにナンバーズとの相手は厄介だ。「もちろん」『ふむ…、いいだろう。なら、我々は協力体制になる。お互いに手出しは無用。これでいいかい?』「ああ。私の作品には、手を出させないようにするよ」そこから話はトントン拍子に進んでいった。とりあえずこれで一応は、スカリエッティがこちらに攻撃することはないはず。「スカさん。うまくいったじゃないか」『ああ。だけど本当は干渉したくなかったんだけどね』スカリエッティとの話を終えて、気分よく帰っていると、スカさんは何か気になるのか声質が暗い。「けど、一応は約束出来たし、十分だろ」スカリエッティの計画にちょっとだけ手伝わなきゃいけなくなったけどそれは、どうせレリックの回収とかだろう。「これで、後はマセラティの人からコメテスアメテュスを奪えば、全部終わりってことだ」『この世界は、私の世界通りの道筋を辿っていない。すると、もしかしたら…』――スカリエッティ研究施設「さて、彼に連絡するよ」「いいんですか?もう一人のドクターとの契約は」「ああ。最高評議会には、伝えないよ」「わかりました」「では、ウーノ。通信を」「はい」『…なんだいスカリエッティ?』「やあ、こんばんは。君に朗報がある」おまけ「そういえばスカリー」『なんだいアリシア』「人間のときのスカリーって怖かったんだね。今のほうが可愛いと思うよ」『…どうも』「アリシア、さすがにそれはいいすぎですよ」「くく、スカリエッティもアリシアには形無しだな」「男にかわいいは辛いなスカさん」おまけ…というよりFILE.02.5火災現場の奥に、一人の少女が妹を探しに危険な場所を歩いていた。「スバル…返事して…お姉ちゃんが、すぐに助けに行くから…」名はギンガ・ナガシマ。妹のスバルが逸れたことを知り、探しに来ていた。だが、足場が脆く、ギンガが歩いた反動で、崩れてしまった。「っきゃああぁぁあぁ!!!」足場を失い、重力に従うまま下に落下していく。だが「危なーーーい!!!」天井に短剣をさし、そこから緑の鎖のような物で体を吊った状態でバンジーの要領でギンガのピンチを救った。「っきゃ!?」「危なかったね。大丈夫?」「あ、あなたは…」「私は魔導師探偵コーデリア・マセラティ。ちょっと依頼でここに来ていたんだけど、運の悪いことに巻き込まれちゃって」あいつどっかに行っちゃったかな、とコーデリアは、悔しそうに口にする。そのコーデリアの上から、落盤した岩が落ちてきていた。「あ、危ない!」「えっ?」だが、それもコーデリアたちを傷つけることはなかった。彼女たちに当たる前に金色の閃光がその岩を切り伏せていた。「大丈夫ですか!?」「あ、大丈夫です。ありがとう」「すぐに非難します。捕まってください。…あなたは、魔導師ですよね?」「はい! 魔導師探偵事務所マセラティの所長のコーデリア・マセラティです! 困ったことがあれば連絡どうぞ!」「ま、魔導師探偵ですか? 珍しい仕事ですね」<あとがき>さて、そろそろstsに入っていきます。というか、これ事態がstsの第2話くらいですけどね。感想で指摘されましたアリシアのリンカーコアですが、以前言ったとおりこのアリシアは、微弱ながらリンカーコアを持っている設定です。それと、リニスさんの契約はプレシアのままです。リニスさんは優秀な使い魔なので、アリシアに維持出来る魔力はありません。言うならば、アリシアは、セカンドマスター的な存在です。それと、コメテスアメテュスですが、コーデリアさんは、一応持っています。それじゃなく髪留めをつけてますが。次回が、stsに入る前の最後の平穏ですが、リアルの事情で更新が遅れます。すみません。では!また次回!!