「石? 同じのか…いや、ちょっと違うか?」『全く…この世界に来てから、わからないことばかりだよ』「スカさんにわからないことが俺に理解できるはずねえな。この件はパスで、先に進もう」『そうだね。道案内をするから、言う通りに歩いてくれ』「了解」第56話「血の遺跡の謎? 気分は考古学者」スカさんに案内され、歩き始めたものの昨日の恐竜のせいで、えらく警戒心を保ちながら移動しなくてはならなかった。だって気づいたら胃の中でしたじゃ洒落になんないだろ。ピノキオかよ。「時々、聞こえてくる唸り声はあのトカゲとかだと思うけど…」林の中から時々、何かの声が聞こえるが、あの竜の声は聞くだけですぐにわかる。強く頭に残っている。あの竜に食われた部分がズキズキと傷む。脳に食われた映像が強く浮かぶ。その度に汗が顔から垂れる。「無事に辿り着いたらいいけど」『それが一番だね』「まあ、何にも起こらないってのはあり得ないと思ってた、っけど!!」茂みから、飛び出てきたのはやっぱり昨日のトカゲだった。腕代わりにしているブラッティクロウで受け止めるが左腕は踏ん張る力が湧かず、押し倒されてしまう。「トカゲに押し倒される趣味はない!!」どっちかと言うと美女がいい!!『大丈夫かい?』「チャイルド・フィア!!」押し倒された体制で、右腕をトカゲの腹に当てて、大量に針を放つ。トカゲは、その針の衝撃で弾き飛ばされ、地面でバタつき、腹に刺さった針を抜こうと苦しんでいる。「注射中は動かないようにしてください! っと!!」昨日と同じで、仲間を呼ばれてはうっとおしいので、呼ぶ前にブラッティクロウで頭を貫き、止めを刺す。「この程度の敵なら、何とかなるんだけどな…」あの竜相手に生きて勝てるかも怪しい。フリードと戦ったらどっちが勝つんだろう。意外と仲良くなるかもしれないしな。「スカさん、道は?」『このまま真っ直ぐ行ってくれ』「へ~い」出来れば、もう出てこなかったらいいな…「…門?」『門だね』あの後、何体か挑んできたトカゲがいたが、全員返り討ちにしやっとのことで辿り着いた場所には、スカさんの言う、転移を妨害してくる人物なんておらず一つの門だけがそこにあった。「門なのに、後ろに家や城がない?」『いや、ここは昨日話した門だ』「ああ、開かずの門とか言う」だとすると、この先に何があるかはカル・ラントシュタイナしか知らないってわけか。「どこから反応が?」『……この門からだよ』「え? …開かずの門なんじゃ…」『…絶望だね』帰るのを邪魔している存在は、どうやらこの門の奥に引篭もっているらしいな。俺たちを帰すつもりがないんだろうか?それとも、俺たちがここに来たのは偶然なんだろうか?「行き詰ったか…」『どうするんだい?』「どうしようもないな…」未来で開いていない門が今の俺に開けれるはずがない。「…とりあえず、調べてみるか」だけど、ここでジッとしていても何も始まらない。寧ろ、ジッとしているのは危険だろう。あの竜が来るかもしれない。「ん~…」右手で門を触りながら、何かないか探してみるが、特に何もない。門は冷たい岩で出来ていて、謎の人のような生物が描かれている。そこで、あることに気づいた。「…この人みたいな奴の手に、窪みがある…」『ああ、未来ではその窪みは傷ではないかと言う説だったよ』「傷にしては不自然だろ?」『今は、綺麗だからそう言えるけど、未来ではこの門もボロボロだったからね』まあ、今いる生物たちがいなくなってしまうようなことが起きるんだし当然と言えば当然か。「…窪み」俺は、特に考えていたわけではないが、その時、あの二つの赤い石が頭に浮かんだ。「もしかして…」ポケットを弄り、二つの石を取り出す。その二つは、互いに欠けているが、合わせると一つの形になる。『ほう…』「これで…」一つになった宝石を、窪みにはめた途端、人のような人物に赤い線が走る。まるで血管が浮き出ているみたいだ。そして、体中が赤い線だらけになり、最後に目が光った。「怖っ!?」―――ズズズズズ…門はゆっくりと動き開いた。「おぉ…」『こ、これは…お、おもしろいね! 心の奥から何かがこみ上げてくる! そう! 探究心が!!』お前に心ないだろ。とツッコミを入れると、ネチネチと文句を言ってきそうなので、あえてスルー。『あの血は、彼が残していた鍵だったんだね! だけど、未来のものが瓶に触っても血液のままだったのは、多分あの瓶は人を選ぶんじゃないかな? 君はカル・ラントシュタイナのクローンだ。それに瓶が反応したのかもしれないね! しかも、鍵は二つで一つだった。おそらく彼の体に鍵を隠していたんだろう。クローンの君もユニゾンした時に生み出した…いや、元から持っていたのを外に出したんだろう。いやいや、中々警戒心が強かったんだね。それほども物がこの中にあるのかな!』「…だったらいいな。奥に進めるようになったし、行こう」『ああ! 歴史的第一歩を踏み出そう!!』ちょっとうるさいし、テンションがうぜぇ…『(そういえば違う場所からも何かが開く音が聞こえたような気が…)』「…すげえな」『素晴らしいね』中は、さっきの森と違ってかなり文明的だった。俺たちの時代と大分近い技術かもしれない。それほどに凄かった。昔の人物がこれほどの文化を築けるなんて、本当に天才だったんだな。スカさんより凄いんじゃないか?「遺跡って言う割には明るいな」天井で植物のような物体が、光を発している。『遺跡と呼んでいるのは私たちだからね。彼にしたら家だったのかもしれないよ』「…にしても…寒い…」さっきまで体に雨を浴びていたが、遺跡の中は雨など届くはずがない。体は濡れなくなったんだが、びしょびしょの服のせいで体が冷えて仕方ない。「鼻水出そうだな」『汚いから、私で拭かないでくれよ』てめぇ…『分かれ道は、ないみたいだね』スカさんが露骨に話を逸らしたが気にしないでおこう。確かに遺跡の中は一本道だ。おかげで道に迷う心配はないんだが。「奥に転移を邪魔している奴がいるんだろう?」『多分ね』「だったら、もしかしたら俺たち誘いこまれてるんじゃないか?」ここまでスムーズに事が進むとはっきり言って不気味だ。何かに導かれているような気さえする。『誘い込まれる…か。当たっているかもしれないね』「だろ? 危険じゃないか?」このまま進んで、待ち構えている敵にズブリって展開なんてお断りだ。こんなとこで死んでしまうわけにはいかない。今まで苦労してきたのが全部水の泡になってしまう。そうなるとナズナたちに申し訳ない。『だけど戻ってもどうにもならないだろう。さっきの竜種にまた襲われるだけだ』「うっ…」『私たちに残された手段は進むしかないんだ。頑張ってくれ』「…了解」結局、現状維持か…「扉か?」あの後もしばらく歩き続け、明かりが段々となくなってきたかと思うと目の前には、大きな扉があった。「ふっ!」力尽くで、押してみるが開かない。「無理か…」『嵐。壁に何かあるよ』「壁?」スカさんに言われたとおり、壁の方を見てみると、確かに何かがある。「これ…鍵か?」取ってみると、それは地球でも比較的によく眼にする物だった。しあわせ荘では、大家さんのおばちゃんが、部屋の本棚の上においてある巾着袋の中にこれと同じようにたくさん鍵がついたマスターキーが入っている。何でおばちゃんが隠している鍵を知っているのと言うと、実質的に管理しているのははスカさんだからだ。「まさか…」俺は、もう一度扉をよく見た。そして見つけた。「か、鍵穴…」『何というか…ねぇ』大きな扉の真ん中辺りにちょこんと小さな穴があった。『…鍵を開けてみたらどうだい』「…そうだな」何を思ってこれを作ったんだろう。「だけど、少なく見ても鍵は20個はあるぞ?」『全部試すしかないだろう』「面倒だな…」『文句を言ってても仕方ないよ』「じゃあやりますか」俺は、一番端っこの鍵から順番に試していこうと思い一つ目の鍵を挿した。「無理か」『外れだね』やはり一発目から成功とはいかないみたいだ。鍵を抜き、次の鍵を試そうとした時、鍵穴に異変が起きていた。『おや?』「え? …え?」鍵穴は光を放ち、音を立てて何かをしている。「何してんだ?」『わからないね』鍵穴の光は収まったが、特に変化はない。鍵穴がなくなったりなんてこともしていない。さっきの光は、一体何をしていたんだ?「じゃあ気を取り直して次の鍵…」「全部外れ…」かなり時間をかけてしたんだが、結果は全部外れで終わった。挿すたびに、光を放つから、余計に時間がかかってしまった。なのに全部外れ。「まさか、この鍵自体がフェイントだったのか」『その可能性もあるけど、この仕組みがわかったよ』「仕組み?」『途中からわかっていたんだけど、一応の確認で全部試してもらったよ。おかげで確信が持てた』「で?仕組みってのは?」『簡単だよ。挿すたびに光を出していただろう?この鍵穴は挿されるたびに形を変えているんだ。だから、何度やっても外れだったんだよ。挿されるたびに変わられるんじゃ、コピーも出来ないね。挿された感覚がなくなったら発動するみたいだ』「じゃあ、当たるまでやり続けなきゃいけないのか…」『そうなるね』24個もあったんだぞ…、毎回挿すたびに形が変わるんなら当たる確立は毎回24分の一じゃねえか。何時間ここでいなきゃいけないんだよ。しかも、この中に当たりだって入ってないかもしれないのに…「カルさんは一々こんなことしていたのか…」『それはわからないけどね』カルさんって俺と同じ体だったんだろ?こんなこと毎回やるなんて、性格は似ていないんだな。同じなのは能力だけってか?まあ、怪我とかにはかなり便利な能力だけどな。傷を塞いだりすることとかには、かなり役に立つ。……塞ぐ?「穴…」『何か気づいたのかい』「カルさんって、俺と同じ能力だったんだよな?」『ああ、君と同じ、血液を使う魔法だった』「…試す価値はあるか」俺は、鍵を元の場所に戻して、扉に近づいた。『何をするんだい?』「まあ見ててくれ」俺は鍵穴に指を当てて、血を流し込んでいった。「これくらいで…」鍵穴の中で、血の形を鍵穴に合わしていく。「……ビンゴ」手を動かすと、鍵は開いた。『…君、医者にも向いてるって言ったけど泥棒の方がいいかもね』「うるせえ」医者で泥棒な魔法使いか…。なんかかなり雑魚キャラ臭がする…「今度は…」『行き止まり?』扉の先は、再び行き止まりだった。扉もない。「どうなっ、どわ!?」奥の壁に触れようと、足を一歩進めた瞬間、俺の体が大きく揺れた。「な、何事!?」俺が立っている地面がゆっくりと下降し始めている。「お、落ちている!?」『いや、これは下降して行ってる』スカさんの言ったとおり、どうやらゆっくりと降りて行ってるみたいだった。人が乗ったら、自動的に作動するように作られているようだ。「エレベータみたいだな…」『そう言ってしまうと浪漫がないよ』浪漫なんかは要らない。平和が欲しい。『しかし面白い。君といると本当に飽きないね』「うれしくねえ」エレベータはゆっくりと降りて行ってる。この下が人生のゴールではなく、ちゃんとしたゴールであることを祈る。『そろそろ止まってきたね』「ああ」エレベーターに乗って5分程度、エレベーターはゆっくりと減速し始めた。まあ、元々ゆっくりなので、些細な違いだけど。「止まったな」エレベーターが止まると、目の前の壁が開きだした。『段々と奥に入ってきたね』「敵がいないいいけど、これ無事に帰れるのか?」帰ったときに、アリシアやシントラへの土産話がたくさん出来そうだな。ランディ・ジョーンズの大冒険とかどうだろう?<あとがき>カルさんの遺跡? 家? でした。強化編ももう少しで終わり。強化はされますが、そこは嵐なので、万能ではありませんが大分強化はされます。初期ヤムチャから、セル編クリリンくらい。では!また次回!!