<この戦いを終わらして、のんびりと畑でも耕したいものだな><全員下がれ! 私が出る><お前の名前は…■■■■だ! これから私と共に戦ってくれ><全く、あまりしんどいのは嫌いなんだが…>第53話「風邪を舐めると痛い目に遭う」「…変な夢だったな」いつもは、見た夢は忘れることが多い俺が、珍しく見た夢を覚えていた。しかし内容に全く見覚えがない。喋っていたのも誰だかは分からなかった。だけど、どこかで聞いたことのある声。…いや、どこかと言うよりいつも聞いている声だな。俺の声に近いものを感じた。なんとなくだけど。「…飯食うか…」いつまでも夢のことを考えていてもしかたない。少し重たく感じる体を動かし、リビングに向かった。体が重たい? もしかして太ったか?「お! おはよ~嵐!」「ん…」ようやくフェイトと無印のフェイトと同じ9歳になったアリシアが背中から俺の首にぶら下がっている。俺とアリシアの身長の差は、現在30cm。俺、約160cm、アリシア、約130cm。このくらいで苦しむ俺じゃないはずだが、今日はアリシアが異常に重く感じた。「お、おも…」「むっ! レディに失礼だよ!」「す、すまん」アリシアはほっぺを膨らましながら、俺から降りた。今日は少しからだの調子がおかしいな。変な夢を見たからだろうか?夢を見たくらいで体調に変化が出るなんて一体どういう効果の夢なんだよ。全く。「それじゃあ先に行ってるね」「ああ」アリシアは、パジャマのままリビングに走っていった。この前、着替えてから来るようにプレシアさんに注意されたばっかなのに…忘れてるな。「お、嵐。はよっす」「おはよう」「おはようシントラ、アインス」後ろから来たのは、大体二人でいることが多いシントラとアインスだった。シントラは手に新聞を持っている。「ほら、今日の新聞だ」「どうも」シントラは、俺に新聞をよく取ってきてくれる。リビングに行くついでだと言っているが、リビングに来るのに新聞を取っていると時間が掛かるのは、シントラには内緒だ。知ると怒りそうだからな。「おはよ」「はい、おはようございますマスター」ナズナが朝ごはんをテーブルに並べている。俺は、皿をテーブルに運んで席について、新聞を読み始めた。「今日のニュースは…」『芸人魔導師コンビのNo Stopのブレーキ・タイヤさん(36)と人気女優のターン・ノリノリカさん(34)が出来ちゃった結婚!?』へえ~こいつ等結婚しちゃったんだ。最近騒がれてたからそろそろかなって思ってたけど…世の中、なんでもやり過ぎはよくないってことだな…俺も気をつけるようにしよう。…経験ないけど。『謎の魔導師拉致事件相次ぐ! 管理局も犯人の足取り掴めず』最近、有名になってきたニュースだな…。魔導師が行方不明になって、場所すら特定できなくなるって言う事件。これこそ本当に気をつけないとな。アリシアたちにも一応注意しとかないと。『若きエース、高町なのは(13)教導隊入り』…相変わらずがんばってるね~主人公。その頑張りを俺も見習った方がいいんだろうか? 熱血!! みたいな。「おい、飯出来てるぞ」「あ、悪い」シントラの言葉通り、俺の前にはご飯と味噌汁という、朝の定番が用意されていた。俺は新聞を置いて、飯を口に入れた瞬間、俺の体に異変が起きた。「……」「マスター? どうかしましたか? 顔色が悪いです」「味噌汁嫌いだったか? でも今まで普通に食ってたよな」ナズナたちの声を聞きながら、俺は、トイレに走った。「ぎ、ぎもぢわるい゛」トイレに走り、なんとか間に合った俺が出てきて最初に話した言葉がこれだった。冗談とか言っている場合じゃなかった。真剣にしんどい。この世界に来てから、初めてのことだった。「マスター! 大丈夫ですか!?」「だい゛びょうぶ…」『明らかに大丈夫じゃないだろう…』ナズナが心配してわざわざ見に来てくれた。心配させるわけにはいかないと思い、大丈夫そうに振舞ってみたが全くの逆効果だった。うまく話せなくなっている。「マスター!? まさか体調が!?」「し、心配するな」「無理です!!」『無理だね』「姉御! 嵐はどうだった」騒ぎを聞きつけたのか、シントラまで来る始末。もう言い逃れは出来そうにない。「ちょっと風邪気味でな。放っとけばすぐに治る」「それでしたら、今日は一日ベットで寝ていてください!」「あ、ああ、勿論だ」ナズナから、覇気のようなものを感じ、俺は頷くことしか出来なかった。ナズナさん怖いよ…「38度8分…ね」『思ってより高いね』「け、結構ありますね…」「あなたが風邪を引くなんて、珍しいわね。明日は槍でも降るのかしら」ナズナに部屋に連行された後、ナズナは食事を持ってくると部屋を出て行き、入れ替わりでプレシアさんが体温を測りに来てくれた。体温計を持ってこっちにゆっくりと近づいてくるプレシアさんにはかなり恐怖を感じた。そんなことを言ったら、雷で黒焦げだろうけど。「あなた昨日、何か風邪に掛かるようなことしたかしら?」「風邪ですか?」昨日は特に何もしていないはずだが…しっかり早く寝たし、風呂を出た後も体はちゃんと拭いたはずだし…「特には…」「…誰かに移されたのかしら?」『その可能性もあるが…』誰かに移された可能性もあるが、それだと俺と一緒に誰かも苦しんでなきゃ詐欺だろ。そいつがやばいくらい抵抗あるなら別だけど『まあ、それはどうでもいいか』「そうね。嵐、今日は大人しくしときなさい」「そうします…」「訓練も今日はお休みにしときましょう」「すみません…」「謝る必要はないわ」プレシアさんはナズナが入ってくるのを見るとそそくさと部屋を出て行ってしまった。ナズナは、リンゴを持ってきている。「リンゴなら、食べれると思いまして」「ああ、リンゴなら何とかいけそうだ」ナズナは椅子に座ると、ビニール袋を出して膝の上に置きそこに器用に剥いたリンゴの皮を入れていく。「上手だな」「はい」俺は、昔から料理が苦手で、小学校のときもリンゴの皮むきテストは0に限りなく近い点数だった。「これでいいかな…」『いいんじゃないかい』ナズナは、リンゴを剥き終わり最後の皮を袋に入れる。膝の上に置いてあった皿には綺麗に剥かれたリンゴが並べられてる。「それじゃあ」手を伸ばし、一つのリンゴに刺さっている爪楊枝に手を伸ばしたのだが「駄目です!」「へっ?」ナズナに腕を掴まれ止められた。「え、これナズナの?」「マスターのです」余計にわけが分からない。俺のために剥いてくれたんなら、何故俺が食べちゃ駄目なんだ?いただきますを言っていないとかだろうか?「いただきますを言ってなかったからか?」「いえ、違います」「じゃあなんで」「…昔のことを覚えているでしょうかマスター?」「昔?」昔というと、どれぐらい昔だろうか?「私が高町なのはと出会う前に寝込んでいたでしょう」「あっ! それか!」あの時は、ナズナも、今の俺と似たような症状になっていたな、そういえば。だけど、何故今それを?「あの時、マスターは私に何かしてきませんでしたか?」「何か?」何かしただろうか? 身に覚えがないんだが…ナズナが気に食わないことなんてしてないと思うけど、もしかしたら知らないうちにしてしまってたんだろうか?「だから私もします」「しますって?」「……」ナズナはリ爪楊枝を掴み、俺の口に運んできた。…そう言えばナズナにこれしたな…、今頃になって後悔。「…あ~ん」ここで断るのも悪いと思い、口を大きく開ける。この状況が、リンゴが食い終わるまで続いた。緊張と、体調の悪さでまた吐きそうだった。「ナズナ、いつまでもここにいなくてもいいんだぞ?」「しかし…」リンゴが食い終わってもナズナはこの部屋から出て行かなかった。心配してくれるのは嬉しいが、ここにいつまでも縛っておくのは悪い気がする。「俺は大丈夫だから」「……」ナズナは離れようとしない。ここで、いい事を思いつき、俺はナズナの手を握った。「マスター?」「絶対大丈夫だって、風邪如きでくたばったりしないからさ、そんなに心配ならこれ」俺はいつもしている赤の十字架の首飾りをナズナに渡した。「それで」そして、ナズナがしている、黒い十字架の首飾りを取り俺の首飾りと交換した形になった。「これは?」「この首飾りをナズナだと思うから、ナズナはその首飾りを俺だと思っていたらいい」我ながら臭すぎる台詞。顔が真っ赤になるのを感じる。「わ、わかりました」ナズナの方も照れながらも了解し、部屋を出て行った。俺は、ベットに横になって、目を閉じ、すぐに眠りについた。この時にナズナいてもらった方がよかったと後悔するのは、もう少し先のことだった。<俺とお前がいれば百人力だ。そうだろ?><今日の戦いで、亡くなった者は…><人形に心は宿るか否か><あたしを置いていくとはどういうことだ!!><お前は…、ここで眠っていてくれ><いやだ!! 最後まで一緒に…><お休み…><人形の王よ! これ以上は好きにさせん!!>「…冷たい…」顔にかかる、冷たい雨で目が覚めた。またあの夢だ。一体なんなんだ? 見たことないのに、知っているような…あれ?「…ここ、どこだ?」『まさか…ここは…』さっきまで俺は自分の部屋でしんどいから寝ていたはずだけど、今は、嘘みたいにしんどさは消えている。それに場所まで変わっている。俺の部屋から、雨が降りしきる森に「…え?」驚きのあまり、握っていた拳が解けると、中から宝石が転がってきた。スカさんに預かっておいてもらった赤い石が。おまけ入院なのはさんとクロノのとフェイトの会話sideフェイト・テスタロッサ「それで、間違いないんだな」「うん。あの時、確かにナズナちゃんがいた」なのはが目を覚ましたという話を聞いてすぐに駆けつけた。心配していたけど、私たちの前では元気に振舞ってくれた。なのはが一番つらい筈なのに。その後、クロノが始めた出した話は、想像の斜め上を行っていた。「やはりか…」なのはが墜ちたときにナズナがいたというのだ。初めはクロノが嘘を言っているのかと思ったけど、なのはは確かに見たらしい。「そうか。協力ありがとうなのは。フェイトとは積もる話もあるだろう。すまないが僕はここで」クロノは、席を立ち、帰ってしまった。忙しい中、わざわざ時間を作っていたと母さんに聞いたのできっと今日の忙しかったのに無理してここに来たんだろう。その後、私となのはは、怪我のことや魔法のこと30分は話し続けていた。私がそろそろ帰ろうとした時、なのはが切り出した。「ナズナちゃんさ」「えっ」「クロノ君は、私のクローンだってことしか結局わからなかったって言ってたけど」ナズナの調査は、クロノの調べでは、なのはのクローンということしかわからなかった。他にも、わからないことは多いらしいけど、ここが管理局の限界らしい。「私、それだけで十分だと思った」「なのは、どうしたの?」「ナズナちゃんと話してて、わかったの。ナズナちゃんと私って似てるのは外側だけって。ナズナちゃんも言っていたけど」なのはは、話し続ける。「多分、私とナズナちゃんはお互い相容れない存在なんだと思う。だから、こんな傷すぐに直して、ナズナちゃんを見返すの」なのはは、強い眼差しで、窓から空を見た。怪我で落ち込んでいたなのはだったけど、ナズナの話をした時の眼は、力が篭っていた。「けど…」なのはには、悪いけど、二人はよく似てると思う。お互いに、何か譲れない芯が立っている所とか…私は、なのはにまた来ると言って、病室を出た。「そう言えば、ナズナちゃんの隣にいた男の子…、名前聞いてなかったな…。今度ナズナちゃんと会ったとき聞いてみたらいいかな。そのくらいのお話は別に良いよね。私の怪我の手当てもしてくれたみたいだし…」<あとがき>嵐、修行編突入!!これが終わると、嵐も大分すると思いますし、力もつくと思います。それと、クロノが言う管理局の限界は“表”のです。スカさんなど“裏”の者はさらに研究を続けています。まあ、スカリエッティが作った理論なので、精々わかるのは同じスカリエッティだけでしょうが…では!また次回!!