「次はあれに乗ろうよ!」「ジェットコースター…、アリシア、一人で…」「さあ母さん! 一緒に行こ~」「ああっ!? 離してアリシア!?」「なんて言うか…、のんびりしてるよな」第50話「Puppet Prince」何故、俺たち回帰組(おばちゃん除く)が遊園地にいるのか?それは、一昨日の夜。プレシアさんとアリシアの会話のせいであった。―――一昨日「ねえ母さん!」「どうしたのかしらアリシア?」「私ね、母さんにお願いがあるの!」そろそろ寝ようかと思っている時間帯にアリシアとプレシアが話しているのを偶然見つけた俺は、しばらく話しに交わることにした。「お願い?」「うん! いいかな?」「ええ、言ってみなさいアリシア。出来ることならしてあげるわ」プレシアさんは基本的にアリシアに甘い。アリシアに厳しいプレシアさんというのもかなり不気味ではあるが…「えっとね、私、ここに行ってみたいの」「ここ?」そう言ってアリシアが取り出したのは、毎日ミッド新聞だった。ここ、サラーブに唯一届く、ミッドの情報である。一体どこから、この新聞を取り入れているのかスカさんに聞いてみたところ違うとこの郵便受けに、この新聞が入れられると、自動的にサラーブに送られてくるようになっているらしい。つまり、悪戯とかで石とか入れられるとその石も送られてきたりもするらしい。そんなことは一度もないが。その毎日ミッド新聞を取り出して、一体どこに行きたいんだ? 誰かの殺人現場?「…マジックパーク?」「うん!」アリシアが指差しているとこを見ると、そこには一つの写真が貼られていた。遊園地の紹介? みたいなページらしく、スリル満点のジェットコースターと書いてある。「ここに行ってみたいの!」「え゛? ここミッドなんだけど…」「でも行ってみたいんだよ~」確かにこのジェットコースターは乗ってみたいがミッドに行くのはちょっと危険な気がする。「アリシアはここに行きたいのね?」「行きたい!」「そうね…」プレシアさんは、新聞を見て何かを考えている。「まあいいでしょ。明後日に行きましょうか」「ちょ!? プレシアさん!?」「やったー!!」部屋を退出していったプレシアさんを追い、腕を掴む。「プレシアさん! いいんですか!?」「遊園地のことかしら?」「はい、危険じゃ…」「多分、大丈夫でしょうね。あなたのデバイスも黙っているみたいだし」そういえばさっきの会話に一度も入ってこなかったなスカさん。寝ていたのか? デバイスのクセにまた『大丈夫だよ。変装していけばいいだけだよ。魔力は抑えるのをつければいいんだしね』スカさんが反対しないなんて…本当に大丈夫なんだろうか?『まあ、そこのジェットコースターに使っている素材を調べてみたいというのもあるけどね』「それが本音なのか、さっきのが本音かどっちだ?」―――現在まさか、本当にくるとは思わなかったな…ナズナもさすがに変装してきているし、ちょっとやそっとではなのはと気づかない。それにこの時期はそこまでなのはは知られていないはずだしな。「マスター。こっちです」「ああ」しかし人が多いな…迷子になってしまいそうだ。俺、結構方向音痴だしな…「ナズナ」「はい?」「ちょっと手繋いでいいか? 迷子になりそうで…」かなり恥かしいけど迷子になって迷子センターに行くよりは百倍マシだろう。ナズナには悪いが、主が迷子センターで呼ばれるなんて従者からしたら悪夢だろう。「…は、はい。構いませんよ」「悪いな」ナズナに手を繋いでもらい、アリシアたちを見失いように追いかける。「でけーな」「そうだな。小さくなってしまったからかもしれないが、何もかもが大きく見える」シントラとアインスも後ろからついてきている。シントラも万が一に備えて変装しているのでわからないはずだろう。アインスは、いくら魔法文明が発達している世界とはいえ、ユニゾンデバイスは不味いのでシントラの胸ポケットに入ってもらっている。「それにしても、よく疲れないなアリシア」「昨日は興奮して眠れなかったそうですが…」「今だけじゃねえのか?」「おそらく、帰りは倒れるだろうな」あのテンションのまあ突っ切ったら、そりゃ帰りはガス欠だよな。「嵐~! 早く~!」「すぐに追いつくから、ゆっくり歩いて待ってろ!」「いいの?」「いいから楽しんで来いって、さすがに二回連続乗りはしんどいしさ。俺は疲れたから、ちょっと休憩しとくよ」「でも…」「いいって。そのかわりスカさん連れてってやってくれ。一回じゃ、研究し足りなかったらしいからさ」あの後、アリシアと一緒に並んで30分、ようやくジェットコースターに乗れたんだがジェットコースターはあっという間に終わってしまい、アリシアがもう一度乗りたいと言い出した。さすがにしんどいので、アリシアたちだけで行ってくるように俺は頼んだ。「ア、アリシア…母さんも休憩…」「じゃあ、待っててね嵐! もう一回乗ってくる!」「アリシア…」「あたしももう一回乗ってくる! アインスは?」「私もお前についていくよ」アリシアたちは走って列に並びに行った。そして、一人だけここに残っている人物がいた。「ナズナはいいのか?」「はい。私はマスターといます」「そうなのか?」「はい」ナズナは、ジェットコースターに乗る気はないらしい。俺と一緒で疲れたんだろうか?「ナズナ、ちょっとトイレ行ってくる」「席を取っておきます」「あ~、結構綺麗なトイレだったな」トイレを済まし、ナズナの元に戻ると、ナズナは椅子に座って本を読んでいた。「悪いな、待たして」「いえ」俺を待っている間に飲み物を買っていたんだろうかジュースが一つテーブルに置いてあった。「あ、そ、それはマスターの分です」「あれ? 俺の分だったのか? ナズナの分は?」「わ、私はもう飲んで、ゴミ箱に捨ててきました」「そうか、ありがと」わざわざ俺の分まで買っといてくれるなんてさすがナズナ。気が利くな。俺は、テーブルのジュースを手に取りストローを吸う。「……」ナズナの視線が何故か鋭い。口に何かついていたんだろうか?「…なんかついてるか?」「い、いえ! 何でも!」…変なナズナだなそういえばブックカバーをしているが、一体どんな本を読んでいるんだろう?ナズナのことだから、魔法の本なんだろうな。今度聞いてみよう。「さっき30分ぐらい並んでいたから、アリシアたちが帰ってくるのも30分くらいだな。それまでここで待っとくか」あまり離れて、アリシアたちと合流できなくても困るからな。ナズナも本読んでるみたいだし、俺もなんか暇つぶしの道具持ってこればよかった。「なんか暇をつぶせるようなものは…んっ?」「…劇、始まるよ~」「劇?」いきなり聞こえた声の方向に振り向くとそこには、人形劇の舞台があり、劇が始まろうとしているが、誰も寄っていない。人気がないんだろうか?「ナズナ、ちょっと行ってくるわ」「…私もついていきます」ちょっと不機嫌になったナズナを連れて、人形劇を見に行ってみると劇をしようとしている、口だけしか見えない男の口が笑った。「お客さんが来るなんて珍しい!僕の劇を存分に楽しんでくれ」声は若いような年をとっているような、よくわからない声だったが何故か嫌悪感を抱いた。「客が珍しい? そんなに人気ないのか?」「いや~、そういうわけじゃないんだけどね」「?」「せっかくだし見ていったらどうかな? 面白いよ」まあ暇だったし、ちょうどいいか「これから始めるのはある国の物語…」昔々、ある王族に一人の子供が生まれました。子供は、不思議な子供でした。生まれたばかりで母といるよりも人形といる方が笑顔になります。ある日、使用人が人形を誤って壊してしまいました。使用人は子供に泣かれると思い、思わず目を瞑りましたが、次に聞こえてきてたのは子供の笑い声でした。使用人は、その子供が少し怖くなりました。ある日、使用人が部屋の掃除をしに行くと、ベットの下から切り刻まれた人形が大量に出てきました。その日から、使用人は子供の世話係を辞めてしまいました。そして子供は王子として、教育をされ、立派な王子へとなりました。王子には、親が決めた許婚がいました。同じく国で同じ年に生まれた王族の姫でした。しかし、王子は姫には目もくれず、人形を手に持ち、今日も新しい人形を捜しに行きます。だけど姫は王子のことを嫌いになりませんでした。王子に心から惚れていたからです。姫は言いました。「あなたは、何故私を見てくれないの?」王子は言いました。「君が人形じゃないから」姫はその日から、王子の前に現れなくなりました。だけどそんなことは王子は気になりません。王子は、次に人形の置き場所が欲しくなりました。そう思い、王子は国の王様を殺してしまいました。当然、王を守っている騎士たちは怒り、王子に切りかかりました。しかし、鉄の剣で何度切りつけても、王子の体には傷一つつきません。やがて騎士たちも王子に殺されました。王子はこの時から、王様へとなりました。その日、国は大きく変わってしまいました。名前だけではありません。国は豊かな国でした。争いもない、平和な国でしたが、王様が支配してからは変わってしまいました。王様は自分の人形を守るため、力を求めました。他国との交流もしないようになり、ひたすらに力を求め続けました。その内に、国の人々も笑わなくなり、まるで人形のようになり、王様は大変喜びました。王様が国を支配してから一年か過ぎた頃、王様は結婚しました。あの時、王様の前に現れなくなった姫が再び王様の前に姿を現したのです。そして目の前に立ち、姫は言いました。「私はあなたのために人形になりました」王様は笑いながら言いました。「一年前に見たあなたとは、別人のようです。あなたも僕と一緒になったんですね。なら、一緒に楽しみましょう」国に人形の夫婦が誕生しました。王様が国を支配してから数年、他の国とたくさん戦争をしました。王様の国は強く、どの国にも負けない強さを持っていましたが、唯一互角の力を持った国がありました。その国との戦いのときは王様自ら戦いに赴き敵と戦いました。中でも、血塗られた戦士は、王様といつも互角の戦いを繰り広げていました。戦いが終わりを告げるときがきました。ついに王様が血塗られた戦士によって討ち取られてしまったのです。だけど、その戦いで血塗られた戦士も王様との戦いの傷で死んでしまいました。王様は、戦いに負け、姫と共に永い眠りについてしまいました。国が解放され、世界に平和が訪れました。「これでお終い。面白かった?」「…謎が結構多いんだけど」人形劇で戦いまで表現するのは凄いけどな「わからないとこは自分で考えると面白いかもよ?」「あー、もういいわ」適当に時間つぶせたし、アリシアもそろそろ帰ってくるだろ。「ナズナ行くそ…!?」「はい…!?」ナズナに呼びかけ、元の場所に戻ろうとしたとき、ナズナと俺は人形劇の男に手を摑まれた。「なんだ?」「ん~」人形劇の男は、俺とナズナの手をにぎにぎしながら口元を歪めている。「いいね君たち。君たちみたいのを見ているとまだまだ生きる活力が湧いてくるよ」「は?」いきなり何言い出すんだこいつは?「ふふ、それじゃあ僕は行くよ」そう言うなり手を離し、どこかへ行ってしまった。何者だったんだあいつ?「嵐~! お待たせ~」「おっ、アリシア! ここ! ここ!」「結構楽しかったな!」「ああ、お土産のクッキーもおいしかった」「そ、そうね…私は目が回ったわ…」「じゃあそろそろ帰ろうか?俺も疲れたし」派手なパレードが終わり、辺りが暗くなってきたのでそろそろサラーブに帰ることにしたんだが「うにゅ…」やっぱりアリシアはパレードが終わった途端、眠たそうになってしまった。しかたがないので今は俺が背負っている。「帰りましょう」ナズナには逸れないようにシントラの手を握ってもらっている。「姉御、痛い痛い」ナズナも眠たいのか、力加減が出来ていないようだな。俺も眠たいし、そろそろ帰ろうかね。「スカさん」『転移開始』それにしても変な奴に会ったな…<あとがき>今更ですが、タイトル修正。そろそろ原作に関わっていきますね。なのはの怪我とか、他もろもろ嵐は、そんなにstsの歴史を変えるつもりはありませんが、本人の知らない所で変化していってます。では!また次回!!おまけナズナが呼んでいた本題名:気になる異性の心を鷲摑み!?P16.間接キスの項目