「な、なんですか!?」「わん! わん!!」「めんどくせえことになってきやがった!」―――フッーー! フッーー!第48話「笑顔のために」sideシントラ―――オオォ!!「ラスボスってとこか!」突然地中から現れた、謎のサイ? みたいな動物は鋭い眼光であたしとコーデリアを射抜いてくる。サイにしては尾が長く太いし、殻? のようなものまで皮膚についているが、一応サイに見える。大きさは小象ぐらいだがそれでもでかい。「こ、こっこ、怖くなんてありません! ポアロがついてます!」「後ろ見てみろ」「えっ?」「クウ~ン…」コーデリアの後ろに丸くなって隠れているポアロがいた。さっきまで吠えまくっていたが、今の咆哮で根負けしてようだ。まあ、さっきまで吠えていたのは凄かったけどな。さすがに根負けしちまったか。「ポアロ! 私の後ろに隠れるなんてズルイ!」「わ、わぅん…」「お前ら喧嘩してる場合じゃないだろ!」コーデリアはポアロを捕まえ前後に激しく揺すっている。やばい状況なのに、何故か緊張感がない二人だった。「父のホームズが泣いていますよ!」「わうわうん…」「いいから敵に集中…っ危ねえ!!」―――ガアァアアァ!!!サイ? が我慢できなかったのか、物凄いスピードであたしたちに鋭い角を向け突進してきた。「早い!?」コーデリアを掴みポアロを胸に抱き、前転し、攻撃を何とか、かわす。そのまま突っ込んでいったサイ? は硬い岩に激突した。「や、やりましたね!」「いや…」岩が砕け、砂埃が舞うが、その中から一つの影が出てきた。「ダメージはねえみたいだな」「あわわわわ」「くうん…」しかし思いのほか深く角が岩に刺さったのか、抜けないようだ。体を必死に動かして抜こうとしている。その様子を見る限りはそこまで頭はよくないのかもしれないな。多分。「コーデリア、こっちこい」「ふえ?」コーデリアを少し離れた岩場に連れて行く。「いいか、絶対にここから動くなよ」『Shell Protection』エッケザックスでスカ山に作ってもらった簡易の防御魔法を発動しておく。コーデリアとポアロを白い光が包むように展開される。「シ、シントラさんは!?」「あたしか? あたしはちょっとあいつと遊んでくる」「で、でも!?」「大丈夫だって。あたしはこう見えても結構強いんだぜ? ここでじっとしてろよ」あたしは、コーデリアたちの隠れている岩場から離れサイ野郎が突き刺さっている場所に戻った。―――ウウゥゥウ…「はっ! 無事に抜けたんだな! そのまま突き刺さったままだと思ったぜ」人間の言葉が理解できるかはわからないけどとりあえず挑発をしてみる。するとサイ野郎は頭にきたのか、走り出す準備をしている。「人間の言葉がわかるのか? まあどっちでもいいか」サイ野郎は長い尾を激しく振り、威嚇してきている。「今からあたしが叩き切ることには変わりねえんだからな!!!」エッケザックスを持ち上げ、サイ野朗に向けた。「来いよサイ野郎! その立派な角とお別れさしてやるぜ!」サイ野郎はあたしの挑発に乗ったのか、凄まじい速度であたしに向かってきた。でかい体からは想像できない速度だ。「まずは力比べだ!!」あたしはエッケザックスをサイ野郎に向けておもいっきり剣を振るった。あいつの角とあたしの剣が衝突し火花を散らす。「くっ…なかなか…効く…」あいつの速度がプラスされている衝撃はかなりの衝撃だった。思わずエッケザックスを弾かれてしまいそうになった。「だらっ!!」エッケザックスを両手で握り、全力でサイ野郎の角を弾く。サイ野郎は、そのせいで自分の体の向きがズレ、違う方向に突っ込んだ。どうやら、いきなりは止まれないようだ。「手が痺れた…」サイ野郎の突進を弾けるのがわかったのはいいが一回一回弾いて、手にこんなに痺れを与えてしまうのなら、いつ手が駄目になるかわからない。次からは、弾くんじゃなくてなくかわすようにしないと…―――フッーーーー!!!自分の突進が弾かれたことに苛立ったのか角が攻撃されたことに怒ったのかは知らないが相当頭にきたようだ。目が血走っている。「悪いな。加減できなくて」するとまた馬鹿の一つ覚えのように突進を繰り出してくる。まともに攻撃に当たってしまうと大ダメージを負ってしまうだろう。「誰が当たってやるかよ!」サイ野郎の動きを正確に読み、突進を回避する。さっきと同じように突っ込んでいくが、Uターンし、またあたしに突っ込んでくる。「空中に逃げれば当てれねえだろ」サイ野郎が突っ込んでくるのを下で見ながら攻撃をしようと思って空中に回避したまではよかったんだけど…―――オォ!!!「嘘だろ!?」サイ野郎は速度を保ったまま、あたしに向けてジャンプして攻撃してきた。かなり、高く飛んでいたはずなのに、サイ野郎はあたしの目の前にいる。「危ねえ!!」ギリギリ体を反らすことに成功し、サイ野郎の攻撃をかわす。サイ野郎はゆっくりと空中から地面に落ちていく。「隙だらけだぜ!」その落ちてってるサイ野郎にエッケザックスに風を纏わせ振り下ろす。「紫電一閃!!」あたしの渾身の一撃を食らう瞬間、サイ野郎は、体の殻みたいなのを体全体に覆いあたしの攻撃をガードした。「か、硬い!?」あたしは力が強い方だと思っているが、さすがにこれは硬すぎる。いくら力があるとはいえ、今のエッケザックスで砕くのは不可能だ。「意外に賢いんだな…」体全体を覆った姿は、まるでボールみたいだった。そのボールの体のまま地面に着地し、何回かバウンドした。「ちっ、ふざけた体しやがって」サイ野郎は体を覆っている殻を解除し頭をぶるぶると振っている。―――ウウゥウ…「直に攻撃が駄目なら、これでどうだ!」『Argerwindhose』カートリッジをリロードし、エッケザックスを地面に突き刺す。その突き刺した部分を中心に竜巻が発生する。「耐えられるか!?」近くにいたサイ野郎も巻き込まれる。だが、あいつは、その竜巻に巻き込まれたと思うと、また体を丸めた。「…これでも無理か?」竜巻の中に発生する、無数の風の刃が切り刻むが、一向に本体には攻撃が届かない。ただ、あの硬い殻が傷ついていってるだけだ。「あの殻みたいな皮膚を砕かなきゃ駄目だな…」竜巻が収まったにを確認して、エッケザックスを引き抜く。「ツヴァイ・シュヴェーアト」『Zwei Schwert』エッケザックスの形態を二刀流にして構える。こうなったら、威力よりも手数で攻めて、隙が出来たときに“あれ”を決める。―――グオオォォオオ!!!「おらよ!」片方の剣をサイ野郎が走り出す前に投げつける。だが、サイ野郎は気にせず走り出し、攻撃を角で弾く。「甘いぜ!」弾かれた剣を繋がっている鎖で操り再びサイ野郎に攻撃を加える。―――ゴオッ!?弾いた剣がまた戻ってくるとは思ってなかったのか硬い殻に覆われてない状態でモロに攻撃を食らい、顔に傷がついた。「っし! やっと一発入ったか!」攻撃を食らったことに驚いたのかサイ野郎は闇雲に暴れだした。怒りか恐怖か、その両方か、どちらにしても、周りが見えてねえ―――オォオ!? オオオォオ!!!そのままあたしに向かって突進してきたが、今までに比べると遅い。「今のお前なら、かわすのは余裕だぜ」あたしはさっきの攻撃のせいで動きが鈍ったと考えていた。だけど、それは間違いだった。「がはっ!?」完全にかわしたはずなのに、体に走る重い衝撃。何本かいったかもしれない。その何かに攻撃され、壁に叩きつけられた。「な、に…が」痛む体を無理矢理動かし、サイ野郎を見たとき何に攻撃されたかすぐにわかった。「…な、るほど。尾で、ね…」攻撃された何かの正体はわかった。なら次は、あの尾にも注意を払って闘えばいいだけの話だ。「まだまだっ!!!」sideコーデリアどうしよう!?目の前でシントラさんはあの怖い生き物と戦っている。私はしばらくその戦いに見惚れていた。シントラさんはさっき言っていた通り、とても強い魔導師だった。その戦い方に憧れまで抱いた。このまま怖い生き物を倒せると思ったとき、シントラさんに尾の攻撃が当たってしまい形勢が逆転してしまった。押していたシントラさんが押されている。助けなくちゃいけない!でも…「私は…」周りの大人たちは口を揃えて言っている。――お前の爺さんは凄い奴だったが、お前は全然だな――魔導師に向いてないぜ?――あんまり戦いはしない方がいいだろう私は祖父のように才能はない…祖父のように立派な魔導師になりたかったけど、大人しくしといた方がいいと皆は言っている。「でも…」目の前でシントラさんは頑張っている。私なんかのためにシントラさんには全く関係のないことなのに、私についてきてくれた。そんな人をこのまま見捨てていいのか?だけど、私なんかが助けに入っても邪魔に…「わん!!」「ポ、ポアロ!? どうしたの?」ポアロはいきなり吠え出し、私の目をジッと見つめてきている。私には何かを伝えようとしているように見えた。「ポアロも…助けたいんだね」「わん! わんわん!!」そうだ。ポアロも勇気を出しているのに私が出さないわけにはいかない。「よし、やろう!」「わん!」そうと決まれば、シントラさんを助けないと!私は頭をフル回転させ、周りの景色を見渡し使えるものを探す。弱い私が敵に勝つためには、使えるもの全てつかわなくちゃいけない。「あれで…こうしたら…」私は、リュックを降ろし、中からある物を取り出す。「ポアロ、これを咥えて…」sideシントラくそ…体の動きが段々鈍ってきたな…あの時食らった一撃が不味かったかもしれない。早めに勝負を決めたいがサイ野郎は、硬い皮膚で覆う覆わないの繰り返しで、思ったよりダメージが与えれない。「どうするか…」“あれ”をすれば倒せる。当たればの話だがだけど、こんなに動き回るサイ野郎に当てれる自信はない。何とかあいつの動きを止めなくちゃ…「怖い生き物! こっちですよ!!」声が聞こえた。岩場で隠れているはずのコーデリアの声が振り向いてみると、案の定、声を出していたのはコーデリアだった。「馬鹿!! 危ねえから隠れてろ!」コーデリアはあたしの言葉を無視して、短剣と銃を両手に持ち銃の方でサイ野郎に攻撃を放った。「怖いんですか!? こっちですよ~」場所を知らせるように、銃を空に向けて撃つ。さすがに頭にきたのか、サイ野郎はコーデリアに突進した。「危ねえ! 避けろ!!」サイ野郎の速度の方が速く、助けれそうにない。当たる瞬間に、少し目を背けてしまった。が…―――グォオオォオ!?サイ野郎の悲鳴が聞こえ、目を開けてみると、サイ野郎が転倒していた。「なっ!?」サイ野郎はすぐに体を起こそうとしたが、上から、大きな岩が落ちてきて、長い尾を踏みつけにし、身動きが取れなくなった。「ああ!?」何故か、コーデリアがショックな声を出しているが、気にならなかった。これなら、“あれ”が絶対に当てれる。「エッケザックス!!!」『Speerform』カートリッジをリロードし、エッケザックスの形態が変わっていく。二つの剣から、大きな槍に槍の後ろの先端部分とあたしの腕は鎖で繋がれているが、この鎖限りはあるが槍の邪魔にならない程度には伸びる。「終わりだ! メテオスピア!!!」『MeteoritSpeer』あたしは体を弓なりに上体を反らし、力の限り槍を投げつけた。そのときにもう一発、カートリッジがリロードされる。あたしの手から離れた途端、バーニアが発動し、さらに速度が上がる。その速度のまま、サイ野郎に直撃し、暴風が起こった。<あとがき>次で終わりですね。では!また次回!!おまけ魔法紹介Argerwindhose(エルガーヴィント・ホーゼ)使用者:シントラカートリッジを一つ消費し、自分の周りに竜巻を発生させる魔法。周りにいる対象を殲滅するのにも使えるが、防御にも使える。遠くの対象には当たらないのが欠点。