「嵐、なかなか戦いが上手になってきたわね」『もう10ヶ月ぐらい続けているからね』「まだまだ甘いとこの方が多いけど」「それで、何故私を呼んだんだ?」『ちょっと手伝ってほしいことがあってね』第43話「あなたと…合体したい…」冬の終わりが近い3月。俺の最近の訓練の相手はナズナとシントラの交代交代だった。ナズナ曰く、ミッドとベルカ、違う系統の魔導師との戦いに慣らすためらしい。ナズナと違ってシントラは中々遠距離の攻撃をしてこないので、剣と剣を交じわすことが多かった。「今日はここまでだ。今日の反省は姉御に聞いてくれ」「どうだった?」「そうですね…」ナズナが俺たちのほうへ歩いてきながら考えている。おそらく今日の評価をシントラは訓練が終わり、シントラが騎士甲冑を解除する。「魔法の失敗は減りましたね」「そうだな。それ、随分成功の確率上がってきたじゃねえか」「今回は一回で成功してました」「うん? ああ、これね」『最近は失敗するほうが珍しいよ』シントラが指差してきたのは、俺が持っている刀。というより、どでかいメスなんだが。それを指している。「ドクターソードだっけ?」「ああ」ドクターストップのときに使うメスとは違い、攻撃性のあるメス、それがドクターソード。ドクターストップに攻撃性を持たすことが最近になって可能なったので早速作った魔法だ。「結構頑丈でうざかった」「俺の魔法の売りだからな…」頑丈じゃない俺の魔法なんて砲撃が使えないなのは程に役に立たない「ただ攻撃力がいまいちだよな」「エッケザックスと打ち合えるのは凄いんですが…」「そうだよな…」あまり攻撃力ないのが弱点だよなぁ…非殺傷を解除して殺傷設定にすればかなり使える魔法なんだけどな。俺の魔法は普通の魔法と一緒で殺傷と非殺傷を設定できている。そこらへんはスカさんがうまい具合に操作していてくれてる。「総合的に見て、マスターの戦い方はヒットアンドアウェイの形になるんですが…」「なるんだが?」「スピードがちょっと…」「それは…」肉体強化を使ってるから、そこらへんの般人より速いのは確かだ。だけど、魔導師となれば話は別になる。フェイトやナズナと俺の速度を比べてみると一目瞭然だ。「速さか…」『ソニックムーブでも練習するかい?』「それ俺に全く向かなかったじゃん…」『そう言えばそうだったね』フェイトやエリオが使うソニックムーブ。一回試してみたことがあったんだが、全く使えなかった。使おうとスカさんにしてもらうと暴発して、その場で爆発を起こした。どうやら、俺が使うには向かない魔法だったようで、それ以来練習していない。「考えててもしかたない。スカさん、輸血」『はいはい』スカさんを装備している右腕から、何かが刺さる感覚がしたと思うと俺の血が体に流れ込んでくる。ブラッド・カードリッジ、俺がスカさんに頼んでいた一品だ。カートリッジの弾丸を魔力ではなく、血液を詰め込んだだけだが。採った他の血はスカさんに魔法でちゃんと保管してもらってる。「おぉおおお~」『気持ち悪い声を出さないでくれ』訓練がない日とかにちょっとづつ溜め込んでいた俺の血液を使用している。初めは刺さる感触に抵抗を感じていてが、今は慣れた。「そういえば今日の訓練は早めに終わるんだな」「はい」「スカ山が何かしたいらしいぜ」「スカさんが?」『ちょっと試したいことがあるだけさ』「試したいこと?」俺の輸血が終わったのと同時に扉が開きプレシアさんとアリシア、そしてアインスが来た。「試したいことってなんなんだ?」「嵐、お疲れ!」アリシアからタオルが渡された。ほんの少し冷たくて気持ちいい。「ありがとアリシア」「むぅ…」「大丈夫だよナズナ! 私はナズナの味方だから」「い、言っていることがわかりません」『話し戻すよ』アリシアとナズナが盛り上がりだしたのだがスカさんの言葉で中断されてしまった。『アインスを連れてきたということは、大体察しはついているだろう』「…ユニゾンか?」『そうだよ、融合の実験を試してみるんだ』そういえばアインスってユニゾンデバイスだったんだな。ユニゾンデバイスというより魔導師のイメージが強いからちょっと忘れてたわ。「あなたたち三人に協力してもらうから、そのつもりで」「わかりました。では誰からいきましょう」ユニゾンか…、これが可能ならばかなり戦闘力上がるんじゃないか?男が一度は夢見る最強オリ主になれるかもしれない。こう…なのはとかも片手の一撃で薙ぎ飛ばしちゃったりさ! 無双的に千切っては投げ千切っては投げってね!『ならナズナ、君から頼むよ』「はい」ナズナは、アインスと共に訓練室の中央に立った。俺たちは魔法障壁が張られているモニタールームで二人の様子を観察することにした。『じゃあ頼むよ』「わかった。ナズナ、準備はいいか?」「はい」ナズナの返事を聞くとアインスは目を閉じナズナの体に小さい手を当てる。小さいアインスがナズナに触れるには飛ばないといけないんだが、今回はナズナが屈んでるので飛んでいない。「…?」アインスの体が光りだしたが、一向に融合は起こらない。ナズナも少し怪訝な表情になっている。『どうやら駄目みたいだね』「すまない」『君が謝ることじゃないさ。ナズナとは融合適性が合わなかっただけだ』どうやら、ナズナとのユニゾンは無理だったらしい。ナズナとアインスのユニゾンが可能なら、ありえないほどにナズナ無双になれただろうに。「残念です」『しかたないね。それじゃあシントラ』「あたしか? 何か緊張するな」ナズナと入れ替わるようにシントラが中央に立つ。「それじゃあいくぞ」「あ、ああ」さっきと同じようにシントラの体に手を当てる。すると今回は、アインスの体と同調するようにシントラの体も光り始める。「おおっ!」このままユニゾンするのかと思ったのだが、光はゆっくり収まっていった。『可能のようだね』「ああ」『君たちならユニゾンはできるとはわかっていたけどね』「それでも確認は必要だろう」『違いないね』話の内容を聞くに、シントラとアインスの融合適性はあったようだ。まあ、同じ夜天の栞からの存在だし、出来るのは当然といったところか「大丈夫かシントラ?」「き、緊張した…」シントラは何に緊張したのかは知らないが相当緊張したみたいだ。ユニゾンってそんなに緊張するものか?いや、融合事故とかは俺だって怖いけどさ。『次は嵐、君だよ』「わかった」シントラが帰ってきていたので次は俺が訓練室の中央に行った。「次で最後か」「そうみたいだな。よろしく頼む」「わかっている」『それじゃあ始めてくれるかい』アインスは目を閉じ俺にゆっくりと手を当ててくる。俺は、アインスに触られた瞬間、体に異変を感じた。ピリッて感じに電流が走ったみたいな…「…?」「む…」それは、アインスも感じているようでナズナやシントラのときのように光りださない。『どうしたんだい?』「ちょっと待ってくれ」スカさんが気になったのか、質問してきたがアインスは俺に手を当てたままじっと俺の体を見ていた。「よし…」しばらく体をじっと見ていたアインスだったが、何かわかったのかやっと体が光りだした。「っ!?」アインスの体が光るのを認識すると同時に頭に何かが浮かんできた。掠れているが遺跡のようなものと、森のようなものが見える。それに右腕が焼けるように熱い。「っく…」「おい……丈…か! …い!」頭が熱くなるのを感じ、俺は意識を手放した。「ん…」意識が戻ると俺は、ベットに寝かされていた。少し体がだるく感じる。「俺…どうなったんだっけ?」ユニゾンの実験の後に急に意識が遠くなって…「ようやく起きたのか」「シントラか…」ベットの横においてある椅子に腰掛けていたのは、ブスっとしているシントラだった。何だか微妙に怒っているような気がする。「どうなったんだっけ…」「どうって?」「あの後…」「おめーが倒れた後、姉御がすぐにここに連れて行ったよ。あんまり姉御に心配させんじゃねえ」「そうか…」やはり、俺はあの後倒れたようだ。原因はわからないがあの時は、突然頭になにかが浮かび、体が焼けるように熱くなった。「もうすぐ姉御がここに来るから、それまで大人しくしとけ」「ああ、心配させてすまん」「……べ、別にあたしは心配してねえ…」「ツンデレ…」「もう一回寝るか?」「…遠慮しときます」シントラと冗談を言い合っていると、ナズナが部屋に入ってきた。「マスター目を覚ましたんですね」「心配掛けて悪いな」「いえ、目を覚ましてよかったです」起き上がり、ナズナと向き合おうと思った時、何かを右手に握っているんのに気がついた。冷たい石のような感触がする。「これは…」「おめーが気絶してるときにも拳は握ったままだったんだ。何握ってたんだ?」「赤い…石? いえ、宝石でしょうか?」拳を開いて出てきたのは赤い石だった。しかも半分欠けている。元はダイヤの形だったんだろう。半分なくなっている・「何でこんな物を俺が持ってたんだ?」「マスターの物じゃないんですか?」「俺に宝石集める趣味はないんだが」「スカ山に聞いてみたらいいんじゃねえか?」「それもそうだな」ベットから降り、スカさんの研究室に行こうとしたがナズナに止められ、強制的にベットに戻された。「ナズナ?」「駄目です。今日は一日寝ておいてください。明日、ドクター聞きましょう」晩御飯は後で持ってきます。そう言うと、ナズナとシントラは部屋を出て行ってしまった。「…心配性だな」することがないので、今日は寝ることにした。sideプレシア・テスタロッサ『まだ起きているのかい?』深夜の研究室。誰もいないと思っていた部屋に声が響いた。「ちょっと気になることがあってね」『…嵐のことかい』そこにいたのはスカリエッティ。人形を操作してここまで来たようだ。「それもあるけど、今はこの人物についてよ」『カル・ラントシュタイナか…』カル・ラントシュタイナ。今より遥か昔に生きていた魔導師。「彼のデータを改めて見てみたけど…不可解な点が多すぎるわ」『そうだね』嵐のオリジナルとなった人物。その活躍は後世にも語り継がれているはずなのに、情報が少なすぎる。それに彼が強いと記されているが、ここまで強いのは少し無理がある。残っている情報が誇張されているだけかもしれないが『彼はあまり自分の情報を流すのを嫌ったらしい。彼のDNAだって、未来でようやく発見されたものだ』「今日の実験での嵐の反応も気になるわ。それに…」『あの宝石だね』嵐が気絶したときから手に持っていた宝石。少し見せてもらったが、あれは嵐の血液で出来ていた。「ユニゾンが鍵になったんだと思うわ。あの宝石が何かはわからないけど」『…もう少し、カル・ラントシュタイナのことを調べてみる必要がありそうだね』「ええ、悪いけど手伝ってもらうわ」また、睡眠時間が削られそうね…<あとがき>嵐のオリジナルの話は現実回帰を書く前から考えてたんですがようやく片鱗を出せました。さて、うまく回収出来るかな…では!また次回!!