「ナズナ、出かける準備してくれ」「はい」『どこに行くんだい?』「図書館近く」第31話「それぞれの動き」sideD-スカリエッティ嵐があの使い魔と戦闘をしてから一日が経過した。私とプレシアは、昨日の私が計測したデータを使い、さらに研究を進めていた。「へえ…」『どうしたんだいプレシア』「この剣型のデバイスを使っている…烈火の将だったかしら? 3体の中でも中々な者ね」『確かに、一番バランスがとれている』プレシアが着任した点は、烈火の将、シグナムだった。私から見ても戦闘力はヴォルケンリッターの中でもトップだろう。まだ湖の騎士を見ていないが、嵐の話ではサポート系と言っていた。戦闘力はヴォルケンリッターの中では低いはずだろう。『だからこの烈火の将のデータを多めに集めたんだ』「この狼からのデータも粗方採取したわ。闇の書の復元率57%ってとこね」57%か…、彼が聞いたら微妙だと怒るだろう。『なら彼に怒られないように、作業を開始しようかね』「ふふ、そうね」プレシアは奥のテーブルに置いてあるデータ表を取り、作業を始めた。私も人形を操作し、指定の席に座り作業を開始した。「そういえばあの子達はどこにいったのかしら」『図書館周辺を散歩してくると言っていたよ』デートと言うわけじゃないだろう。ナズナはそう思っているかもしれないが…彼のことだ、一応の保険をかけに行くんだろう。「そう、ならいいわ。のど渇いたわね」『そうかい?おばちゃん!紅茶を持ってきてくれ』sideアリサ・バニングスなのはの新しい友達、フェイト・テスタロッサ。ビデオレターで何度も見ていた子があたしの目の前にいる。そしてあたしの友達の大事な妹。今日、なのはの家の近所のマンションに引っ越してくるって話を聞いてすずかと一緒にマンションに遊びに行った。それで話が進むうちになのはのお母さんに挨拶をするって話になり今、翠屋でみんなで食事をとることになり、今に至る。「アリサちゃん? どうかしたの」「えっ!? な、何でもないわよすずか」「そう?」危ない危ない、顔に出ていたみたいだ。気をつけないと。すずかやなのはたちにはアリシアについて話していない。だってこの話を一番初めに聞くのは、アリシアの妹のフェイトだって思ったから。だけど、このまま考えていてもしかたない!行くのよアリサ・バニングス!「フェイト!」「ひゃい!?」「ちょっと来てくれるくれるかしら」「えっ?」「いいから!」あたしはフェイトの手を掴み強引になのはたちから離れていった。「すずかちゃん、アリサちゃんどうしたの?」「わからないよ…ここに来る前から何か思いつめてたみたい」「フェイトちゃんとなんかあったのかな?」「けど会うのは今日が初めてのはずだよ」「「う~ん…」」「ア、アリサ? 何か私しちゃったかな?」「…単刀直入に言うわ。フェイト、姉か妹いるかしら」なのはたちから離れた場所でフェイトと向き合い話を出すすると、フェイトは何かに怯えるような表情になり、足元にいるオレンジの犬が睨んできた。「…どうしてそんなことを?」「いるの? いないの?」この表情で姉などいないと言うならば、あまり思い出したくない思い出なのかもしれない。アリシアの存在を思い出したくないのなら、このまま黙っていた方がいいと思った。足元の犬の唸りが大きくなっていく。「…た」「……」「…いたと…思う」フェイトの答えはハッキリしないものだった。ふざけているなら、ここで張り倒すんだけど、フェイトの表情は真剣そのものだった。「そう…」「うん…アリサは何で…」「アリシアって知ってる?」「っ!!??」この名前を出した途端、フェイトの目がこれでもかとばかりに開かれ足元の犬の唸りが止んだ。「どうして…」「あたしの友達なの。その子から頼まれたことがあってね」「頼まれたこと…」フェイトは段々と息遣いが荒くなってきていた。顔を見てみれば、汗も流していた。「この子にね」あたしはポケットから携帯を取り出し、裏に張ってあるプリクラを見せた。そこには、あたしと体が薄いアリシアが写っている。「っ!!」フェイトはそのプリクラを見た瞬間、膝から崩れ地面にお尻をついてしまった。犬が駆け寄りフェイトの顔を舐めてる。慰めているんだろうか?「フェイト、あんたは聞かなきゃいけない」「……」フェイトは顔を俯けている。「あんたの姉さんは、あたしに伝言を頼んで消えてしまった」「……消えた?」消えたという言葉にフェイトは反応し、あたしに顔を向けた。「その話はあとでするわ。今はまずアリシアの頼まれたことを済ます」フェイトに近づき、視線を合わせるように体を屈ませる。アリシアと一緒のきれいな赤い瞳があたしの目に映る。「“フェイトの傍にいてあげられないけど、フェイトのことずっと応援してるよ”…だってさ」「…えっ」フェイトはあたしの発した言葉が理解できなかったのかあたしと犬に確認するように視線を交差させる。「それだけ? 恨み言とか言われてないの?」恨み言って、あんたは一体どういう家庭環境だったのよ。ていうか、恨み言いわれると思っていたのね「言ってないわ。アリシアは消える直前まであんたのことを考えていた」「……」そう聞くとフェイトは、フッと空を見つめた。いまいち言われた言葉が理解できていないのかもしれない。けどその考えが間違っていることに気づいた。フェイトは泣いていた。顔を上に向けているから流れないけど、目元には涙が溜まっている。「……うぅ…う……っく…」「えっ?ちょっとフェイト…」この雰囲気は…まずい!?フェイトに声をかけるのが間に合わす、フェイトはその場で泣いてしまった。泣くのは構わないけど、声を出して泣かれると…「フェイトちゃん!?」「アリサちゃん! 何したの!?」こういう誤解を受けてしまう。「フェイトちゃん! 落ち着いて! どうして泣いてるの!?」「ア~リ~サ~ちゃ~ん」「違うわ! 誤解よ!! フェイト説明して!」結局フェイトが泣き止むまで、悪者扱いだった…恨むわよアリシア…sideシグナム「シグナム、あなたに接触してきた正体不明の魔導師がいたわよね」街灯の明かりがよくわかるビルの上。主はやてがお休みになられたのを確認してやってきたとき屋上でシャマルに突然質問をされた。「ああ、そいつがどうかしたか」「シャマルもあいつが気に食わねえんだろ!」「やめろヴィータ。シャマル続きを」シャマルに飛び掛り服を引っ張っているヴィータを引き離す。こいつは、こういうとこでまだまだ子供だ「そこまで深刻なことじゃないんだけど…どうだった?」「どうとは?」「魔力的に見て」「そうだな…」あそこに来た魔導師の中で目を引いたのはテスタロッサだろう。私の甲冑を打ち抜き攻撃を加えてきたのは驚嘆に値する。というか正直な話を言うと…「すまない。戦いを見ていないからどうにも言えん」「シグナム! あなた戦いを見てなかったの!? てっきりあなたが見てくれてるのとばかり」「すまない」想像以上の強者が相手だったからか久しぶりに血が騒ぎ、他のやつを構っている場合じゃなかったからな「じゃあ、あの魔導師の実力はわからないってこと?」「心配すんなよシャマル! いざって時はあたしがぶっ潰してやる!」「頼りにしてるぞヴィータ」ヴィータの言う通り心配は要らないだろう。やつ一人向かってこようが、私一人で返り討ちに出来る。「あやしいと思えば即座に切るさ」sideクロノ・ハラオウン「そう言えばクロノ君」「何だエイミィ?」「この人も、闇の書関連の人なのかな」エイミィがモニターに写したのは、赤い姿の仮面魔導師だった。アルフの話では、こいつらは仲間じゃないらしい。「こいつか…」「いかにもあやしい感じだよね」見た目で判断するのはよくないと思うけど確かにこの姿で、事件の現場に出てきたらあやしいだろう。「わからない…けれど協力体制にあるのは間違いないだろう」敵対しているのかはわからないけど僕たちに協力して攻撃を仕掛けてきたということは、少なくとも戦いあう関係じゃないってことだ。「こういうやつが一番なに考えているかわからないんだ」「あれあれ? クロノ君どうしたのかな」「前のプレシア・テスタロッサの事件の時にいたナズナという魔導師。あいつもいきなり現場に現れて、フラっといなくなってたろ。それと似た手口だ」「そっか。確かまだナズナちゃん見つかったなかったね」フェイトから聞いたナズナという魔導師は、まだジュエルシードを所持している。フェイトやアルフは、そんなに悪い人じゃないと言っているけど、油断は出来ない。いつ爆発するかわからないものを持っている犯罪者なんて危険極まりない。その件も片付いてないのに、またこんな厄介なやつらがでてくるなんて…「くそっ! どいつもこいつも」「怒らない怒らない」sideout「成果なし。ターゲット確認ならずと」「残念です」図書館の周りをうろついてみたんだがお目当ての相手は来なかった。確か毎日ここの道を通るはずなんだが…運悪かったか?図書館には毎日来ている思ったんだけどな…。時間は知らないから何とも言えないな…「保険をかけときたかったんだけどな」「ターゲットが見つからなければ不可能です」時刻は夕方、もう今日は待ってもこないな。しかたない。後日改めてくるか。シャマルとかに会っても困るし「じゃあ、帰ろうか」「はい…あっ!」「どうした?」ナズナが立ち止まり声をあげた。滅多に声を大きくしないナズナが大きくするなんて何事?敵襲?「今日はトイレットペーパーが安い日です!」「…うん?」今なんて言ったのかな?聞こえなかったよ「マスター急ぎましょう!売切れてしまいます」「あ、え、うん、了解」呆然としながら走っていくナズナを後ろから追いかけた。だが、急いだにもかかわらずトイレットペーパーは売り切れてた。金はあるんだから、別に高くてもいいんじゃないかとナズナに聞いてみると「安いほうがいいに決まってるじゃないですか」と言われてしまった。どうやらおばちゃんと買い物に行かせてたのが悪かったらしい。いや、安いことはいいことだけどさ…<あとがき>アリサたちの誤解が半端じゃないレベルまで発展してしまった…アリシア生きているのに幽霊扱い…別に構わんがクロノの評価がさりげなく正しいですね。似た手口というか、同一犯だしね。そしてシグナムたちの評価ひどすぎる。まあ確かに相手にならないけどね!では!また次回!!