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No.6363の一覧
[0] トリッパーズ・カーニバル(主人公以外の男子全員~【真・完結】 [ark](2009/09/18 07:06)
[1] いち[ark](2010/04/28 22:56)
[2] にわめ[ark](2009/02/20 20:16)
[3] さーん[ark](2009/02/07 02:21)
[4] しー[ark](2009/02/07 20:52)
[5] ごー[ark](2009/02/13 00:14)
[6] ろっく[ark](2009/02/10 02:42)
[7] なな[ark](2009/02/10 02:49)
[8] はち[ark](2009/02/13 00:14)
[9] [ark](2009/02/13 00:15)
[10] じゅー[ark](2009/02/13 23:42)
[11] じゅーいち[ark](2009/02/19 14:08)
[12] じゅうに[ark](2009/04/11 20:03)
[13] じゅうさん[ark](2009/04/11 20:04)
[14] じゅうし[ark](2009/05/04 21:01)
[15] じゅうご[ark](2009/05/04 21:01)
[16] じゅうろく[ark](2009/05/04 21:02)
[17] じゅうなな[ark](2009/05/04 21:02)
[18] いちぶ、かん[ark](2009/05/14 22:39)
[19] じゅうく! 第二部開始[ark](2009/06/21 14:21)
[20] にじゅー[ark](2009/06/21 14:22)
[21] にじゅう……いち![ark](2009/06/21 14:22)
[22] にじゅーに[ark](2009/06/21 14:22)
[23] にじゅうさん[ark](2009/06/21 14:19)
[24] にじゅうよん[ark](2009/06/21 14:19)
[25] にじゅうごー![ark](2009/06/21 19:33)
[26] にじゅうろっく[ark](2009/07/29 19:50)
[27] にじゅうなーな[ark](2009/07/29 19:51)
[28] にじゅーはっち[ark](2009/08/06 23:04)
[29] にじゅうく~[ark](2009/08/06 23:05)
[30] さんじゅー[ark](2009/08/06 23:06)
[31] さいご![ark](2009/08/06 23:07)
[32] せってい[ark](2009/08/06 23:13)
[33] がいでん[ark](2009/02/28 11:53)
[34] 外伝2 高町恭也(仮)の自業自得[ark](2009/06/12 22:36)
[35] 外伝3 不幸なトリッパーが手に入れた小さな幸せ[ark](2009/07/29 20:34)
[36] おまけその1、本編or外伝で使わなかったボツネタ[ark](2009/09/15 18:23)
[37] おまけ2、最終回のボツネタ[ark](2009/09/15 18:24)
[38] おまけ3、次回作のボツネタ、ちょっとだけクロス注意[ark](2009/09/18 07:05)
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[6363] おまけ3、次回作のボツネタ、ちょっとだけクロス注意
Name: ark◆9c67bf19 ID:675ebaae 前を表示する
Date: 2009/09/18 07:05
『次回作のボツネタ(多重クロス?)』
小学生では無理な作品や劇中で年単位の時間が経過する作品もあり、14人分を考ることもできず、普通のオリ主モノになりそうな話も多数あったためボツ



『和真・プレシア編、リリカルなのはの世界』



「くっ……ここは? アルハザード……ではない。 そう、失敗したのね……」

 どことも分からない森の中でプレシアは意識を取り戻した。 くらくらする頭を押さえながら、自分の現状を確認する。
 そう、自分はジュエルシードの力を使い、アルハザードに向かうことを決意したのだ。 死んでしまった娘、アリシアを生き返らせるために。
 しかし、最後の最後で邪魔が入った。 もう1人の娘、フェイトと自分を仲直りさせるために1人の子供が時の庭園までやってきたのだ。
 その子供は、どれだけプレシアに暴力を振るわれようが絶対に諦めなかった。 絶対に諦めず、プレシアに仲直りして欲しいと訴え続け、最後には意識を失った。
 その後、プレシアはアルハザード行きを強行する。だが、その子供を助けるために直前で逃げようとし、他の子供達が二人を助けるため次元の狭間に飛び込んできた。 ここまでは良く覚えている。
 それから……こうして自分1人でいるところを見ると、恐らく失敗したのだろう。
 子供達は助かったのか? それとも一緒に次元の狭間に落ちたのか?

「そうだ! アリシア、それに坊やは!?」

 そこまで思い出したところで、初めて自分以外の人間に意識が向いた。
 まずは娘のアリシア、今まで生き返らせるために行動してきた大切な存在。 しかし辺りを見回してもアリシアの入っているポットは影も形も見当たらなかった。
 自分が次元の狭間に落ちるより早く落ちていたので、かなり位置がずれてしまったのだろう。 位置だけならいいが、別の世界に落ちてしまったのなら探しようが無い。
 さすがにこの世界すべてを探査する魔法などを使うことはできないため、見つけるには長い時間が掛かるだろう。 もしかしたら二度と再開することなどできないかもしれない。
 それでも、諦めるわけにはいかない。 結果的にフェイトを元の世界に置いてきた以上、自分にはもうアリシアしかいないからだ。
 そしてもう1人、自分と供に次元の狭間に落ちた少年、真塚和真の姿も見当たらない。
 こちらは直前まで自分と一緒にいたので、同じ世界にいる可能性も高い。 もしかしたらすぐ近くにいるかもしれないと考え、周囲に探索魔法を飛ばしてみる。
 デバイスが無いのであまり大規模なものは使えないが、それでもプレシアほどの魔導師なら数十キロ範囲での探索が可能だ。
 それほどの範囲を調べることができたおかげで、ほんの僅かな時間でプレシアは和真を発見することができた。 すぐに飛行魔法で和真の下に駆けつける。
 数分ほど飛んだところで、一人でうずくまっている和真の姿を見ることができた。 上から見た程度だと、怪我などはしていないらしい。
 プレシアはとりあえずほっとした。 しかし、すぐに顔を曇らせる。 和真が泣いていることに気がついたからだ。

「坊や、大丈夫? どこか怪我をしたの?」
「うう……ぐすん、プレシアさん? プレシアさんは、僕の知ってるプレシアさん?」
「何を言っているの? 私は坊やの知っているプレシア・テスタロッサよ」
「プレシアさん、うわーん! プレシアさん! みんないなくて、僕のこと知らなくて、家に行っても知らない人がいて、ぐすん、うわああぁぁぁん!」

 プレシアに妙な質問をした和真は、プレシアの答えが自分の求めているモノだと分かると、プレシアに抱きついて本格的に泣き出した。
 和真は泣きながら何かを訴えているが、涙と鼻水で声がかすれてよく聞き取れない。 プレシアは和真の頭を撫でながら、和真が落ち着くまで待つことにする。
 そして和真の断片的な話をつなぎ合わせることで、自分が予想外の事態に巻き込まれていることを認識した。
 和真が目覚めたとき、自分が海鳴にいることに気がついた。
 時の庭園にいた自分が何故海鳴にいるのか分からなかったが、とりあえず家に帰ることにした。 もしかしたら他のみんなも家に帰っているかもしれないので、学級名簿を見ながら電話で確認を取ろうと思ったのだ。
 そして自宅にたどり着くと、表札が別の名前になっていた。 チャイムを押すと、まったく知らない人が出てきた。 明らかに、自分の両親ではない、自分の家がいつの間にか他人の家になっていたことを理解する。
 混乱したままでいると、隣の家からはやてが出てきた。 そこははやてが真塚家に住むようになってから使っていなかったはずなのに、外国人らしき人たちと一緒に住んでいるらしかい。
 何故はやてがそっちの家に住んでいるのかは分からなかったが、はやてに聞けば自分の家がどうなったか知っていると思った。 だが、はやては和真のことを知らないと言った。
 時の庭園に行く前にもらったお守りを見せても覚えが無いと言う。 それでも諦めずに話をしていると、やがてはやての隣にいた女の人や赤い髪の女の子が怖い目で睨んできて、思わずその場から逃げ出してしまった。
 その後も、翠屋、友達の家、学校、フェイトの隠れ家、友人達の秘密基地と回ってみたが、和真を知っている人間はだれもいなかった。 友人達は存在すらしていない。
 自分はまったく知らない世界に来てしまった。
 それを理解してしまい、悲しさと寂しさで胸がいっぱいになり、特に方向も定めずに走りまわった。 自分でもどこをどう走ったのか分からないが、気がついたら森の中にいた。
 やがてお腹もすき、かといって街に戻る気にもならず、うずくまって泣いていたら、こうしてプレシアが現れたのだ。

「坊やの地球じゃない? よく似ている別の世界とでもいうの? まさかこんな世界にたどり着くなんて……」
「うう、ぐすん、く~、す~」

 泣くことに疲れた和真がプレシアの腕の中で眠ったのを確認し、プレシアはこれからどうするかを考える。
 この世界に自分以外に和真を知る者はいないし、和真がこのようなことになったのは自分の責任、自分が和真を守らなければならないのだ。
 幸い、プレシアは次元移動魔法を使うことができる。 長い旅になるだろうが、それを繰り返して元の世界を探すしかないだろう。
 道など分からない手探りの旅、生きている間に目的地へたどり着くことができるかどうかも分からない。 いや、たどり着けない可能性の方が圧倒的に高いだろう。
 それでも、和真を元の世界に戻すにはそれに賭けるしかない。 それにうまくいけば、移動した先の世界で和真の友達やアリシアを見つけることができるかも知れなかった。
 そうと決めればこの世界にいる理由も無い、プレシアは次元転移魔法を発動させようとし――複数の魔導師が接近していることを感じ取った。



「クロノ! お母さんが見つかったって、本当!?」
「プレシアさん、見つかったんですか!?」
「エイミィが言ったのか……黙っているように釘をさしておくべきだった」

 学校が終わり、これから帰ろうとしたところでエイミィからの連絡を受けた高町なのはとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、自宅に戻らずアースラに直行した。
 さらにクロノが止めるのも聞かず、無理やり部屋の中に押し入る。 そして部屋の中で見たのは、次元の狭間に消えたはずのフェイトの母親と、その腕の中で眠る見たこと無い少年だった。
 少年が誰かは分からないが、それよりも、もう二度と会えないと思っていた母親と再開できたことが嬉しかった。
 同時に複雑な気持ちが胸を占める。 フェイトのことを人形と言い、本当の娘と供にアルハザードへ向かった母親に対して、なんと声をかければいいのか分からないのだ。

「フェイト? いえ、この世界が元の世界と違うなら……」
「お母さん? あの……」
「フェイト、この坊やのこと、知っている?」

 どうしようかと悩んでいると、プレシアの方からフェイトに声をかけてきた。
 自分の母親からの話に緊張するフェイトだったが、何を聞きたいのかよく分からない。 とりあえず、プレシアの腕の中で眠る少年の顔を見てみる。
 何処にでもいるような、普通の日本人の少年だ。 しかし、闇の書事件で地球に来てまだ一月ちょっとしかたっていないフェイトに彼のような知り合いはいない。
 ここで嘘をついても仕方が無いので、正直に答えることにする。 それに、折角再開した母親に嘘をつきたくは無かった。

「え? その子? ……ごめんなさい、知りません」
「そう、やっぱりあなたは、私の娘じゃないのね」

 だから会わせたくなかったんだ。
 彼女は君の母親ではない、よく似ているだけの別人だ。
 あの和真という少年はこの世界にいたという記録が無い、だが彼の世界では、彼は君達と友達だったらしい。
 なんでもはやてと一緒に住んでいたとのことだ。、PT事件の最後でこっちに来て、闇の書事件はまだ起きなかったらしい。
 時空管理局でもそこまで似ている世界は見つかっていない、彼を元の世界に戻すには時間がかかるだろう。
 落ち込まないことだ。 別世界のプレシアがこの世界に来たのなら、この世界のプレシアもどこかで生きているのかもしれない。

 クロノが何か言っていたようだが、フェイトの耳には入らない。 それほどまでにフェイトの受けたショックは大きかった。
 再開した母親に、再び娘ではないと宣告されてしまった。 言いたいことがいっぱいあったはずなのに、すべて吹っ飛んで頭の中が真っ白になった。
 同時に、プレシアが和真のことを大事にしているということを理解してしまった。 自分の母親は、自分が娘かどうかを判断するために、自分が見たことも無い少年を判断基準にしたのだ。
 少年の頭を撫でるプレシアの姿は、まさに親子の関係と言ってもいいほどの愛情を感じることができた。 まったく他人のはずなのにプレシアに愛されている少年のことが羨ましく、同時に嫉妬してしまった。
 あのような母の顔は、アリシアの記憶でしか見たことが無い。 少なくとも、フェイトの記憶では一度も見せなかった顔だ。 それをあの少年は惜しみなく受けている。
 フェイトの心の中で黒い感情が芽生え始め、胸の奥で宝石が鈍く輝き始めた。


 トイレを終え、手を洗った和真はアースラ艦内で道に迷ってしまった。
 元の世界でも一度アースラに乗った事はあるが、内部構造など簡単に分かるものではない。 道を尋ねられるような人間か、案内板のようなものが無いかを探してみる。
 しかしだれもいない。 しょうがないので誰かに出会うまで適当に歩き回るが、何故か誰にも会わず、時間ばかりが過ぎてゆく。
 そんな和真の後ろに、黒い人影が現れた。
 その人影はデバイスに魔力の刃を作り出すと、それを大きく振りかぶり、和真の背中に向けて――

「フェイトちゃん! 何やってるの!」

 突然聞こえてきたなのはの声で和真は振り返り、その拍子に足を滑らせて尻餅をつき、振り下ろされたバルディッシュを避けることができた。
 和真を襲った犯人はフェイトだった。 バリアジャケットを身にまとったフェイトが、ハーケンモードのバルディッシュ・アサルトを和真の目の前に床につき立てている。
 チッっと舌打ちしたフェイトは、今度は横なぎに和真を切り裂こうとバルディッシュをする。 だが、間一髪なのはがフェイトに組み付いた。

「フェイトちゃん、止めて!」
「離してなのは! この子が、この子さえいなければ、母さんは帰ってくるんだ!」
「あのプレシアさんはフェイトちゃんのお母さんじゃないよ! そんなことしても、フェイトちゃんのプレシアさんは帰ってこない!」
「うるさい! 母さんは母さんだ。 私の母さんなんだ!」

 なのはを振り払ったフェイトは、再びバルディッシュを構えて和真を睨みつける。 その殺気は、魔導師が民間人に向けていいようなものではなかった。
 その迫力に思わず一度後ずさりをした和真だったが、じっとフェイトの顔を見ながらゆっくりと近づき始めた。
 そしてフェイトの目の前まで来ると、今度は頭を下げた。 何故和真がそんな行動を取るのか分からないフェイトは、思わず攻撃するのをやめてしまう。

「ごめんなさい」
「……何で謝るの?」
「フェイトもプレシアさんも仲良くしたいのに、僕がいたから仲良くできなくて、それで怒ってるんでしょ?」
「それは……」

 図星だった。
 自分はこの少年に嫉妬し、ついには気持ちを抑えきれなくなり、ついには手をあげてしまった。
 責められるべきはフェイトのはずなのに、この少年は自分のせいでフェイトが苦しんでいることを分かっており、自分の方が悪いと認めているのだ。

「僕からもプレシアさんにお願いするから、フェイトと話をしてって頼むから、いっしょに行こう?」

 和真がフェイトに向けて手を伸ばしてきた。 フェイトと仲直りをするつもりらしい。
 先ほどまでの自分が、なんだか馬鹿らしいものに思えてしまう。 いったい何を考えてあんな凶行に及んでしまったのか、自分でも分からなくなってしまった。
 こんな良い子なら、きっと友達になることができる。 事実、彼の元の世界でもなのはと友達らしいし、自分とも友達になろうとしたらしい。
 だったら、自分もなれるはずだ。 そう考え、フェイトは手を伸ばし――

『本当にそれでいいの?』

 自分の胸の奥から響く声を聞き、手と止めた。

『そんなことしても、あの母さんは自分の母さんにならない』
『あの母さんは別の世界の母さん、本当の私の母さんじゃ無い』
『そのうち別の世界に行ってしまう。 また私の前からいなくなってしまう』
『なんで? その子の故郷を見つけるため、その子について行くから母さんはいなくなる』
『だったら、この子がいなくなれば?』
『そうしたら、母さんは元の世界を探す理由が無くなる。 ずっとここにいてくれる』
『私の本当の母さんになってくれる』

 何人ものフェイトがフェイトに語りかける。
 それはフェイトにしか見えない幻覚で、フェイトにしか聞こえない幻聴なのだろう。 動きを止めたフェイトを和真は不思議そうに眺める。
 しばらく黙っていたフェイトが、少しづつ体を震わせ始めた。 同時に、フェイトの体から黒い蒸気みたいなものが噴出し始める。
 その異変に一番最初に気がついたのはなのはだった。 コレと似たような感覚を、彼女は一年前に体験している。
 決して忘れられない思い出、辛いことがたくさんあった記憶が蘇り、なのはは思わず叫んだ。

「ジュエルシード! なんでフェイトちゃんに!?」
「母さんは私のだ! サンダースマッシャー!」

 フェイトが雄たけびを上げながら、バルディッシュの先端を和真に向けた。 カートリッジが排出され、魔力が高まりだし、今にも魔法攻撃を打ち出そうとする。
 和真はまた尻餅をついてしまった。 コレでは逃げることができない。 そして魔導師でない和真が強力な魔法攻撃を受けて無事で済むはずも無い。
 なのはが止める間も無く、金色の魔力の光が和真の至近距離から発射され――和真の目の前に発生したシールドによってその攻撃は防がれた。
 シールドで防いでもすべての衝撃を殺すことはできなかったらしく、和真は転げまわって意識を失った。 それでも、たいした怪我はしていなく、どうやら大丈夫らしいということが分かる。
 フェイトが通路の先を睨みつけると、そこにはクロノとプレシアがいた。 プレシアはフェイトの方に手のひらを向けている。 プレシアが和真の前にシールドを張ったことは明らかだった。

「予想しておくべきだったわね。 私の世界のジュエルシード、まさかこんなことになるなんて」
「母さん、やっぱりその子を守るんだ。 そんな母さんなんて、いらない!」

 フェイトが標的をプレシアに変えた。 バルディッシュをハーケンモードにして、プレシアに切りかかる。
 それを寸でのところで避けつつ、プレシアはクロノに声をかける。

「執務官! どこか派手に動ける場所はないの!?」
「この壁の向こうが訓練室だけど、入り口は通路を曲がった先にある」
「修理費は払わないわよ!」

 クロノの返事を聞かず、プレシアは壁に向けて魔力弾を叩きつける。 その衝撃で大穴が空き、向こうにはアースラ艦内の訓練場が見えた。
 プレシアがその中に飛び込むと、フェイトもそれを追いかけて中に入っていく。 続いてクロノとなのはも後を追う。
 訓練場では、1人のアースラの武装局員が自主訓練をしていた。 突然起こった破壊に驚き、思わず動きを止めてプレシアに注目する。
 その動きが止まった瞬間を狙い、プレシアは名も無き武装局員に対して魔力弾を打ち込む。
 いくらバリアジャケットを身に着けているといっても武装局員はCランク程度、それに比べプレシアはデバイスを持っていないとはいえSランクを越える能力を持っている。
 一発で武装局員は気絶し、プレシアはその男が持っていたデバイスを奪い取る。 一般魔導師用の何の変哲も無いストレージデバイス、当然登録されている魔法もそれなりのモノしか入っていない。
 だが、プレシアほどの魔導師ならたいした問題ではない、一瞬で自分の魔法を登録する。 プレシアがいかに魔導師としての質が高いかが分かる行動だった。
 デバイスを手に入れたプレシアは、訓練室の中央でフェイトと向きあう。 クロノとなのはが加勢しようとするが、それをプレシアは手で制する。

「危険だ! フェイトほどの魔導師にジュエルシードが力を加えているんだぞ」
「そうね。 だけど、聞き分けの無い子供をしかるのは、大人の役目よ!」
「フォトンスマッシャー!」

 フェイトの放つ魔法がプレシアに迫る。 それをシールドで防ぎながら、プレシアは空中に飛び上がった。 フェイトも後を追い空中に飛び出す。
 次にフェイトはソニックフォームで高速移動を開始した。 プレシアは格闘攻撃があまり得意でないと思い、接近戦で戦おうと考えたのだ。
 しかし、それは浅知恵だった。 確かにプレシアは接近戦があまり得意ではないが、そう仕掛けてくる相手への対処方法もいくつか持っているのだ。
 プレシアがデバイスを掲げると、一瞬にして巨大な魔力の塊が生まれた。 さらにプレシアが合図をすると、その魔力の塊は炸裂して周辺を無差別に攻撃し始める。
 相手に追いつくことができないなら、周辺すべてを攻撃すればいい。 プレシアほどの魔力があるからこそできる攻撃方法だった。
 小さい弾といえどもプレシアの魔力の高さとソニックフォームの防御力の低さが合わされば結構なダメージになる。 思わずフェイトは動きを止めてしまった。
 その瞬間を逃すプレシアではない、すぐさま追撃の魔力弾をフェイトに叩き込む。 その攻撃にフェイトはシールドを張ることもできず直撃してしまう。

「フェイトちゃん!」
「いや、まだ終わっていない」

 クロノが指を指す先には、煙の中から無傷のフェイトが現れる。
 普段のフェイトならこれで終わっていたかもしれないが、ジュエルシードがフェイトに力を与えているのだ。
 フェイトはバルディッシュを変形させていた。 さらにその先に魔力でできた金色の巨大な刃を発生させる。

「かあさん、かあさん、カアサンカアサンカアサンカアサンカアサン……」
「……私は、貴方の母親ではないわ」
「うわああああああああああああ! プラズマザンバアアアァァァブレイカアアアァァァ!」

 プレシアの一言が引き金になり、フェイトは全力を開放した。
 AAAランクの魔力、カートリッジ、ジュエルシード、この3つが合わさった攻撃を喰らっては、いかに大魔導師プレシア・テスタロッサといえども命の危険がある。
 そんな攻撃を前にプレシアは、自ら突っ込んでいった。 何の迷いも無く、真っ直ぐフェイトに向けて飛び込んでいく。
 クロノも、なのはも、攻撃を繰り出しているフェイト自身も、そのプレシアの行動が信じられなかった。 それでも巨大な剣は止まらない、プレシアに向けて真っ直ぐに振り下ろされる。
 それをプレシアは、左手に発生させたシールドで防ぐ。 かなりの魔力をシールドにまわしているにも関わらず、フェイトの攻撃はじりじりとシールドにめり込みだす。 プレシアの表情にも苦痛が見えた。
 それでも、プレシアはフェイトに近づくのを止めない。 プラズマザンバーを押さえながらじりじりと近づき、ついにフェイトの目の前にたどり着いた。
 ここはバルディッシュの柄の範囲、ここまで接近すればプラズマザンバーといえども攻撃できない。 フェイトは攻撃に全力を注ぎ込んだせいで完全に無防備になっている。
 フェイトの顔が恐怖で歪む。 フェイトはいま、かつての母親に受けた仕打ちを思い出していた。
 鞭で叩かれた苦しい記憶、とても辛く、忘れることのできない記憶。
 そんなフェイトの顔を冷ややかな目で見ながら、プレシアは手を大きく振り上げ――

パァン

 フェイトの頬に平手打ちをした。
 フェイトが頬を押さえながらプレシアを見ようとするが、急に目の前が真っ暗になる。 それがプレシアに抱かれているからだと気がついたのは、自分のすぐ上から声が聞こえてきたからだ。

「私は貴方の母親じゃない。 けど、貴方の母親がどんな気持ちだったのか? それを伝えることならできる」
「母さん……」
「どんな世界にたどり着いたとしても、私はもう1人の娘のことを忘れない。 フェイトが友達と過ごせると信じられるから、私はアリシアのために旅に出ることができた。 ごめんなさい、貴方を置いて行って。 ありがとう、私を忘れないでくれて」
「うう、母さん、母さん! 母さん!――あう……」

 フェイトが意識を失った。 プレシアが非殺傷設定の魔法で気絶させたのだ。
 プレシアはフェイトを抱きかかえたまま地面に着地する。 そこにはいつの間にかアースラの局員達が集まり、意識を取り戻した和真もやってきていた。
 それを一通り見渡した後、リンディにフェイトを預ける。 そして今度はなのはの前にやってくると、膝を折りなのはと同じ目線になって話しかけた。

「これからも、フェイトの友達でいてあげて」
「はい! ……でも、プレシアさんはこれからどうするんですか?」
「私は行くわ、坊やを元の世界にもどさないといけないから」

 そう言ってプレシアはジュエルシードを取り出した。 フェイトに取り付いていたものを回収したのだ。
 それを見たクロノ達は思わず警戒した。 ジュエルシードの恐ろしさはよく知っている。 無理も無いことだろう。

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。 次元転移魔法の補助に使うだけ、移動するのも私達二人だけだから次元震がおきることも無いわ。 いくわよ、坊や」
「はーい」

 和真がプレシアの近くに駆け寄ると、プレシアは次元転移の準備を開始した。
 最後に和真が振り返り、なのはと顔をあわせる。

「和真くん、さよなら」

 なのはが和真に別れの言葉を言った。 和真も手を振って返事をする。

「またね!」

 それは再開を約束する言葉。
 また会うことを信じている和真の言葉に、なのはも自分の言葉を言い換えた。

「うん、またね!」

 プレシアと和真の姿がその場から消える。
 ほんの一日だけの出会い、再開の可能性はゼロに近いことなど分かっている。
 今度会ったらゆっくり話をしたいと思いながら、なのはは二人が消えた後も和真のいた場所をじっと見続けていた。







「さて、そろそろ到着する予定かな?」
「あれ? 誰かくるんですか?」

 無精ひげの男が時計を見ながら呟いた独り言に、天崎刹那は反応した。
 次元震に巻き込まれた刹那は、気がついたら1人でこの世界にいた。 それから色々あって、彼はこの男と一緒に生活しているのだ。
 男は少しだけ楽しそうに、自分が時計を気にしていた理由を説明する。

「ああ、イギリスから知り合いが来るんだよ。 その迎えを任されていてね」
「へ~、どんな人なんです?」
「10歳の双子の男の子だよ。 二人とも礼儀正しいから、きっと君とも仲良くなれると思うな」

 双子、というところで刹那が反応した。 それを男は不思議に思う。
 確かに双子は珍しいが、ここまで反応するものだろうか? 刹那の身の上については一通り聞いたが、双子にどうこうされたという話は無かったはずだ。
 しかし、刹那は真剣な表情で何かを考えている。 何を考えているのか男には分からない。
 やがて、刹那は男に尋ねた。 その双子の名前は? と

「ああ、兄のほうがジャギ・スプリングフィールド。 弟の方がネギ、二人とも魔法学校を優秀な成績で卒業した期待の新星さ」
「他には? どんなことでもいいから教えてください。 特に兄について」

 双子の兄のほうだけを気にする刹那を奇妙に感じながらも、男はその兄について思い出す。
 どちらも立派な魔法使いを目指す、将来に期待が持てる子供達だが、兄のほうだけの特徴となると数が限られる。
 そうして思いついたのは、兄だけが持つ癖についてだった。

「そういっても、二人ともいい子だし……ああ、ジャギ君の方は妙な口癖があってね。 いくら注意しても直らないんだよ」
「口癖?」
「ああ、よくヒャッハァ! って言うね彼は」



『天崎刹那編、ネギまの世界』書きません。



『おまけのおまけ』



 彼女は自然と供に生活をしていた。
 朝日が昇れば目を覚まし、森の中を歩き回って食べ物を探し、日が沈めば眠りに付く。 自然のおきてに従うのが彼女の生き方だった。
 そんな彼女がいつもどおりに森で狩りをしていると、草陰で物音が聞こえてきた。 何か獲物がいるのかと思い、その草むらを書き分けると……
 そこには、地面に横たわる小さな体があった。 体力を消耗しているらしく、苦しそうに息をしている。
 その凛々しい姿に、彼女は一目で恋に落ちた。 これほどの衝撃は彼女の人生の中で初めてかもしれなかった。
 これまでの人生で、彼女はたくさんの相手と関係を持ち、子供を生んできた。 しかし、それは自分の血を後世に残すという、半ば義務みたいなものだった。
 しかし、今回は違う。 今回、初めて彼女は自分の意思で目の前の相手と子供を作りたいと考えた。
 そのためには、まず苦しんでいる彼を助けなくてはならない。 彼女は慎重に彼を自分の住処へと運び、本来は子供用に準備していた寝床に彼を寝かせた。
 それからは、必死の看病が続いた。
 綺麗な水を飲ませ、薬草を集め、食料を与える。 そのかいあって、数日後には容態が安定し、会話することができるようになった。
 彼は尋ねた。 「自分を助けてくれたのは貴方か?」
 彼女は答えた。 「はい、貴方が森で倒れているのを見つけ、こうして看病していました」

「ありがとう、ところで俺以外に誰か見なかったか? 家族とその友人がいるはずだ」
「いえ、貴方以外には誰も……」
「そうか……くそ、俺があの時に!」

 彼は悔しそうに歯軋りをした。
 はぐれた相手というのが彼にとってとても大切な存在であることが分かり、気の毒に思うと同時に、そこまで彼に思われる相手が羨ましくも思えてしまった。
 そこで気がついた。 自分はまだ、彼の名前も知らないということを。

「あの……」
「む、済まない。 個人的なことだ。 気にしないで欲しい」
「いえ、それよりも、お名前を教えてくれませんか?」

 それを聞いて、彼はハッとした。 彼自身、名を名乗っていないことを思い出したのだろう。
 彼は申し訳なさそうに頭を下げ、自己紹介をした。

「申し遅れて済まない、俺の名前はシロと言う」
「シロさん、その美しい毛並みのとおり、すばらしい名前です」
「それで、貴方は?」
「はい、私はクイーン。 ライガ・クイーンと言います」



『シロ編、TOAの世界』書きませんってば


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