『最終決戦Bパターン』先生に魔法を使わせると先生らしくなくなる気がしたのでボツ
マナミはなんともいえない不安に支配されていた。 アリサとすずかを抱きかかえる手にも無意識のうちに力が入ってしまう。
腕の中の二人が少しだけ苦しそうな声をだしたので、慌てて力を抜く。 しかし、マナミを掴む二人の手はより強く力を込めてきた。
二人も不安を感じていることを理解し、今度は力を込めすぎないように気をつけて抱きしめた。
誰も居なくなった夜の海鳴、宙に浮かぶ女性の放った光から助かり、自分の生徒であるなのはとフェイトと会い、気がついたら見たこともない場所にいた。
近代的な建物の中、例えるならSF映画の宇宙船に似ている気がする、その一室に案内され、この部屋から出ないように指示された。
ここはいったいどこなのか? なのはとフェイトは無事なのか? 何故彼女達も空を飛べるのか?
聞きたい事はたくさんあるがこの部屋に居るのは自分達三人だけ、いくら自問自答しても納得できる答えなど出るはずも無い。
「先生、なのは達大丈夫でしょうか?」
「え、えっと、きっと大丈夫です。 高町さんもテスタロッサさんも空飛んでたんですよ? なんかこう……きっと大丈夫です。 えーっと、ほら! テレビがあります。 テレビでも見ながら時間を潰しましょう」
不安そうな声を出すすずかの気を紛らわせるため、壁に埋め込まれているテレビらしき物体に手を伸ばす。 が、操作方法が分からない。
当然のことだった。 これは地球製のテレビではなくアースラに設置されている艦内通信装置、ミッドチルダ製なのだから分からないに決まっている。
それでも、少しでも気を紛らわせることができればと思い適当にボタンを押す。 やがて、どのスイッチが反応したのか分からないが、画面に映像が映し出された。
しかしそれを見た瞬間、三人は驚愕の表情を浮かべる。
夜の海鳴の海、巨大な怪物、圧倒的な力を見せ付ける謎の男、そして……ボロボロになりながら戦い続ける14人の生徒と氷漬けになっている真塚和真。
「これは!?」
「和真! なんでこんなことになってるの!? それにみんなも!」
「これが……これが海鳴で起きていることなんですか? みんなこんなことに巻き込まれているんですか?」
アリサは思わず画面に叩いた。 そんなことをしても意味が無いことは理解していたが、高ぶる気持ちを抑え切れなかった。
すずかは画面から顔を背けた。 男子達とはあまり話したことが無いとはいえ、このような姿を見たく無かった。
そして、マナミは無言で立ち上がり、部屋の出口に向けて歩き出した。
それに気がついた二人はマナミに声をかける。 この部屋で待っているように言われたのに、アースラの中のことなど分からないのに何処に行こうというのか?
「二人とも、ここで待っていてください。 先生はみんなを助けに行きます」
「無理です! 先生飛べないし、あんなビームだって出せないし、死んじゃいます!」
「それでも、生徒が苦しんでいるのを黙って見ているなんてできません」
「だったら私達も!」
「駄目です。 二人とも、私の生徒です。 危険な目にあわせるわけには行きません。 だから、ここで待っていてください。 いえ、待っていなさい!」
普段の優しいマナミからは想像できない厳しい声に、二人は思わず動きを止めた。 それだけの迫力が今のマナミにはある。
マナミは二人が自分に付いて来る意思を無くしたことを確認すると、今度は振り返らずに部屋を出た。
アリサとすずかは、自動で閉まる扉の向こうにあるマナミの背中を黙って見送る。 二人は手をつないで、扉が閉まった後もずっと視線を逸らさなかった。
通路に出たマナミだが、実はどうすればいいかなど全然考えていなかった。
見たことも無い宇宙船の艦内、土地勘があるほうがおかしい。 加えて出ないように指示されていた部屋から出ているのだ。 誰かに見つかれば連れ戻されてしまうだろう。
幸い先ほどまで居た部屋の隣がロッカールームだったので、ここの制服らしい服を失敬した。 これである程度歩き回っても怪しまれないだろう。
後はなんとかして海鳴に向かう方法を探さなくてはならない。
ここが宇宙船なら、普通の方法で外に出ることはできないだろう。 ここに来るときはワープみたいな技術で運ばれたが、そのワープで最初にたどり着いた場所なら逆に海鳴に行くことができるかもしれないとマナミはにらんでいた。
「おい! 戦えるヤツは全員現地に飛ぶぞ! なんでもヴォルケンリッターのコピーが100人も出たらしい!」
「マジか!? 俺Dランクだぞ、行ってもやられるだけだぜ」
「それでもだ、最悪盾になれればいい! 今はとにかく数が必要だ!」
近くに居た男達がそんな会話をしながら走っていった。
その会話の中で出てきた『現地』が海鳴ということは容易に想像できた。 そして『ヴォルケンリッターのコピー』とやらが敵で、それが100人も出てきて大変だと言うことも理解した。
急がなくてはならない。 先ほどの男達の後を追えば海鳴にいけることは分かったので、後はどうやってワープをするかだが、そんなものは後で考えることにした。
そう思って一歩を踏み出した瞬間、突然後ろから声をかけられる。
「そこのお前、この忙しいときに何をして……保護した民間人? 何故こんなところ――」
しまったと思い、思わずビクリと震える。 しかし、男の言葉は続かなかった。
恐る恐る目を開けると、男は手を伸ばした格好のまま固まっている。 不思議に思って目の前で手を振ってみるが、まったく反応しない。
振り返ると、先ほど海鳴に向かうと話していた二人が走る格好のままで止まっていた。 片足を上げての前屈姿勢、物理法則を考えれば絶対に倒れるはずだが、まるで空中に固定されているように見える。
いや、おかしいのは人間だけではない、先ほどまでうるさく聞こえていたアラートが今はまったく聞こえなくなっている。 世界から音が消え去っていた。
まさかと思い自分の腕時計を確認する。 大学入学時に買ったアナログ式だが、秒針が動いていない。
電池が切れたわけでも、壊れたわけでもない、これはおそらく……時が止まっているのだ。
「行くのかい? マナミ」
「……やっぱり、お婆ちゃんだったんだ」
聞こえてきた声に返事をすると、廊下の曲がり角から有葉が現れた。
それを見たマナミは、「やっぱり」と呟きながら笑みを浮かべる。 マナミは自分の祖母が、只者ではない事にうすうすながら感づいていたのだ。
空に浮かぶ女性の光を防いだこと、目の前から突然消えたこと、幻覚ではなく実際に起きたことだと、何となく分かっていた。
有葉はゆっくりマナミの前まで来ると、大きくため息をついた。 それがどういう意味を持つため息なのか、マナミには分からない。
「やめときな。 マナミが行ったところで、何の役にも立たないよ」
「そうかもしれない。 けど、このまま見ていることもできない」
「子供達に任せておけばいいじゃないか、きっとうまくやるよ」
「お婆ちゃん……。 私大人なんだよ? 先生なんだよ? 今戦っているのは子供達で、私の大切な生徒達。
高町さんは自分の意思を貫ける子。
テスタロッサさんは転校して来たばかりだけど、友達ができて嬉しそう。
天崎君と鬼道君はリーダーシップがあってクラスをまとめられる。
竜宮君、エヴォリュアル君、ディニーニ君は目標に向けて一生懸命頑張れる。
クロウバード君、神尾君、幽鬼君、龍堂君はいざという時に頼りになるの。
トライフォン君、大空訓、それにマクレガー君はクラスのムードメイカーでいつも明るい。
ライデュース君とマークハント君は真面目でみんなを引き締めてくれる。
そして……真塚君は優しくて、気がつくとみんなの中心にいる不思議な子。
みんなが揃って私のクラスなの。 だれか1人でも欠けちゃだめなの。 みんなを守るため、私も何かをしたい。 だから……だから! お婆ちゃん、力を貸して!」
マナミは叫びながら顔を上げた。 目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
有葉はしばらく黙っていたが、やがて懐から一つのブローチを取り出す。
それはマナミが子供のころ、「大人になったらあげる」と有葉が言った物だ。 マナミ自身、現物を見てその約束を思い出した。
何故、今それを取り出したのかは分からない。 不思議に思うマナミの手に有葉はそれを握らせた。
さらに有葉がマナミに手のひらを向けると、マナミの体が光に包まれながら宙に浮かぶ。
これはワープする前兆だと、マナミは何となくだが感じ取った。 そして祖母の渡してくれたこのブローチが子供達を助ける力になることも分かった。
「お婆ちゃん!」
「いってきな。 可愛い孫娘がした初めての我侭、これまでいい子にしてきたんだから、ご褒美をあげないとね」
「お婆ちゃん、ありがとう! 私、絶対にみんなを助けるから!」
マナミの姿が消え、有葉だけがその場に残される。
有葉は少しだけ背伸びをすると、マナミがワープしたのと同じように、今度は自分の身に光を纏わせた。
「さて、念には念を入れておかないと。 あいつはちっとやそっとじゃ倒せないからね」
そう呟くと、有葉の姿もアースラ艦内から消えた。
同時に止まっていた時間が動き出し、局員達は再びあわただしく活動を開始する。
腕を伸ばしていた局員は誰かに声をかけたような気がしたが、周囲に誰も居ないことを確認すると、気のせいだという結論を出した。
「確かに驚いたが、SSSランクを甘く見すぎたな。 魔力が弱まっても、小娘1人の攻撃を防ぎきることぐらいはできるぜ! ヒャッハァ!」
「そんな!? これでも駄目なの? きゃあ!」
皆の力を合わせて直撃させたエクセリオンバスター、だがアルバート・グレアムを倒すにはまだ力が足りなかった。
さらにアルバートが力を込めると、なのはは弾かれてしまい、空中に投げ出される。
その様子を、戦闘に参加した者達は絶望の表情で見ていた。
全員が全力を使い切った。 これ以上は戦うことができない。 敗北を確信してしまった。
トリッパー達が歯軋りをし、なのはが涙を流し、アルバートが笑みを浮かべたその瞬間――
「みんな! 諦めてはいけません!」
天から舞い降りたマナミが、吹き飛ばされるなのはをしっかりと受け止めた。
突然の乱入者に誰もが驚く、特にトリッパー達はものすごく驚いた。 まさかここで先生が来るとは思わなかったからだ。
ここで不機嫌になったのがアルバートだった。 勝利を確信した瞬間に邪魔者が来たのだから、いい気分で居られるはずが無い。
「てめぇ……何者だ?」
「この子達の……先生です!」
「ヒャッハァ! 俺は教師が大嫌いなんだ! 荷物検査でDSを取り上げられた恨み、アンタで晴らさせてもらうぜ!」
アルバートがマナミに向けて魔力弾を放つ。 ダメージを負っているとはいえSSSランクの魔法攻撃、直撃すれば抱きかかえているなのはごと消滅してしまうだろう。
しかしマナミは慌てない、落ち着いた動きで祖母に託されたブローチを握り締める。
恐怖が無いわけではない、アースラ艦内で見た映像でアルバートの力はとても恐ろしいものだと理解している。 しかし、祖母のくれた力はそれを上回ると信じている!
「人の繋がりは無限の力、思いは胸に、光は心に、明日への希望はみんなと供に! ユニオンハート、セットアップ!」
マナミの体が光に包まれ、着ている服が変化を始める。
今までは若者向けの女性用スーツだったが、ブローチを胸に着けた純白のドレス姿となった。 一番近い服の形で例えるなら、ウェディングドレスだろうか?
そういえば、祖母が自分のお見合いの企画をしていたことを思い出す。 曾孫の姿を見るまで死ぬわけにはいかないと笑いながら語っていた。
きっと、本当は自分が結婚するときにこれを渡す予定だったのだろう。 それを自分の都合で早めてしまい、申し訳なく思ってしまう。
同時に、自分のためにコレを用意してくれたことを嬉しく思う。 このバリアジャケットは、祖母の愛が全身を包み込んでくれているようにも感じることができた。
そんな幸せな気分を感じながら、マナミは迫り来る魔力弾を片手で払いのけた。
その場の全員がぽかんと口を開けてそれを見た。 それくらい馬鹿らしく、信じられない出来事だった。 アルバートも思わず呆然としてしまう。
弾き飛ばされた魔力弾はそのまま空のかなたに消え去る。 アルバートはしばらくそれを見ていたが、ハッと我に返りマナミをにらみつけた。
「俺の攻撃をこうも簡単に? 何者だ!」
「さっきも言ったはずです。 私は私立聖祥大学付属小学校、3年1組担任、座土マナミ!」
「馬鹿言うな! 何で教師が俺と同レベルか、それ以上の魔力を持ってるんだよ!」
「子供達を守るためなら、教師は無敵になります!」
「ヒャッハァ! 説明になってねぇ! だが、こうなったら全力で叩き潰してやるぜ! SSSランクの魔法攻撃に、念能力とか気とか、その他もろもろを全部合わせた最強の攻撃だ!」
アルバートが両手を天に向けると、どす黒い力が集まり始める。
最初はピンポン玉程度の大きさだった弾はどんどん大きくなり、最終的には数十メートルの大きさにまで成長した。
バチバチと所々で稲妻を発生させている漆黒の玉、それがどれほどの破壊力を秘めているのか、もはや想像できない。
少なくとも海鳴を余裕で吹き飛ばす程度の破壊力はあるはずだ。 下手すれば日本、地球レベルでの災害を引き起こすかもしれない。
その圧力はマナミも感じ、抱きかかえられているなのはも恐怖を感じて震えだす。
そんななのはをしっかりと抱きしめ、なのはの耳元に口を近づけて、マナミはささやきかけた。
「大丈夫、先生を信じて」
それだけでなのはの震えは止まる。 再び闘志が燃え上がり、レイジングハートを握る手にも力が戻る。
マナミの腕から離れたなのはは、自分の力で空を飛びマナミの隣に並んだ。 少しだけ驚いたマナミだったが、なのはの表情を見て安心する。
なのははマナミの顔を見ながら力強くうなづき、二人は同時にアルバートへと向き直る。 視線の先では、アルバートが今、まさに巨大な玉を発射しようとしているところだった。
「本当は闇の書の闇か、アースラのアルカンシェルで地球を滅ぼすつもりだったが……もう関係ねぇ! 俺が直接やってやる!」
「そんなこと、絶対にさせない。 みんなの大好きなこの世界、必ず守ってみせる!」
「チート玉だヒャッハァ! 防げるモンなら防いでみろ!」
迫り来るチート玉、圧倒的な破壊力を持つ攻撃に対してマナミとなのはは自らその中に飛び込んでいった。
自暴自棄になったかと思い口元を歪めるアルバート、それが驚愕の表情に変わるまで時間は掛からなかった。
気持ち悪いくらいどす黒いチート玉から溢れ出す一筋の光、その光は数を増してチート玉のあらゆる場所から発生する。 そして優しい光は辺りを埋め尽くし、ついにチート玉は霧散した。
光の中から現れるマナミとなのは、二人はレイジングハートを左右から握り締め、アルバートに向けて突撃する。
「「二人の力を合わせて、ツイン・エクセリオン・バスタアアアアアァァァァァァァァァ!!!」」
「ぐおおおおおおお、ばかな……ばかな! ヒャッハアアアアアァァァァァァ!!!!」
「いまだ! エイミィ、転送を!」
二人が同時に叫び、至近距離で撃ち出した魔力の奔流がアルバートを吹き飛ばした。
そのまま闇の書の闇に激突したアルバートは、闇の書の闇と一緒に宇宙へと転送される。
後はアルカンシェルで殲滅して終わり、のはずなのだが……。
あのチート能力を持つアルバートを本当にそれで倒せるのか、トリッパー達は僅かながらの不安を拭い去れなかった。
すさまじい攻撃を受けて意識を失っていたアルバートは、妙な息苦しさで目を覚ました。
空には満点の星、足元には地球、近くには闇の書の闇、遠くにはアースラ、それらを確認して現状を理解する。
宇宙空間で人間は活動できないはずだが、チート能力を持っているアルバートにそんなことは関係ない。 すぐに体勢を立て直す。
「なるほど、闇の書の闇ごとこの俺をアルカンシェルで吹き飛ばすつもりか、だが……甘いぜヒャッハァ! 先にアースラを攻撃してやる」
「そんなことさせると思うのかい?」
アースラを撃墜するべく魔力を高めるアルバートの背後から声が聞こえた。 しかしここは宇宙空間、人間などいるはずない。
アルバートがゆっくり振り向くと、そこには1人の老婆が地球を背に浮かんでいた。 その老婆の名前が、座土有葉ということをアルバートは知らない。
そんなアルバートを無視して、有葉は話を始めた。
「最強の力なんていらなかった。 ただ静かに暮らせればそれでよかった」
「何を言ってるんだ?」
「いくつもの世界を渡り歩いて、いくつもの故郷を滅ぼされて、この世界にたどり着いて、お爺さんと出会って、子供を生んで、孫の顔も見れた」
様々な世界に転生し、いくつもの世界をダーク系ストーリーに染めてきたアルバート。 その活動を邪魔する存在がいたことを思い出す。
手ごわい相手だったが、世界を転生するたびに新たな能力を身に着けるアルバートはすべての戦いに勝利し、絶望を振りまいてきた。
しわだらけの顔は若かったころの面影など欠片も残っていない。 しかし、アルバートには有葉が若かったころの姿をありありと思い出すことができた。
今まではただ面倒な相手というだけだった。 だが、ダメージを負っている今、アルバートはとんでもないピンチを迎えていることを理解する。
「これまでの世界にもいたオリキャラの女!?」
「アンタを倒すためだけに、ずっと力を貯めてきたんだ。 この世界は、マナミのいるこの世界だけは、絶対に守らせてもらうよ」
「キサマアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「アンタのお祭り(カーニバル)は、コレでおしまいだ!」
有葉の一撃がアルバートの体を貫き、さらにアルカンシェルが闇の書の闇ごとアルバートを消し飛ばす。
アルバートの胸に右腕を突き刺している有葉を巻き込んで――
「お婆ちゃん!?」
マナミはハッと空を見上げた。 アースラのアルカンシェルの虹の光が。夜空に一筋の線を作り出している。
それを見ながら、マナミは無意識に涙を流していた。 なにか、とても大切な人がいなくなったような気がしたからだ。
「先生、どこか怪我したの? 大丈夫?」
心配したなのはが声をかけてきたが、涙をぬぐって心配ないと返事をした。
氷から開放された和真を抱きかかえる、どうやら眠っているだけらしく、命の危険はなさそうだ。
トリッパー達の方に向けて飛行すると、彼らは皆心配そうな顔をしていた。 彼らも自分達の担任が泣いていることに気がついたのだろう。
そんな彼らに向けて、マナミは精一杯の笑顔を作ってみせる。 彼らもそれに笑顔で答えた。
14人と、なのはとフェイト、そして腕の中で眠る和真の顔を見てから、マナミは目を閉じる。
みんなが無事で本当に良かった。 みんなを守れて本当に良かった。
再び目を開けると、全員が自分に注目していることに気がついた。 どうやら、自分が何か言うのを待っているらしい。
マナミは少しだけ考えて、自分なりの締めの言葉を言うことにする。
思いついた言葉に思わずクスリと笑ってしまうが、自分らしいと妙に納得できて、やっぱり自分は教師なのだと再認識することができた。
「みんな、大変なことがあったけど、宿題はちゃんとやってくださいね」
夜の海鳴の海上に、子供達の笑い声が響き渡った。