<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

とらハSS投稿掲示板


[広告]


No.6363の一覧
[0] トリッパーズ・カーニバル(主人公以外の男子全員~【真・完結】 [ark](2009/09/18 07:06)
[1] いち[ark](2010/04/28 22:56)
[2] にわめ[ark](2009/02/20 20:16)
[3] さーん[ark](2009/02/07 02:21)
[4] しー[ark](2009/02/07 20:52)
[5] ごー[ark](2009/02/13 00:14)
[6] ろっく[ark](2009/02/10 02:42)
[7] なな[ark](2009/02/10 02:49)
[8] はち[ark](2009/02/13 00:14)
[9] [ark](2009/02/13 00:15)
[10] じゅー[ark](2009/02/13 23:42)
[11] じゅーいち[ark](2009/02/19 14:08)
[12] じゅうに[ark](2009/04/11 20:03)
[13] じゅうさん[ark](2009/04/11 20:04)
[14] じゅうし[ark](2009/05/04 21:01)
[15] じゅうご[ark](2009/05/04 21:01)
[16] じゅうろく[ark](2009/05/04 21:02)
[17] じゅうなな[ark](2009/05/04 21:02)
[18] いちぶ、かん[ark](2009/05/14 22:39)
[19] じゅうく! 第二部開始[ark](2009/06/21 14:21)
[20] にじゅー[ark](2009/06/21 14:22)
[21] にじゅう……いち![ark](2009/06/21 14:22)
[22] にじゅーに[ark](2009/06/21 14:22)
[23] にじゅうさん[ark](2009/06/21 14:19)
[24] にじゅうよん[ark](2009/06/21 14:19)
[25] にじゅうごー![ark](2009/06/21 19:33)
[26] にじゅうろっく[ark](2009/07/29 19:50)
[27] にじゅうなーな[ark](2009/07/29 19:51)
[28] にじゅーはっち[ark](2009/08/06 23:04)
[29] にじゅうく~[ark](2009/08/06 23:05)
[30] さんじゅー[ark](2009/08/06 23:06)
[31] さいご![ark](2009/08/06 23:07)
[32] せってい[ark](2009/08/06 23:13)
[33] がいでん[ark](2009/02/28 11:53)
[34] 外伝2 高町恭也(仮)の自業自得[ark](2009/06/12 22:36)
[35] 外伝3 不幸なトリッパーが手に入れた小さな幸せ[ark](2009/07/29 20:34)
[36] おまけその1、本編or外伝で使わなかったボツネタ[ark](2009/09/15 18:23)
[37] おまけ2、最終回のボツネタ[ark](2009/09/15 18:24)
[38] おまけ3、次回作のボツネタ、ちょっとだけクロス注意[ark](2009/09/18 07:05)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[6363] にじゅうろっく
Name: ark◆9c67bf19 ID:675ebaae 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/29 19:50
「もうすぐ地球だよ。 もっとも、向こうは夜だからなのはちゃんや和真君に会いに行くのは明日になってからね?」
「ええ~そんなぁ~、早くシロさんに会いたいのに!」
「アルフ、いつでも会えるようになるんだから、迷惑かけちゃいけないよ」
「うう……わかったよ、フェイト」

 エイミィの言葉で落ち込むアルフの肩をフェイトが叩いて慰める。 他のブリッジクルーはそれを微笑ましく見守っていた。
 ジュエルシードをめぐる戦いから6ヶ月、アースラは再び地球圏を訪れた。 その任務は第97管理外世界の近くで起きている原生生物襲撃事件の調査である。
 調査といっても、目撃情報などからすでに犯人の目星はついている。 と、いうか知り合いだった。 報告書を読んだ直後は頭を抱えてしばらくうずくまってしまった。
 まぁ嘱託となったフェイトの初任務として、危険の無い丁度いい任務だと考えたのだ。 ちょっぴりなのはさん式のお話をした後で一時間ほどの説教でもすれば解決するだろうと予想して。
 それが大きな間違いだと気がつくのは、地球圏衛星軌道上にアースラが待機した時だった。

「あれ? 海鳴に結界? モニターに映すね……なのはちゃんと……だれ?」
「あれは……リンカーコアを奪われてる! なのはが危ない!」

 モニターに映ったのは二人、なのはと赤い少女だった。 少女の年齢はなのはよりも少し幼く見える。
 そんな二人が夜のビル街に結界を張っている。 ただ事であるはずが無い。
 しかも赤い少女はなのはの胸に手を当て、リンカーコアを引きずり出している。 されているなのはも苦しいらしく、苦悶の表情を浮かべていた。
 リンカーコアとは魔力の源、赤い少女の目的は分からないが、はなのはに危機にさらされていると一瞬で理解する。
 ユーノの「なのはが危ない!」を聞いた瞬間、フェイトはブリッジを飛び出して転送装置へと走っていった。 突然のことで呆気にとられたが、いち早く状況を理解したクロノは支持を出す。

「ユーノ、アルフ! 追ってくれ、近くに仲間がいるはずだ!」
「クロノ、あいつを知っているの?」
「ああ、あいつはヴォルケンリッター、ロストロギア、闇の書の騎士の1人だ!」


 真塚家のヴィータから連絡があったのは家族で夕食をとった直後だった。
 相談したいことがあるから来て欲しい、指定された時間と場所は夜中のビル街だった。 それほど他の人間に聞かせたくない話なのだろう。
 もしかしたら、ここ最近男子達の様子がおかしいことにも関係しているのかもしれない。
 和真を除く男子達が放課後に何かをやっているのは気づいていた。 しかしいくら聞いても教えてはくれず、少しばかり仲間はずれにされているような気がしていたのだ。
 なのはに気のあるアルスは口を滑らせそうになったが、他のメンバーが一斉に飛び掛って口を塞いだせいで聞けなかった。 仲のいい和真もメンバーが何をしているかは知らないらしい。
 10月後半から感じていたモヤモヤはどんどん大きくなっている。 その答えを知ることが出来るかもしれない、そう考えて夜中に家族の目を盗んで家を飛び出してきたのだった。
 約束の場所に行く途中でヴィータと出会い、そのまま一緒にビル街までやってきた。 無数に立ち並ぶビルの一つ、その屋上に降り立つとヴィータは周囲に結界を張る。 これで偶然一般人が紛れ込む心配も無くなった。
 少しの間、黙って見詰め合うなのはとヴィータ。 なのはがどう話を切り出そうかと考えていると、ヴィータが突然土下座をした。
 突然のことで慌てるなのはを無視して、ヴィータは話を始める。 八神はやてのためにリンカーコアが必要なこと、ここ最近はやての病状が悪化してきたので今の蒐集では不安になってきたこと、なのはほどの魔力の持ち主ならかなり闇の書のページを稼げること。

「男子達が最近おかしいのも、何かやってるの?」
「あいつらもはやてのために頑張ってくれてるんだ。 本当は魔導師のリンカーコアの方が何倍も効率がいいんだけど、それははやてへの裏切りになるから止めろって言ってくれた。 真っ先に自分達のリンカーコアをくれたし、蒐集を手伝ってくれるおかげで動物だけで何とかなって人間を襲わないで済んでる。 けど、あたしは少しでも早くはやてを直したい」
「フェイトちゃんへのビデオメール、ヴォルケンリッターのみんなのことは話さないでって言ってたけど、そのことに関係してるの?」
「ああ、あたし達が昔人間からリンカーコアを奪っていたのは事実だ。 そのせいで管理局に目をつけられている、けど管理局に見つかったらはやてや真塚家のみんなと離れなくちゃならない。 そんなのいやだ!」

 ヴィータの言葉を聞いて、なのはは少しだけ考えた。
 フェイトの話をしたとき、ヴォルケンリッターは和真の友達ならぜひ会いたいと言った。 しかしフェイトが管理局で裁判を受け、嘱託として働くかもしれないと聞くと態度を一変した。
 自分たちのことは絶対に伝えないでくれと言い張り譲ろうとしない、なのはと和真にも釘を刺してビデオメールにもヴォルケンリッターの存在を思わせる言葉は言わせないようにした。
 新しい友達を紹介できなくて二人は悲しんだが、どうしてもと頼み込むヴォルケンリッター達の願いを無視することもできず、しかたなく彼女達の紹介はしてこなかった。
 ずっと残念に思っていたが、まさかこんな理由があるとは思わなかった。
 それが本当ならヴォルケンリッターは管理局に捕まってしまう。 そうなったら折角できた和真とはやての新しい家族が居なくなってしまう。
 おそらく、今の動物から集めているのもあまりよくないことなのだろう。 自分を仲間はずれにしたのはフェイトとビデオメールで話す機会の多いから、万が一情報が漏れるのを恐れたのだとなのはは考えた。
そして今、はやてのことを心配するヴィータはその危険を冒してでもなのはのリンカーコアを求めてきたのだろう。 1人でやってきたのはきっと他の仲間にも内緒だから、それはなのはが誰にも話さないという信頼をしていることの証明でもある。
 なのはとってもはやては大切な友達だ。 そのはやてが困っているなら、是非とも助けたい。
 自分が少しでもはやてを助けることができるなら……。

「いいよ、ヴィータちゃん」
「ホントか!?」
「はやてちゃんを助けるためなら、私なんだってする! だから私のリンカーコアを取って」

 なのはの言葉に、ヴィータは思わず顔を上げた。
 なのはは優しく微笑んでいる。 まるで、そうすることが当然なように。

「さあ、やって、そしてはやてちゃんを助けて」
「ありがとう、なのは。 少し苦しいけど、治癒魔法かけてしばらく休んだら直るからな」

 感謝の気持ちでいっぱいになったヴィータは思わず涙を流した。
 しかし、すぐに袖で顔を拭いて涙をぬぐう。 本当に泣くのははやてが元気になったときだからだ。
 なのはの胸元に手を当て、蒐集の魔法を発動させる。 ずぶずぶとヴィータの腕がなのはの体に沈んでいく。
 苦悶の表情を浮かべるなのはを見て、少しだけヴィータは考えた。 
 リンカーコアを取ったらしばらく魔法を使えなくなるし、体調不良にもなる。 学校も休まなくてはならないだろう。
 今度、和真と一緒にお見舞いに行こう。
 そんなことを考えて――

「なのはからはなれろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 上空からフェイトがデバイスを振りかぶって突撃してきた。
 慌てて飛びのいて斬撃を回避する。 半ば取り出しかけていたリンカーコアから手が離れ、再びなのはの体内に戻っていった。
 フェイトはなのはとヴィータの間に立ち、バルディッシュを構えて警戒する。 ヴィータもグラーフアイゼンを構える。
 なのはは突然のことに驚いてしりもちをついてしまった。 混乱する頭を整理しきれず、呆然とフェイトの後姿を見上げている。
 そんななのはをチラリと見て、外傷がないことに安心したフェイトは怒りを込めてヴィータを睨み付けた。
 その迫力にヴィータは思わず一歩後ろに下がってしまう。 一瞬でも気を抜いたらフェイトはヴィータに飛び掛るだろう。
 フェイトはヴィータのことを知らないが、ヴィータはフェイトに見覚えがあった。 ヴォルケンリッターのことは秘密にしてもらっているが、和真の友達ということでビデオメールは見させてもらっていたからだ。
 フェイトはジュエルシードの事件で犯罪者となり、減刑の為に嘱託魔導師になるとビデオで言っていた。 つまり……

「管理局の魔導師か!?」
「……友達だ」

 思わずフェイトの後ろにいるなのはの顔を見る。 そして目だけでメッセージを伝えた。
 フェイトを呼んだ。 つまり管理局に連絡したのはお前か?と。
 その意図を察したなのはは必死に首を振ってそれを否定する。 そもそもヴィータがなのはを呼び出したのは今日であり、いくら何でも一日で管理局がやってこれるはずが無い。
 それに気がついたヴィータは思わず苦い顔をした。 いつかは管理局にバレるとは思っていたが、まさかこんな状況で鉢合わせするとは、なんとも運が悪い。
 しかし、運の悪さを嘆いてもいられない。 この状況をどうにかして突破しなくてはならなかった。
 相手は管理局、すぐに援軍が来るだろうから長引くだけ不利になる。
 さらにフェイトは和真の友達だ。 出来ることなら傷つけたくは無いし、下手に戦ってフェイトから和真、さらにはやてに情報が伝わっても拙い。
 こんな魔法を使う犯罪者と戦った→それってもしかして僕の家にいる人たちじゃない?
 そんな会話がされるかと思うと寒気がする。 と、なると取れる手段はただ一つ……逃げることだけである。
 全速力で飛び上がり、振り返らず真っ直ぐ飛び続ける。 向かうは八神家とは反対の方向、フェイトを撒いたところで転移するつもりだった。
 しかし数秒後にはその考えが甘いことを痛感する。 飛行速度はヴィータよりもフェイトの方が数段早いのだ。 逃げられるわけが無い。 すぐに回り込まれてしまった。

「私は時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。 貴方からは話を聞きたい」
「管理局に話すことなんかねー!」
「警告します。 素直に従ってくれないなら……無理にでも話を聞かせてもらう!」

 サイズフォームのバルディッシュをグラーフアイゼンで受け止める。 動きが速くてシールドを張る暇が無かったのだ。
 そのままつばぜり合いの形で硬直する。 フェイトはパワーが足りないせいで押し切れず、ヴィータは戦うことに迷いがあり全力を出せなかった。
 その硬直もすぐに破られる。 動けないヴィータの隙を突いてアルフが殴りかかってきたからだ。
 このままではやられる!
 そう直感した時、1人の男がアルフを殴り飛ばしてヴィータを守った。 人間形態のザフィーラが駆けつけたのだ。
 続いてシグナムがフェイトとヴィータのつばぜり合いに割り込んで二人を引き離す。
 新たに現れた二人を警戒してフェイトもアルフと合流する。 人数的にはまだ不利だが、それでも1人で3人と戦うなんてマネはしない。
 その3人を見ながら、フェイト話しかけた。

「仲間がいたの?」
「管理局の者よ、我等も戦うつもりは無い、見逃してほしい」
「駄目、貴方達がなのはに何をしようとしたか、場合によっては逮捕させてもらう」
「そちらが不利なのは分かるだろう。 下手に損害が出る前に引くべきだとは思わないか?」
「不利だからって諦めるわけにはいかない。 それに……こっちにも仲間がいる!」
「バインド!」
「しまった!?」

 反応したときにはもう遅い、あっという間に三人はバインドで拘束されてしまった。
 その後でゆっくりとクロノとユーノが現れた。 相手を拘束している状態でもS2Uを構えて油断しない。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。 ヴォルケンリッター、話を聞かせてもらうぞ。 今回の闇の書の主についてもな」
「素直に話をすると思っているのか?」
「思っていない、だがこの状態から逃げられると思わないことだ」

 ヴォルケンリッターが4人全員捕まっては主のはやてを守ることが出来なくなってしまう。 かといって戦闘能力の低いシャマル1人が残った所で満足に蒐集を続けることも出来ない。
 とある事情でヴォルケンリッターのことを知っているクロノは、シャマルが何らかの方法で3人を助けに来ると予想していた。
 その瞬間をアースラで捕捉して確保、もしくは泳がせて闇の書の主を見つけ出す。 これがクロノの立てた作戦だ。
 だから、ヴィータやシグナムが少しだけ微笑んだのはシャマルが行動を起こした合図、同時にヴォルケンリッター達はクロノ達がシャマルの存在を知らないと思い込んでいる。 そう考えた。
 まったく別方向から、クロノの邪魔をする存在がやってきたのはその瞬間だった。

「フォルクスイェーガー、ナックルショット! くらええええええええええ!」
「切り裂け、空破斬!」
「JD、バーストモード、炸裂弾発射!」
「ファントムスラッシュ、切り裂け!」

 どこからともなく現れた4人のトリッパーの一斉攻撃によってヴォルケンリッター達は爆発に包み込まれた。
 全員が唖然とする中、ディスト、鬼道、ジェフリー、蒼牙がビルの上に降り立った。 4人ともバリアジャケットを身に纏い、すでに戦闘体勢を取っている。
 それを見たクロノは頭を抱える。 味方が着てくれたことは嬉しいが、タイミングが問題だった。 このままなら勝利できたのに、逆に状況がややこしくなってしまった。
 トリッパー達の攻撃によって発生した煙がはれると、そこから現れたのはバインドの解けたヴォルケンリッターの姿だった。 多少ダメージを受けたようだが、行動に問題が無い程度だ。

「助けに来たぞ、クロノ!」
「ああ、来てくれたのは嬉しいが……タイミングが悪すぎる! 君達の攻撃でバインドが解けたぞ!」
「悪いな、そのかわりあいつらを捕まえるのを手伝う!」

 トリッパーも戦いに加わり、数の上ではクロノたちが圧倒的に有利になった。 なにせ3対8、2倍以上の差があるのだから一対一では負け無しのベルカの騎士とて負ける要素は無いように思える。

 しかもクロノ側だって一人一人が並みの魔導師以上の戦闘能力を持っているのだから、クロノも最初はすぐに再び確保できると考えていた。
 だが、事態はクロノが予想していた以上に戦いは混沌となっていくことになる。

「フォトンランサー、シュー……ああ、射線に入らないで!」
「バインド! って相手を吹き飛ばすような攻撃しないで! こっちの攻撃が外れちゃうから!」
「こら、ガキども! あたしがいるのに攻撃するな! 当たるところだったじゃないか!」
「君達は……手伝うのか邪魔するのかハッキリしろ!」

 クロノ達の増援に来たはずのトリッパー達は、ハッキリ言って彼らの邪魔をしていた。
 射撃魔法を撃つときに射線に入る。 相手を吹き飛ばして攻撃に当たるのを避けさせる。 接近戦を仕掛けようとしているところに射撃魔法を撃って無理やり引き離す。
 連携が最悪などというレベルではない。 お互いがお互いを邪魔して10の力が6から7くらいにしかなっていなかった。 それもそのはず、トリッパー達は実際にクロノ達の邪魔をするつもりで行動しているからだ。
 今日、この日にヴィータがいなくなったことでトリッパー達は嫌な予感を感じていた。 その予感は見事に当たり、フェイトに追われているヴィータを発見したのだが、どうやって助けるかが問題になった。
 トリッパーとヴォルケンリッターが組んでいることがバレるのはマズイ。 かといってヴィータがこのまま捕まるのもマズイ。 そこで取った方法は、トリッパー達が管理局側にもぐりこんでヴォルケンリッターの手伝いをすることだった。
 トリッパーとヴォルケンリッターは半年近い付き合いもあり、互いの実力は良く知っている。 組んでいるとばれない程度に本気で戦うことも可能であり、クロノの目を騙すことも可能だと考えたのだ。
 ところが、そんな事情を知らない者が戦っている管理局メンバーの他に、離れた場所にもう1人いた。 ヴィータにリンカーコアを渡す途中でフェイトが乱入してきて、そのまま戦いを止めるタイミングを逃してしまったなのはである。
 なのはは自分が何をすべきかを、頭をフル回転させて必死に考えた。
 クロノやフェイトに加勢すればヴォルケンリッターと戦うことになってしまう。 ヴォルケンリッターに加勢すれば知り合いだとばれてしまい、はやてが管理局に目をつけられてしまう。
 どちらにも加勢せずにこの戦いを終わらせる方法、友人達が戦っていているせいで多少混乱しているなのはは、一つの決断を下す。
 何か派手なことをすれば、皆の注意を引いてヴォルケンリッターは逃げることが出来るのではないか?

「レイジングハート、いくよ!」
『Ok,10…9…8…』

 レイジングハートを構えて魔力を貯める。 遠くで友人達の戦う音が聞こえ、近くでカウントダウンが聞こえる。
 なのはの最強の魔法、スターライトブレイカーを改良して更に威力を高めた必殺技。 ため時間もさらに長くなったが、誰も邪魔することの無い今の状況なら余裕を持って準備ができる。
 この魔法で結界を吹き飛ばすと同時にアースラの注目をこちらに集めることが出来ると考えたのだ。

『6…5…4』

 レイジングハートを握る手に汗がにじむ。 自分が緊張して、心臓が激しく鼓動しているのが分かった。
 友人の何人かがこちらに気がついた。 自分が何をしようとしているかを理解したらしい。
 カウントダウンが終了するタイミングに合わせて少しだけ息を吸い込む。 少しだけ目を閉じて、これからのことを考える。
 管理局とヴォルケンリッターは戦ってしまった。 これからアースラに協力するにしても、ヴォルケンリッターに協力するにしても複雑な事情が出来てしまうに違う無い。
 先のことはどうなるか分からない。 でも今、自分に出来ることはこの戦いを少しでも早く終わらせることだけだ。
 なら、それに全力を尽くす!

『2…1…0』
「スターライト!」

 レイジングハートを大きく振りかぶり発射体勢を整える。 ここまできたら、今戦っている全員がなのはの攻撃準備に気がついた。
 これで皆の注目を集めることに成功した。 後は派手な魔法を一発放てば混乱が起きて、ヴォルケンリッターは逃げることが可能だろう。
 ヴォルケンリッターを捕まえようとしているアースラメンバーを邪魔することに申し訳なさを感じたが、首を振ってその考えを追い出した。
 もう迷っている時間は無い。 迷うことは止めた。 決断をした。

「ブレイ 「ここまで狂っていたら意味無いかもしれないが、できる限り修正するか」 え?」

 なのはの胸から手が突き出した。
 その光景に、誰もが一瞬動きを止める。 中でもヴォルケンリッターとトリッパーは信じられないものを見るように目を見張った。
 仮面をつけた男がなのはの背後に立ち、背中から腕を突き刺している。 その腕は胸側から飛び出し、なのはのリンカーコアを握り締めていた。
 間違いなく蒐集である。 しかしヴォルケンリッターではない、急いでシャマルに念話をつなぐが、シャマルの方も混乱いる。 当然、彼女も相手が誰だか分かるはずが無い。
 ヴォルケンリッターは第三者の乱入に戸惑った。 クロノ達アースラメンバーはなのはの護衛を怠ったことを後悔した。 そして、トリッパー達はこのタイミングで介入してくる相手の神経が信じられなかった。

「シャマル? 違う、男だと!?」 シグナムが叫ぶ。
「仮面の男……闇の書の主か!」 クロノが歯軋りをする。
「このタイミングで仮面の男、くそっ、早すぎる」 鬼道が顔をしかめる。

 3つのグループが3通りの混乱をする中、一番混乱しているのは蒐集されたなのは自身だった。
 今自分に何が起きているのか? 先ほどのヴィータの蒐集に似ているが、まったく違う部分が一つあった。 痛みだ。
 ヴィータの蒐集も痛かったが、あれはなのはへの気遣が見えた。 できるだけ苦しまないよう、細心の注意を払っているとやられた側でも理解できた。
 しかし、今自分のリンカーコアを引き抜いている男には優しさなど感じられない。 例えるなら、力任せに髪を引っ張られてブチブチと千切られていくような感覚。
 痛い、苦しい、気絶しそうだ。 けど意識を手放すわけには行かない。
 ヴォルケンリッターを逃がすため、どんどん力の抜けていく体に僅かばかりの気合を込めてレイジングハートを握りなおし。 最後の力を振り絞って振り下ろした。

「スター…ライト……ブ…ブレイカー!」
『Starlight breaker』

 桃色の閃光が夜空を貫く。 空気が震える。 視界が光で埋め尽くされる。
 膨大な魔力が辺りを支配し、アースラの観測も一瞬だけ何も見えなくなった。
 その瞬間を逃すヴォルケンリッターではない。 なのはのことは気になるが、今を逃しては撤退するタイミングは無いだろう。
 ヴィータは今にもなのはに向けて飛び出しそうだが、ザフィーラが腕をつかんで半ば無理やりその場から離れる。 なのはの攻撃で魔力反応が滅茶苦茶な今なら追跡も困難なはずだ。
 しかし、逃がすまいとフェイトがシグナムに向かう。 仮面の男をヴォルケンリッターの仲間だと思ったフェイトはその怒りを目の前のシグナムにぶつけたのだ。

「いまだ! ヴィータ、ザフィーラ、引くぞ!」
「させない!」
「くそっ! レヴァンテイン、カートリッジロード! 紫電一閃!」

 少しでも早くこの場を離れたいシグナムは思い切って大技を繰り出した。
 カートリッジを消費して変形したレヴァンテインの刀身が蛇のように唸りフェイトに襲い掛かる。
 とっさにバルディッシュで受け止めようとするが、シグナムの攻撃はフェイトの想像以上だった。 受け止めたバルディッシュは真っ二つになり、飛行魔法を維持できなくなったフェイトは地面に向けて落下していくが、アルフが急いで抱きかかえたおかげで大事には至らなかった。
 破壊したのがデバイスだけで済んだことに安心したシグナムもヴィータとザフィーラに続いて転移する。 なのはや和真の友人をできるだけ傷つけたくないが、これからのことを考えるとそうもいかない。 その表情には暗いものが見えた。

「みんな、よかった……逃げれて……」

 全力を尽くしたなのはは前のめりに地面へ倒れた。 もう指一本動かせない。
 どんどん目の前が暗くなっていく中、何者かが自分の手からレイジングハートを取り上げるのが分かった。
 レイジングハートの音声が必死に何かを言っているが聞こえない。 目線だけを上に向けると、目の前に仮面の男が立っていた。
 男はレイジングハートを持っていた。 先ほど取り上げたのもこの男だと理解した。 しかし、男が何をしようとしているのかは理解できない。
 男は左手でレイジングハートを地面と水平に持ち、右腕を大きく振りかぶった。

「なに……するの?」
「見れば分かるだろう? 力加減は苦手だが、強い分にはかまわないだろう」
「まさか……やめて、やめて」
「途中はどうでもいいが、最後はちゃんとしてもらわないといけない。 期待してるぞ」
「やめてええええええええええええ!」

 男の右腕が勢いよく振り下ろされ、レイジングハートの折れる音が辺りに響き渡った。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.04262113571167