いっちねんせーになったーら、いっちねんせーになったーら、とっもだっちひゃっくにっんできるっかな?
って歌を歌いながら、僕は小学校に入学しました。
そういえば保育所では毎日お昼寝の時間があったけど、小学校からはそれがありません。
お昼寝は好きなのに、ちょっぴり残念です。
「こんにちは、私が皆の……」
先生が教室に入ってきました。
でもクラスを見渡したとたんに顔を引きつらせています、どうしたんでしょうか?
「えーっと……とりあえず順番に自己紹介しようか? 端の机に座っている子から、最後まで行ったら次の列に移ってね」
「はい、天崎刹那、かもめ保育所から来ました。 趣味は読書、好きなものは甘いお菓子です」
「えっと……天崎君の髪の毛は……」
「地毛です」
出席番号一番の天崎君は髪が白いです、カッコいいです、宇宙剣士サムライガーみたいです。
それにすごく大人っぽいです、サムライガーもあんな感じです、憧れちゃいます。
「ええっと……次は?」
「アルス・エヴォリュアル、立花保育所、運動と剣術が趣味だ」
「ええっと……エヴォリュアル君の髪の毛……」
「天然です」
「ですよねー」
先生が机に突っ伏しました。お腹が痛くなったのでしょうか?
エヴォリュアル君の髪の毛は青くて腰まで届くくらい長いです、カッコいいです、サムライガーのライバルの蒼きナイトがあんな感じです。
それにとっても落ち着いた雰囲気を持ってます、きっとどんな時でも冷静なんだと思います。
このクラスには30人います、男の子が15人、女の子が15人です、指を折らなくても数えられます、そのくらいなら保育所で習いました。
それにしてもこのクラスは外国人が多いです、お父さんが国際化が進んでるといつも言ってますが、これがそうなんでしょうか?
男の子の中で7人が外国人です、女の子は一人だけ、バニングスさんだけです。
男の子の方は多くて覚えられません、覚えるのは苦手です、女の子は一人だったので覚えることができました。
それに男の子の髪の毛は皆カラフルです、赤毛とか金髪、青髪、白髪、まるで虹を見ているみたいです。
よく見ると目の色もカッコいいです、赤色や金色、左右で違う色の人もいます。
僕は黒髪黒目です、お父さんとお母さんも黒色です、遺伝って言うらしいです、意味は分からないけどそのうち学校で教えてくれるらしいです。
僕の番が来ました。
名前と好きなものを言うようです、皆順番に言っていました。
僕の好きなことはお昼寝でしょうか?
「真塚和真です、上から読んでも下から読んでもまずかかずまです。 お昼寝が大好きです、よろしくおねがいします」
先生が泣いています。
やっとまともな男の子が……と呟いてます。
挨拶を間違えちゃったのでしょうか? そういえば保育所を言い忘れてしまいました。 やり直した方がいいのかもしれません。
でも次の人が勝手に喋り始めちゃいました。
仕方が無いので座ります、お日様ぽかぽか気持ちいいです、このままお昼寝したいです。
「ファルゲン・C・ライデュース、得意なことは格闘で――」
先生がまた机に突っ伏しました。
きっと先生もお昼寝したくなったんだと思います、お日様気持ちいいですし、あったかいですし。
お布団が無いのは寝にくいけど、この温かさならいらないと思います。
それじゃぁ、おやすみなさい…Zzzz……
事件です、事件が起きました。
バニングスさんが月村さんを虐めてます、大切なリボンを無理やり取ったらしいです。
酷いことです、人のものを取ったら泥棒ってポ〇モンで言ってました。
止めないといけません、ちょっと怖いですけど同じクラスの仲間です、ケンカするより仲良くしたいです。
恐る恐る近づいて声をかけることにします、大丈夫です、通学途中にある家で飼っているでっかい犬よりは怖くありません。
「えーっと、そのぉ」
「何よ!」
バニングスさんの手が空を斬りました。
もう少し僕が近づいていたら当たっていたかもしれません、バニングスさんの怖さはでっかい犬よりも上になりました。
バニングスさんならきっと一発であの犬を倒せるに違いありません、それくらい今のバニングスさんは怖いです。
クラスメイトがこんな雰囲気をしているのは嫌です、早く元に戻って欲しいです、みんな仲良くが一番です。
こんなのは悲しいです、ちょっぴり涙が出てきてしまいました。
そんな時、一人の影が僕の横を通ってバニングスさんに近づいていきます、それは高町さんでした。
高町さんも怖い顔をしています、けどただ怖いだけじゃなくて、こっちの怖いは怖くありません。
怖いけど力強くて、すごく真剣で、とても頼りがいがあります。
そんな高町さんはバニングスさんの頬を引っ叩きました。
バニングスさんは床に倒れて、叩かれた頬に手を当てながら高町さんを睨みつけます。
そんなバニングスさんを立ったまま見下ろしながら、しっかりと眼を見ながら、お母さんが言い聞かせるように言いました。
「痛い? でも、あなたに大切な物を取られたすずかちゃんはもっと痛いんだよ」
すごく大切な言葉です、僕に向けて言われた言葉じゃ無いけれど、僕はきっといつまでも覚えていると思います。
高町さんがバニングスさんに手を差し出すと、バニングスさんはその手をしっかり握って立ち上がりました。
そして月村さんに謝りながらリボンを返します、月村さんもバニングスさんを許してあげてこれで一件落着です。
やっぱり怒ったり泣いたりしているより、皆笑っているほうがうれしいです。
僕も自分の席に戻ろうとして――
「ちょっと待ちなさい」
バニングスさんに首を捕まれました。
思わず 「ぐえぇ」 って声がでました。
その声に気がついたバニングスさんは手を離してくれました。
何の用でしょうか? 仲直りは高町さんがやってくれたし、月村さんも許してあげてるし……
「さっきは悪かったわね、あんたも止めようとしてくれたんでしょ?」
バニングスさんは止めようとした僕に手を上げたことを謝ってくれました。
僕も許してあげました。
ごめんなさいと言ったら許してあげる、いつもお父さんはそう言っています。
そして仲直りしたら友達になれるとも言っています、だからきっとバニングスさんとも友達になれます。
「アリサでいいわよ、和真って呼ぶから」
「わたしもすずかで、よろしく、和真君」
「皆友達だね! 和真君、私もなのはって呼んで欲しいの」
今日は3人も友達ができました、とっても嬉しいです。
百人はすごく大変そうだけど、できるだけいっぱい友達をつくりたいなぁ。
「真塚君、バニングスさん、高町さん、月村さん」
「先生! いつの間に?」
「扉の隙間からずっと見ていました。 その友情はかけがえの無いものです、いつまでも大切にしてください」
「「「「はい」」」」
「よし、それじゃぁ授業を――」
「何なんだアイツ」
「あんなの原作には……」
「介入すべきだったのか? でも下手したら……」
「3年になるころには離れるか?」
「原作さえ始まれば……」
「男子たちの悪意が真塚君に向いてる! 先生のクラスで虐めは許しませんよ!」