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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] A´sの9
Name: BIN◆46522c0b ID:62bc3fb4 前を表示する
Date: 2011/03/27 16:24




汗を掻くと気持ちが良い。それが、自分で好んだ行動に因って掻いたモノならばソレが当たり前だ。だが、汗を掻いたままだと不快に成る。
それも当たり前だ、放っておけば乾くがその後に残るべたつきは不快だ。更に言えば細菌も繁殖し臭いの元に成る。肌が弱ければ痒み等も引き起こす。
何より衛生的に頂けない。ソレは、一つの家族の住処に居候させて貰っている身としては当たり前の事である。
つまり、明智良哉は久遠を伴って入浴した。勿論久遠は子狐モードである。広さ的に…
だが、一つハラオウン一家と共に決め忘れていた事柄がある。主に入浴に関してだ。
ハラオウン一家は男一人に女一人。関係は親子。母親の裸を見ても息子は何も思わないか気恥かしい位である。クロノに母親の裸を見て欲情する様な特殊性癖は無い。
だが、ソレは昔の話であって今では無い。
現在はフェイト・テスタロッサにエイミィ・リミエッタと女性を二人追加しなければならない。良哉を入れても男二人に女三人。大人一人にお年頃二人と言った女性陣に対し少年二人だ。
この輪の中では女性が強い。
救いが在るとすれば一人良い大人で、年の近い他のお年頃二人と少年二人の関係は親しいと言って良いモノであり(一人除く)どちらも良識がある。
何も言わずとも暗黙の了解が存在するのだ。一般常識的な意味で。
だが、人間とはやっぱり失敗を起こすモノ。明確にしておかなければ良かった。と後々思う事は私生活の中でも多々ある事だろう。
つまり、食事前等周りに人が居る状態で「お風呂に入る」と言っておけば二人知らなくても知っている人間が教えてくれる。

「…なので決して悪気が在った訳ではないんです」

「取りあえず出ろ。言い訳はそれからでも良いだろう、テスタロッサ」

「クゥー」

と、自分がなぜ異性の裸を除いてしまったのかを語ってしまうぐらいにパニックを起こしていたフェイト・ハラオウンが顔を洗いに洗面所兼脱衣所の扉を開いた午前六時四十分の事だった。

(うぅぅぅぅぅぅ!!あっ、リョウヤって足の付け根にホクロが三つ並んでるんだ)

恥ずかしながらもガン見してしまう九歳の朝からハラオウン一家の朝は始まった。







そんな前日の事を思い出した良哉は、ドアに入浴中の紙を張り付けて入浴する事にした。
シャワーを浴びながら考える。意外な事にシグナムとの連絡はとても有益なモノだった。ギル・グレアムが黒と確信出来たのだからこれは大きい。
序に自分で調べずに済んだ何処から足が付かは解らないのだから良かったのだろう
話はトントン拍子に進んだ。次回の蒐集予定日にメンバー…恐らく仮面の男とはリーゼ姉妹なのだろう。あの二人の事は良く知らない。

(クロノさんの先生…だったよな?)

力量の方は解らない。ただ強いのだろう、だがシグナムが協力してくれるのならば勝率はグンと跳ね上がる。
仮面の男の事は此方でも疑っているし、あちら側も警戒している。その場で化けの皮をひん剥いてやるのも良いかも知れないが…

(高町が居るとして…どれ程の犠牲がでるか)

どうにかなったという結果だった。今のままでもどうにかなるのか? 成ってしまうのだろうか? なんとなく、世界に対して憎悪が湧き出る。八つ当たりでしかないが…下らないか…

(どう思う? シュベルト)

『ギル・グレアムの目的ですか?』

(あぁ、恐らく…と言えるのは有るが、別の意見も在るのなら聞きたい)

『恐らく私が考えている事は主と同じでしょう。封印または破壊が目的と考えるのが妥当でしょう』

(そうなるか…封印の仕方はヴォルケンリッターを消した後で八神はやて事だろうな)

『そうでしょう。封印方法は空間凍結等の魔法でしょう、それ以外に考えつきませんし…破壊は無理なのでしょう?』

(あぁ、クロノさんから貰った情報や以前の事件等でも明らかに成っているが転生プログラムだったか? まぁ、ソレが在る限り破壊しても無駄だな時間稼ぎにしかならない。)

『本体を初期化してしまえば…』

(無理だな。接続出来るのは闇の書が選んだ契約者のみだし、そんなプログラムを作れる奴が今いるか? 碌な解析も出来て居ないのに)

『そう…ですね。だからこそあの男も最小の犠牲を選択したのでしょうし』

ギル・グレアムは正しい。俺はそう考えるしそう思う。もし、初期化出来るプログラムが在るならそっちを選んでいただろうとも思う。面識は殆どない。
ファラリスさんから得た情報を元にして思い描いたグレアムならそうするだろうと思えた。俺もそうするうだろう。立場や自身の事を考えればだが…
それを考えなければギル・グレアムと同じ事をすると思う。もっとも、グレアムは八神はやてに少なくとも多少の希望と幸せを与える様に配慮している様だが…

「…監禁と洗脳だな」

『はい?』

考えた事が口から零れた。

(いや、俺なら最初から希望なんて与えずにそうすると考えただけだ)

『…怒れませんね。ソレが一番安全です。ヴォルケンリッター達をどうにか出来ればですが。』

(ユーノに探って貰うか?)

『それが良いでしょう。無限書庫は彼からしてもメリットの在る場所ですし。』

「クー?」

「いや、何でもないよ久遠。それよりも、人型に成るな。洗う面積が増える」

「……自分で出来る」

「なら良い」

少し拗ねた様に言う少女を見ると年相応に見えてなんとなくだが和んだ。






そんな光景を想像も出来ない月村すずかは何時もより少し早く起きた。窓を開ければ体の芯から冷える冬の空気が髪を揺らした。

「うぅ…寒い」

ブルリと体を震わせる事に成ったが目は覚めた。目が覚めてしまうと少し憂鬱な気分になった。昨日の事だ。
優越感、そう明確な優越感を覚えてしまった。その事に大きな罪悪感と僅かな悦びを覚えた。喜びでは無く、歓びでも無く、悦び。
自分はこんなに彼の事を好きなのだと、その事に悦びを覚えてしまったのだ。

(駄目…コレは駄目)

恋愛の本だったか、もしかたら別の本だったかも知れない。でもその一文は覚えている。
恋愛をしている人間の脳の状態はコカイン中毒者の脳と同じ状態だと、ならこの状態は危ない。異常だと思った方が良い。
このままの状態だと何時ボロが出るかが解らない。

(それだけは駄目…繋がりを自分から壊す様な考えは駄目!!)

罪悪感を大切に、大切に包みこんで絶対に捨てない様に縛りつける。

(優越感を覚える必要はない。彼と私の関係はなのはちゃんやフェイトちゃんでは築けない私だけのモノ)

月村すずかと明智良哉だけの特別な関係。契約。

(私が私でいる限り。今関係は壊れない。壊れる時は私が駄目に成った時、彼が居なくなった時)

ぎゅっと目を瞑って、深呼吸をする。落ち着くのを待ってから部屋を出る。そしたら、何時もと同じ時間に成っていた。

「おやようございます。すずかちゃん」

「うん。おはよう、ファリン」

さぁ、何時も通りの月村すずかで居よう。






時に真っ直ぐな性根の人間は大きな成果を出す。それは良くある様で中々無い事でも在る。だが、一つの事に真っ直ぐ進んでいける人間は何処か跳び抜けている者が多い。
高町なのはも、その真っ直ぐな人間の一人だ。彼女は歪んでいる故に真っ直ぐなのかもしれないが、生来の気質からそうなのかもしれない。彼女の周りの人間は筋が一本通った人間が多い。
両親を含め兄弟、親友、近しい人物は皆筋が通った人間だ。彼等は諦めると言う事を知りながら諦める事の無い人間である。
挫折を知っている。嫉妬も知っている。諦める為の言い訳や、切欠を知っている。それでも彼等はその選択肢を選ばない。負けても這い上がる。挫けても立ち上がる。立ち止まっても歩きだせる。
そんな人物達に囲まれ、育った高町なのはは、中々弱音を吐けない。吐かないと言った方が良いのかもしれない。誰かに必要とされたい。そういう想いが彼女の心の奥に巣くっている。
幼少の頃の出来事が切欠だったのかもしれない。魔法を覚えたのは何故か?

才能が在ったから? 助けを求められたから? 助けたいと思ったから?

どれも正解なのだろう。無意識の内に魔法を使えれば必要とされるかもしれないと思ったからかもしれない。
助けてあげれば必要とされるかもしれない。
助ける事が出来れば頼りにされるかもしれない。
そんな想いが在ったのかもしれない。所詮無意識の事、故にそれは本人にも解らない。ただ、彼女が今思っている事はそんな事とは関係の無い事なのかもしれない。

(明智君…何処に居るんだろう?)

好奇心なのかもしれない。ただ友達に成りたい。それだけの理由で動いている彼女は送迎バスの中で普段より上の空だった。

「なのは?」

「なのはちゃん?」

「ふぇっ?! ど、どうしたの?」

友人二人からの声かけで高町なのははバスを降りなければいけない事に気づき、慌ててバスを降りた。
彼女が上の空に成っている原因は明智良哉に在るが、もう一つ理由が在る。兄が帰ってくるのだ。少し長く家を空けていた兄が帰ってくる。前の様に家族皆で食事を取る事が出来る。
ソレが嬉しい。

「どうしたのって…なのは。あんた昨日からちょっとおかしいわよ?」

「うん、何時もよりぽや~っとしてるよ?」

「そ、その…今日お兄ちゃんが帰ってくるから」

なのはの答えにアリサは初めて知ったと言う表情で言う。

「恭也さん出かけてたの?」

「うん。ちょっと前からすずかちゃんの所に」

その話に、すずかは成るほどと思う。それぐらいしか思えない。情報が足りない。明智良哉と高町なのはの関係を良く知らないからそれぐらいしか思えない。

「うん、お姉ちゃんベッタリだったよ」

「…相変わらずお熱いのねぇ」

「にゃははは…本当にねぇ」

やはり、家族でもあのアツアツっぷりはキツイらしい。すずか的にはああいう関係は少し羨ましいと思うが…姉とその恋人の立場に意中の人物を当てはめると全く想像が出来なかった。
その事がオカシクて頬が緩んだ。

「なのは!!」

その時にフェイト・テスタロッサがやって来た。少々頬が赤いのは寒いからだろう。

「あっフェイトちゃーん!!」

フェイトの声に嬉しそうに手を振るなのはを見てすずかは思う。

フェイトと明智良哉はどういう関係なのだろうか? 

直接良哉に尋ねれば教えてくれそうな気もするが、しようとは思わない。まだ、深く干渉するべきではない。そう思うからだ。
其処から教室まで他愛の無い話が続いた。主に勉強に付いてだ、友人達…特にアリサ・バニングスはオールラウンダーな才女だ。テストは毎回略満点かそれに近い。
だが、なのはは文系が弱い。自分は文系が強い。そしてフェイトも文系は弱い事が発覚した。その事になのはは、親近感を強くしたようだ。解らない所が在るなら教えるよ? 声を掛ける。
その事に嬉しそうにありがとうと返すフェイトを、すずかは可愛い人だなぁと思った。高町なのはとフェイト・テスタロッサは似ていると思った。だからこそ、直ぐ友達に成れるとも思った。
両方とも素直なのだ。裏など無く礼を言い感謝する。自然と言葉の裏を読もうとしてしまうのは家の事が在るからだろう。ソレはアリサにも在る。だからこそ親友と呼べる間柄になれたのだ。
隠し事はお互いに在る。ソレを含めて信用、信頼を置ける無二の友人。
だからこそ、胸の奥が痛んだ。




フェイト・テスタロッサは高町なのはの笑顔を見た瞬間に安らぎを覚えた。友人と呼べる初めての存在。高町なのはの存在は自分の中でかなりの大きさに成っている。その自覚は在る。
胸の奥がジクリと疼いた。鈍い、鈍い痛み。心の芯に来る痛み。その痛みが頭の中に一人の人物を浮かべる。

明智良哉

自分の中での良哉の位置づけは何なのだろうか? 安心出来る人物。家族とは違うでもソレに近い気もする。背中を押してくれた男の子。一緒に寝てくれた男の子。安心出来る、頼りに出来る人物。
裏切れない人物で在るのは確かだった。約束を破りたくない人物で在るのも確かだった。だが、本当に高町なのはに嘘を吐いてまで隠すべき約束をしただろうか?
お願いされた。命令でも無く、約束でも無く、お願い。
だからこそ悩む。このお願いと言うモノこそ守らなければ信用、信頼は無くなってしまうのではないか? そう考えてしまう。
言葉遊びなのかもしれない。自分の世界は狭いと言う事を自分は知っている。人が死んで行くのを見た。知っている人が人を殺すのを見た。クロノ・ハラオウンや武装隊の人間と共に行動し、黒い部分を見た。
少しずつ自分の世界が広がって行くのを自覚出来た。最初に広げてくれたのは初めての友人だ、暖かい世界を自分に示してくれた。
明智良哉では無い。だが、明智良哉も自分の世界を広げてくれた人間だ。冷たくて暗いモノを見た。見たくない恐怖が在った。それと同時に人の温もり、他に人が居る。よりかかれる暖かさを一番感じさせてくれたのは明智良哉だった。
どんどん広がる世界が楽しい。掛け無しの本音だ。だからこそ解らなくなる事が在る。自分は一体何が一番大切なのだろうかと考えてしまう。
友人と学校に通える生が楽しい。帰る場所に暖かい人達が居るのが嬉しい。友達の存在が嬉しい。頼れる人に頼りにされるのが嬉しい。寄りかかってばかりでなく、自分もその人の為に何かをしてあげる事が出来るのが嬉しい。








故に、この事に答えは出ない。今は、まだ…出せるだけの経験がない。経験が少ないが故の大胆さは在るだろうが、フェイト・テスタロッサにはまだ答えを出す事は出来なかった。








一方、高町なのは自分の友人達がそんな悩みや後ろめたさを抱えている事を知らなかった。それはそうだろう、自分が何気なく言った言葉。その言葉に還された言葉。
何処にでも在る様な問答に心を痛める様な人間は普通は居ない…と言うのは言い過ぎかもしれないが多くは無い。寧ろ少ないだろう。
何かに過剰出ない限りはそうだ。高町なのはにとって明智良哉はとは自分の不甲斐無さの象徴である。それと同時にそんな不概無い自分を許してくれた恩人でも在る。
少なくとも高町なのはの中ではそう成っている。なのはの知る限りではついこの間まで明智良哉はクロノ・ハラオウン達と一緒に居たと言うのが真実である。実は地球に戻っていたと言う事は知らない
高町なのはには絶対的に情報が足りない。知ろうとしても伏せられているモノが多い。彼女の為を思って伏せられている事もある。
高町なのはは努力している。彼女なりに努力をしている。
朝が弱いのに早く起き魔法の練習。長期の休みには明智良哉の家にも行ってみた。フェイトから送られて来たビデオレターにも欠かさず返事を返し、少しごたついたが親友達との関係も昔の様な間柄に戻した。
高町なのはに悪い所は無い。あえて言えば、運が悪かったのかもしれない。あの時、魔法に出会わなければ違ったのかもしれない。明智良哉に対する罪悪感やその他もろもろの感情は無かっただろう。
IFでしかない話だがそういう未来も在ったのかもしれない。

(…巡り合わせが悪いのかなぁ)

そんな事を考える。

(最後にお話しした時は普通に話せたし…)

自分が何か悪い事をしてしまったのではないか? 先ず其処から考える彼女は心根の優しい子なのだろう。良い子だ。先ずは自分に落ち度が無いか、相手に不快な思いをさせてしまったのではないか?
相手に何か原因が無いかを最初に疑わない当たり、少々善人過ぎる気質があるがコレは高町なのはの抱える爆弾だ。
幼少期の孤独がそれを作りだした。其処からの今に繋がる経験が彼女を作り上げたのだろう。実際の原因は良哉の幻痛なのだが…高町なのはがそんな事を知る訳もない。

(何してるのかなぁ…明智君)

会えないからこそ心に残る。罪悪感が在るからこそ頭から離れる事は無く、忘れる事も出来ない。
近づけない、触れられない。だが、その姿は見え追う事が出来残滓は掴む事が出来る。

その関係は、呪いに似ている。

在ってしまえばどうなるのか? 何も起こらないのかもしれないし、何かが起こるのかも知れない。
だが、ソレはまだ誰も知らない。







クロノ・ハラオウン、エイミ・リミエッタの二人はモニター越しにユーノ・スクライアと会話していた。エイミが居るのは二人の緩衝材に成る為と言うのが一つ。もう一つが…

「それで? そっちは何か解った事は有るんだろうな? 変態フェレット」

「有るに決まってるじゃないかシスコン執務官」

(おぉ~う…面白そうだなと思ったら予想以上に胃が痛い…)

まぁ、涙目である。自業自得なのかもしれないが。

「フン、ギスギスしてても隣の人に悪いし早く終わらせよう」

「あぁ、その点は同意だ。腹が立つな」

「まぁまぁ、二人とも」

エイミィが間に入り少しでも場の空気を良いモノにしようと努力するが、二人の掛け合いは喧嘩腰で逆に腹立たしくなってくる。
この理不尽な気持ちを視線に込めてクロノを見るが、ソレに気づかずに話を進めるクロノ。今にも舌打ちしそうな心を制御しながふと気づく。会話に罵倒や嫌味が混じって居るが何処となく楽しそうなのだ。

(男の子同士にしか解らないって奴なのかなぁ)

この二人の間に共通の友人である明智良哉を混ぜてみる。混ぜてみるが…

(…どうしよう。想像できない。えっ? 本当にどうなるの?)

「…つまり、彼等を倒すだけ無駄なのか?」

「そうだね。書が完成してしまえば無駄だよ。」

(喧嘩友達って奴なんだろうけど…良哉君ってこの二人の間に入ってどうしてるの?)

「書の所有者を最優先で確保する事が重要か…」

「だろうね。でも、その所有者を狙えば騎士達が出てくる。一番の狙い時は覚醒の瞬間、契約の瞬間だろうね。」

「馬鹿か君は? その所有者の足取りが皆無だから悩んでいるんだ。」

「それこそ理不尽だよ阿呆。僕が知る訳ないだろう。」

「もう!! 馬鹿でも阿呆でも良いから早く結論出してもう少し仲良くしなさーい!!」

エイミィ・リミエッタの堪忍袋の尾が切れるのも、まぁ仕方のない事だった。




エイミィの爆発から数分後、クロノとの通信を終えたユーノは椅子に座り直し背凭れに寄りかかった。

「…闇の書。闇の書かぁ」

資料を漁り、自分が考える限りの検索方法を試した結果がある。だが、これを伝えたとしてどうにもならない事は解りきっている事だ。
夜天の書。それが本来の名前で在る事を伝えたとしてどうなるのだろうか?
詳細を纏めた報告書は既に送って在り、届くのも時間の問題だ。誰かが改悪した、その事実がある。その誰かは解らない。
誰か達が自分の都合の良い様に変えて来た。その積み重ねがコレだ。重大なバグが発生し主人を貪り喰らう欠陥品をこの世に生み出してしまった。
幾度と行われた改変は改悪であり、それを唯一のオリジナルに施してしまったからには何処を修正すれば良いのかも解らない。時間も足りない。
奇跡的にその情報を所持しているベルカの遺跡が見つかったとしても、年単位での研究が必要なのは必須であり間に合わない。
もし、バグが在るから危ない等と正確な情報を相手に伝えられたとしてもそれを認められるかどうかが解らない。守護騎士達は無理だろう。
プログラムなのだから。自分達の大元が狂っていると言われても信じられる筈もない。クロノ・ハラオウンに頼んで入った無限書庫、そこで得られた情報がこの程度では情けないと思ってしまう。
他に調べられたのは夜天の書の他にも似た様な書が在ると言う事位だった。後は闇の書と呼ばれる様に成ってから起きた事件ばかりだ。その情報も送っているが対して参考にもならないだろう。
事件の解決には届く。だが、必ず犠牲がでる。通例通りにアルカンシェルでドンだろう。

「……キナ臭いなぁ。」

そも、今までの管理局のやり方は安全重視で一定の被害しか出ないよう巧く事を運んでいる様に見える。ソレは正しいと思う。思うけど…

(根本的な解決には至らない。)

聖王教会との連携で多少の情報は得られて居る様だが、其処から先に進めて居ない。調べて見れば努力の後は見える。何とか闇の書を『捕獲』しようと言う試みは行っている様だ。
どれも失敗に終わっているけど。
研究者達はどうにか封印する方法を試行錯誤している様だ。『空間凍結』どの研究者達もこの方法が一番可能性が高いとしているが、ソレには最低でも一人の犠牲が必要だ。
極悪な犯罪者とかなら罪悪感は殆ど無いけど…それは運任せでしかない。

「ん~…魔力資質の高い人間の元に行くんだから、その人物達を確保出来れば良いんだろうけど…」

無理だ。

無限に等しい次元世界。管理局が確認できている世界でもまだまだ砂漠の砂一粒程でしかない。無理だ。確実に僕達では知らない世界で闇の所は何らかの事件を起こしているだろう。
もしや、そう言った場所で改悪されてしまったのかもしれない。古代の超技術。現在の技術では再現できない古代遺産。だからこそ、ロストロギア。

「空間凍結の事も載せているけど…使える人間が居るかどうかだし。なのはやフェイトは使えないもんなぁ」

ガリガリと頭を掻く。使える可能性が在るのは氷結系の魔力変換体質の魔導師。魔導式を通して魔力変換が出来て尚且つ魔力制御が出来る高い魔力資質を持つ魔導師。

(クロノが妥当かな? でも、ソレが行える高性能のデバイスが必要になると思うし…良哉も可能性はあるかな? 魔力変換適性が全部平均だし、足りないのは知識と技量かな? ん~…でも魔力制御の訓練しだいでも在るし…)

「…いっその事、僕がどっちかの補助をすればできるかな?」

ユーノ・スクライアはそう零すと、何時も通りに無限書庫をでた。目的地は『地球』であり、友人の所。

明智良哉は尊敬を込めて彼を『天才』と言う。
クロノ・ハラオウンは顔を顰めて彼を『頼りには…成る』と忌々しそうに言う。
彼自身は自分の事を『僕なんかは凡才だよ』と苦笑しながら言う。
自分への評価が低いのは、素質あるモノを見てしまったからか? それとも罪悪感があるからか? 彼自身にさえ解らない。だが、確信して言える事がある。

彼は『非凡』である。自身が認めずとも周りがそう思える位には



あとがき

また時間がかかりそうです。ごめんね。


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