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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] A´sの8
Name: BIN◆46522c0b ID:62bc3fb4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/31 23:29






其処は赤茶けた大地が風に侵される死した大地だった。

其処は命溢れる緑の平原だった。

其処は雨が大地を削る荒れた大地だった。

其処は一面を水で覆われた白波の大海原った。

其処は光が一切届かない暗い空間だった。

其処は全てが無い無色の空間だった。

其処は全てが存在する混沌だった。

そんな場所に彼は落とされてきた。其処を認識できない、ソレに触れる事は出来ない。

ソレに侵されるしかない。飲みこまれるしかない。其処はそんな場所だった。

そんな場所から彼を掬いあげたのは彼を其処に落としたのは…

「アローアロー? 愚弟よりカワイイ義弟が気に成るので早めに終わらせようか? 勘違いの嫉妬モドキ」









明智良哉の睡眠時間は常人と比べれば短い。時計の短針は3の文字を少しばかり過ぎた頃だった。
向くりと上半身を起こした良哉に声を掛ける存在は三つしかない。

『Good morning.master』

『おはようございます、主。実質三時間弱ですか…慣れませんか?』

『ja』

「……あぁ。」

何に慣れないのか? と言われればそれは他人としか言いようが無い。月村邸の住人には慣れていた。
月村忍、さくらの存在には少しばかり時間は掛かったが広い屋敷の中では其処まで気にはならない。
高町恭也はその存在感すら限りなくゼロに出来る男であり師でも在る為か慣れていた。戦闘訓練のたまものだろう。
ルーダー、ファラリスには既に慣れていた事も在り近くに居ても大丈夫だった。
月村すずかに至っては論外である。彼女の血は良哉自身の体に多量に入っている為気にする事すら無かった。久遠も似た様なものである。
故に、何に慣れないと問われればハラオウン一家としか言いようが無い。気配が近づくだけで目を覚ます事七回。その気配が遠のくまでは絶対に眠れなかった。
十二時前に眠ったと言うのに、実際の睡眠時間はそれよりも短い。
その事に不満や文句はない。食事の時点でこうなるであろう事は考えていた。良哉はベットから降りると着替えを済ませ静かに部屋から出てマンションの屋上に向かった。
最近のマンションで屋上を解放している所は少ない。
飛び降りやら事故等が在るとそれはそのマンションのマイナスイメージと成ってしまい。入居者が減ってしまう。それではマンションの持ち主の不利益にしかならない。

そう言った事を考えるとなぜだか溜息がでた。

吐いた息は白い靄となって大気に消える。スゥと息を吸うとヒンヤリとした冷たい空気が鼻を通り喉を通って肺に入る。それだけで気が引き締まった。
やる事は決まっている。自己鍛錬以外に遣る事はない。

素手で構え

敵を幻想し

妄想し

突きを放ち

防ぎ

受け流し

ただ、それだけを機械の様に続ける。

少しの歪みをデバイス達が指摘し

どうすればより確実に攻撃を当てられるか

どうすればより確実にダメージを与えられる事が出来るか

考え、探りながら続ける。

マンション内で購入した飲料水は直ぐに空の容器に変わり、多量の汗を吸ったシャツが肌に張り付く。其処まで多い運動量では無い。重りも何も付けて居ない。
だが、その全ての動作に変わる所が無かった。同じ線を幾度もなぞり続ける。
正確過ぎる。ソレは実践の中では弱点にもなる。だからこそ鍛える価値が在る。微妙に違う軌道なぞればそれはフェイントにも成る。相手がそう勘違いしてくれる。
体が覚えてくれればソレは最悪の状況をひっくり返す最高の一手に成る可能性が十分にある。その逆もまた在りえる。
結局は状況が決めるのだろう。コンディションの問題も在る。ならば、その状況を作り出し、万全でいなければ成らない。情報を得なければならない。些細な事も全て、流石にソレは無理だ。人間には。
デバイスは違う。地形データーを入れておけば良い勝手に演算把握してくれるしその信頼性は高い、がソレをするとデバイス内の容量が大変な事に成る。
外に違うモノを作らなければならない。
だが、ソレをすると動きにも支障が出てくる。相手はソレを先に壊しに来るだろう。どうするか?

(俺では良い発想や考えは出てきそうにも無いな…原案がいる)

シュベルトを起動させ、槍を構える。

突き

薙ぎ

打ち下ろし

突き上げ

石塚での打ち下ろし

かち上げ

打ち下ろし

薙ぎ払い

確認作業を終えシュベルトを待機状態に戻す。

「時間は?」

『五時です』

ランニングに行くか







ヴォルケンリッター、雲の騎士達の朝はバラバラである。

シャマル、ザフィーラの両名は決まった時間かそれに±数分した時間に必ず起きる。
料理に目覚めたシャマルは朝食を作るのが個人的に好きでもあるし、ザフィーラは四季それぞれの朝の空気を好んでいる。
ヴィータは惰眠を貪るのが好きなのか、起きる時間はまちまちで遅い時は昼前に起きる事もあるし速い時は誰よりも早く起きる。姿形と同じような子供のソレと一緒だ。
シグナムは必ず早朝に起きる。冬ともなれば日がまだ出て居ない時間に必ず一度は起きる。
その後で二度寝をする事もあるが基本は鍛錬を行っている。柔軟から始まり素振りや徒手空拳も行う。
その後、見回り程度に軽くランニングを行うのだが、蒐集を始めてからは自重していた。
自重していたが体の奥に籠った熱が中々抜けない、そして僅かな希望がその頭の中に在った。

明智良哉

この少年のランニングコースは熟知している。一度はヴォルケンリッター総出でその痕跡を探ったのだサーチャーを付けた事も在る。
それだけならば希望等抱かないが、明智良哉と言う存在は希望に成りえる可能性が在る。
一度剣を合わせたフェイト・テスタロッサは純心で真面目で素直な人間なのだろうとシグナムは思う。
古い考えなのだろうが、百の言葉を交わすよりも一度剣を合わせた方がシグナム自身はその人間の在りようが解る。
フェイトを純心と感じた様に明智良哉に関して感じたのは、途方も無い暗さだ。それと同時に小さいが確かな光を見た。強烈なまでの虚飾を感じた。
アレは何かで自分を飾らなければ途轍もなく弱いのだろうと感じた。それが戦士としての仮面であれ、ヴィータを前にして見した悪党の仮面であれソレを剥いでしまえば……

(主……姫…全く、貴女は本当に…)





明智良哉、シグナムがランニングに出かけたのはほんの数分の差でしかない。ソレ故に彼等は出会う事に成った。
それを奇跡と呼ぶのか、偶然と呼ぶのか、それとも必然とほくそ笑むのか。それは人それぞれなのだろう。運の良い悪いで言えばどちらの人物も何とも言えない。
シグナムとしては幸運かもしれない。明智良哉からすれば状況次第では幸運だったのかもしれないし不幸だったのかもしれない。
町内にある何の変哲もない十字路。

「?!」

「まて、此処でやり合う気はない」

最初に交わしたのは到底信じ切れない言葉。

明智良哉は考える。今すぐにでも逃げ出したいのが本音だ。そもそもランニングに出かけたのは監視が有るか無いかを確認する為だった。その結果は黒。
つまり、自分は何者かに狙われているか疑われていると言う事だ。最悪、自分達が何処に居るのかもバレている可能性も出てきた。目の前にシグナムが居る。それだけで其処までの最悪が在る。
突然の強襲に今のメンバーで動けて戦力になるのはリンディ・ハラオウンだけだ。クロノ・ハラオウンはエイミィ・リミエッタを先ずは気が行くだろう。それは仕方が無い。
現状、シグナムに勝てる可能性が一番高いのがリンディだ。それでも接近されてしまっては危ない。自分ではシグナムには勝てない。
フェイト・テスタロッサも無理だ。海千山千の古兵を相手にするには経験が無さすぎるし体格の差もある。

(チッ、乗るしかないか)

一度シグナムの顔を見る、視線が合う。嘘を付いている様には見えないがそれだけなのかもしれない。そのまま、視線を逸らし角を曲がる。隣りに並ぶようにしてシグナムも角を曲がった。





一方シグナムも内心では若干の焦りと驚愕が渦巻いていた。シグナムは思う。

余りにも出来過ぎていると

偶然、奇跡、シグナムはどれも心の底から信じる事は無い。ソレが現実だからだ。この自分からすれば予定調和としか言えない状況。
誰かに仕組まれたのではないか? とさえ勘ぐってしまう。明智良哉は何も話さない。ただ視線が合った。その瞳には警戒の色が濃く広がっている。
そして、そのまま視線を逸らされた。自然とその視線を追ってしまう、其処には特に変わらない家の壁とブロック塀があった。塀の上に猫が居てクカァ~と大口を開けて欠伸をしているのが中々にキュートである。
再び視線を戻せば、明智良哉は既に走り出していた。直ぐにその後を追う。角を曲がるとゆっくりと走る明智良哉の隣りに並ぶ。
そこで気づいた。何者かに見られている。サーチャー等では無い。生の目で見られている様なこの感覚。久しく感じる事の無かったモノだ。
横目で明智良哉を見ると、規則正しく息を吐き出しながら私を横目で見ていた。視線が合うと前を向きコクリと小さく頷いた。

(コレか…)

監視を受けているのは明智良哉であるが、私もその対象である。

(仮面の男か…)

それぐらいしか思い浮かばない。もう一人居る事には居るが確証が無い。
考えるだけでイライラして来る。走りながら小さく頷く、さてどうしたモノか? コレが仲間も居る宮廷等ならばやりようも有るのだが、流石に孤立無援と言っても良いこの場でどうやって本題に入ろうか?
特に会話も無く思考に没頭しそうになる。その瞬間、僅かな魔力と殺気を感じる

(そう来るか!!)

瞬間、魔力刃を形成。伸ばし刻み相手の眼前に突きいれる。

私にも同じように魔力刃が突きだされる。

「殺気が消しきれてないぞ、戦士・良哉」

「…上の空のアンタになら不意打ちも成功すると思ったんだがな。騎士・シグナム」

お互い足を止め、眼前を向いたまま右手と左手を横に伸ばしている。正直な所、立ち止まるタイミングが遅ければ首から左耳まで貫かれていた。驚くほどに速い。
そして、やはり頭が回る。眼前の魔力刃に意図的に刻まれた数字の羅列…本当に、この男が成長するのが楽しみでしかたない。

「私は、話がしたいと思っていたんだが……此処で戦るか?」

「NOだ。不意を付けなかった以上俺の負けだ。第一俺にはお前の話を聞く気が無い。それよりも良いのか?」

監視は続いている。このまま別れた方が良さそうだな…お互いに

「ふん、今はまだこの地に留まっている方が良い。私達の事を知っているのはお前だけだからな。我等の首を手土産に伸し上がるつもりか?」

「御明察。少しでも早く上に行く為には功績が必要だ。生憎とコネと資金は無いんでな。こうする他に道はない」

「力の信望者か…屑め」

「屑とは酷いな…目的の為には権力が必要だったそれだけだ。所でエーリヒカイトと言う名に心当たりは無いか?」

「教える義理も無いな」

「…そうか」

いかん?! 本当に此処で始める気か。爆発的に膨れ上がった殺気に自分の中の闘争心が鎌首をもたげているのが解る

「じゃぁさよならだ!!」

盾を眼前に横に跳ぶ。瞬間に視界を光が包んだ。

(何処に?!)

周りを見渡せど姿は見えず。

「逃げられたか…此方側に引き込めればと思ったが…」

私はそう言い家に帰る事にした。

監視の目は途中まで私達を見ていた様だが、閃光が放たれる瞬間には消えた。さて、朝食後から本題に入るとしよう。

「ククッ……やはり、奴だけが空気が違うか」

次が楽しみだ。




















一方、光と共に逃げ出した明智良哉は民家の屋根を跳び移りながら人気の無い空き家の前に跳び下りた。身体強化とフィールド型のシールドを応用した光の屈折。先ず、一般人に見つかる心配は無い。
そう考えながらも、監視の目が離れて居ない事に少しばかり安堵した。
今はまだ、離れて貰っては困る。帰り着くまでは見張られていないとイロイロと拙い。伽藍洞な眼帯の下の意味が無い。其処まで期待はしていないが、得られるモノが在るのならば欲しい。
突かず離れずの距離ならばまだ気配を察知できるが、その外の気配は察知できない。ただ漠然と見られている事は理解できる。
高町恭也ならば相手をこの場で叩きのめせるのかもしれない。それだけの速さと機転がある。やろうと思えば出来るかも知れないが、明智良哉は高町恭也程に気配を探る事が出来ない。
未熟と言われればそれでお終いだが、高町恭也の方が異常なのだ。
そして、明智良哉が直ぐに帰らなかった理由はシグナム達の…正確にはヴォルケンリッター側の監視が在った時の為に備えてと言うのが理由の一つ。
もう一つは

「クゥゥゥゥ!!」

少々ご機嫌斜めなお姫様が居るためだった。

(…饅頭と甘酒でどうにかなるか?)

良哉からすれば割と厄介な問題でも在る。

そもそもの原因は昨日の戦闘の後、久遠を置いてけぼりにしてしまった明智良哉の過失が原因。
さらに付け加えれば、久遠に自分が何処に居るのかを連絡もしていない。うっかりと言えばそれまでだが、やられた方は堪ったものではない。

ピョン(ジャンプで良哉の頭え)

「クゥゥゥ!!」タシタシタシタシ(全力で良哉の頭に前足を振り下ろしている)

「………」

「クゥゥゥゥゥ!」

「………」

「くぅぅぅぅ…」

「……ごめんなさい」

機嫌が直るのに消費された甘酒は650ml、饅頭3個。約800円也。














「あの子…可愛い…」

どうでもいいが猫が子狐に母性を刺激されていた

















所変わって高町なのはは心を躍らせていた。漸く会えた友人が今日から同じ学校に通い、同じクラスで学べる事が出来る様になったからだ。
勿論、頭の片隅にはついこの間襲ってきた彼女達の事も残っている。
だからこそ、なのはの心の中は嬉しさに満ちていた。頼りに成る友人、魔法の事を知る仲間が来たのだ。その存在がなのはに安心を与えてくれた。

(フェイトちゃんもリンディさんもクロノ君もユーノ君も…明智君も居るんだ)

一つの問題を沢山の仲間と共に解決する。この事に高町なのはは自然と安心感を感じ頑張ろうとやる気を滾らせる。
そして、何よりも高町なのは以前自分自身に誓いの様なモノを立てている。

(名前で呼び合えるように…友達に成るんだ)

親友との最初の思いでは仲裁(肉体言語)で新しい友人との最初の思いでは戦闘(肉体的魔法言語)少ないが一緒の時間を共有しているのだ、共通点は有る。

「ん。フェイトちゃんに聞いてみよう」

そう短くはいてから行ってきまーすと、高町なのは家を出た。

もし、彼女に失敗が有るとすれば…





彼と彼等の裏側を全く知らない…感知できなかった事だろう。

だが、そんな事を知らない高町なのはフェイト・テスタロッサにこう聞くのだ。

「フェイトちゃん。明智君の事教えて?」



ハッキリと言ってしまえば、フェイト・テスタロッサは話したい。だが、話す事は出来ない。既に時空管理局嘱託魔導師として今回の事件に関わっているフェイトには情報漏洩を防ぐ義務がある。
ただし、コレは明智良哉から『お願いされている』だけで事件にかかわる様な事では無い。そう、個人と個人の口約束でしかない。何時までと期限を決められているわけでもない。
しかし、クロノが危惧したとおりの問題が在る。それは、明智良哉への依存。自分が殺した訳ではないが同じ年の少年が人を殺した。それは、それなりのショックを彼女に与えた。その当時フェイトは自分勝手な武装隊員に激怒していたからこそその衝撃は少なかった。
が、どうしても結果が…物証が其処に残ってしまっているかぎりそれは目につく。目、耳、鼻、口から黒く変色したモノを垂れ流した肉の塊が視界に入ってしまう。
コレが、首を飛ばされたモノだったら…まだ、マシだったのかもしれない。死体の状態は酷い。脳内に埋め込んでいたモノがショートし微弱ながら、それでも脳には強すぎる電流が一瞬でも流れれば脳神経はソレに反応する。
不自然に曲がる四肢、歪んだ形で硬直した表情。普通なら誰でも顔を背けたくなる様なモノだ。その場で吐かなかっただけでも優秀な方だ。
それだけ、その時フェイトの頭に血が上っていたのが幸運だったのだろう。
故に彼女は明智良哉と結果的に一緒に入浴してしまった時に辛く無いか?と問うたのだ。その返答は割り切ったと言う言葉だった。フェイト自身に掛けた言葉は忘れろと強く成れの二つだ。
忘れる事はまだ無理だった。目を瞑れば嫌でも思い出す。一人で眠れなくなる。だから勇気をだして恥ずかしかったが明智良哉に一緒に寝て貰った。悪夢は見なかった。精神的にも疲れていたからグッスリと眠れた。
その存在を感じれるモノが有れば落ち着けた安心できた。それを手放したら寝れなくなる様な気が今もしている。良哉の体温は暖かった、心臓が刻む音は心地よかった。何よりも頼れた。
前の戦闘でも自分は何も出来なかった。あの空間に入って行けなかった。足手まといと理解出来たからだ。
少し合わないだけで強くなっていた。怖く成っていた。前よりも、近くに居る事で感じる安心感が増していた。
依存である。アレが在るから大丈夫。アレが有れば大丈夫。
依存である。彼女には肉親と呼べる者がもう居ない。子供である彼女は親という者からの真の愛情を注がれた事が無い。彼女の母は娘を愛していたが故に彼女を愛するという選択肢が全くと言って良い程に無かった。
依存である。彼女は無意識に頼れるモノを探している。温もりを求めている。
依存である。愛される事に飢えているからこその依存が在る。
母に近しき存在は近くに在る。姉や兄に近しき存在も近くに在る。母、姉は温もりの象徴でもある。少しずつ…ソレは満たされている。
依存である。兄とは頼れる身近な象徴でありもっとも近い盾でも在る。
依存である。家族に飢えるからこそに足りないモノを求め必要とし縋ろうとする。
依存である。父というパーツが足りないのである。
厳しく、時に冷たく、時に優しく、見守ってくれる存在。恐怖の象徴でもありもっとも頼りになるモノの象徴。護ってくれると実感出来る、そこに居るだけで安心を覚えれる大きな柱の存在を求める。

リンディ・ハラオウンの母性、庇護欲は本物である。少しずつ、少しずつ彼女の心に浸透し暖かさを宿している。

エイミィ・リミエッタ、アルフ。彼女達は正しく姉という存在だろう。同棲であり方や過保護、方や放任気味な面が強いが両方とも面倒見が良く頼れる近しい存在

クロノ・ハラオウン。正しく彼は兄だろう。彼女自身の事を考え時に厳しいながらも初めてだからだろう不器用な優しさを示し、彼女の事を護ろうとする存在。頼りに成る兄貴分だ。

明智良哉。友人と言うには異性としては若干近過ぎる。兄と言うには優しさが足りないと思われる。誰にでも厳しいとは言えない。彼はユーノ・スクライアやクロノ・ハラオウンには優しい。
自分にはどうだろうか? そう考えるとどうとも言えない。同衾出来たのはアルフあっての事だと彼女にも考えれば解る。自分よりも強い。引かなければいけない時に引き金を引ける彼は彼女からすれば強いと思える存在である。
前回の戦闘でも結果的には守られている。あのまま続けて居れば自分の敗北は明らかだった。



安心感を覚えたのも、頼ってしまったのも巡り合わせの問題でしかない。

人はそんな巡り合わせでどうにかなってしまう。

故に、彼女の中でドレだけ大切な存在にでも約束を反故にすると言う選択肢は無い。

その日、高町なのはが得られた答えは「…良く知らない」と言う肩を落とす答えだけだった。

その日、フェイト・テスタロッサは友人に吐いた嘘に因って強い罪悪感とほんの少しの優越感を覚えた。



無知故に知ろうとする高町なのは。無知故にそう当て嵌めてしまったフェイト・テスタロッサ。

だが、一番優越感を覚えたのは…罪悪感を覚えたのは二人の話をたまたま耳に納めてしまった月村すずかだった。


すずかは知らない。良哉と姉が何を話しているのか、何を思って行動しているのかを。
すずかは別にそれでも良いと思っている。知らなければならない最低限の事は聞かされる。一族の為に。すずかは不用意に知ろうとは思わない。繋がりが切れてしまうのは嫌だから。

明智良哉は知っている。月村すずかの行為を。

明智良哉は勘違いしている。ソレは所詮は麻疹の様な一時的なモノでしかないと。



舞台の裏に潜むモノは全てを知っている。だからこそ、其処に立っている。其処に潜んでいる。だからこそ見ている。






ただ、楽しいから









此処では無い何処かで、二人のそっくりさんが対峙している。双子ですか? と言われても文句が言えない位に容姿が似ている二人はだけれど絶対に兄弟とは思われない。
違い過ぎる雰囲気は正に他人そのものである。

「あー…まぁ良いや。此処で消滅しちゃいなよお前。」

アギ・スプリングフィールドは至極真面目な顔で『嫉妬』に言う。
だが、そんな言葉に従うよな敵対者等居る訳が無い。

「消滅しろだと? このキチガイが!! お前が消えろ!!」

其処には山が在った。否、山の様に大きな体を持った何かが空間を割って現れた。

マガ

鰐の様な頭。過去に滅びた海竜の様な体躯。長い尻尾。一つ褒める点が在るとすればその存在は醜く矮小で卑屈な雰囲気を撒き散らしている事だろう。

マギ

誰もが思う。この存在を知れば心が軽くなる。自分はアレより酷くない。

ゴディア

自分はアレより全然マシだと確信できるからだ。

「殺せ!! リヴァイアサン!!」

マラスクス

「■■■■■■■!!」

その存在が吐きだした言葉何よりも醜かった。

「…はぁ。所詮は勘違いか…まぁ、そうだろうねぇ」

醜い叫びが一声。それ以上は続かなかった。なぜならその醜さを撒き散らす何かはただ一声上げた瞬間に消滅したからだ。

山より大きな空間の歪が存在した。其処からはみ出している頭は蛇に似ている。もう閉じられている口腔その隙間から火が僅かに漏れ、その鋭い犬歯を鈍く照らしていた。
鼻から細く上がる煙は黒く。首から下は見れない。だがその存在の首が解らなかった。何処からが首かが良く解らない。
大きな、本当に大きな顔の下と同じくらい大きな存在。
『嫉妬』は思った。鯨に似ている。だが、鯨の様な体躯ではない。途方もなく長いのだろう。ビキビキと空間から音を立てて這い出した尻尾の先端…そう、先端は天まで届くのではないかと思ってしまう程に長く大きかった。

「リ…リヴァイアサン?」

それが、彼の残した最後の言葉だった。



異形は問う。呼びだしたモノに。

「…折角の安眠を邪魔して、何の様だ」

呼びだしたモノは答える。

「勘違いを正しただけだよ。直ぐに戻すから暴れんなよ?」

まるで友人の様に話しかけるアギに異形は溜息を吐く様に火と煙を噴きだした。

「…九十九の者から伝言だ。マスターが寂しがって夜泣きしてますだと」

「ん~…ちょっとする事が在るから待っててって伝えて。」

「承知した…後だ…その…偶には私も混ぜてくれ」

そう言うと、その異形は還された。

「はぁ…結局は美徳も悪徳も捉え方なんだけどなぁ。ってももう意味無いか。されじゃ、良哉君には頑張ってもらうかね。実験、実験♪」

紫煙を吐き出しながら心底面白そうに笑ったアギは、子供の様にはしゃぎながらそう言った。






後で、影の中に勝手に潜んでいた嫁の一人からかわれて凹んだのは数瞬後の話である。

「実験実験♪ ケケケケ」

「らめぇ!! 黒歴史はラメナノォ!!」







あとがき


コレが今年最後の更新だ!!
良哉とシグナムは黒幕に近づく一歩位前
アギはいろいろと終わらせたよう
フェイトは依存が問題に?
なのはは良哉に近づこうと何かをする。
すずかは暗い喜びを少しおぼえて胸が痛く。
久遠はジャスティス!!


次回、そろそろ兄貴がアップ開始かな? 後、ユーノとかも?たぶん。


それでは、良いお年を…俺は明日も…ハァ


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