<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

とらハSS投稿掲示板


[広告]


No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[5159] A'sの三
Name: BIN◆5caaab55 ID:784a3ac9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/08 22:45








親に逢えば親を斬る。

友に逢えば友を、愛人に逢えば愛人を、他人に逢えば他人を斬る事が出来る。

鋼とは道具。鋼とは力。使う者次第で如何様にも出来るモノだ。

故に、鋼には罪等無く。所詮は使う者の使用法が問題なのだ。

だからこそ、明智良哉は一人の刀鍛冶に言った。


刀も銃も槍も鎚もそれこそ道端に転がっている石も全ては同じである。

使用法に…その道具に必要とされるモノを突き詰めて行った結果、今の形が出来た。

「故に、刀とは道具の範疇を超える事はない。ソレに付加される価値観は人間の一方的な幻想でしかない。」

だから、俺の意思を尊重する刀を打って欲しい。

老人は視線をズラすことなく真っ直ぐと明智良哉の目を見続ける。

「俺は全てを斬ります。有象無象の関係無く。好意を寄せられようとも、憎しみを寄せられようとも…ソレが目の前に立ち塞がるのなら、俺は全てを切り捨てて往く」

老人はゆっくりと立ち上がると、着いて来いとでも言う様に首を動かした。

ソレが、今より三日前の話である。





ただいま

その言葉だけで今までの苦労が報われた。少なくとも、私はそうだった。今から丁度二日前、明智君が恭也さんと出かけてから一日経った日にアリサちゃんとなのはちゃんが家に来た。
彼女達と遊ぶのも久しぶりだと感じてしまったのは、短い時間で沢山の事が有ったからだと思う。

久しぶりと言う感覚を覚えながら、中庭でお茶をしたりボードゲームで遊んだりTVゲームで遊んだりした。格闘ゲームはなのはちゃんの独壇場だったけど…

と言うかなのはちゃんって基本的にゲーム全般に強いんだよね。
シューティングとかは特にだけど…そうやって遊んで居る内に二人から「何か有ったの?」と聞かれた。その時に動揺せずに答えられた自分を褒めてあげたい。
無難な答えを選び、答え。表情を偽る。罪悪感が湧いてくる。でも、我慢しなくてはならない。彼の事を話すには自分達の事も話さなくてはならない。
私にはまだ…その勇気が無い。意気地無しと言われても仕方が無いと思うけど…私はまだ、今のままの関係が続けば良いとも思っている。

大変なのはこれから先だ。そう思う事にしている。もしかすると案外あっさりと解決してしまうかもしれない。そう思う私は、やはり意気地無しのだろう。

大変と言えばなのはちゃん達が来た時一番大変だったのはファラリスさんとルーダーさんだった。二人とも明智君の関係者で特にファラリスさんは傷が完治していない。
本当なら腕を動かすだけでも痛い筈なのに、お姉ちゃんの研究室で毎日の様に何かをしている。

食事の時は顔を出すからそれとなく聞いてみたけどファラリスさんは笑顔で


「大丈夫よ、女っていうのは男よりも痛みに強いの。だから、私の心配をするよりも貴女は自分の事を考えなさい」


と言った。正直、その笑顔と姿に私は母と言うモノを感じた。



うん、私は少しオカシイのかもしれない。でも、そう感じたのは事実だ。その事は認めよう。コレは誤魔化しでしかない。
今だって痛い筈だ。それでも、痛みを我慢している素振りすら見せないこの人は強いのだろう。

あぁ、そうか。だから私は母の様だと思ったのか。うん、一つ納得がいった。

だからこそ、私は聞けなかった。正直に言うと恥ずかしかったから。あの頬笑みは強い。とてもとても重い。憧れを感じてしまう程美しい。
たぶん、それはお姉ちゃんも同じだと思う。だって食事が全く進んでないんだもの。その事をファラリスさんに指摘されて慌てる姉を見ると笑いが漏れてしまった。

そんな光景は初めての癖して懐かしく、懐かしい癖に初めてと言う不思議な一場面として心に残っている。この光景を私は忘れる事はないだろう。

そして、もう一つ心に刻み込んだ光景が蘇る様に祈る。

其処には未来の義兄がルーダーさんに結婚生活について話を聞き、姉が夫婦関係に付いて詳しく聞き、そんな二人を呆れる様な顔で紅茶を飲み時々からかうファラリスさんが居て…そんな光景を見ながらゆっくりとコーヒーを飲む無愛想な彼が居る。

そんな彼が微かに口元に笑みを形作っているのがポイントだ。その光景の中には笑顔の私も含まれている。

どうか、どうかこの光景が壊れませんように。

期限の有るこの光景が少しでも長く続きますように…

私はただそれだけを願います。

だから、早く帰ってきてくれないかなぁ

と思っていた。彼が帰って来て、明日からまたその光景が在る日常が戻ってくる。胸の奥が温かい。温かくて暖かくて、蕩けてしまいそうだ。フゥとタメ息がこぼれる。コレが、私が友達にも秘密にしている事。

夜の中庭では彼が当たり前の様に刀を振るっている。

イィィン、シィィン、と音を奏でて居る。

季節外れの虫が鳴く様に、季節外れの猛暑が在る様に、季節外れの春が来ている事を自覚する。
元から自覚していたモノを強く見つめると、ソレは当たり前の事で呆気ないくらいに私の中から恥ずかしさが消えて行った。

だってそうでしょ?

生物には雌雄同体で無い限り、雄と雌がいる。

人にだって男と女の違いが有って…

その違いを求めるのは自然の摂理。

だって、人は独りでは生きていけない。

だって、私は独りでは生きてはいけない。

私は一人では満足に生きられない。

だって、彼の事が好きなんだもの。











少女の夜は更ける。寒空の下、冷たい風が吹く外とは違い。彼女の中には季節外れの春風が優しく吹いていた。







が、結局その光景をその次の日に見る事は出来なかった。







シグナム。烈火の将。剣の騎士。ソレがヴォルケンリッターとしての私の名。

シグナムリア。遥か過去のベルカに存在した近衛騎士団長。過去のベルカ王の側近。それがシグナムの元に成った人物の名。

私は誰だ? シグナムだ。シグナムで在りシグナムリアだ。

この気持ちは何だ? それはシグナムリアのモノだ。シグナムのモノでも在る。

私は誰だ? シグナムリアだ。シグナムでも在る。

「私は…騎士だ。」

口にした言葉そのまま私の答えと成った。

シグナムは守護騎士として生まれた。否、創りだされた。

シグナムリアは大貴族の三女として生まれ、騎士に成り、近衛騎士として生きた。

ならば、私は騎士だ。そうでしかない。

ならば誓いを果たさなければならない。あの方の願いを聞き届け、束の間の夢を約束した。

誓いだ。私は誓ったのだ。あの方の想いに、あの方の余生を共に過ごし、誓ったのだ。遥か未来に、遥か過去に。

騎士の名に誓ったのだ。

ならば、私は…



伝える。

伝えなければならない。私達ではもう手に負えない。ヴィータの記憶にあの事は残って居ない。だが、闇の書に関しては疑念を抱いているのは確かだ。ソレでこそ、お前を推した意味が在る。

ザフィーラには既に伝えた、直にシャマルも動くだろう。

だが、私は余り動いてはいけない。此処から先は考えなければ成らない。
シグナムリアの経験と勘に基づいて、シグナムの力を持って。シグナムリアの技術に基づいて、シグナムの経験を擦り合わせて。
シグナムリアの知識に基づいて、シグナムの技術を底上げして。シグナムリアの、そしてシグナムの、思いを擦り合わせて戦わなければならない。

小さな、小さな希望の欠片を握り締めて。

「シグナム? どうしたん? 急に難しい顔して…」

「いえ、昔話を…今の時代で言う童話? を、思い出したので」

私の言葉に少女は笑顔を輝かせる。その顔を見れば次に出てくる言葉は予想が付く。

「ホント?! なぁなぁ、少し聞かせて欲しいんやけど…」

「えぇ、良いですよ。最近は自分の都合で家を開けてばかりでしたから」

苦笑が漏れる。自分の吐いた嘘にでは無い。自分を騙せない嘘を吐くほど無様では無い。

「やった!!」

「フフ、昔、本当に昔の事です。聖都より七つの山を越え、五つの大河を渡った所に…」

話の途中でヴィータ達が帰って来て、其処で話は中断した。主にはせがまれたが夕食が遅れると他の騎士達が空腹に成る。どの時代でも食物の恨みは怖いモノだ。さて、私も少し手伝おう。火加減は任して欲しい。

夜、主はやてにせがまれ寝る間まで話を続ける事にした。

主が寝たのは日が昇り始めてからだった。寝る前の言葉は

「シグナム、ソレは童話やあらへん。戦記や」

だった。

朝食で作ったベーコンエッグは好評だった。次は煮込みモノを覚えてみようかと思う。





この日より、ヴォルケンリッターは本格的に蒐集を始める。それは、クロノ・ハラオウン達時空管理局員に取って忌まわしいロストロギア・闇の書の覚醒を知らせる前兆となる。





時空管理局・本局。

総称『海』と呼ばれる時空管理局の大元。その帰還ドッグのエレベーターの中、リンディ・ハラオウン提督とアースラ搭乗員であり執務官補佐兼管制官エイミィ・リミエッタが乗っていた。

「ふぅ…事件に次いでまた事件ですね…艦長」

「そう落ち込まないの、エイミィ。」

少し疲れを見せて言うエイミィにリンディは薄く笑みを作りながら言った。

「まぁ、貴女の気持ちも解るけど。私達は時空管理局局員なのよ…確かに、フェイトさん達をゆっくりとなのはさん達に逢わせてあげたいけどね。フェイトさんも今は嘱託魔導師、それにこの間の事件解決に協力した事も含めて彼女の立場も大分良く成ったわ」

「それはそうですけど…私は、クロノ君が倒れそうで心配です」

エイミィの言葉にリンディは頭を痛める。リンディの息子であるクロノ・ハラオウンが原因だ。リンディから見て身内贔屓かも知れないがクロノは優秀だ。イレギュラーに弱い所は有るが、基本的にルールの中で動くと言う事に関しては優秀だ。

その弱点で在ったイレギュラーに弱いと言う部分も、最近は改善されてきてる。より解りやすく、より正確に、と新しく出来た自分の弟分に家庭教師として魔法や法律等を教えて居たからだろう。

これだけならば諸手を挙げて喜べる事なのだが、問題に成っているのはその性格だ。

品行優勢、生真面目、ちょっと硬いのが玉に傷。

ワーカーホリック。仕事中毒なのだ。三度の飯よりと言う程ではないが一度仕事を始めるとやれる所までやろうとする。その後の事を考え、周りの動きも考えて仕事をする。より効率的にと

つまりは働き過ぎて過労状態なのだ。地球に付くまでの時間は絶対に休ませなくてはならない。

リンディはエイミィに一言言った。

「頼んだわよ…補佐官」

「ちょ~っと荷が重いかもしれませんが、頑張ります」

その後、クロノはフェイトとアルフの協力により捕縛されエイミィに寝かしつけられた。

クロノはポツリと吐く

「…バインドで簀巻きにされるとは思ってもみなかった」








クロノ・ハラオウンがそんな事に成っているとはこれっぽっちも知らない明智良哉は、月村邸帰って来たその次の日の早朝からファラリス・アテンザに連れられて地下の研究室に来ていた。

幾つもの配線が混雑し、余り見た事も無い機材が乱立するその部屋は正にカオスと言って言い所だった。ファラリスはその機材の中から一つのデバイスを取りだす。ラプラスだ。明智良哉は直ぐにそうだと解った。見た目に変わりはない。

変われる筈も無い。此処とミッドチルダでの技術力には差がある。それも、地球には無い「魔法」と言う技術…魔力と言う生体エネルギーを使う為の『科学』技術には一定の差がある。全てにおいて地球が劣っているとは言えないが、その分野では大きな差が在る。

「はい、それなりに新しく成ってる所もあるから後で確認する事」

「はい、ありがとうございます。」

そのデバイス。ラプラスを再び左目の在った場所に入れる。入れた瞬間に脳を突き抜ける様な痛みが有るが顔に出す様な真似はせずただ耐える。

『おはようございます。マスター』

「あぁ、おはようラプラス。また何時も通りに頼むよ。」

『了解しました』

視界は良好。前より幾分か鮮明に成ったような気がしないでもない。

「それと、彼方が昨日帰って来た時に持って来たアレだけど…もう少し時間が掛かるわ。局に成る設備が使えるのなら今日中にでも終わるけれど…少なく見積もっても三日。まぁ、五日は掛かるモノと思って頂戴。」

急な申し出だったのにソレ位の時間で済むのかと思ってしまった。これも、月独自の技術の賜物なのだろう。下手をすればミッドより凄いモノも有るのかもしれない。ノエルさん達自動人形を見て居ればそう考え、思ってしまうのも当たり前の事なのかもしれない。

まぁ、今はその技術も廃れ誰にも解らないモノに成ってしまっているらしいのだが、すずかの話によればソレを蘇らそうとしているのが月村忍らしい。曰く、天才。鬼才。
高町恭也自身が、アレはマッドだと言い切るぐらいには才があり月村…夜の一族と言う者達を纏める当主としての手腕も有る。

そんな彼女が此方の事に興味を示さない訳が無い。

「大丈夫ですか?」

「なにが?」

「…いいえ、俺の心配だったみたいです。巧くやってくださいね?」

「フフ、解ってるわよ。それにしても、面白い体になったものね」

そんな二人の会話。ソレを知りながらもどうするかなぁと考えているルーダー・アドベルトは報告書片手に唸っていた。『夜の一族』のことである。どう報告すれば良いかが問題だとルーダーは日夜考えている。

もう、いっその事隠さずに報告すると言う選択肢も在るには在るのだが…それは個人的にしたくわない。だからと言って誤魔化す為の事を考えると思いつかない。そこで、考えついたのが…

夜の一族なんて存在は居なかった。と言う事である。

幸いにもこの世界には霊能と言うモノがあり、自身もそれに関わった。その戦闘で明智良哉は怪我を負ったモノの月村家の所有する『家宝』で治療された。

とでも言う事にして後は月村忍、綺堂さくらの二名に行って貰う。他力本願この上ないが、所詮自分は武装局員でしかない。

権力とは厄介なモノだ。月村忍達がこの事を了承してくれた事が奇跡の様なモノだった。本音を言わせれば、自分達の秘密を話しても良いかどうかを己の目を持って確かめたい、見極めたいと言うのが在るのだろう。後は…この世界の外の技術か…

「はぁ、黒いねぇ。嫌になるぜ。」

無性に妻と娘に逢いたい。思い出せばもうすぐ自分達の結婚記念日だと言う事を思い出しどうするかと言う悩みが増えたルーダーは恭也に声を掛けて釣りに行く事にするのだった。

「疲れてますね」

釣り糸を垂らし静かに待つ、そんな静寂を破ったのは高町恭也だった。月村家所有地の一つである山は、車で小一時間行った所に在る。川も流れて居て、避暑地としても使える。今は冬の風が冷たく本来なら厳しいモノだが、二人の真後ろで燃える焚き木が暖かくしてくれる。

「あー…お前も何れ解るさ。」

「俺も?」

夫婦間の事なのだろうか? と恭也は思ったがどうやら違う様だと、ルーダーの横顔を見て思った。

「なんつーかなぁ…まぁ、所詮俺もお前も『力』の人間だ。戦う事を生業にしてる人種なんだよ。特に俺は戦って勝つ事に重点を置いて生きてきた。敵に勝つんじゃねぇ戦って生き残る事が俺の勝利だ。」

釣り糸は揺れない。

「だからよ、情報を集める事、ソレを使う事は徹底的にする。でもな、其処までの人間なんだよ。」

「?」

「お前もそう遠くない未来に絶対に経験するぞ? お前の嫁さんは月村って言う財閥の当主。多くの企業の統括者だ。んで、お前はそんなお偉いさんの夫」

「…確かに」

「まぁ、お前さんには余り回ってこないかもしれないが…俺達見たいな人間に取って『政』とそれから…それこそ人に因るが『法』は鬼門に近いんだよ。」

そう言うと、ルーダーは深い深い溜息を吐いた。

「やはり…貴方達の世界でも?」

「俺達が知らないだけなのかもしれない。その可能性は在る。でもな…ちょーっと特殊すぎる。この事実が次元世界に発覚したらお前…遺伝子工学やらを専攻してるぶっとんだ連中やら趣味の悪い好事家が出張ってくるぞ」

ルーダー・アドベルトの心配事は正にソレだ。

信じられるだろうか? 人間と同じ姿を持ちながら人間を超えた寿命を持ち、人間より優れた身体能力を持つ『少し違う人間』の存在を。その一族の存在を認められるだろうか?しかも、中には特異な能力を持つ者まで存在する。
極めつけはその一族が過去に持っていた技術。ミッドチルダや他の管理世界にも無い技術。アレほど見事な…人間と言われても信じてしまう様な自動人形を作れるその技術に目を付けない筈が無い。技術提供などで解決出来るのならソレで良い。此方の技術は此処でも役に立つモノが多い。両方に利が在る。

だが、前者の場合は…どうなるかが解らない。

非人道的実験。アレは酷い。そうとしか言えない。地獄等と揶揄するよりも酷い。そう言った方が解りやすい。どれもこれもが実験体。壊れればゴミと同じように破棄される。暇つぶしに…慰みモノに成る。それでも…まだマシなのかもしれない。
何度かそう言った実験場、研究所に突入した事が在る。あそこで見た、古い研究所。建物がでは無い。ソレが存在した年数の話だ。其処で見たのは自意識を微かに残した…

「っ、胸糞悪い。恭也!! 今日はもういいや。飲みにでも行くぞ!!」

「俺は下戸なんですが」

だったら、強く成ろうぜ!! そう言いながら首に腕を回しヘッドロクをするルーダーの胸の中には不安が渦巻いていた。





日も沈みかけの夕暮れ時、明智良哉は中にはで優雅にティータイムを擦る事を強要されていた。

「…それで? 神咲からの接触は無いの?」

「ありませんよ。久遠に聞けば解るんじゃないんですか?」

綺堂さくら。ソレが明智良哉にティータイムを強要させている女性の名前だった。

綺堂さくらは明智良哉を警戒している。そして、ソレを隠す気も無い。ソレがこの件に関する全員の見解だった。ソレは当人同士も同じであり、明智良哉はルーダー、ファラリス等の人物を外し、此処に居る人物全てを警戒している。そんな素振りは見せないが厚い壁が、深い溝が其処にある。

高町恭也には大分警戒は解いているが、月村忍と言う存在が在る為警戒している。月村すずかには警戒どころか興味が無い。友人付き合いはしているが、それは自分が口にした契約だからだ。

「で? 何で貴女はそんな事を聞くんですか?」

言葉の裏には「何で自分が既に握っていて確信している情報を聞いてるんですか?」と意味が在る。

「別に? 確認よ確認。それで、何か変わった事は在ったかしら…貴方の『体』に」

「特には何も? 静電気が起こりやすく成ったぐらいですかね? 季節的に空気が乾燥しているからかも知れませんが」

第三者からすれば年の離れた親類とお茶をしている様に見えるかも知れない。お互いに顔には笑みを張りつかせている。明智良哉の笑みは、笑顔とは言えない微妙なモノだが、確かに笑みなのだろう。繰り返しの所為か、いつの間にか感情を表情で表わすのが苦手に成っているのかもしれない。

遠くから見れば微笑ましい光景に見えたのだろう。実際の所は腹の探り合いである。

綺堂さくらは夜の一族の中でも大きな力を持つ家の人間である。現在大きな力を持つのは『月村』『綺堂』の二家だ。昔はまだ在っただろうその存在は、子を残しにくいと言う一族の特色とも言える弊害で無くなってしまった。
特に血の濃い家ほどそうなる。血が濃いからこその『力』なのだが…長寿であり不老とは言えないが若い時間が長いと言うのはそう言った種の滅びを防ぐために適応した結果なのだろう。そして、力にも種類が在る。ソレは物理的に襲いかかってくる暴力の様な解りやすいモノ等を含めて。

例えで表わせば『月村』は技術。『綺堂』は金。

月村はその技術力を持って一族を護り、その存在を隠匿し簡単には手を出せない様な世間的な立場を誰しもがわかる様な『力』を世界に示している。
綺堂はその経済力。一族の利益を追求し、得た金銭を運営し、月村の世間的な立場を強化、補佐する。他にも汚い仕事もする。敵対者を見つけ出し、炙り出し潰す。

月村は社会的な地位を確立し権力を振るう。綺堂は情報を集め、纏め、非日常的な『暴力』さえ使って影から力を振るう。

元々は『氷村』に連なるモノ達が行ってきた事だったが、その家は既に無い。
その為か、暴力という点に関しては些か弱い部分が有るがそれは将来的には解消される。『不破』が既に此処に居るのだ、その家の歴史は日の元の国の裏の歴史を紐解いて行くと明らかに成る。護る為の『御神』が失われて久しいが、『不破』と言う殺す為の刃が少なくとも生きている。

その存在は既に香港からも流れている。さて、月村…夜の一族は少しの時間を無事に過ごせば安泰だ。その筈だったが、突然イレギュラーが現れた。

そのイレギュラーは言うまでも無く『魔法』と言う力を行使する存在だ。其処から発覚した『異世界』とも呼べる世界の数々。此処まで解れば、綺堂さくらの頭は常に最悪を想定する。

つまりは、『夜の一族』の全滅、絶滅。

この世界の中でさえ、非合法の実験は当たり前の様に行われていて、どの世界でも人間は不老と不死を求め、自分とは違うモノに容赦が無い。

全ての世界共通で人とそれ以外の共存とは理想でしかない。この世界の大国で在り、多民族国家でもあるア○○カ合○国でも未だに、肌の違いの差別が在り、州が違うだけでの独特の訛りに対する嘲りがある。人種の差別、言葉の差別、それすらも乗り越えられないこの世界が、一歩も二歩も進んだ技術を持つそんな世界と出会えばどうなるか等は人類の歴史を紐解いていけば直ぐに解るモノだろう。

隷属と言う名の友好か、共存と言う名の戦争か…共存と言いながらも戦争と言う言葉が出てくる事が既にオカシイが、対等に付き合うには何かしらの『力』を示さなければならない。まぁ、今の世界ならば隷属と言う名の友好を行い、技術を吸収し『独立』と言う名の戦いをするのだろうが…ソレはどうでも良い。本当はどうでも良くはないが、そんな先の事は置いておかなければならない。

問題は今だ。今現在の事だ。ハッキリ断言できる。地球のとある国は管理局の存在を『知っている』

次元世界と言うモノを知っているのだ。繋がる、繋がった、繋がってしまった。

少なくとも日本という国はその事は知らないだろう。かの大国も知らないだろう。隣国も知らないだろう。

ならば、何処だ? どの国が知っている? 普通では起きない筈の現象が数多く埋もれている国は何処だ? 其処が妖しい。
説明が付いてしまう幾つかの神話が存在する。未だに解明できない技術がこの世界に存在してしまっている。

周りはこの考えをただの『妄想』と馬鹿に出来るだろう。誇大妄想と言ってしまえばソレで終わりだ。だが、可能性は零では無いのだ。その可能性に気づいてしまったからには考えない訳にはいかない。

次元世界に対する夜の一族のアクションは決まっている。隠匿だ。隠匿しなければならない。それと同時にソレが不可能に近い事も解っている。高町なのは、姪の義妹に成る少女の存在を忌まわしく思ってしまう。最終的にあの子の決断に成ってしまうが、そういう風に成ってしまうのだろう。

技術の流出。この世界でも同じ事が起こっている。先進国から後進国への兵器の流出…一番恐れなければならないのは其処だろう。

だからこそ、少しでも、この明智良哉と言う少年は始末するか、もしくは完全に味方に引き入れなければならない。此処で毒を盛るのは簡単だ。だが、その後が危ない。此処で殺そうと思えば…何とか成るかも知れない。だが、その結果は己の死を計算に入れても低すぎる可能性だ。迂闊な手段は取れない。

だからこそ、久遠と言う存在を使うしかない。

「特に変わりはない…ねぇ」

表情は崩すな。感情を抑えつけ、仮面を被れ!!







明智良哉からすれば、綺堂さくらとの会話はどうでも良いモノだった。ハッキリ言ってしまえば自身の体が外見上人間のソレで在り、見ただけでは解らないほどに『人間の体』ならば、中身がどうなろうが知った事では無かった。

力を得られるのならばソレで良い。謎が解けるのならばソレで良い。月村…夜の一族の事などは心底どうでも良い。ただ、月村すずかの存在が有ればソレで良い。これからのやりようでは人形の様にする事も出来るだろう。今の生命線が月村すずかと言う厄介なモノで無ければこんな会話等する必要も無かったのだ。

明智良哉は月村すずかに因って生きながらえた。

明智良哉の肉体は、月村すずかの『血』に因ってその生命を繋ぎ止めた。

明智良哉には月村すずかの血が多量に注ぎ込まれている。其処から起こる変化は身体能力の一時的な向上、自己治癒力の一時的な向上、身体能力を競う者達にとっては夢の様なドーピング剤だ。だが、問題が有った。久遠との『契り』に加え極度の生命の危険と衰弱。其処からの回復に必要なモノは何処から調達したのか?

調達出来て居ないのだ。体は動く医療の面から見ても問題は見つからないのかもしれない。肉体的な損失はないのだから。だからこそ、血の効力が切れる時にこそ、ソイツは一気に押し寄せてくる。確かに夜の一族の『血』は素晴らしい物なのだろう。

だが、決定的に足りないモノが在る。『栄養』が足りないのだ。夜の一族が優れているのはその肉体なのだ。『血』が優れている訳ではない。久遠の知識を借りて言えばこの効力は『共鳴』や『感応』と言った言葉に近い効力をフィジカルでは無くアストラルより起こすモノだ。

(実際に体験しなければ眉唾物の話だがな…綺堂さくら、厄介だな…)

本来ならば、怪我が治った時点で逃げ出しても問題は無かったのだ…だが、明智良哉は月村邸に居る。それは何故か?

治癒の代償を払えないから此処に居なくてはならない。月村すずかに頼らなければならない。既に、明智良哉の肉体は月村すずかの『血』が無ければ燃料切れを起こすポンコツなのだ。治癒の為に使った栄養が足りない。一日に摂取出来る栄養では到底足りない。数か月以上の時間を掛けなくては成らない。だが、普通にその時間を掛けようと思えば半月経たない内に死が待っている。明智良哉個人としてはソレも有りだ。だが、今生きているからには少しでも先の情報を得たい。

月村すずかに命を救われてしまった結果、月村すずかの血に縛られている。

皮肉な結果だ。その為、万一に備えて月村すずかとは良好な関係を築かなければならなくなり、月村すずかの縁者にも余り悪印象を与え過ぎては成らない。特に、この綺堂さくらと言う人物には気をつけなければならない。

世間で物を言うのは金銭だ。コレは変えようがない。仁徳も在るのだろう。だが、それ以上に多額の金銭は強い。人情に因る絆は確かに堅い、そして強い。

だが、互いの『利』の為に結んだ関係は適度な強さ、柔軟さを持ちその関係を結んだモノの采配で強くも弱くもなる。はっきり言ってしまえば、綺堂さくらの持つその『力』に明智良哉は屈するしかない。彼女の意思一つで、明智良哉は打ち捨てられる事もあるのだ。それ程までに、綺堂さくらの立場は高く強い。

一族の利益を追求する『綺堂』はその気になれば『月村』を当主の座から蹴落とせるだろう。ソレをしないのは個人的な関係に因るモノなのか、そういう風に教育段階で刷り込まれたのか? それを知ろうとは思わない。

「えぇ、右腕以外は特に」

今は、どうやってこの場を切り抜けるか。明智良哉に取ってソレが最大の問題だ

「そう、右腕以外はねぇ…。そう言えば、君はこれからどうするのかな? その異常を抱える右腕を持って」

「どうしましょうか? 俺としては管理局に入る予定にしていますが?」

(…そう言う事か)

「ふ~ん。…ソレがどういう事か解って言ってるの?」

綺堂さくらは先程よりも若干鋭くなった視線で明智良哉に言う。

「少なくとも…今現在、俺を保護してくれている方には話さなければならないでしょうね」

だが、その事は月村忍も許可を出している。その事は、綺堂さくらも知っている。彼女達は其処から先の…自分達の事を話す人物の事が知りたいのだ。予測したいのだ、その対応策を、より最善に近い次善が欲しくて堪らない。不安で堪らないのだろう。

明智良哉はそう予測する。ソレと同時に思う。

(俺達の存在を消そうとしないだけ人道的…いや、慎重なのか?)

明智良哉には知識が在る。ボロボロで薄れて朧に成っていようが知識が在る。未来、そう遠くない未来でも高町なのは達と月村すずか達の関係は良好だった。印象的だった記憶、幸せを強く感じた記憶は意外と薄れては居ないモノが多い。

恐らくは自分を護る為の後者なのだろうが、今と成っては気持ち悪いモノだとも思ってしまう。良くも悪くも印象的な事柄は覚えて居られるが、圧倒的に悪い事の方を覚えている。幸せは慣れれば普通に成ってしまうモノの所為か直ぐに薄れてしまうと言う欠点もある。

記憶の中に存在する朧な光景の中ではクロノさん一家が月村すずかやアリサ・バニングス達と一緒に買い物をしている姿を、クロノさんがダラシナイ顔で話している。子供の服を…と話していた様な気がするが、それもどうだったか…

もう、そのままリンディ・ハラオウンの事をしゃべっても良いのだが…自分の立場を固めておきたい。

明智良哉は考える。自分が知る綺堂さくらと言う人物の情報を集めて考える。今まで何もしてこなかった訳ではない。それとなく情報収集は行っていたのだ。その為、高町恭也とルーダーはその親交を深めたし、月村忍とファラリスも中が良い。互いの趣味が合ったと言うのもあるが…

明智良哉自身も綺堂さくらにはサーチャーを張りつかせる事ぐらいはしている。

その結果、解った事は綺堂と言う家の役割等だ。

(乗ってくれるか? いや、釣れるか?)

「トランスポーターって凄いですよね?」

「…?」


明智良哉と綺堂さくらの間に、契約が出来たのはこの日の夜の事だった。










月も傾き、虫も寝静まった深夜。月村邸のバルコニーで二人はワイン片手にグテーと座っていた。両方とも美人なのだが最後の態度で非常に残念な事に成っている。その二人の名前は、綺堂さくら、月村忍と言う。
二人は血縁上は叔母と姪の関係だが、二人を見て居ると姉妹の様にみえる。
両方に共通しない事は、隅が出来て居るか居ないかの違い。共通しているのはどちらも満足げな表情をしていると言うところだろう。
何かを遣り遂げたという達成感は人に誇らしさを与えるには十分なモノだ。どちらも無言でグラスの中身を揺らしている。その姿には憂いは全くなかった。

「満足そうだけど…何か良い事が在った? 忍?」

年長者だからだろう。綺堂さくらはそう月村忍にそう聞いた。

「もうね…すっごいのよ。流石は異世界!! と、言いたい所だけど…確実に私達……じゃなくて、この世界の一歩以上先を行ってるわ。だからかなぁ、楽しい。本当に楽しい。久しぶりに思い出しちゃった」

貴女の所に厄介払いされてた時の事。そう言い微笑むと、何かに気付いたかのように言う。でも、アンナ物はもう作りたくないわねぇと

月村忍はそう言い、クイっとグラスを呷る。その姿を見ながら「高いのに…」と思うもその姿がらしいと思い。笑みが出る。

「私は見つけ出したわ、私達より、百年後のこの世界の在り様の一つを…結果は幾らでも変わるでしょうけど。でも、私達にとっては最悪に成らない限りの『利益』が在るわ。」

「…一族の利益を追求してくれるのは嬉しいんだけど…さくら姉さんも少しは自分の事考えたら?」

「うるさいわね。私は経理統括よ? 余り私事に構っていられないんですもの…ソレに私は明後日にはドイツに戻る予定よ。」

「あら? あの子の事は良いの?」

「良いも悪いも無いわ。あの子に取って私達は無価値見たいなモノよ。価値が在るのはすずかぐらい…それも、何時までそうなのか…」

「ありゃぁ…どうやったらそう成るのかしら」

二人は互いに溜息を吐いて、同時に言った。

「「すずかも大変な男に惚れたわねぇ」」

そう言うも二人の顔は笑顔だった。


夜は更ける。時が進む。明かりの消えたバルコニー。大きな屋敷の明かりは消える。風の吹く音が静かに雑草を、木々を揺らし微かな音を立てる。
其処に立つ少年は静かに刀を振るう。
出来たばかりの綺麗な刀身。
月光を浴び鈍く光る鋼の輝き。
風さえ切れぬ程にゆっくりと振られる人切包丁。

鞘に納めても音が経たない。

ポケットから取り出した鋼の塊。既にソレは鍛え上げられた一種のインゴット。腰からぶら下がる剣十字が静かに光る。

少年は空を見る。遠い遠い此処では無い遠い景色を見つめる様に。

少年からでは見えない遠い空、静かに紅い少女が飛んでいた。

少年は、液体の入った試験管を自分の目の高さまで持ち上げると、蓋を開け一口で中身を飲みほした。

それはまるで、何かを祝福しているかのような姿だった。




あとがき

どうも、BINです。友人からスパロボ精神コマンドったー成るものをしてみろとメールが届き早速やってみた。

HNの場合

『ド根性、激闘、直感、友情、誘爆』

本名の場合

『直感、魂、再動、不屈、覚醒』


……なあ、これを見てくれ、こいつをどう思う? 











何だか今日は調子がいいきがする。





前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.041388988494873