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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] A´sの二
Name: BIN◆5caaab55 ID:784a3ac9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/12 19:12





(畜生…ちくしょうちくしょうチクショウ!!)

アタシが馬鹿だった。何が気に掛けるだ。

(アタシは何も見て居なかった!!)

擬態を見抜けなかった、裏の顔を見抜けなかった、良い奴だと思ってたのに…友達だと思っていたのに!!

「シグナム!!」







―――誓いなさい

その声は鈴の様に大広間に響く。

豪華絢爛の名が相応しい煌びやかな謁見の間に、絶対の王者が儀礼剣を持ち若き騎士見習いに告げる。

夢の中の私はその光景を見ながら安堵に浸っていた。あの王者と騎士見習いの関係は知っている。王者との付き合いは既に十六年にもなる。生まれた時から護って来た、我が友の大切な孫娘の一人。

素直ではなく、何処か捻くれている小娘が自分の居場所を求めて幼い頃から城を抜け出していたのを良く追っていたのだ。まさか、侍従の変装をしているとは思わなかったが…

そんな小娘も成人になった。今日はその儀式が執り行われた。今は戦争中の為本来の様な盛大なパーティーは開け無かったが、己が思いを寄せる者と共に在れるようになるのは素晴らしい事だ。

私の隣に居る馬鹿義娘もそわそわと落ち着きが無い。

「おい、クソ婆。なんでそんな生温かい目で見てんだよ」

「何、二十も過ぎたのに男の影も形も無いハナタレ義娘が哀れに見えただけだ。」

全く、三年ぶりに会ったと言うのに挨拶も無いとは…アイゼン卿に預けたのは失敗だったグラトゥラツィオーン卿に預ければ良かった。あそこなら同じ年のシャーリンも居たのに…

「黙りやがれ行かず後家。アタシは良いんだよ、義父も別に良いって言ってんだし義兄も義妹も結婚してんだ。アタシは戦場で戦ってるのが性に合ってんだよ。お分かりですか?グルートヒッツェ様?」

「ハァ…こんなチンチクリンを次の近衛騎士団長の候補に上げなくてはならんのか…」

あぁ、確かに。この娘には荷が重い様な気がする。夢の中の私はそう思っている。私は別の事に驚愕を隠せない、その女の姿は見間違えようも無い。仲間で在る少女をそのまま成長させればこう成るのだろうと容易く予想できる。

「名前で呼べ!! アンタが付けたんだろうが!! アタシは『紅鉄姫』ヴィータ・アイゼンクルペンだ!!」

「それが、どうした。今は静かにしろ。小さく怒鳴るなんて器用な真似せんで良い。それとだが…私はシグナムリア・フォン・グルートヒッツェだぞ? 名前を呼んで欲しければ結果をだせ。字等、ハッタリ位にしか使えんぞ? お前の好きな戦場ではな」

出すまでも無く、結果は見えていると夢の中の私は思っている。第二次次元戦争…今から十三代前の聖王陛下がこのベルカと言う世界を勝ち取った独立戦争から約170年、再びベルカという我等の故郷は外の世界と争っている。

まぁ、今までそうやって勝ち取った物を吸収し技術を発展させて来たのだ。我等の暮らす世界と似たような事をしている世界も有る。今回はソレがカチあった…運悪く内乱が起こっていた二十年前に。

自身ももう若く無い。既に六十に届きそうなのだ。魔力も衰え、力も衰え、今在るのは長い間鍛えた技術と経験ぐらいのもだ。我が秘奥も伝授できる様な人間も居らず。古代魔法を使えるのは己を含め四人に成ってしまった。

戦争はまだまだ続きそうだ。その時にこの世界を率いるのはあのじゃじゃ馬か、その兄君の誰かか…できればあの娘に率いて欲しい。そして…その隣にはあの青年が居て欲しい。
だが、その思いを打ち砕くのはその青年の言葉だった。

其処からは流れる様に場面が移り変わった。

怒りと戸惑い、裏切られたと思った為の憎悪から儀礼剣を付きだす王者。

その剣により左目を抉られた青年。

その二人を止めに入った私とヴィータ。

そして、血の線を顔に描きながら青年が言った言葉

「この身は騎士に至れなかった出来そこない、故に名を捨て名誉も栄誉も全てを捨てましょう。不敬なこの顔を晒さぬ様に仮面を被り惨めに生きましょう。そして戦い続けましょう。私が仕えるのは貴女様では無くこのベルカのみ。私が護ると誓ったのは何処にでもいる様な明るく美しいあの少女のみ。」

なんとも言えない喪失感が私と、夢の中の私を襲った。それよりも、私のオリジナルがこの私だと気づいた瞬間に烈火の将、剣の騎士の役割を思い出した。
思い出してしまった。思い出してしまったからこそ私は納得した。成るほど、確かに…因縁とでも言うのだろうか?

此処まで出来上がっていると笑ってしまう。

映像…否、私の記録は流れ続ける。そんな私を現実に引き戻したのはヴィータの怒鳴り声だった。

「シグナム!!」

「うるさいぞハナタレ義娘」

「ハナっ?! だからアタシはヴィータっつう名前が有るって言ってるだろうがぁ!! このクソ婆!!」

……私はヴィータの言葉にドキリとした。

今の会話の遣り取りは夢の中の…否、私の過去の記憶と同じ

(まさか…其処まで切羽詰まった状況なのか!?)

「何が有った」

「?…っ!! そうだった、良哉の野郎が」

私は一度待ったを掛けて、ヴォルケンリッターをリビングに集めた。それと同時に状況は其処まで切羽詰まった状態ではない事を認識する。
理由としてはヴィータの態度だ。今しがたの私との会話をヴィータは覚えて居ない、覚えられないのが正解なのだろう。自分が何を言ったのかも覚えて居ない筈だ。私という人格が完全に蘇った…表現しづらいな。
シグナムではなく、シグナムリアとして再構築された意識が私の中に在る以上ヴィータが再構築される事は略無いと言える。コレは受け入れれるか自身が気づくかしなければならない事だからだ。
こうしてヴォルケンリッターの面々を見ているとザフィーラ以外は全て私に縁が在る者達だと言う事が解る。シャマルの顔には見覚えというか面影が残っている。今、ソレを此処で言っても意味がないが…

「それで? 明智がどうしたんだヴィータ」

ポツリポツリとヴィータが話し始める。

訳の解らない不可解で不快な夢

その夢の所為で夜中に起き、気分を紛らわす為に夜間飛行を行った事。

辿りついた場所から見えた大きな屋敷。

その方角から現れた明智良哉との会話。

明智良哉との戦闘とも呼べない戦闘との結末。

「アタシは…アタシ達は騙されてたんだ!! あいつ、はやての事にも気づいてる。手柄が必要だって…見た事も無い様な笑い方で言いやがった!!」

「そんな…」

「むぅ…」

「………」

はっきり言おう。やられたと。

まさか此処まで簡単に…いや、ヴィータの迂闊か…

「馬鹿かお前は」

「なっ?!」

驚いた様に顔を上げ、私を睨みつけるヴィータに言う。

「もう一度言おう。馬鹿かお前は。簡単で幼稚な挑発とカマ掛けにやられおって…嘆かわしい」

「な、何がだよ!! シグナムはあいつを見てねぇからそう言えるんだ!! あの眼は本気だった、本気でアタシを嘲ってた!!」

ここまで冷静になれていないのは、それだけ明智良哉の事を信頼…いや、信用していたのだろう。あの戦いを見ていなければ、私も信じたのかも知れない。いや、それだけならば此処までの失態は犯さないか。

どんなに激昂しようが、憎悪を滾らせようが、心のどこかでソレを冷静に見る事ができ判断を下せるのがヴィータの強みだ。過去も現在もそうだった。ヴィータの判断を誤らせたのは…

「迷いか…」

「っ!?」

ビクリとヴィータが一瞬震える

「話してみろ、ソレを聞くのも私の役割だ」

「………」

下を向き沈黙するヴィータを見ながら思う。今の私はシグマムで在りながらシグナムリアなのだと。ヴィータのこの姿には覚えがある。その記憶が有る事から私も…シグナムリアも口で何と言おうとも義母としてこの少女を愛していた事に気づく。

勿論、シグナムとしての私もこの少女の事を大切に思っている。大切な仲間であり、今は家族だ。

「…シグナム、今日はもう止めましょう? 夜ももう遅いしはやてちゃんもヴィータちゃんが居ない事に気づくかもしれないわ。」

「そうだな、ヴィータ明日の朝から時間は開けておけ…」

私はそう言うと自室に戻る事にした。正直な所、ヴィータの迷いの原因には心当たりが有る。恐らくは…

「罪悪感…か。コレは仕方が無いのかもしれんな…」

私はそう呟き目を閉じる事にした。

未だにシグナムリアの記憶は完全ではない。空白部分が有る。ソレは…あの方の願いの成就の為には必要な事だ。

(主はやて…お許しください。私は…あの方のこの願いだけは叶えて差し上げたいのです)







リビングに残っている三人は動く事が出来なかった。

勿論、これから横に成ると言うのは決定しているが俯いたままのヴィータを放ってはおけない。シャマルもザフィーラもヴィータの失態には気づいている。だが…ソレを咎める事は出来なかった。

シャマルは思う。ヴィータが本当に裏切られたと思わされ敵と宣言したと告げた時に彼女は本当に強い子なのだと思った。
一方的かも知れない、それでも友と思っていた人物に敵と宣言し行動した事は守護騎士として当たり前の事だ。だが、実際にソレを出来るかどうかと問われれば大半のモノが躊躇するし、最後の最後で情に流されると言う可能性もある。

彼女は裏切られた瞬間も守護騎士であり、今も主の為に守護騎士で在り続けている。

だからこそ、シグナムの目を見た時に違和感を感じた。

優しい目だった。何かを懐かしむ様な眼でも在った。ソレは何故なのか?

(シグナムはヴィータちゃんが迷った原因を知っている? でも…そんな…まさか)

自分達はプログラムだ。オリジナル…元に成った者は存在するがソレの記憶を持っていると言われれば否としか答え様が無い。

理由として守護騎士プログラムと魔法生命体と言う事が上げられる。

プログラムとして自分達は主を護らなくてはならない。主の命令は主の緊急時以外は第一優先事項だ。

魔法生命体…正確には疑似魔法生命体。魔法生命体とは少し違う。魔法生命体は文字通り魔法に因って創造された生物の総称だ。ソレの一般的な例として魔法生命体はその体から魔力が無くなれば死ぬ。消滅と言っても良い。

今では魔法を使う生物にも当てはめられている様だが、私達が作られた時はそうだった。

ハッキリ言ってしまえば殺されない限り存在する自分達に、オリジナル…人間の記憶は重すぎるのだ。だからこそ、私達は基本的に主が変わる度に記憶を記録にして感情を出来るだけ初期化される様に成っている。

その筈の私達に、私達の元を知る術は無い。

なのに…シグナムのあの眼差しは…

(ダメね…今はその事よりもヴィータちゃんを…)




ザフィーラはただヴィータを見て居た。彼はヴィータの失態を責めようとは思わない。なぜならば、たとえ明智良哉が責めてきても時間を稼ぐ事は出来ると確信しているからだ。
そう長い時間は無理かもしれないが、仲間が到着するまでの時間なら稼げるという自信がある。

仲間を信頼しているし信用している。だからこ、ザフィーラは何もしない。ヴィータの強さを知っているし、信用している。何よりも此処にはシャマルが居て、先程のシグナムの発言も有る。

ザフィーラは思う。皆、変わったと。ソレを嬉しく思う自分も既に変わってるという自覚が有った。この世界が平和だからなのかもしれない。






シャマルがヴィータに声を掛けようとした時、ヴィータはポソリと吐いた

「悔しかったんだ…」

「ヴィータちゃん?」

ポタリと床に水滴が落ちる。シャマルは驚きに身を固めた。

あのヴィータが、鉄槌の騎士が涙を流しているのだ。仲間の前で涙を流し心の内に在るモノを吐きだしているのだ

「どうしてだ?」

ザフィーラの言葉にヴィータは首を振りながら

「わからねぇ」

と、短く言った

「…そうか」

ザフィーラそう答えながらも、考える。自身の胸の内を語る仲間に対して何かしてやれる事は無いかと考える。

「でっかい屋敷が見えたんだ…本当にでかいんだ。あの屋敷にはさ…家族と沢山の使用人が住んでるんだよ…そう考えるのが普通だよな。屋敷の管理とかイロイロあるから…」

「そう、そんなに大きかったの」

シャマルはソファーに座り、ポンポンと自分の隣りを叩く。ヴィータは素直に其処に座った。

「うん…でさ、思ったんだ。あの屋敷に住んでる奴は恵まれてるんだって…もしかしたら違うのかもしれないけどさ…でもそうなんだろうって思ったらさ」

「思ったら?」

「…ムカついたんだ。悔しくなったんだ…胸の奥が痛いんだよ…それが、情けなくて…悔しくて」

「…そう」

「アタシは…アタシ達は恵まれてるんだ。はやてが主なんだ、温かい家が有るんだ、仲間が居て美味い飯も食べれてるんだ!! でもよ…でもよぉ」

それは誰に対してのモノか、シャマルもザフィーラも解らなかった

「すっげぇ痛いんだよぉ…胸の奥が痛くて痛くてぇ!!」

「うん、うん」

「訳がっ…解らないんだよ…知らない奴らが笑ってて…其処も負けない位に温かくて…沢山の仲間が居て…頭の中がごちゃごちゃでぇっ!!」

嗚咽が混じり始め、シャマルは誰にも気づかれない様に防音結界を張る。

「そんな時にっ…アイツが来て…功績が欲しいって、嗤って…ソレを見抜けなかったのが、悔しくて…でも」

「でも?」

「シグナムの言葉で…間違いが解って…悔しいのに、嬉しくて…」

あぁそうか、この子は

「もうっ、自分が解らねぇんだよ!!」

明智良哉が自分を裏切っていない事に気が付いて、嬉しくてどうしたらいいのか解らないのね。そして、なんでそんな事をしたのかが解らなくて戸惑っているのね。

(本当に…変わったわ)

「大丈夫よヴィータちゃん。シグナムなら答えてくれるわ、今は眠りなさい」

私はそう言い、ヴィータちゃんに魔法を掛ける。少しだけ罪悪感が沸いた。

「…良いのか?」

「これで良いのよ。私は湖の騎士。ヴォルケンリッターの参謀で、今はお姉さん役なんだもの」

「…そうか」

夜は更けて行く。月が沈み、太陽が昇る。ソレと同じように、この子も迷いから抜け出せるように願う。

(何も聞かないし詮索もしないわ…だから、ヴィータちゃんを導いてあげてね。シグナム)






チチチと、小鳥の囀りが聞こえる肌寒い朝。月村すずかはベットの中で目を覚ました。少しボーっとする頭を左右に軽く振る、カーテンの隙間から洩れた日の光に少しだけ目を細める。

「………起きなきゃ」

そう言いつつも体は寝る事を訴える。夜、寝るのが遅すぎたのだ。考えれば考える程深みに嵌ってしまう。まるで底なし沼に落ちてしまった様だ。だが、それよりも重大な事に昨日の夜。正確には今日の午前中に理解してしまった。

「…見られちゃった」

カァーっと顔が熱くなる。鏡で見たら耳の先まで真っ赤に成ってるいる事だろう。

「どんな、顔して合えば良いのぉ…」

月村すずかの朝は悩む事から始まった。






そんな事に興味の欠片もない明智良哉は、既に月村邸に居なかった。
少々…いや、かなり運転手がメイド服というのが似合わない黒塗りのバンに高町恭也と乗っていた。お互い無言だが嫌な空気は流れない、重苦しい雰囲気も無ければ、堅苦しいと思わせる様子も無かった。

お互いがリラックスした状態がコレなのだ。

元々、高町恭也は無愛想で寡黙のくせして近しい人間をからかうという事をする人間で。

明智良哉は繰り返しの影響か、元からそうだったのか、無愛想で寡黙、必要の無いモノには無関心という人間である。

運転しているファリンは思う。

(期待した私が間違いでした~)

心の叫びは誰にも届かない。

だが、この何の音も無い…車のエンジン音、風邪を切る音、対向車や後ろを走る車が時折大音量で音楽を流しているのでその音しか聞こえない状態で既に二時間程走っている。
気が狂いそうだとファリンは思うも、方や主人であるすずかの義兄(決定事項)。方や主人が気にしまくっている異性。

(失礼な事は言えません!! でも、誰か助けてくださ~い!!)

板ばさみである。

そんな中、何か癒しは無いモノかと考えるも、自分を含め持ってきているモノは幾許かの金銭と弁当と飲み物。それと着替えである。

癒しなど欠片も無い。食べる事は好きだが別に食べなくても生きていける存在な自分が何となしに腹立たしい。等と全く関係ない事を考えないとやっていられない現状なのだ。

何か話題になる様な事柄が有れば良いのだが…既に試して撃沈した後である。三十分程前に「それにしても恭也様、怪我の治りが早くて良かったですね。明智様も良かったです」と話を振ったのだ。

変えてっ来た答えは

「あぁ、イレインの時に比べれば…いや、比べる事も無いか。忍のお陰だよ。なぁ、良哉?」

「えぇ、俺もすずかと久遠のお陰で生きながらえました。感謝しています。でも…」

「余り頼りたくはない…って所だろ?」

「はい。危機感知能力の低下繋がる可能性も有りますし…血の影響が残っている時とそうでない時の能力に差が出る様なので…恭也さんもでしょう?」

「あぁ、同感だ。だからこそ…」

「「次はもっと巧くやる」」

「だな」

「ですね」

会話時間は五分も無かった…

(すずかちゃん…私、挫けそうです)

車は既に他県に入り、余り舗装されていない山道に入った。





その頃、高町なのはは算数の授業中だった。

特に突出した出来事は無かったが、今日は少し気に成る事があった。それは…

「………ぅぅ~」

「………はふぅ」

「………」(ソワソワ)

落ち着かない月村すずかの事である。今までで一度も見た事が無いくらいに落ち着きが無い。突然顔を赤らめたり、濡れた瞳で物憂げにタメ息を付いたり、時計をチラチラ見ながらソワソワしてたり・・・

(な、何が有ったんだろう?)

最後の様子だけを見ればトイレかな? と思えなくも無いが、前の行動の二つがソレは無いと言っている様なモノだ。授業を聞きながら首を捻るも、思い当たるモノが無い。
なんだかんだで、自分も悩んでいる事は有るのだ。もしかしたら、そういう時に見逃したのかも知れない。普段なら絶対にしないが、ポケットに入れてある携帯をそっと取り出しメールを打つ。
勿論、近くのクラスメート(女子)に折り畳んだメモ紙を「アリサちゃんに渡して」と小声で頼みながら渡してからだ。

『すずかちゃん、何か有ったのかな?』

自分と同じく親友であるアリサ・バニングスなら、何か知っているのではないかと思ったからの行動だった。

『さぁ? 私が聞きたいくらいよ。なのはは何か知らないの?』

どうやら、親友も心当たりが無いらしい。

『解らないからメールしたんだよ~。何か困った事でもあるのかな?』

『どうなんだろう? でも…何かアヤシイわね。』

そうだ。何か妖しいのだ。そこで閃く、思えば最近月村邸で遊んでいないし姉である忍にも会いたいしお泊り状態の兄にも会いたい。。

『アリサちゃん、明日すずかちゃんの家に遊びに行かない?』

『そうね、明日は何も無いし…すずかが大丈夫ならそうしましょう。』



高町なのはとアリサ・バニングスがそう決めた頃、高町なのはが会いたいと思った兄。高町恭也はファリンと明智良哉を後ろに山道を歩いていた。
舗装されていない道、特に今歩いている様な道は獣道と呼ばれ人が進むには歩き難い。それでも、一切の疲れを見せずにいるこの三人は異常なのだろう。一人は自動人形なので当たり前かもしれない、高町恭也は日頃から鍛えているし恭也の事を知る人間は「あぁ、恭也ならできるだろ」という具合に納得してしまう。

傍から見て異端なのは十歳の子供、明智良哉だ。

子供には辛すぎる道を難なく歩いている。高町恭也ならこう言うだろう。

「朝のランニングは体力の向上が目的だが、それ以外にも走りながら休むと言う術を体得する為のモノだ。」

ファリンなら当たり前の様にこう言う

「? すずかちゃんが多量の血を贈られているんですよ?」

そのどちらも正解なので、周囲の事情を知る者なら納得は出来る。

高町恭也は先頭に立ち藪や木の枝等を排除しながら黙々と進み、目的地の場所まで後少しと言う所で思いついた。

「良哉」

「なんですか? 」

「其処に川が流れているだろ?」

恭也の指さす方を見れば、確かに小さな川が有る。川と呼ぶには少々小さすぎる様にも思えるも、そう呼ばれればそうと納得出来るくらいのモノが有る。

「この先に水が湧き、小さな池に成っている場所が有る。其処が目的地だ。」

「?」

恭也の言いたい事が解らない明智良哉は首を捻る。

「其処まで走るぞ」

「了解」

そんな二人の会話にファリンが嘆いた。

「私もですか?」

しかし二人は既に走りだしていた

「あ、待ってくださーい!!」

妹の知らない所で兄は楽しく過ごしていた。




緑以外には特に見るべきモノもない世界で、少女が大の字で横に成っていた。正確には横にさせられていた。動こうにも疲れ果てて動けない。事の始まりは昨夜の事だ。原因は自分なので文句は無い。

「ば、化け物かよ…」

切れ切れの呼吸、張り裂けんばかり鼓動を刻む心臓、熱い体、時折吹く風が心地よかった。

朝になったら時間を作れと言っていたシグナムの言葉に従い時間を作ってみれば、シグナムが取った最初の行動は鋭い打ち下ろしだった。咄嗟の事だったが対応出来た自分を褒めてやりたい位だった。
文句を言おうにも、次々と繰り出される斬檄に口を開く事が出来なかった。結局、シールドを破壊され、打ち下ろしがフェイクだと気づけづにアイゼンを掴まれ、そのまま炎に包まれるまで…自分が一度負けるまでは何も出来なかったし言えなかった。

自分が口を開こうとしたら

「それで? スッキリしたか?」

と、言われ混乱した。そんな事出来る訳が無い。いきなり攻撃され負かされてスッキリ出来る人間が居るのなら見てみたいぐらいだ。

「出来る訳ねぇだろ!! お前は一体何がしたいんだよ!!」

アタシが怒るのは当然だと思う。

「何、意地っ張りのお前の事だ。素直に何かを話すとは思えん。」

真顔で言いやがった。その事に激昂しそうになるが、確かにと思う自分も居るので「ぅっ」と詰まってしまった所で、再び斬檄が繰り出された。
その後も、アタシがやられては休憩、やられては休憩の繰り返し、最初に負けてから五回ほど負けてこうやって寝転がっている。シグナムは昼飯を調達しに言った。

「…あいつ、料理とか出来たっけか?」

ポツリと言うと言葉は風に吹かれて何処かに消えた。誰も居ないと言う事に気付いたが寂しいとは思わなかった。負けに負けて負け越して、悔しさとかそんなモノさえ負かされた。どうやらこうも負け続けてしまうと清々しい気持ち成れる様だ。

「シグナムの言った事も強ち間違えじゃねぇみてぇだ。」

清々しい、馬鹿らしいく成るぐらいに清々しい。心に風が吹いた、温かい…とても温かく涼しい春風が吹いた様だった。どうでも良い。そう、どうでも良いのだ。明智良哉は自分を裏切ったと言う訳では無いのかもしれない。でも、敵だ。たぶん、それは偽りようの無い事なんだと割り切った。
敵でもアイツは友達だ。向こうは違うかもしれない、少し悲しいが仕方が無い。打ち負かして全部が終わった後でまた始めればいい。それだけの事なのだ。まぁ、昨日あった自分の恥ずかしい姿は全部アイツの所為だからちょっと強めに叩くけど…

「あー……シャマルには恥ずかしい所みられたなぁ」

「なんだ? 泣きっ面でも見せたのか?」

コイツは、唐突すぎる…






ふむ…打ち負かし続けて素直にさせようと荒療治をしたが、私の取り越し苦労だったようだ。流石に昔とはもう違うらしい。そう考えてしまうのは、私が本来の役割を…いや、未だにシグナムリアの記憶を完全なモノにした訳でもないのに早計か…
まぁ、今回の事は自身が何処まで動けるかの確認も兼ねての事なので終わりが良ければソレで良い。全くもって…この義娘は変わらない。その事を嬉しく思う。出来れば遥か昔のあの時代で…私より生き、孫でも見せてくれれば文句は無かったのだがな…

仕方がないか、この子もあの方も…あの者達も生まれた時代が悪かった。そうとしか言いようが無い。

「うっせ!! 泣いてなんかねぇ!!」

今、この子のこんな姿を見れるだけ恵まれているのかもしれないな。私は…

「はぁ…それは肯定している様なものだ。お前はもう少し…いや、戦闘以外でもポーカーフェイスを身につけろ」

「っ…それより、飯はどうしたんだよ?」

「魚を焼いている。寄生虫の心配もない、後は塩を振るぐらいだ。行くぞ泣き虫」

「だから泣いてねぇ!!」

僅かに表情が崩れるのを自覚する。まぁ、見られていないのでどうでも良い事だ。あの様子かして割り切った様だしな…後はあの子しだいか

私は地面に腰を下ろし焚き木の近くに刺していた魚を取ると塩を振って再び焚き木の近くに刺しなおす。ヴィータはソレを珍しそうに見ている。こうして見るとやはりこの子はまだ子供だと思ってしまう。外見年齢に中身が引っ張られているだけかもしれないが…

パチッと火の粉が舞う。コレが夜なら主はやても楽しめるだろう。あの様子からしてキャンプ等の経験は無い様だ。海水浴や紅葉狩りというのも有ったか、あの子には多くの経験を積ませて上げたい。
これ位の当たり前の幸福が欠けているのだ、あの子には…保護者と成っている者には憤りを覚えない日は無い。両親も心許せる友すら居なかったのだ、あの少女は一人だったのだ。主が言うには外国人だと言う事らしい、近々シャマルに調べさせてみようどのような人物かも気に成るしな。

「なぁ」

「どうした、ヴィータ?」

「もう食って良いか」

魚を見るからには食べても問題は無い程度には火が通っている様だ。出来ればもう少し焼いた方が良いのだが…

「熱いから気をつけろ」

「解ってるって、腹が減って堪らないんだよアタシは!!」

そう言うと魚にがっついていくヴィータ。はぁ、もう少し淑女としての礼節を教えるべきだったのだろうか…私が言えたものでもないが
まぁ良い。そろそろ本題に入るか

「食べながらで良いから聞け、ヴィータ」

「ふぁ? ふぇふふぃふぃいけふぉ?」

本当に淑女としての礼節をもっと教えておけば良かった…!!

「…私はシグナムであってシグナムでは無い」

「ムグムグ…っンク…何言ってんだ?」

「私は剣の騎士、烈火の将シグナムではない。正確にはそうであってそうでない。」

「…そりゃそうだろ。アタシ達はブッチャケプログラム…疑似魔法生命体。今じゃ魔法生命体って呼ばれる奴だ。当然、メチャクチャ昔にアタシ達の元に成ったオリジナルが居るだろ?」

それも正しいんだがな

「なら、言いかえる。オリジナルの記憶は有るか?」

「はぁ?! 有る訳ねぇだろそんなもん!! そんなのが在ったら…アレだ…ええっと…面倒な事になるだろ?」

ふむ、それくらいの事は知っていて当然か…

「そうだな、普通ならそうだ。なら聞くが…私達の記憶に、記録でも良い。蒐集が終わった後の事を覚えて居るか?」

「何言ってんだよシグナム、そんなの当然…当然…おい…いや、まてシグナム。もうちょっとで思い出すから少し待ってくれ」

やはりか…

「もういい、思い出そうとする限り無駄だ。」

「何がだよ!!」

「一時間は掛かるぞ? 私が試してそうだったからな…それもハッキリ思い出せるのは三十以上前だぞ? それ以降はどんどんオボロゲに成って行き、思い出せなくなっている。」

「……マジかよ」

「本当だ。だからこそ、私がお前と組んで出ずっぱりに成っているんだ。」

実際の所、私もシグナムリアとしての夢を見るまでは気づかなかった。夢の原因を探ろうと記憶と記録を遡っていたら…と言う訳だ。しかもその思い出した記憶も虫食い状態このような状況で蒐集をし続けるのにも限界がある。

だからこそ、私はヴィータにだけは伝えておかなければならない

「覚えておいてくれ。常に疑う事を忘れるな、最悪を想定するんだ。本来ならシャマルの仕事だがな…アイツは参謀だ故に気付けない事も出てくる。」

「解った…けど、どうする? 」

「今まで通りにするしかないだろう。最悪、我等のプログラムが狂っているのかもしれん。それに、闇の書は基本ストレージだインテリジェントと違い主に危害を加えると言う意思すらない。問題は管理人格だが…もしもの時は我等で管理人格を一度消し、復元するしかないな」

「……それしかねぇのか?」

「あぁ、ソレしかない。だがこれだけは言える、管理局には頼れない。」

奴らは情報を調べるだけ調べてからアルカンシェルを使用する可能性が高い。

「儘ならねぇな」

「…そうだな。明智の問題も有るしな。ヴィータ」

「迷わねぇし引く気もねぇ!! 全部終わってからまた始めるさ、後悔はしたくないから…それに、今思えば直ぐに解ったんだよなぁ、アイツの嗤い方は作りモノだった事くらい」

「なら良い。もしもだが…どうしても力が欲しいと心の底から思う時が在ったら…」

「在ったら?」

「何、私を頼れ。」

「そ、そんな事に成る事がねぇよ!! ほら、さっさと行くぞシグナム!!」

私達は少し休んだ後、僅かばかりの蒐集を行った。ヴィータには言って居ないが無駄だろう。今話した事が徐々に記憶から無くなっていく様に成っている事など…
私は目覚めた。故に保って居られる。全ては…主はやての心の強さが鍵か…

(遥か過去の誓い…今回で果されるのだろうか…)










シグナム、ヴィータが会話に上げた明智良哉は息を切らせる事も無く、少々痛んでいる小屋に入った。勿論、隣には高町恭也が正座で座っておりファリンは小屋の外で待機中である。目の前に胡坐を掻いて座っている老人とは思えない鍛え上げられた体を持つ老人はそんな二人を見た後で顎髭を触りながら一言問うた。

「…刀とは、何だ?」

それだけ言うと小屋の奥に引っ込んで行った。その姿を見ながら苦笑を浮かべ恭也さんが言う。

「お前なりの価値観…ソレがどういうモノなのかをそのまま話せば良い。まぁ、ソレしだいでお前の望みは叶わなくなるがな。心配するな正解など無い様なモノだ。俺も暫く外に出て居よう…終わったら教えてくれ。」

そう言うと恭也さんは音も立てずに外に出て行った。

考える。

刀とは何か?

斬る為の道具だ。

しかし、それは答えなのだろうか? 考えてみれば斧でも槍でも斬る事が出来る。刀でも突く事が出来る。

考えを少し戻す。刀とは何か?

凶器だ。コレは間違いが無い。刀とは力の一つだ。二・三人斬れば刃毀れを起こすが問題はない位に洗礼された凶器。だが、それも違うのかもしれない。刀には美術品という側面もある。

少し考え方を変えよう。刀とは何か?

道具だ。これこそ間違いが無い。美術品も道具の一つ、凶器も道具の一つ。

これを否定されたらそれこそ何だと言いたい。結局は人それぞれの価値観からの答えでしかないのだから、絶対と言えるモノは無いのかもしれない。

いや、待てよ。人に因っては刀とは誇りで在ったり、魂で在ったりする。昔の侍等がそう答えるかも知れない。あの老人に取っては此方の方が好みの答えかもしれない。

「…待てよ。そもそも刀とは何だ? と言う質問に意味が在るのか? 」

考えれば考える程解らなくなる。刀とは所詮、鉄の塊だ。細かい所は違うのだろうが似た様なものだろう。ソレに求めるのは斬ると言う役割? …違うか斬るのは人だ、刀の持ち手の取る行動でしかない。
刀に求められるのは…鋭さなのだろう。

…やはり刀とはどう考えても道具としか答えが出ない。まぁ良い。今回の事で刀を打つ所を見れなくとも、刀鍛冶は探せば居るだろうし…サーチャーで盗み見するという手も有る。面と向かって頼んだのは誠意を見せる為でもあったし、コレが駄目なら覗くぐらいしか手が無い。

そう考え、小屋の奥へと向かう。木で出来た簡単な作りの戸は少し歪んでいて開けにくかった。

結果を言ってしまえば合格出来た様だ。現在、俺は老人…鉄人(てつひと)さんの鍛冶姿を見学している。恭也さんやファリンさんは小屋で寝て居るだろう。月も傾き、外は静かで俺には時折吹く風に揺れる木の音と鉄を打つ音、火の子の撥ねる音、水が蒸発する音しか聞こえない。

シュベルト・クロイツもただ見ているだけだ。録画や解析も行っているがそれ程負担に成る作業でも無い。カン!! と鉄を打つ度に何故だろうか? 心が弾む。ただ無性にその鉄を鍛える作業が素晴らしモノに見える。鉄を打つ老人の体は火に照らされ、実年齢よりも若く見える。その背は大きく見え、仕事が仕事だからだろうか逞しくまるで父の背中を見ている様な気にさせてくれる。

(馬鹿みたいだな…顔も知らない人と重ねるなんて…)

鉄火場の夜はまだ開けそうにない。ふと、クロノさんに会いたくなった。自分が思っていた以上に頼りにしている様だ。









そんな風に頼られてるとは思っても居なかったクロノは仕事に忙殺されていた。

「エイミィ次のを頼む。」

「クロノ君、そろそろ休憩を入れないと倒れちゃうよ!!」

「これ以上書類を溜める方が悪循環を招く。唯でさえ、地球に行く途中での犯人の現行犯逮捕にその裏を取ったりで本局に二日は居なくてはならないんだぞ? それに、リンカーコア保有生物の謎の衰弱…嫌な予感しかしないんだ。幾ら君が有能な補佐官でも、今の情報を纏めるのには時間が掛かるだろ」

「それは…そうだけど…」

何時もより強いクロノの言葉にエイミィはシュンとする。その姿を見たアルフがポンポンと肩を叩き、何も言わずにエイミィを引っ張る。

「ちょっ、あ、アルフ?」

「今のクロノに何言っても無駄だと思うよ?」

「それはそうかもだけど…アレ以上根を詰めると倒れちゃうよ。」

その気弱な一面を見てアルフは驚くも、笑みを見せながら言った。

(そっか…クロノと良哉はそう言う所が似てるんだ。)

「大丈夫だよ。ユーノも手伝ってるみたいだし、こう言っちゃなんだけどマーガスも頑張ってるんだろ? それに…」

「それに?」

「クロノと良哉は似てるんだよ。その内変なミスをするに決まってるさ。そこで説得した方がいいよ。」

「?」

「あの二人は似てるって事さ。良哉の奴なんか銭湯で…」

そうやって必死に話しかけ励ますアルフの姿にエイミィも次第に元気を取り戻していく。

結局、睡眠不足がたたり持ちあげたアツアツの珈琲入りのコップを自分の足に落とし転げまわるクロノを説得し寝かしつけると言う事をエイミィがする事に成るのは今から6時間後の事であった。

ちなみに、協力をしていたユーノがその姿を見て「ざまぁ」と嗤ったのは何時もの事でその後、エイミィに甲斐甲斐しく世話される姿をみて

「君もいい加減にしたらクロノ?」

とちょっとだけ心配した。



あとがき

やーすみが欲しい!! 仕事を辞めたい!! ニートになり…たくはないな…
どうも、BINです。イベント事sリーダーをしろだってさ。辞表の書き方誰かおしえてくれないかなぁ~

上司とのみに言った。娘自慢が煩かった。取りあえずウサビッチのDVDを1~3貸してみた。

上司娘「びっち、びっち!!」

俺「ポカーン」   ←今ここ

それとですが、作者が思う古代ベルカはまぁ、昔のアメリカ見たいな状況だったというのが構想の中にあります。ぶっちゃけ植民地。世界丸ごとだから植民世界か?
アレです、次元間航空技術を持っていて科学技術、魔法技術もそれなりに発達していた次元世界に征服された元・管理外世界の一つ。
で、ベルカ設立は初代聖王が反乱を起こし勝ち取ったと…てな感じです。実際はそれより前から反乱というか、独立運動はあったというせっていですが。その後のベルカも侵略と技術の吸収を行っていき…崩壊と言った感じのモノを設定しています。故にオリ設定が満載と・・
大丈夫かなぁ?

ちなみに、急激に発展した時期も有り、王政であったため王位継承権で揉めたり内乱が多発したり、人体実験も行われていたり、他の次元世界からの侵攻が有ったり、侵攻したりと主人公代替わりでの戦記物書けるんじゃね? って言うくらいの妄想をしておりまする。
テンプレ見たいに王族が居て貴族が居て庶民が居て奴隷がいる。見たいな世界観。
騎士は貴族から上級騎士とか、平民から下級騎士とか。んでもって下級騎士も何かしらの功を立てれば上級騎士になれたり成れなかったり? 身分違いの恋愛が有ったり無かったり?
聖王っていうのは最初にベルカを支配していた次元世界の技術で造られた人造人間だったり?とか

まぁ、ごちゃごちゃしています。

仕方が無いですね。作者が永遠の厨二病ですから。

ちなみにですが、パソコンを新調してから『なのは』を一発変換すると名の覇と出る様になりました。
アルフと入れると啞琉婦とでます。呪われているのだろうか?
フェイトはフェイトと出るのに…

何時か…古代ベルカ編とかやるのも面白いかもね




いつもの!!!



ヴィータ
なにやらふっきれた様子。
良哉とは友達?
最初から敵と認識され今まで自分に対して行ってくれてた行為が打算に塗れて居たと思いブチ切れるも良哉のヘタな芝居に気づき持ち直す。
バグに気づくも忘れてしまう設定。

「敵でもアイツは友達だ!!」


シグナム

元の人(シグナムリア)の記憶が蘇る。なかなかに因縁が在るらしい。
元の人はヴィータの義母だったよう。全部オリ設定。
肉体言語が得意

「悩む前に行動しろ。後悔するのは動いてからだ」


高町恭也

寡黙な人間。良哉と二人だと周りの人間に迷惑
膝完治に浮かれて良哉を小屋に残した後、全力で山を駆け回る
後で忍に怒られる

ファリン

すずかの従者。自動人形。ドジっ子。メイド。
今回の苦労人。後で良哉が怒られる。さくらに

「すずかちゃーん!! 私の心が折れそうですぅ(泣き)」



クロノ・ハラオウン

意外と頼りにされている模様。
ワーカーホリック? 
エイミィにイロイロ心配掛けている。
地球に行く途中、次元犯罪者を逮捕。どうやら大物と繋がっている様子。

「早く地球に行きたいと言うのに!!」

と、思いながら仕事をやっつけている。



フェイト・テスタロッサ

どうやら、今回も次元犯罪者を捕まえるのに協力したらしい。周りからの評価も良い。
今回の事件では、殺傷設定で攻撃するクロノに驚くもその後の説明に頷く。
また少し大人に成った?
現在、手製の良哉人形を抱いて寝ている。

「にゅふふ…ん~」

ダラシナイ顔でギュッと人形を抱きしめる姿にリンディが癒されたのは当然の事であった。



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