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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] ループのA'sの一
Name: BIN◆5caaab55 ID:784a3ac9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/20 23:55

注意!!

オリジナル設定がありまする…良いですね? ありまする。

付き合えないと感じる方はブラウザの戻るをクリックしてください。

それ以降は自己責任という事で・・・・






OK?







それではどうぞ↓



























さてと、と月村忍は自身の研究室と言っている地下のとある一室で試験管を手に取った。毒では無い。ただ、栄養素が高すぎるだけの代物なのだ。味もほぼ無く、作るのも機材と材料が有れば簡単に作れる。

材料費も安いとは言えないが高くも無い。だが、これだけでは物足りない。あの少年には何とか一泡吹かせたい。気に入らないという訳では無い。
ただ、自分よりも大人びていると過去の自分と似ているくせに、過去の自分よりも大人びているあの少年の態度がなんとなく癪なだけだ。

勿論、この試験管の中身は月村忍が作らなくてはならない義務なのだ。昨日、突然目を覚ました少年の異常の無い状態が異常なのだと綺堂さくらが自分に語った。
ソレには同意する。もしかしたら『一族』の血と相性が良かったのかもしれない。そんな考えも有ったが、起きたのならば検査をしなければならない。

それで、判明したのが…栄養の問題だ。簡単な話、彼の体は物凄く燃費が悪いモノに成っていた。エネルギー消費量が人の倍以上なのだ。
これまで通りに恭也と訓練をしていたら体に蓄えているエネルギーを全部使ったとしても、三日で栄養失調を起こして倒れて居ただろう。体が勝手にエネルギー消費量を少なくしようとしたかもしれないが…

彼自身が行う訓練ならば、速くて一週間、持って十日と言った所だ。勿論、普通に三食食べ一人で行う些細な筋トレだけならばの話しだが…それでも、これに気づけたのが速くて良かった。もしかしたら、手遅れに成っていたのかも知れない。

明智良哉は確かに人間なのだろう。間違いなく純粋な人間なのだろう。だからこそ、此処まで影響が出てしまう。いや…過剰な拒否反応が出ているのだろう。もしかしたら、この過剰な拒否反応が彼の内面を表しているのかもしれない。

だが、過剰な程に拒否をしているくせにソレを受け止めて居られるのはなぜなのだろうか? 久遠の影響はどちらかと言えば拒否反応が出ていると言って良い。明智良哉と久遠が『契った』箇所は確実に明智良哉本来の細胞を別のモノ変えて行こうとしている。

肉体と言う物理面からではなく、もっと複雑かつ単純な場所からじわじわと毒の様に変えて行こうとしている。だが、未だに彼の体は『契った右腕』以外は人間のモノだ。久遠がその影響を抑えているのかと考えもしたが、ソレは抑えられるモノでは無いと綺堂さくらや久遠自身が言う。

ならば、どういう事だ? 

答えは余り認めたく無いモノだ。明智良哉という存在・魂・精神が久遠という妖孤と拮抗している。又は若干上回っている。そうとしか考えられない。そう考えると次から次にと考えが浮かんでくる。

明智良哉の『夜の一族』の『血』に対する拒絶反応は、その血を排除、またはそんなモノを必要としない体に成る為の抵抗なのでは無いのだろうか?
ウィルスに対する免疫を作っているという事ではないだろうか?
否、ソレは有り得る事なのだろうか?

明智良哉の霊力は一般人と何ら変わりはない。それは断言できる。その道の専門家とも言って良い存在がそう断言するのだ。秘められた力という線も無い。

月村忍は浮かんだ考えに首を振りながら自嘲するように言う


「進化?…ふざけるんじゃないわよ」


幾百、幾千、幾万の時間を掛けて行う命の神秘を、命に備わる世代を超える肉体改造を一世代にも満たない時間で行おうとしていると、認める訳にはいかない。それが…その考え自体がドレだけ出鱈目でぶっ飛んでいるか、月村忍は理解しながら吐き捨てる。


「専門の分野じゃないけどねぇ…こんな事を認めて堪るモノですか。徹底的に解析してあげるわ。覚悟しなさい、明智良哉」


その為にも、今は排除はしないで上げる。



「あ~…でも、血液検査をもう一回しないといけないわねぇ。この時間なら…ん~、今からやっちゃいましょう」







所変わり、月村すずかはベットの上で顔を赤らめて居た。今日一日、何かしら暇な時間が出来ると昨晩の光景を思い出してしまう。

血色が良く成り少し赤らんだ肌

色が抜けた髪から垂れた滴

引き締まった肉体

それと…

カァァっと顔が熱くなり、思いだした事を仕舞う為に頭をブンブンと振る。

(あぅ~…怒らせちゃったかなぁ)

どうしようもなく、彼を明智良哉を意識してしまう。これはアレだろうか? もう自分でも解らないくらいに意識しているという事なのだろうかとすずかは考え…考え…明智良哉の裸を思い出して顔を赤らめる。


「私…今、物凄くはしたない子だよぉ」


第三者から言わせて貰えば仕方が無いとしか言いようがない。好意を持っている相手の全裸を事故とはいえ見てしまったとなれば、大人、子供関係無く意識してしまう。
其処で明確に区切りを付けられるかどうかがその違いなのだろうが…ソレを出来る人間は意外と少ない。

夜に思いだし自身を慰める者も居れば、そんな事が有った程度で済ませれる者も居る。仕事中に思いだしミスをしてしまう者だって居るし、暫くは顔を合わせ辛いと思うのが普通の反応だろう。
だが、恋を自覚している乙女はちょっと違うのかもしれない。否、自覚しているからこそ深みに嵌ってしまうのかもしれない。吊り橋効果と似たようなものだと斜に構えている人間は思うかもしれないが、そうではない人間は違う。

だが、月村すずかは重大な事に気が付いていない。

その現場が脱衣所であり、自分が風呂に入る直前であったという事。

風呂には誰も入っていないと思うのが普通で、自分も完全に無防備だったという事。











つまりは、自分も全裸だったという事にすずかはまだ気がついていなかったりする。









自分の妹がそんな悶々とした状態にあるとは一切しらない忍は、自室の部屋の前で聞き耳を立てて居た。忍が此処に居るのは部屋に帰る為なのだが、その前に明智良哉が部屋に居なかったからと言葉が付く。
やる気を出していたのに肩透かしを食らった忍は恋人である高町恭也に甘えようと思っていた。

思っていたのだが…自室から真剣な恋人の声が聞こえるではないか。中に入って邪魔するのも何だかなぁと思い、聞き耳を立てているのが今の状況で有る。
本当ならば、ファラリスが持ち込んだ機材を一から調べると言う考え(暇つぶしとも言う)も浮かんだのだが話し相手が明智良哉だと解り興味が沸く。ファラリスとの関係は良好だ、お互いが研究者というのも関係してか話が合う。実際に話していて十年来の友人と話している様な感じがする。その変わり、ルーダーと明智良哉との関係は何とも言えないモノだ。

ルーダーとは彼の立場と義務も関係しているのだろうがどうしてもソッチの話に成ってしまうし、彼自身が話す事を避けている感じだ。まぁ、お互いに余り干渉せずに今の状態を保って居たいと言うところだろう。そうさせるのは自身達の存在の特質さと自分が異性だという事も関係しているようだ。


「なら……やは…じゃ……と……」

「そう……れ……外だと……柔軟……そ……以上に……というのも……なによりも……るには……ねを使用しないと…」


(良く聞こえないわね)

こんな事なら、防音を余り考えなかった方が良かったかも…と思い。その考えを否定する。


「……何処に…ば…入るで…か」

「知……いに…見よう……する…ない…俺が………これぐらいだ」


(っ~もう!! 肝心な所が聞き取れないじゃない!!)


「盗み聞きは駄目よ? 忍」

「っ!! 」


キュッと耳を抓まれ引きずられる月村忍は、何とか声を出すのを我慢して恨みがましい視線でファラリス・アテンザを見る。ソレをスルーしながらその手に持っていた書類をペチっと忍の額に当てた。忍はその書類に目を通しながら一言言う。


「手が早いわね」

「当然、あの子の為ですもの」


その返事にタメ息を吐くと気を取り直して言いなおす。


「ねぇ…本当に良かったの?」

「何が?」

「技術提供の事」


そう、ファラリス・アテンザは個人の独断で自分の知る技術を月村忍に教えていたのだ。それはなぜか? ファラリスしか解らない。忍も有る程度は予測出来るが、ソレも確かなモノではないし其処までする必要が有るのかも判断できない。勿論、見返りは渡している。金銭、機材、その他色々…。在る意味で、ファラリス・アテンザ一人がこの地球という世界で独立して暮らせる下地を作りだしていた。


「あら? 私、そんな事はしていないわよ? ただ、『お友達と互いの文化の違いについて話し合った』だけですもの。」


女狐…と、思ったが、ソレは自分にも当てはまる所が多々あったので直ぐに撤回する。


「んふふ…人心把握は有る程度は出来るつもり、その人物の性質もそれなりに理解しているつもり、飼っている犬は少ないけど、貸しは多く作ってるの。それにね、」

「それに?」

「一度でも良いから挫折を味わってみると、何事にも全力で当たれるモノなのよ? それが必要だって身を持って知れるからね」


ソレは、途轍もない重さを持って月村忍の頭に残った。






明智良哉は考え直す。何をと問われれば、居合と答えるしかない。簡単に言えば、実物の居合刀ならば真似事は可能だが本物には程遠いと言う事実を確認する為の行為だった。
当たり前だ、幾ら自身の体に合った『型』を見つけ出し知る事が出来たとしても本物に辿り着くまでには長い研鑽が必要となる。

天才の中の天才ならばそんな事は無いのかも知れない。だが、その可能性は零に近い。近過ぎて考えるのも馬鹿らしく成る様な可能性だ。
当たり前だが明智良哉自身がその可能性を持っている訳ではない。だが、真似事は出来る。それは、自分の体を自分が思う通りに動かす事が出来ればの話だ。

ソレにも時間が掛かる。何千、何万、何億と刀を振るい歪みを修正して正しい軌跡を描き続けなければならない。当たり前だが、居合は二の太刀要らず。二度目は無いのだ。
反則を使えば二度目も三度目も存在する。その方法は知っている。知っているがソレを行えるか? と問われれば今は無理だとしか答え様がない。

そもそも、技術が無い。それ以前に、デバイスでは本当に居合を行う為の形態を取る事が不可能だ。今の所、明智良哉が知る限りでは玉鋼以上に刀を作るのに適している鉱物を知らない。
更に言えば、玉鋼が有れば良いと言う訳でもない。それこそ、本当の名刀を知らなければとんでも無い駄作が作られてしまう。

デバイスには、斬る事を求められていない。その本当の役割は杖で在るからだ。

デバイスには、敵を殺す事を求められていない。その本当の役割は魔導士の補助だからだ。

デバイスに求めてはいけない。その形状を正確に果たす機能…役割を持つソレは既にデバイスでは無く凶器なのだ。

デバイスに求めるのは演算能力、処理速度、身を守るための強度。使用者の力に成る機能。相棒としての人格、能力。

殺すのではなく、その結果が何かを殺すと言うモノでもデバイスがするのはその手伝い、導きなのだ。


故に、その能力を付加させてしまえばソレはデバイスでは無く凶器。だが、その凶器は時に心強く、時に必要となり、また邪魔に成る。今は、ソレを望む時。魔力を纏わせれば非殺傷が出来る等とは言わない。言ってはいけない。



デバイスはドレだけ信頼関係を作ろうとも、情を注ごうとも道具なのだ。



ドレだけ人間味に溢れ様とも、その身を砕いてまで主に尽くしたとしてもソレは当たり前の事であり道具ならば当然の事なのだ。この思いはドレだけ取り繕っても変わらない。ソレは恐らく…


「お前も理解しているのだろ?」

『何をですか? 主?』


パチリ、パチリと音を出す右手の中の剣十字が月光を浴びて鈍く光りながら言葉を発する。


「俺と…お前達の根本的な関係だよ」

『我等は主が従僕。唯の剣で在り槍で在り砲で在り盾です。我等は唯、唯一主である貴方様の為に斬り裂き、貫き、打ち砕き、阻みます。我等は主の道具です。』


あぁ、やっぱりお前達は俺には勿体ない位に強い。伽藍の左目が少し寂しく感じた。


『…ラプラスはどうなっているのでしょうか?』

「ファラリスさん次第だな…日が昇る頃に何をやっていたのかと思えば、家に在った物をコッチに運んで来ただけらしいしな。」

『しかし…それでは次元管理法に背くのでは?』

「さて…どうかな? 管理局の法には抜け道が多い、自分達の為にもな。何かしらの考えがあの人にも有るんだろう。」


それが俺の頼み事の為なのだから文句は言えない。

そう思うと、苦笑が出た。夜も遅い時間、もう寝ようと布団を掴むとパチリという音が連続して起こる。これも何とかしないとなぁと思うが、久遠は居ない。正確には家に戻っている。
横に成ると今日、恭也さんと話した事はどうなるだろうかという考えが頭を過った。知り合いに頼むと言っていたが出来ればその先を知りたい。だが、その為に必要なラプラスはメンテナンス中でいつ帰ってくるかも解らない。

と、言うよりは前よりも凄く成っていそうで少し怖い様なそうでない様なドキドキがある。これは、アレだ次の日が遠足と知っているのに中々寝付けない様なそんな感覚だ。



なぜだか無性にアイスが食べたくなった。勿論バニラを





そう考え始めたら止まらなくなる。アイスの一つ二つは此処にも在るだろうが、ソレを求めるのも何だか癪だ。求める位なら、他の事をして居れば良い。
幸いな事に、三時間も寝れば体は動くし頭も働く。夜はもう遅い時間だが、まだまだ長い。学校も塾も習い事も無い身としては昼に寝ても構わない。

窓から外を除けば静かで広い星空と、山の形をした暗い影が見える。今日は月明かりも強い様に感じる。

服を着替え、何時もの位置にデバイスを取り付ける。右腕から物に接触する度にバチバチと音が鳴る。


『主? 』

「散歩だ、敷地内ならうろついても文句は言われない。穏行の訓練と思えばそれもまた楽しいだろう」

『御意に…微弱な魔力反応が近づいていますが?』

「…結界は?」

『張っている様です。』

「数は?」

『一つ』

「俺の将来を優位に働かせるには?」

『捕縛もまた一興かと…しかし』

「強襲には気をつけないとな。剣の騎士は強い。」

『見過ごしますか?』

「…おい」

『冗談です』

「精神的に責めるのも戦い方の一つだ。だろ?」

『…御意。…やはり貴方は最低の部類の人間ですね』

「嫌なら、一人で良いが?」

『それこそ御冗談を。だからこそ、貴方は我等の主なのです。前主クラウンと同じく』

「それこそ、冗談だよ。俺はあんな伝説の化け物じゃない」

『中身が近ければ同じですよ…では行きましょう。マーキングはしていますので何処へでも逃げましょう。遣り逃げが基本です。』


こいつは人の事がいえないくらい、性格が悪いとはじめて思った。








夜も遅い時間、八神家のリビングには明かりが付いていた。ソファーに座りコーヒーを啜りながらシグナムは思う。時間が無いと。
コレはヴォルケンリッター全員の総意だ。時間が無い、足りない。自分達の主である八神はやての意思に反して行っている蒐集だが、効率が悪すぎる。自分達全員が行動すればそうでもないのかもしれない。

だが、自分達全員が動けば目立つ上に主に気づかれる。

何よりも自分が余り動けて居ないとシグナムは考えている。周りから見ればソレは間違いなのだが、本人からしてみれば違う。剣筋、体捌きに違和感が在るのだ。体が思った様に動かない。
さらに、ここ最近は夢見が悪く寝不足気味だ。その夢にも違和感が有る。最初は自分の過去の事を思い出しているのだと考えたが、どうにも違う。

今とは違う主が居る。これは解る。

だが、周りに居る仲間が違う。コレはおかしい。

闇の書には自分達以外の守護騎士は登録されていない。コレは事実であり間違えようの無い事だ。そして、何よりもおかしいのが夢の中の自分の姿だ。今の主より授かった騎士甲冑では無い、元から身につけていた物とも違う。
それよりも豪華で煌びやかな物を纏っているのだ。そして、その姿は老いていた。自分の後ろには着き従う大勢の騎士が整列している。

そして、その自分が膝を折る相手に記憶が無い。透ける様な美しい銀髪に左右の色が違う瞳。

誰だ? この女性は…


「シグナム?」

「っ! すまんシャマル。少し考え事をしていた。」


(今はやめておこう。そんな事よりも…)


「明智の事だったな…それで? 消息は掴めたのか?」


シャマルは首を振りながら言う


「いいえ、影も形も…ザフィーラが匂いを追おうとしたみたいだけど他県へ続いていたらしいわ。荷物を輸送した痕跡があった事には気づけたけど追跡は不可能…明智良哉以外の人間も見つけられなかった。完全にお手上げね。ヴィータちゃんが時々大きい魔力反応を感じるって言ってたけど、それは違うでしょうし…」

「すまんなシグナム。俺がもっと早く気づいていれば…」


そう言い頭をさげるザフィーラ。


「構わん。此方の事は気づかれてはいないだろうしな、本当に他県…遠い所に行ってくれてたのなら幸いだ。少しは警戒レベルを落としても大丈夫だろう。それで…ヴィータは?」

「はやてちゃんと一緒に寝てるわ。ここ最近、貴女やヴィータちゃんは出てたでしょ? はやてちゃんもだけど、きっとヴィータちゃんも寂しかったのよ」

「寂しい…か…」

「ええ、きっと…ね」


プログラムが寂しいか…いや、ヴィータなら仕方が無い。あの頃のヴィータも寂し…


「!?」

「ど、どうしたのシグナム? 急に固まって?」

「い、いや…少しな。」


どうしてだ…なぜ私は…


「…警戒するに越した事はないけど、余り拘り過ぎるのは良くないと思うわ。私やザフィーラでは対一ではキツイ…いえ、負けると思うけど。貴女とヴィータちゃんならそうでも無い訳だし。それに、その可能性を考えて二人一組で動いてるじゃない。」

「そうだな…だが、どうしても警戒してしまう。何かが…そう、私の中の深い所に在る何かが警戒しろと叫んでいるんだ。」


そうだ。あの戦闘を見た時から疼くモノがある。戦闘を見た高揚ではない。確かにソレは在ったが醒めてしまえば異和感に気づく。あの少年には何かが有る。
何かが…私には解らない何かが在るのだ。剣を交えれば解るかも知れない、ソレを知る切欠が手に入るかも知れない。

何よりも、この夢と訳の解らない記憶の正体が、原因が解るかも知れないのだ。




「はぁ、貴女も心配性ね。変わったわよ?」

「それはお前もだろうシャマル。」

「そうね、でもソレを言うなら私達全員よ。貴女はそんなに心配性…と言うか胸の内を言う様な人じゃなかったし、ヴィータちゃんはあんなに可愛い子じゃ無かったわ。私も家事とかには一切の興味も無かったし人と話すのも情報収集ぐらいだったし、ザフィーラに至ってはもっと気を張ってて常にピリピリしてた。まぁ、一番変わったのは貴女だと思うわよ?」


シャマルの言葉にまさかと思った事が口に出た。が、シャマルはクスクスと笑いながら言う


「だってそうでしょう? 昔の…剣の騎士なら、烈火の騎士なら子供に何かを教えるなんて事はしなかったでしょ? 貴女は炎の様に激しく剣の様に冷たかったじゃない?」

「ぐっ…ソレを言うならお前もだろう。昔は常に笑いの仮面を被って相手の腹を探り、相手と談笑しながら事を終える氷の様な奴だった。」

「「………」」




クワァ~~~~



「「日和るなケダモノ!!」」

「……俺は関係ないだろう」


日和ったザフィーラが叩かれた。コレは当然の事だと私は考える。

夜も遅い時間にシャワーを浴びる。そういえば、最近主はやてと風呂に入っていない。その事に罪悪感が込み上げる。込み上げて込み上げて溢れだしそうになる。あの方は私達が今行っている事を知っても許してしまうだろう。その事情をすれば彼女自身が罪悪感に囚われるだろう。
だからこそ、バレてはならない。知ってしまえばあの心優しい少女は罪の意識に苛まれる。

私達はソレを望まない。だが、それ以上に彼女の死を望まない。彼女が死んでしまう様な無慈悲な世界など望まない。我等の主を…自身の不遇を恨みスレてしまっても、自棄にもならないあの優しく強い少女を殺す様な世界など我等が許さない。そのような結末は私が斬り裂いて見せる。

あの少女の、優しき主の未来を掴み取るのだ。我等が何と言われようとも、あの少女に怨まれる事になろうとも


「あの子だけには…幸せに成って貰いたい」


熱めのシャワーが私の言葉を霞ませる。そして…ふと思う。あの少年は今も研鑽しているのだろうかと考える。あの戦闘を見るからに、明智良哉は近接戦闘を主とする魔導士だ。だからこそ戦ってみたいと思う。思うが、其処まで望むモノでは無い。だが、なぜか私はあの少年に拘っている様な気がする。勿論、明智良哉を警戒するのはその周りの人物に管理局員が居るからだ。

在る程度は仕方が無い、仕方が無いが…引っかかる。確かに私は明智良哉を知っている。知っていると言っても友情などが有る訳ではなく、唯の知り合いと言う程度のモノだが…それでも、私はあの少年が危険だと思っている。存在や意思等では無い、行動理念などは知りもしない。会話もそう多くを交わした訳でもない。ヴィータは気にかけて居る様だが私はそうではない。

あの少年の力に興味は在る。どれだけ強くなったかも気に成る。だが、危険性は少ない筈なのだ。だが…危険なのだ。ソレが主はやてに取ってでは無く、私達…否、私にとって…

なぜだかは解らない。解りようも無い、漠然としたこの形にな成らないモノは今の私にとって大変危険なモノに感じるのだ。神経質に成っているのかもしれない、精神的に不安に成っているのかもしれない。私はそう思い直しながら風呂からあがる。

ここ最近は夢の所為で寝不足なのだ。今日こそゆっくりと眠りたい



そんな私の思いは無残にも打ち砕かれた


夢の中に現れた私の主が唯一欲した一人の獣面の騎士によって









酷い、酷い夢をみた。少女は未だに整わない呼吸を繰り返しながら布団から抜け出し、部屋の窓から外に出た。気分が悪い、気持ちが悪いにも程がある。ヴィータはただそう吐いた。

知らない男、知らない女、知らない子供、知らない仲間。

知らない知らない知らないずくし。気持ち悪いにも程がある。否、気持ち悪いどころの騒ぎでは無い。その知らない場所で、知らない世界で自分とは似ても似つかない自分が呵々大笑しながら酒を飲み、自分より大分若い騎士見習いを小突いているのだ。

そんな世界は知らない。そんな自分は知らない。ヴォルケンリッターたる自分に部下等いない、親など居ない。居るのは仲間と愛しい主が唯一人。それだけだ。

それだけで良い筈だ

良い筈なのに…


「…羨ましくなかねぇ」


違う、違う違う違う違う!!


「羨ましくなんかねぇ!!」


親なんていらない。部下なんていらない。

今居る場所はあそこ以上に温かい。仲間が居る、向こうは知らないが友達も居る。はやてが居る

何よりも■■がいる。

あそこには居なかった。あそこでは一緒に居られなかった!!


「?!――っ!! 違ぇ、違ぇ違ぇ違ぇ!! ■■なんて居ねぇ!! あいつは違う!!」


何だ…なんなんだよ!! アタシは…


「アタシは…アタシは」


誰なんだよぉ



降り立って膝を着いた場所は出かい屋敷の見える草原だった。遠目でしか見られない屋敷には明かりが着いて居なかった。その姿を少し寂しく思う。あんなに大きな家だ、大勢の使用人とソレの雇用主、その家族が住んでいるのだろう。

ソレを見ていると、無性に腹が立って来た。

その理由が解らない。今だって幸せなんだ、なんでこんなしょうも無い事を思う。

そんな自分が情けなくて悔しく成った。今の自分は自分じゃない。そう思う。こんなにも情けないのが鉄槌の騎士の筈が無い。在っては成らない。自分は鉄槌の騎士。ヴォルケンリッターの突撃役。全ての壁を打ち崩す破壊鎚だ。

なのに…なんで…

なんでなんだよ…


「…良哉」


なんで、こんなにも惑わすんだよ…


「…知ってたのか…アタシが…魔導士だって」


良哉は顔色一つ、目の色も変えずに言い切った


「えぇ、最初から知っていましたよ? ヴィータさん。」











予想外な事に其処に居たのは鉄槌の騎士だった。いや、偵察に来ていると思えば妥当だと思うが湖の騎士がそんな浅慮な事をさせるとは思っても居なかったから予想外だった。失敗したかもしれない。

これが湖の騎士の策だとしたら、守護獣と剣の騎士か本人が隠れている可能性が高い。


『逃げますか?』


(いや、彼女の状態から見て一人だとは思う……念の為に準備はしておいてくれ)


『御意』

「貴女やシグナム程の高ランク魔術師…と、言うより魔力が有れば感の良い者は気づくでしょう?」

「…嘘だな」


顔を顰めたまま口を開くヴィータさんに、少し安心する。何やら落ち込んでいた…否、葛藤していた様な、迷いに戸惑っていた様な雰囲気だったので直ぐに嘘だとバレる事を言ったのだが、話に乗ってくれた様だ。


「えぇ、そうです。ちょっとした事情で魔力には敏感なんですよ。それで? 今日は一体どうしたんですか? この世界に帰って来てみればお粗末な隠匿結界のみで夜間飛行ですか?」

「っ、別に…今日は機嫌が悪かったんだよ。それとも何か? テメェーはアタシにそんな事を言う為にわざわざ来たのか?」


…相当頭にキている様だ。俺が心を揺さぶる意味が無いくらいにブレて居る様に見える。何が在ったのだろうか? 
まぁ、出来れば此処でドンパチはしたくない。捕縛は完全に無理だな。自分が導いたのならまだしも、勝手に苛立ちブレているベテランを捕縛出来る程、俺は強く無い。


(シュベルト、何時でも転移出来る様にしておいてくれ)


『御意』

「いえいえ、ただここ最近リンカーコアを保有する生物が襲われて…いや、命の心配はないんですが衰弱しているという事件が多発していましてね…」

「はっ!! アタシ達がやったとでも言いてぇのかよ?」


チッ、殺気だってきたな。そろそろ仕掛けてきそうだ


「そんな訳ないでしょ? 証拠は何も無いんですから…でも、少し気に成る事がね。」

「………」


…確か、この人の性格上そろそろ…


「いやー、俺が上に行く為にはそれなりに功績が必要な訳なんですよ。えぇ、それなりに大きな功績が…ね」

「……おい、一つだけ聞くぞ。」


(シュベルト!!)


その姿は、気圧される程に堂々としていて、その手に握るデバイスは今にも俺を壊しに来そうなほどに禍々しく見えた。


「お前は…敵か?」

「逆に聞きますが…貴女は俺の敵ですか?」


そう言った瞬間に、俺は大きく後ろに跳び引く。一瞬前まで居た場所には土煙が待っていた。


「あぁ!! 敵だなぁ!!」


紅い髪を月明かりの元に輝かせ、破壊鎚を握るその小さな体に気力を溢れさせ、立ち塞がるモノ全てを粉砕すると言わんばかりに大地にクモの巣状の亀裂を奔らせた騎士が俺を睨みつける。


(かかった!!)


「なら、非殺傷は要らないですね? 貴女の…大切なモノにも」

「テメェェ!!」


グォっと圧倒的なまでの怒気に鳥肌が立つ。今ならば御せるかも知れない。

だが、まだ早い。その時ではない。目的は達した。


「それでは、今日は此処まで。まだ、体が万全ではないんですよ。」


そう言った瞬間、展開された陣に従い俺は別の次元世界に移った。


「案外、気持ちが良いな」

『清々しいぐらいに小物で外道でしたよ。主。』

「だな。しかし、お前の重さと冷たさは有りがたい。ドレだけの事を言おうとも、流されずに済む」


そう言い、四つ程世界を変えて部屋に戻った。

コレで彼女達は焦るだろう。

程良く緊張した体は直ぐにでも寝れそうなぐらいに疲れていた。気疲れだな…布団の中に久遠が来ていた事に驚いた。


右腕から異音は聞こえなくなった。






あとがき

大変です。その一言がリアルなBINです。
今回感想を返せそうにないっす。マジごめん。

クビには成りませんでした。飛ばされもしませんでした。

なぜか、教育する新人が増えました。仕事が以前の三割増し以上です。

だれか…変わってくれ!!!!!!

そう言えばですが、この間、会社帰りというか休憩中の時間にPCショップにてとある物を発見した

『くどわふた~』

速効で予約した私は正常な人間だと自負します。反論は…受け付ける!!

あと、なろうの奴はメールしときました。感想を見ててビックリしたよ。



それではいつもの↓



明智良哉


パチもの悪役。成り切れないのは坊やだから?
恭也と何かを相談中。ヴィータに喧嘩を売る
ぶっつぶれろと作者は思う。

「右腕の静電気が凄く地味に痛い…」


ファラリス・アテンザ

なんだか暗躍中。機材を取りに家に戻る時は月村家の車とノエルを使用。
忍とは友達。やはりマッドか…
デバイスマイスターでもある。イロイロと考えているらしい。

「挫折を知って…少しずつ大人になるのよ」


月村忍


イロイロと納得のいかない事が多い模様。
現在は明智良哉の謎の解明が目的。
恭也とはラブラブ。出来れば良哉を解剖してみたいと思ってる。


月村すずか

良哉と裸を見たり見られたりと大変な模様。
学校でも心配されているらしい。時々溜息を吐きながら外を見る姿にファンが急増中。
勿論、顔が微妙に赤く、瞳が潤んでいる。
なのはとアリサが時々ドキっとして自身の性癖を疑ったりするぐらいのモノらしい。

「…責任、取らないといけないよね?」

でも、フラグはブレイクする。


ヴィータ

何だか大変のよう。オリジナル設定あり。本人も知らない。

「お前が…敵なら!! アタシはお前をぶっ潰す!!」

ヴォルケンリッターが鉄槌の騎士。その意志は固い


シグナム

こちらにもオリジナル設定あり。
夢見が悪い。寝不足気味。体が思うように動かないらしいが、周りから見ればそうではないとの事。
ヴィータの過去を知っている?


こんなとこかな?


おまけ


アルフな話


フェイト・テスタロッサの朝は早くはない。ぶっちゃけ朝は弱い。

寝巻が乱れていても、涎が垂れた跡があっても気にしないというか気付かない。

そんな、朝はダメな子の身の回りの世話をするのは使い魔であるアルフの仕事である。

「フェイトー、顔を拭くよー」

「……う…ん」

ゴシゴシと強くこすってはいけない。温かいタオルで優しく撫でるように、しかし、しっかりと拭く。

「それじゃぁ、歯磨きをしてこなきゃね? フェイト?」

「うん…zz…ふぁ、寝てないよ?」

ぽや~とした表情でそう言うフェイトに胸がキュンキュンするが朝食の準備をしなくてはいけないので我慢するアルフ。

だが、尻尾は激しく振られる。

「うんうん、分ってるよ。丁寧にしっかりと磨いてくるんだよ?」

「ふぁ~い」

………アルフ朝食準備中

……………アルフ朝食準備(ry

…………………アルフ朝食準(ry

…………………………アルフ朝(ry

……………………………………アル中




「おまたせ、アルフ。いつもごめんね?」

「別に良いんだよフェイト。それに、もう直ぐ出来上がるんだろ?」

「うん!!」

そう言いながらベーコンレタスサンドを頬張るフェイトを「可愛いねぇ」と思いながら見つめるアルフ。

アルフ達がアースラに収容されて一番良かったと思うのは、リンディ・ハラオウンとクロノ・ハラオウンが居る事だ。

母の様に、接する事のできる大人の女性が居るという事はフェイト・テスタロッサ位の少女にとって大きな支えとなる。何よりも母の愛情に飢えているフェイトにとってはありがたい事なのだ。

本人は気付いていないが、無意識にそういうモノを求めている。

兄の様に接する事の出来る青年…いや、少年? である、クロノの存在も大きい。何よりも家族というものはフェイト・テスタロッサにとっては有って無いようなモノだったのだから。頼れる存在が居るのは大変うれしい。

(まぁ…良哉の時は凄かったてエイミィは言ってたけど…アイツっていう経験があるから、こういうふうに接して居るのかも知れないねぇ)

何よりも、一人の人物に対して共通の話題がある。と言うのも大きい。

多かれ少なかれ、他人と話し楽しめると言う事は精神安定を図るには持って来いの事だ。それが、フェイト本人が気にしている人物の事なら尚更良い事だろう…気に入らないけど。

ぶっちゃけて言えば、アルフは明智良哉に対してどう接して良いのかを未だに決めかねている。

良い奴ではある。だが、嫌な奴でもあった。何かと秘密が多い様だし、考え方が子供の考え方じゃないというのも…なんとも言い難い。

簡単に言えば本質が見えてこないのだ。

だが、そんな事を考えていても、主であるフェイトは

「ねぇ、アルフ。」

「なんだいフェイト?」

「良哉が解いたテストなんだけど…」

「……うわぁ」

出来すぎていてうわぁと思ってしまうモノを持ってこられても、余計に混乱するだけなので勘弁して欲しい。

判断材料があっても、見えてこないのだから、気持ちが悪い。それが、アルフの悩みだったりする。
他にも、クロノとの模擬戦で勝てないフェイトを慰めたりと大変なのだ。

フェイト自身も気を付けているのだが、戦い方が時々というか…まぁ、感情的に成り易いと言う所がある。これは幼い頃にリニスにも言われていた事だ。
自分もそうなので、なんとも言えないのだが高速機動戦闘を行うフェイトにそれほど苦労もせずに勝てるクロノに無茶言うなと言いたい。
実際に

「誰もがアンタみたいに冷静に動き続ける事が出来る訳じゃないじゃないか…」

と言った事があるのだが、その時クロノは普通に

「いや、良哉は僕以上なんだが…」

の一言に撃沈。だけど、アレは違うと思うのがアルフの言い分だ。アレはただ単に熱くなる事が出来ないと言うか、精神が老いてると言うか…

(枯れてるんだと思うんだけどねぇ)

実際に自分達の裸が近くに有っても、何の反応も無かった…と言うか興味がなかったのか?

(雌としてのプライドを傷つけられるんだよね…アイツの反応って)

短い期間だが、一緒に居たというか、同じ艦で暮らしていたのだ。そりゃ、フェイトが寝床に強襲してから、何度も似たような事がある。

着替えている所に出くわしたり

モニター開いたらシャワー中だったり

全て、フェイトが除いてしまったことだけど…

(あぁ、だからあの人形が微妙に似てるのか…)

アルフはそれ以上考えない事にした。これ以上考えると自分の主が良哉専門の覗き魔になってしまうような気がしたから

朝食が終われば、フェイトはクロノや他の武装局員達の監視というか目の届く範囲
で訓練したり、エイミィから勉強を教えてもらったり、リンディから裁縫とかを教えて貰ったりと一日を自由に暮らしている。

その間、クロノは最近来たユーノと一緒に裁判結果を話したり自分も含めてここ最近多発しているリンカーコアを保有する野生動物の謎の衰弱事件について意見交換をしたりとしている。

そう言えばだが、裁判の結果は事実上無罪のようなモノだった。まぁ、そうなる事が事前に知らされていたので其処まで心配してなかった。

後、五日もしないうちに『地球』に着くらしい。早く着かないかぁとフェイトは洩らすが、自分はそうでも無い。

「あ~……どうしようかねぇ」

取りあえず、子犬モードを見せてみようかねぇ

なんだかんだと考えながらも、仲良くする事に決めたアルフだった。


おわり


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