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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] 日常?(修正しました)
Name: BIN◆5caaab55 ID:784a3ac9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/23 02:44





ハラリとページが捲られる。其処に有るのは白い文字も絵を無い唯の白紙のページ。
ソレは本なのかと問われればソレはyesと答える。
ソレは欠陥品なのではないかと問われればソレはnoと答える。
ただただ、白紙を見つめているとソレに文字が徐々に浮かんでくる。
ソレはそれを見るとタメ息を吐き、本を閉じた。







明智良哉が目覚めて三日が立った。ソレは彼が月村邸に運ばれて一週間の時が過ぎた事に成る。起きた良哉が確認したのは体の傷が完治しているという事だった。
だが、その事に慌てる事は無く。ただ、頷いただけだった。
筋肉の衰えはまるで無く。右腕も思った通りに動く。その事には少しだけ驚いたが一番驚いたのは、自分の右腕に起こった事だ。
久遠の話を聞いても、オカルトという分野にはまるで学が無い良哉にとってはちんぷんかんぷんな事だらけだったからだ。

久遠は子狐では無く、少女の姿をとっていた。

その姿で仕方なさそうに微笑む姿には万人が安らぎを覚えるのではないかと思ってしまう程の、落ち着いた表情だった。
久遠が纏めた事は二つ。

その右腕は、『まだ』不完全だという事

その力は『まだ一人で』は使えないという事

良哉からすればそれだけ解れば良い事だった。動かなく成った筈の右腕は復活していたし、傷も治った。文句のつけどころが無い。
明智良哉が必要とするモノの一つは力であり、この結果は+だった。-も多いが二つを比べてもマイナスにも零にも成らない。故に文句は無い…無いが不満が有る。
有る意味で彼にとってはかなり『必要』な事だった。

風呂に入りたい

現在も絶対安静という名の軟禁をされているのだ。出来る事は意外と少ないし、これからする事も少ない。

これから起こるであろう『闇の書事件』には関係を持たなくても構わないのだ。

降りかかる火の粉は払うか、避けるかをすれば良いだけだからだ。
確かに、シグナム、ヴィータの二人とは縁が在る。が、八神はやてには縁がない。過去も未来もだ。すれ違うぐらいは有ったかもしれないが、覚えていない。
ならば、そんな他人の為に自らを危険にさらす等…今は愚の骨頂でしかない。そんな事は子供でも解る。そんな事を考えながら外を見る。
そして、今はそんなどうでもいい事を考える暇では無いという事を思い出す。連日、四日間眠り続けて居た脳は未だに鈍い痛みを伝えてくる。
何よりも、体は全快しているのにだるくてしょうがない。そして、腹が減る。
そんな事を考えながら、明智良哉はトントンと扉を叩く面倒事に意識を向けた。




扉を開けると、そこには無機質な瞳が在った。その在り方に背筋がゾッとする。その感覚にも慣れてしまっていたし、彼に嫌われようが興味があった。
すずか…妹は彼が起きてからはあまり近づけさせて居ない。勿論、彼は私達の事を黙っていると契約をした。が、身内には成らないと言いきった。

妹はその事にショックを余り受けて居なかった様だが、瞳は潤んでいた。

その理由を問い質す事もしなかったし、明智良哉も何かを言う事は無かった。
明智良哉は身内に成らないと言いきった後、私に向かい言った。

『俺と貴女達は知人でも無ければ友でも無く、唯の他人だ。ソレが俺の認識であり、俺の現実だ。だが、貴女達には恩がある。身内には成らないが誰にも話さないと誓おう。』

恐らく、それが彼なりの譲歩だったのかもしれない。普通なら嫌悪感等を抱くかもしれない、現にさくら姉さんは顔を顰め拳を握っていた。
私はそうでも無かった。恭也の話を聞いていたからかも知れないが、嫌悪感以上に親近感を抱いた。理由は直ぐに見つかった。

明智良哉とは過去の月村忍なのだ。

さくら姉さんに預けられていた時の私にそっくりなのだ。その性格は自己中心的と言ってしまえばそこで終わり。
もっと深くまで理解しようとすれば臆病者のソレなのだ。人と関わりたくても関わられず。

人を恐れ、近づけさせない。心を許せる相手でさえ最初から疑ってみる様な捻くれ者。

故に、私は明智良哉との距離感の取り方が直ぐに解った。利を共にすれば良い。利を与え、協力させれば良い。
私が彼に払わせる対価は『妹の話し相手』という役柄であり、私が彼に与える利は『健康』であり、すずかが払う対価は『血』なのだ。

そして、彼が私に本当の対価として寄越すのはその『身体』の情報。

解るだろうか? 私の知識欲を刺激させるモノを持っているこの少年は私達と対等の様に振舞いながらも、実は私達より上の立場に居る。
久遠が告げたのだろう体の事を、明智良哉は正確に把握していた。私がその条件を飲まなければ彼は妹を、月村すずかという存在に価値を見出さず、見出そうともしない。

そうやって、心を壊す気でいる。

そして実行するのだろう。昔の私ならばそうしている。出来ると言いきれる。
恭也と出会わなければ…私は今もこう在ったのかも知れないと思ってしまい。寒気がする。

その生き方は余りも、うすっぺら過ぎて…哀れみさえ込み上げてくる。

この子は知らないのかも知れない、触れ合う事の重要さを。
忘れてしまっているのかも知れない。他者の温かさを…
そして、過去の私はソレを理解して居た。でも、ソレが怖くて出来なかった。
話をしている限り、彼は過去の私に似すぎて居た。だからこそ、私と彼の圧倒的に違う部分を理解するのが遅かった。





高町なのはが明智良哉の家に訪れたのは、月村邸で明智良哉が目を覚ましたその日だった。学校も塾も休みだったその日は、たまたま誰とも約束事をしていなかった。

朝は魔法の練習。昼は家族で昼食を食べ、午後の空いた時間で住所を頼りに明智邸へと向かった。
視界に入ったのは何処にでも有りそうな普通の庭付き一戸建ての家。表札には明智の文字。
新聞も溜まっておらず、玄関前も綺麗なモノだった。
が、そこに人が居ないという事は直ぐに解った。気配の様なものが無い。音が聞こえない。念の為、サーチャーを使い二階も除いてみたが人がいる様な形跡が無い。
首から垂れ下がる相棒が生体反応の有無を伝えると、なのはは肩を落とした。
高町なのはは夢を見る。あの時、自分の目の前で起こった血の匂いがこびり付いたあの夢を見るのだ。

何も出来ずに、突き刺さる木の枝。倒れる同級生の体。何も出来ずに見て居る事しかできない無力な自分の夢。

ソレは、彼女にとって悪夢だった。普通とは違う力、『魔法』に出合い。戦いを経験し、悲しい事件にも立ち会った。
ソレは正しく自分を強くしてくれたという確信が在った。昔より自分に自身を持てる。ソレは確実だ。世界の危機を防げたのだ。
あの事件の後、クロノ・ハラオウンが IFの話を教えてくれた。その事で礼を言われた。その事が嬉しかった。普通では出来ない事を行った。そして、成功させた。
友人も出来た。大切な相棒も出来た。でも、その悪夢が無力を伝える。
故に、魔法の訓練にも熱が入る。その集中力は相棒であるレイジングハートも褒める程のモノだ。

だが、その悪夢が否定する。

その悪夢が伝えるのだ。

確かに、高町なのはは明智良哉を窮地から救ったのかも知れない。だが、一番役に立っていないと言う事は己が一番理解していた。
自分はただ見て居ただけだ。確かに、声を掛け続けた。彼を知る者の、彼が知っている者の掛け声が、励ましが必要だと言われたからだ。
だが、声を掛けて居た自分はただ声を掛け続けただけでその場には居なかった。その現場には立ち入れなかった。

役に立たないからだ。

治療等出来ない子供は邪魔でしかない。ソレは理解できる。だが、それが事実であり…現実だった。
それでも、明智良哉は高町なのはに言った「ありがとう」という残酷な救いの言葉を

その一言が、高町なのはは役立たずだと言う事を証明していた。彼女にはそう思えた。

本当に救われたのは自分…高町なのはであり、高町なのはを救ったのは明智良哉なのだと。
片目を失い、その元凶を許し、何も出来なかった自分に礼を言う。その時はただ嬉しくて安心して、家族の前でさえ見せた事も無い程の大泣きをした。
今思えば、ソレは自己防衛だったのかもしれない。事件が解決し普通の生活に戻ってから一カ月もするとそう考える様になった。

そして、自分は明智良哉というクラスメイトの事を知らな過ぎるという事に気が付く。
友達に成っても居ない。ましてや知人でも無い。ただの他人同士の関係に気が付く。
そして、この間聞いた話に出てくる眼帯の少年の話し。そんなご都合主義はあり得ないがもしかしたらと思った。
だが、来てみれば当たり前のように其処には誰も居らず。悲しい現実が在っただけだった。
フェイトから来るビデオレターでも明智良哉の事は一切話題には上がらない。
高町なのは、肩を落としたまま来た道をゆっくりと戻って行った。一言つぶやいて

「絶対に…お友達に成るんだ…」






知らないからこそ知ろうとする。人は解りあえると信じているからこその行動だった。
高町なのはは綺麗なのだ。純粋とも言える。
だが、それは何も知らないと言う事と一緒で彼女自身も気づいていない、気付けない生来の歪みを大きくする。
その事に、周りも気付けない。周りは近すぎるからこそ気付けず。彼女を知る第三者も、高町なのはを見ているからこそ気付けない。
そんな、彼女と周りの行き違いが大きな落とし穴となる。ソレはまだ、先のお話






普通なら此処で諦める。居ない者は居ないのだ、ソレは相棒が証明しているし自分でもなんとなく解った。だからこそ、その思いが後ろ髪を引こうとも振り返る事に意味は無い。
無いのだ。だが、高町なのは振り返ってしまう。インターホンを押せば、誰かが出てくるような気がする。言葉では何とも言えない何かを感じれたのだ。

「あれ?」

高町なのは、一度目をこすり再び明智邸を見る。

「あれ? ………気のせい?」

と首を傾けて「ムゥ~」と唸ると再び前を向き歩き始めた。

「カーテンが空いてたような気がしたんだけどなー」

そう呟きながら…







その後ろ姿を捉えたヴィータは首を捻り考えた。が、明智良哉の交友関係を全て把握している訳ではないので直ぐに放棄した。

「っーか、あんなぽややんってした奴がアイツの友達に居る訳がねぇーか」

そして、確かめる様にインターホンを押し数秒待つ。
やはり、中からの返答は無い。人の気配というモノ無い。今までと同じだ。此処数日と同じだ。

周りの病院もシグナム達と調べたが、明智良哉は居なかった。あの戦いの後、最後まで見れなかったのが残念でならない。

が、どの道、明智良哉を襲うわけにはいかない。周りに居る管理局の者に気付かれては意味がない。何よりも、明智良哉は自分達が何処に住んでいるかも知っているのだ。

自分達の主に危険が迫るのは望んでいない。何よりも、友達には早々手を出したくない。

後者は自分の我儘である。その事に気づいているし、何とかソレを譲りたくない。そう思い口を歪める。

「チッ…弱くなったなぁ…鉄槌の騎士がさぁ」

そう言った所で何も変わらない。

そして、此処数日の何時も通りに帰ろうとしたところで踵を返しデバイス無しの極小の魔力で身体強化を行う。そのまま、壁を一度蹴り二階の屋根へと手を掛け屋根の上に立つ。
その状態で言う。

「女、『餓鬼』は何処だ?」

明智邸のみが結界に包まれる。魔力は少量、管理局に気付かれては困る。その為、見っとも無く酷い出来の結界に成ってしまって居るが仕方がない。
もとから自分はこういった事が苦手なのだ。シャマルの様には出来ない。

あの時もそうだ。あのババァは落ち着けば出来るとかぬかしたが、ソレは多少の時間が居るんだ。ソレを知らないババァじゃ無かろうに…

(ん? あの時って何だ?)

そう思いながらも、返答を待つ…待つが、何も起こらない。ソレを確信するとタメ息を吐いて地面に降り、コンビニへと足を向ける。
幾ら寒くなっても、好物は食べたいのだ。

「あの時って本当に何だ? ……映画の見すぎか?」

今度から、ザフィーラが見る戦争物の映画を見るのを控えようと考えながらヴィータはポケットの中の小銭を確認した。

「…十円足りねぇ」






ファラリス・アテンザはヘナヘナっと床に座り込んだ。

天井から掛けられた声に体が反応しなかった事に、大きくタメ息を付き心から安堵した。
そのまま五分程してからカーテンを少し開け、外を確認する。誰も居ない事に心底安心し、明智良哉のベットに倒れこんだ。

「…さっきの声かからして性別は女、年齢は子供…最低五歳、最高十三…いえ、十一位かしら? 一体何者よ…この世界、魔法が無いだけでめちゃくちゃ危ないんじゃなの?」

『それよりもマイスター…改良をお願いします』

そんな、ラプラスの一言に心労がドッと襲ってくるも何とか自身に活を入れて起き上がる。

「あのねぇ…出来るのは内側だけよ? ソレに本格的には向こうに帰ってからじゃないと、何も出来ないわ」

『解っています。だからこそ、出来る事を今して欲しいのです。私自身のもっとも効率的な形態はこの前の戦いで見つけました。』

ラプラスの言った事に興味を覚え、口を開く。

「へぇ~…教えて貰おうかしら?」

『私は目です。目とは視るモノです。ならば私は形に囚われずに見る事が出来るモノに成らなくてはいけません。』

ただ、それだけです。

そう、誇らしくラプラスは言いきった。

その事にファラリスは感動を覚える。
出来て一年も立っていない、碌に固有人格もインストール出来なかったデバイスと言う意味で言えば三流品にも劣る欠陥品が、此処まで言い切った。
言いきったのだ。其処に確固たる自信を持ってまるで明智良哉の望み等、理解しているとでも言いたげに。
成長している。その人格がちゃんと成長している。学習機能は付けているが短期間で此処まで人間らしい…否、『自分勝手と言われても仕方がない忠誠心』を持つに至るとは…
ファラリスは首を鳴らすと生き生きとした声で言った。

「今の言葉、普通なら初期化されても文句は言えないわよ?」

『何を当たり前な? 私の時間はその殆どをマスターと共有してきたのですよ? 何回とも言うのが馬鹿らしく成るくらい、マスターと考えたのですよ?』

「………」

『マスターの好物、味付け、良く見るTV、新聞は何処まで目を通すか…全てを共にしてきたのですよ?』

「…そうね」

『戦闘に関してはまだまだ、先達である姉様と兄様に指示を貰っていますが何れはソレも要らなくなります。いえ、成るのです。故に、もう一度言います。』




マイスター、私を改良しなさい。私はマスターの『目』と成るには貧弱すぎるのです。

笑う、嗤う、哂う。

全てを込めて、ファラリス・アテンザは涙を滲ませて笑う。

自分の子供を笑い尽くす。

「当たり前な事を、今更言うの? 貴女こそ覚えなさい。私は貴女の生みの親で、あの子の保護者の一人で、あの子の行き着く先を見たい協力者なのよ?」

馬鹿にするなと言いたげに、傲慢に力強く言い切り自室に向かう。
その顔は、所謂喜びに歪んでいた。





ルーダー・アドベルトは窓を開けた一室で明智良哉と話しをしていた。
話しと言うのは今後の事である。あの戦いの一件で重傷を負ったが直ぐに全快したと、何を馬鹿なと言われても仕方が無い状況に有る明智良哉とこれからの事を話している。

話しているのは、ミッドチルダから地球への帰還の話だ。

地球とミッドチルダは当たり前だが遠い。本当に遠い。
チャンとしたトランスポーターを使えば直ぐだが、使用料が掛る。ついでに高い。
更に言えば地球にも設置しなくては成らない。しかも高い。もう一度言う。高いのだ。
一回の往復でそれなりの額が吹っ飛ぶ。任務なら金は要らないが…提督クラスで無いと無理だ。頻繁に使うのは…
ぶっちゃけ、リンディ・ハラオウンの提案に頷けば問題は無い。だが…

娘がお兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しいと去年の誕生日に言ったのだ!!

「…どうにかならねぇかなぁ」

「まぁ…俺が働きだしたら大丈夫ですけど」

二人の会話はそんなモノだ。

後は、いい加減風呂に入りたいだの。盆栽の手入れがしたいだの。娘自慢で会話は終わる。
それから暫くして、日が沈む頃に月村すずかは明智良哉の部屋に訪れた。

二人の会話はこれと言って面白みは無い。すずかが学校で起こった出来事を話し、ソレに良哉が言葉を返し頷くだけ。

方や笑顔が見えるが、もう片方はこれと言って表情に変化が無い。

ただ、今日の月村すずかは何かが違った。明智良哉はそう思った。強いて言えば目の光が違う。とても、強い光を灯していた。
そして、月村すずかは明智良哉に質問した。

「どうして…身内には成れないの?」

ソレは、幼い彼女からすれば大きな覚悟と勇気を振り絞った質問だった。

明智良哉は考える。本来ならばそのまま自分の事実…簡単に言えば不要と言う事を告げてしまえば言い。
だが、この体は既にそう言う訳にはいかなくなっていた。体が求めているのだ『血』を、誰かのではなく。明確に『月村すずか』の血を求めているのだ。

久遠曰く。ソレは体が完成…時期を迎えれば無くなると言っていたが、単純に成長すれば良いと言う事ではない。

体の完成とは、明智良哉の体が明智良哉の体の使用に耐えられる様になった事を言う。

勿論、限界を超えれば破損し破壊される。其処は普通の肉体と一緒だ。だが、コレはある種の進化を世代を使って行うのではなく。
一人の人生の中に有る、許された極僅かな時間で行うと言う事である。
明智良哉には時間が無い。在るようで無い。ソレが事実だ。常に生命の危機が傍に有る。多くの人生を経験している明智良哉は知っている。

詳細は既に解らないが、一瞬の行動、他愛もない一言、僅かな表情。生活に欠かせない全ての些細な食い違いが死を運んでくる。不仲を運んでくる。
そして、月村すずかとはその不幸を多く持っている。既に彼女は自分を殺せると言う事を知らずとも感じている筈だ。
彼女の姉は勘違いをしている。アレは自分の意思では無い。自分の意思が明確ならばこんな事にはならない。

もっと早くに此処を出れた。が、ソレが出来ない。

すずかの血が無ければこの体は動かなくなる。それも良い。其処でリセットされれば良い。だが、その後はどうだ?
この事より前、少なくとも二カ月から三カ月は前に戻らなければ同じ道を辿る可能性が高い。そして、何処まで覚えられているか自身が無い。
故に、言葉は慎重に選ばなければならない。

今後の事を考えればソレが一番安全だ。

「俺は…別に君の事を嫌悪している訳でも、気味悪がってる訳でもない。少なくとも君には恩は感じているし、この状況を作ってくれた君達の『一族』にも感謝している」

「だったら…」

「俺はそうだが、周りはどう思う? ルーダーさんの上司は理解も思いやりも在って優しい人だ。彼女なら大丈夫だ。だが、他の人間はどうだろうか?」

すずかの目を見て言う

「俺も直に組織に入る。其処には俺の身体情報も身辺の事も送られる、久遠の事は使い魔として登録すればそれで良いし、向こうには『霊』に関する事は解らないだろうから構わない」

ゆっくりと、静かに、言い聞かせるように

「だが、君は別だ。君と言う『人』は存在するし、戸籍もある。遺伝子も有るし『一族』も要る。俺は有る程度は上に行くつもりだ。ソレは俺の将来だ、誰かに口を出される事は無い」

絶対的な決定を彼女に言い聞かせる。

「組織には派閥が有る。絶対だ。故に反発があり敵対があり友好がある。そうなれば…汚い事も必然と増えてくる。」

暴力、結構な事だ。ソレは自分も行使する。
権力、宜しい。使える立場に居るのならば躊躇い無く使うべきものだ。
謀略、使わないでどうする。生きる為には必要なモノだ。
財力、有る事に損は無い。寧ろ、有る方が良い。

力は全て一つの手札として切れるカードだ。弱いモノはそのまま踏みつぶせる。
だが、強いモノは弱い部分を切り崩していかなければ成らない。
弱みは見せて良いモノではない。見せて良い弱い部分は、餌として使える程度のモノで無くてはならない。

故に明智良哉は月村すずかに植え付ける。

「君は俺の枷になる。だからこそ、身内には成れない。それは君にも『危険』が及ぶ。だから…」

慎重に、丁寧に、大人が子供に言い聞かせるように…

「だから?」

「身内では無い、唯の友人として…いや『良き友人、隣人』として在ると言う事で譲歩してくれないか?」

少しだけ頬を緩ませ、言う。





月村すずかは、明智良哉の言葉を頭の中で、心の中で反芻する。

『枷になる』

この言葉に、言葉が沈む。自分は、自分と言う存在は明智良哉の大きな負担に成ってしまっている。
この事に、心が沈む。ソレはとても悲しい。自分の事を『人』と言ってくれている人の重荷になるのは嫌だった。
自分の事を認め、嫌いに成らないでいてくれる人間に迷惑を掛けたくなかった。

『一族』『危険』

と、言う言葉に心が温かくなった。自分の事だけではなく、自分を含めた全体を見て、その全体の事を考え心配してくれている。
その考えに、その思いに心が温かくなる。嬉しくなる。
明智良哉と言う人間は全体を見る事が出来、その全体の安全を考えてくれている。その大きさに嬉しくなる。

『良き友人、隣人』

と言う言葉に目頭が熱くなる。
友人として居てくれると言う事に、一族に害をなさず、互いを支えれる隣人として、私達を否定しないでいてくれるという言葉に感動する。
血が熱くなり、下腹部が熱を持つ。

月村すずかの中で、明智良哉という存在は大きなモノとなりある種の絶対的な位置を確立させる。
だからこそ、勘違いの元と成っている淡い思いに光を灯す。
その光は明智良哉の一つの強力な手札となり、月村忍への強力な抑止力に成りうるモノへと育てる事の出来るジョーカーとなる。

「あのね…その……今はそれで良いと思うの」

この言葉を聞いた瞬間、明智良哉はその鉄面皮の下にいやらしい笑みを浮かべる。

「だから…えっと…その…」

少しだけ紅潮した頬が可愛らしいなと思いながらも、明智良哉は次の言葉を待った。
月村すずかからしたら、その言葉を紡ぐのには最初の質問以上に勇気が居るに違いない。嘗て、ソレに似た言葉…在り大抵に言えばプロポーズと言っても間違いの無い言葉を言った事も有るのだ。その恥ずかしさも、ソレを言う為の覚悟の大きさも知っている。
故に、待つのは苦では無かった。

「良き友人、隣人の…先が有っても可笑しくはない…よね?」

「それは…解らないだろうさ。未来は無限だ。そういう事も…在りえるだろう?」

「そ、そうだね。それじゃあ、もう遅いから私、帰るね!!」

「あぁ、今の時期は何処に居ても寒い。風邪を引かないようにな」

「うん、明智君もね!! それじゃあ、おやすみ」

「おやすみ、『すずか』」

「!?」

驚きながらも嬉しそうな顔をして出て言った月村すずかを見送ると、明智良哉は自嘲するように言った。

「醜いな」

『えぇ、最低ですね。主…女心を何だと思っているのですか?』

中々に痛い所を付いてくる相棒の言葉に、苦笑が漏れる。

「どうなんだろうな…」

『しかし…必要な事です。私はそう思います。人も力も金銭も経験も知識も使ってナンボですからね。』

「……そうだな」

明智良哉はそう呟くと。再び横になり、眠りに入った。







月村忍がその事を知ったのはそれから二日後の話し。ファラリス・アテンザが居合刀を携えて月村邸にやってくる一日前の事だった。











あとがき

酷いとか、すずか可哀そうとか思った人、ごめんなさい。
でも、必要なんだよ?生きるって難しいね?

なんとなく、力を入れて見たがそんなに変わってないよね…はぁ

何時ものアレ↓


明智良哉

黒くなった。


ルーダー・アドベルト

財布が心配な大黒柱。
娘が告白されたが、二秒後に断っている事を知らない。
奥さんは身長が低い巨乳らしい。



ファラリス・アテンザ

なんだか、怖い。ラプラス改良中。
ヴィータにビビる。


ヴィータ

なんだか、おかしい様子。オリ設定ありです。ごめんね
やっぱり、良哉は友達と思っている。さて、どうするか…


居合刀


道場の師匠からのプレゼンと。折れやすいので取り扱い注意。






























































まぁ感想で、死んだ魚の目を持つやる気の無い引き籠もりの魔法使いが浮かんだ人正解。
でも、ひとつ言わせてもらえればクロスではない。
もともと、この役所が必要でどう複線を張っていくかとか考えてたら、訳の分らんうちそいつを主人公に何か書いてみようと思ったのが病気の始まりだった。
ぶっちゃけると、この話のためにあの病気を書きました。最初と最後だけ決めてれば意外と書けると実感しましたよ…
まぁ、裏話をすると、あっちは最後バットで終わるつもりだったんですけどね。


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