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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] タタリ編―十一
Name: BIN◆5caaab55 ID:784a3ac9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/22 23:08








其れは己の存在を賭けた逃亡だった。誰が考えつけたか?
人知を超えた存在を内側から喰らい、その力を取り込み更なる力得た存在がたった一人の子供に勝てない。
逆に滅ぼされてしまうと、殺されると恐怖を感じ無様に逃げるしかない。
理不尽。何という理不尽。ただその存在が、その存在の行動が自身を砕き自信を砕く。

(逃げないと)

貫かれた。否、これは貫かれたと言って良いのだろうか? 茨は確かに体を貫いた。
だがこの傷は貫かれたと言って良いモノなのだろうか? ズタズタだ。
傷の入り口は小さなナイフで滅多刺しにされたようで、傷の中身は釣り針に付いている返しが中を通って行ったかのように細かく抉られている。
何だコレは? 何だこの痛みは? 知らない。こんなモノは知らない。知っていて良いモノではない。
それだけが確かっだった。

故にソレは未知。恐怖の対象と成るが、想像が出来る『未知』と成る。
想像が出来てしまった事が不運であり、ソレを想像出来てしまうと言う生物としての優秀さの証明。
想像出来てしまうからの痛みがあり、想像出来てしまうからの恐怖がある。路が出来てしまう。
生物、命を持つ全ての底に根ざす生存本能までの路が容易く繋がってしまう。コレが全くの未知ならば恐怖こそすれ考える事が出来る。
未知とは恐怖その物であり明確な死を意味しない。だが、此処には正体があり、姿が見え、その存在をある程度理解できる『氷村遊にとっての理不尽』が存在する。
そして、傷を見れる。どうやって付けられたのか想像ができる。それならば…と理解できてしまう。解らないのはソレを構成するモノ。解るのは己に死が迫っている事。

(逃げないと!!)

殺される。そう思う。そう感じる。何時でも『死』と言うモノは唐突に現れる。
羞恥等無い。生きる事を、生き延びる事を考える。
氷村は生物としては優秀だった。ソレは生前からだ、種族が違う。寿命、生まれついての身体能力、容姿、『人間』よりは生まれ持ったポテンシャルが違う。
残念な事に氷村遊は種族としては上でも『人』としては最低の部類だった。時代が違えば一種の暴君として歴史に名を残していたかもしれない。
それだけの突出したモノを持っていたソレは確かだった。
後ろ暗いコネクションも持っていたし、ソレを動かす事の出来る知能も持っていた。暴虐を認められてしまう程の武力も持っていた。
彼はプライドが高かった。彼は傲慢だった。
その二つが曇らせていた。それだけだった。

(上は駄目だ、アレは罠だ。見え透いた罠だ!!)

上空にある結界の穴。其処から出られれば逃げれる。一目散に追われる事も無く逃げられる。その可能性は高い。
だが駄目だ。あの狐に殺される。
あの理不尽が追いかけてくる。

(結界を破って逃げるしか!!)

後退。一目散の後退。森へ逃げ、幾許かの時間を稼ぎ全身全霊の『雷』を持って穴を開ける。ソレしかない。幸いな事に傷は塞がっていく。

(今しかない!!)

後ろに跳ぶ。その瞬間には高町恭也が小太刀を構え突進して来るのが見えた。距離はあと四歩程。
絶対の自信が蘇る。ソレまでの経験が語りかける。己は高町恭也よりも速いと。
絶対の確信がある。『核』を見られたという確信がある。なぜならその視線は己の『心臓』『存在その物』に向けられていた。
鎌首を擡げるモノがある。

(殺せる!!)

己の方が半歩は速い。核さえ切られなければまだ回復出来る。その程度の力は残っている。

(こいつだけでも殺す!!)

後悔させてやるという思いがある。これだけはという思いがある。それでもと…訴えかけてくる思いが邪魔をする。死にたくはない。何せ一度死んだのだ。
覚えている。締めつけられる体から聞こえる肉の潰れて逝く音
覚えている。軋む体中の骨。
覚えている。除所に罅が入っていく痛み。折れた骨が肉を突き刺し、皮を破るあの感覚。飛び出した骨が無残に砕けるあの感覚。
内臓という内臓が潰れて逝く感触と破裂する小気味の良い音の連続。

覚えている。覚えている覚えている覚えている!!

だからこそ、噛み付きたい!! せめて一撃、鼠が猫を噛んだ様な小さな傷で良い。それだけでも…せめてそれだけでも!!

怖い。ソレは当たり前だ。嘗てアレは己を殺した。
理不尽だ。アレに己の攻撃は通らない。
最悪だ。氷村遊がこんな事を考えている。

(それでも!!)

ズブリと鉛がが輝く。痛みが心を折りに来る。

(堪えろ!!)

小太刀が体に入ってくる。痛いのに満ち足りた様な不思議な感覚。

(一矢報いたぞ!!)

「惜しかったな!! 高町きょ「お前がな!!!!」ギァ?!」

振り下ろすだけで良かった。横に薙ぐだけでも良かった。それだけの力は有るのだ。
一秒も要らなかった。数瞬の時間が有れば良かった

(なぜだ)

何もかもが己の邪魔をする!!

(だが………ッ!?)

鬼が居た。否、鬼が在った。刹那よりも短いその時間に確かにそれは存在した。

(何でだ!! 何で何で何で何で!!)

死にたくない。逃げないといけない。生きるのだ。復讐の為に。生きなくては成らないのだ。思い知らせるのだ!!
人に!! 劣等種に!! 我が物顔で世界に居座る人間共に!! 貴様らより優秀な存在が居るのだと!! 貴様等にバレぬ様に影に生きる優秀な一族が!! 種族が居るのだと!!
貴様等如きが日の下を王者の様に生きて居るのは間違いなのだと思い知らせるのだ!!

(生きなくては!!)

生存本能が燃え盛り、死の恐怖が思考を断ち切り、幼い頃からの思いが路を指し示す。

月を目指す。あの結界の穴を、生への入り口を最速で目指す。

だが、一番知っている筈の事を。今まで嬲って来たモノ達に使っていた手段を氷村遊は完全に忘れていた。

ガチャリと眼前には砲身が構えられていた。ソレに触れる事も出来ずに体が押し止められる。

「あっ…何…で」

月を、目指していた筈の月を人型が隠した。

「俺が…死ななきゃならない!!」

ソレは疑問。魚の小骨が刺さったかの様な小さな疑問。己と理不尽の接点を知りたいと思う欲求。

人型は詰まらなそうに答えた。

「昔…心底好きに成った女が居た。容赦が無い女だった。動けない俺に無理やり『あ~ん』をする様な諦めの悪い女だった。口を開けないと泣く様な卑怯な手まで使ってきた。」

それが何だと言うのだ。そんな女は知らない。第一、目の前の人型は子供だ。ならば、それはママゴトと何の違いが有ると言うのだ。

「IFだよ。それだけの話だ。ただのけじめだ。ソレに言うだろ? 汚物は――――――――」

『Desinfizieren; sterilisieren.』

眼前で理不尽が解き放たれた





明智良哉が最初に感じたのは眩暈と吐き気だった。視界が霞、呼吸が儘ならない。体に出来ていた切り傷や擦過傷は粗方塞がっていた。だがそれだけなのだと痛みが訴えた。
折れた左腕が痛みを訴える。折れた助骨が訴える。
休めと、動くなと。体が全身で訴える。もう眠れと。惰弱な意思が囁き掛ける。

(次が有る)

(少し休憩しよう。次なら大丈夫だ。タイミングは解っただろう?)

そうだ。確かにそうだ。これ以上辛い思いをする必要などないのだ。誰にも責められない。責められる筈がない。確実に自分より強い強敵に此処まで粘る理由はもうないのだ。
それこそ、無駄な足掻きだ。

だからこそ、下らないと断じる。

それこそが過ちだと断ずる。

確かに、次に回した方が今より楽にそして被害も少なく戦える。

(それがどうした)

このままでは奴に勝っても死ぬのだろう。死なないにしても数カ月は床に伏せる事になるだろう。

だが

それがどうした!!

全力を出していない。切り札も切っていない。出せるものはまだ有るのだ。
何よりも、己が師事する高町恭也が!! 己が尊敬するルーダー・アドベルトが!! 己が信頼するファラリス・アテンザが戦っているのだ!!
自分が弱く、卑怯で臆病者である事は認めよう。当たり前だ。戦いが無い世界で生まれ、知らない内に訳の解らない世界に再び生まれた。
訳の解らない理不尽な牢獄に囚われた。
今もまだ、その中から抜け出す事が出来ずにいる。

誰にも喋れない。語る事など出来るわけもない。全てを隠し嘘を付き続ける最低な自分を助ける為に戦ってくれている三人を置いて己だけ逃げようなど出来る筈もない。
誰かが教えてくれたのだ

『同じ部隊で、同じ宿舎に住んで、一緒に仕事をしてる。家族となんら変わらないでしょ? だから、悩みが有るなら話してよ? じゃないと、お姉さん失格じゃない』

誰かが肩を叩いて言ってくれたのだ

『気落ちすんな。こんな事は其処等中に吐いて捨てる程溢れてる不幸だ。一人の為に残りの十数人を見捨てる訳にはいかない。だろ? とっと帰って反省会だ。次に生かすぞ、相棒』

誰かが刻み込んでくれたのだ。

『お前は生きろ…生きて任務を全うしろ!!』

誰かが背中を押してくれたのだ。

『諦めそうに成った時こそ全力でぶつかりなさい!! 男の子でしょ!!』

もう、顔も思い出せない人達が教えてくれたのだ。どんな状況でも諦めず。どんなに無様で惨めでも、生きる事を諦めるなと。諦めた奴こそ見るに堪えない程に醜いのだと。
だから、お前(弱音)は邪魔だ。すっこんでろ!!

ギチギチと嫌な音を立てる体を無理やり動かし構え、小さな魔力の塊を刃に変えて投擲。次いで足の裏にラウンドシールドを展開。
連続展開の為、最小の魔力で人の頭程度の大きさの物を作っていく。ソレを足がかりに跳ぶ。飛んでいては間に合わない。
ブチブチと何かが切れる。ズブリと何かが刺さった。無視する。

眼前に敵がやって来た。殺す。躊躇等無い。殺す理由? 己の為だ。自分勝手なけじめの為だ。
右の腹の半ばから足の付け根に触れる鋼の感触が羨ましい。この冷たさが欲しい。何事にも揺らがないこの堅い冷たさが。

「昔…心底好きに成った女が居た。容赦が無い女だった。動けない俺に無理やり『あ~ん』をする様な諦めの悪い女だった。口を開けないと泣く様な卑怯な手まで使ってきた。」

口が勝手に動いていた。懐かしさと恥ずかしさを思い出す。下らない。
全ては起きていない。起こしていない。無かったのだ。そんな事は無かったのだ。未練だ。僅かに残っていた未練が答えている。

下らない。下らない下らない。アレは駄目だ。毒だ。路を逸らす毒だ、甘い甘い『幸せ』という名の毒だ。性病よりも性質が悪い。
だから、斬ってやろう。近づいてくればそれなりに相手はしよう。使えそうなら使おう。
だが、ソレは在り得ない。俺はアレ…月村すずかとは他人だ。他人でしかない。関係など無いのだ。
だから言ってやろう。けじめだ。これにて『未練』は駆逐する

「IFだよ。それだけの話だ。ただのけじめだ。ソレに言うだろ? 汚物は――――――――」

『Desinfizieren; sterilisieren.』

その通りだクロイツ

汚物は消毒だ。


ガチンと音を立ててカートリッジが排出され、弾倉が一段下がる。引き金はとても軽く、圧縮に圧縮を施し無理やりに型に詰め固まった魔力の砲弾が排出される。
引き金は軽く、衝撃は強く。あらゆるモノを吹き飛ばしてくれる。
罪悪感? そんなモノは無い。
達成感? そんなモノは無い。
虚無感? それしか無い。

罪悪感を感じるには繰り返しすぎた。達成感等はまだまだ先に有るモノなのだろう。虚無感ばかりが募る。絶望ばかりが目につく。
あの言葉を掛けてくれたのは誰なのだろうか?
肩を叩いてくれたのは誰なのだろうか?
背中を押してくれたのは誰なのだろうか?
俺が尊敬していたあの人は…誰なのだろうか?

だれもかれもが死んでしまって、だれもかれもが生きていて、だれもかれも俺を知らなくて、だれもかれもを俺は忘れて逝く。

(今は…関係無いか)

今するべき事は氷村遊の消滅。

ソレを確実に行えば良い。鉛色の砲弾に打たれ押しやられ、氷村はグングンと地面に向かっていく。ギチリと何かが千切れるような音が聞こえた。
背中が痛い。正確には腰に近い横っ腹。痛みそのままに魔法行使を中断。そのまま落下する。この方が速いのだ。飛行魔法では追いつけない。
Sonic Moveを使おうかと思ったが辞めた。魔力の無駄づかいだ。体の到る所を強化しているのだ。そしてその状況でこのざまである。
肺に刺さったらしき助骨も魔力で固定し肺が動いても血液が肺の中に溜まらないように無理やり魔力でくっつけている。
魔力の消費は激しい。ユーノに聞きかじっただけの遺跡で使用する魔法技術の模倣は即席では出来なかったらしい。
本来ならば全く違う使い方なのだから仕方がない。骨を固定し穴の隙間を埋められただけでも上出来だ。地面に落ちる瞬間に浮遊魔法を使えば良い。

『Floater』

一瞬だけの浮遊。僅かな魔力で使用する。それだけで良い。受け身を取り転がるようにして立つ。
クロイツの解除と顕現。連続して行われる。立った瞬間に体が流れるがクロイツが顕現する事に因って体制を立て直す。
目の前には半分以上『門』に吸い込まれている氷村遊が憎々しげに此方を見ていた。
地面に残されている長い爪痕が抵抗の証拠だろう。腰を落とし右腕でクロイツ持ち直す。腰に回るベルトからカチっと音が鳴る。右腕離し引き金に指を掛ける。
視界は霞んでいる。だがこの距離ならば外しようがないしクロイツが補助してくれる。

「ガァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」

ソレは氷村遊の最後の足掻きなのだろう。それでも、俺はその場を動かなかった。正確には動けなかった。
チッと奴の爪が額を霞めた。ハラリと眼帯が落ちる。届かない。決定的な一撃は通らない。通さない。確信が有った。これ以上は無いという確信が有った。
背後にある温かさがソレを確信させる。視界の端に見える柔らかそうな尻尾が確信をくれる。
氷村が目を見開いて笑った。
口が動いた

―――――なんだ…お前も化け物じゃねぇか

あぁ、そうなのだろう。何も知らないモノが見たらまさしく俺も人とは違う『モノ』に見えるのだろう。
何も無い左目から漏れる赤い光は、人が放つモノじゃない。
ラプラスは未だに再起動の気配が無い。エラーの処理をしているようだ。ソレにも微量だが魔力を使う。

ガチャンと弾倉がまた一段下がる。その瞬間に五つの尾が氷村に向かって伸び、何かを引っ張り出した。
関係無い。今は関係ない。こんな事は聞いていない。迷わずに引き金を引く。

ドンという衝撃が体を駆け抜け体が半円を描くように滑る。真後ろに居た久遠が庇ってくれなければ立っていられなかっただろう。妖怪の膂力も出鱈目なモノだ。
氷村に目を向けると体の殆どが門に吸い込まれていた。後一押しが必要そうだ。クロイツはもう使えない体が限界だ。
魔力はまだ有る。もしもの為に節約していたのだ、余って無くては笑えない。
有りっ丈の魔力を限界まで圧縮。ソレを槍の形にする。圧縮した魔力を穂先に収束。それを解き放つ。
腕を振る力も残っていない。故に解き放つ。崩壊させる。槍は真っ直ぐに飛んでいく。
おかげで自爆だ。右腕から感覚が無くなった。
視界が歪む。




これで…終わった…筈だ









最後の足掻きだと決めて繰り出した一撃が理不尽に届いた。一矢報いた。直ぐに大地に爪を立てる。
一撃。中ったのだ。その証拠に理不尽の眼帯が落ちた。そして仄暗い空洞が俺を捉えた。
してやったりだ。そう思った。其処にあるモノを見るまでは。光っていた。薄っすらと、確実に光っていた。赤い。朱い光を放っていた。
在り得ない。なんだアレは? 疑問ばかりが募る。あの理不尽には理解できない事が多すぎる。だからこそ理不尽なのだろう。
冷静な部分がそう考え、笑いが出そうになり己の中で答えが出た。

(あぁ…コイツも化け物なのか)

その答えがストンと胸の中に落ちた。仕方がない。仕方がない。あんな化け物に勝てる筈がない。
だが、奴は人として生きてきた。その筈だ。だからこそ言葉にしてやった。何としてでも傷を負わせたかった。
日の下を悠々と生きる俺以外の化け物に、お前にその資格は無いと刻みたかった。
俺と『同じ奴』に言ってやりたかった。何が違うと。

臆病者

腰抜け野郎

安全な位置からでしか攻撃しようとしない卑怯モノ。

自身の優位を確認しなければ勝負をしない糞野郎。

自分勝手な理由で誰かを殺す外道

全ての言葉が自分に当てはまる。当たり前だ。だからどうした

だからこそ誇って生きてきた。

なのに奴は『人の中で生きている』

傷を残したかった。今のままの生の中で常に後ろめたさを感じさせたかった

―――――なんだ…お前も化け物じゃねぇか

それでも、理不尽は理不尽らしく表情を変えなかった。輝く鉛の砲弾が体を打つ。
このまま手を離してしまえば楽になれたのだろう。それでも、生きたかった。
体を半分に割る。既に痛み等感じなかった。当たり前だ。亡霊が何故痛みを感じなければならない。この力は『霊力』とは全く違う。狐の『雷』と全く違う。
全ては思い込みだったのだ。生きていれば痛い攻撃も、死んでいるのだから痛くない。簡単な事に気付けなかった。

割った体の半分が飛んできた槍に持って行かれた。だが半分は残っている。
体内に有る筈の『核』はあの女狐に奪われた。勝機は無い。逃げる事も出来ない。それでも生きたい。
後一撃。一撃で良い。残したい。あの理不尽に傷を残したい。

残っている右腕に力を込めた。少しだけ前進する。右肩に痛みを感じた。コレは思い込みだ。幽霊が痛みを感じる筈はない。それでも痛い。顔を上げる。
黒づくめの男が立っていた。立っているのもやっとの状態の様だ。そして倒れた。
黒づくめの男が倒れる瞬間に視界が赤く染まった。拳が顔を打った。
思わず手から力が抜けそうになる。
女が立っていた。右肩には小太刀が刺さっていた。ソレを引き抜き右腕に突き刺した。腕が半分切れた。其処で女も動かなくなった。
深緑の光を纏った男が黒づくめ男と女の肩を支え引きづりながら目の前まで歩いてきた。腕の半ばで止まっていた小太刀足をかけた。
支えられている男と女は意識を失っていなかった。爛々と目が輝いていた。

男が言った。

「さっさと逝けよ。化け物」

グッと足に力を込められたのが解った。

女が言った

「あぁ…そう言えば、こんな時に言う言葉が有ったわねぇ」

深緑の男が言った

「この間やってた洋画とか言うヤツのだろ?」

黒づくめの男が言った

「あぁ…俺も見ましたよ」

ブチリと腕が千切れた。

三人が右手の拳を握り親指だけ立て、思いっきり下に向けて言い放った

「「「とっととクタバレSon of a bitch!!」」」

体が吸い込まれる。心が竦む。また感じた、何度も感じたモノを再度感じた。理解できた。
怖い。あの理不尽が怖かった。怖かったのだ。
だが、今はそれ以上に目の前に居た三人が怖かった。あの眼が怖かった。
そして理解する。

明智良哉は理解できない部分が多く怖かったが、その中身は理解できた。感じる事ができた。だから怖かった。怖くなった。今はそうでもない。
だが、目の前の三人は違った。理解できる。人間だ。今まで沢山殺してきた人間だ。それでも怖い。
あの瞳に宿る光が怖い。勝てないと思ってしまう。負けると思ってしまう。
そこで、やっと理解できた。

何故、自分たち夜の一族が影に隠れて生きるのかを。
一個の生命体として人間を上回る筈の自分達が影に潜んでいるのかを。

人間ではなく。人間全体、『人類』こそが自分達以上の化け物だったのだ。

(あぁ………畜生)

氷村は最後にそう思った。





昔、半世紀も遡らなくて良い本当に少しだけ昔。
夜の一族と言う人間よりも長寿で力強く知恵の有る一族の中に一人の子供が生まれた。
吸血鬼、人狼などの幻想の中に生きるモノの血を引いた一族の中に男の子が生まれた。
赤ん坊は少しずつ知識を蓄え自我を形成し少年に成った。そこで初めて『自分』と『他人』の違い知る。
人よりも強い。ソレは少年にとって一つのステータスだった。容姿も優れている自覚もあった。
そこで、一つ疑問に思った。
『なぜ、自分達の事は秘密にしないといけないのだろう』
周りの大人達は答える
『他の人達を驚かせてしまうからね』
『人は自分達と違うモノを極端に怖がるから』
『社会に混乱を招いてしまうから』
『世界から排除されてしまうから』
最初はそれで納得出来た。だが、初めに抱いた疑問は早々無くならず。何時までも心の中に有った。
少年は青年に成った。女を知った。優れた容姿故、困る事は無かった。金も有った。長く続く一族の家系は本流に近づく程に大きな財を築いていた。
そして、血を飲み始めた。幼いころから時々飲んでいる輸血用の血ではない。たまたま、抱いていた女の頸筋を見ていたら飲みたくなった。
痛がっても冗談で済むだろう。そんな考えが有った。
止まらなかった。生きている女の頸筋から直接飲む血は今までに飲んだ事も無いほどに美味かった。勿論、女は死んだ。
命を握っているという感触は感じた事も無い位の素晴らしい優越感を与えた。
そこで思った。『生き血が美味かったのだ。ならば、その肉はどんな味がするのだろうか?』この時点で彼は血に溺れて居た。
力に魅入られて居た。歪んでいた。優秀だったからこそ、周りも気付かなかった。
初めて食べた肉は頬が落ちる程に美味かった。彼の歪みは確実なモノと成った。
丁度この時、彼は気まぐれと意地悪さで声を掛けた同じ年の女性に振られていた。否、振られる以前に他の男に取られていた。彼の認識ではそうだった。
優れた自分の思い通りに成らなかった事柄が有った。その事実が、彼の自尊心を傷つけて居た。
そして、次第に思うように成る。

『自分とその一族は優れている。その他の『人間』は劣っている』

生き血を啜り、肉を喰らう様になると更に思う様になった

『自分達のような超越種こそが世を統べるべきだ。劣等種はただの餌か労働力でしかないのだから』

其処には幼い頃からの不満も有ったのだろう。子供にとって誰にも言えない秘密を持つと言う事は負担を強いる。

その思いが故に、氷村遊は歪みを確実なモノにした。

自分達こそが日の下を歩く王者なのだと。社会の混乱など屁でも無い。人間は自分達よりも劣っているのだから当たり前だ。
優れている自分達に従っていれば良いのだと。

自分達がその存在を隠し、生きている事こそが間違いなのだと彼は思う様になった。

当然、人を殺しすぎて居れば一族のモノから追われる。自分と同じ考えを持つモノは少なかった。全く逆の事を考えるモノの方が多かった。

其処からは簡単だ。彼は追手を振り切り、国を離れ活動しテロリストと呼ばれる様になる。
そして、どこの馬の骨とも解らない子供に殺さされた。

ただ、それだけの話。


綺堂さくらは纏められた書類の内容に自分が知る過去の事を加えて、そう纏めた。口にした紅茶は冷めてしまっていた。
ふぅ、とタメ息を付くと背筋を伸ばし前に座るかわいい姪っ子に視線を向けて言う

「こんな出鱈目信じれると思う?」

「思わない。でも、これを信じて貰わないと話が進まないのよ。さくら姉さん」

ハァ、と此方もタメ息を付く

「忍…私はこれで善いわよ? それでもね、『タタリ』の事の詳細と『久遠』の事を入れてくれないと神崎が納得しないわよ」

「あら? 明智良哉の事じゃなくて?」

「それは向こうにも通じるから良いの、当主自らが久遠本人から詳細を聞いてるんだから…ソレに明智君だっけ? 彼自身にコチラ側に来る意思は無いんでしょ? だったら良いわよ。書類を整えろって言ってるの…それと、すずかは大丈夫なの?」

「……まだ、解らないわ」

「…そう」

ひゅぅっと風が吹いた

「「ハァ…」」







あとがき

遅れてしまい大変申し訳ない。とうとうマイPCが旅立ちました。物理的に基盤を踏みぬかれて…
12月に入って少ししてバラして掃除をしていたらバキっと…弟に踏みぬかれてたよ…
後、海外にも三日ほど出張? なんか着いて来いといわれて行きましたよ。何もしていませんが。英語しゃべれないし。
まぁ、あれですよ。これからまた忙しくなる。仕事を辞めたいと思う今日この頃です絶対魔王もやってました。再び真・恋姫もやり、マジこいもやってたり。なぜか今はフィギュ@を再びやっている。何がしたいのかが正直自分でもわかっていません。

なんか、今回はリハビリも兼ねているような感じです。生温かい目で見てくれたのならうれしいです。
さて、次回ですが。
ヒロインが何を失ったのかが判明するかも? すずかは再びフラグを立てるのか? 久遠はどうなるのか? 
的な感じで書けたら嬉しいな。


今回はいつものなし




































と、言うことはない
↓いつもの


明智良哉

ヒロイン兼主人公

毎回瀕死。今回は

「ヒャッハー!! 汚物は消毒だぁー!!」

となった。


クロイツ

初めての顕現。
本来ならば腰だけではなく胸の真ん中でクロスするようにベルトが包む。
360°回転できる。盾にも出来る。ベルトの上を好きに移動できる。勝手に固定もできる。
結構硬い。プラスで重い。シュベルトもクロイツも重さがある。無くす事も出来るがあえてしてない。
銃身が焼けつくまで撃ち続けられそうなアレに似ている事もない。
声は大塚芳忠さんをもっと掠れさせたような声を想像してください。

ルーダー

最後は劇画タッチだと思う。

ファラリス

こいつも最後は劇画タッチだと思う

高町恭也

人間失格だと思う。キャラも違うと断言できると思う。
こんな熱血じゃないと思うんだ。
やっぱり最後は劇画だと思うんだ。

こんなところかな?

オヤスミー。修正したいけど眠いので寝ます。ごめんね


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