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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] タタリ編十
Name: BIN◆d3245a21 ID:4b8c7aee 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/16 02:55





きぃと椅子が音を発した。古臭い木造の椅子は僕なんかが体重を掛けただけで音を出す。古臭いとか趣味が悪いと周りから言われる事も有るが僕は気にしない。
座るなら柔らかい木造の椅子に限る。ちゃんとクッションも貼り付けてあるし何より、木の臭いが僕を落ち着けてくれる。コレだけは譲れない。
勿論、プラスチックや化学繊維等で出来た椅子が嫌いと言う訳ではない。
そんな事を思いながら、裁判の資料を纏める。僕の裁判ではなく、フェイト・テスタロッサの裁判に関しての資料だ。
僕としてはコレで十分だと思っていた物でも、本職というかソレに係わる者としてはまだ足りない箇所が有るらしい。

「はぁ…クロノ、コレで良いかい?」

「……本当ならもう少し直したい所だが、コレで良いだろう。」

クロノ・ハラオウンは僕の渡した書類を受け取ると踵を返した

「ねぇ、フェイト達は元気?」

「元気だな……寧ろ元気すぎる。」

そう言うとクロノはため息を吐いた。
裁判に新しい事件にその起訴やらが一気に舞い込んできたらしい。少しだけ同情するが頑張れとは言わない。絶対に言ってやらない。
だって、僕はクロノの事が気に食わないし。

「君は暇そうだな」

「まぁね。今回の事では僕も一族の一部から批判と言うか中傷というか…そんなのも有るからね。いつも通りには行かないんだよ。そっちは大活躍らしいじゃない。」

「活躍なんてしない方が良いんだが…そうも言ってられないんだ。良哉が来るまでに出来るだけ落ちつかせて置きたいんだ。」

気に食わないクロノと僕の共通の話題と言うか、友人と言えば彼だ。ソレを思うと少しばかりの優越感が在る。僕はクロノの知らない彼を知っている。
そう言えば、彼は使ってくれただろうか? 彼の特性には合ってる『魔法』だと思うんだけど…

「元気にしてるかな?」

「当たり前だ。ルーダー・アドベルトに、ある意味でアースラの鬼札のファラリス・アテンザが一緒なんだ。僕が戦いたくない人№1何だぞ? ファラリス女史は。」

そんな事を話しながら過ごす時間。僕は何となく気に入っている。ある意味、クロノには遠慮してないから気が楽なのかもしれない。
次に連絡が入るのは何時かな?






八神という表札の掛かっている一軒屋のリビングで、ギリっという音が響いた。
音の鳴った場所は二つ。サーチャーにより映し出されている映像を見ている烈火の騎士の手。
獣の尾を持つ大柄な男に拘束された真紅の髪を持つ少女の口の中。
少女が叫ぶ。

「退け!! 退けよザフィーラ!! あいつが、良哉が死んじまう!!」

「冷静になれ!! あそこに映っている男は管理局の者だぞ!!」

それに大柄な男。ザフィーラが怒鳴り返す。その様子を見ながらハァとタメ息を吐く湖の騎士・シャマル。シャマルは結界を張ってて良かったと思いながら画面に見入る。
理解できない現象が起きている。理解できないモノが人間と魔導士と使い魔の様な者と戦っている。否、殺しあっている。
あの使い魔の様な者も理解できない。なんだアレは? 見ているだけで圧倒されそうなモノが、何かが在る。見ているだけソレが分る。サーチャーの感度は最大限に上げている。その為だろうか? あの少女の様な者を近くに感じる。だからこそ違和感が在る。
魔法とは違う異質な力の所為だろう。ソレしかない。画面の中でその少女の様な者は女性に変わった。長い金髪。ゆらゆらと揺れる五尾。五尾が少年…明智良哉を包む。

(あ、気持ち良さそう)

全然関係ない事を考えてしまった。でも、あのモフモフしたモノには包まれてみたいと思う。
横目でシグナムを見る。我らがリーダーはどの様な表情でこの戦いを見ているのだろうか? 
この意味の分らない、理解できない現象が溢れている戦いを見てどう感じているのだろうか?
そもそも、亡者など始めてみた。正直にアレは怖い。ホラーだ。夏に強制的に見せられた映画よりも怖い。生々し過ぎる。
人を殺した事は在る。自身のオリジナルも沢山殺しているだろう。だが、死体が好きな訳ではない。殺しが好きな訳ではない。

そう思いながら横を見て後悔した。

笑っていた。

目が笑っていた。表情は冷静そのモノだ。口元は引き締められていて緩んだ所など一切見当たらない。
でも、それを台無しにするぐらい目が笑っていた。ソレと同時に濡れていた。ある種の感動や悔しさの為かもしれない。
思えば、彼女にはあの少年に対して相談を受けた事も有る。助けに行きたいのだろう。共に戦いたいのかもしれない。戦ってみたいのかもしれない。あの場に行けないのが悔しいのだろう。あの場に居ない事が悔しいのだろう。
ヴィータは純粋に心配しているのだろうが、私達はあそこへは行けない。行ってはならない。私達の存在がバレるのは大変拙い。此処に拠点が有るとバレる可能性が高い。
考え事をしていたら、いつの間にか怒鳴り合いわ終わっていた。そして私は画面に視線を戻す。その瞬間ヴィータが吐いた

「…すげぇ」

あぁ、確かに。コレは理不尽過ぎる。








実を言えば、今行っている事は予定にはなかった。本来ならば、此処まで最悪の状況に成らない筈だったからだ。
何事も最悪の可能性を考えておくものだが、此処まで予定が狂うと笑いが出る。
それでも、この結果は当たり前なのかもしれない。俺と久遠は氷村遊が此処までに成るとは思っても見なかったし良そうもしていなかった。久遠が言う

「良哉…気を確りと」

「うん。分ってる。だから、頼むよ」

同じ土俵に立てたのだ。これからは力の強さではない。意思の、理性の、本能の、信念の強さが関わってくる。
それにしても、ボロボロな自分の体を見ると良く生きていたものだと思ってしまう。
柔らかい五つの尾に包まれているから既にその姿は見えていないが、その後が不安になってしまう。
死にたくはない。死ぬのは怖い。忘れられるのが、忘れてしまうのが、無くなってしまうのが怖い。
それでも、奴を滅しない限り先は無い。
俺は飛び出し、氷村遊に言ってやる。

「さぁ、氷村遊。此処からは」

全力だ






理不尽だ。余りにも理不尽だ。こんな事が有って堪るか、有って良い筈が無い。卑怯だ。卑怯すぎる。何だソレは。なんでだ。なぜ、なぜ!!

「傷が一つも無いんだ!!」

突き出した拳は、掌を外から添えられて流される。当たり前のように顎をかち上げられる。仰け反る体が言う事を利かない。追撃に体を硬くするれば何も無かった。
ただ、自分より数歩先で殺したい奴が構えていた。
腰に添えられた右腕。突き出された左腕、腰を少し落とした体制で明智良哉という名の餓鬼が無表情に俺を見ていた。
チョイチョイと左手が動いた。

掛かって来い

その意が汲み取れた。腹が立つ。あの餓鬼に。腹が立つ。あの餓鬼が起こす理不尽に。腹が立つ。高が人間がこの身に一撃をくれた事に!!

吼えた。言葉など必要ない。俺はあいつを殺す為に此処に居る。そうだ、最初からソレだけが目的だった。今や俺を喰らったバケモノは、俺が食い殺した。引っ張られる事は無い。だから殺す。完膚なきまでに!! 

最速で前に出る。右の拳をフェイントにさらに一歩前に出る。途中で右腕を折り、右の拳に左の掌を合わせて肘を入れる。完全に入った。
そう、入ったのだ。必殺だ。顔面が陥没して当然の一撃だった。その筈だ。

「捕まえたぞ。氷村遊」

なぜだ?! なぜ生きている。なぜだ!!

左の手首を掴まれた。体が沈んだ。何よりも溝に衝撃が有った。息が詰まる。顔を下に向けようとする。膝を出そうとする。当たり前の様に胸の中心に裏拳を入れられた。

なぜだ!!

体が落ちる。膝が折れた。コレは拙い。眼前に迫る掌が見える。捻りが加わっているの明白だった。眉間にソレが突き刺さり仰け反る。体から前方に雷を放った。これで少しはあの餓鬼も動けなく成る筈だ。
だが、膝を折り仰け反った状態の腹に踵が減り込んだことに拠って否定された。

なぜだ!!

減り込んだ足に更に体重を乗せられる。仰け反った状態の俺の顔に影が掛かった

(ま…ず…い!!)

だが、遅かった。無理に振るった右腕は空を切り。腹には更に衝撃が伝わった。

なぜだ!! なぜ、幽体で有るこの体に肉弾戦でダメージを与えられる?!不思議な光は纏っていない。忌々しいあの『力』を使用していない。武器すら持っていない!!
奴は俺の事を空中から見下ろしている。その両眼で見下している

(待て…なぜ両の目が…)

気づいた。簡単な事だ。そうか、そういう事か!!

ならば、出来るはずだ。俺にも出来るはずだ。奴を殺す。簡単な事だ。今まで通りだ。

「餓鬼ィィィ!! テメェの優位も其処までだぁ!!!!」

亡霊ならば空だって飛べる。そういう事だ。

体は、自身が思った以上に動いた。ドンドン動きが良くなってきている。下を見れば俺の推測が正しかった事が理解できた。あの妖狐の尻尾にあの餓鬼の体は包まれていた。他の人間もいつの間にか妖狐の後ろに居る。

同じ幽体ならば、俺の勝ちだ。バケモノを内側から食い殺して、その力を手にした俺の勝ちだ!!




もう、魔法などは関係ない。ただ、意志の強さが勝敗になる。久遠は其の事を知っていた。故に心配などは微塵も無い。あの強固な精神。重く静かな理性。何よりも苛烈な信念。
勝てない理由が無い。認めたのだ。私が、妖怪と呼ばれる人より遥かに強い生物が認めたのだ。同じ土俵、それも精神的なモノで殺し合おうモノならば自分は勝てない。
体験すれば分る。解る。解ってしまう。

狂わない狂人

壊れない壊人

例えるならそう成るだろう。だからこそ、自分が行う事を、行わなければいけない事を確実に行う。幸い、二人の人間が良哉の肉体を治療している。これなら、大丈夫だ。暫くは動けないかもしれないがそれでも助かる。
だから私は結界に穴を開ける。

そこから溢れ出すのは亡者。私の役目は体を守る事。明智良哉の肉体と、此処に居る人間を護る事。天神様の道に引かれて集まった亡者は結界により此処に入って来れなかった。だから、穴を作ってやった。天神様の道は閉ざされている。残っているのは黄泉への路。
そう、あの世への冥府への路。
次々と引き込まれていく。中には逃げようとするモノも居るが無駄な事だ。此処には『桃』等ない。アレから逃れられる亡者は居ない。
五尾を操り、憑こうとする亡者を薙ぎ払う。

「久遠」

「ん。信じて、恭也」

此処には彼が居る。計画には若干の変更が有る。私は彼女を救いたいから!!




ヴィータの吐きが聞こえた。あぁ、そうだコレは凄い。目で追えない。対峙すればまだ、気配や直感や経験で幾らかは対処できるだろう。
だが、速すぎる。戦場が空に変わった瞬間からは明智の優位だ。
攻撃を受け流しカウンターを仕掛ける。後の先の戦い。全てを流す。相手が空中戦が初めてなのもあるだろう。
何よりもだ、戦い方がえげつない。
態と攻撃を受けるという事を何度も繰り返している。相手が必殺と核心している一撃のみを喰らっている。だが、傷などつかない。
理不尽だ。理不尽にも程がある。何よりもあの場所で異常なのは、明智良哉の体が『二つ有る』と言う事だ。
理解が出来ない。幻術ではない。そんな時、シャマルが言った

「…幽体離脱?」

「…シャマル、お前、疲れてるのか?」

ザフィーラがそう言うが、私も一瞬そう思ってしまった。だが、考えれば辻褄が合う
最初、明智は攻撃という攻撃をしていなかった。周りはしていたが、必ず相手に触れるには血を付けていた。
だが、そんな事が有り得るのだろうか? 

一方、シャマルの発言を馬鹿にした様に言ったザフィーラは明智良哉の評価を改めた。
生き汚い小僧から正しく難敵に評価を修正する。
あの鉄の棒には細い糸の様な物が取り付けて有ったのだ。ソレは小さな金属製の釘…ボルトに繋がっていた。それにより、相殺し切れなかった雷を流したのだろうと言う事は解った。だが、ソレはバレれば意味が無い物に成ってしまう。つまり、使い捨てても良い物だと言う事だ。だが、それは違った。あの場で屯している亡者がある一定の場所から列になっているのだ。
道を作っている。あの糸とボルトが。あぁ、そうなのだろう。主が話してくれた神社のソレだ。あの形は主が説明してくれた鳥居と言う物で、もう一本新たに突き刺さった鉄の棒からも伸びている物と、初めに使ったあの糸とボルトが階段。つまりは路の役目を担っているのだろう。

(どこまで読んでいる? どこからどこまでが…予想の範囲だ?)

そこで気づく。口では馬鹿にしたが、成程。シャマルの発言は略正解なのだろう。

「すまんな、シャマル。お前は正しいのかも知れない。」

「う? え? えぇぇぇぇ?! それじゃあ、あの、明智良哉君は幽体離脱していて、あの戦ってるのはお化け?」

「お、そうか。そう言う事になるな…」

明智良哉が圧倒しているからだろう。ヴィータも冷静さを取り戻し、シャマルをからかう余裕が出てきたようだ。だが、出来るだけそっち系統でいじって欲しくはない。
アレに毎夜毎夜、トイレの度に起こされるのは不愉快だ





立て続けに襲ってくる疑問と不安。氷村遊に取って目の前の存在は自身に対する絶対的な理不尽に成っていた。
確実に心臓を破れる衝撃を叩き込んだ。
股間を蹴り上げた。
後頭部掴み喉に肘を入れた。
頚椎に膝を叩き込んだ。

無傷。無傷無傷無傷。

理不尽にも程が有る。確実に相手を殺せる威力を伴った打撃は全て明智良哉の体に入った。入った筈だった。その結果が無傷。咽る事無く、喘ぐ事無く、血を、涙を、汗さえも流す事無く明智良哉が眼前に立っている。
雷の一撃だけはまだ放っていない。恐怖が湧き上がる。ソレを否定する。そんな事は有り得ない。必ずこの一撃は相手を殺す事が出来るのだと縋り付く。負ける筈はない。負ける事は無い。避ける事は出来るだろう。初動を見切られれば仕方がない。
故にだ。ゼロ距離からの雷ならば当たる筈だ。そして、その一撃は明智良哉を殺すのだ。
だからこそ、もう一度試みる。

「ガァァァァ!!」

右の大振りは当たり前のようにいなされる。それで良い。
そのまま体を回転させて蹴りを打ち下ろす。逸らされる。それで良い。
足首を左手で掴み、引きおろす。抵抗など無い。
明智良哉の体を反転させて宙吊りにする。そこから右フック体に当たるが呻き声さえ聞こえない。ゾクリと冷たいモノが背筋を駆け上がる。
右の一撃の衝撃が明智良哉を揺らす。手を離し頭を蹴り上げ首を掴む。まるで風に巻き上げられた木の葉の様に高く上がる。背後を取り羽交い絞めにする。何の抵抗も無い。

ゾクリ

「シネェェェェ!!」

放った。文句の無い一撃。今まで放った雷の中で一番の威力だった。余りの威力に腹と胸が少し焼けた。だが、すぐに痛みは無くなった。当たり前だ。亡霊は殺せない。既に死んでいるのだ。説得され昇天するような心も無い。
目の前には何も居なくなっていた。

「はっ…ハハハハハハ!!」

勝った。殺した、殺せた。復讐は成された!!

「馬鹿が!! ハハハハハハ!! 馬鹿が馬鹿が馬鹿が!! 余裕ぶっこいてあっさり死にやがった!! ざまぁみろ!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

ゾクリ

「!!」

背筋が冷える。じわりじわりと競り上がる不安。否定する。否定する。辺りを見回す。何も無い。そう、自身以外には居ないのだ。勝ったのだ。氷村遊は勝ったのだ。明智良哉に勝ったのだ。
そう確信する。己は絶対だと言う誇りと自信が再び帰ってくる。
だが、理不尽は何所までも理不尽でしかないのだ。

「それで? そろそろ始めても良いのか?」

震える。体が震える。帰ってきた誇りに皹が入る。

黒い瞳が月を背にして見下ろしていた。

(何だ…アレは)

揃っている両眼。其処には何も映っていなかった。否、其処には何の感情も無かった。人形の様な、息絶えた死人の様な、今すぐにでも死ぬだろう老人の様な…
光を灯さない両眼が自分を見ていた。

「あ…あぁ…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

叫ぶ。逃げながら叫ぶ。ソレしかできない。殺せない。なぜか殺せない。自分が殺せない。理不尽だ。無理だ、無理だ無理だ無理だ。殺せない。何度も殺した筈だ。殺せた筈だ。なのに奴は存在する。

ドンと何かぶつかった。

「逃げるなよ」

「っ―――――――!!」

拳を突き出した。手首を掴まれる。足を払われた。吹っ飛ばされた様に足が上がる。体が横に泳ぐ。掴まれた腕事泳がされる。回る視界が回る。無防備な腹に掌が打ち込まれる。内臓が破裂する様な痛み。血を吐いた。無理だ、勝てる筈が無い。逃げなければ。逃げなければ殺される。
痛みが邪魔して動けない。
顔を上げるのでさえ辛い。

(殺される、殺される!! あの時の様に!!)

初対面での敵対だった。アレの気が知れない。絶対に狂ってる。自分と同じ様にイカレてる。そうイカレてる。アレに自分を殺す明確な理由は無いはずだ。最初に聞いた理由では弱い。弱すぎる筈だ。アレは関係ない。明智良哉と関係ない!!

どうでも良い様で、知らなければ成らない疑問が頭に浮かぶ

なんで―――――!!

視線の先では、鈍く輝く槍を構えた明智良哉が居た。





痛みとは何だ?

腕を切り飛ばされる事か?
足を押し潰される事か?
全身を焼かれる事か?
腹に穴を空けられる事か?
全身を吹き飛ばされる事か?
目を抉られる事か?

肉体が有ればそうだろう。味わった。耐え難い。アレは痛い。気を失う。
だが、否だ。
魂の、精神の、心の痛みではない。
氷村遊如きに屈する精神等持っていない。壊れる心を持っていない。折れてしまうような誇り等、犬に食わせてしまえば良い。
忘却こそが恐ろしい。死ぬ事が、全てが無かった事になるのが恐ろしい。

魂にリンカーコアは付随しない。アレは肉体に有る器官だ。故に魔法は使えない。此の侭なら使えない。元が無いのだ。コレでは解らない。
アレはどこまで行っても寄生体だ。タタリという存在に寄生している害虫の様なモノだ。アレを砕くには力が要る。でも、そんなモノは持っていない。
無いものは無い。だから、有る所から盛ってくれば良い
ガリガリと自分にだけ聞こえる音を立てて仕立て上げる。ユーノ、お前がくれた術式は今此処で役に立っている。実際に魔法として使えるかどうかは解らない。魔力を使ってないから解らない。それでも、解ることが有るのなら…

「お前は天才だ」

無様に這い蹲る氷村に狙いを定める。確かにコレは俺の特性に合っている。圧縮・縮小・収束。遠隔での魔力操作なんてしなくても良い。

「DornbuschFliegen」

さぁ、暴け。茨の槍よ!!

投擲した鋼色の光を放つ槍が崩れる。崩れて崩れて屑の様に成っていく。元は槍だったものが削がれて行く。散り散りになったソレは正しく釘の様だった。だが、その形は歪。
歪なそれは釘に例えるには荒々しすぎて、自然に生きる茨の様だった。
一つが二つ。二つが四つ。四つが十六。更にそこから崩れるも、存在を維持できずに他の茨と一緒になる。そうして行く内に茨は三十に分かれた。

腕を削ぐ、頭を、胸を、肘を、腹を、腿を、脛を、足を、抉り、切り裂き、貫く。
悲鳴が上がる。それは氷村遊にとって、怨霊にとって、妖怪にとって、絶大な威力を誇る茨の一刺し。
命を削って作られた絶対の茨。
明智良哉は、ソレを見届けると蜃気楼の様に姿を消した。








高町恭也は考える。意思とは何か?

自発的に目的を選択することだ。

当たり前の答えが頭に浮かぶ。意思なくしては、何も出来ないだろう。ただ、流される。利用される。最後に捨てられる。意思がないモノは人形と同じだ。
人に伝えずとも良い。ソレを持っていれば良いのだ。選択できる。意思が有るから行動できる。
ならば、自分がしなくては成らない事は何だろうか?

強くなる事。

確かに、ソレは正解だ。だが、今は違う。

明智良哉を助ける事。

確かに、ソレも正解だ。だが、今は違う。

巻き込んでしまった友人を助ける事。

確かに、ソレも正解だ。この人が居なければ死んでいただろう。だが、ソレも違う。

敵を斬る事。

確かに、ソレが正解だ。だが、どこを斬る? 

首か? 否、ソレぐらいでは死なない。

ならば、胴か? 否、それでも死なない。

左右に斬り分ける? 否、それでも死なないだろう。

ならば何処だ? 

核だ。

氷村遊が『今の氷村遊』としていられるモノの根本から斬る。

久遠は言った。俺にしか聞こえない方法で告げた。

『良哉が整えるから…核を斬って』

あの少年と少女が教えてくれた。

久遠は言う

『良哉がアレを殺す力を持ってない。持ってはいるけど使ったらいけない。弱らせる事は出来るけど、ソレは一時的なモノでしかない。私だと、力強すぎる。余計なものまで消してしまう。だから…』

茨の弾丸が氷村を抉った。落ちる、氷村が落ちる。俺から七歩程離れた場所に落ちる。顔を上げる。少女の横顔が視界に入った。少女が涙を流していた。なぜだ?

『持ってはいるけど使ってはいけない』

理由は分からない。痛みが有るのかも知れない。だが、今は関係ない。

相手を斬るという意思を込め、己の血で赤く染まる二刀を構える。
無様な姿で起き上がる氷村は、呆然としていた。モノクロの世界に入る
音が離れていく、体に感じる筈の風の感触も消えていく。既に血の臭いも感知できない。
其のモノクロの世界で、ソレは明確に笑っていた。にやけた顔だった。傷口、体中にある傷口が塞がっていく。
『核』と呼ばれるモノも隠れていく見えていたソレは醜悪なモノだった。
赤黒いモノに青と黒を混じらせた様なものが取り付いた姿だった。赤黒い球体は綺麗な円を描いていた。それ単体なら、ソレは美しかったのかもしれない。残念な事に取り付いたモノは歪で汚く、醜かった。

(どっちだ? どっちを斬れば良い?!)

間合いまでは後五歩。傷の塞がりが早い

四歩

醜悪な方を斬ろうと決める。

三歩

傷が塞がる。

(拙い?!)

二歩

鉛色の刃が再び傷を付け、途中で弾けた。聞こえもしない声が聞こえた気がした

一歩

何かが目の前に立った。

氷村だ。完全に回復した氷村が目の前に立っていた。抜刀。間合いに入られすぎていた為、刃が途中で止まる。
刀が抜けない?! 挟まれているのか?!
モノクロの世界から出てしまう。焦りがそうさせてしまった

「惜しかったな!! 高町きょ「お前がな!!!!」ギァ?!」

深緑の一撃が、血に濡れた膝が氷村の横顔に入り弾き飛ばす

「往け恭也!! 核の繋がりを断てだとよ!!」

「はい!!」

再びモノクロの世界に入る。膝が軋んだ、体中から体温が奪われた

(づっ?! 限界が…)

ミシミシと膝が軋む、筋肉が音を立てる。

氷村が下がる。笑いながら下がる。目標は辛うじて見えている。あの分身を出すのに力を使った為のロスなのだろう。
だが、足りない。一歩ではない。半歩足りない。この足では『次が無い』。これ以上は走れない。何も出来ない

(何も出来ない? なぜ?)

弱いからだ。高町恭也が弱いからだ。力が足りない、戦いの流れを見る目も、敵を翻弄する早さも、敵を妥当する意思さえ弱いからだ!!

(後、半歩!! 半歩だけで良いんだ!!)

動けない。これ以上早くは動けない。それでは駄目だ。だがどうする? 神速をもってしても半歩足りない。これ以上、手は無い。考え付かない。

(神速で足らない…足らないなら!!)

一つ、無謀な賭けにでる。今までやった事は無い。やった人物も知らない。
それでも、コレに賭けなくてはならない。無様だ。あぁ無様だ。笑え、笑えよ高町恭也。自分を嗤え。何が『何も出来ない』だ。勝率の高い策だけ羅列するのは馬鹿でも出来る。あぁ、そうだ。高町恭也…俺は弱い。実践など数える程しか行っていない。奴らはどうだった? 諦めたか? 違うだろう!!

(足掻いた。足掻いて足掻いて足掻き抜いて)

死んだ。殺した。あぁ、そうだ。俺が殺した。護る為に殺した。そうしないといけない位に強かった。粘られた。
駄目だ。これでは駄目だ。俺はまだ足掻ける。どれほど無様で、滑稽な姿かは分からないが、足掻ききって見せよう

モノクロの世界の中で更に神速を使う。使ってみせる。
断つべき場所は知っている。斬るべき場所も知っている。なら、後は行動するのみ!!

膝の軋みが止まらない。体中が上げている悲鳴が止まらない。体の感覚が無い。

でも

確かな感触を

俺はこの何も見えない世界で感じた

世界が戻る。色を認識する。熱さと冷たさを感じる。腹から喉に込み上げる不快な臭いを認識する。

ただ、敵の悲鳴だけが聞こえる

「無茶しやがって…お前もあいつも、少しは戸惑えよなー」

視界が高くなった。右膝が痛みを訴える。俺はルーダーさんに支えられながら立つので精一杯だった。顔を左向ければルーダー・アドベルトの横顔が、その隣にはファラリスと呼ばれていた女性の横顔が在る。
真正面には無骨な鳥居が一つ。周りに目を向けて分かった。立ってから引きづられる様に動いていたらしい。

「氷村は?」

「お空の上よ…全く、私達は余り治癒系の魔法は使えないんだけど」

そう言ってため息を吐き上を向くファラリスさんに習い、俺も上を向く

「あぁ、アレは確かに無茶だ」

「でしょ?」

「つーか、あんなモン使われた普通に死ねる様な気がする」

俺達はそう言って笑った。






あとがき

ぶっちゃけると、最後まで書こうとは思った。でも、仕事が残っている。つーかテンションが変なので自分でストップしました。

……許して?

簡単なアレ↓


ルーダー・アドベルト

脇役、主人公にはなれない
でも兄貴。
なんだかんだで、良い所の繋ぎは持っていく

ファラリス・アテンザ

レアスキル持ちのマッド。
姉御と呼びたい。
クロノが苦手としている。

高町恭也

『閃』習得? 爆弾が出来たかも?
最後はボロボロ

クロノ

裁判中
良哉育成計画を企てている模様
なんだかんだでユーノとは腐れ縁になりそうだと思っている。
実はフェイトとリンディのやっている事の所為で疲れている。
おもにエイミィ

「…僕にだって限界はあるぞ?」

と、本気で言いそうに成る

ユーノ・スクライア

淫獣ではない。一族内でなんかあった模様
肩身が狭いらしい。
良哉とは友達?
古い物が好き。


あ~……ネムテェ。二時間とかでやるモンじゃねぇ…おやすみなしゃい

誤字とかは時間が取れ次第なおします。そっちもゴメンね・・・


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