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No.5159の一覧
[0] ループ(リリなの転生物)前書き [BIN](2009/02/24 00:14)
[1] ループ(リリカル転生・習作)[BIN](2009/01/01 01:45)
[2] ループの二(好評のようなので)[BIN](2009/01/01 01:46)
[3] ループの二ノ一[BIN](2009/01/01 01:48)
[4] ループの二ノ二[BIN](2009/01/01 01:50)
[5] ループの二ノ三[BIN](2009/01/01 01:52)
[6] ループの二ノ四[BIN](2009/01/01 01:52)
[7] ループの二ノ五[BIN](2009/01/01 01:52)
[8] ループの二ノ五ノ外――ムカつく変な奴。(俗にいう外伝)[BIN](2009/01/01 01:54)
[9] ループの二ノ六[BIN](2009/01/01 01:54)
[10] ループの二ノ七[BIN](2009/01/01 01:54)
[11] ループの二ノ八[BIN](2009/01/01 01:54)
[12] ループの二ノ終[BIN](2009/01/01 01:55)
[13] ループの二・五ノ一[BIN](2009/01/01 01:55)
[14] ループの二・五ノ二[BIN](2009/01/01 01:55)
[15] ループの二・五ノ三[BIN](2009/01/04 03:45)
[16] ループの二・五ノ四[BIN](2009/01/01 01:53)
[17] ループの二・五ノ五(修正しただけ)[BIN](2009/01/01 01:52)
[18] ループの二・五ノ六[BIN](2009/01/01 01:52)
[19] ループの二・五ノ七(ゴメン、また修正だけなんだ)[BIN](2009/02/23 22:06)
[20] ループの二・五ノ八。[BIN](2009/01/01 01:49)
[21] ループの三ノ一(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/03 03:10)
[22] ループの三ノ二(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/04 03:44)
[23] ループの三ノ三(すずか編 通称どN)[BIN](2009/01/07 00:03)
[24] ループの三ノ四(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[25] ループの三ノ五(すずか編 通称どN)修正しました[BIN](2009/01/11 03:07)
[26] ループの三ノ六(すずか編 通称どN・完結)[BIN](2009/01/13 13:50)
[27] ループの四ノ一(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:45)
[28] ネタ、作者の病気。反論は受け付けない俗にいうIF-----TS注意!![BIN](2009/01/10 23:02)
[29] 作者の病気は皆の病気?今回は軽度、前回は中度-----TS注意!![BIN](2009/01/17 08:23)
[30] ループの四ノ二(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/19 10:44)
[31] ループの四ノ三(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 21:02)
[32] ループの四ノ四(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/21 23:54)
[33] ループの四ノ五(やっとこさA,s…に入れてない?!)修正しただけなんだぜ?[BIN](2009/01/22 10:24)
[34] ループの四ノ六(やっとこさA,s…に入れてない?!)[BIN](2009/01/25 00:54)
[35] ループの四ノ七(やっとこさA,s…に入れてない?!)シグナムの紹介を追加[BIN](2009/01/26 20:29)
[36] ループの四ノ八(やっとこさA,sに入りました!!)修正[BIN](2009/02/08 23:00)
[37] 俺のあたまがバニングス!!!!!!!!!!! 熱病だ…自重しようTS注意!![BIN](2009/02/23 22:30)
[38] ループの四ノ九(やっとこさA,sに入りました!!)ミスッタ、ゴメンなさい[BIN](2009/02/23 22:28)
[39] ループの四ノ終(やっとこさA,sに入りました!!)修正しました[BIN](2009/07/07 22:21)
[40] ループの五ノ一[BIN](2009/04/13 03:32)
[41] ループの五ノニ[BIN](2009/04/26 20:00)
[42] ループの五ノ三[BIN](2009/05/11 22:58)
[43] ループの五ノ四[BIN](2009/05/13 23:20)
[44] ループの五ノ五[BIN](2009/05/18 01:48)
[45] ループの五ノ六[BIN](2009/05/18 01:45)
[46] ループの五ノ七(ヴィが活躍?)[BIN](2009/05/22 00:52)
[47] ループの五ノ八[BIN](2009/05/31 23:39)
[48] ループの五ノ九[BIN](2009/06/11 23:06)
[49] ループの五ノ十[BIN](2009/06/23 22:17)
[50] ループ・たたり編。開始[BIN](2009/06/20 14:29)
[51] タタリ編ー2[BIN](2009/07/07 22:15)
[52] タタリ編ー3[BIN](2009/07/24 23:29)
[53] タタリ編ー4[BIN](2009/07/07 22:11)
[54] タタリ編ー5[BIN](2009/07/24 23:27)
[55] タタリ編ー6[BIN](2009/08/15 01:35)
[56] タタリ編七[BIN](2009/09/12 21:06)
[57] タタリ編八[BIN](2009/10/15 01:49)
[58] タタリ編九[BIN](2009/10/21 02:16)
[59] タタリ編十[BIN](2009/11/16 02:55)
[60] タタリ編―十一[BIN](2010/01/22 23:08)
[61] タタリ編十二(少し修正・改行)[BIN](2010/03/23 03:03)
[62] タタリ編 十三(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:48)
[63] 日常?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:44)
[64] 日常2?(修正しました)[BIN](2010/03/23 02:39)
[65] A'sに入った!! 一[BIN](2010/03/23 03:22)
[66] ループのA'sの一[BIN](2010/04/20 23:55)
[67] A´sの二[BIN](2010/05/12 19:12)
[68] A'sの三[BIN](2010/06/08 22:45)
[69] A'sの四(2010.06.12修正)[BIN](2010/06/12 01:33)
[70] A'sの5[BIN](2010/07/03 21:15)
[71] A´sの6[BIN](2010/08/27 20:45)
[72] A´sの7[BIN](2010/11/24 23:35)
[73] A´sの8[BIN](2010/12/31 23:29)
[74] A´sの9[BIN](2011/03/27 16:24)
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[5159] タタリ編ー3
Name: BIN◆c8942e10 ID:4057465b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/24 23:29
コトっと、机の上に置いたコップが音を立てる。

「んっーーー」

椅子に座ったまま伸びをすると、ゴキゴキと背骨が音を立てた。

「っはぁ~…やっぱり、少しは運動した方が良いわね」

実を言うと、最近お腹周りが少々気になる。コレも美味しい御飯を作れるルーダーさんが悪い。

そう思いながら、私はこの家に…世界に持ち込んだ端末の画面を観ながら一口コーヒーを飲む。

「ふぅ、外見は旧式も旧式だけど使い始めたら中々味が有るのよねぇ」

この端末は、外見はこの世界のPCだが中身は違う。中身は私が私物として持っていたガラクタになっていた物を修理した物。
普通に買おうと思ったらそれなりに高いので、ジャンク品を漁って組み立てた物だ。
給料は余り使う道が無いので有るには有るが、出来るだけ使わない方が良い。それに、何だか得した気分にもなれる。

机の上に置いてあるカレンダーは、少し前にルーダーさんと良哉との三人で買い物に行った時に購入した物。
今日の日付を見ると赤丸がして有ったので、慌てて着替える。

(今日は私が料理当番の日だった)

料理は苦手だ。そんな私でも作れるこの世界で夢の料理に出会った。その名もカレー。
以外にコレは私でも作れた。各種のスパイスを組み合わせるのは薬品の実験にも、デバイスをより高性能な物にする為に行うパーツの適合実験にも似ている気がする。

「良哉はまだ部屋に居るかしら? チキンかポークかビーフか…意外な所でスープかの要望ぐらい聞いとかないと」

ルーダーさんは大概の物なら食べれるから別に良い。その癖、舌が肥えてるから腹が立つけど…
私は、そう考えながら部屋を出た











「づっ! 」

「良哉?」

あの顔を見て死んだ。あの顔は覚えている。俺はアイツを知っている。

幻痛を捩じ伏せると直ぐにヤツの名前が頭に浮かんだ。
頭の中で奴の顔と名前が一致した時、今が何時でどういう状況なのかを理解する。
夢写しが終わった瞬間だ。時間が無い。奴に対する有効な手段が解からない。奴の攻撃をマトモに防ぐ事すら出来ない俺に、残された時間は少ない。

「……戻ってきた?」

久遠の言葉に、体が一瞬硬直する。俺が言葉を出す前に、久遠が言葉を紡いだ。

「夢写し…良哉忘れた?」

「いや、覚えてる。」

前に言われた。久遠は俺の過去と事情を知っている。

「久遠、今の俺達で本当に勝てるのか? 勝てるのならドレほどの勝率なんだ? 俺には…奴に勝つヴィジョンが見えない」

「タタリ…久遠、倒せる。力溜めた、今ならタタリに勝てる」

其処で気付く。久遠はタタリが俺達の知っているタタリとは違うという事を知らない。
俺が見たタタリは久遠が知るタタリではなく。久遠の知るタタリと同じ力を持った別の存在だという事を話す。
すると、久遠は悲しそうに言った

「タタリ…食べられちゃった。」

「食べられた?」

意味が分からない

「タタリ、力取り戻すのに…沢山、沢山の同じモノ…似たモノ食べた。」

「同じモノ?」

久遠はコクリと頷くと、言う

「タタリ…怨念。強い、とっても強い怨念。怨念、生きてる物から沢山溢れてる。怒り、悲しみ、妬み…沢山、沢山の未練食べて…逆に食べられた。」

そういう事か…なら、何故俺のが狙われるのかも手に取るように解かった。
奴が俺を狙うのは、殺したいと思うのは当然の事で正当な理由だ。逃げる訳には行かない。
奴には俺を嬲り殺すと言う行動に出ていた。自分で考え動く事が、力の調整が出来ている証拠でもある。
ならば…考えなくてはならない。あの雷の防ぎ方を、奴に…氷村遊の怨念を滅す手段を

俺が思考の海に潜ろうとすると、久遠がソレを止めた。

「良哉…私、何て言ってた?」

「何って…」

あの時、久遠は

『良・・・哉・・・次・・・勝って』

「!?」

其処で気付く。久遠の言葉はオカシイ。極端な話だが、俺は今回の事を回避出来る。その可能性を持っている。
そう、前回で戻ってしまった最初まで戻っていれば…最初から回避出来る。
氷村に関してはまた、別の手段で対応すれば良いのだ。そうすれば今回の事は無くなる。
なのに…なぜ久遠はああ言った? まるで俺が何処まで戻るかを知っているような言い方だ。

「久遠…君は…」

「知ってる。良哉、今死んでも、さっきにしか戻れない。」

久遠は、俺の知らない何かを知っている





良哉…さっきまでの良哉じゃない。今の良哉は新しい良哉。良哉の事を話しても良い良哉になった。
前の私は、たぶん話してない。
でも、今なら話せる。確信が無かったら話せなかった、良哉は敵かも知れなかった。
今の良哉を見て確信できた。良哉、私と同じ。私達と同じ。敵じゃない

「良哉…『贄』」

「贄?」

「良哉、この世界で生まれた。私もこの世界で生まれた。恭也も那美も薫も、皆この世界で生まれた子供。でも、良哉…この世界で生まれたけど、歪められた。」

良哉、歪められた。一番やってはいけない事。だから、繰り返す。繰り返す様に歪められてる。
この世界を創った何かへの明確な反逆。裏切り。
だから、良哉の周りも歪んでる。

「ちょっと、待ってくれ久遠。歪められた? 俺のこの繰り返しは…」

「人が入ってはいけない領域に手を伸ばした。ソレを掴んじゃった。良哉、その被害者。生贄。」

良哉、凄く混乱してる。私にも解かるぐらい瞳が揺らいでる

「…ソレは…無理だ。無理な筈だ。ソレこそ本当に『魔法』だ。そんな、事出来たらいけない。ソレが出来るという事は…」

「世界を蹂躪するのと同じ。だから、良哉はソレを何とかしないといけない。じゃないと、良哉、何時までも繰り返す。終りが無くなる。」

「どういう事なんだよ…歪められた? 何に? 誰に? 何時? 本当なのか? 久遠…お願いだ、俺にも解かる様に説明してくれ」

両肩に手を置かれた。力がドンドン込められていく

「良哉…痛い」

「お願いだ…何がどうなってるんだ…」

駄目、良哉に私の声、届いてない。ギリギリと肩に置かれた手が、私を締め上げる。

(駄目、何とかしないと…良哉、壊しちゃう!!)

其処で、一つの事を思い出した。良哉、タタリと戦って八回も死んだ。でも、その先が無かった。今が九回目かも解からないのに…私が軽率だった。
もしかしたら、良哉は耐えられなかったのかも知れない。だから、忘れているのかもしれない。

「良…哉ァ」

「久遠…お願いだ…俺は…何なんだ」

早く何とかしないと…永遠に…

『いい加減にしなさい!!』

その一言で、良哉の目に光が戻った。

『貴方が何なのかなんて今更解かりきった事を、何故問うのですか?』

「…シュベルト」

『貴方が、貴方こそが我等が主。剣十字の名を我等に与えた、我等を従える事を許された唯一の主。明智良哉。それ以外の何だと言うのですか? そんな下らない事を考えている暇が有るのなら、約束に遅れないようにしなさい、時間…有りませんよ?』

「約束? …?! 」

『久遠の話は私が聞いておきます。久遠、私と話せますか?』

「大丈夫…ソレぐらいなら何時でも出来る」

私は胸を張って答えた。良哉の頭の上で私はしゅべるとに話す。発音、難しい。

『つまり…主は』

(この世界で生まれたけど、この世界に従わない…従えない存在。)

『主の主観で過去に遡っている…という事は…』

(無い。しゅべると達、沢山、沢山進んでる。この世界の人間より、ずっとずっと先に居る。でも、この世界の人間もずっとずっと、貴方達より先に居る所もある)

『それはそうでしょう。お互いが見つけ出したエネルギーや、世界に残っていた物がちがうのですから』

そう、そういう事。だから、私は解かる。『魂』というモノが歪んでしまっている事が

(主観時間じゃないけど、それもあってる。良哉、長生きする。でも歪んだままだと戻る。そうすると、其処から先は無くなる。可能性は残っても、そうは成らない。良哉、最初から居なければ世界は続く。でも、良哉が居ると違う。)

良哉が過去に戻る。世界も巻き戻ってしまう。世界も気付けない内に。
世界が気付くのは良哉が死んだ瞬間。
因果も時間も運命も、歪んだ存在の所為で歪んでしまう。
世界を巻き込んだやり直し。してはいけない事。出来てはいけない事。世界の敵になる。
ソレは、世界に有る全てと敵対する事。水も空気も、因果も運命も、時間も…全部、敵に成る。
だから、してはいけない。

(久遠、世界から生まれた。ソレは皆同じ。良哉も同じ。でも、久遠達は、人間よりも世界に近い所に居るから分かる。良哉は『贄』。世界に対する『贄』。良哉に何かをした何かは、何かを試してる。)

『…それも、意味の無い事に等しい…』

(うん…良哉、解放されない。歪み、直さないと解放されない。久遠、良哉助けたい。助けてあげたい。でも、出来ない。)

『ソレは…我等も同じです』

(うん。知ってる。でも、出来ない。原因判らないから…)

私は、物凄い速さで走る良哉にしがみ付きながらそう言った。










「…あの子、滅茶苦茶早いじゃないの。何かしてるっていうモノじゃないよ。」

(あれ? あの走り方…何処かで…? )

高町美由希は首を傾げながら、家に戻った。家族に面白い話が出来たと思いながら











明智良哉は、自分からすれば三回目の会合にギリギリ間に合った事に安堵した。
シグナムは薄く笑いながら

「そんなに急がなくとも…」

と言い。ヴィータは汗だくの良哉に

「ほら、買ってきてやったぞ。この間のアイスの借りだかんな」

と、スポーツ飲料を渡した。

会合は、三回目という事も有り。要点を纏めて話、短い時間で終わった。
繰り返すとはそういう事だ。変わる事を求めなければ只のルーチンワークと変わらない。明智良哉はそんな事を思いながら自分が、今しなくては成らない事を考える。
久遠とシュベルトの会話を聞いていない明智良哉は考える。
どうすれば勝てるか? どうすれば死なないのか?
此方の防御では、氷村の雷を防げない。喰らえば直ぐにでも動けなくなる。
八方塞がりだ。当たり前の事だが、明智良哉には『霊力』というモノが無い。有るのは『魔力』
更に言えば『霊力』がどういうモノかも理解できない。
明智良哉に、氷村遊(タタリ)に対して有効な攻撃手段は無いに等しい。

「せめて…奴の動きを止められるのならな…」

有効な手段は見つからない。











side シュベルト


『繰り返し』

私も、主も、ソレは主観時間の逆行と考えていました。いえ、今までの話から推測するにそうとしか考えられなかったのです。
しかし、久遠。数百年を生きるこの狐の少女は違うと言います。
私には『魂』という概念がよくわかりません。言葉は知っています。ですが、解からないのです。
ソレは、今も昔も変わらず…永遠を求めるモノ達が研究している事ぐらいか知りません。しかし、ソレも眉唾物な話しばかり、実証されたという例は知りません。
なぜ、我等が主はそう成ってしまったのか? 主に何かをした『何か』とは何なのか? 私にはソレが…いえ、主にも解かりません。
因果律、運命、時間、それらまで歪めて巻き込んで居ると久遠は言います。ソレは有り得てはならないという事は、私にも解かります。
ソレが、人の手により自由に使えるというのなら…世界は人の手によって滅ぶのは目に見えています。
世の中は善人ばかりでは無いのですから
しかし、私は『世界が歪む』という事すら解かりません。故に、私は未だに主に話せていない。
話せば…主は絶対に動揺するでしょう。嘆くでしょう。傷つくでしょう。ソレは避けなくてはなりません。
これ以上、主を痛めつけても何にもならない。
だから、私は先ず氷村に勝つ事を優先して考える様に言いました。コレが終われば時間は有るのです。
雷の防ぎ方は…そうです。聞けば良いのです、調べ物が得意な彼に…





Side ファラリス

(オカシイ)

私は、ファラリス・アテンザは何故部屋に戻った? 明智良哉に今日の夕食のリクエストを聞きに行ったのでは無いのか?

(なぜ戻った? )

決っている。なんとなくだ…違う、ソレはオカシイ。
私には明確な目的が有った。なのに、『なんとなく』なんて適当な理由で部屋に戻ったりしない。
ならばなぜ? 

(確か…あの時は…)

良哉の部屋に向かって、部屋の前まで来たのは良いけど物音一つ聞こえなかったら…

(ドアを開けようとして…)

止めた。そうだ、なぜか止めてしまったのだ。ノックもしたし入っても大丈夫な筈なのに…私は引き返した。
オカシイ、理解できない。

(何か…有るわね)

私は、良哉の部屋に向かい耳を澄ませた。微かに、話し声が聞こえる

『う……それに……なん…雷…? ……いち……それ……夫の……ず』

『本当に…けか? ユー……?』

『それ…け…よ……でも急だ……クロ……が知……ら……こるよ?』

この声は…良哉と…ユーノ・スクライア? でも、何を話しているのかしら? 雷がどうのこうのと…
良哉が何をしているのかは解かる。私達も普段しているのだ。世界を超えた連絡は…でも、それで一体何を聞いているの?
私達には相談も無しに…キナ臭いわね。此処は…鼻の利く人に見張って貰った方が良いわね。



Side out



所変わって、高町家では家族揃っての何時通りの夕食の時間。
高町桃子が自分の娘に今日は良い事でもあったの? と聞けば、高町なのはは今日学校であった出来事を楽しそうに話す。
高町なのはが、なぜか包帯や絆創膏だらけの父と兄に、何が在ったの? と控えめに聞けば、互いに視線で牽制しながら何でも無いと答える無愛想×2。
そんな二人の対応に桃子が怒ると、高町美由希が場の雰囲気を和まそうと他愛も無い話をする。

「そ、そう言えばさ。今日すっごく速く走ってる子を観たんだよ」

「すっごく速い?」

自分の話に乗ってきた妹に、心の中で喜んでいる高町美由希は勢いに任せて言う

「そうなんだよ!! 本当に速いの、なのはと同じくらいの子供なんだけどさ。私、吃驚したよ。あの子、何かやってるね。空手とかじゃなくて、私達と同じようなヤツ!!」

「ほう…美由希がそう言うか…どんな子なんだ?」

高町士郎の言葉に美由希は「う~ん」と唸った後で言う

「黒髪」

「…日本人なら殆どそうだろ?」

「えーと…何処かで見たこと在るような走り方だった」

ピクリと恭也の眉が震えた…が、高町恭也は動じずに箸を進める。そして、タマネギとジャガイモの味噌汁を啜ったその時

「…眼帯してた!!」

「ブフォ!!」

「目が!! 味噌汁が目にぃぃぃ!!」

予想外過ぎる不意打ちに、高町士郎は転げ回る。よく租借されたホクホクのジャガイモの一部が眼に入ったようだ。

「お兄ちゃん?!」

「恭ちゃん?!」

「……スマン。入ってはいけない所にタマネギが入ってな」

「あらあら…水要るかしら?」

転げまわる夫を他所に、コップに水を足す高町桃子。

「士郎さんなら大丈夫だもの♪」

実に恐るべき信頼なのか愛情なのか…ソレは誰にも解らない

そして、高町美由希のこの一言が、彼女が名前も知らない人物。明智良哉に取って最大の助けに成るとは誰も知らなかった。

そんな事が有った夕食後、高町恭也は悩んでいた。普段ならこんな事は無い。
しかし、なぜだか胸が騒ぐ。予感と言っても良いそのザワメキが、高町恭也の睡魔を払いのける。
所々傷む体を持ち上げて、高町恭也は考える。
明智良哉は、高町恭也に取って弟子とも言える存在だ。共に高みを目指す仲間でも良いのかもしれない。
我武者羅に強くなろうとするあの姿勢。そうで有っても冷静に考えるその自制心。
そして、何処か共感できるその在り方。
そんな少年が、全力で走っていても別段不思議には思わない。自分だって、月村忍との待ち合わせに遅れそうになってしまった時は、全力で走る。
後で、文句を言われたが…目だってしまうとな……
そんな事を考えていると、自室の襖がスパーンと開けられた
其処に居たのは

「恭也…まさかとは思うが、教えていないだろうな?」

高町士郎が、真剣な表情で立っていた

(来たか…まぁ、今回は俺の失態だな…さて、どうするか。最悪、勘当だな)

門外不出の流派の技が盗まれかけている事が知られれば確実だ。しかし、それでも良いかも知れないと考える自分が居る。
縁が切られ、他人と成るならば…挑戦できる。試合ではない死合いが…最悪、ドチラかが死んでしまうかもしれない程の戦いが出来る。
其れ程までに父は強い。越えたい、越えてみたい。あの背中を追い越したい、追いつきたい。自分の背中を見せてやりたい。
此処まで来たのだと。此処まで強くなったのだと。貴方の息子は貴方を越えたのだと…
其れはとても魅力的な事だ。しかし、悲しいぐらいに無い事でもある。父はそういう人間ではない。勿論、自身もだ。

(我ながら度し難い。護る者を見つけたというのに…いや、今それは関係ないか。何だ、この胸騒ぎは…まるで…)

父さんが重症の怪我で生死の境を彷徨って居た時に感じていたモノに近い様な…この重くじっとりと纏わり憑くモノは、何なんだ?

半ば呆けていた自分に気付き、父を見据える。父は何も言わずに俺の前に座り、胡坐を掻いた。無言の時が過ぎる。
俺は、あの子の事を話す気は無い。今や、あの子の成長…いや、足掻きは俺の楽しみに成っている。
その様な少年を見れば、父も口を出すだろう。其れは彼に取っては良い事なのかも知れないが、俺に取っては面白くない。
俺が育てたいと思ったのだ、コレは譲れない。
長い様で短い時間が過ぎた。外を吹く風が家の壁に当たり音を立てる。何処か遠くで車が走る音も聞こえる。

「恭也…言いたい事はイロイロ有るが、まぁ、アレだ。強くなったな…本当に強くなった」

静かな部屋に響いたのは父のそんな言葉だった。理解が追いつかない。
俺が強い? それは無い。才では美由希に劣り、実戦では父に勝てず。叔母の足元にも及ばない。
そんな俺が強い? 有り得ない。それは、普通の人間よりは強いだろう。その自覚は有る。だが、其れは幼い頃から訓練を…不破の訓練を受け、続けてきたからだ。
今の強さは、歴代の御神の剣士に届かない。父に届かない。

「違う。俺は…まだ、父さんより弱い…弱いんだ」

「当たり前だ。俺はお前の親父だぞ? 戦闘経験が違うんだ、引き出しは俺の方が多い」

そう、だから戦術の幅も広い。でも、其れは父が積み上げてきた結果だ。その強さを含めて父は強い。其れが無かったとしても俺より強い。
そんな父の背中を、ずっと見つめ続けて、追い求めて、歩いてきた。今も歩いている。
だからこそ、父の言葉は受け取れない。言葉では信じられない。戦い、ソレに勝って始めて…俺は一つ壁を越えられたと実感できると思う。

「ソレを含めて…父さんの強さだ。俺はソレを含めた父さんに勝って始めて…強くなったと実感出来る。そんな気がするんだ」

「はぁ…お前はやっぱり、不破なんだなぁ。悲しいような、嬉しいような…まぁ、お前の場合、忍ちゃん関連で嫌でも戦闘経験を積む事になるだろう。一、二年もすれば俺なんか越えちまうさ、だから、速めに渡しておこうと思ってな」

スッと出されたのは古めかしい木箱。ソレを受け取ると、その重さで中に何が入っているのかが直ぐに解かった。

「刀?」

「そうだ、俺がお前に託した小太刀…八景。それの…影打ち。使い処は自分で見極めろ。後、お前に電話が有ったぞ? ルーダーとかいう人から」

「ルーダーさんから?」

俺は木箱を一度、床に置くと電話を掛けることにした。携帯の番号を渡すのを忘れてた事を、悔やむのはコレが初めての事だった。

俺の予感は当っていた











【あとがき】

と言う名の説明かな? 良哉の繰り返し。主観の時間逆行では有りません。
時間も因果も何もかもを巻き込んだやり直し。世界のリセット。そうでなければ、ソレこそロストロギアなどで、解決してしまうから。
そして、良哉が存在するだけで出来る『歪み』コレはイベントの事ですね。
良哉が居なければ発生しなかった事柄です。
そして、未来の知識が有るのなら未来を決定する因子が在ると考えられますが、それも無効化されています。『歪み』に因って。
詳しく書くとグダグダになる上に持論の暴論に成るので、ポツポツと出します。
簡単に言えば、良哉に対しては運命と呼ばれるモノは干渉できないという事です。

後、関係ないですが一応聞いておきたいことが…いや、書く予定も無いのですが…カッコイイユーノは好きですか?















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