さて、毎朝のようにはやてのお宅に邪魔をするようになった。このごろはやてと僕は時間にして8時間/日くらいは一緒にいるだろうか。それくらい一緒にいるとどうやっても一日三食のうち一つくらいはかぶるもので、僕ははやての家でお昼ご飯をご相伴預かるようになった。
「んー、うまい」
「えへへ、どういたしましてや」
ホントにギガ・おいしゅうございます。僕ははやてと一緒に昼食をとるようになる前は、朝昼兼用の一日二食だったのだけど、少しは健康で文化的な最低限度の生活に近づいた。まったくはやて様々だ。
「どうかしたん? 手ぇこすり合わせて。もしかして寒いん?」
おっと思わず拝んでいたようだ。
「いやあ、それにしても見事だよはやて。普通この年で料理ができるだけでも珍しいのに」
「そんなことないよ。それにアイリかてお料理くらいできるやん」
「だからこそここまでおいしく作れることをほめてるんだよ」
そりゃ、僕だっていつもはやてに料理を振舞われているのは心苦しい。材料代まで出してもらっているのだ。また、単純にたまには僕が作ってみたいという思いもあって、何度か代わりに作ったこともあるにはあった。
「どうしてもなあ、はやてが作るのには及ばない」
「そらそうや。だってアイリ、おミソ汁平気で沸かすし。それでアイリの作った方がおいしかったらわたしがかなしいわ」
「自分で食べるときは気にしないからなあ」
一応はやてに振舞うときはいつもの五割増しで気合を入れて作ってはいたのだ。だが、かなしいかな。所詮は(元)大学生の男料理、あるいは栄養摂取が第一義のサバイバル料理といったところか。日ごろから料理の味よりも、使うフライパンの数を減らして洗い物の手間を減らすことを追及していた僕にはいまさら丁寧に作るなんてムリだったのだ。
話題にあがったミソ汁からもう一つ例をあげると、僕がミソ汁にカツオダシをいれようと粉末ダシの素のありかを聞いたら、そんなものないといわれて困ったことがある。はやてはいつも自分でダシをとっているということだった。僕には自分でダシをとるという発想すらない。前世のかなた――高校で調理実習をした時に置き忘れてしまった。
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アホウ少年 死出から なのは
第4話 闇の書ゲットだぜ
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「うん。ホントにおいしい」
「アイリさっきからそればっかりや」
「だってしょうがないだろ。それが真実なんだから。いやあ、はやてをお嫁さんにもらう男は幸せだろうなあ。むしろ僕と結婚してくれ」
「はいはい、30まで独身やったら考えたるよ」
さて、現在進行形で餌付けされてる感がビシバシな僕だが、もらってばかりというのもすわりが悪い。ただでさえかかっている食費は返せないのだから、食べたぶんは労働力として還元せねばなるまい。
「よっし、風呂掃除完了」
そんなわけでこまねずみのように働く、働く。
食事につかった食器類を洗い、階段廊下に掃除機をかける。たまった新聞やチラシをヒモで縛ってまとめておいた。
「別にそんなことせんでええのに」
はやては言ってくれるが、これはけじめだ。人という字は、どちらの負担が大きいの小さいのはともかく、支えあうようにできている。一方的に頼りきりになって、それを当たり前としたときに関係は破綻しよう。
「これは」
掃除の途中、僕はあるものを見かけて思わず呟いた。
「本棚やな」
どうかしたん? はやてがそんな調子で首をかしげた。ここははやての部屋。もとから整頓されてきれいなもんだけど、やることがないわけじゃない。
「本だ」
「本棚やな」
そうだ、せっかくだから本棚の上のほこりも掃おうか。だがそれは後にして僕は気になるものを指さした。
「ところでこの鎖の本は?」
「いやんエッチ、それはわたしの日記帳や」
「――ここで『嘘だッ』と叫ぶにたる推理が3つほどあるけど聞くかい」
「ほほう、なんでや」
「まず、日記のように毎日手にとるものにしては、この本の位置がはやてにとって若干高いこと」
「んー、まあ確かにそうかもな。でも、その日記が今も書いてるのヤツやとはいってないで。書き終わったから遠い位置においたかもしれへんやない」
「第二に、僕ははやての日記を読んだことがあるけどもっと違うノートに書かれていたよ」
「わたし日記つけてないんやけど」
「そうか」
「……」
「……」
「ところでこの本は?」
「ところで3つ目の推理は?」
「思いつかなかった。前にどこぞの大学教授が就職面接やなんかでは『これはどうするか』系の質問をされたら、とりあえず『3個の考えがあります』って前おいて、一つ二つを語りながら三つ目を考えるといいって」
「わからんのや。前からうちにあったみたいなんやけど、最初っからみてのとおり鎖で封されとって」
「……」
「……」
闇の書、だよなあ。本棚にて異様な雰囲気を発している鎖で巻かれた本をおそるおそる手に取った。
闇の書。失われた正式名称は夜天の魔導書。
もとは偉大な魔導師の魔法を記録するための主とともに世界を渡る、蒐集機能がそなえられた無害な資料本だったが、幾多の人の手を渡る間に魔改造されただとか。自己と主を万全な状態に維持するための防御プログラムが付加だか改変だかされたはいいが、そいつは暴走状態が当たり前の困ったちゃん。周りの人間全員いなくなれば誰も攻撃してこない、一番の安全だとでもいいたいのか、防衛の名を借りた脅威の予防攻撃ダイスキッ子で周囲に無差別破壊を撒き散らす。で、そんなはた迷惑を続ければ当然、多方から狙われていずれ壊されもするわけだが、ここで効いて来るのが変態機能その2、転生プログラムだ。闇の書は破壊しても転生する。どこぞへ逃げ伸びて新たな主の下で再生、そして破壊を繰り返すのだ。
そんなわけで闇の書はここしばらく十数年スパンで災厄を撒き散らしている。
現在は休止状態だがはやてを主として寄生して魔力を奪い続けている。はやての足が悪いのもこいつが原因だ。近い内に始動し、はやてを更なる過酷へと導くこととなる。
以上、リリカルなのはアニメ原作情報。
まじまじと闇の書を見つめた。その鎖に巻かれて開くことのできない洋本は、いまどきちょっとお目にかからない重厚な装丁がなされていて、はやてが良くわからないけど大事においているのもうなづけるような、歴史の重みを感じさせた。
捨てちまおうか、これ?
あ、僕は今すごいことを思いついた気がする。ここで書を捨てる、というか燃やすなり壊すなりして、はやてから遠ざけてしまえば、はやての足は治るし学校にもいけるようになる。このまま行けば確実に起こるだろう闇の書による一連の事件にはやては巻き込まれずにすむ。あ、なんかものすごくいいアイデアのような気がしてきた。
「どうしたん? 急に黙りだして」
「うっ、あ、ああいや。そういえば黙るってのは何もしないことなのに、黙りだすっていう表現も面白いよね、止めることを始めるみたいで。あはははは」
「はあ?」
でも結局そういうわけにもいかんよなあ。アニメ準拠ならはやてはすでに監視されていて、闇の書を永劫封印する手段が講じられているはずだからここで闇の書を逃がせば、いたずらに今後の被害者を増やすことになる――というのはおいといて、この闇の書ははやてを過酷に突き落とす厄介者であると同時に、かけがえのない家族を与えてくれる存在でもあるのだ。それを捨てると言うことははやてから家族を奪うことに他ならない。
だが、それは果たして罪といえるのか? 仮に過去に戻れるとしてヒトラーが赤子のころに暗殺すればそれは英雄か、という問い掛けがある。もしそれが将来に100万の命を奪う大悪党だとしても、そんな未来を知るはずもないその時代に生きる人にとっては赤子を殺すヤツなんてイカレタ犯罪者でしかない。逆説的に、いまのうちに闇の書を焼き捨てて、はやてのもとへ本来現れるはずだった家族が現れないとしてもそれは『奪った』とはいえないのではなかろうか。
首を振った。
罪がどうとか観念論など僕らしくもない。重要なのは僕が何を選ぶかだ。はやてにとってのリスクを承知でより大きな幸福を祈るか、はやての平穏を求めて安全策を行き見えないところで闇の書の災厄を野放しにするか。より好みの選択を取るだけだ。
「ところではやての誕生日っていつ」
「6月4日やけど」
「そっか。ところでこの本、あとで見せてくれないかな。どうも気になっちゃって、可能なら鎖を外して中を見てみたいんだけど」
「かまへんけど、封されてて何がなんだかわからん本やし。なんか今日のアイリはもっとわけわからんなあ」
「いやあ、だってこの本こんなに鎖で読めなくされて? まるで封印された魔導書みたいじゃないか。健全な小学3年生の男の子としては中身が是が非でも気になるわけですよ」
「あっはっは。封印を解いた者には強大な力と災厄を与えるみたいな?」
はやては不審に思う素振りもなく許可をくれた。
家事に一息ついた後、リビングに移って闇の書を調べることにした。鎖をカチャカチャ引いてみるも外れなかった。まあこんなで外れたりしたら逆にあせるけど。
「鍵穴すらないのなあ」
「わたしも前に鎖を外そうとしたんやけどね、ぜんぜんやったわ。ぴくりともせんかったよ」
はやては闇の書を手にとって電灯に晒すように持ち上げた。
「ペンチで鎖を切ってみようともしたんやけど。傷一つ付かんかった」
僕が書を求めて手を伸ばすとホイと渡してくれる。引っ張ってみるがやはり鎖は頑丈で外れない。
書を縦にたわませて、本屋でビニールに巻かれているマンガの単行本なんかの中をのぞき見るのと同じ要領で中身を確かめようともしたが、鎖による遊びのない拘束と硬い表紙に加えて本自体の厚みのせいで覗き見できるほどの隙間は作れない。だが幸い拘束は古新聞をヒモでまとめるときのように上下の4辺の中央を通す形で十字で縛られている。角をムリヤリめくり上げるとほんの少しだけ中を見ることができた。
白紙である。
やっぱりこれだけじゃ不十分だ。この封印の鎖、なんとか破壊できないだろうか。
ムリかな。ムリだろうね。
「あ~、ヤメヤメ。ムリだこんなの」
「諦めんのはっやいなあ」
「そうはいうけどね、図書館で借りてきた本にアンダーラインが引かれてるだけでも殺意を覚える僕としてはこれ以上できることがないよ」
大きな目標を果たすためなら過程の苦痛くらい我慢するが、苦痛は苦痛だしイヤなもんはイヤだ。そうと決断したらはやてから闇の書をパチって、廃墟な我が家でお湯を沸かす燃料にしてしまうのも厭わない――いや、厭いはする。厭いはするが実行してみせよう。
だが、今はまだ目標すら決まっていない状態だ。決断もしていない現状で、いたずらに罪悪感を抱えるのはごめんだ。ムチャをやってはやてに嫌われるのもいやだ。
だというのに。
「かまわへんよ」
「へ?」
「や、多少のムリとやら。どうせこのままほっといても中身見れへんし、そないにアイリが気になるんやったら好きにしてかまへんよ?」
「好きにって、僕が想定している手段は切るとか燃やすとかだよ」
あ、なんか手の中にある闇の書が震えた気がする。
「燃やすって……そしたらどうやって中みるんや。まあ、それはともかく気に入ってるなら別にソレあげてもええねん。アイリにはいっつも世話になってるし」
あっるえー(・3・)
この展開は正直予想してなかったかな。はにかんだふうのはやてを前に僕、ちょっぴり混乱。
今のところ闇の書は一方的にはやてに寄生しているわけだから、これで霊的な所有権が僕に移ることはないだろうけど。
うーむ。それにしても、世話になってるって僕のほうがお昼ご飯振舞ってもらっているんだけど。はやては一人が寂しいってことだし、これで僕の気を引きたがっているとか? いや、その想像は失礼か、せっかくの善意に。でもなあ、
「依存しちゃ駄目だよ?」
「ほぇ?」
「や、こっちの話」
気を取り直す。
「それじゃあしばらくの間、借りていいかな」
「うん、ええよ。中身わかったら教えてな」
「うん、ありがとう」
僕は重ねて礼をいって闇の書をリュックサックにしまいこんだ。
さてそれから、僕らはいつもどおりに遊んでいたが、トランプをしている途中ではやての動作が鈍くなってきて会話も言葉がなんか重くなってきた。
とろんとした目をこすりながらカードを引くも、残念それは見当違いです。ふにゃふにゃとしたはやての目の前にこちらの手札を全て晒してみたがまるっきりスルー。ふにゃふにゃされ続けた。複数形でふにゃら。
最近はやては遊んでいる内にこうなってしまうことが多い。
「はやて、寝るならヨコになったほうがいいよ」
「寝くないもん」
「ここで問題、10mlの水は何立方メートル?」
「……」
僕は眠くなると単位換算ができなくなる。
「僕が2手前に出したカードは、なんだか覚えてる?」
「……いじわる」
何か僕は気に障ることでも言ったのだろうか、はやてはツンと唇を突き出した。でもやっぱり目は半眼、というか半分も開いていない。薄目だ。首もすわってない。
「……ねぇへん」
「そうか、おやすみ」
「ねぇへんもん」
ねぇへんってなんか漢字の部首にでもありそうだな、示す偏の友達みたいなの。ともかくそれきりではやては寝息を立て始めた。
んで、6時。
いいかげんに帰るかなと、ちょっと迷いつつもはやてに声をかけた。はやてが寝入った後、彼女を車椅子からソファーに移して横にしてやり毛布もかけておいたけど、本格的に眠るならベッドのほうがいい。それに何も言わず、書き置きだけして帰ったりしたら次に会ったとき怒られそうだ。というか前にそれをやって怒られた。
「なんで起こしてくれんかったんやぁ」
どちらにしろ怒られた。
「そりゃ気持ちよさそうに寝てたからねえ。起こすのも忍びないだろう?」
「起こしてくれんほうがひどいもん」
そうでっか。それはともかく僕はむくれるはやてのほっぺたをつついてみたい欲求に対して、なけなしの自制心で自重しているほうが大変だった。
「ん」
はやてが両手を突き上げた。万歳アタックのゼスチャーだろうか。つまりここは自重せずむくれるはやてのほっぺをつつきまくれと?
「だっこ」
なるほど。はやてはまだソファーだ。車椅子に移りたいということだろう。ちなみに車椅子はソファーの傍らで、別に一人で移れるが、ここは従っておこう。
「はいはい」
「はいは一回や」
「はーい、それじゃ失礼して、お姫様」
よいしょと脇の下に手を差し込んで持ち上げそのままクルリと90°反転、車椅子の上に着地させた。
「むー、扱いがぞんざいやあ」
何かが不満そうなはやて。我ながらお姫様といいつつするような持ち上げ方ではなかった気がするが、残念ながらお姫様抱っこは今日のところもう売り切れなのだ。
あ、そうだ。
玄関までやって来て思い出した。はやてはそこまで見送りに来てくれているしちょうどよい。
「いい忘れてた。明日は僕、ちょっと用事があって来ないから」
というか、来ないことをいちいち報告するのも変だよなあ。普通逆だ。まあ実際のところ、この頃は毎日はやてのところに入り浸っているから、八神家に来ないほうが例外なのは間違いなく事実ではあるのだけど。
「アイリ、来れへんの」
「うん」
来れないというか、来ないなんだけどね。
僕がうなづくとはやてはあからさまに落ち込んだ。それから上目遣いで、というか位置関係的に目をあわせるにはどうしてもそうなるのだが、訴えるように僕を見上げてきた。
「ホントに?」
「はやてにどうしても明日僕がいなければならない理由があるんだったら来るけど、そうでないなら僕の都合を優先したいかな」
「寂しい、いうたら?」
うっ。ヤバイ今なんかぞくっときた。
無条件でyesと叫びたい欲求に駆られたが、それをグイと飲み込んで僕は首を振った。
慕ってくれるのは素直にうれしい。このごろ毎日お邪魔してるから内心ではやてに『げっ、まぁ~たアンのアホがきおった、毎日毎日アキもせず昼飯タカりに卑しいヤツや』なんて思われていないかちょっぴり不安でもあったから、僕が来ないことを寂しがってくれると、いやらしいとは思うが安心する。
「あの本、あげるなんて言わな良かったかも」
闇の書のことだろう。僕は再度首を振った。
「べつに本のために明日こないわけじゃないよ。近頃、はやての家に入りびたりだったからうちの家事もろもろが溜まってるんだよ」
僕だってニート未満(ニート:就労可能な年齢で働きも学びもしない者。まず15才以上。つまり僕は対象外)であるとはいえ、遊んでいるだけで生きていけるほどいい身分でもない。
明日は前に見つけた用水路にジャンボタニシをとりに行くつもりだった。それにそろそろまとめて洗濯もしなければはやての家に来る服もなくなってしまう。そこいらで食べられる野草も採取しておきたい。廃ビルの中で燃やす薪も拾っておかなければならない。はやてのと一緒にすごす時間が増えて、身の回りのことがちょっと滞っていた。
「はあ。今日は絶対眠れんやろし、明日はアイリきいへんし」
しょんぼり肩を落とすはやてはなかなか庇護欲をそそられる。子犬チック? たしかタヌキもイヌ科だったっけか。そんな彼女を見ていたら悪いのだけどイタズラ心が沸きあがった。
かいぐり、かいぐり。
「んい? なんや?」
かいぐり、かいぐり。
「頭撫でてみたんだけど……」
「うん」
「ポッとしないね?」
「――アイリはたまにわからんなるな」
どうやら僕にナデポスキルはないようだ。唐突に頭上に乗せられてスライドする僕の手のひらにをはやてはいぶかしむばかり。
それにしても柔らかくてさらさらした髪の撫で心地はなかなかによいものだ。
嫌がっている様子はなく、どちらかというと心地よさそうにしている気がするのでよしとしておこう。
というか、撫でている拍子にふと目が合うとニコっと微笑まれた。無邪気で愛嬌のある笑顔にどちらかというと僕のほうが赤面しそうだった。なんか、こう――ポッと。
「じゃあお邪魔しました」
「またな。明日はあきらめる、でも明後日はきっときたってな。なるたけ早く、いっぱい遊ぶんやからな」
「了解。でも勉強もちゃんとするからね」
「ん~。まあそれくらいはゆずったる。だから早くに来てな」
「うい」
お邪魔しましたとはもう告げてある。僕は名残惜しそうに見送るはやてに片手だけ上げてみせて八神家から出て行った。
夜の風はまだ冷える。僕は空を見上げて歩き出した。電灯の光は冴え冴えと輝き、目を細めるとハリネズミのような光線が瞳の中できらめいた。月は高く、満月。春の夜の住宅街はただ静か。アスファルトを踏む音だけがそっけなく僕を包み込む。風呂上りのように火照った心を引き締める心地よい風が吹いた。