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No.4610の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはReds(×Fate)【第二部完結】[やみなべ](2011/07/31 15:41)
[1] 第0話「夢の終わりと次の夢」[やみなべ](2009/06/18 14:33)
[2] 第1話「こんにちは、新しい私」[やみなべ](2009/06/18 14:34)
[3] 第2話「はじめての友だち」[やみなべ](2009/06/18 14:35)
[4] 第3話「幕間 新たな日常」[やみなべ](2009/11/08 16:58)
[5] 第4話「厄介事は呼んでないのにやってくる」[やみなべ](2009/06/18 14:36)
[6] 第5話「魔法少女との邂逅」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[7] 第6話「Encounter」[やみなべ](2009/06/18 14:37)
[8] 第7話「スパイ大作戦」[やみなべ](2009/06/18 14:38)
[9] 第8話「休日返上」[やみなべ](2009/10/29 01:09)
[10] 第9話「幕間 衛宮士郎の多忙な一日」[やみなべ](2009/11/29 00:23)
[11] 第10話「強制発動」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[12] 第11話「山猫」[やみなべ](2009/01/18 00:07)
[13] 第12話「時空管理局」[やみなべ](2009/01/31 15:22)
[14] 第13話「交渉」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[15] 第14話「紅き魔槍」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[16] 第15話「発覚、そして戦線離脱」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[17] 外伝その1「剣製」[やみなべ](2009/02/24 00:19)
[18] 第16話「無限攻防」[やみなべ](2011/07/31 15:35)
[19] 第17話「ラストファンタズム」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[20] 第18話「Fate」[やみなべ](2009/08/23 17:01)
[21] 外伝その2「魔女の館」[やみなべ](2009/11/29 00:24)
[22] 外伝その3「ユーノ・スクライアの割と暇な一日」[やみなべ](2009/05/05 15:09)
[23] 外伝その4「アリサの頼み」[やみなべ](2010/05/01 23:41)
[24] 外伝その5「月下美刃」[やみなべ](2009/05/05 15:11)
[25] 外伝その6「異端考察」[やみなべ](2009/05/29 00:26)
[26] 第19話「冬」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[27] 第20話「主婦(夫)の戯れ」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[28] 第21話「強襲」 [やみなべ](2009/07/26 17:52)
[29] 第22話「雲の騎士」[やみなべ](2009/11/17 17:01)
[30] 第23話「魔術師vs騎士」[やみなべ](2009/12/18 23:22)
[31] 第24話「冬の聖母」[やみなべ](2009/12/18 23:23)
[32] 第25話「それぞれの思惑」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[33] 第26話「お引越し」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[34] 第27話「修行開始」[やみなべ](2011/07/31 15:36)
[35] リクエスト企画パート1「ドキッ!? 男だらけの慰安旅行。ポロリもある…の?」[やみなべ](2011/07/31 15:37)
[36] リクエスト企画パート2「クロノズヘブン総集編+Let’s影響ゲェム」[やみなべ](2010/01/04 18:09)
[37] 第28話「幕間 とある使い魔の日常風景」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[38] 第29話「三局の戦い」[やみなべ](2009/12/18 23:24)
[39] 第30話「緋と銀」[やみなべ](2010/06/19 01:32)
[40] 第31話「それは、少し前のお話」 [やみなべ](2009/12/31 15:14)
[41] 第32話「幕間 衛宮料理教室」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[42] 第33話「露呈する因縁」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[43] 第34話「魔女暗躍」 [やみなべ](2010/01/15 14:15)
[44] 第35話「聖夜開演」[やみなべ](2010/01/19 17:45)
[45] 第36話「交錯」[やみなべ](2010/01/26 01:00)
[46] 第37話「似て非なる者」[やみなべ](2010/01/26 01:01)
[47] 第38話「夜天の誓い」[やみなべ](2010/01/30 00:12)
[48] 第39話「Hollow」[やみなべ](2010/02/01 17:32)
[49] 第40話「姉妹」[やみなべ](2010/02/20 11:32)
[50] 第41話「闇を祓う」[やみなべ](2010/03/18 09:55)
[51] 第42話「天の杯」[やみなべ](2010/02/20 11:34)
[52] 第43話「導きの月光」[やみなべ](2010/03/12 18:08)
[53] 第44話「亀裂」[やみなべ](2010/04/26 21:30)
[54] 第45話「密約」[やみなべ](2010/05/15 18:17)
[55] 第46話「マテリアル」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[56] 第47話「闇の欠片と悪の欠片」[やみなべ](2010/07/18 14:19)
[57] 第48話「友達」[やみなべ](2010/09/29 19:35)
[58] 第49話「選択の刻」[やみなべ](2010/09/29 19:36)
[59] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 前篇」[やみなべ](2010/10/23 00:27)
[60] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 後編」 [やみなべ](2010/11/06 17:52)
[61] 第50話「Zero」[やみなべ](2011/04/15 00:37)
[62] 第51話「エミヤ 前編」 [やみなべ](2011/04/15 00:38)
[63] 第52話「エミヤ 後編」[やみなべ](2011/04/15 00:39)
[64] 外伝その7「烈火の憂鬱」[やみなべ](2011/04/25 02:23)
[65] 外伝その8「剣製Ⅱ」[やみなべ](2011/07/31 15:38)
[66] 第53話「家族の形」[やみなべ](2012/01/02 01:39)
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[4610] 第6話「Encounter」
Name: やみなべ◆d3754cce ID:fd260d48 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/18 14:37
第6話「Encounter」

SIDE-凛

いま私たちは月村邸にいる。
理由は、以前士郎が取り付けた協定の詰めと、互いの秘密を守る契約を結ぶためだ。

別段特別なことは何もない。
私たちはこの地での居住権と一般人に害を与えない範囲での研究が保証され、ここの霊地を利用できればよく。
向こうは、もし敵対者が現れた際には助力が欲しいのと、霊地の整備をしてほしいくらいだ。
互いの利害にぶつかりがない以上、駆け引きもいらない。
交渉はスムーズに進み、今契約を済ませたところだ。

この後には、アリサやなのはとそのお兄さんが遊びにくるらしい。
士郎は恭也さんという人と会いたくないらしく、逃げるか隠れるか本気で思案している。
士郎をここまで逃げ腰にさせる人に興味があるので、私は残って合流するつもりだ。
ついでに、すずかには釘を刺しておかなければいけない。

「すずか、ちょっといいかしら」
士郎には聞かせられない。
アイツはこういったことに関しては、シナプスが切れているんじゃないかと思うほどに鈍い。
その代り、相手の好意には誠実で、きっと必要以上に気を使うはずだ。
悪いことではないが、正直それは気に入らないので、こっちで話をつける。

「え? どうしたの」
すずかは私の手招きに応じてやってくる。
本来ならこんなに素直な子の恋は、余計な手は出さずに応援するところなのだが、相手が士郎ではそうはいかない。
あれは私のものなんだから。

「士郎から聞いたわ。これからは挑戦者らしいけど、譲る気はないから。
 あれは未来永劫、私の所有物よ。
あいつに必要なのはね、その微妙にずれていく軌道を、蹴り飛ばしてでも矯正する相棒よ」
そう言って牽制する。
こう言っては何だが、すずかにそれは無理だ。
この子は、一歩下がって控え目に相手を立てる、古き良き良妻賢母タイプ。士郎とでは相性が悪い。
どこまでも突っ走っていくアイツに、置き去りにされかねない。

何より、私があいつを手放すなどあり得ない。
元いた世界で一度死ぬ間際に「凛を幸せにしたい」なんて嬉しいことを言ってくれた。
あの弓兵から十年前に朝焼けの中で託された思いを、少しだけ達成できた気がする。
生意気だとも思うが、同時にどう幸せにしてくれるのか楽しみでもある。
ならば絶対に譲れるはずがない、あの誓いはまだ生きているのだ。

「むっ、士郎君は物じゃないよ! 所有とか言うのはおかしいと思う」
少し不機嫌そうに言ってくるすずか。この子は大人しいが、だからと言って意気地なしではない。
悪いことは悪いと、ちゃんと言える強さも持っている。
なのはたち三人娘はかなり個性にばらつきがあるが、この点は全員に共通している。

「そうかしら? でも重要なのはそこじゃないわ。
 いい、やるからには徹底的に、が私の流儀よ。
相手がだれであろうと、例え優位に立っているとしても、手を抜く気は全くないから、そのつもりでいなさい。
 それでも来るなら、完膚なきまでに叩き潰すだけよ」
自信たっぷりに言って最後の慈悲を施す。
ことが始まる前か後なら慈悲はあるが、この先には決着がつくまでそんなことが入る余地はないことを告げる。

「……いいよ。わたしだってそう簡単には諦めないんだから」
すずかもこれを受ける。こうして私たちの間で、戦いの火蓋が切って落とされた。


  *  *  *  *  *  


しばらくしてアリサが、少し遅れてお兄さんに連れられたなのはがやってきた。
士郎は結局、隠れることを選んだらしい。
今は、「ただ隠れているのは悪い」と言って給仕を申し出て、奥に引っ込んでいる。

決して遭遇することのないように細心の注意を払っており、忍さんと恭也さんが私たちから離れるまでは、近寄ってさえ来なかった。
もしかして屋敷の中を解析して、位置を掴んでいるのではないだろうか?
そこまでして逃げるとは、余程警戒しているらしい。
天才的な剣士らしいが、先日の訪問の時に何があったか聞いてみようかな。
戦闘になって、それに勝利したくらいしか聞いていないので、詳しいところは知らない。
その時に、なにかまずいことでもやらかしたのだろうか。

今は安心して給仕に勤しんでいるが、本当に手慣れている。それもどこか生き生きとしている。
もしかしてルヴィアは、こいつを洗脳したのではなかろうか?
もし会っていたと仮定すると、英霊エミヤが家事を趣味にしていたのは、あの女が原因なのではないかと推理する。

ちなみに今の恰好は、来た時の上下を黒で固めた微妙にホストっぽい格好ではなく、現在の生き生きとした様子にふさわしい執事服だ。
なんでこんなものがあるかというと、忍さんが「せっかくだし、はじめの申し出のとおり、うちのメイドにいろいろ教授してもらおうと思って用意したわ」と実に楽しそうな笑顔で言っていた。
そのメイドはというと噂以上のドジっ子ぶりで、さっきから何度も何もないところで躓き、慌ててフォローに入った。
正直、そう簡単に改善されるようには思えない。

「別にあんたが、料理が出来て、洗濯ができて、掃除ができる家事万能小学生だろうと文句はないわ。
それが必要だったんだろうし。
 でもね、何でそんなに様になってるのよ!?
わたしのところの鮫島と比べても、おかしいところがないのがおかしいわ。一体家では何してるのよ?」
アリサが頭を押さえながら聞いてくる。
鮫島とはアリサのところの執事さんで、本職の人と遜色がないとは筋金入りのようだ。
しょうがなく出した奉公だったが、これはこいつの天職なのだろう。
アーチャーのように一々皮肉を言うこともなく、嫌みでないのがポイントを上げている。

「家で何をしているって言われてもなぁ。
格好が違う以外はそう変わらないぞ。
朝食と弁当は俺が担当で、夕食は当番制。紅茶も今じゃ俺が入れることが多いな。
掃除は、凛の部屋以外は基本俺がやってる。洗濯はさすがに別々にしているけどな。
まぁ、ほとんど朝のうちに済ませてるから、夜は結構暇なんだけどさ」
そう、家事の大半は士郎がやっている。
別にやらせているわけではなく、勝手にやられているのだ。
朝起こされると、すでに家事の大半が終わっているので、手の出しようがない。

「はぁ。それならもう十分本職みたいなものよ。
どうりで、妙にその格好が似合ってるわけだわ。
 普段から給仕までやってるんじゃ、それが日常なのね。それも朝のうちに全部って……。
 あれ? でも凛も夕食を作ったりしてるんだ。いつもお弁当が士郎製だから、できないと思っていたけど」
まったく失礼なことを言ってくれる。
この私に限って、苦手なものなど(機械を除いて)ないというのに。

「それはこいつが起きるのが、異常に早いせいよ。
全部朝のうちに済ませようってんだから、当然なんだろうけど。
それと料理なら得意よ。うちは得意料理が違ってて、私が中華、士郎は和食ね。
特に士郎は、それらと洋食以外にもいろいろできるし、スイーツも得意ね」
本当に料理の鉄人だ。
これで本業にする気がなく、本人は趣味じゃないといわれても信じられない。

「へぇ、ちょっと意外。全部士郎に任せっきりで、怠けてると思ってたんだけど」
「そうだねぇ。凛ちゃん、あんまりお料理とか水仕事とかしそうにない感じなんだけど。
でも士郎君のスイーツかぁ、ちょっと食べてみたいかも」
「えっと……わたしも食べたいかなぁ」
アリサが失礼なのは今更だが、なのはまでそんなことを言うとは。
でも、今士郎のスイーツを食べているのは私だけ……。
うん、これは気分がいいので、この子たちにはあげないことにしよう。

「そうか? じゃあ今度作って「私が腕をふるってあげるわ。とびっきりの一品を用意するから、楽しみにしてなさい」……こようと思ったけど、まぁそのうちにな」
士郎が返事をする前に割って入る。ついでに士郎には、眼で余計なことを言わないように牽制する。
意図は伝わったらしく、最後の方は蚊のなく声のようになっていた。

なのはとアリサは残念そうだが、すずかはこっちを睨んでくる。
私が独占しようとするのが、気に食わないのだろう。
それでも、こうした士郎をめぐった場面以外では、私たちは友好的だ。
まぁそれはそれ、これはこれというやつだ。



SIDE-士郎

俺は相変わらず給仕に勤しんでいる。

うん、実に平和だ。
この平和を長続きさせるためにも、一日でも早く恭也さん対策を確立しなければならない。
忍さんと恭也さんは、今部屋でイチャつているがそれでも警戒は怠れない。

「何かの用事で出てきた恭也さんと鉢合わせしたら、元も子もないからな」
例えばトイレに行って、ばったり顔を会わしたとしてもこれだけで不味い。
給仕をする暇があるのなら戦え、なんて言われては堪らない。

忍さんから、最初は俺を呼び出す口実だったメイドさんへの教授を頼まれたのは意外だった。
てっきりあれは、ただの口実でしかないと思っていたのだが……。
いや、いっそ見事なまでのドジっ子だ。
これでは教授を頼みたくなるのも無理はない。

この家にはノエルさんという、この上なく優秀なメイドさんがいるが、この人がいくらやっても治らなかったらしいから筋金入りか。
もしかして、この人の起源は「ドジ」とか「転倒」とかいうものなのではないのか。
そう思えるくらいによく転ぶし、他にもいろいろとドジをしている。
それをどうにかするなど、恐ろしく困難なことを頼まれてしまったものだ。
まぁ、ある意味で俺たちは、この家の世話になっているわけだし。
それに相手は霊地の管理を任せてくれる雇い主でもある以上、しがない被雇用者として雇い主に従おう。

俺としては、この家には来たいような来たくないような、複雑な気持ちだ。
ノエルさんは桃子さんとは違った意味で、話していて楽しい。
桃子さんとは料理談議、ノエルさんとは従者の心得を共感し合えるので、仲良くできる。
ただ、どちらも恭也さんと深くかかわっている人たちだ。
会おうと思うと、恭也さんと会うリスクを背負わなければならないのが問題だ。

「なんで俺の行くところには、恭也さんの影が付いて回るんだ?
そんなに縁があるのか、それとも世界が関わる様に後押ししているのか。
これじゃあ、そのうち行けるところがなくなるかもしれないな」
どちらも恭也さんのフィールドなので迂闊に近寄れないし、下手をすると住人たちが敵になる。
本当に、どこに行っても恭也さんの影が付きまとうので、いい加減何とかしないとノイローゼになりそうだ。
最近焦ってきたのか、夢でもあの飢狼の眼が出てきてしまう。
早急な対策が必要だが、こんな時に限って心眼も経験も何の答も出してくれない。


そうして周囲に細心の注意を払いつつ、淹れた紅茶のおかわりをもって凛たちの所へ向かう。

正直こちらの方が気は楽だ。女の子たちの和気藹々とした場にいても、どうも居心地が悪い。
不快ではないが、正直会話に入っていきづらい。
早く男の友達を作りたいが、俺は学校でも指折りの美少女達とかかわりがあるせいか、男たちの間で除け者にされている。
別にイジメがあるわけではなく、俺が近寄るとクモの子を散らすように離れて行ってしまうので、そもそも話ができない。
ユーノはオスらしいので、この際フェレットでいいから友達になってほしい、なんて思ってしまう今日この頃だ。

俺が紅茶の乗ったトレイを持ってやってくると、そこには凛もなのはもいない。
気になってすずかに聞いてみる。
「凛たちはどうしたんだ? そういえばユーノもいないな。
さっきまで猫たちに襲われていたのに、もしかして……食われたのか?」
フェレットのユーノは、遊び盛りの子猫たちの格好の標的だ。
キューキュー鳴いて逃げていたのを思い出す。
結構ありそうに思える事態を想像し、真剣に聞いてみる。

「もう、うちの子たちはそんなことしないよ。
なのはちゃんはユーノ君が走って行っちゃったから、連れ戻そうと追って行って。
それを凛ちゃんが、なのはちゃんの運動神経じゃ夜になっても連れ戻せないからって、手伝いに行ったよ」
すずかは俺の発言を困ったように訂正しつつ、事情を教えてくれる。

「すずかの家は猫屋敷だから。いい加減オモチャにされるのに耐えられなくなって、逃げ出したみたいね」
アリサが呆れたように、それでいて楽しそうに話す。
やはりこの子は、凛たちと同じ「あくま」の類らしい。
他人、もとい他フェレットが困っている姿を見て楽しむなど、いい趣味をしている。

ところで、人間並みの知性を持つらしいユーノが走り出すような事態とは、つまりジュエルシードか。
凛から連絡がなかったのは、自分が近くにいるからフォローは必要ないと考えたのと、いざとなってもラインを通じてわかるからだろう。

とはいえ、何が起こるかわからない。
常に悪い方のことも考えておくべきだが、その辺凛は甘いところがある。
だから、そこをカバーするのが俺の役目なのだろう。
と考えて、適当に理由をつけて様子を見に行くことにする。
おそらく結界が張られているはずなので、一般人であると思われている俺が、すべて終わった後に合流しても怪しまれないだろう。

「じゃあ、俺も手伝ってくるよ。
木の上にいたりしたら、女の子に登らせるのもアレだし、男手があった方がいいだろ」
そうして走りだす。目的地は結界があると思われる歪みだ。


  *  *  *  *  *


「これがその結界か、本当にわかりやすいな。
一般人ならまず気付くことはないだろうけど、勘のいい奴なら違和感くらい感じるかもしれないぞ」
結界は凛から聞いた通り、侵入を阻むものではなく、中のものを出さないのが目的らしい。
そのおかげで、ちゃんと楽に侵入できた。

前回あった、巨樹の件と同じ恰好をして聖骸布の外套も忘れずに投影する。
もし攻撃されても、魔力によるものならある程度防いでくれるし、強化をかければ概念も増すのでさらに効果は高い。
さすがにオリジナルのそれには及ばないが。

森の中なので視界が悪い。
少しでも高いところから探すために、木の上を飛び跳ねながら移動しつつ捜索しようと思い行動に移す。
だが樹上に上がった時点で、すぐに対象を発見することができた。
場合によっては、相当な範囲での捜索もいるかと思ったが、どうやらその必要はなさそうだ。

だってあれだけ目立つのがいて、それから魔力が感じられるなら、今回のジュエルシードはあれが起動させたのは明白だ。
しっかし、俺がこの騒動にかかわってまだ2回目だが、またいい加減な叶え方をしたものだ。
今回の願いはわかりやすい。だってある意味正解だ。

少し遠目に見えるのは、クジラと同等かそれ以上の巨躯の「子猫」という矛盾存在。
大方、月村邸の子猫が「大きくなりたい」とでも願ったのだろう。
確かに大きくなっているし、一応間違っては……いない?

だが、この願いの叶え方には溜息が出る。
ある意味、カレイドステッキのような代物だ。
正確にはその管制人格とでも言うべき、人工天然精霊マジカルルビーだが。

あの不良精霊が、一生会話の成立しないエイリアンのような存在であるように、ジュエルシードは決してまともに願いを叶えない、愉快型ロストロギアなのだろう。
そのくせやることが派手なもんだから、騒動や被害は大きくなる。まったくもって性質が悪い。
まぁ、別に凶暴化しているわけでもないので、危険もないのだろう。
と考えつつ、念のため二人の様子が見えるところに行こうとした。

「にゃぁ!!?」

その時、子猫(?)が悲鳴を上げる。
「!! 今のは攻撃か? くっ、一体どこから……」
どうも攻撃を受けたらしい。
ちょうど視線を外していたので、正確なことはわからない。

だが、数発の金色の矢の様なものを目の端で捕らえた。
大人しくしているし、なのはや凛がそんなことをするはずがない。
そもそも攻撃の方向からして二人ではない。
つまり第三者の仕業になる。聞いた話では、捜索しているのは俺たちだけのはずだ。
そこに、別の何者かが動いたということ。
とにかく姿を確認するべく、急いで木の上から辺りを索敵する。

「………見えた!!」
それほど離れたところからの攻撃ではないらしい。
印象は黒、次に金。漆黒のマントを羽織、動きやすさを重視したような装束を華奢な体に纏っている。
というか、ベルトのせいもあって体の線が強調され過ぎ
特に上半身。まだ成長し始めたところだからそれほどでもないが、あと数年したらエライことになりそう。

まあ、とりあえずそれはおいとこう。凛に知られたら「変態」呼ばわりされそうだし。
それ以外だと、ツインテールにした金髪と真紅の瞳が特徴的な女の子だ。
友人関係のせいで美少女は見慣れているが、彼女たちに劣らぬほどに整った顔立ちをしている。
その顔に表情はなく、端正な顔立ちと相まって、どこか冷たい印象を受ける。
形は違うが、なのは同様に機械的な印象が強い杖とも戦斧とも取れる漆黒の武器を持っている。
おそらく魔導師で間違いない。

その子が子猫に攻撃を加えているが、すぐに移動する。
その速さが並みじゃない。
あっという間に、子猫のいるところに近づいていく。俺も急いで向かうが、出遅れた。
凛たちもそこにいるだろうし、急がないと……。

凛がいるから大丈夫とは思うが、万が一ということもある。
少なくとも戦闘になれば、なのはに勝てる相手ではない。
実際の力はわからないが、ちゃんとした攻撃ができ、あれほどの移動スピードが相手では結果は決まっている。
恭也さんたちと違って剣の心得さえないなのはでは、そもそも戦いにならない。
凛もなのはをかばいながらでは、やり辛いはずだ。
ここから狙撃してもいいが、木が鬱蒼としていて凛たちの姿は確認できない。
周囲に特別大きな木もないので、すぐに向かう。


俺がたどり着いたとき、凛が左の人さし指を向け、魔術刻印を光らせながら牽制していた。
右手には礼装の指輪も装着し、完全な臨戦態勢だ。

なのはにはユーノが付き添い、凛が前に出る格好だ。
経験不足のなのはを守るためだろう。
さらに後ろに、まだ大きなままの子猫が倒れている。

「一体何が目的? いきなり攻撃してくるなんて、随分なご挨拶じゃない」
凛が相手の目的を尋ねる。
素直に答えるとは思っていない。
だが、全く情報のない相手である以上、些細なことでもいいので情報が欲しい。
運が良ければ、何かの拍子に情報が得られるかもしれない。
邪魔をして情報を聞き出せないと困るので、パスを使って凛に到着を告げ、とりあえず静観する。

『凛、遅くなってすまない。いま到着した』
『士郎? ナイスタイミング! 状況はわかってるわね。とりあえずアンタは隠れてて。
一応私が何とかするつもりだけど、魔法のことはまだよく知らないし、万が一というのもあるわ。
その時は、援護頼むわよ』
凛からの指示に従い、とりあえずここは任せることにする。
同時に、援護のしやすい黒い少女の背後に移動する。
相手にも気づかれにくいし、逆に凛からは俺のことが分かるので連携が取りやすい。

「答えても……たぶん、意味がない………」
ほとんど感情を感じさせない声で、黒衣の少女は対話を拒絶する。
移動した俺からは見えないが、たぶん今もその顔に表情はないのだろう。
元から穏便に済ませる気はなく、話し合いの余地はないということか。

だが、俺も凛もここのところの平穏な生活で平和ボケしたのか、初歩的なことを失念していた。
なのはやユーノは知らないが、二人には凛の他に「俺」という味方もいる。
それと同じように、相手にも「仲間がいる可能性」を忘れていたのだ。

頭上から木々の擦れる音と共に、何かが降ってくる。
俺は直前で気づき身をかわす。真横を落下していったのはオレンジ色の大型犬。
いや、あれは狼か?

とにかくこれで、黒い少女にも俺のことがバレた。
狼の方は、俺に向かって威嚇するように唸り声をあげている。
少女と狼は俺と凛の間に入り、若干距離が開いているが、互いに背中を向けるような位置づけになる。
この様子からして、まず間違いなく黒い少女の仲間だろう。

とっさに判断を下し、言葉を発する。
「まったく、妙な魔力を感じて来てみれば、これはいったい何事かね?
 様子を見ていれば突然頭から襲われるし。どうもそちらの黒いのと狼は、交戦する気でいるようだ。
 どうかね?そちらの白いのと、赤いの。いまいち状況はわからんが、ここは共闘するとしようじゃないか。
 詳しい事情は、後で聞かせてもらおうと思うのだが……」
万が一にも、俺と凛が身内であることに気付かれてはならない。これは凛から厳命されている。
ならば、素知らぬ振りをして共闘を申し出る方が自然だ。
なのはたちは俺のことを知らないので、不自然な点もない。これで双方を騙すことができるはずだ。

「わ、わかりました!? ありが「礼は後でいい! この場にいるのなら、そのやけに大きい猫への対処手段も知っているのだろう? ならばこちらは私が請け負おう。君たちはそちらをなんとかしたまえ」……は、はい!?」
礼を言おうとするのを制し、早く封印するよう促す。
それに少し戸惑いながらも、ユーノが返事をする。

「なのは、こっちへ」
「……う、うん!」
ユーノに声をかけられ、止まっていた思考が動き出したのか、弾かれたようになのはも動き出す。

だが動き出そうとしない凛に気がつき、どうしたのか尋ねている。
「え、凛ちゃんは?」
「私はそこの女を相手にするわ。あっちは狼の方を相手にするみたいだしね」
二人同時にかかってこない限り、俺が両方を抑えることはできない。
当然残った片方は、凛が担当することになる。

それを聞いたなのはが口を開くが、それを凛に制される。
「でも……「私が心配なら、さっさと封印を済ませなさい。向こうの目的もジュエルシードだろうし、こっちの手に渡れば諦めるでしょ。わかったら早くしなさい!」は、はい!! 気を付けてね」
心配そうに凛の方を見ていたが、強い口調で命令されそれに従う。
そうして、凛を除いた一人と一匹が、子猫の方に向かっていく。

その間に凛との打ち合わせを行う。
『こっちは俺が何とかする。下手に一緒に戦うと、連携がとれていることを疑われるかもしれない。
早く片が付いて援護することになるのなら、適当にガンドをばら撒いてくれ』
『了解よ。そっちこそあんまり無茶するんじゃないわよ。
向こうはなのはと違って、一応戦闘訓練を受けているみたいだし、気をつけなさい』
決めることは多くないので、すぐに打ち切る。
ただこの場では、まだ予定通りに部外者を装う方向でいくことにするので、あまり一緒に戦うべきではないことを確認する。

また、子どもだからといって侮るべきではない。
魔法のことは多少ユーノから話を聞いているが、どんな戦闘手段があるのかまでは聞いていない。
ジュエルシードを紛失するに至った経緯を聞いた限りでは、少なくとも魔導師と戦う可能性は考えていなかった。
当然対策もない。
思いもよらない技術もあるかもしれない。
何をしてくるかわからない相手である以上、慎重に対応するべきだ。
それは俺が相手になる狼に対しても言えることだ。

俺の言葉を聞き、黒い少女が動き出すが凛のガンドの弾幕で足止めされる。
今のうちに、狼の方を処理してしまおう。
魔力を帯びているところから、おそらくは魔獣か使い魔のようなものと思われるが、拘束する手はある。
それに殺すのは不味い。聞きたいこともあるし、なのはたちがいるところでの流血沙汰は避けたい。
干将・莫耶を懐から取り出すようにして作り上げ、向かってくる狼を斬りつける。


獣らしく爪と牙を用いた攻撃が得意らしく、少々やり難い。
むしろ、僅かに押されてさえいる。

考えてみると俺の戦闘経験は、人間か人型をしたものとが多く、こういった動物型は要領が掴めない。
俺の戦い方は、なのはのような天性の才能を頼りとするモノではなく、積み上げてきた鍛錬と多くの経験が頼りだ。
対人以外の戦闘などまるで想定してこなかったし、相手をする機会もほとんどなかった。

どこぞの武芸者のように、山に籠って熊の相手をしたり、サバンナでライオンと取っ組み合いをしたり、そんなことをする気は全くなかったからな。
この場の不利は、ある意味当然だ。

基本は小細工なしで全身の力を貯め、突進と共にその鋭い爪牙で攻撃する、というものだ。
これがますますもってやり難い。
突進なんてされては、いなすかかわすぐらいしか俺には選択肢がない。
下手に斬りつけると、そのままバッサリと殺ってしまいかねないからだ。

魔導師たちは魔力での防御が充実しているらしいから、こいつもそれなりの防御力を持っているのだろう。
だが、俺がふるっているのは贋作とはいえ、オリジナルと遜色ない力を有する干将・莫耶だ。
ランクこそC-と低いが、こいつは紛れもない宝具のひとつ。
相応の魔力と概念を有している以上、その防御を切り裂いて致命傷を与えるぐらいは容易い。
おかげで、こちらは攻撃できる場面でも下手に攻撃できない。
隙を見つけても、剣の腹か、あるいは峰を使っての攻撃になる。
だが、これだとほとんど打撃に近くなるせいか、衝撃の大半を殺されてしまい、多少当てたくらいでは決定打にならない。

それに、どうやらこいつも魔法が使えるようで、時折魔力弾を放ってくる。
数もそれほど多くないし、威力は脅威というほどではない。
弾速も、俺からすればたやすく視認し反応できるレベルだ。
向かってくる魔力弾を難なく切り払ってはいるが、放つと同時に牙をむいて襲いかかってくる。
この波状攻撃は、なかなか上手く出来ている。
魔力弾にばかり気を取られていると、気がつけば懐に入られてしまう。
単純だが、かなり厄介な戦法だ。

中近距離戦を主体とする、スピードを活かした戦闘が持ち味のようだ。
俺の戦い方との相性自体は、そう悪くない。
しかし、やはりこういった存在との戦闘が不慣れな上に、殺さないように配慮しながら戦わなければならないのが、形勢不利の最大の原因だ。

「ふむ、どうもやり辛いな。まあ、別に倒す必要はない以上、拘束すれば十分か。
 そろそろケリをつけさせてもらうぞ」
向こうが使い魔や魔獣の類であり、あの黒い魔導師の仲間である以上、こちらの言葉がわからないはずはないが、返事には期待していない。
そもそも人語を発声できない可能性の方が高い。
どのみち拘束するのに必要なのは、一瞬の停滞だ。それを作り上げる!

狼が魔力弾を放ち、俺がそれを叩き落とす。
その間に、こちらが迎撃の態勢に移行する前に突進を仕掛けるという、さっきから何度もしてきた攻撃を繰り返してくる。
どの程度の知性を持っているかは知らないが、こう何度も同じことを繰り返していれば、対策の一つや二つ容易く練れる。
有効な攻撃手段ではあるが、もっと他の攻撃も織り交ぜた方がより効果的だろう。
どの攻撃に対し反撃しようか、狙いを付けさせないためにも、さまざまなパターンでの動きを取り入れた方がいい。

形勢が有利だからといって、同じことの繰り返しでは芸がない。
能力は高いようだが、経験が足りない。
喉笛に噛みついてきたところを、腰を落としてかわす。
そのまま狼に渾身の蹴りをくれてやり、蹴り飛ばすことで間合いを広げる。

まずは、干将を相手に向かって投げつける。
当然これは避けられるわけだが、投げる際に少しだけ右寄りに投げた。
手持ちの武器を投げるとは思っていなかったのだろう。とっさの反応で避けやすい左側に逃げた。
身体能力が高かろうと、動きが読めていれば対処は容易い。

避けるであろう方向には、すでに駆けだしている。
相手からしたら動いた先に敵がいたのだから、やられる前にと考えて攻撃してくるだろう。

特にこいつは、さっきから押せ押せで攻撃してきたところを見るに、性格的に攻撃が好きなことがうかがえる。
予想通りに噛みついてきた。前足はまだ動いたばかりで、動ける状態ではないので無視していいし、魔力弾も用意されていない。
こちらの狙い通りに動いてくれているので、感謝の一つでもしたいくらいだ。

大きく開いた口に向かって、残った莫耶をこれまでと違って刃を向けて振る。
別に斬るつもりはないので、力も込めてないし振りも早くない。
案の定、斬られてはたまらないと莫耶を噛んで抑える。元から防いでもらうための一撃なのだから、これでいい。

さぁ、これで詰みだ。
莫邪を咥えたままの頭部を、ギミックを使って膂力を増した左腕で力任せに押し、体勢が仰け反る。
そのまま半身になり、干将を手放した右半身をこいつの懐に入れる。
震脚を利かせ、凛仕込みの崩拳を渾身の力で叩きこむ。

もちろん手加減はしていない。
魔獣にしても使い魔にしても、それなりにタフだろうし、魔法による防御だってある。多少ダメージは与えられただろうが、おそらくは無傷だろう。

後方に吹っ飛ぶ狼に向けて、懐に手を入れながら詠唱する。
「『投影、開始(トレース・オン)』」

取り出すようにして作り上げた鎖を、狼に向かって投げつける。
「―――天の鎖よ!」
放たれた鎖は生き物のように動き、四方から狼にからみつき拘束すると、勢いよく上に向かって引き上げる。

「うわぁぁっ!!?」
どうやら話せたらしい。厳密にいうなら、これは叫び声だが。
どういった身体構造をしているのかはわからないが、人語を喋っている。
狼の声帯では、構造的に人間の発音などできないはずだ。これも魔法の力なのかもしれない。
ずっと唸っていたので、てっきり喋れないと思っていたのだが。
まぁユーノも喋るらしいので、似たようなものなのだと考えることにした。

これは本来、神を律するための鎖なので、神性などあるはずもないこいつ相手には、真の力は発揮されない。
だが、これが鎖であることに変わりはない。当然、それなりに頑丈だ。
それに通常の鎖と違って、ある程度思い通りに動いてくれる。これでなかなか重宝している武装の一つだ。
それに鎖は金属製なので、比較的「剣」の属性にも近い。近接戦闘用の武装に次いで、負担の少ない武装だ。

少し強力な魔法を使えば、断ち切るのにそう苦労はしないだろう。
しかし、多少体を強化したくらいの力で引きちぎるのは、まず無理なはずだ。
一応軽く強化もしてあることだし、たぶん大丈夫だろう。
もし危なくなったら、その時には鎖で雁字搦めにしつつ、思いきり強化をかけてやればいい。
目的は拘束して人質にし、向こうの魔導師にねらいをはかせることなので、今のところはこれで十分だ。

宙づりにされながら、なんとか脱出しようと狼がもがく。
「くそ! 一体、どうなってるんだい。こんな鎖で、あたしを捕まえるなんて」
いくら抵抗してもビクともしない鎖に対し、悪態をつきつつ、疑問の声を上げている。

こちらの方は、これで片がついた。
まだもう一人もいることだし、そちらの方も手早く片付けようと、凛の方を向こうとする。

「アルフッ!!」
振り向こうとする方向から声が聞こえる。
どうやら、凛が相手をしている黒衣の少女のものらしい。
さっきの狼の叫び声に反応したようだ。

鎖か抜け出そうともがく狼が、大声で警告の声をあげる。
「ダメだフェイト、後ろ!!」
何事かと思い、今度こそ凛のいる方を向く。

あるいは、俺が手を出すまでもなく決着がついたのかもしれないな。



Interlude

SIDE-フェイト

わたしの後を追いかけて来たアルフが、赤い外套を着た以外特徴の掴めない男の子に襲いかかった。
男の子とわかったのは、声が聞けたからだ。そうでなかったら、性別すらわからなかったと思う。
それくらいに、外見から得られる情報が少ない。


危なかった。
いつの間にか、隠れて後ろを取られていた。
あのまま不意打ちされていたら、たぶん抵抗すらできずに倒されるか、捕縛されるかしていたと思う。

目の前にいる二人の女の子、白い少女と、赤い少女。
初めはこの二人の仲間かとも思ったけど、さっきのやり取りを見ると、初対面らしい。
だけど、そんなことは関係ない。
いまわたしたちは二対三、いやあの使い魔らしきフェレットも入れると、二対四で不利。
白い少女がジュエルシードの封印を担当し、フェレットがそのサポートをしている。
残りの二人は、それぞれ別々にわたしたちを抑えている。初対面では連携が取れないからだろう。

逆にわたしとしてはアルフと連携して、早くジュエルシードを回収したい。でも、そうさせてもらえない。
目の前に立ち塞がる赤い少女は、魔法陣もデバイスもなしに魔法を使用している。
デバイスは本来補助のためのものだから、使わずに魔法を行使するのはわたしでもできる。
だけど、魔法を使っているのに魔法陣が出ないなんて聞いたことがない。
一体、どういうことなんだろう?

「あら、どうしたのかしら? いつまでも逃げていては進まないわ。そろそろ次の行動に移ったら?」
赤い子が、こちらに向かって挑発してくる。
だけどそれに乗るわけにはいかないし、何より今はこの子の使う魔法を分析するので手一杯だ。

魔法陣が現れないことから考えて、私の使うミッド式とはまるで違う魔法体系を使っているはずだ。
今の魔法の主流はミッド式だけど、それ以外がないわけじゃない。
たぶん、そのうちの一つなんだろう。
左手の指先からは、黒い魔力弾が飛んでくる。これが彼女の魔力光なのだろうか?
直射型で狙いは甘いが、とにかく数が多くて近寄れない。

それならこっちも、射撃系で応じるか、一番の武器であるスピードを活かし、正面以外から攻撃するという選択肢がある。
あの直射弾は、数こそ多いけど威力はそれほどじゃない。
だから、防御魔法を使いながらの強行突破、というのも手だ。

だけど、あの子は並行して他の魔法も使っている。
直射弾に対応しながらだと、そちらを撃ち落とすのは難しそうだ。
スピードに任せて外側から攻撃しようにも、それをしようとする度に広範囲への攻撃をされて、思うように動けない。
受けていないから絶対じゃないけど、おそらく直射弾よりずっと威力が高いように見えた。
迂闊に受けるのは得策じゃない。また、その魔法の多種多様さには圧倒される。
どうやら、完全に動きを支配されてしまっているみたい。

「『Vier(四番、)Drei-gezinkter(奔れ) Donner greift es an!(三叉の稲妻!)』」
ガガガガガガガガガガッ!

あの子の右手にある指輪が詠唱と共に光るのと同時に、大きく横に移動する。
回避行動は間に合い、ギリギリのところでかわす。
私のすぐ横を通り過ぎていったのは、途中から三条に割れた雷撃。
さっきは巨大な氷の塊が頭上から降ってきたし、その前は広範囲への炎による攻撃だった。
時折見えない攻撃もされる。

魔力変換によるものだと思うけど、その場合習得しているのはたいてい一種類のはずだ。
なのにこの子は、「炎熱」や「電気」だけでなく、まれとされる「凍結」まで使っている。
見えない攻撃の方は、おそらく幻術と併用しているのではないかと思うけど、確信が持てない。
それに、こんなにいくつもの魔力変換を身につけるなんて、聞いたことがない。
これだけの種類があると、得意なものとそうでないものとの間には、かなりの差があるはずだ。
しかしこの子の攻撃には、どれも優劣がない。
三種類の魔力変換は、それぞれが非常に強力だ。

魔法を使おうとして動きを緩めれば、きっと狙い撃ちにされる。
防御に自信のない私は、動き回るしかない。
直撃を受ければ、最悪の場合わたしの防御力では落とされるかもしれない。

このままでは、あの白い子に持っていかれてしまう。
焦ってはいけないのはわかっているが、多少当たってもいいから、ここは防御魔法を盾代わりにして無理矢理突破しようとする。

だが、後ろで何かを殴るような音がしたかと思うと、アルフの驚愕の声が聞こえる。
「うわぁぁっ!!?」

その声に驚いて、後ろに下がりながら振り向いてしまう。
そこには鎖のようなもので全身を縛られて、宙づりにされているアルフの姿があった。

「くそ! 一体、どうなってるんだい。こんな鎖で、あたしを捕まえるなんて」
今は、何とか脱出しようと必死にもがいている。
だけどその鎖は、まるで意志でもある様にアルフに絡みついたままだ。
どうやら脱出できずにいるらしい。奇妙な魔力も感じるし、ただの鎖じゃないんだろう。

「アルフッ!!」
わたしの意識が一瞬アルフに集中し、赤い子への警戒を解いてしまう。

助けに行くべきか迷っている私に、アルフが大声で警告する。
「ダメだフェイト、後ろ!!」
「そうね、戦いの最中に敵から目を離すべきじゃないわ。
 これは授業料として受け取りなさい」
そんな声に反応して、すぐに振り返る。でも、もう遅かった。
先ほどまで、足を止めて魔力弾を撃ち出していた赤い子が、目の前にいた。
すぐに離れようとするけど、その子の拳がわたしのお腹に向かって飛んでくる。

ズンッ!

「かはっ!?」
見た目が、わたしとそう変わらない子が殴ったとは思えない衝撃だ。
バリアジャケット越しにも関わらず、かなりの衝撃が伝わった。

わたしの防御は薄いが、それでもこれが異常なのは間違いない。
たぶんだけど、身体能力を魔法で強化しているはずだ。

でも、それだけじゃない。
空中にいた私との距離を、僅かな時間で詰め、あの威力の攻撃を素手で出せるのは脅威だ。
これでさらに威力を上げられたり、今と同じゼロ距離で拳と一緒に魔力弾や、他の魔法を使われたりすると厄介だ。
もしかしたら、バリアジャケットを完全に抜くこともできるかもしれない。

わたしは腹部の痛みに耐えながら、そのまま空中に退避する。
見ると、今白い子が封印を終えたところだった。
これではジュエルシードは手に入らないので、もう逃げるしかない。

なら、アルフを助けないと。
そう考えて、バルディッシュを鎌に変形させて鎖を断ち切ろうとする。
「バルディッシュ!!」
《Scythe Form》
バルディッシュがわたしの意図を察して、形態を斧から鎌に変える。
迂闊に近寄ると危ない。
またあの魔力弾があるかもしれないし、外套の男の子も何ができるかわたしは知らない。
安全のために、離れたところから断ち切ることにする。

「アーク!」
《Saber!》
鎌の魔力刃の部分を飛ばす。
それなりに頑丈なようだけど、魔法で作った刃を防ぎ切ることはできないみたい。
ちゃんと切れて、アルフも脱出する。
同時に、斬られた鎖が初めからなかったかのように消えてしまう。
一体どういうことなんだろう?

あの子たちもこちらを追おうとしているが、飛べないのか予想外に簡単に離脱できた。
ただ逃げる際に、あの魔力弾がいくつか体をかすめていった。

この先もジュエルシードを探していけば、あの子たちと戦うことになる。
白い子は戦闘訓練自体を受けていないのか、一度は呆然と立ちつくしていた。
だけど、残りの二人は強い。

今度からはちゃんと作戦を考えておかないと、負けてしまうかもしれない。
そんなことになったら、母さんの頼みに答えられない。それは駄目だ。

絶対に次は負けない。そう誓ってこの場を離れる。

Interlude out



SIDE-士郎

やはり魔法を受けても切れない、というわけにはいかないようだ。
これなら、可能な限り強化をかけておくべきだったか。
手を抜くべきじゃなかったな。

それに、空を飛ばれては追うことはできない。
飛行用の宝具や礼装など持っていないし、空を飛びまわって攻撃してくる相手というのも初めてのタイプだ。
ちゃんとした対策もなしに戦うのは危険すぎる。頭上と足元は、地に足をつける生き物全てにとっての死角だ。
頭上から攻撃してくるだけなら、今までにも経験はある。
だが、自由に空を翔る敵を相手にするのとは勝手が違う。
相手は地上に降りてくることはないのだから、対空用の戦術が必要になる。
それができる攻撃手段はあるが、それをどう活用するかが課題だ。
遠距離攻撃は得意な部類だが、それでも手が届く範囲に引き摺りこめるにこしたことはない。

追おうと思えばできないこともないが、その場合は俺一人か、足手まといになるなのはを連れてと三人で追うことになる。
戦力として、なのはは論外。連れて行くのも良策とは言えない。
そうなると凛になのはを任せて俺一人で追わなければならないが、二対一というのは望ましくない。
敵の情報もほとんどないし、二人を同時に相手にすれば、負けることもありうる。
なによりその場合は、俺や凛は走って追わなければならない。
空を飛べる相手を追跡するのに、それはあまり意味がない。
入り組んだ路地や高い建物を飛び越えて行かれれば、簡単に見失ってしまうだろう。
それに動きも速いし、走って追うのは難しい。

それに次の機会もあるはずだ。
なぜジュエルシードを欲するかは知らないが、探していれば、また遭遇する可能性は高い。

瞳に決意と覚悟の光があった。おそらく、簡単には諦めないだろう。
今回わかったことといえば、競争相手の存在と、その名前。
確か黒いバリアジャケットを纏った金髪の少女が「フェイト」で、オレンジの狼の方が「アルフ」だったか。

これまでとは事情が変わったな。
なんとか彼女たちの情報が欲しいところだが、今は無理だろう。
あとで凛と相談するか。

それはそれとして、演技の続きをしないとな。
なのはたちから適当に話を聞いて、この間の設定を話さないと。
やれやれ忙しくなりそうだ。


お互いに一通りの話をし終え、演技を継続する。
「……ふむ、おおよその経緯は理解した。
本来なら世迷言と切って捨てるところだが、それでは先ほどまで体験していたことを否定することになるな。
まだ頭が整理できんが……良いだろう。信じることにしよう」
俺にとっては今更の内容だが、この場では知らないふりを通す。
設定上、俺は異常に気づき様子を見に来た第三者なのだから。

「信じてくださって、ありがとうございます。
それに、先ほども助けていただきました。重ねてお礼を言います。ありがとうございます」
はじめて聞いたユーノの声は、非常に礼儀正しく好感が持てる。
凛の言うとおり、責任感の強い奴なのだろう。
そのことが、より俺の中の罪悪感を強くする。
必要なこととはいえ、こんないい子たちを騙すのはやはり気が咎める

「礼には及ばん。
だが、ジュエルシードと言ったか。完全に秘匿など考えられていない代物だな。
あんなものが野晒しにされては、こちらにとっても迷惑だ。さっさと封印してもらいたいものだ。
 だが、郷に入っては郷に従うという言葉もある。聞いていると思うが、こちらではそういったことを秘匿するものだ。
くれぐれも一般人に知られることのないようにな。その場合、相応の対処をすることになる」
これ以上一般人を巻き込まないように釘を刺しておく。
俺としてはなのはが関わっているのも、あまりよくないと思っている。
だがもう関わってしまい、才能が開花しつつあるのだから、こうなっては凛の方針が得策だろう。
せめて、これ以上巻き込まれる人間が増えるのだけは、避けなければならない。
彼らの技術は万人に向けての物のため、そのあたりがごっそり抜けおちている感がある。
用心に越してことはない。

そのあたりはユーノもわかっているようで、申し訳なさそうにしている。
「そのことは、本当に申し訳ありません。
この世界の人々にご迷惑をおかけしているのは、重々承知しています。
責任を持って回収することをお約束します。
 ところで、あなたも凛と同じ魔術師なのですか?」
ユーノは怪訝そうに聞いてくるが、当然の反応だ。
極力情報を与えないようにしているせいで、眼さえも合わせていない。
こんないかにも不審者な男のことを、手放しで信用できるものではない。
最低限、聞かなければならないことがある。

「答えはイエスだ。そこの赤い少女とではできることが違うが、私は確かに魔術師だ。
 この地には比較的最近来たのだが、異常を感じて調査していた。
今回は結界を見つけて、様子を観察しようと思い来たのだが、こんな場面に出くわすとはな。
君たちは運がいいようだ。私がいなければ、あれはあちらに奪われていただろう」
すべてがバレた時に備えて、嘘を含まずに話す。
もし追求されても、嘘は言っていないと主張すれば、強くは出にくくなる。
こちらは単にグルになって真実をぼかし、本当のことを言わなかっただけなのだから。
咎められるいわれはない。

凛はさっきからだんまりで、こちらを睨んでいる。
下手に言葉を交わすのは避けたいし、この方が警戒しているようで怪しまれないだろう。

「僕たちは、これからもジュエルシードの回収を進めるつもりです。
危険が増しましたが、放っておくわけにもいきません。
 彼女たちがあれを集めて、何をするつもりかはわかりません。
ですが、これ以上こちらに迷惑をかけないためにも、早急に済ませるつもりです」
方針に変更はないようだ。だが、早急に済ませるというが、不安要素だらけだな。
ユーノはまだ拾われた時の傷から、万全の状態ではないらしいし、なのはは戦力として期待できない。
戦闘訓練をしたらどうかはわからないが、モノになるのにはしばらくかかるはずだ。
そうなると、戦力は凛だけだ。

そもそも、発見すること自体が容易ではない。
これでは、どれだけやる気があっても思うようには進まないな。
俺なりに今後の動きに考えがあるが、それは後で凛と相談することだ。
きっと「何考えてんのよ、この馬鹿!!」と言われて、怒られるのだろうな。

それはそれとして、俺は表立っての共闘はできない以上、別行動をとる旨を伝える。
「そうか、まぁ気を付けたまえ。私は私で勝手にやらせてもらう。
こちらで回収した場合には、最後にはそちらに委ねることになるはずだ。
興味がないわけではないが、危なっかしくていかん。とても使おうとは思えんよ」
肩を竦めて言う。
元来、俺の願いは他者に叶えてもらう類のものではなく、自分で叶えてこそ意味があるものだ。

「あの、でしたら僕たちに協力してもらえませんか?
ジュエルシードにかかわることに違いがないのでしたら、一緒の方がいいと思うのですが」
戦力的に不安があるのはわかっているのだろう。
相手が戦闘訓練を積んでいるのは明白なのだからか、それに対応するものが欲しくなるのも頷ける。
ユーノとしては善意から協力している(と思っている)二人を、危険にさらしたくないはずだ。
戦闘に長けた俺がいれば、危険はぐっと減る。
俺がこの先も動く以上、一緒の方が助かると考えたか。

「生憎だが、慣れ合うつもりはない。
君を通じて管理局とやらに私の存在が知れるのは、好ましくないのでな。
 こうして正体を隠して話すのが、精一杯の譲歩だ。
共闘などしては、私の素顔が知れてしまうかもしれない。
 厄介事は減らしたい。手助けすることもあるかもしれんが、それ以上は期待せんことだ」
突っぱねて後ろを向く。もう話すことはない、という意思表示だ。
このまま立ち去って、適当なところで合流するとしよう。
と考えていると、黙っていたなのはが声をかけてきた。

「あの……名前を、教えてくれないかな?」
そうだな、呼び名くらいはないと困るだろう。
下手にわけのわからないものを付けられてはたまらない。

そう思考して、自分に合った呼び名を考えるが、思いのほかすぐに出てきた。
あまり気分のいい呼び名ではないが、これが最も俺に合っているはずだ。
「アーチャーだ。これからはそう呼べ」
振り返らずに言って、今度こそこの場を離れる。



Interlude

SIDE-なのは

わたしたちは今、すずかちゃんたちの待つお家に戻っている最中。

アーチャーさんと名乗った赤い外套を着た、顔の見えない男の子は、森の奥に消えて行ってしまった。
手助けしてくれるらしいけど、なんだか少し冷たい感じのする人だった。

あのフェイトちゃんという子も、はじめはどこか冷たい感じがしたけど、眼を見て気付いたことがある。
あの子の眼は、とても悲しそうで寂しそうだった。
初めは戦うのが嫌だからなのかと思ったけど、それだけじゃないような気がする。
わたしが守られているのを、なんだか寂しそうな目で見ていた。
何かを悲しい、寂しいと思えるということは、きっと大切なものがあって、そのことが原因じゃないかと思う。
大切なものがある以上、ただ冷たいだけの子じゃないはずだから。

今回のことにも、何か理由がある気がする。
あの子とお話をしてみたい。
そんな思いが、いまわたしの中に芽生えている。

いろいろなことを考えながら歩いていると、森の出口近くで士郎君に会った。
ユーノ君を捕まえるのを手伝おうと思って、探していたらしい。
今はその士郎君を先頭に歩いている。

士郎君は少しぶっきら棒なところがあるけど、本当はとても気配りのできる優しい子だ。
人が困っていれば助けるし、頼まれたことは本当にできないこと以外、まず断らない。
凛ちゃんはそのあたりが心配らしくて、士郎君が騙されたり利用されたりしないか、いつも気にかけている。
この二人は本当に仲がいい。

たぶん、一緒に暮らしているという以上に、お互いのことをとても大切にしているんだと思う。
士郎君も凛ちゃんのことが最優先らしく、頼み事を断るときは大抵凛ちゃんが関わっている。

すずかちゃんは士郎君が好きみたいだけど、この二人の間に割って入るのは、きっとすごく大変だ。
ただでさえ士郎君は人の好意に鈍いようで、凛ちゃんもよくヤキモキしている。
そんなときはアリサちゃんが、よく凛ちゃんをからかっているのが最近のわたしたちの日常だ。

なのに何故だろう?
今、一瞬士郎君の背中が、さっき森の中に消えた背中にダブって見えたのは。


  *  *  *  *  *


その後戻ってきたわたしたちは、かなり時間がかかったことを心配された。
お兄ちゃんにも少し怒られちゃった。

でも、わたしの頭は別のことを考えている。
さっきアーチャーさんは、自分がいなければ負けていた、と言っていた。
二人は何も言わないけど、その原因はわたしだ。
わたしは闘い方を知らない。さっきもどうすればいいのかわからず、動くことができなかった。
今のわたしでは、この先あの子と闘うことになれば負けてしまう。

それだけならともかく、二人の足を引っ張ってしまうかもしれない。
それは駄目。ユーノ君を助けたくて協力しているのに、それで迷惑をかけてはわたしがいる意味がない。
だってそんなことになったら、ユーノ君と凛ちゃんはきっとわたしを置いて行く。弱いわたしを守るために。
だから、強くならなくちゃいけない。

いまわたしが考えているのは、どうやって二人に戦い方を教えてもらうか。
自分は運動が苦手なのは自覚している。そんなわたしが戦うというのを、二人は許さないかもしれない。
でも、足手まといになるのはイヤ。
何としても教えてもらうことを決意する。絶対に折れてくれるまで退かない。
二人を困らせてしまうかもしれないけど、そうしないとフェイトちゃんともお話ができそうにない。

でもこのわたしの気持ちは、予想に反してあっさり認められてしまうのだった。

Interlude out





あとがき

初めに、タイトルの「Encounter」は「敵との遭遇」や「交戦」なんて意味があります。
場に大きな変化が起こるきっかけになる話なので、今までとはちょっと趣向を変えてみました。
エンカウントって、和製英語なんですね。全然知りませんでした。


フェイトとの初戦は、こんな形になりました。
別に最強ものをやる気はないのですが、当面なのはやフェイトでは士郎や凛に太刀打ちできません。クロノがいいところまでやれるでしょうが、それでも難しいと思います。互角以上に渡り合うには、もう一・二年は必要かな。それだけ、積んできた経験と力の差は大きいはずです。特に経験。

相手にしていたのが正真正銘の化け物で、それ以外もやることがえげつないですからね。
型月世界はいろいろな意味で上限がはるかに上、なのは世界は戦力の平均値では高水準としています。あとは、こちらの方は圧倒的に数が多いですね。桁外れの力を持つ少数がいる世界と、平均して能力の高い大勢がいる世界、という感じだと思います。

A’sに入り、ヴォルケンリッター達を相手にすると相当苦戦し、StsではUBWや宝石剣なしだと、隊長陣を相手にするのは非常に分が悪い、という設定を考えています。
あの2つは反則ですから、既存のパワーバランスも覆せるでしょう。その代りに、敵の致死率が跳ね上がります。

宝具の真名開放は、使うモノによりますね。上手く使えば生け捕りができるものと、どうやっても殺してしまうものがありますから。例としては、カラド・ボルグとゲイ・ボルクでしょうか。前者なら上手く外せば殺す心配はないですが、後者は必ず死にますからね。
殺しご法度の世界なので、どうしても使えるものは限定されます。制限されている中での使用だと、勝つのは結構難しいと思います。士郎は問答無用の殺し合いになれば、かなり優勢なんですけどね。


それと投影品はたいてい誰でも使えますが、宝具の真名開放だけは別です。
Zeroやhollowで所有権の話が出ていたので、それを独自解釈し、所有権の持ち主でないとできないことにしています。基本的には士郎にあるのですが、しかるべき手続きをすれば移行できます。ただし、恐ろしく時間と手間がかかり、数日がかりの作業になります。
また、所有権が移行していても「壊れた幻想」は使えます。あくまでも投影品を構成しているのは、士郎の魔力だからです。


ちなみに作中にもありますが、士郎は投影品の効果で飛行可能ということにしています。
そんなものを持っている詳しい事情は、近々出しますので待っていてください。
ただ型月世界では、あまり飛ぶ必要がなかったのでほとんど未経験の領域ですから、当分は空戦をすることはないでしょう。

凛はその必要もなかったので、現在のところ飛行用の術も礼装もありません。
なので、空戦はできない設定でいます。
遠距離攻撃が中心なので当分は大丈夫でしょうが、A’sに入ったら必須技能でしょうから、何とかするつもりです。


士郎と凛がいるせいで、パワーバランスをとるのが大変なのですが、頑張って一方的な展開にならないようにしたいと思います。
これが次回からの課題です。

次は、海鳴温泉の前に一つ話が入ります。
士郎たちの方針に変化が起こる大事な話なので、雑にならないように注意しつつ、早めに更新したいと思います。
具体的には、来週前半が目安ですね。
士気がかなり上がっているので、多分実現できるでしょう。

今回もこのような拙作をお読みいただき、ありがとうございました。
今後もよろしくお願いいたします。




あとがき パート2

さんざん悩んだ挙句、結局飛行方面に関して改訂することにしました。
元々思いつきの部分が多かったので、はじめのうちは自分でもそれでいいと考えていましが、皆さんからのご意見も参考にしてこの結論に達しました。
改めて考えてみると、士郎が自由に空を飛びまわるというのは違和感がありますね。世間様に出すからにはそれなりに筋が通っているべきでしょうし、よくないと思う部分を直すのも作者の勤めだと思います。プロの方では途中で変えるというわけにはいきませんが、素人が趣味で書いているからこそできることですね。

この先は今回のような設定変更をしないように、もっと熟考して書いていきます。
最後に大変ご迷惑をおかけしたことを、お詫び申し上げます。


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