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No.4610の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはReds(×Fate)【第二部完結】[やみなべ](2011/07/31 15:41)
[1] 第0話「夢の終わりと次の夢」[やみなべ](2009/06/18 14:33)
[2] 第1話「こんにちは、新しい私」[やみなべ](2009/06/18 14:34)
[3] 第2話「はじめての友だち」[やみなべ](2009/06/18 14:35)
[4] 第3話「幕間 新たな日常」[やみなべ](2009/11/08 16:58)
[5] 第4話「厄介事は呼んでないのにやってくる」[やみなべ](2009/06/18 14:36)
[6] 第5話「魔法少女との邂逅」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[7] 第6話「Encounter」[やみなべ](2009/06/18 14:37)
[8] 第7話「スパイ大作戦」[やみなべ](2009/06/18 14:38)
[9] 第8話「休日返上」[やみなべ](2009/10/29 01:09)
[10] 第9話「幕間 衛宮士郎の多忙な一日」[やみなべ](2009/11/29 00:23)
[11] 第10話「強制発動」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[12] 第11話「山猫」[やみなべ](2009/01/18 00:07)
[13] 第12話「時空管理局」[やみなべ](2009/01/31 15:22)
[14] 第13話「交渉」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[15] 第14話「紅き魔槍」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[16] 第15話「発覚、そして戦線離脱」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[17] 外伝その1「剣製」[やみなべ](2009/02/24 00:19)
[18] 第16話「無限攻防」[やみなべ](2011/07/31 15:35)
[19] 第17話「ラストファンタズム」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[20] 第18話「Fate」[やみなべ](2009/08/23 17:01)
[21] 外伝その2「魔女の館」[やみなべ](2009/11/29 00:24)
[22] 外伝その3「ユーノ・スクライアの割と暇な一日」[やみなべ](2009/05/05 15:09)
[23] 外伝その4「アリサの頼み」[やみなべ](2010/05/01 23:41)
[24] 外伝その5「月下美刃」[やみなべ](2009/05/05 15:11)
[25] 外伝その6「異端考察」[やみなべ](2009/05/29 00:26)
[26] 第19話「冬」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[27] 第20話「主婦(夫)の戯れ」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[28] 第21話「強襲」 [やみなべ](2009/07/26 17:52)
[29] 第22話「雲の騎士」[やみなべ](2009/11/17 17:01)
[30] 第23話「魔術師vs騎士」[やみなべ](2009/12/18 23:22)
[31] 第24話「冬の聖母」[やみなべ](2009/12/18 23:23)
[32] 第25話「それぞれの思惑」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[33] 第26話「お引越し」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[34] 第27話「修行開始」[やみなべ](2011/07/31 15:36)
[35] リクエスト企画パート1「ドキッ!? 男だらけの慰安旅行。ポロリもある…の?」[やみなべ](2011/07/31 15:37)
[36] リクエスト企画パート2「クロノズヘブン総集編+Let’s影響ゲェム」[やみなべ](2010/01/04 18:09)
[37] 第28話「幕間 とある使い魔の日常風景」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[38] 第29話「三局の戦い」[やみなべ](2009/12/18 23:24)
[39] 第30話「緋と銀」[やみなべ](2010/06/19 01:32)
[40] 第31話「それは、少し前のお話」 [やみなべ](2009/12/31 15:14)
[41] 第32話「幕間 衛宮料理教室」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[42] 第33話「露呈する因縁」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[43] 第34話「魔女暗躍」 [やみなべ](2010/01/15 14:15)
[44] 第35話「聖夜開演」[やみなべ](2010/01/19 17:45)
[45] 第36話「交錯」[やみなべ](2010/01/26 01:00)
[46] 第37話「似て非なる者」[やみなべ](2010/01/26 01:01)
[47] 第38話「夜天の誓い」[やみなべ](2010/01/30 00:12)
[48] 第39話「Hollow」[やみなべ](2010/02/01 17:32)
[49] 第40話「姉妹」[やみなべ](2010/02/20 11:32)
[50] 第41話「闇を祓う」[やみなべ](2010/03/18 09:55)
[51] 第42話「天の杯」[やみなべ](2010/02/20 11:34)
[52] 第43話「導きの月光」[やみなべ](2010/03/12 18:08)
[53] 第44話「亀裂」[やみなべ](2010/04/26 21:30)
[54] 第45話「密約」[やみなべ](2010/05/15 18:17)
[55] 第46話「マテリアル」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[56] 第47話「闇の欠片と悪の欠片」[やみなべ](2010/07/18 14:19)
[57] 第48話「友達」[やみなべ](2010/09/29 19:35)
[58] 第49話「選択の刻」[やみなべ](2010/09/29 19:36)
[59] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 前篇」[やみなべ](2010/10/23 00:27)
[60] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 後編」 [やみなべ](2010/11/06 17:52)
[61] 第50話「Zero」[やみなべ](2011/04/15 00:37)
[62] 第51話「エミヤ 前編」 [やみなべ](2011/04/15 00:38)
[63] 第52話「エミヤ 後編」[やみなべ](2011/04/15 00:39)
[64] 外伝その7「烈火の憂鬱」[やみなべ](2011/04/25 02:23)
[65] 外伝その8「剣製Ⅱ」[やみなべ](2011/07/31 15:38)
[66] 第53話「家族の形」[やみなべ](2012/01/02 01:39)
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[4610] 第2話「はじめての友だち」
Name: やみなべ◆d3754cce ID:fd260d48 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/18 14:35

SIDE-士郎

なんだかんだと忙しい日々が過ぎていき、この世界にきて一ヶ月がたった。

さすがに街の様子にもなれ、目新しいものも減ってきた今日この頃。
少々日数はかかったが、その手の非合法業者を発見することができた。
凛の暗示で誤認させ、何とか戸籍の手配は済ませることができたので一安心だ。

凛は渋っていたが、ちゃんと金は払っている。
新天地でいきなり犯罪を働くなど、何としても避けなければならない(住居不法占拠のことは置いておく)。
出来上がるのにはそれなりに時間がかかったが、それも先日出来上がった。
これでやっと、法的に一切の問題なく住居を確保できる(偽造のことを考えてはいけない)。

現状一番の問題は資金面。
こちらに来る際に持ち込んだ、いくらかの貴金属を換金したことで、それなりにまとまった資金は確保できた。
だが、それにしたってそれほど高額ではない。
遠くないうちに資金は底をつくだろう。なんとかして収入源を確保したいが、子どもの姿では難しい。
いくら戸籍を確保できても、家を買う資金がないので、当面は相変わらずの無断占拠になる。
職に就けない以上、株かギャンブルにでも手を出そうか、という話も持ち上がっている。

ライフラインに関しては、水はその辺の公園で汲んできているし、電気やガスは結界を張った上で魔術を使って代用している。
例えば、食材の保存や加熱なんかに、魔術を利用している。
生活用品のうち、服のようにその場で消えると困るモノはさすがに購入しているが、食器や一部の家具は投影で賄っている。

ただ、日用品ぐらいなら投影で何とかなるが、中・大型家電製品の投影なんていくらなんでも無理だ。
精々が電動巻き上げ式のリールくらいかな。
小さいし、機械的な部品はモーターと液晶に内部の僅かな電子機器だけだから、魔力の消費は激しいしがなんとかなる。
これ以上は試したことがないのでわからない。
だが、できたとしても相当に負担が大きいことは想像に難くないので、とてもではないがチャレンジする気にはなれない。

しかし、いつまでもこのままというのも問題だ。
電気ガス水道が止められているというのは、文明人としていかがなものかと思う。
早く文明の恩恵が受けられる生活を送れるようになりたい。


で、現在俺は世にも珍しい、小学生のやり直しをやることになった。
こんなのは、某天才少年率いるバカレンジャーですら回避した珍事だというのに。人生とは深淵だ。

そういえば転入するというのは、切嗣に引き取られて新しく学校に通うようになって以来の経験だな。
もうかれこれ二十年近くが経つ。
あの当時のことはもうよく憶えていないので、それが本当に転入だったのかさえ分からない。

衛宮の性を名乗り、それまでとは違う自分として通うようになったのだから、そう間違ってもいないと思う。
いろいろと思索に耽っていると、もう教室の前に着いていた。

さぁ、いい加減覚悟を決めろ、衛宮士郎。
もう何を言っても後戻りはできない、あとはただ進むだけだ。
そう決意を固めて目の前の扉を開き、黒板の前で挨拶する。

「はじめまして。今日からこのクラスの一員になります、衛宮士郎です。よろしくお願いします!」



第2話「はじめての友だち」



SIDE-凛

「はじめまして。今日から皆さんと一緒に過ごさせていただく、遠坂凛と申します。
こちらに越してきて日も浅いので、いろいろ教えてくださると嬉しいです。
みなさん、仲良くしてくださいね」
と、当然のように猫を被って、満面の優等生スマイルで挨拶をする。

ちなみに髪型は、最近ではご無沙汰で学生時代はお馴染みのツインテールにしている。
それを見た士郎は、やけに懐かしそうにしていたものだ。

学校の名前は「私立聖祥大付属小学校」という、それなりにお金のかかるところ。
この私立学校を選んだのは、第一に近いからというのもある。
だが、すでに小学生を15年以上前に卒業した身としては、新鮮なものが欲しいと思い、独自性が高そうな私立校のほうが期待できそうだったからだ。

本当ならば、収入のない身では節約すべきところなのだが、せっかくの機会を棒に振るのも癪なので多少無理をした。
要は資金が尽きる前に、収入源を確保できればいいのだ。
幸い持ち込んだ貴金属はそれなりの量だったので、子ども二人が暮らす分には、半年程度生活できるくらいの蓄えはある。

多少リスクはあるが、いざとなったら士郎の投影品でも売ればいい。
派手に稼ぐのは楽しそうだが、魔術師がいないという確信がない以上、それなりに危険を伴う。
元手のかからない商売だけに、地道にコツコツやるだけでも十分な稼ぎになる。

まぁ、できれば使いたくない、最後の手段なのは確かだ。
たとえ魔術師がいなくても、半ば詐欺に近い商売だ。大金の代わりに指名手配などされてはたまらない。

また、この学校に街の名士でもある「月村」のお嬢様が通っているということで、それを見定めるためだ。
年齢の設定も、その月村の人間に合わせている。
やはり、同い年の方が接触しやすいはずだ。

今の私たちの外見は、十歳前後というくらいしか分からないので、適当に設定した。
魔術師の可能性は薄いが、混血や異能者の可能性もあるのでそれと接触できる所にいるのは都合がいい。

正直、いちいち試験を受けなければならなかったのは面倒だったし、書類のうえでもいろいろと不審な私たちなので、多少苦労した。
試験で落ちることなどあり得ないが、書類の方で落とされるかもしれなかったので、場合によっては強硬手段に出ることもあったが、無事入学できたので一安心だ。

新年度が始まったばかりのこの時期に、転校生というのは珍しいのか最初はざわついていたが直ぐにシンとなる。
ところどころからひそひそと話し声が聞こえるが、気にしない。気になるのは隣のクラスの様子。
やはり同じ時期の転校生となると、両親がおらず同居しているとは言っても同じクラスになることはないらしい。
結局、穂群原時代は士郎と同じクラスになることはなかったので、少し期待していたのだが。

だからといってそんなことはおくびにも出さない。
なにせ、「余裕を持って優雅たれ」が遠坂の家訓だ。たとえ世界が変わってもそれを怠る気はない。

担任の女性教師に促されて、自分の席に向かう。
よく見るとこの先生、私より年下なのではないだろうか?
自分より年下の人間から教わることになるとは、改めて自分の境遇に呆れかえる。

まぁそれでも、それならそれで、そんな状況を楽しまないのは損だ。
滅多にないどころか、まずあり得ない経験なのだから大事にすることにしよう。
遠坂凛は、自他ともに認める「快楽主義者」なのだから。

そんなことを考えていると、他とは違う視線を感じる。
そちらを見てみるとそこには、長いきれいな金髪をした、気の強そうな女の子がこちらを不審そうな眼で見ている。

なんだろうか、この記憶の片隅に引っかかる感触は。
私は以前にもあんな視線を受けたことがある気がする。
別段、敵意というわけでもないので気にしないことにするが、どうやら私の席はあの子のすぐ近くらしい。


授業は当然ながら、今更聞くまでもないことばかり。
ただ歴史や社会に関することは、聞き逃すわけにはいかない。
小学生の授業とはいえ、私が知る情報との誤差があるかもしれないので、油断はできない。

まぁ、それ以外でも手を抜く気はない。
かつては「ミス・パーフェクト」と呼ばれた身で、そのような失態は許されない。

授業が終われば、当然ながら怒涛の質問タイムが待っていた。
その程度でうろたえる私ではないが、隣のクラスの士郎は大丈夫だろうか。
アイツは基本不愛想なくせに律儀でもあるので、この勢いに押されてしまっているのではないかと思う。
心配はしていない、むしろ残念なくらいだ。
アイツが困り果てている姿は、ぜひとも見たかった。

そんなことを考えながら私は、周りの子たちが繰り出す質問に的確に、時にはぐらかして答えていった。


昼休みになっても状況に変化はない。
私も、相変わらず怒涛の質問攻めに苦もなく返答している。
できれば士郎とお昼を共にしたいが、そんな暇は貰えそうにないので、仕方なく諦める。

というか、そもそもお昼を食べる暇さえもらえなさそうな勢いだ。
小学生のバイタリティを侮っていたかもしれない。

すると、先ほどの少女が友人らしき、二人の女の子を連れてやってきた。
小学生のくせに妙に堂々した態度をしているせいで、周囲の囲いに穴があく。その様は、まるでモーゼのようだ。
少し呆気に取られているところで、連れの二人が自己紹介をしてきた。

うち一人は「月村すずか」といい、あの大邸宅の人間らしい。
管理者、あるいはその関係者かもしれない者との突然の遭遇には驚いたが、幸運だとも思う。
同じクラスなら接触の機会も増えるし、そちら側の人間かどうかも探りやすい。
でも、あまりそういった気配は感じない。
長い黒髪にカチューシャをつけた、おとなしそうなかわいい子だ。

だが、ほんとうに驚いたのはもう一人の方。
名前は「高町なのは」というらしいが、なんて出鱈目な魔力。
様子からして、自覚さえもしていないようだが、その貯蔵量は私さえも超えている。
さすがにあのカレー司祭程ではないようだが、それでも破格だ。
これで魔術師でないなど悪い冗談にしか思えない。

しかし本人は人好きのする笑顔をしていて、血の匂いもしない真人間だとわかり警戒を解く。
こんなのが放置されているところをみると、この地には管理者さえおらず、またそういった組織もないのではないかと思えてくる。

そう思考の海に沈んでいると、さきほどの金髪の少女、たしか「アリサ・バニングス」といったか。
以前街を散策していたときに、そのファミリーネームを見た覚えがある。
こちらも大層な邸宅を構えていたはずだ。私の嗅覚が告げる。この子は、私の人生で三人目の「金ピカ」だ。

しばらく黙りこんでいたが、その子が満面の笑みと共に懐かしくも物騒なセリフをかけてきた。
「あんたとはきっと、殺す殺さないの関係になりそうね」
などと、とんでもないことを言うだけ言って去っていった。
周りの人間は唖然とし、友人であろう二人も慌てて追いかけていく。

そこで私は確信する。
先ほどの視線、あの子は綾子の同類だ。そして私の被っている猫に気づいている。
どうも私の行く学校には、常に女傑がいるものらしい。

だが、それくらいでないと張り合いがないと感じる私がいる。
彼女は小学生だからといって、侮っていい相手ではない。
これからの学校生活が楽しみだ。



Interlude

SIDE-なのは

変な時期であるけれど、今日わたしたちのクラスに新しいお友達がやってきた。
名前は「遠坂凛」ちゃん。
すずかちゃんみたいなきれいな黒髪をツインテールにした、翠の瞳の、アリサちゃんみたいに意志の強そうな女の子。

その立ち振る舞いには、まるで隙がなくて完璧そのもの。
きっとクラスのみんなが思ったはず「凄い人が来た!」って。
でもそういえば、アリサちゃんだけなんだか変な眼で凛ちゃんのことを見ていたけど、一体どうしたんだろう?

最初の印象どおり、凛ちゃんはすごい人で、休み時間にみんなが集まってすごい速さで質問してきても、慌てることなく落ち着いて答えを返していた。
わたしたちと同い年には思えないくらいに落ち着いた、大人の女性を感じさせる人。

お昼休み、私はすずかちゃんと一緒にアリサちゃんに連れられて、凛ちゃんの方へと向かって行った。
アリサちゃんが近付くと、みんな突然道をあけて、まるで王様のようだった。

わたしとすずかちゃんは、凛ちゃんに自己紹介をする。
だけど、アリサちゃんが一向に話そうとしないので、わたし達の方からアリサちゃんのことを紹介した。

そうすると、アリサちゃんはなんだか怖い笑顔で、いきなり……
「あんたとはきっと、殺す殺さないの関係になりそうね」
なんてことを言う。

わたしを含め、みんなが驚いた。
だけど、アリサちゃんはそのまま教室を出て行こうとするので、すずかちゃんと一緒に追いかけてわたしたちも教室を出る。

アリサちゃんは気が強くて、ちょっと強い言葉遣いをすることもあるけれど、本当はとても優しくて責任感の強い女の子だ。
そんなアリサちゃんがどうして初めて会った子に、突然あんなことを言ったのかわたしにはわからない。
「凛ちゃん、アリサちゃんのこと誤解していないといいけど」
そう、すずかちゃんが心配そうに言ってくる。

「そうだね。なんであんなこと言ったのか、ちゃんとお話聞かせてもうんだから!」
わたしも同じ気持ち。
凛ちゃんにはこのクラス、ううん、この学校をいっぱい好きになってたくさん友達を作ってほしいのに。
アリサちゃんともお友達になれたら素敵なのに、どうしてあんなことを言ったの? アリサちゃん。


そうして追いかけているうちに、アリサちゃんに追いついたのは屋上。

そこでわたしたちは、アリサちゃんからお話を聞くことにした。
「アリサちゃん。さっきは何で凛ちゃんにあんなこと言ったの?
 凛ちゃんまだ転校してきたばっかりでお友達だっていないし、あれじゃ可哀そうだよ」
すずかちゃんが諭すように尋ねている横で、わたしはちゃんと答えてくれるまで動かないという思いを込めて、アリサちゃんを見つめている。

するとアリサちゃんは……
「あの子は、みんなが思っているような子じゃないわよ」
と、またしてもとんでもないことを口にした。

信じられなかった。
アリサちゃん決して人の陰口を言うような子じゃないはずなのに、なんでこんなアリサちゃんらしくないことを言うのだろう。
「なんでそんなこと言うの!? 今日のアリサちゃんおかしいよ!」
「別におかしくないわ。ただわたしはあの子を見てそう感じただけ」
わたしが問いただすと、まるで聞く耳はもたないというようにアリサちゃんは言う。

でも何か変だ。
もし凛ちゃんのことが嫌いならもっと嫌そうな顔をするのに、今のアリサちゃんはどこか楽しそうに見える。
それは相手を傷つけることを楽しんでいるような暗いものじゃなくて、もっと純粋に今の状況を歓迎しているような。

「いい、あの子はあなたたちの思っているような子じゃない。
 あの子はね、猫被ってるのよ。あの子の本性がどんなのかまでは分からないけど、油断ならない相手よ。
気付かなかった? あの子、わたしが話しかけたら一瞬驚いた顔をした後に、すごい顔で笑ってたわよ。
まるで何時でもかかって来いって言うような」
と言って、アリサちゃんは私たちも見たことのないような、やる気満々な表情をしてすごく楽しそうにしている。

やっとわかった。
アリサちゃんは凛ちゃんのことを嫌いなわけじゃなくて、対等のライバルとして見ているんだ。
それはきっと、勉強でもスポーツでもない別の何かの……。

Interlude out



SIDE-凛

唖然としているクラスメイト達を置き去りにして、私は今屋上に向かっている。

特に理由ない、だが確信はある。
あの子は間違いなくそこにいる。

私の猫を一目で見破った幼い女傑は、きっとあの友人たちと一緒にいるはずだ。
この際二人にもバレてしまうがそれは問題外、あの子とは一度はっきり話しておいた方がいい。
おそらくはあの子は、綾子・ルヴィアに次ぐこの私、遠坂凛の新たな強敵だから。


屋上の扉を開けるとそこには、案の定あの三人がいた。
たぶん友人の発言を問いただしに来たのだろう。
だけど、空気がよどんではいないところからすると、すでに二人には話しているかもしれない。
それなら話は早い。てっとり早くいくとしよう。

「よろしいですか?」
まずは猫を被っておく。
それに対する彼女、アリサとその友人たちの反応を見てみるとしよう。

「ええ、いいわよ。もうこっちの話は終わったから」
何の気負いもなく返すアリサ。
本当にこの子は小学生かと疑いたくなる。
残りの二人は、私の存在に驚いているが、どこか観察するような眼つきだ。
やはり猫のことは聞いているようね。

とりあえず今はまだすを出すところではないので、相変らず表面上は穏やかなやり取りを続ける。
「先ほどの言葉の意味をお聞きしたくて」
あくまでも表面上は穏やかなやり取り。
だがその実、お互いに腹の探り合いをしている。

さすがに年季が違うので、こちらの優位は揺らがないし、小学生に腹を読まれるようなヘマはしない。
それでもこれから先が楽しみだ。
「意味もなにもそのままよ。ところで、いい加減本性を出したら?
二人とも、もうあなたの猫のことは知ってるわよ」
「そうね、じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。まさか一目で見抜かれるとは思わなかったなぁ。
 どうしてわかったのか、教えてもらえない?」
そう言って猫を脱ぐ。
すると当然ながらすずかとなのはの二人は驚いているが、意外にもアリサも驚いている。

「そう、それが地なんだ。
理由なんてないわ、ただそんな感じがしただけ。
でもまさか、こんなに簡単に本性見せるとは思わなかったわ。どういうつもり?」
これにはこちらも驚いた。まさか純然たる勘とは。
方向性こそ違うけれど、セイバー並の直感ね。

「ただの勘で気づいたの? それじゃあ隠しようがないわ。今回のことは運の問題ということね。
 良いか悪いかはわからないけど。
それと、見抜かれちゃった以上、いつまでも取り繕ってても見苦しいでしょ。
 それが理由よ。少なくとも、あなたたちの前では猫を脱ぐことになるでしょうね」
そういって猫ではない、本当の笑みをアリサに向ける。ただし、挑戦的という言葉がつくが。

「ふ~ん。みんなの前では相変わらずなんだ。まぁ別にいいけど。
 ところで、これからは凛って呼びたいんだけど、いい?
わたしとしてはこっちの方が呼びやすいんだけど」
そう尋ねてくるアリサ。

当然だ、もう私たちは宿敵なのだから。
そんな他人行儀なのはよろしくない。
「ええ、もちろん。
 ああ、月村さんと高町さんもそれでいいわよ。
私もあなたたちのことは、呼び捨てにさせてもらうから」
二人に対しては、同じ本当の笑みでも余計なものはくっつけない。
こちらは、純粋な意味での友人なのだから。

それに対し、二人は少し呆気に取られていたようだがすぐに復帰する。
「あ、はい。それじゃあ、凛ちゃんって呼いんでもいいかな」
「うん! わたしも、凛ちゃんって呼ぶよ。これからよろしくね。凛ちゃん!」
すずかとなのはがそれぞれ応える。
すずかにはどこか桜に似たしとやかな印象があり、心が暖かくなる。
対して、なのはは元気一杯に、全身で嬉しさを表現している。
ここまで喜んでもらうと、苦笑を禁じ得ない。

「ええ、こちらこそよろしく。それじゃあ、教室に戻りましょうか。もう次の予鈴が鳴るわよ」
そう言って、私たちは屋上を後にする。



SIDE-士郎

想像していたより、ずっとハードな一日がやっと終わった。
ただ一言、転校ってこんなに大変だったんだな。今日はそれに尽きる。

教室ではずっと質問攻めで、いちいち返答に四苦八苦していた。
この辺り、凛なら大層うまく対処するのだろう。

そんな質面攻めをしてくるクラスメイトに、見知った人がいた。
いや、俺の知るその人と同一人物というわけではないだろうが、あまりに似すぎている。
その名は、後藤劾以。
名前まで同じで、前日に見たテレビの影響を受けて、妙な古風口調をする点もそっくりで懐かしかった。

世界、いや並行世界の広さと可能性を垣間見た気がした。
あんな妙な個性を持った人に、また出会うとは。
この分じゃ虎や黒豹もいそうで、会いたいのか複雑な気持ちだ。
などと思いながら、校門で凛が出てくるのを待つ。

別々のクラスになり、質問攻めにあってしまい学校に来てからは一度も会えていない。
あいつのことだから心配はいらないだろう。
だが、同時に妙なところでうっかりが発動するので、そっちが心配だ。


そうして待つこと10分。

見覚えのあるツインテールが見えた。
見えたのだが、これは一体何ごとだ?

凛は、基本的に優等生の仮面を被っているが、ある一定ラインから先には巧妙に踏み込ませない。
いままで一般人でその領域に入ってこられたのは、美綴と藤ねぇの弓道部女傑コンビと、藤ねぇと同じ野生動物の薪寺ぐらいだ。
あとは例外で一成か。
一成の場合仮面を見破ってはいたが、あれは対立関係だったのでちょっと微妙。

その凛があろうことか、三人の女の子と親しそうに話しながらやってくる。
正直信じられん。
今は仮面を被っているようだが、その実あの三人に対しては仮面の被りが浅いのがわかる。
十年もの付き合いで、あいつが仮面の着け外しをするところを見続けてきたからか、その被り具合が手に取るようにわかる。

あれは、もし彼女たちだけになったら仮面を脱ぐぞ!
まさか凛の仮面を、一日で脱がせるようなのが三人もいるとは、ここは魔窟か!!
と、俺が慄いているうちに世にも奇妙な四人組がやってきた。

「士郎、あんた一体何をふるえているのよ?」
とは、ことの元凶たる遠坂凛。
というか、この時点ですでに仮面を外している!
何が彼女をここまで開放的にしているのか。

「ちょっと凛! この人誰?」
ちょっと強い口調で話すのは、きれいな長い金髪をした気の強そうな少女。
あれ? この子、凛や美綴となんか似た匂いがする。

「あれ~? 見たことのない人だねぇ。
同じ学年みたいだけど、凛ちゃんわたしたち以外にお友達いたんだ!」
こちらは、栗色のこの中では珍しい短めな髪をした、すごく明るい女の子。
って、おいおいなんだこの馬鹿魔力! 感知能力の低い俺でさえ気づくぞ。
一体どういう貯蔵をしてるんだ?

俺とじゃ、比べるのも馬鹿馬鹿しいほどの差がある。
雲泥の差、あるいは月とスッポンといったところか。
しかもそれが垂れ流しって……一体どうなってるんだ。

「???」
そして最後の一人。
長い黒髪のおとなしそうな子だ。
ところがほかの二人と違って、黙り込んでしまっているし、不審そうな眼を向けてくる。
俺この子に何かしたっけ? 初対面のはずなんだが。

そんなカオスな空間となりつつある俺の周囲。
どこに行っても形は違おうと、妙な境遇陥るのは俺の天命らしい。

すこしナーバスになっている俺を余所に、凛が紹介してくれている。
「こいつは、衛宮士郎。私の同居人よ。
そういえばまだ話していなかったけど、私たち両親がいないのよ。
こいつとはもうずいぶん昔からの付き合いで、まぁ、今じゃ家族みたいなものね。
なのはが見覚えがないのは当然ね。こっちには一緒に越してきて、今日一緒に転入してきたのよ。
クラスは別になっちゃったから、話すのが遅れたわね」
真実を大雑把に解説し、近況のみに限定して話す。
プライベートな部分を聞きにくくすることで、一切虚言を用いることなく真実をぼかしてしまう手際はさすがだ。
彼女たちも両親がいないと聞き、申し訳なさそうにしている。

いないのは事実だし、本当のところを話すわけにはいかない以上仕方がない。
だけど、本気で悲しそうにされると良心の呵責が……。
「ああ、それはぁその、ごめん」
「あの……その………」
「…………」
特に、おとなしそうな子など今度は俯いてしまった。
上手くいってよかったのだが、なんか複雑だ。


その後、途中までは一緒なので帰路を同じくすることに。
その途中お互いに自己紹介をしあい、さっきのことは気にしないように言っておく。
少しだけ表情が軟らかくなってよかった。すずかは相変わらず、黙ったままだが。

何でも、三人ともこれから塾があるそうだ。
特にアリサとすずかは、それ以外にも習い事があるらしく、なかなかハードなスケジュールをしているらしい。
なのはも家は街で有名な喫茶店だとかで、時折手伝っているとのこと。
最近の小学生は忙しいのだなぁ、と他人事のように考える。

そうやって話しながら歩いているうちに、分かれ道だ。
ここで俺と凛は三人とは別の道になるので別れることに。
帰りは気をつけるように言うのは忘れない。
女の子が夜道を歩くのは危険なのだから。


家に帰ってから凛に詳しい話を聞き驚嘆する。

まさか一目でそれも勘で、凛の仮面を見破る猛者がいようとは。
だが納得もいった。それならあの様子もうなずける。

美綴に対してそうだったように、見破られた以上見苦しいまねをする凛ではない。
潔く当人の前では仮面を脱ぎ、相応の態度をとるのが礼節だと考えている節もある。
なので驚きはしたが、うん、それはとても凛らしい。

ところでなのはだが、彼女は魔力の貯蔵こそ尋常ではないが、本人はただの一般人のようだ。
まぁあの性格では魔術師にはむかないだろう。
凛の見解ではシエルさんのように、唐突に発生した天才なのだろうとのこと。
あれほどの魔力があって、今までそちら側からの干渉が一切なかったことを考えると、もしかしたら本当に魔術師はいないのかもしれない。
いたとしても、俺たちのところほどえげつないのは少ない可能性が高くなった。
まずあり得ないが、魔術師がいながら、本当に誰も気づかないなんて奇跡があれば話は別だが。

それとすずかの方だが、自己紹介を聞いて彼女が「月村」の人間だと知り、それはそれで驚いた。
そりゃあ、月村のお嬢様が通っているとは知っていたし、それもあそこを選んだ理由なのだが、何という偶然なのかと呆気にとられる。

また、俺の方を不審そうに見ていたのは、見慣れない男というだけではないのだろう。
俺はこちらに来た初日に、月村邸の視察をした。
中に入ったわけではないが、非常にハイテクな防犯設備をしていたので、ついカメラを探してしまった。
あれほど巧妙に隠したカメラを、こんな子どもが見つければ、それは警戒するだろう。

おそらくすずかには、俺の容姿に関する情報がいっていて、気をつけるように言われていたのではないだろうか。
あれだけの豪邸に住んでいるんだ。
管理者云々がなくても、身代金目的の犯罪などの被害があっても不思議はない。
今回は俺がうかつだった。

その時のことを話したいが、なんて言い訳すればいいんだ?
俺の行動が不審だったのは事実。
それをうまくごまかす方法が思い浮かばない以上、日々の行動で信用してもらうしかない。



Interlude

SIDE-すずか

今日、凛ちゃんと友達になった。

初めに思っていた印象とは違ったけれど、それでも凛ちゃんは素敵な女の子だ。
その本当のところを見破ったアリサちゃんもすごいと思う。

でも、同時に困ったことになった。
お姉ちゃんが気をつけるように言った男の子。
それが凛ちゃんの、たった一人の家族である士郎君だった。
会って話してみる限り悪い子じゃなさそうだけど、どうなんだろう?
もしかしたら凛ちゃんも仲間かもしれない。わたしたちを騙しているのかもしれない。

そんなことを考えてしまう自分が、すごく汚く感じる。私こそみんなを騙している嘘つきなのに。
そもそもわたしは人間じゃない。ただの「化け物」でしかないのに。
そんな私が人を疑ってしまうのは、どうしようもなく汚らわしい。
わたしには人のことを言える権利なんてないのに。

それでも、わたしはいまからお姉ちゃんに士郎君のこと、凛ちゃんのことを話す。
もし本当に二人がそうで、私の周りの人たちを傷つけるんだったら許せない。

ううん。違う、わたしは怖いんだ。
二人がそうなら、わたしの秘密をバラすこともできる。
そうなったら、今あるすべてを失ってしまうかもしれない。
受け入れてくれる友達、暖かい世界、そのすべてを。

もしかしたら、知っても受け入れてくれるかもしれない。
でも、そうじゃなかったら?
そんなことを考えること自体、なのはちゃんやアリサちゃんを侮辱しているのはわかってる。
それでも怖い、失いたくない!
二人はわたしの初めての友だちなんだから。だから、わたしは………。

Interlude out




あとがき

初めに、第一話を一部改正したので、冒頭のところで一部改正前と重複するところがあります。
ですので、もう一度第一話を読んでから、こちらをお読みになった方がよろしいかと思います。
お手数おかけしまして、申し訳ございません。

今回、なのはの魔力量についてシエルさんと比較しました。
シエルさんは特別な家系でもないのに、異常に高い資質のせいでロアの転生先に選ばれましたからね。
突然変異的な天才という意味では、なのはやはやてとは似通っている気がします。
あの人の魔力量は、並みの魔術師百人分に相当するとのことらしいので、さすがにそこまでぶっ飛んではいないだろうと思い、(現時点では)なのはの方が低いことにしました。

この先シエルさんを超える予定は、一応ありません。
まだ魔法技能の開発もされていない段階ですが、凛以上シエル未満というかなり幅のある設定です。
ちなみに士郎の魔力量のみのランクは、管理局基準でDにプラスがつくかどうかの辺りを考えています。
Cってなんか平均のような感じですし、基本スペックでは平均以下が士郎だと思うので。

何回か後の方でも出す予定ですが、リンカーコアと魔術回路は別物で、それぞれ特徴があることにしています。
端的に言うと、魔術回路は隠密性と瞬間放出量に長けており、大気中の魔力(マナ)をくみ上げることができるのが特徴です。
リンカーコアは、最大貯蔵量とチャージした場合の威力では圧倒的ということにしており、魔術回路と比べてリスクが低いのが特徴ということにしています。

士郎を主要メンバーとは別のクラスにしました。
今後の流れで、あまりなのはと接点が多すぎるのもどうかと思っての処置です。
登下校時と、昼食を一緒にするくらいしか接点がないと考えてください。

感想掲示板でご指摘のあった外国へ逃避した方がいい、というご意見にもこの場で返信しようと思います。
戸籍の偽造をやっておいてなんですが、密出入国はリスクが高いと思いますし、下手に動き回るのも得策ではないと考えています。
せっかく手掛かりがありそうな所でもありますし、管理者がいないならそのまま自分たちのものにしてしまおうという考えでいます。
霊脈の流れに関しては、いくらか先の回で出すつもりでいます。

早めに次回の更新もしたいですが、おそらくは不定期の上に間が開くことも多々あると思います。
とりあえず無印の完結までは行くつもりなので、根気強く待っていてくだされば幸いです。


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