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No.4610の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはReds(×Fate)【第二部完結】[やみなべ](2011/07/31 15:41)
[1] 第0話「夢の終わりと次の夢」[やみなべ](2009/06/18 14:33)
[2] 第1話「こんにちは、新しい私」[やみなべ](2009/06/18 14:34)
[3] 第2話「はじめての友だち」[やみなべ](2009/06/18 14:35)
[4] 第3話「幕間 新たな日常」[やみなべ](2009/11/08 16:58)
[5] 第4話「厄介事は呼んでないのにやってくる」[やみなべ](2009/06/18 14:36)
[6] 第5話「魔法少女との邂逅」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[7] 第6話「Encounter」[やみなべ](2009/06/18 14:37)
[8] 第7話「スパイ大作戦」[やみなべ](2009/06/18 14:38)
[9] 第8話「休日返上」[やみなべ](2009/10/29 01:09)
[10] 第9話「幕間 衛宮士郎の多忙な一日」[やみなべ](2009/11/29 00:23)
[11] 第10話「強制発動」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[12] 第11話「山猫」[やみなべ](2009/01/18 00:07)
[13] 第12話「時空管理局」[やみなべ](2009/01/31 15:22)
[14] 第13話「交渉」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[15] 第14話「紅き魔槍」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[16] 第15話「発覚、そして戦線離脱」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[17] 外伝その1「剣製」[やみなべ](2009/02/24 00:19)
[18] 第16話「無限攻防」[やみなべ](2011/07/31 15:35)
[19] 第17話「ラストファンタズム」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[20] 第18話「Fate」[やみなべ](2009/08/23 17:01)
[21] 外伝その2「魔女の館」[やみなべ](2009/11/29 00:24)
[22] 外伝その3「ユーノ・スクライアの割と暇な一日」[やみなべ](2009/05/05 15:09)
[23] 外伝その4「アリサの頼み」[やみなべ](2010/05/01 23:41)
[24] 外伝その5「月下美刃」[やみなべ](2009/05/05 15:11)
[25] 外伝その6「異端考察」[やみなべ](2009/05/29 00:26)
[26] 第19話「冬」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[27] 第20話「主婦(夫)の戯れ」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[28] 第21話「強襲」 [やみなべ](2009/07/26 17:52)
[29] 第22話「雲の騎士」[やみなべ](2009/11/17 17:01)
[30] 第23話「魔術師vs騎士」[やみなべ](2009/12/18 23:22)
[31] 第24話「冬の聖母」[やみなべ](2009/12/18 23:23)
[32] 第25話「それぞれの思惑」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[33] 第26話「お引越し」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[34] 第27話「修行開始」[やみなべ](2011/07/31 15:36)
[35] リクエスト企画パート1「ドキッ!? 男だらけの慰安旅行。ポロリもある…の?」[やみなべ](2011/07/31 15:37)
[36] リクエスト企画パート2「クロノズヘブン総集編+Let’s影響ゲェム」[やみなべ](2010/01/04 18:09)
[37] 第28話「幕間 とある使い魔の日常風景」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[38] 第29話「三局の戦い」[やみなべ](2009/12/18 23:24)
[39] 第30話「緋と銀」[やみなべ](2010/06/19 01:32)
[40] 第31話「それは、少し前のお話」 [やみなべ](2009/12/31 15:14)
[41] 第32話「幕間 衛宮料理教室」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[42] 第33話「露呈する因縁」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[43] 第34話「魔女暗躍」 [やみなべ](2010/01/15 14:15)
[44] 第35話「聖夜開演」[やみなべ](2010/01/19 17:45)
[45] 第36話「交錯」[やみなべ](2010/01/26 01:00)
[46] 第37話「似て非なる者」[やみなべ](2010/01/26 01:01)
[47] 第38話「夜天の誓い」[やみなべ](2010/01/30 00:12)
[48] 第39話「Hollow」[やみなべ](2010/02/01 17:32)
[49] 第40話「姉妹」[やみなべ](2010/02/20 11:32)
[50] 第41話「闇を祓う」[やみなべ](2010/03/18 09:55)
[51] 第42話「天の杯」[やみなべ](2010/02/20 11:34)
[52] 第43話「導きの月光」[やみなべ](2010/03/12 18:08)
[53] 第44話「亀裂」[やみなべ](2010/04/26 21:30)
[54] 第45話「密約」[やみなべ](2010/05/15 18:17)
[55] 第46話「マテリアル」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[56] 第47話「闇の欠片と悪の欠片」[やみなべ](2010/07/18 14:19)
[57] 第48話「友達」[やみなべ](2010/09/29 19:35)
[58] 第49話「選択の刻」[やみなべ](2010/09/29 19:36)
[59] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 前篇」[やみなべ](2010/10/23 00:27)
[60] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 後編」 [やみなべ](2010/11/06 17:52)
[61] 第50話「Zero」[やみなべ](2011/04/15 00:37)
[62] 第51話「エミヤ 前編」 [やみなべ](2011/04/15 00:38)
[63] 第52話「エミヤ 後編」[やみなべ](2011/04/15 00:39)
[64] 外伝その7「烈火の憂鬱」[やみなべ](2011/04/25 02:23)
[65] 外伝その8「剣製Ⅱ」[やみなべ](2011/07/31 15:38)
[66] 第53話「家族の形」[やみなべ](2012/01/02 01:39)
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[4610] 第21話「強襲」
Name: やみなべ◆d3754cce ID:fd260d48 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/26 17:52

SIDE-ヴィータ

海鳴市の上空。
今あたしは、あるモノの捜索のために仲間の一人とそこに立っている。

本来なら人目を気にするところだが、こんなところにいる人間を見つけられる奴などまずいない。
仮にいたとしても、この世界の住人ならば見間違いか何かと思ってくれる。
少なくとも、地上から見上げたくらいではあたしなど点にしか見えないだろう。
だから、特に警戒などをする必要がないのは楽でいい。
その分、目的に対して意識を集中できる。

「どうだ、見つかりそうか?」
背後からかかるのは、渋い男の声。
けれども、実際に背後にそこにいるのは蒼い毛並みをした一頭の狼。
魔法の存在を知らないこの世界の住人たちには到底信じられないことだが、長年同じ戦場を共に歩んできた仲間だ。
そして、今はそれ以上に強いつながりをもつにいたった家族でもある。

そんな家族の問いに、あたしははっきりとした答えを返す事が出来ない。
「いるような、いないような」
元来、あたしはこう言った物言いは苦手だし、性に合わない。
だが、そうとしか言いようがないのもまた事実。
いるのは多分間違いないのだが、たまに存在を感知する程度で、居場所など皆目見当がつかない。

それに焦れったさを感じないわけではないが、磨き上げてきた騎士としての自制心で焦りを抑え込む。
「この間っから時々出てくる、妙に巨大な魔力反応。
それにそこまででかくねぇけど、それなりの奴もいるっぽい。
 アイツらが捕まれば、一気にかなりのページを稼げるはずなんだけどな」
巨大な方は、次元世界的に見ても稀有な魔力の持ち主だ。
正直、この世界にこれだけの魔力を有する奴がいるのは驚きだ。
だけど、同時にありがたくもある。
管理外世界であるここならば、管理局の眼も届きにくい。
襲っても、管理局の奴らが気付くのには時間がかかるはずだ。

あたしたちのやっていることが褒められたことでないのは承知している。
管理局に見つかれば、必ず罪に問われるだろう。
だが、ここならばそう簡単には発見されない。
そういう意味でも、この世界に拠点があるのはそう悪い話ではない。ちっとばかし、不便だけどな。

あたし達には、騎士としての誇りを穢してでも為さねばならないことがある。
それさえ為す事が出来れば、その後は管理局に捕まろうがどうなろうが構わない。
できればこの世界で穏やかに暮らしたいが、悲願の為なら犠牲にする覚悟はある。
あたし達は騎士。この身は、全て主のためにあるのだから。

そうして探索を続けていると、普段無口な相方のほうから声をかけてくる。
「こうして、お互い同じ場所で探していても埒が明かんな。
こちらは任せろ。お前は逆方向を探せ、闇の書は預ける」
つまり、二手に分かれて足を使って探そうってことか。
せっかく二人でいるのだから、このまま一緒に事に当たる方が確実だ。
だが、あたし達には時間がない。
削れる時間は少しでも多くして、一刻も早く目的を達成しなければならないんだ。

それに、別に一人でやってもしくじる気はない。
ザフィーラの反応からして、その周囲に敵となりそうなものはいないのだろう。
この身は「ベルカの騎士」だ。
一対一なら、あたしらに負けはない。

故に、返す言葉など決まりきっている。
「オッケー、ザフィーラ。アンタもしっかりやってくれよ。
 見つけても、やり過ぎて蒐集できなくなったら、元も子もないんだからさ」
「心得ている」
そう頼もしい返事と共に、蒼い狼が夜空を駆けていく。

それじゃ、あたしも仕事に取り掛かるか。
だけど、あたしはその場から移動せずに別の探し方を実行でやることにする。
ザフィーラはああ言ったけど、正直チマチマやるのは性に合わないんだよ。
普段だと口うるさい奴や心配性な奴、もしくはさっきまでいた無口なくせに時々痛いとこ突いてくる奴がいるせいで、強引なのは大抵止められる。
だけど、今は誰もいないから心置き無くやれるってもんだ。
範囲が広いから魔力の消費が激しいのはわかるけど、そんな柔なあたしじゃねえっての。

手にした相棒を振るうと、それにともなって足元に三角形の赤い魔法陣が浮かび上がる。
「封鎖領域、展開」
右手に持つ鉄槌を横薙ぎに一閃し、広域結界が形成される。

ちぃっとばかし荒っぽいが、いつまでもちんたらしていられない。
こうやって炙り出した方が手っ取り早いし、遅かれ早かれ必要になるしな。
なら、今のうちから展開しても大差ねえ。

結界は急速に拡大し、街全体を覆っていく。
この結界の目的は、無関係なモノからの隔離だ。
魔力をもつ者だけが結界内に取り残されるこの性質上、無関係な人や物を戦闘に巻き込む心配はない。

また、目当ての巨大な魔力反応を見つけ出すのにも有効だ。
こいつの中にいるということは、それだけであたし達の目当ての奴である可能性が高い。
少なくとも、ぶっ倒しておいて損はない。

少しの間探査を続けていると、狙い通り目当ての奴を発見する。
「魔力反応! 大物みっけ!!」
予想通り、かなりの魔力……いや、むしろ予想外とさえ言えるほどだ。
その分厄介だろうが、負ける気なんざ毛頭ない。
速攻で叩き潰してやる。

そうして、体の一部と言っても過言ではない相棒の鉄槌に話しかける。
「いくよ、グラーフアイゼン!!」
《了解》
一切の遅滞なく返ってきた返事を聞き、獲物へ向けてあたしも飛び立つ。

向こうからすりゃあ、いい迷惑だろう。
悪く思わないでくれとか、恨むななんていう気はねえ。
むしろ、思いっきり恨んでくれて構わない。

こっちには、どうしても譲れないもんがある。
だからあたしは、そのために今からアンタを犠牲にする。
命までは取らねえが、たぶんかなり苦しい思いをするはずだ。

いつ償えるかさえわかんねえけど、せめて犠牲にしてきた奴らの怨嗟だけは背負う。
だから、アンタの力を貰うよ。



第21話「強襲」



SIDE-凛

夕食後ののんびりとした時間。
この後には宝石を加工しなければならないが、それまでのちょっとした休憩。
特に何をするでもなく、同居人の存在を感じつつ紅茶を飲むこの時間は私のお気に入りだ。

だが、そんな平穏の象徴の様な時間がぶち壊される。
《警告、緊急事態です》
もたらされたのは、最近になって得た相棒からの切羽詰まった報告。
それに僅かに遅れて、魔術師としては考えられないほど秘匿を無視した結界が展開されたことを感知する。
まったく、一体どこのバカの真似かしら。
人の穏やかな時間を奪って、ただで済むと思ってんじゃないでしょうね。

一気に憂鬱な気分になった私は、その気持ちを隠すこともなく十年来の付き合いになる方の相棒に話しかける。
「はぁ…………なんか、お客さんみたいね」
「そのようだな」
こいつも、特に驚いたような様子を見せない。
世界の異常に敏感なこいつのことだ。
もしかすると、カーディナルが感知する前からわかっていたのかもしれない。

「さて、念のために聞くが、思い当たる節はあるかね?」
ついさっきまで穏やかな日常の中にいたのだが、すでに頭は臨戦態勢に移行している。
この様子だと、士郎にも特にこれと言ってないようだ。

当然、私にもそんなものはない。
「さあ? 昔ならいざ知らず、今は特にないわ」
突然の事態にもかかわらず、世間話でもするような感覚なのは純粋に慣れの問題。
寝込みを襲われたり、覚えのないことで罪を擦り付けられそうになったり、一応味方だった奴らに裏切られたりしたのに比べれば、はるかにマシな状況と言える。

前の世界でドンパチやっていた頃は、はじめのうちはともかく、最後の方は敵の情報がないのが当たり前だった。
私達の噂を聞きつけたどっかの馬鹿が、周りの迷惑すら顧みずに仕掛けてくるなんてのは日常茶飯事。
さすがに神秘の秘匿くらいは守ってたけど、それ以外なら「何でもアリ」だ。
てか、襲ってくるのが神秘側の人間とは限らなかったけど。
普通に近代兵器で武装した連中にも襲われたからなぁ。

酷い時には、潜伏先の住民を人質にとって「こいつらが死んだらお前らのせいだ」なんて言ってくる奴らもいた。
責任転嫁も甚だしいが、士郎が彼らを見捨てられるはずもなく、おかげでいろいろ苦労した。
主に、士郎が無茶して死にかけたからだけど。
それだけやって出てくるのが、感謝の言葉じゃなくて恨み事だったり罵声だったりするんだからねぇ……。

うん、我ながらよく穏便に済ませたと思うわ。
具体的には石を投げた連中をボコったり、殴ってきた相手の腕をへし折ったりね。
別に巻き込まれた人たちのためじゃなかったから、感謝しろと言う気はなかった。
だけど、それでもちょっとは礼儀ってものを考えてほしかったわ。

はぁ、過去のことはどうでもいいわね。
敵が来る、それがわかっているだけでも十分だろう。
むしろ、「周りに迷惑をかけない」だけずっと良識がある。
ま、私達からすればやっぱり迷惑極まりないのだけど。

どうするにせよ、とりあえず情報かしらね。
「カーディナル、他に何かわかることってある?」
理由は不明だが、誰かが私達にちょっかいを掛けようとしているのはまず間違いない。
手始めに、首から下げている新たな相棒にさらなる情報を求める。

《はい、結界とは別の魔力反応が高速で接近中です》
ふむ、結界を張った張本人とは別か。
これで、少なくとも二人以上の複数による行動ってことがわかった。

でも、そうなると結界を張った方はどうしたのかしら。
この様子だと、どうやら近づいてきている奴と一緒ってわけではなさそうだけど。
「では、結界を張った張本人はどうしたのかね?」
私が問うより先に、さっさと士郎が聞く。
その声には、有無を言わせない静かな強さがある。

普段は私以外の言葉には見向きもしない奴だが、こういう時くらいは別らしい。
あるいは、士郎の迫力に気圧されたのかしら。
《………………どうやら、お弟子さんの方へ向かっているようです。
 また、感知できる反応は二人分だけなのですが、如何いたしますか? マスター》
ああ、そんなことまでわかるのね。
わかっていたつもりだったけど、そこまでわかるなんて本当に便利ね、あなたたちって。
私の方からは、何も操作しなくていいところが特に。

あれ? なのはの方に向かってるということは、一応魔導師のはずのシャマルは無視なのか。
ベルカ式だから厳密には「騎士」ってことになるのかもしれないけど、この際それは関係ない。
どういう基準なのか知らないが、単純に魔法関係者を狙ってるわけじゃないのか。
あるいは別の理由があるのかもしれないけど、目的が分からないことには判断できないわね。

とりあえず、思い浮かぶ可能性は五つ。
一つ目は、シャマルがもうすでに襲われた可能性だけど、それは低いかな。
ジュエルシード探索用に張っていた結界は、用済みだし魔力の無駄だから事件後さっさと消した。
だから、私が見落とした可能性もなくはない。
けれども、一応魔導師のシャマルが襲われたんなら、管理局に被害届なりなんなり出すだろう。
それだったら、後は管理局がやってくれるだろうし、私達に出来ることはない。

それに、もし被害届が出てるならリンディさん辺りから連絡が来るはずだ。
あの人はこの世界や私達との縁もあるから、この近辺で何か事が起これば耳に入りやすい。
魔術やなのはのこともあるし、知っていて放置するというのは考えにくい。
まあ、本当にそんなことがあったことを知らない可能性は否定できないんだけど。
でも、つい昨日士郎がシャマルと会ってるんだから、一応無事だったのは間違いない。

もう一つは、シャマルが管理局のことを知らない魔導師である場合。
だけど、これこそあり得ない。
割りとメジャーな部類に入るベルカ式の魔法を使い、真っ当に魔法を修めているのにそれはないだろう。

次に、まだ襲われていない可能性。
これなら話は簡単。
今回のことで異変に気付いただろうし、それなら自分で何らかの対応策を取るはずだ。
この近隣に住んでいるのは間違いないのだから、気付かないなどと言うことはありえない。
となると、この場合でも特に私達がすることはない。

あとは、何らかの理由でシャマルが管理局を頼れない可能性。
この場合、シャマルが襲われたかどうか知る術はないけど、それはあまり関係ない。
単純な話で、管理局に関わりたくないなら今日以降ここに留まるのは愚行なのだ。
管理外世界での魔法を使った騒動となれば、いずれ管理局が動く可能性は低くない。
この地に留まれば、そのうち否が応にも関わることになる。

ただ、昨日までこの地にいたことを考えると、多分まだ襲われてないんだろうと思う。
だけど、今日のことで近々どこかに逃げるだろう。
仮にも士郎の教え子だし、管理局には言わないでおいてあげるか。
別に、シャマルが捕まったからってメリットがあるわけじゃないし、後味が悪いだけだもの。

まあ、これまでの四つの内二つはあり得ないから除外。
残りの二つの内どれかに該当する場合でも、私の方から管理局に報告する必要はないんだけどね。
そういう意味で言えば、今日ここで襲われなかった時点でシャマルの安全は確保されたことになるのか。

で、残り一つを無視してるけど、これはこれまでと視点が違う。
最後はシャマル自身がこれに関わっている可能性だけど、それは「ない」と断言できる。
だって、これじゃ「迎撃して下さい」って言ってるようなものだもの。
顔見知りを襲うなら、もっとうまいやり方がある。
それをしていない時点で、あれの関与はないと見ていい。

それにシャマルは知らないだろうけど、ウチに来た時に少し頭の中を調べさせてもらった。
その結果から言って、別段何か事を起こす気がないのも確認済み。
騎士というだけあってどっかの誰かに仕えているらしく、その人物の方針のようだ。
なんか変な封鎖がかかってるみたいで、外部からの情報の引き出しはあんまりできなかったけどね。
おかげで、その主君の事や仲間の有無、本人の能力なんかもほとんど知らない。
わかったことなんて、ベルカ式を使うって事と害意がない事くらいだもんね。
まあ、後者だけで十分と言えば十分だけど。

というわけで、とりあえず無害みたいだったから知らんぷりして付き合っていた。
根掘り葉掘り調べてもよかったんだけど、下手にちょっかい掛けて面倒事になるのは避けたかったのが理由。
これ以上、魔術や私達のことを知ってるのを増やしたくないのよね。
向こうも静かに暮らしたいようだったし、わざわざそんな面倒なことをする必要もない。

まあ、その際にちょっと暗示をかけて、怪しさ満点の私達に不信感を抱かないように細工はしたけどね。
他にも、魔力の有無まではさすがに誤魔化せないけど、魔導師と認識させないようにもしてある。
魔導師連中は、士郎ほどじゃないが中身への守りが割と雑だ。外はあんなに堅牢なのに。
封鎖のせいで引っ張り出すのは至難だけど、刻みつけるのはそうでもない。
科学方面に進んでるんだから当然かもしれないけど、少し面倒なだけで結構楽に暗示をかけられた。
だからこそ、ウチへの出入りを許してたんだけどね。

しっかし……カーディナルにも困ったものだ。珍しく素直に答えたと思ったらこれだもの。
その声はどこか不機嫌で、答えるまでの間が「不本意」を全力で主張している。
その上、返答は士郎じゃなくて私に向けてってのが、こいつもいい根性してるわ。
一体士郎の何が気にくわないのかしら?

士郎は士郎でカーディナルの反応には諦めてるみたいで、表面上気にせず向こうさんの考えを推測する。
「ふむ、私達やなのはを狙うこと自体は別に不自然ではないな。
 あちらが私達の容姿を知っていることが前提だが、子どもの方が組み敷きやすいと考えるのは当然だ。
 それなら、シャマルを無視するのも頷ける」
まあ、やっぱりそんなところよね。
魔力量の多い相手より、魔力で劣っても運用技術に優れた相手の方が厄介なのは事実。
一概に決めつけることはできないけど、子どもより大人の方が技術に優れると考えるのは当たり前だ。

だけど、あの子の魔力量を感知できてないはずはない。
あれだけの量があれば、たとえ技術が未熟であっても十分脅威になる。
それに対して二手にわかれるってことは、余程腕に自信があるのかしら?

はてさて一体何が目的か知らないけど、来るって言うんならそれ相応のおもてなしをしないとね。
「ま、なんにせよ引きこもっていても仕方がないわね。
 せっかくのお客さんですもの。ちゃんとお出迎えくらいはしないと」
「そうだな。無礼な来訪者には、それ相応の対応が必要だろう。
 だが、なのはの方はどうするのかね?」
わざわざ単独であの子に喧嘩を売るってことは、それなりの実力者なんだろう。
魔力の大小で戦闘能力の全てを測れるわけではないが、それでも一つの基準にはなる。
馬鹿力ってのはそれだけでそれなりに面倒だけど、魔力だってそれと大差ないのだから。

むぅ、できれば今すぐ加勢に行くのがベストなんだろうけど……。
今回はちょっと思うところがあるので、それは無しかなぁ。
「今は二人ともここに残りましょ。
 何が目的か分からないし、ここまで引き付けたところで私がなのはの所に行くわ。
 アンタはお客の接待をお願い。精々満足してもらおうじゃないの」
これが私のプラン。
なのはをほったらかしにしておくのはリスクが高い。
となると、どちらか、あるいは二人で援護に行かなければならない。
だが、それらにはいくつか問題があるのだ。

前者の場合、士郎単独では向こうに着くのに時間がかかり過ぎるので、私が行くしかない。
こういうのは、機動力の高い方が動くのが常識だ。
また、初めからバラバラに動いて私の方を追いかけてきたら、士郎が残っている意味がない。
そのため、一度ここに来てもらう必要がある。
私と士郎のどちらか、あるいは二人が目的なのか分からない。
そうである以上、引き付ける為には二人揃っていなければならない。

後者の場合、やはり士郎の移動スピードの遅さがネックだ。
地を走るしかないこいつと、空を飛べるようになった私とでは移動スピードに差があり過ぎる。
私が持って行ってもいいんだけど、それだと重くなった分時間がかかる。
というか、今こっちに向かっている奴と途中で鉢合わせする可能性が高い。
そうなると、やっぱり前者みたいに片方が足止めしている間にもう片方が向かうか、二人掛かりでやる事になる。
結局やる可能性が高い以上、有利な陣地まで引き付けた方が確実だ。
で、なのはをいつまでも放置しているのは危ないのだから、早めに向かうためにも二手に分かれるのが一番だろう。

転送系を使えば別だけど、アレは魔力の消費が無視できない。
なのはたちほどのバカ魔力がない私としては、そう乱用できる術ではないのだ。
相手の力が未知数な以上、可能な限り力は温存しておきたいのよね。

そうなると、結論は前者となるわけだ。
ヤバそうなら後から士郎を転送で引っ張ってくればいいし、それまでは足止めに努めてもらうのが良策だろう。
なのはの方が片付けば、実質三対一。なのはが戦えなくても、私と士郎で二対一に出来る。
確固撃破としてはそう悪くない。
任せるのが守りに長ける士郎じゃなきゃ、できない戦術だけどね。
これは、足止め役がやられたら成立しないんだから。

士郎も特にそれには異論はないようだが、ある質問をぶつけてくる。
「それは構わんが、なのはの方は二人掛かりでやるのかね?」
「え? 弟子のケンカに師匠が出ちゃ不味いでしょ。
 とりあえず弟子の成長ぶりを観察させてもらって、負ける様ならケリがついたところで介入するつもり」
さすがに、なのはと戦って全く消耗しないってことはないはずだ。
技術や経験はなくてもパワーはあり余ってるし、高火力・重装甲は伊達じゃない。
戦いを優位に進めるだけならともかく、倒すとなるとそれなりに面倒だろう。
仮にあっさり負けたとしても、戦い方もわかるし決着がついた瞬間に不意も打てる。
最善ではないけど、それほど分の悪い策でもない。
正直、漁夫の利って性に合わないんだけどねぇ。

まあ、もちろんそれだけじゃない。
普段の訓練でなのはの仕上がりは確認してるけど、実戦の中でしか出てこない、あるいは得られないモノがある。
だいたい、いつも助けてもらえると思っていたら成長しないしね。
依頼心が芽生えても困るし、自力で頑張ってもらおうじゃないの。
せっかくの好機なのだから、せいぜい利用させてもらうわよ。

それを聞いた士郎は頭に手をやり、その声には何やら呆れたような響きを含んでいる。
「まあ、君がそう言うのなら否はないが、なのはも気の毒にな……」
どういう意味よ。こんな弟子思いの師匠なんてそういないわ。
自分の主義を曲げてまで弟子の成長を促そうってんだから、感謝の涙で溺死してもいい位でしょ。
まあ、涙なんていらないから、その分貸しってことにするけど。

「じゃ、方針も決まったところでいきましょうか。
 どうやら、向こうもそろそろ着くみたいだしね」
家の周囲に張ってある結界にはまだ触れてないが、カーディナルの報告だとそろそろらしい。
何事も先手じゃないと気が済まない私だけど、こういう場合はどうしようもない。

今の私たちは野球のバッターだ。
ピッチャーにボールを投げてもらわないことには、どんなアクションも取りようがない。
これじゃ、先手も何もあったもんじゃないわ。
ま、来た瞬間にピッチャー返しで顔面を潰してやるつもりだけど。
ケンカを売られたからには、二度と歯向かえなくしてやろうじゃないの。



  *  *  *  *  *



で、表に出た私たちが出迎えたのは……
「……犬、よね?」
「ああ、犬だな」
そう、どこからどう見ても犬なのだ。
厳密に言うとアルフと同じ狼なのだろうが。
まあ、そう大差ないわよね。似たようなもんだし。

ただ、まさかこんなのにケンカを売られるとは思っていなかったのは事実。
いや、使い魔の類だろうからそれほど驚くことじゃないんだけど。
しかし、どんなのが来るのか身構えていた方としては、ちょっと肩透かしを食らった気分だ。
ん? ってことは、なのはの方に向かったのがマスターになるのかな?

まあ、問答無用で襲いかかってこない所からすると、躾が行きとどいているのだろう。
上から見下ろされてるのが凄く気にくわないけど、とりあえず一応慈悲をかけてやる。
「こんな夜分遅くに何の御用でしょう、お客様。
突然のお越しですが、満足なおもてなしもできず申し訳ございません。
 ……ところで、失礼ながらどちら様でしょうか?」
一応最低限の礼を取っているが、口から出る言葉はどこまでも白々しい。
早い話、「こんな夜中に来て何の用だ、この駄犬」と言ってるのと同じだ。

見上げる形になっているが、私の眼から発せられる眼光は鋭い。
並みの者なら、眼光やぶつけられる気迫に気圧されたじろぐところだ。
ところが、この狼はそれなりに肝が据わっているらしく、動じる素振りもない。

「……………」
というか、それ以前に一言も発さない。
使い魔みたいだし、しゃべれないってことはないはずだから、それをする意味がないってところかしらね。
殺人貴のところのレンだって、一度も喋ったのを見たことがない。
あそこまで徹底しているかは知らないけど、敵と交わす言葉ないってことかな。
狼の顔なんてわからないけど、もし表情がわかってもきっと仏頂面しているに違いないと何となく思う。

だが、これで完全にこいつは一線を越えた。
今ならまだ見逃してやらないこともなかったけど、こうして退く様子がない以上私たちの関係は決定した。
「だんまり、ね。それじゃ、どうやら交渉の余地なしみたいだし、わかりやすくいくとしましょう。
『――――Anfang(セット) 』」
その詠唱と共に、屋敷の周囲に張られた結界が起動する。
元から設置してあるものである以上、面倒な手順など必要ない。

起動した結界は、連中の張った結界内でも問題なく展開する。
それにより僅かに、本当に極々僅かに月明かりの光加減が変化する。
種別が違うおかげで、魔法と魔術の結界がぶつかり合いにならないのは確認済みだ。
「……?」
だが、秘匿前提の魔術結界を感知するのはこいつらには難しいらしく、何が起こったか理解していない。

まあ、この結界自体には特に攻勢能力はない。
あるのは、ただ内と外を隔てる封鎖能力だけだ。
そういう意味では実害はないが、その分結界の境まで行かなければ気付かないでしょうね。
何もないはずのところに突然壁があらわれるようなモノだから、かなり驚いてくれるはずだ。
それにしたって、それほど頑丈ではないけど。

それでも、足止め程度なら問題ない。
脱出するためには、これを壊すには一瞬だが破壊の為の工程が必要になる。
その一瞬の間に、士郎が上手く邪魔するはずだ。
向こうは空戦ができるので、士郎一人だと逃げられるかもしれないが、この檻があればそう簡単にはいかない。
戦うだけならともかく、逃がさないようにするには空を飛べるアドバンテージは厄介過ぎる。
これくらいの小細工は必要だろう。

効果が割と貧弱と言うか、穏やかなのには理由がある。
屋敷の敷地内ならそれなりにいろいろ用意してあるけど、ここは一応外なのでこれくらいが限界なのだ。
家の塀の様な、内と外を隔てる境界は結界に利用しやすい。
だけど、そういたモノがないところで複雑な結界を張ると雑にならざるを得ない。
そういう無様なのは、なんというかプライドが許さないのだ。
家のほうにまで引き込んでもいいんだけど、魔導師連中のやり方は無闇に派手だもの。
あんまり暴れられて、家を傷つけられてはかなわない。

見たところ結構やるみたいだし、もう片方も同レベルかそれ以上だろう。
それを考えると、急いでなのはの方に行った方がよさそうかな。
「さて、来てもらって早々悪いんだけど、ちょっと用事があるのよ。
 アンタの相手をしてられるほど暇じゃないし、私はこれで失礼するわ」
紅い外套を翻して踵を返す。
これを隙と見て襲いかかってきても、必ず士郎が止める。
それがわかっているからこそ、無防備に背中をさらせるのだ。

「ああ、ところで凛。一つ聞き忘れていたのだが……」
珍しいわね。事ここに至って、士郎が引き留めるなんて。
それに、何でわざわざ声に出して聞くのかしら。
重要なことなら、念話もどきで済ませた方がいいはずなのに。

そう思いながら足だけ止める。
特に先を促さなくても、これだけで言わんとすることは伝わる。
「足止めをするのはいいが…………別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
ああ、なるほど。
確かに、これは聞こえるように口で言わないと意味がないわよね。

背を向けているから正確なところはわからないが、何となく不敵な笑みを浮かべているんじゃないかと思う。
紡がれた言葉には、皮肉気な響きと共に強い意志と覚悟が感じられた。
第一目的は足止めだが、別にそれにこだわる必要はない。
勝てそうならさっさと倒して、そのまま加勢に来てくれて何の問題もない。

なら、こっちもちゃんとそれに合わせないとね。
「ええ、遠慮はいらないわ。
 思い切り、ぶちかましてやりなさい」
「そうか、それを聞いて安心した。では、期待に応えるとしよう」
相手は決して軽んじていい敵ではない。
このやり取りが始まってからというモノ、あの犬からはハンパじゃない気迫が漏れてきている。
その質だけでも、相当な実力があることがうかがえる。
それに表には出していないようだけど、それなりに怒気も伝わってくる。
犬扱いした上に、打倒宣言までされては不機嫌にもなるか。

だが、決して振り返らず、この場を後にする。
ここはもう士郎の戦場だ。
私が出す手も口もない。
私は私の、士郎は士郎のすべきことをする。
それこそが、こいつからの信頼に応えるただ一つの方法だ。

私は数メートル歩き、そこで首から下げている宝石を握り、そいつを起動する。
「カーディナル。Set up」
《了解》
周囲を一瞬紅い光が包み、それが消えると私の服はバリアジャケットに変わっていた。
ちなみに、たとえどれだけ落ちぶれても、十年前のアレみたいな魔法少女スタイルなんて絶対にしない!
なので、私の恰好を見てそんなことをイメージする奴はいないだろう。した奴は眼と脳が腐っている。

上衣はワインレッドを基調とし、日本ではカンフー服と呼ばれるモノの長袖版。
その上から、礼装でもある真紅の外套を羽織っている。
手には指貫の革手袋が嵌められ、その上から肘までを漆黒の手甲で覆っている。
ま、袖や外套で手の甲の部分しか見えてないけどね。
下衣は本来ならカンフーパンツを履く所なのだが、私の場合は黒色のロングスカート。
履物も中国式ではなく編み上げ式のブーツ。その上から、手甲と同じ漆黒の脚甲が膝までを覆っている。
髪はいつものツインテールではなく、下ろした状態で特に纏めずに流してある。

そして私の右手には、ステッキのようなシンプルな形状のデバイス。
なのはの持つそれより少々短く、だいたい私の腰辺りまでの長さだ。
その握りには、特大のルビーを思わせる令呪を模した刻印の刻まれた紅い宝石が嵌め込まれている。
これは、昔綺礼に聞いた父さんの礼装がモチーフとなっている。

そんな私の姿を見て、例の狼が警戒心を強めたようで空気が一層張り詰める。
だが私はそれを一瞥もせず、背を向けたまま歩みを進める。
適当なところで、杖で地面を一突きして飛行魔法を起動させ宙に浮き上がる。
「追ってくるのは自由だけど、その前にそいつを何とかすることね。
 言っておくけど、手強いから他所見しない方が身のためよ」
言い終わったところで、鉄甲作用を付加した時独特の轟音が響いた。
その音から、近くの建物に黒鍵が叩きつけられたことが分かる。

おそらく、私を追おうとする狼に、士郎が牽制に黒鍵を投擲したってところか。
狼はそれに行く手を阻まれ、飛び出しかかったところで踏みとどまっているんじゃないかな。
まあ、士郎がちゃんと抑えているのなら背中を気にするだけ野暮だ。
ここは私の舞台ではない。
なら、さっさと自分の舞台に向かうとしましょうか。

そのまま無防備な背中を晒しつつ、私は外に向けて飛び立つ。
背後から唸り声が聞こえているけど、たぶん士郎に威嚇をしているのだろう。
「そういうわけでな。物足りぬかもしれんが、しばしの間戯れてもらうぞ」
かなり鋭い眼で睨まれているのだろうが、それを感じさせない悠然とした口調で士郎が告げる。


さて、これでしばらくはもつはずだ。
あるいは、本当に仕留めてしまう可能性だってある。

とりあえず、私も早いとこなのはの所に行かないと。
出来れば状況を聞きたいし、移動中にでも念話で軽く話をつけておくべきかな。
こっちは一応向こうさんとの顔合わせは済んだし、厄介な相手だってことは教えておくべきだろう。
結界を張った張本人はあの狼より後に動いたようなので、なのはのところに着くには早すぎる。
なら、まだ少しだけ時間に余裕があるはずだ。
今の内に、できることをやっておかないとね。

さて、どうも地に足がつかないのは落ち着かないけど、急いで向かうとしましょうか。



Interlude

SIDE-なのは

今わたしは、夜の高層ビルの屋上にいる。
こんな時間に出歩いてるなんてお兄ちゃんたちに知られたら、怒られるだろうなぁ。

なんでこんなことになってるのかさっぱりだけど、とりあえず状況はわかりやすい。
わたしは現在進行形で、見ず知らずの誰かに襲われそうになっているみたい。
と言っても、心当たりがないってだけで襲ってきた人の顔もまだ見てないんだけど。

でも、少ないけど情報はある。
ついさっき、凛ちゃんから念話を貰った。
それによると、凛ちゃんたちも使い魔らしき蒼い狼さんに襲われたらしい。
今は士郎君が抑えてくれていて、その間に凛ちゃんがこっちに来てくれるみたい。
相手がどんな人か分からないけど、とにかくそれまで持ちこたえなければならないってことなんだと思う。

ただ、今のわたしは少し震えている。
それというのも、凛ちゃんの話だとかなり強いだろうと言う話を聞いたから。
あの凛ちゃんがそこまで言うからには、本当に強いんだと思う。
凛ちゃんや士郎君はなんだかんだで、わたしに合わせて手加減してくれる。
でも、今回の相手には多分それがない。
半年ぶりの実戦に高揚感はない。あるのは緊張と恐怖、それらからくる震えだけ。

けれど、きっとこれでいいんだと思う。
行き過ぎて強張らなければ、緊張も恐怖も悪いものじゃない。
本当に怖いのは「怖さを忘れる事」と何度も言われてきた。
怖いから危険を回避できるし、相手の強さがわかるんだって。

でも、今は必要以上に恐怖心が煽られている気がする。
問題は、凛ちゃんから聞いた話の内容の最後。
なにせ、朗らかに……
「とりあえず、死なないようにね。
 せっかく半年もかけて育てた弟子。こんなことで壊されたら結構大きな損害だもの。
まあ、死んだら死んだでそれまでの弟子だったってことで諦めもつくけど……」
という、ありがたいくもなんともないお言葉で締めくくられた。
最後の方なんて、ニヤニヤ笑いを浮かべているのが頭をよぎったよ!
いや、それよりも…………結構って何!? 諦めって何!? 凛ちゃんのはくじょうもの~~~!!
死ねない! ぜっっったいに死ねない!! 何が何でも生き残って、一言文句を言わないと気が済まないよ!!


そんなわけで、今のわたしは緊張や恐怖の他に、妙な感じに気合いを漲らせながら周囲に注意を払っている。
バリアジャケットを着ていないのは、戦闘の意思がないことを伝えるため。
これを見れば、訝しんで一度立ち止まるくらいはしてくれるんじゃないだろうか。
出来たら、そこでちゃんとお話を聞かせてほしいんだけど……。
きっと、凛ちゃんは「甘い」って言って呆れるんだろうな。

すると、レイジングハートが何かの接近を教えてくれる。
《来ます! 誘導弾です》
風を切る高い音がするのに気付き、そちらを向く。
眼に映ったのは一発の鉄球、どうやら誘導操作弾らしい。
つまり、問答無用ってこと!?

そちらに向け手をかざし、それにレイジングハートが合わせる。
《Round Shield!》
大急ぎでシールドを展開し、まっすぐ飛来するそれを防ぐ。
ただし、真正面から受けるのではなく斜めにして弾く。
これなら受ける衝撃はそれほど大きくないから、すぐに次の行動に移れる。

それに、スピードや威力はあればある程小回りが利きにくくなる、と凛ちゃんが教えてくれた。
いくら誘導性があるからと言って、いきなり方向転換をするのが難しいのはよくわかっている。
術者のレベルが上がるほどその時に出来る隙は小さくなるけど、確実にそれは発生すると言われている。
その言葉通り、弾かれた鉄球は大きく旋回して再度こちらに向かって飛んでくる。

でも、対応するだけの時間は稼げた。
それに対して、単発のディバイン・シューターを放って迎撃する。
二つの誘導弾は正面からぶつかり合い、小さな爆発を起こして相殺する。

それに安心する間もなく、真横から次の攻撃がくる。
「テートリヒ・シュラーク!!」
声に反応して振り向くと、そこにはハンマーを握った女の子がいた。
手にしたハンマーを振りかぶり、力の限り振り抜いてくる。

目の前に豪速のハンマーが迫る中、いくつかの選択肢が脳裏を駆け巡る。
(シールドで受け止める? また、斜めにして受け流す? それとも、飛び退いて避ける?)
だけど、かなりの魔力が込められていることがわかり、下手に受けるのは危険だと直感が告げる。
避けようとしも、追撃をかけられると不味い。
だから、それら全ての選択肢を却下し、体に染みついた動きが出る。

「てや!」
掛け声とともに、その子の懐に向けて私の方から飛び込む。
同時に、手元に魔力を溜め込み砲撃の準備をする。
砲撃形態のレイジングハート抜きだとキツイけど、撃てるように訓練はしている。
まあそれも、この一撃を受けきってからの話。

振り抜かれる前に踏み込んだ事で、ハンマーの直撃だけは避けられた。
「なに!?」
あの子もそれは予想外だったのか、一瞬驚いたような顔をするのを目の端で捕らえる。
渾身の一撃に対してかわすのでも受けるのでもなく、自分から前に出たりしたら驚くよね、当然。

驚きこそしたけど、それでも構わないと言わんばかりに振り抜かれた一撃が、肩に叩きつけられる。
「このぉ!!」
「あうっ……!?」
やっぱり相当な威力があったらしく、ハンマーの柄にぶつかっただけなのにかなりの衝撃が来る。
構成こそ粗くて簡単に砕かれたけど、当たる寸前に体を覆うようにして作ったバリアの防御が間に合った。
もし直撃なんて受けてたら、今の一撃で倒されていたかもしれない。
瞬時に体と頭が反応するよう鍛えてくれた二人に、心の底から感謝したくなる。


本格的な接近戦対策として組み手をするようになったころから、凛ちゃんに何度もいい聞かされたことがある。
「いい? どうしても接近戦をしなくちゃならなくなったら、無理に距離を取ろうとするんじゃなくて、逆に自分から飛び込みなさい。
 最も怖い敵の近くこそが、一番の安全地帯よ」
それというのも、スピードが乗る前に近づくか、密着状態にしてしまえば攻撃の威力は半減するかららしい。
射撃系は別だけど、直接攻撃は助走距離が必要だから。
もちろん、例外なんていくらでもあると直接体に教えこまれたけど。
でも、その教えが正しかったことを今実感している。

だけど、近づくだけじゃ不十分。
接近戦が苦手なわたしでは、その距離に居続けるのは自殺行為。
だから、どうやってそこから私の得意な距離まで離脱するかが一番の問題になる。
距離を取ろうとする私に、わざわざ好きなようにさせてくれるはずがない。

凛ちゃんからは、その対策も叩き込まれている。
「密着したら、絶対にそこから離れんじゃないわよ。
 それだけ近づけば取れる手段は限られてくるから、その場で砲撃をぶちこんでやりなさい」
わたしの魔力なら、タメが短くてもそれなりの威力になる。
仮に倒せなくても、そんな距離から撃たれるのは嫌がるはず。

普通に距離を取ろうとしても必ず邪魔されるし、そう簡単にやらせてくれるはずもない。
だけどこれなら、ゼロ距離砲撃をさせないために十中八九僅かに体を引こうとする。
その瞬間を狙って離脱すれば、かなり高確率で距離を取ることができるらしい。
これが、今のわたしにできるレベルの接近戦への対応策。

だから、踏みこみながら砲撃の準備をした。
咄嗟のことだから威力はそれほどじゃないけど、崩拳に乗せて撃つ。
撃つのが早ければ早いほど、その分回避や防御も難しくなる。
まずないと思うけど、場合によってはこの一撃で落とすことだってできるはず。


ただ、根元の部分で殴られバリアがあったにもかかわらず、あの子のパワーがすごくてわたしは弾き飛ばされる。
ホントは、そのままバスターを使うつもりだったのに思っていた以上のパワー。
とてもじゃないけど、倒れないようにするので精一杯でそれどころじゃない。

でも踏ん張ったおかげで、ギリギリビルの淵に踏みとどまることができた。
ビルの外にまで吹っ飛ばされなかっただけでも、良しとすべきなんだろうね。
同時に、ああ足腰が重要ってこういうことなんだなぁ、と実感する。
もしあの特に地味な訓練をサボってたら、今頃ノーロープバンジーをしてるところだったよ。

せっかく準備した魔法は、殴られた際の衝撃で狙いがズレ、あらぬ方向へと飛んで行ってしまった。
それを見て、あの子の目つきが変わる。
たぶん、同じ手は二度も通じない。
こういう手があるんだとバレてしまったら、そう簡単に密着はさせてくれないだろう。
そのまましり込みをしてくれると助かるんだけど、その様子もない。
むしろ「上等!」と言わんばかりの眼をしてる。

殴られた肩がまだ痛むけど、それを無視して体勢を立て直す。
少しでも万全に近い状態にしないと、とてもじゃないけど対応できそうにない。
「レイジングハート、お願い!!」
《Standby, ready, set up 》
そのままわたしはバリアジャケットに身を包み、臨戦態勢を整える。

弾き飛ばされたことで、あの子との間合いが少し開いた。
ならいっそのこと、このままさらに間合いを広げる。
この距離は、どう考えてもあの子が有利だ。

バリアジャケットが展開されるのと同時にビルの淵を蹴って、空に飛びたつ。
ここなら、ビルの屋上にいるよりずっと戦いやすい。
いきなり襲ってきた以上、このまますぐに話し合いに応じてなんてくれないよね。

案の定、あの子は追撃のためにまた鉄球を出す。
それを投げ上げ、あのハンマーで打つ。
叩かれた鉄球は、高速でこちらに向けて飛んでくる。
さっきのも、こうやって打ってきたんだ。
でも、私の使う魔法とはだいぶ違う気がする。
少なくとも、ああやって道具を直接使うのは馴染みがない。

あの子はハンマーを振った勢いを利用し、鉄球の後を追う形で突っ込んでくる。
たぶん中距離から攻撃して、それに対処している隙に接近戦に持ち込むのがこの子の戦い方なんだ。
回避すればその隙を狙って殴るにくるし、受ければその間に間合いが詰められる。
だからこのどちらかを選択するのは、この子の狙い通りってこと。

だからそれに対し、下手に回避や受けたりするよりも叩き落とした方がいいと判断する。
「ディバイン………バスター!!」
レイジングハートを変形させ、可能な限り早く砲撃を撃つ。
鉄球の方は、急な方向転換ができないようで狙い通り砲撃に飲み込まれる。

砲撃はそのままあの子へと進んでいく。
こっちに突っ込む勢いもあって、回避するのは簡単じゃないはず。
だけど、さすがに直撃なんて受けてはくれない。
あのタメの少なさで砲撃を撃てた事に驚いたみたいだけど、寸前で回避する。

でも、これで少し時間が稼げた。
けれど、反撃したことで俄然闘志が漲っているように見える。
話を聞きたいところだけど、せめて一度止まって貰わないとそれもできない。

そう判断し、わずかに体勢を崩した相手に向けてディバイン・シューターを放つ。その数は七。
散開させるように、それぞれを別の角度で撃ち出す。
ああやって近づこうとしてるのなら、真正面から撃ってもたぶん意味がない。
回避するのか防御するのかまではわからないけど、対策くらいは立てているはず。
そう思っての攻撃。

向こうもその意味はわかっているようで、突っ込んできながらも油断なく周囲の様子に気を配っている。
それでも、その勢いはやっぱり猛烈。
ちょっとやそっとの攻撃じゃ足を止めるのは難しそう。
散開させた誘導弾のうち二つを操作し、ちょうどあの子の正面で交差するように動かす。

でもあの子は、そんなことはお見通しとばかりに軽くブレーキをかけるだけでやり過ごす。
勢いを殺したのは一瞬、すぐに元の勢いで襲いかかってくる。
だけど、そんなことはこっちも予想済み。
今のは、残りを配置につかせるためだけの囮。
一直線に突っ込んで来てくれる分、動きだけは予想しやすいからね。

配置についた誘導弾を動かし、一つ一つ時間差を付けてぶつけようとする。
けれど、結構凝った配置にしたつもりなのに危なげなく回避される。
時に前進しながら宙返りをし、時には僅かに手足を動かすだけでかわす。
まるで、後ろに目でも付いているみたい。
さすがにかわしながらじゃ動きにくいみたいで、突進の速度は落ちているけど。

どちらにせよ、このままじゃいずれ接近される。
さっきみたいに密着するのは難しいだろうし、以前見た士郎君がクロノ君に使った手を使おう。
「バースト!」
そう叫び、ちょうどあの子の真横に迫っていた誘導弾を炸裂させる。
そのまま突っ込んでくると思っていたであろう誘導弾が爆発し、さすがに驚いている。
その爆風に煽られ、小さい体がバランスを崩す。

そこに追い打ちをかけるように、さらに残りの全弾を叩きこむ。
今までの動きから、これさえも回避されてしまいそうな気がする。
だからもう一度、今度は全弾まとめて炸裂させる。
「もう一発! バースト!!」
全六発分の爆発は、さすがに相当なもの。
炸裂させたことで生じた衝撃は、それなりに離れているこちらにまで届いた。
また、その際の発生した煙のせいで、あの子の姿が見えなくなる。

でも、たぶんほとんど無傷。
直撃じゃなくて、これはただの余波だから。
ちょっと派手なビックリ箱みたいなものだから、ダメージはたいしたことはないと思う。
でも意表はつけたみたいだし、次の手も考えてある。

すると、煙の塊を突き抜けるようにして、小さな影が上に向かって飛び出す。
体にまとわりつく煙が尾を引き、徐々にそれも晴れていく。
その姿は、やっぱり無傷。
でも、上に逃げたのが運のつき。

わたしもそれは予想していたから、すでにレイジングハートを空に向けて構えている。
この場所は、下は地面で前後左右はビルに囲まれている。
どこに逃げても壁になるモノがあるけど、唯一上だけは開けている。
だから、視界が悪くなれば多分こっちに動くと思っていたけど、ドンピシャ。

砲撃の気配に気付いたのか、驚いたような表情でこっちを見る。
だけど、もう遅い。
こっちの準備はもう整ってるんだから。
「ディバイン・バスター!!」
渾身の魔力を込めた砲撃を放つ。
避けられない、そう確信しての攻撃。

「え!?」
だけど、あの子はそれをギリギリのところでかわす。
強引に体を倒し、半ば落下するような機動。
被っていた帽子は途中で脱げてその場に取り残され、砲撃の余波でボロ布に変わる。
だけど、それ以外にこれと言った手ごたえはない。
まさか、あれをかわされるなんて。

相手の並外れた反応と回避機動に、思わず呆然としてしまう。
わたしだったら、多分直撃していた。
わたしには到底できないことが、あの子には出来る。
それだけの差が、わたしたちの間にはあるってことなんだと思う。

スグにまた突っ込んでくるかと思ったけど、予想に反して初めてあの子が動きを止める。
砲撃を受けて半壊した帽子が舞い落ちるのを、凍ったような表情で見送っている。
なんだかよくわからないけど、せっかく止まってくれたんだからこの期に声をかける。
「いきなり襲われる覚えはないんだけど、あなたどこの子?
 なんで突然こんなことする、の!?」
話を聞こうと言葉をかけていると、振り向いたあの子がものすごい眼で睨んでくる。
思い当たることとしては、今の砲撃で帽子が身代わりになっちゃった事。
だけど、もしかしてそのせい?

ハンマーを振るうと、あの子の足元に三角形の赤い魔法陣が出現する。
あれって確か、士郎君のと同じ……。
「グラーフアイゼン、カートリッジロード!!」
《Explosion》
その言葉に反応し、あの子のデバイスが銃の弾丸のようなものを装填し撃発させる。

するとハンマーの形態が変わり、片方に突起、もう片方に噴射機のようなモノがあらわれる。
それだけでなく、あの子とそのデバイスからものすごい魔力が迸っている。
「えぇ!?」
あんなもの、わたしは知らない。
わたしは、目の前の事態に対して驚くことしかできないでいる。

そのまま噴射口から炎が発せられ、回転しながらその速度を増していく。
数回転したところで、勢いをそのままにこちらに向かって襲いかかってくる。
ううん、むしろどんどんスピードが増してる。

詳しいことはわからないけど、あんな物をまともに受けちゃだめだ。
思い切り回避するか、さっきみたいに懐に飛び込むしかない。
そう考えたわたしは前者を選択し、大きく飛び退くことで初撃を回避する。
「逃がすかぁー!!」
その声と共に、一度は回避したハンマーが再度唸りを上げて迫ってくる。

この調子じゃ、いくらやっても振り切れない。
むしろ、この間合いにいる限りいつか追い詰められるのは明白。
だったら、もう一つの方法で止めるしかない。
「それなら!」
迫ってくるタイミングに合わせ、フラッシュムーブで体当たりを仕掛ける。
このまま密着状態にして、凛ちゃんの教え通り今度こそ至近距離からのディバイン・バスターを当てる。
上手くいけばこれで決められるし、倒せなくてもダメージは与えられるはず。

だけど、そんなわたしの考えは甘すぎた。
一度使った手は、何度も使えないって言われてきたのに……。
不完全とはいえ一度上手く行った事から、調子に乗ってまた同じ動きをしてしまった。
このスピードなら、細かい動きなんてできないと高を括ってしまったんだ。
わたしが飛び込もうとしたところで、あの子は回転の中心であるハンマーは残したまま、体の軸だけを少し横にずらす。

おかげでわたしの狙いは外れ、見事に体当たりをかわされる。
「もらったぁぁぁ!!」
かわされたことで体勢が崩れたわたし目掛け、勢いのついたハンマーが再び襲ってくる。

それに何とか対処しようとシールドを展開し、レイジングハートを盾にするように動かして防御する。
でもこれは、行き当たりばったりの守りでしかない。
とてもじゃないけど、捌いたり弾いたりなんて無理。
だから、その後の結果はわかりきっている。
アレを直接受けちゃいけないって判断したのは、間違ってなかった。

予想通り、その一撃はシールドどころかレイジングハートさえも砕いて見せる。
勢いは衰えることを知らず、そのままわたしの体を弾き飛ばす。
「きゃぁぁぁぁ!」
わたしはその勢いのままビルに向けて叩きつけられ、ビルの一室に転がり込む。

舞い上がる粉塵の中、笑う膝でなんとか立ち上がろうとする。
正直、それだけで途轍もなく苦しい。
良いのを貰っちゃって、体全体が軋んでる気がする。
「げほっ………げほっ……」
その上、体に叩きつけられた衝撃で息が詰まる。
だけど、今はそれどころじゃない。

ここはわたしにとって、あまりに場所が悪すぎる。
空間を広く使うのがわたしの戦い方なのに、こんな狭いところじゃ持ち味を生かせない。
急いで外にでないと……。

なのに、あの子がさらなる追撃をかけてとどめを刺しにくる。
このままじゃ、やられる。

その逃げようのない現実に対し、わたしには抗う術がない。
ただ、迫りくる小さな影を見ていることしかできない。
諦めてはいけないのはわかってる。
だけど同時に、もう自分ではこの状況をどうしようもないとわかってしまう。
(フェイトちゃん……凛ちゃん……士郎くん……アルフさん…………ユーノ君!)
魔法に関わって出会ったみんなの顔が頭をよぎる。
縁起でもないけど、こういうのを走馬灯って言うのかな?

だけどその後ろ、窓の外に見覚えのある人影が降りてくるのが見えた。

あれは、もしかして……。

Interlude out






あとがき

まあ、今回は軽いジャブと言ったところでしょうか。
次回はなのはが見た人影と、残った士郎のお話になります。
まあ、今更誰か言わなくてもわかると思いますけどね。
本格的にぶつかりあうのも近いですが、組み合わせと結果はどうなることやら。

結構いろんな人からいただいた疑問その一、「凛はシャマルが魔導師だと気付いていないのか」について。
作中でも出したように、士郎も含めて気付いた上でその点は知らんぷりしてました。
当初は自分たちにとって無害ですから、わざわざちょっかい掛ける必要もありませんよ。
なので、凛は現在思いっきり勘違い街道を驀進中です。

疑問その二、「シャマルは二人が魔導師であることに気付いていないのか」について。
これまた作中で出しましたが、凛が暗示をかけてるんでその点は大丈夫です。
認識阻害と言うか意識を逸らすと言うか、そういった効果によって気付いていません。
やっぱり、隠し事は秘匿前提の魔術師の領分ですよ。

疑問その三、「ヴォルケンのことがいきなりバレるんじゃないか」について。
現在、凛は情報が古いせいもあって、シャマルが無関係だと勘違いしています。
また、管理局に対してもわざわざ報告する必要性を認めていません。
なので、それが解消されない限りバレることはありません。

最後に、さんざん悩んだ凛のバリアジャケットですが、割りとシンプルになっていると思います。
凛は八極拳を使いますから、中国の服なんか似合いそうです。
正直、道士と呼ばれる人たちの着る道衣とどちらにしようか悩みました。
ですが、魔術師が仙道の恰好をするのはどうかと思い、こちらになりました。

イメージしやすくするなら、舞弥さんの服装を赤系統にし、黒のロングスカートとブーツを履かせたような感じですかね。
あるいは、有間さん家の都古ちゃんの上衣でしょうか。
うん、我ながら説明が下手過ぎてよくわからない気がします。
申し訳ございませんが、みなさん頑張って乏しい情報からイメージして下さい。


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