<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

とらハSS投稿掲示板


[広告]


No.4610の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはReds(×Fate)【第二部完結】[やみなべ](2011/07/31 15:41)
[1] 第0話「夢の終わりと次の夢」[やみなべ](2009/06/18 14:33)
[2] 第1話「こんにちは、新しい私」[やみなべ](2009/06/18 14:34)
[3] 第2話「はじめての友だち」[やみなべ](2009/06/18 14:35)
[4] 第3話「幕間 新たな日常」[やみなべ](2009/11/08 16:58)
[5] 第4話「厄介事は呼んでないのにやってくる」[やみなべ](2009/06/18 14:36)
[6] 第5話「魔法少女との邂逅」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[7] 第6話「Encounter」[やみなべ](2009/06/18 14:37)
[8] 第7話「スパイ大作戦」[やみなべ](2009/06/18 14:38)
[9] 第8話「休日返上」[やみなべ](2009/10/29 01:09)
[10] 第9話「幕間 衛宮士郎の多忙な一日」[やみなべ](2009/11/29 00:23)
[11] 第10話「強制発動」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[12] 第11話「山猫」[やみなべ](2009/01/18 00:07)
[13] 第12話「時空管理局」[やみなべ](2009/01/31 15:22)
[14] 第13話「交渉」[やみなべ](2009/06/18 14:39)
[15] 第14話「紅き魔槍」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[16] 第15話「発覚、そして戦線離脱」[やみなべ](2009/02/21 22:51)
[17] 外伝その1「剣製」[やみなべ](2009/02/24 00:19)
[18] 第16話「無限攻防」[やみなべ](2011/07/31 15:35)
[19] 第17話「ラストファンタズム」[やみなべ](2009/11/08 16:59)
[20] 第18話「Fate」[やみなべ](2009/08/23 17:01)
[21] 外伝その2「魔女の館」[やみなべ](2009/11/29 00:24)
[22] 外伝その3「ユーノ・スクライアの割と暇な一日」[やみなべ](2009/05/05 15:09)
[23] 外伝その4「アリサの頼み」[やみなべ](2010/05/01 23:41)
[24] 外伝その5「月下美刃」[やみなべ](2009/05/05 15:11)
[25] 外伝その6「異端考察」[やみなべ](2009/05/29 00:26)
[26] 第19話「冬」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[27] 第20話「主婦(夫)の戯れ」[やみなべ](2009/07/02 23:56)
[28] 第21話「強襲」 [やみなべ](2009/07/26 17:52)
[29] 第22話「雲の騎士」[やみなべ](2009/11/17 17:01)
[30] 第23話「魔術師vs騎士」[やみなべ](2009/12/18 23:22)
[31] 第24話「冬の聖母」[やみなべ](2009/12/18 23:23)
[32] 第25話「それぞれの思惑」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[33] 第26話「お引越し」[やみなべ](2009/11/17 17:03)
[34] 第27話「修行開始」[やみなべ](2011/07/31 15:36)
[35] リクエスト企画パート1「ドキッ!? 男だらけの慰安旅行。ポロリもある…の?」[やみなべ](2011/07/31 15:37)
[36] リクエスト企画パート2「クロノズヘブン総集編+Let’s影響ゲェム」[やみなべ](2010/01/04 18:09)
[37] 第28話「幕間 とある使い魔の日常風景」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[38] 第29話「三局の戦い」[やみなべ](2009/12/18 23:24)
[39] 第30話「緋と銀」[やみなべ](2010/06/19 01:32)
[40] 第31話「それは、少し前のお話」 [やみなべ](2009/12/31 15:14)
[41] 第32話「幕間 衛宮料理教室」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[42] 第33話「露呈する因縁」[やみなべ](2010/01/11 00:39)
[43] 第34話「魔女暗躍」 [やみなべ](2010/01/15 14:15)
[44] 第35話「聖夜開演」[やみなべ](2010/01/19 17:45)
[45] 第36話「交錯」[やみなべ](2010/01/26 01:00)
[46] 第37話「似て非なる者」[やみなべ](2010/01/26 01:01)
[47] 第38話「夜天の誓い」[やみなべ](2010/01/30 00:12)
[48] 第39話「Hollow」[やみなべ](2010/02/01 17:32)
[49] 第40話「姉妹」[やみなべ](2010/02/20 11:32)
[50] 第41話「闇を祓う」[やみなべ](2010/03/18 09:55)
[51] 第42話「天の杯」[やみなべ](2010/02/20 11:34)
[52] 第43話「導きの月光」[やみなべ](2010/03/12 18:08)
[53] 第44話「亀裂」[やみなべ](2010/04/26 21:30)
[54] 第45話「密約」[やみなべ](2010/05/15 18:17)
[55] 第46話「マテリアル」[やみなべ](2010/07/03 02:34)
[56] 第47話「闇の欠片と悪の欠片」[やみなべ](2010/07/18 14:19)
[57] 第48話「友達」[やみなべ](2010/09/29 19:35)
[58] 第49話「選択の刻」[やみなべ](2010/09/29 19:36)
[59] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 前篇」[やみなべ](2010/10/23 00:27)
[60] リクエスト企画パート3「アルトルージュ・ブリュンスタッド 後編」 [やみなべ](2010/11/06 17:52)
[61] 第50話「Zero」[やみなべ](2011/04/15 00:37)
[62] 第51話「エミヤ 前編」 [やみなべ](2011/04/15 00:38)
[63] 第52話「エミヤ 後編」[やみなべ](2011/04/15 00:39)
[64] 外伝その7「烈火の憂鬱」[やみなべ](2011/04/25 02:23)
[65] 外伝その8「剣製Ⅱ」[やみなべ](2011/07/31 15:38)
[66] 第53話「家族の形」[やみなべ](2012/01/02 01:39)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[4610] 第14話「紅き魔槍」
Name: やみなべ◆d3754cce ID:fd260d48 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/02/21 22:51
SIDE-凛

いま私たちはアースラの会議室にて、主だったクルーに自己紹介をしているところだ。
ユーノはがちがちに緊張している。
管理局に関してちゃんとした知識がある分、どうしても固くなってしまうのだろう。
その点、なのはは結構余裕だ。生来の性格もあってか、物怖じすることもなくしっかりとあいさつする。

ところで、以前からユーノがなのはに気があるように思っていたが、これで確定のようだ。
あいさつの際になのはがクロノに笑いかけ、それにクロノが赤面するのをユーノが嫉妬にまみれた顔で見ていた。
フェレットと人間の恋は、さすがに実らないだろうと思っていたが、実はユーノは人間だったので問題はない。あとは当人たちの問題だ。
しかし九歳の少女に赤面する十四歳の少年というのは、ちょっと危険な気がする。
五歳差というのはそう大したものではないが、差よりも年齢が問題だ。
クロノは結構、気が多い性質かもしれない。
さすがにロリコンということはないだろうが、このネタでしばらくはエイミィと一緒にいじれそうなので、いい暇つぶしになりそうだ。

「そして彼女が、この世界で独自に発達した技術である「魔術」の継承者の」
「魔術師の遠坂凛です。短い間でしょうが、よろしくお願いします」
非の打ちどころのない所作で挨拶をする。
こちらを見るクルーの面々に、好印象を与えたようで満足する。
猫を被るわけではないが、こんな得体のしれない技術を使う人間を、そう簡単に信用できるものではない。
あまり疑われているのも居心地がよくないので、好印象を与えた方が信用されやすい。

「ジュエルシードの回収は、主にこの三人にしてもらいます。
 みんなも、よくサポートしてあげるように」
その言葉のとおり、当面は相変わらず私たちが回収を担当する。
クロノとはまだ付き合いが短いので、うまく連携が取れるかはあやしいためだ。
無理に合わせるよりも、クロノは有事の際の戦力として温存することになった。

こうして新体制の下、私たちはそれぞれの思惑を持って行動することになる。



第14話「紅き魔槍」



ジュエルシードの位置特定はアースラ、その後の行動は私たちというのが基本になる。
学校の方には、なのはの事情に私も付き合うということで連絡している。
まあ、詳しい言い訳は士郎が何とかしてくれるろう。
急ぎのことだったので、うまい言い訳を用意する暇がなかったのだから、仕方がない。


現在私たちは、ジュエルシードの封印作業中。
と言っても、私は特に何もしていない。なのはたちの手に負えない事態になっても対処できるように、近くから様子を見ているだけだ。アースラにはなのはの訓練のためにも、私は手を出さず経験を積ませる方がいいだろうと言ってある。

まあ、さぼっているようなものなのだが、実際にはその裏で士郎とパスを使っての交信をしている。
『一応こっちは順調にいってるけど、そっちはどんな感じ?
 やっぱり慎重になり過ぎて、はかどりそうもない?』
横眼でなのはとユーノが、協力してジュエルシードで幻想種みたいな姿になった相手の動きを封じようとしているのを見る。
一度動きを封じ、その上からユーノがより強力なバインドで拘束する手筈だ。最後になのはが、その状態の相手にでかいのを撃ちこみ封印する。
今のところうまくいっているので、このまま二人に任せても大丈夫だろう。

そんなことを考えながら現在のお互いの状況を話し合っているが、ここでとんでもないことを知らされる。
『それが、フェイト達と連絡がつかない。
 拠点にも行ってみたけどいないし、預かってた鍵で入ってみたら、手紙があっただけだった。
 それも、内容的には協力関係を破棄するっていうものだった』
どうやら状況は悪い方へ移行しているらしい。
管理局は出てくるし、フェイト達は見失ってしまうし、最近いいことがない。

それと、その手紙というのは……
「今まで、ありがとう。
 管理局も出てきてこの件はもうすぐ片付くから、シロウは安心して元の生活に戻って大丈夫。
 これ以上私たちに関わっていると、シロウまで管理局に追われちゃうから、それは困るでしょ。
 これからは私たちだけでやるよ。
 たくさん手伝ってくれて、たくさん心配してくれて、本当にありがとう。
これでもう会うことはないと思うから、さようなら」
このような内容だったらしい。

文面をそのまま信じるなら、士郎に気を使ったのだろう。
だが、果たしてどこまで本当なのかは、本人にしかわからない。
あるいは、管理局が出張ってきたことで士郎が口実に使った「効率」が失われ、もう協力関係を維持されることがないと考えたのかもしれない。
または管理局に鞍替えして、自分たちが売られる可能性に思い至ったのかもしれない。
どれにしても、推測の域をでないものだ。

『うわぁ……。それじゃ、あの子たちの動きはもちろん、プレシアの方のこともわからなくなったってこと?
 最悪。事態が一気に進展して終盤が見えてきたところなのに、ここで一番の情報源がなくなるなんて…』
思わずうめき声が漏れそうになるのを、何とか抑え外面を整える。
アースラの連中も現場のことは見ているので、あまり挙動不審でいると怪しまれる。

『ああ。俺もいろいろ探して回っているけど、手掛かりはまだない。
 たぶん、まだジュエルシード探しを続けているはずだから、そっちで遭遇することもあるかもしれない』
フェイト達の動向を把握できていたのは、大きなアドバンテージだったが、それが失われては私たちの優位性はないも同然だ。
最後にすべてを出し抜くためには、より多くの情報が必要なのに…。

『いいわ。どっちみちこっちでも探してはいるから、何かわかったら連絡する。
 ただ、私が艦を降りる回数もそう多くはないから、結構間が空くかもしれない。
 アンタの方でも引き続き探して頂戴』
こうなっては、私たちにできるのはフェイトを探すことだけだ。
こっちで見つける前に、士郎の方で見つけてもう一度繋がりを回復できるのがいいのだけど。

『了解だ。なんとか探してみる。
 それとあの山猫だけど、まだ起きる気配はない。フェイトとの繋がりもなくなっちまったから、今は家に戻ってる。あそこの方が魔力は充実してるから、回復も早いはずだ』
どうやら、これまでの休眠期間が長すぎて、なかなか意識を回復できる状態まで持ち直せないようだ。
この分だと、意識が戻るのはいつになることやら。

できれば、プレシアが動く前に起きて欲しい。
フェイトからの情報もない今となっては、あの子が頼みの綱なのだ。
結局士郎にも完全には把握できなかったので、せめて本拠地の案内ぐらいはしてもらいたい。

そんなやり取りをしているうちに、なのはの封印作業が終わったようだ。
以前よりも効率的にやっているので、だいぶ腕をあげてきたように思う。
今はアースラからのゲートが開くのを待っている。
この子たちはクルーの面々とも仲良くなってきていて、すっかりマスコット扱いになっている。
リンディさんとしては、このまま欲しい人材なんて思っているかもしれない。

まあ、管理局に関わる分には割とマシな方なので、所属するかはともかく、なのはがコネを持つのは悪くない。
私は御免ではあるけど。

『こっちは終わったから戻るわ。交信終了。また出てきたら連絡するから、そっちもがんばりなさい』
士郎の方から連絡しようにも、アースラにいるうちはラインを使っても連絡が取れないので、必然私が下りた時に連絡することになる。
そうして私たちはアースラに戻った。


  *  *  *  *  * 


いま私は、クロノやエイミィと共に管理局のデータベースから情報を検索している。

実際に検索しているのはエイミィだが、そこへ私とクロノがそれぞれの意見を交えている。
「フェイト・テスタロッサ。かつてのSランクオーバーの魔導師と、同じファミリーネームだ」
フェイトの名前から、管理局側もプレシアとの関連性には気づいてきている。
そこから得た情報だと、かつてのプレシアは大の付く魔導師で、きな臭いこととは無縁だった。
昔大きな事故を起こし、それからは中央を追放されたらしいが、そこで何かあったのかもしれない。

「仮にその大魔導師ってのと繋がりがあるとして、その目的は何だと思う?」
管理局のデータから、何かわからないかと思って聞いてみる。
プレシアがやろうとしていることはわかっているが、何故それをしようとするかがわからない。
ジュエルシードの性質を考えれば、たとえ成功したとしても後には何も残らない。
私たちで言うところの「魔法」か「根源」に至ろうとしている可能性もあるが、元がまともな魔導師であったので、それは低いと思う。そもそもあれらは魔術師ならではなので、そういった存在そのものを知らない可能性が高い。

自分が巻き込まれる危険を冒してまでそれを使う以上、明確な目的があるはずだ。
その目的によっては、出そろった時点で発動させる可能性もある。

「う~ん。よくわからないなぁ。中央を追放された後の詳しい資料を探すには、まだ時間がかかりそう」
「やはりフェイト自身を捕まえて、直接聞き出すのが一番なんだが、居所がわからなければそれもできない、か」
実際には、たとえ捕まえてもわからないのでプレシア本人から聞くか、詳しい資料を見つけてそこから推察するしかないのだが。
こちらの方も当分進展はなさそうなので、少し落胆する。


  *  *  *  *  *


私たちがアースラに常駐してジュエルシードを探し始めて十日かが経った。
これまでの成果は三つ。

今までのことを考えれば、比較にならないスピードアップになる。
さすがに、設備と人員が整っているだけあって効率がいい。
だが、そう喜んでばかりもいられない。ペースが上がればその分、最終局面も近づいてくる。
結局、まだフェイト達の行方はつかめていない。

あの手紙が本心なのか、そうでないのかは不明だが、とにかく士郎はフェイト達との繋がりが切れてしまっている。
今やプレシアの動向を知る術はない。できれば情報が出そろうまで、最終局面が来るのは遅らせたい。
ただでさえ分かっていないことが多いのに、情報源まで失っては手の打ちようがない。
フェイトの方でも変わらずジュエルシードを捜索しているようで、すでに二つが持って行かれた。
動いている以上は士郎が見つける可能性もあるので、今はそれを待つしかない。

私にはプレシアの居場所はわかるので、いざとなればアースラを使って向こうに突入することはできる。
だが、そもそもどのタイミングで使うかわからないと、いつ乗り込んでいいかさえ分からない。
今すぐ突入して捕まえるというのも手だが、万が一逃げられると厄介だ。そうなったら、こちらが居所の分からない状態でジュエルシードの回収をするか、最悪の場合はそのまま無理にでも使うかもしれない。
できれば、不安要素をすべて潰した上での突入が望ましい。

士郎がフェイトから聞き出したジュエルシードの必要数には、残るすべてを集めたとしても足りない。
制御する方法はあるらしいが、もし必要数に届かない場合でも無理矢理行使することもありうる。
予期しないタイミングで使われれば、出遅れてすべてが終わってしまうかもしれない。

動機が分かれば、慎重に使うのか、それとも必要ならば無理にでも使うのかがわかる。あるいはいつ使用するかわかる情報源が必要だ。なのに、今はその両方がない。
先行き不安な状況に焦りが出てきたところで、事態は急展開を見せる。


現在私たちは、食堂でクッキーをつまみながら待機している。

ジュエルシードが発見されれば動くことになるが、それ以外では基本的に艦内の自由行動が許されている。
ただし、いつ出動要請があってもいいような状態でいることは必須だが。
ここのところ空振りが続いていて、思いのほか時間がかかりそうらしい。
私としては好都合だ。このまま情報が出そろうまで、しばらく停滞してくれる方がいい。

話題となっているのは、互いの身の上話。
なのはもユーノもなかなかに、寂しい幼少時代を過ごしていたようだ。

なのはが幼いころに父親である士郎さんが仕事で大怪我をし、当時は家族全員がそれぞれに忙しかったせいで、一人で留守番をすることが多かったという。桃子さんと恭也さんは始めたばかりで、まだ今ほど繁盛していなかった翠屋の切り盛りで忙しく、美由紀さんは士郎さんのお見舞いに行って、みんなよく家を空けていたそうだ。
この子が人に迷惑をかけるのを、人一倍避けようとするのはそのせいか。周囲の人たちが大変な時に、当時のこの子にできたのは迷惑をかけず、手を焼かせないことだけだ。それがいまでも影響しているのだろう。
このくらいの年なら、もっとわがままに生きていてもよさそうなのに、なのはは自分を抑える傾向が強い。周りに心配させないように、「良い子」であることを自分に課している。
まだ子どもだというのに、面倒な生き方をしているものだ。

それに、その時のことを話すなのはの表情は、いまも当時の寂しさを引き摺っているのがうかがえる。
僅かな間だが、表情が曇っていた。すぐに笑顔になり、いまはもう平気と言うが、さてどこまで本当なのやら。あるいは、本人さえも気付いていないかもしれないな。

以前から感じていたが、どうもなのはは家族の中で浮いている。
剣で繋がっている父と兄や姉。結婚してかなり経つのに、新婚気分丸出しの両親。兄と姉は剣以外にも頻繁に店を手伝うことで、母とのつながりも深い。だが、まだ子どものなのははほとんど店も手伝えないし、剣の道に生きているわけでもない。強いてあげるなら桃子さんとの繋がりが最も強いが、それでも他の家族のそれに比べると、どうしても弱い印象がある。
家族同士の繋がりが強いせいで、その中に入っていきにくいのかもしれない。幼少時代のさびしい経験や、今も家族の輪の中に上手く入っていけないことが、他者との繋がりを強く求めさせるのだろう。そのことが、今のなのはの在り方に影響を与えているようだ。
繋がりを失わないために、迷惑をかけず、他人に頼ってもらえる自分を作り上げている。戦い方を教えてくれと言ったのも、身を守るためというよりも足手まといになり、この一件から身をひかせられることを恐れたからかもしれない。この子の向う見ずなところは、もしかするとこれが原因なのかも。

士郎ほど根が深いわけでもないし、深刻な欠陥を抱えているわけでもないが、やはりこのままというのは良くないか。
私が何とかするという手もあるが、それもさすがにお節介が過ぎる気もする。
これはなのはの心のかなり深いところに関わることなので、安易に手を出すべきではない。
やるなら一生面倒見るくらいの覚悟がいる。
知らないのならともかく、それが必要とわかっている身で覚悟もなしに手を出すのは、かなり無責任だ。
中途半端が一番してはならないことなのだから。

それになのはに必要なのは、私のようなタイプよりも、くじけそうになった時にそっと支えてくれるような相手の方がよさそうに思う。言うなれば、縁の下の力持ちタイプだろう。うん、私には一番向かないな。
ただでさえ士郎のことで手一杯なのに、これ以上背負い込むのは苦しい。適任者が出てくるまでの間、無茶し過ぎないように見張っておくぐらいが、ちょうどいいかな。
それに適任そうなのに心当たりもあるので、私の出る幕もないかもしれない。

対して、ユーノには物心ついたときから両親がおらず、遺跡探索を生業とする一族全員を家族として過ごしてきたという。
だが、そのことはあまり気にしていないようだ。両親こそいなかったが、周りには支え、守ってくれる大勢の家族がいたのがよかったのだろう。
なのはのように引き摺っているような印象はないし、今までの様子からも、特に危うさのようなものは感じられない。責任感が強いことや、一人で物事を何とかしようとする傾向は、幼いころから遺跡発掘の現場などで働いてきたために養われたものだろう。
よく言えば自立心が強く、悪く言えば背伸びをし過ぎているといった程度だ。

ユーノは性格だけでなく、能力的にもサポートに向いているので、なのはとは相性がいいだろう。ユーノ自身もなのはに好意を抱いているようだし、なのはもどの程度かはわからないが好意的だ。互いに信頼関係も出来上がっているし、恋心云々がなくても、いいパートナーになれるだろう。
それならば、私がでしゃばる必要もなさそうだし、なのはのことはユーノに任せておくのが一番かな。何かあった時は、ユーノを手伝ってやればいい。

そんな考察をしていると、私にも話が振られる。
「ねぇ、凛ちゃんってお父さんから魔術を習ったんだよね?」
なのはたちには、魔術は基本秘匿し一子相伝するものと教えているので、確認するように聞いてくる。

「はじめは父さんから習っていたわよ。ただそれも、基礎の基礎ってところね。
 ちゃんとして指導は兄弟子から受けたから、ある意味アイツも私の師になるのよね」
その兄弟子が父さんを殺した張本人であり、素知らぬ顔で父さんの葬儀や私の指導をしていたことを思うと、つい苦い顔をしてしまう。
全く、とことん性根のひん曲がった奴だったわ。

「あ、そうだったんだ。じゃあその人も魔術が使えるんだよね。どんな人なの?
 それに、その人からほかの魔術師さんのことを教えてもらえないの?」
もっともな質問だが、正直アイツのことを思い出すのは気が引ける。
父さんのことがなくても、綺礼のことは嫌いだったし。
あまり人を嫌うということのない士郎さえ、即嫌ったほどの性格の悪さだ。

「本業は神父だったけど、魔術を使ってた似非神父だったわね。
 人の心の傷をネチネチいたぶるのが好きで、神父としては非の打ちどころはなかったけど、人間としては性格最悪だったわ。もう死んでるから、今頃は居心地の悪い天国で針の筵じゃないかしら」
あまり思い出したくないが、そういえばそんなことを昔言ってやったことがあった。
もし天国なんてものがあれば、本当にそうなってるかもしれない。
是非その光景は見てみたい、さぞかし溜飲が下がるというものだろう。

「あ、そうなんだ。でも神父なのに性格最悪って、それでいいのかな?」
ユーノが心底不思議そうに聞いてくる。
聖堂教会の方の所属だったとはいえ、あれでよく神父になれたとは私も思った。

「だから、神父としての仕事や振る舞いには問題なかったの。
 ただ趣味というか、嗜好が最悪だったのよ」
禁欲的で信心深く、人の相談に嫌な顔一つせず応じ、他人には平等に接し、罪深い者に対しても慈悲深かった。
これだけなら、確かに神父として問題はなかったが、人として根本的なところが破綻していたのだ。

なのはとユーノは、いまいち釈然としない顔をしている。
神に仕える神父に、そんなのがなっていいのか考えているようだ。


そうして、穏やかな時間をまったり過ごしているところで、無粋なアラートが鳴り響いた。
やれやれ、お仕事に行くとしましょうか。

私たちは急いでブリッジに向かい、詳しい状況を確認しに行く。

そこで目にしたのは、海上で竜巻と雷相手に大立ち回りを演じる、フェイトとアルフだった。
海上ということは、向こうも手詰まりになってきて、起死回生に海に以前のように魔力を送り込んで強制発動させたのだろう。

「どうやら先を越されたようね。で、幾つ発動してるの?
 この様子だと、今までと違って一個ってわけじゃなさそうだけど」
あまりの光景に、絶句しているなのはたちを余所にクロノに問う。
一つや二つが発動しているくらいなら、多少消耗していてもフェイトなら封印できるはずだ。
これだけ手こずっていることと、今までの比ではないこの様子からして結構な数が発動しているのは間違いない。
出ていくにしても、情報が必要だ。

「数は残りすべての六個だ。まったく、なんて無謀なマネをするんだ。
 あれすべてを封印するなんて、個人が出せる魔力の限界を超えている」
せっかく事態が停滞していたのに、ここにきて最後まで突っ走ってくれたわね。
これで最終局面まで、あと一歩じゃないの。

それにクロノの言うとおり、あれをあの子たちだけで何とかするのは無理だ。
一つを封印しようとしている間に、他のやつに襲われている。
さっきから避けるだけで精一杯のようだ。

「あの、アーチャーさんはいないんですか?」
絞り出すようになのはが聞いてくる。
フェイトが動く以上士郎もいるはずなのに、なぜ二人だけでやらせているのかと聞きたいのだろう。

「いや、今のところ現場、およびその周辺に彼の姿は確認されていない。
 君たちの話だと、彼は効率を考えて協力していたようだし、もしかしたら見限られたのかもしれない」
効率というなら、組織で動くこちらの方が優れている。
その上、管理局と敵対するのはリスクが高いので、そうしたと考えているのだろう。
実際には手を切ってきたのはフェイト達だが、その可能性はないとしているようだ。

「そんな!? じゃあわたし、今すぐ現場に……」
信じられないという風に、なのはが反応する。
まだ幼いこの子には、協力者を見限って見捨てるなどというのは信じたくないことなのだろう。
ただでさえなのはは、人一倍思いやりのある子だからなおさらだ。

「その必要はないよ。放っておいても自滅する。
仮にしなかったとしても、消耗したところを捕らえればいい」
そんななのはを制するように、クロノの冷静な声が響く。
当然だ。わざわざ敵を手伝ってやる必要はないし、このまま待っていればジュエルシードとフェイトが一度に手に入る。まさに一石二鳥の好機、これを逃す手はない。
この間にも、フェイトのデバイスからは刃が消え、アルフは雷に拘束され窮地に陥っている。

「残酷に見えるかもしれないけど、私たちは常に最善の方法を取らないといけないの。
 それだけ大きく、重いものが私たちの後ろにあるの」
リンディさんの言っていることは正論だ。
アーチャーがそうだったように、多くを救おうと思うのなら小数を切り捨てるのも必要だ。
管理局が公的な組織である以上、アイツのように徹底することはできないだけマシかもしれない。
だが、まだまだスレていないなのはには、そんなことは納得できないようだ。何とか反論しようと前に出るが、これを否定できる言葉が出てこないようで、「でも…」と言ってその口を閉ざす。

「確かにそのとおりね。せっかく好都合な状況なんですもの、フェイトには精々がんばってもらうのが一番ね。
……ところでなのは、アンタはどうしたいの?」
だが、それはあくまでも管理局側の理屈にすぎない。私たちは管理局の人間ではない、ならばそれに従わなければならない義務もない。
こんなことは心の贅肉どころか税金なのはわかっているが、それでも今のうちは子どもらしく、少しはわがままを通してもいいはずだ。

「え?」
突然かけられた言葉に、なのはは何を聞かれたのかわからないようだ。
こんな状況でなければ、鏡でも見せてやりたいな。それだけ間の抜けた顔をしている。
全く、やっぱりまだまだ子どもね。女の子が、人前でそんな顔をするもんじゃないわよ。

「アンタはもっとわがままを言うべきよ。
 子どものうちは周りに迷惑を思いっきりかけて、大人になったらそれを返済すればいいわ。
 もう一度聞くけど、アンタはどうしたいの?」
リンディさんをはじめ、アースラのスタッフたちが驚いた様子でこちらを見ている。
なのはたちはともかく、私がこんなことを言うなんて思ってもみなかったのだろう。

別にその認識は間違っていない。実際、私は別にフェイトを助けようとは思わない。
どうせそのうち、士郎が気づいて出張ってくるはずだ。
空を飛べないアイツでは援護は難しいが、遠距離攻撃は士郎の得意分野だ。何かしら手を考えて、うまくやるだろう。

その意味で言えば、管理局側にとっては放っておく方が面倒になる。
なのはを行かせた方がいいと思うが、私がそれを言うことはできない。言えば、士郎との繋がりを曝け出すことになる。
そうならないようにするには、なのは自身の意思でいかせるしかない。私にできるのは焚きつけることだけだ。

それに、どうもなのはは自分を抑え過ぎる傾向がある。
やはり、人生楽しまなければ嘘だ。
このあたりで、一度単純に自分の思うようにしてみるのもいい。

「なのは、行って!! 君の思うとおりに。ゲートは僕が何とかする!」
そう言って、ユーノはゲートを無理矢理に開く。
こいつは今までなのはに助けられてばかりだった。
だからこのあたりで、その恩返しでもしたいのかもしれない。
まあ、単になのはにいいところを見せたいだけかもしれないが。
その言葉に後押しされて、なのはがゲートに飛び込む。

「君たちは!!?」
クロノが驚いたように叫んでいる。
アンタの判断は正しいし、私でもそうするでしょうけどね。でも、この子たちがそれに縛られる理由はないわ。
子どもでいられる時間は短いのだ。今のうちでなければできないことは多い。
なのはたちは、今まさにそれをしようとしている。
悪いけど、その邪魔はさせないわよ。

「あら、邪魔はさせないわよ。
それに契約にもあったでしょ? ある程度はこっちの判断で動くって、今がその時よ。
ユーノ、アンタも行きなさい。私は飛べないし、ここで足止めでもしてるわ」
魔術回路を起動させてゲートの前に立つ。
子どもが子どもらしくしていられるように支えてやるのが、大人の務めだろう。
裏方なんて性に合わないけど、飛べない私が行っても仕方がない。向こうのフォローは士郎に任せよう。

ユーノも、なのはに続いてゲートに飛び込んでいく。
「ごめんなさい! 高町なのはとユーノ・スクライア、指示を無視して勝手な行動をとります。
 あとでちゃんと謝りますし、怒られもします。でもわたしは、フェイトちゃんを見捨てるなんてできません!」
しかし、本当に律儀ねぇ。別に今そんなことを言わなくてもいいでしょうに。
自分で正しいと思ってやるんだから、胸を張って堂々としてればいいのよ。
後でこってり絞られるでしょうけどね。まあ今回は私も共犯だし、付き合ってあげるわよ。

そうして、光と共に二人の姿は消えた。



Interlude

SIDE-フェイト

残る六個のジュエルシード。
そのすべてを相手にしての封印作業は、全く上手くいっていない。

こんな時にシロウがいたら、そんな考えを必死に振りはらう。
シロウはいない。わたしから手を切ったんだ。そんなことを考えても意味はない。
今はとにかく、目の前のジュエルシードの封印に全身全霊を傾けないと。

「フェイト、危ない!!?」
アルフの声が響く。
気がつくと、ジュエルシードのおこす竜巻がわたしのすぐ目の前にまで迫ってきていた。
迎撃も回避も間に合わない。左右も竜巻でふさがれている。
こうなったら防御魔法に魔力を思いきり注いで、力任せに受けるしかない。
これだけの魔力の宿った竜巻を受けて、無事でいられる保証はないけど、できることはそれしかない。

だから今のうちに、ちゃんとみんなに謝っておかないと…。
「母さん、アルフ、それにシロウ。ごめんなさい。わたし、ここまでかもしれな……」

『いいから前に出ろ。そのような泣き言、聞く耳持たん』
そんな、もう聞くことのないはずの声が聞こえた。

「…え?」
諦めかけ、ただ身を縮め強張っているだけだった体に、再び力が戻ってくる気がした。同時に、心には温かいモノが満ちていく。
この耳ではなく、心に伝えてくる思念は、間違いなくわたしから手を切った、協力者のものだったはずだ。

「ちょっ…、ま……」
戸惑っている場合じゃない。
彼の性格はよく知っている。
彼は前に出ろと言った。なら彼は、もう前に出るしかないことをしでかしたということになる。
混乱している場合じゃない。わたしは弾かれたように、形振り構わず全速力で竜巻に向かって突っ込む。
この竜巻に突っ込むなんて危ないどころの話じゃないけど、彼がそう言った以上、それをしない方が危険なのは間違いない。
わたしが動き出したのと、それが目の前を通り過ぎて行くのはほぼ同時だった。

ヒュッ!

わたしが竜巻と接触する直前、目の前を赤い閃光が通り過ぎる。
目の前にまで迫っていた竜巻は、その凄まじい力にもかかわらず、赤い一矢で容易く両断されその形を崩す。
崩れた竜巻がそよ風となり、わたしの頬を撫でる。場違いだけど、それがすごく優しくて気持ちよかった。
まるでシロウがそこにいて、わたしを安心させようとしてくれているかのような、そんな錯覚をした。

わたしは前へと進みつつ、目の前が突然開けたことに呆然とする。
その直後、轟音と共に無数の矢が降ってくる。

ダダダダダダダダダン!!!!

上空から降り注ぐ矢は、まさに豪雨。
数え切れないほどの矢が降り注ぎ、わたしの進路上以外の全てを矢が通過する。

後ろを振り向くと、先ほどまでわたしのいたところを通って行くモノもある。あのまま留まっていたら、きっと巻き込まれていただろう。シロウが言っていたのはこういうことか。
でも、もしわたしが動かなかったら、どうするつもりだったんだろう…。きっと、動くと信じてやったんだろうけど、それにしたって危ないことには変わらない。
信頼してくれてるのは嬉しいけど、なんだか複雑だ。一言ぐらい文句を言っても、罰は当たらないと思う。
それだけ後ろを見た時には蒼褪めたんだから。

空から降り注ぐ無数の矢を横眼で見ると、その中にさっきわたしの目の前を通り過ぎて行ったものと同じ、赤い矢があることに気づく。それらは他の竜巻へと向かい、当たると竜巻を紙の様に引き裂き散らしていく。
残りの矢も周囲で猛威を振るう雷へと向かい、すべて打ち払っていく。

鳴り響く雷の轟きでさえ霞んでしまうほどの轟音が周囲を満たす。
雷であろうと竜巻であろうと、わたしの行く手を阻み、追いすがってくる全てを撃破していく。

いつの間にかわたしの周りは、竜巻や雷の真空地帯となっていた。

Interlude out



SIDE-士郎

『ふう、何とか間に合ったようだな。
まったく、無茶もほどほどにすることだ、フェイト。寿命が縮むかと思ったではないか』
フェイトはまだ事態の変化に対応しきれていないようなので、俺の方から改めて念話を送る。

フェイトやアルフの手掛かりを探して、今日は森林地帯を中心に捜索していた。
そこへ、今までにないほどのジュエルシードの発動を感知した。
いつもの発動なら気付かなかった可能性もあるが、これほどの大規模ともなれば感知能力の低い俺でもさすがに気づいた。

そこから、大急ぎで近くにあった見晴らしのいい小高い丘の上まで駆け上がった。
発動を感知した方向を見ると、そこには竜巻や雷を相手に悪戦苦闘するフェイト達の姿を確認したのだ。
あまりの無茶に僅かな間呆然とするが、思考を切り替え、警告から少し遅れて遠距離狙撃を敢行したわけだ。

距離はせいぜい二キロ程度。これくらいなら、問題なくフェイトたちを外して狙うことができる。
手始めに、フェイトに迫っていた竜巻をかき消すため、「破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)」を放った。
どうやらジュエルシードの影響を一番受けているのが六本の竜巻らしく、並の攻撃では対処できそうになかったからだ。ジュエルシードによって引き起こされている竜巻なら、それを支えているのは魔力だろう。それならば、穂先に魔力を遮断する効果を持つ槍でその魔力の流れを断ち切ってやればいい。

魔力の流れが断ち切られた竜巻は、ジュエルシードからの支配を逃れ雲散霧消していった。ただ、それは断ち切られた先からなので、海から伸びる根元の部分は健在だ。おそらく、ジュエルシード本体はまだ海中にあるのだろう。
これではこちらからは手が出せない。

魔力の発生源でも攻撃しない限り、ゲイ・ジャルグでは竜巻を完全に消滅させることはできない。
あくまでもその能力は魔力の遮断でしかなく、破戒はできないからだ。「破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)」ならできるだろうが、それも一時的だ。竜巻を生み出しているのはジュエルシードなので、根本をどうにかしなければ、また竜巻が発生する。

五回も六回も真名開放するよりかは、こちらの方が消費する魔力は少ない。この後の展開次第では、さらに魔力を使うこともあるので、できる限り消費は押さえておきたかった。そのためにゲイ・ジャルグを使ったのだ。
だいたい、遠隔での真名開放なんて器用なマネは俺にはできない。よって、ルール・ブレイカーの使用はこの場では元から無理だ。

しかし、放っておけばいずれ竜巻は復活する。そこで二射目からはできる限り根元近くを狙うようにして、その時間を稼ぐことを念頭において攻撃した。その間に、何とかして封印しないと……。
直接ジュエルシードを攻撃できれば、発動そのものを止めることもできるかもしれない。だが、正確な位置もわからず当てずっぽうに攻撃しても意味がないので、確固撃破に終始したのだ。
そのまま、フェイトの進行方向とその近くで暴れまわっていた竜巻にも同様の攻撃を加えて蹴散らし、比較的に力の弱そうな雷は通常の矢で粉砕した。

ついでに、アルフを拘束していた雷もかき消した。
まぁ、こんなことができるのもするのも俺ぐらいだろうな。はずして攻撃したといっても、アルフの時など体から1mも離れていないところを射たわけだし。
普通に考えれば、フェイト達の行動以上に無茶な狙撃をしたことになる。
緊急事態だったし、このことは時間もなく絶対にミスはしない確信があったということで、許してもらえるといいのだが。

俺の場合、視認することができて矢が当たるイメージさえ見えれば、ノータイムで射ても決して外さない確信がある。
そして、そのイメージが見えたからこそ、何のためらいもなく射ることができたのだ。

むしろ不安だったのは、念話の方だ。
俺の念話は、思念を送るためには対象を視認することが必須だ。
一応フェイトのことは見えていたので、理屈の上では通じるはずだったが、さすがにこれだけ離れていては届くか心配だった。

迷っている時間はなく、警告を送るのと同時にゲイ・ジャルグを放ち、道を作った。
また残りの狙撃は、念話を送るのより少し遅らせるくらいしかできなかった。
位置的に、どうしてもフェイトのいたところも射る必要があったし、目の前の竜巻以外にも、周囲に脅威が迫っていた。
そのため念話で警告するので精一杯で、フェイトが動き出すのを確認せず狙撃を行うしかなかった。

これは賭けだった。
もし届かなかったら、フェイトが離脱することもないので、俺の攻撃に巻きまれていたかもしれない。
たとえ届いても、フェイトが動かなければ結果は同じだっただろう。
だが、賭けにでないなど論外。グズグズしていたら、今頃フェイトはよくてもボロボロ、最悪の場合命にかかわる事態になっていても不思議じゃなかった。
だから俺は、危険と知りつつ賭けにでた。
そして俺たちは、その賭けに勝った。

どうやらちゃんとフェイトに届いていたらしく、俺の思念に反応し前へと進みだしたのには安堵した。
フェイトの方も、俺が何かをしようとしているのには感づいたのだろう。一瞬の停滞のあと、大急ぎで開いた道を通り、その場から離れてくれた。
前に出るように指示はしていたので、それに従い無事危険地帯を離脱した。
まだ事態は解決していないが、とりあえず窮地は脱したのでこれで一安心だ。

気づくとフェイトの頭上から、なのはと知らない少年が下りてきた。
凛から聞いた特徴だと、あれがユーノということになるのだろう。
管理局が動かない可能性もあったが、ずいぶんと甘い考えの持ち主がいるのかもしれない。
もしくは、あの二人が無理を通してやってきたか。そちらの方が可能性は高そうだ。

「だが、ちょうどいいな。これならすぐに封印できそうだ。
『聞こえるかねフェイト、それに高町なのは。邪魔なものは私が蹴散らす。その間に、君たちで協力して封印にあたれ。残りの者は二人のサポートと、私の攻撃の余波を防御しろ。できるな!』」
二組の魔導師たちに指示を出す。
なのはも協力するために来たのだろうから、大人しく言うことを聞くはずだ。
フェイトはかなり消耗している様子だが、なのはと協力すれば問題はないだろう。
ゲイ・ジャルグでは点の攻撃しかできないが、確かめたことはないが、あの二人なら広範囲に向けての封印もできると思う。それだけのスペックは持ち合わせている。
ならば俺がすべきことは、二人が邪魔モノなしに封印ができる状況をセッティングすることだ。

『『は、はい!!』』
有無を言わせぬように少し強めに言ったが、二人とも元気良く返してくれる。
残りのお付きの者たちも問題はなさそうだ。

一応今は小康状態だが、徐々に竜巻はその力を回復してきている。
さっきの状態に回復するまで、それほどかからないだろう。
中途半端な攻撃では意味をなさないし、いちいち各個撃破していては、時間と手間がかかり過ぎる。
ならば弱っている今のうちに、対軍宝具の一投で全てまとめて吹き飛ばすのがいいと結論する。

「『投影、開始(トレース・オン)』」
創りだすのは、かつて一度はこの心臓を貫いた必殺必中の槍。
ケルト神話に名高い大英雄、クランの猛犬「クー・フーリン」が用いた因果逆転の魔槍。
こいつの本来の使い方で、一気にケリをつける。

俺はそこで、獣のように大地に四肢をつき、目標を見据える。
狙うは、規模を取り戻しつつある六本の竜巻。フェイト達を巻き込まないように慎重に狙いをつける。
魔力を紅き呪いの槍に込めていくのと同時に、周囲の魔力が魔槍に喰われていく。
この場に魔術師か魔導師でもいれば、そのあまりの異常さに恐怖すら覚えただろう。

腰を上げ、全身の力を足に溜める。
頭のなかで号砲を撃ち、一気に走りだす。
足に強化を施しての疾走は、常識的に考えれば人間にはあり得ないはずの速度を可能にする。
約50m。短いながらも充分な助走の後、思いきり跳躍する。速度が異常なら、その跳躍も異常。
一般で、人間の限界値と考えられるギネス記録をたやすく凌駕している。

高く舞い上がり、目標を視界に収めたまま、弓を引き絞る様に大きく振りかぶる。
「『突き穿つ(ゲイ)――――――――死翔の槍(ボルク)』!!!!!」
紡がれる言葉に因果を逆転させる“原因の槍”が呼応し、それを全力で投擲する。

音速を超える速度で、槍が目標めがけて飛んでいく。
俺が着地する前に槍は着弾し、炸裂弾のような爆発が起こすのが見えた。
その馬鹿げた威力で、周囲にある竜巻や雷を吹き飛ばす光景を確認しながら俺は着地した。

後には、先ほどまでの荒れようがウソのように凪いだ、海と空があった。
ゲイ・ボルクを回収されても困るので、そのまま投影を破棄し消滅させる。

見てみると、あまりのことに呆気に取られるフェイトとなのはの姿があった。
『何をしている。竜巻と雷は治まったのだから、さっさと封印したまえ。
 また、いつ動き出すかわからんのだぞ』
念話で言ってやると、やっと弾かれたように動きだす。
はじめは協力することに戸惑っていたフェイトも、意を決して行動に移る。


「しかし二人とも、なんて出力をしているんだ。
 これなら俺の手助けなんてなくても、何とかなったんじゃないか?」
あの子たちの成長と潜在能力には驚くばかりだ。
二人が順調に作業を終えるのを確認して、立ち去ることにする。
このままここに長居しては、管理局が動くのは間違いない。早めに移動する方がいいだろう。

前回相手にしたクロノだけなら逃げるくらいは問題ないが、向こうには他にも戦える人員がいるらしいし、それ全員を相手にするとなると厄介だ。
戦力的にはクロノにだいぶ劣るらしいが、それでも数が多いのは面倒だ。あまり明確な敵対はしたくないし、状況が苦しくなれば怪我をさせないで済ませるのは難しくなる。この先彼らの戦力が必要になることもあるかもしれない以上、それは避けたいのでさっさと逃げることにしよう。

しかしそれだけの戦力があるのなら、何もなのはのような子どもに協力させなくてもよさそうに思う。ジュエルシードの封印ができるほどの術者は向こうにもクロノくらいしかいないらしいが、それにしても俺としてはやはり納得がいかないな。数にモノを言わせて何とかならないのだろうか?

戦う意思があるのなら幼くても、非力でもそれは紛れもない戦士だ。戦いの場にあって無意味だとは思わないし、言わない。だがそれとは別に、やはり子どもを戦わせるのには賛成しかねる。
戦いがおこれば多かれ少なかれ犠牲が出るし、必ず何かしらの爪痕を残す。それらは、その場に立ち会った者全員の心と人生を縛る枷となる。
あの子たちはまだ幼く、多くの可能性に満ちた未来がある。それを縛るようなことになるのは避けたいし、体だけでなく心にもいらぬ傷を負ってほしくないのだが。

戦うかどうかを決めるのはあの子たち自身の問題で、俺がとやかく言えることではないのはわかっている。俺のこの思いも、大きなお世話かもしれない。
そもそも多くの命を奪ってきた俺に、今更そんなことを願う権利などないのだろう。この手で殺めた者達には、戦場に立つ意志などなく、問われるべき罪のない人たちもいた。その中には大人だけでなく、守られなければならない子どももいた。「仕方がなかった」と言ってしまえば少しは楽になるのかもしれないが、そんな言葉で許されることではない。どんな理由があれ、俺がこの手で奪ったことには変わらない。

そんな俺があの子たちのことを案じるなど、偽善もいいところだ。フェイト達が俺の過去を知れば、軽蔑するか、それとも恐れるか……。さて、どちらだろうな。
だがせめて、自身の歩んできた道筋を後悔することなく「間違っていなかった」と誇れるような生き方をして欲しい。
そう、アーチャーのような思いだけはしないでくれること。それぐらいは、望んでもいいはずだ。

最後に見た様子だと、なのはが「友達になりたいんだ」ということを言っていたのが、唇の動きから見てとれた。
もしそうなれば、あの二人はいい友人になれるだろう。
先ほど視認した六個のジュエルシードをどう分けるかは、二人に任せてよさそうだ。

そうして背を向けて歩き出すと、またしても大規模な魔力を感知する。
ジュエルシードが再度発動したかと思い、振り返る。
そこには、さっきまでとは違った魔力を帯びる、紫色の雷光が降り注いでいた。

「フェイト!!? なのは!?」
思わず叫びにも似た声と念話で呼び掛けるが、返す余裕がないのか返事がない。

このタイミングで、味方もろとも管理局が攻撃するとは思えない。
だとするとやったのは、当然一人しかいない。
「くっ! プレシアめ、本当になりふり構わずか」
無意味と知りつつも駆け寄ろうと走り出す。向こうは海上、助けるには飛んで行くしかない。
そもそも俺は飛べないし、たとえ飛べたとしても、今まさに落ちようとしているフェイトの救出には間に合わない。そうとわかっていても駆け寄らずにはいられない。
あのまま落下すれば大怪我ではすまない。
それを、何とか間に合ったアルフが抱きとめる。

その後、アルフがジュエルシードを回収しようとしたところをクロノが妨害し、互いに半分ずつ回収した。
アルフはそのまま逃走し、俺もとりあえず家に戻ることにした。

これで舞台は、最終局面を迎えることになった。



Interlude

SIDE-クロノ

海上での一件から数時間が経った。

あの時回収できたジュエルシードは六個中三つ。
なのはたちが余計なことをしなければ、あるいは凛が邪魔をしなければ、すべてを回収することもできたかもしれないのに……。

いや、今更悔やんだり三人を責めたりしても仕方がない。
すでに過ぎたことだ。今は、今すべきことをしなければならない。
三人には今まさに艦長直々にお叱りを受けているし、僕がすべきことは別にある。

それは、先の戦闘でアーチャーがとった行動の検証だ。
わからないことだらけの奴なのだから、少しでも情報が欲しい。
今回かなり派手なことをしていたし、何かしら得られるものがあるといいのだが。

「しかし、以前使った楯といい、今回の二種類の槍といい、まったく出鱈目な威力だ」
僕たちが能力を確認した、彼の使う概念武装とやらは三つ。
前回戦った時に使った、とてつもなく高い防御能力を持つ楯。
それに、今回フェイトを助けるために最初に使った槍と、竜巻を薙ぎ払うために使った槍がそうだ。記録された映像から、二つの槍は色こそ似ているが、細部が異なるので別の槍であることが分かっている。

他にも双剣や外套、それに僕を引き寄せる時に使った鎖もその可能性が高いが、これらは今のところ詳しいところはわかっていない。
僕たちが確認していないのだと、ジュエルシードの破壊に使われたという歪な矢もその可能性がある。一体いくつ持っているのやら。

「そうだねぇ。今回竜巻を吹き飛ばしたのなんて、二キロ近く離れたところから投げて、しっかり届いてるし。どういう腕力とコントロールをしてるんだろう。この人、本当に人間?
 その上、破壊力はオーバーSの最大攻撃にも引けを取らないし、速度は軽く音速越えてるって……。いくらなんでもあり得ないでしょ、これ」
エイミィはもう驚く気すらしない心境らしい。
人間云々はともかくとして、それ以外の点に関してはまったくの同感だ。
僕達魔導師の常識からは、明らかに逸脱している。

長い年月を経たことで、通常とは違った魔力を帯びるようになったのが概念武装らしい。
理解はできないが、そういうものがあると無理にでも納得するしかない。
詳しいことは、この件が終わってから調べればいい。
中には特殊な能力を持ったものもあるらしく、今回使用していたのもその一種かもしれない。

「それだけじゃない。一撃の破壊力もそうだが、通常攻撃でも恐ろしく正確に狙撃していた。
 普通なら視認することだって不可能なはずなのに、アーチャーと名乗ったのは伊達ではないみたいだ」
弓兵を名乗っていたし、僕との戦闘では、その名に恥じない弓の名手であることも示していた。
当然、遠距離攻撃を得手としていることは予想していた。

しかしどういう視力をしていれば、二キロ先の出来事を正確に把握できるんだ?
あの距離では顔どころか、人がいるかの判別さえできないと思う。精々何かが閃いていて、竜巻が発生しているのが辛うじてわかる程度だろう。
いくらなんでも肉眼ではないだろうし、特殊な魔術でも習得しているのか、それとも望遠鏡のような道具でも使ったのだろう。そうでなければ説明がつかない。

それに、これほどの離れ業をやって見せるとは思っていなかった。
まるで、吸い込まれるように矢が当たる。もちろん外したものなどない。
神憑っている、としか言いようのない技量だ。

これでは状況によっては、こちらの射程外から襲撃されるかもしれない。
そうなっては手の出しようがない。
何より、あれだけの距離があって、その狙撃は強力かつ正確無比。管理局の中でも、あんな真似ができる人は数えるほどしかいないだろう。いや、もしかしたら本当にいないかもしれない。狙いすましての一射ならともかく、彼はそれを僅かな遅滞もなく連射していた。

人間の感覚は、時に機械以上の精密さを可能とする。だから、機械にもできないことを可能にする、というだけなら別に不可能ではない。
だが、それにも限度がある。彼は使い魔を捕らえていた細い雷さえ、正確に撃破している。わずかにずれただけで、使い魔にも当たっていたかもしれない。そんな状況では、誤射なんて許されない。
それでも迷いなく射てたということは、自分の狙撃にはあの神業が可能だ、という自信があったのだ。それは、もはや確信と言っていいレベルのはずだ。
それだけじゃない。あれはできて当然だとしても、ミスをしてもおかしくない重圧がかかるはずの場面だ。技術的に、また精神的にもこれ以上ない程困難な状況下にあって、まったく揺るがない鋼の精神力を彼は備えている。

少なくとも、僕にそれを可能とする技量があったとしても、絶対にマネはできないし、しようとも思わない。臆病と言われるかもしれないが、あれはまともな神経をした人間にできることではない。
武装も技術も規格外だが、一番の規格外は彼の心そのものだ。

これだけも十分脅威なのに、もっと厄介な事実が判明した。
「最悪なのは、初めに使った槍だ。こちらは弓で射たようだけど、問題はその能力だよ。
 詳しいデータがないし、映像から推測するしかないけど、おそらくAMFのように魔力の結合に干渉できるんじゃないかな。
 そうでないと、あの竜巻を簡単に貫いて、なおかつ散らしてしまった理由が説明できない」
もしこの推測が当たっていたなら、彼は僕達魔導師の天敵だ。
魔法を使うために欠かせない魔力の結合を、あの槍は散らすことができる。
ジュエルシードの魔力を散らした以上、最高濃度のAMFに匹敵するだろう。

それの意味するところは……
「うわぁ……それってつまり、防御不可ってこと? それに大威力の魔法も無力化されるよね…やっぱり。
 接近戦なんて危なすぎるし、距離を置いての戦闘も、あの槍があったら余程手数を多くしないと意味がない、か。
もし広範囲に影響が出せたら、本当に逃げるしかないよ…」
エイミィの言うことは正しい。効果範囲にもよるが、一対一での戦闘は自殺行為だ。
魔法の使えない魔導師は、その戦力の大半を失う。
こちらの攻撃は掻き消され、その刺突は容易くバリアジャケットを貫き致命傷を与える。
僕達魔導師にとっては最悪の相性だ。魔導師を殺すうえで、これ以上ない武器を彼は持っている。

それにエイミィの言う「もし」が現実に起これば、こちらは無力化される。魔法そのものが完全に使用できない状態になれば、僕らには勝ち目がない。機動力は低下し、攻撃力は貧弱、防御魔法は無意味、これではそもそも戦うことができない。

仮に彼自身も槍の影響を受けると仮定しても、はじめから槍とは別に強力な武装を用意していれば、結果は見えている。そもそも、あの槍だけで事足りるだろう。
以前の戦いの時に見た彼の剣技を考えれば、おのずと白兵戦のレベルも知れる。自分の持つ武器を扱えないなんて間抜けなことがあるはずもないし、やろうと思えば人数次第で、対峙する者全員を殺すことだって不可能ではない。
あの槍はそれだけ危険なものだ。

そして、それがあり得ないと断言できないのが、あの男の一番厄介なところだ。
「それに、こいつの行動はどうも不自然だ。
 何を考えているのかわからない不気味さがある」
この男の戦力は確かに脅威だ。
だが本当に怖いのは、ここにきて目的が不鮮明になったこと。
本当の目的がわからないことには、この先の行動も予想がつかない。
こいつは一体、ジュエルシードをどうするつもりなのだろうか。

僕の言うことに、エイミィが首をかしげている。
「どういうこと? この人って、相当な合理主義者なんじゃないの?」
確かに、表面的にはそう取れる言動をしている。
いや、事実僕たちが介入するまでは、合理的な行動を取っていた。

「それにしてはおかしいんだ。今回の様子だと、彼女の方から手を切っていたようだ。そうでなければ、はじめから封印作業に参加している。仮に彼の方から手を切っていたのなら、そもそも手を出すはずがない。
 フェイト達との繋がりが切れたのなら、こいつには僕たちと対立する危険を冒してまで手を貸す理由はない」
合理的というなら、管理局が介入してきた時点で身を引き、あとは事件が解決するのを待つか、僕たちに鞍替えすればいい。
なのにアーチャーは、そのどちらでもない危険な選択をした。これでは辻褄が合わない。
いくら彼が相当な実力者で、魔導師の天敵だったとしても、管理局という巨大組織を敵に回すのは危険すぎる。
つまり、その危険を冒す事も厭わないほどの、何か隠された目的があるはずだ。

フェイトはそのために利用されている可能性が高い。
なのはたちに手を貸さなかった理由は、彼女たちでは利用価値がないのか、それか利用し辛いと判断したのかもしれない。少なくとも、凛がそう簡単に利用されるようなことはないだろう。

「なるほどねぇ。確かに不気味だ。私たちが介入してきてからの行動は、言ってることとあわないもんね。
 一見合理的だったのが、ここにきて非合理的になってきたわけか」
「ああ、まるでフェイト達とのつながりを保とうとするように。
 こいつもジュエルシードで何かを狙っているのか、それとも……」
結局は答えのでない疑問だ。
本人から聞きだすしかないが、その本人の容姿すらまともにわからない。
その目的によっては、こちらもかなりの被害を覚悟しなければならない。

プレシアと共に、またはそれ以上の要注意人物だ。

Interlude out




あとがき

さーて、物語も終盤に入ってきました。無印編ももう少しでおしまいです。
あと、残り3話位を予定しています。

それにしても、なにやら凛の立ち位置が段々と保護者になってきている気がする。
姉御肌で面倒見のいい人ではありますが、母性でもくすぐられるんでしょうかね。
それに引き換え、士郎はなんだが暗いなぁ。
過去のことを引き摺っていて、お子様方が心配なのに踏み込めない感じです。

今回はおそらく大半の方が予想されていたであろう王道をいってみました。
いや、一度はやってみたいじゃないですか。

それとは別に、今回は宝具の大盤振る舞いでした(と言っても使ったのは二つですけど)。
士郎が気付いた時にはすでにかなり危ない状態でしたから、後先考えずにやってしまったんでしょう。
ゲイ・ボルクは能力が能力なんで、使える場面が少ないんですよね。人間相手に使ったらまさしく必殺ですから。
それと違って、ゲイ・ジャルグは使い勝手がいいのでこれからも出番は多そう。
目標はFateで出てきた武器系の(乖離剣を除く)全ての宝具を出すことですね。
無印の間にあとどれだけ出せるかわかりませんが頑張っていきます。

あと、来週からしばらく忙しくなりますので、今週中にもう一回更新できなかった場合は、月末くらいでないと更新できそうにありません。
そういうわけなので、楽しみにしてくださっている皆さんには少し待っていただくことになります。ご容赦ください。
では、15話でお会いしましょう。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.031758785247803