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No.40220の一覧
[0] 新米捜査官なのはの事件簿(リリカルなのは×東京喰種)[ベリーイージー](2015/06/27 00:45)
[1] 序章・2[ベリーイージー](2015/03/28 14:04)
[2] 日常編[ベリーイージー](2015/02/20 18:09)
[3] 邂光Ⅰ・Ⅱ[ベリーイージー](2015/03/28 14:21)
[4] 第一話 邂光Ⅲ[ベリーイージー](2014/12/26 21:51)
[5] 第一話 邂光Ⅳ[ベリーイージー](2014/12/26 21:51)
[6] 第一話 邂光Ⅴ[ベリーイージー](2014/12/26 21:51)
[7] 第一話 邂光Ⅵ[ベリーイージー](2015/02/20 18:10)
[8] 邂光Ⅶ[ベリーイージー](2014/12/26 21:52)
[9] 邂光Ⅷ[ベリーイージー](2014/12/26 21:52)
[10] 邂光Ⅸ[ベリーイージー](2014/12/26 21:53)
[11] 邂光Ⅹ[ベリーイージー](2015/02/20 18:10)
[12] 第二話 輝石Ⅰ[ベリーイージー](2014/12/26 21:54)
[13] 第二話 輝石Ⅱ[ベリーイージー](2014/12/26 21:54)
[14] 第二話 輝石Ⅲ[ベリーイージー](2015/01/06 17:56)
[15] 第二話 輝石Ⅳ[ベリーイージー](2014/12/26 21:55)
[16] 第二話 輝石Ⅴ[ベリーイージー](2014/12/26 21:55)
[17] 第二話 輝石Ⅵ[ベリーイージー](2014/12/26 21:55)
[18] 第二話 輝石Ⅶ[ベリーイージー](2015/01/06 17:57)
[19] 第二話 輝石Ⅷ[ベリーイージー](2015/01/06 17:57)
[20] 第二話 輝石Ⅸ[ベリーイージー](2014/12/26 21:57)
[21] 輝石Ⅹ・前[ベリーイージー](2015/01/06 17:58)
[22] 輝石Ⅹ・中[ベリーイージー](2014/12/26 21:57)
[23] 輝石Ⅹ・後[ベリーイージー](2014/12/26 21:58)
[26] 輝石ⅩⅠ[ベリーイージー](2015/01/06 17:58)
[27] 番外編 日常・二[ベリーイージー](2014/12/26 21:59)
[28] 番外 東京にて[ベリーイージー](2015/02/20 18:11)
[29] 第三話 奇跡Ⅰ[ベリーイージー](2015/01/06 18:02)
[30] 奇跡Ⅱ及び閑話[ベリーイージー](2015/02/20 18:12)
[31] 奇跡Ⅲ・上[ベリーイージー](2015/01/31 20:45)
[32] 奇跡Ⅲ・中[ベリーイージー](2015/02/04 22:51)
[33] 奇跡Ⅲ・下[ベリーイージー](2015/02/16 01:30)
[34] 捜査官達の決断[ベリーイージー](2015/02/20 18:12)
[35] 奇跡Ⅳ・上[ベリーイージー](2015/02/20 18:12)
[36] 三話 奇跡Ⅳ・下[ベリーイージー](2015/03/01 18:12)
[37] 三話 奇跡Ⅴ[ベリーイージー](2015/03/13 20:05)
[38] 奇跡Ⅵ[ベリーイージー](2015/03/20 22:26)
[39] 奇跡Ⅵ・下[ベリーイージー](2015/03/28 14:11)
[40] 奇跡Ⅶ・上[ベリーイージー](2015/04/14 17:54)
[41] 奇跡Ⅶ・下[ベリーイージー](2015/04/21 19:30)
[42] 第三話 奇跡Ⅷ[ベリーイージー](2015/04/24 23:34)
[43] 奇跡・Ⅸ[ベリーイージー](2015/05/09 19:48)
[44] 番外 なのはと鉢川班(+1)[ベリーイージー](2015/05/09 19:49)
[45] 奇跡Ⅹ・上[ベリーイージー](2015/05/23 18:49)
[46] 奇跡Ⅹ・中[ベリーイージー](2015/06/04 00:47)
[47] 奇跡Ⅹ・下[ベリーイージー](2015/09/04 00:47)
[48] 第三話 奇跡ⅩⅠ[ベリーイージー](2015/06/18 00:07)
[49] 第三話 奇跡ⅩⅡ[ベリーイージー](2015/06/27 01:00)
[50] 奇跡ⅩⅢ・上[ベリーイージー](2015/07/10 00:14)
[51] 奇跡ⅩⅢ・中[ベリーイージー](2015/07/20 21:07)
[52] 第三話 奇跡ⅩⅢ・下1[ベリーイージー](2015/07/26 19:15)
[53] 第三話 奇跡ⅩⅢ・下2[ベリーイージー](2015/07/26 19:16)
[54] 第三話 奇跡ⅩⅣ[ベリーイージー](2015/09/17 22:35)
[55] 第三話 奇跡ⅩⅤ[ベリーイージー](2015/09/17 22:36)
[56] 奇跡・最終章Ⅰ[ベリーイージー](2015/10/02 20:39)
[57] 奇跡・最終章Ⅱ[ベリーイージー](2015/10/19 18:31)
[58] 奇跡・最終章Ⅲ[ベリーイージー](2015/11/18 23:44)
[59] 最終章Ⅳ・上[ベリーイージー](2015/12/09 23:34)
[60] 最終章Ⅳ・下[ベリーイージー](2015/12/09 23:25)
[61] 奇跡・エピローグ[ベリーイージー](2015/12/09 23:26)
[62] 幕間 暗雲Ⅰ[ベリーイージー](2015/12/13 10:20)
[63] 幕間 暗雲Ⅱ[ベリーイージー](2016/01/29 20:51)
[64] 幕間 暗雲Ⅲ[ベリーイージー](2016/01/29 20:51)
[65] 番外編 なのはと名物捜査官たち[ベリーイージー](2016/01/29 20:52)
[66] 4 暴風[ベリーイージー](2016/03/11 18:51)
[67] 第四話 暴風Ⅱ[ベリーイージー](2016/03/11 18:51)
[68] 第四話 暴風Ⅲ[ベリーイージー](2016/03/11 18:52)
[69] 第四話 暴風Ⅳ[ベリーイージー](2016/03/21 19:45)
[70] 第四話 暴風Ⅴ[ベリーイージー](2016/04/15 18:56)
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[40220] 第一話 邂光Ⅴ
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:09c51606 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/12/26 21:51
知性溢れる賢者にも年に似合わず老成した隠者にも見える少年が応急修理した部屋で寛いでいた。
情報屋のユーノだ、甘党なのか頭脳労働の後なのか砂糖を目一杯入れたコーヒーをちびちび飲んでいた。
するとそこへ何者かが飛び込んできた。

「……君は?」
「これを」

余程急いで走ってきたのか荒く息を吐く少女が携帯を手渡す。
訝しみながらユーノはそれを受け取ると通話中になっていた、困惑しながら出てみると知人の声が聞こえる。

『はあい、スクライア君』
「やあ、なのは……今君は何をしてるのかな?」

出たのは馴染みの捜査官であるなのはだ、だが妙に忙しそうだ。
面倒事の気配にユーノは溜息を吐き、先ほど飛び込んできて電話を渡した少女つまりヴィヴィオが済まなそうに頭を下げた。
態度から訳あっての別行動且つここを訪れたというのはわかる、ヴィヴィオの頭を撫で落ち着かせた後彼はなのはに聞いた。

「どうやら厄介事かな?」
『うん、そう……照射0,3秒!照射後強制冷却、っとちょっと今喰種とやり合ってるの、終わるまでヴィヴィオを預かって』

ドンドンと電話の向うで爆発音が響く、相変わらず騒ぎに縁があるなとユーノはもう一度大きく溜息を付いた。
襲撃から前以って彼女を逃がすのが精一杯だったのだろう。
何故そこで自分を頼ったのかと思ったが良く考えればヴィヴィオのことはCCGには話せない、だから仕方なくはある。
やれやれとユーノは再度溜息を付く、馴染みの客でその上先日依頼した相手の頼みである以上無視できない。
それに喰種とはいえ子供を託されたのだから愚痴る状況じゃない。

「……なのはならすぐに済ませるだろう、それまで限られた人が知る穴場の店に避難してよう」
「は、はい」
「なのはに伝言は?」
「え、ええと……怪我しないでくださいってお願いします」

その言葉に彼は頷くと、護身用の拳銃を持った後ヴィヴィオの手を引いて外へと向った。



『……という訳で僕等は土地の者でも余り知られてない喫茶店で飲んでいる、それと怪我しないでだってさ』
「うん、ありがとう……直ぐに終わらせて迎えに行くよ」

なのははユーノとの会話を終えた、喰種の振るう赫子を片手で持ったレイハで捌きながら携帯を懐に仕舞う。

「それじゃあ……反撃!」
「がっ!?」

空いた手をレイハに添える、ギュンと刃の先端が加速し襲い掛かってきた喰種の首を貫いた。
人なら致命傷だが喰種ならまだ動ける、なのはは更に数回振るい手足を切り付けた。
流石にこれならば動けない、最後の締めにレイハをクルリと回し石突を振るって動きを封じた喰種を壁際まで吹き飛ばした。
衝撃で喰種は壁にめり込んだ状態で昏倒し、良く見ればそこには他にも同じ様な喰種が並ぶ。

「……さて次はどいつ?」

数人目になる喰種を沈めたなのはだが油断せず周りを見渡す、何故なら襲ってきた喰種はまだまだ沢山いるからだ。
喰種たちは皆同じ様な『龍の頭骨』を模した仮面を被っていた。

「全くしつこいよ、人と喰種の混合犯罪組織『龍』の残党共め……」
『……ボスを討った貴様は許さん、その首貰い受ける!』
「痛い目見たという『古流剣士』に似てるか知らないけどそっちが仕掛けてき癖に……それに正当な立会いの結果だよ」

やれやれとなのはは肩を竦めた、以前捜査官として指導者を討伐し以降付き狙われている喰種たちだ。

『……黙れ、許さん、殺してやる!』
「まあ、そうだよねえ……(あの老人も慕われてるね、混じってる高弟は士気高いし赫子を使えるから厄介なんだよなあ)」

叫び突進してきた喰種の攻撃をレイハの柄でいなしながらなのはは溜息を吐いた。
だが彼女から少し離れた所でもっと大きな溜息を吐く女性が居た、外套を着た長身で短髪の女性で四枚の翼を生やしている。
二度戦った(二度目は仲間の救援だが)ナンバーズ『トーレ』だ、彼女は何故かなのはと同じく龍に襲われていたが。
本来なら彼女となのはは敵同士だが龍により乱戦と成りそれどころではない。
赫子を絡みつかせた拳で龍の喰種を殴り倒しながら彼女は嘆いた。

「おい、捜査官、何で私が巻き込まれてるんだ?私は無関係だよな……仕掛けたら行き成り横合いから龍が来て……」
「龍的に、獲物である私が取られたくなかったんじゃないの?」
「……最悪だ」
(……私的には最高だけどね、労せず実力が測れるし)

昼でも仄暗い裏路地で意図せず奇妙な共闘が展開され、剣戟と喰種の悲鳴とトーレの嘆息が響いた。



邂逅(光)Ⅴ



なのはとトーレと龍の三つ巴、何故こうなったかと言えばタイミングが悪かったというしかない。
まず、ヴィヴィオを連れ街に出ていたなのははトーレに尾けられていることに気付いた。
仕方なく街の人混みに紛れてヴィヴィオを逃がそうと路地に誘導し、トーレもその思惑に気付いたがまずなのはを優先した。
なのはは敵の戦力を削るべく、トーレはまず邪魔ななのはを倒そうと、二人はこの場で雌雄を決しようとした。

そのはずだったが、そこへ龍の襲撃でこんな状況に成った、目的は復讐で賞金なんて興味無くトーレにも仕掛けたのだ。

「いやあ参った参った、状況がややこしくてやり難いなあ」
「……捜査官、そう言いつつ私を囮に下がってないか?ていうか戦いながら私を観察してないか、おいっ!?」
「え、気のせいじゃないかな……レイハの射撃能力を活かす為に後退して、偶々視界に入っただけだし」

戦いながらじりじりとなのはは下がり、それによりトーレが龍との矢面に立つこととなった。
彼女は集中攻撃を受けてしまいなのはに仕掛ける余裕等無くなってしまう、
結果敵である筈のなのはまでの道を遮る前衛と成った、強制的に。

(くっ、チンクとノーヴェの怪我があるから二人を休ませる間にと、ついでに偵察のつもりだったのに……)

勿論なのはを倒せれば聖王奪取に近づくが、本来は戦闘による情報収集の予定だった。
それなのに、現状後方からじいっとなのはに見られていて、全く逆だった。
トーレの拳が相手の赫子を砕き、跳躍からの蹴りが数人纏めて薙ぎ倒す、そしてその一挙手一投足が逃さず見られていた。

「(これではあべこべになってしまう……)何でこんなことに」
「……ところでトーレだったね、昨日の怪我人二名はどう?」
「ふん、斬っておいて心配か、そんな物は要らんよ、少し休めば問題ない……その時が貴様の最後だ」

後方から暢気に掛けられた言葉にトーレがいきり立ち言い返すとなのははにやりと笑った。

「へえ、つまり今回は本命でなく精々偵察ってところか……それにあの傷で回復するならノーヴェと呼ばれた子は尾赫かな」
「あ、違、いやええと……」

なのはの言葉にトーレは慌てて口を紡ぐ、何を言ってもボロが出そうだからせめてこれ以上は情報を渡さないようにと。
だがなのはにはそれで十分だった、これで4人のナンバーズの赫子が判明した(既に三人は見ている)

(ま、不味い、本当にあべこべだ、私は情報を得に来たのに……な、何とか挽回しなくては)

だが、挽回しようにも龍の攻撃が激しく、その方法を考えられる余裕が浮かばない。

「ええい、邪魔するなっ!」

左右から挟撃する尾赫と甲赫の喰種にトーレは八つ当たり染みた攻撃を放った。
一瞬だけ四肢に纏わせていた赫子を展開し、尾赫の喰種を赫子ごとに切り刻む。
相性の悪い甲赫は妨害に徹し牽制した後トーレは素早く後退する、トーレの攻撃で体勢を崩した喰種をレイハの閃光が貫く。

「いやいやご苦労様……即席で組んだ割には上手くやれてるね」
「黙れ、白鳩!そっちが私を良い様に使ってるのだろうが……」

怒りにその瞳を赤く輝かせトーレが叫んだ、だがなのはは図太く動じず笑うのみだった。

「……この戦いが終わったら、絶対にぶっ潰す」
「今日は偵察でしょ、一人で戦うの?……まあ、それより前見て集中しなさい、まずは龍を倒さないとね」
「おのれ、このクソ尼が……」

思わず罵るトーレだが龍の相手で精一杯だ、悔しいがなのはの援護は正確で感情を抜きにすればありがたい。
龍は人と喰種の混合の組織だけあって今戦っている相手も人が混じっている。
人の方は問題無く四肢を切る程度で無力化できるが、問題は喰種の方で特に一部の幹部や高弟は赫子を操るので厄介だ。

「(気に食わんが捜査官は後回しだ)……ちっ、私に合わせろ!」
「わかった、援護する……だから全力で戦ってね(……そう全力でね、それを後ろからじっくり見せてもらうから)」

なのはの援護の元トーレが突進を仕掛けた、気迫の声と共に赫子を纏った四肢を激しく振るう。
その度に人間の構成員や赫子を使えぬ未熟な喰種は瞬く間に無力化される(止めを刺さないのはなのはと違い余裕が無いからだ)
流石に赫子を操れる喰種は残ったがそれ等も(トーレは渋々だが)連携で打ち倒していく。

「癪だが……援護を頼む、捜査官!」
「はーい、とりあえず散らすよ……追いかけて、止めを!」
「……命令するな」

なのはがまず先制する、レイハの閃光を喰種たちは散開してかわしたがそこへトーレが仕掛けた。

「……良い牽制だ、認めたくないが」

まずは羽赫の喰種、彼等は撃ち込まれた光を危なげなく回避したがその直後の僅かな停滞の瞬間をトーレに突かれ倒された。

「それなら私はこっちだね……もういっちょ!」

次には甲赫だ、羽赫に比べ動きが鈍いからレイハの閃光を赫子で耐えるしかなかった。
相性の悪い赫子の連続攻撃だ、第二射第三射と閃光が容赦なく放たれ一気に追い詰め仕留めていく。

「負けていられんか、そら次は貴様等だ!」

なのはの戦いを横目にトーレが鱗赫の喰種たちに飛びかかる。
レイハによる先制で怯んだ所を速度で圧倒しその攻撃力を封じたまま倒す、トーレは一度も赫子を振るわせず無力化した。

『残るは……そこだ!』

残るは尾赫の喰種たち、弱点が突き難く後回しにしたがここまで来れば地力で押し切れる範囲だ。
他の処理を終えたなのはとトーレは余裕を持って彼等を薙ぎ倒す。

「……くっ、これ以上は不味い、退くぞ!」
『承知!』
「……煙幕を張れ!」

僅かに生き残った者が合図を出した、それに頷き数人が懐から発煙筒を放る。
彼等は近くにいる者に手を貸し煙の中に消えていく。
煙幕が晴れた時路地裏にはダメージが大きかったり人数の関係でフォローできなかった数人ばかりが残された。

「退いたか、相変わらず逃げ足の速い奴等だよ、全くもう……」
「……私も帰る、これ以上手札を覗かれるのはごめんだからな」
「どうぞ、ご自由に……龍相手に疲れたんで行って良いよ、それにもう十分に見たしね」
「ちっ、腹の立つ女だよ、貴様は……」

不機嫌顔で言ってトーレは煙幕が残る方に飛び込んだ、路地裏の壁を足場に近くの建物の屋根まで跳び屋根伝いに離脱する。
消耗しているのは確かなのでなのははこの場は行かせることにした。

「行かせるしかないか、どうせセッテって娘辺りが横槍仕掛けてくる……情報を集め一網打尽にする機を待たないと」

最後に残ったなのははレイハをクインケケースに収納し、疲れた様子で表通りへ向った。



表にCCGの車両が止まっていた、だがそれ以上に恐ろしい光景があった。

「おやまあ……こっちでもか」

路地裏を出た辺りで血の海が広がっていた。
そこに沈むのは喰種、撤退時補足された龍か、そしてその中心になのはと同じ外套を来た一人の男性が佇んでいた。

「状況完了……高町、そちらは無事か」
「はい、クラド上等」
「そうか、無事でよかった、見た限り怪我も無い様だな」

恐らく市民からの通報が在って来たのだろうクラドがなのはに言う。
奇妙なことに喰種たちは『荒く引き千切られた傷』か『鋭い刃で切り裂かれたような傷』を負っていた。
四肢と赫子狙いか辛うじて息があるが何かとても恐ろしい物を見たかのようにその表情は歪んでいた、皆戦意を失っている。
彼等はクインケケースを手に一つずつ持ち、傷一つ負わず又全く息が乱れていないクラドに恐怖の視線を送っていた。

「やれやれ、暫く総指揮で忙しかったが、どうやらまだ腕は鈍っていないようだ」
「……流石東の死神と並ぶ『西の悪魔』か」
「正直物騒すぎて要らないのだがな……高町、お前が名乗ってみるか?」
「いえいえ恐れ多い、私のような未熟者にはとてもとても……」

物騒な通り名を継がせようとする上司の言葉(からかい半分だろうが)をなのはは笑って誤魔化した。
流石に喜々として悪魔を名乗るのは女として終わっていると思ったから。

「高町の暴れっぷりなら合うと思うがな……それにしても喰種の活発化に加えて龍か、私も前線に戻るべきか」
「襲名はお断りで……クラド上等が前線にお戻りになられるなら、正直言って心強いです」
「これでも良い歳だ、直ぐに追い抜かれると思うだろう……記憶が無いが多分四十か五十くらいだし」

復帰宣言に期待するなのはに余り期待し過ぎてくれないで欲しいとクラドは苦笑した。

「さて無駄話はここまでにして……各員、龍の残党を確保しろ」
「人と喰種が混じってますから人は刑務所に、喰種はコクリア行きで……路地裏の方にもいるのでお願いします」
「わかった、そいつ等も確保しておこう、疲れただろうから高町は報告書だけ書いて帰って構わん」
「……すみません、それではお言葉に甘えさせてもらいます」

暫しなのはと話した後クラドは真剣な表情で部下に後処理の指示を出していく。
とりあえず彼の厚意はありがたかった、クラドは現場を良く知っているのでこの辺融通を利かせてくれる。
車両で同期の関西弁少女に手伝って貰い報告書(ナンバーズに関してはぼやかして)を書き上げるとなのははユーノたちの方へ向かった。




「二日ぶりだな、レイのクインケを持つ娘よ」
「わーお、可笑しいな、目的の喫茶店の前に蓬髪髭面のどこかで見たおじさんが立ってるよ……」

ユーノに連絡を取って避難場所に向うその道中、なのはは鬼に出会った。
ぎろりと鋭い眼光がなのはを刺す、野太く大きな声がなのはの耳と頭をがんがん揺らす。
なのはの眼の前に立つのは強靭で頑強としか言い様が無い筋肉塊だった。
街に立ってるだけでそこを異空間に変えなのはに死を覚悟させる男は紛れも無くレートss喰種『鯱』だ。

「今日は中間報告だ、それ故戦う気はないので安心せい」
「そ、そうですか……」
「うむ、戦いを見た限り力はそれなりにある、少なくとも弱者でないのは確かだ……が、レイの赫子を持つにはまだまだだ。
……何か後一つ欲しい、強者であると証明して見せろ、幸い力を見せる相手はナンバーズに龍と不足せぬだろう」

それだけ言うと鯱は踵を返し背を向ける、本当に中間報告にだけ来たようだ。
悪くはないが合格点をやるにはまだだと言い残して、現れた時と同じく唐突に彼は去っていった。

「尚一層の奮闘を期待する、無様な戦いでレイのクインケを汚さないように……それでは又会おう、さらばっ!」

好き勝手言って人混みに消えていく鯱をなのはは呆然と見送るしかなかった。

「い、行ったか……ふ、ふう、心臓に悪い、ていうか余程気張って戦わないと合格点は無理そうだね」

その姿が完全に見えなくなってやっと彼女はプレッシャーから解放される。
バクバクする心臓を押さえながら喫茶店に向う、鯱との対面のショックで笑みが強張っているがそれは仕方ない。

「あっ……」
「お待たせー、ヴィヴィオ」
「なのはさん、怪我は……無いみたいだけど何か余裕が無いね、手強かったの?」
「……ううん、これは追加イベントで精神力削られたからだから気にしないで」

ヴィヴィオが前以って頼んだコーヒー(戦闘の疲労を考え甘め)を手に来たが、憔悴した様子に不思議そうに問いかける。

「ええと、何があったの?」
「何というか……割と無理難題と無茶振りが続いて参ってる感じかな」
「……良くわかんない」
「いや、私も何でこんなことに成ったかわかんないし」

なのはの答えにきょとんとするヴィヴィオだがなのは自身ですらどうしてこうなったかわかっていない。
敢えて言えば普通に生きてればここまで酷くはならないが、なのはがなのはである時点でそもそも無理なことなのかもしれない。
間違いや悲劇は放っておけないのが高町なのはという人間なのだから。

(……唯単に色々背負い込むお人好しなだけだろうに、しかも体育会系というか熱血思考で前のめりなのが特に性質が悪い)

第三者故に正しく認識しているユーノは何を今更と肩を竦めた。




ナンバーズだけで話を回すのは大変なので、とらはからのゲストとして龍を登場。
・・・といっても結構オリジナル入ってるけど、彼等にとってなのはは仇でナンバーズとも敵対します、主に三つ巴の予定。
同じくオリキャラ(半分程は)クラドの本格的な登場(戦闘は省略したが)でもあり、ある意味オリ要素大盤振る舞いです。

以下コメント返信

カメムシ惜しむメカ様
毎回誤字を指摘していただきお世話になっています、多分漢字の間違いは減ったはず(無いと言い切れないのが悲しい)
一応なのはは理論的分析的な戦い方のつもりで書いてます、でも思考が微妙にやられる前にやれ・・・その結果超前のめり。
・・・あくまで赫胞とRC細胞に焦点を当てました、ぶっちゃけ原作でどう動くか判らないからその辺以外はなあなあで。
なのはの喰種へのスタンスはⅣで語った通り、ぶっちゃけアラタみたいな生き方してれば問題ないのにって感じです。
・・・そうかチンクたちのあれか、御陰で思い出せました・・・現代日本じゃ目立つし上にコートが基本ってことで。

通りすがりのYJ読者様
・・・眼鏡繋がりか、それは全然考えてませんでした、寧ろ蹴りキャラだからだったんですが(あ両方ツンデレでもあるか)
東京グール側で出る候補は短編でちらと、一応亜門さんも候補、まあ登場時期次第で戦力が大幅に変わるから悩ましいけど。


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