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No.40220の一覧
[0] 新米捜査官なのはの事件簿(リリカルなのは×東京喰種)[ベリーイージー](2015/06/27 00:45)
[1] 序章・2[ベリーイージー](2015/03/28 14:04)
[2] 日常編[ベリーイージー](2015/02/20 18:09)
[3] 邂光Ⅰ・Ⅱ[ベリーイージー](2015/03/28 14:21)
[4] 第一話 邂光Ⅲ[ベリーイージー](2014/12/26 21:51)
[5] 第一話 邂光Ⅳ[ベリーイージー](2014/12/26 21:51)
[6] 第一話 邂光Ⅴ[ベリーイージー](2014/12/26 21:51)
[7] 第一話 邂光Ⅵ[ベリーイージー](2015/02/20 18:10)
[8] 邂光Ⅶ[ベリーイージー](2014/12/26 21:52)
[9] 邂光Ⅷ[ベリーイージー](2014/12/26 21:52)
[10] 邂光Ⅸ[ベリーイージー](2014/12/26 21:53)
[11] 邂光Ⅹ[ベリーイージー](2015/02/20 18:10)
[12] 第二話 輝石Ⅰ[ベリーイージー](2014/12/26 21:54)
[13] 第二話 輝石Ⅱ[ベリーイージー](2014/12/26 21:54)
[14] 第二話 輝石Ⅲ[ベリーイージー](2015/01/06 17:56)
[15] 第二話 輝石Ⅳ[ベリーイージー](2014/12/26 21:55)
[16] 第二話 輝石Ⅴ[ベリーイージー](2014/12/26 21:55)
[17] 第二話 輝石Ⅵ[ベリーイージー](2014/12/26 21:55)
[18] 第二話 輝石Ⅶ[ベリーイージー](2015/01/06 17:57)
[19] 第二話 輝石Ⅷ[ベリーイージー](2015/01/06 17:57)
[20] 第二話 輝石Ⅸ[ベリーイージー](2014/12/26 21:57)
[21] 輝石Ⅹ・前[ベリーイージー](2015/01/06 17:58)
[22] 輝石Ⅹ・中[ベリーイージー](2014/12/26 21:57)
[23] 輝石Ⅹ・後[ベリーイージー](2014/12/26 21:58)
[26] 輝石ⅩⅠ[ベリーイージー](2015/01/06 17:58)
[27] 番外編 日常・二[ベリーイージー](2014/12/26 21:59)
[28] 番外 東京にて[ベリーイージー](2015/02/20 18:11)
[29] 第三話 奇跡Ⅰ[ベリーイージー](2015/01/06 18:02)
[30] 奇跡Ⅱ及び閑話[ベリーイージー](2015/02/20 18:12)
[31] 奇跡Ⅲ・上[ベリーイージー](2015/01/31 20:45)
[32] 奇跡Ⅲ・中[ベリーイージー](2015/02/04 22:51)
[33] 奇跡Ⅲ・下[ベリーイージー](2015/02/16 01:30)
[34] 捜査官達の決断[ベリーイージー](2015/02/20 18:12)
[35] 奇跡Ⅳ・上[ベリーイージー](2015/02/20 18:12)
[36] 三話 奇跡Ⅳ・下[ベリーイージー](2015/03/01 18:12)
[37] 三話 奇跡Ⅴ[ベリーイージー](2015/03/13 20:05)
[38] 奇跡Ⅵ[ベリーイージー](2015/03/20 22:26)
[39] 奇跡Ⅵ・下[ベリーイージー](2015/03/28 14:11)
[40] 奇跡Ⅶ・上[ベリーイージー](2015/04/14 17:54)
[41] 奇跡Ⅶ・下[ベリーイージー](2015/04/21 19:30)
[42] 第三話 奇跡Ⅷ[ベリーイージー](2015/04/24 23:34)
[43] 奇跡・Ⅸ[ベリーイージー](2015/05/09 19:48)
[44] 番外 なのはと鉢川班(+1)[ベリーイージー](2015/05/09 19:49)
[45] 奇跡Ⅹ・上[ベリーイージー](2015/05/23 18:49)
[46] 奇跡Ⅹ・中[ベリーイージー](2015/06/04 00:47)
[47] 奇跡Ⅹ・下[ベリーイージー](2015/09/04 00:47)
[48] 第三話 奇跡ⅩⅠ[ベリーイージー](2015/06/18 00:07)
[49] 第三話 奇跡ⅩⅡ[ベリーイージー](2015/06/27 01:00)
[50] 奇跡ⅩⅢ・上[ベリーイージー](2015/07/10 00:14)
[51] 奇跡ⅩⅢ・中[ベリーイージー](2015/07/20 21:07)
[52] 第三話 奇跡ⅩⅢ・下1[ベリーイージー](2015/07/26 19:15)
[53] 第三話 奇跡ⅩⅢ・下2[ベリーイージー](2015/07/26 19:16)
[54] 第三話 奇跡ⅩⅣ[ベリーイージー](2015/09/17 22:35)
[55] 第三話 奇跡ⅩⅤ[ベリーイージー](2015/09/17 22:36)
[56] 奇跡・最終章Ⅰ[ベリーイージー](2015/10/02 20:39)
[57] 奇跡・最終章Ⅱ[ベリーイージー](2015/10/19 18:31)
[58] 奇跡・最終章Ⅲ[ベリーイージー](2015/11/18 23:44)
[59] 最終章Ⅳ・上[ベリーイージー](2015/12/09 23:34)
[60] 最終章Ⅳ・下[ベリーイージー](2015/12/09 23:25)
[61] 奇跡・エピローグ[ベリーイージー](2015/12/09 23:26)
[62] 幕間 暗雲Ⅰ[ベリーイージー](2015/12/13 10:20)
[63] 幕間 暗雲Ⅱ[ベリーイージー](2016/01/29 20:51)
[64] 幕間 暗雲Ⅲ[ベリーイージー](2016/01/29 20:51)
[65] 番外編 なのはと名物捜査官たち[ベリーイージー](2016/01/29 20:52)
[66] 4 暴風[ベリーイージー](2016/03/11 18:51)
[67] 第四話 暴風Ⅱ[ベリーイージー](2016/03/11 18:51)
[68] 第四話 暴風Ⅲ[ベリーイージー](2016/03/11 18:52)
[69] 第四話 暴風Ⅳ[ベリーイージー](2016/03/21 19:45)
[70] 第四話 暴風Ⅴ[ベリーイージー](2016/04/15 18:56)
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[40220] 新米捜査官なのはの事件簿(リリカルなのは×東京喰種)
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:09c51606 次を表示する
Date: 2015/06/27 00:45
注意・リリカルなのは側の登場キャラは年齢が変わってます、因みになのはは本編時十八前後、魔法にも関ってません
    非人間キャラの擬人化在り(正確には人間とは言えませんが)
    それと残酷に感じるかもしれない描写が有ります、これは特に注意
    なのはの使用クインケを羽赫から鱗赫に変更し又開始時点で東京喰種一話の一年~二年前へ



序章・1



黒いコートの男性が寂れた街中を歩いていた、眼鏡の奥に鋭い眼光が覗く。
この辺りが寂れているのには理由がある、人より遥かに危険な者たちが潜んでいるのだ。
だが、男は全くそのことを気にしていない。
何故ならその男、有馬貴将は潜んでいる者たちの誰よりも危険で有馬を前に逃げ隠れするしかないからだ。

「来たぞ……出て来い、『レイ』」
「……呼び出しに応じてくれて感謝します、有馬特等」

暗がりから女性が出てきた、宝石の装飾がされた仮面を被っている。
有馬がレイと呼んだ女はもう一人連れていた、髪の色は茶、ツインテールに纏めた幼い少女だ。

「仲間の『喰種(グール)』、いや違うな、人のようだが……」
「ええ、貴方と同じね……一応言うと私の食料ではありません、そもそもCCG(対策室)の方を前に食事等と……」
「……人喰いのお前が、『喰種(グール)』のお前が何故餌を連れている?」

有馬は女性を喰種と呼んだ。
人と同じ姿を持ちながら人を喰らう人の天敵である怪物、だが女性からすれば有馬の方が怪物だと言うだろう。
喰種を狩る者たち、喰種対策局『CCG』最強と噂される男なのだから。

「……その理由は貴方をお呼びした訳と関っています」
「聞こう、恐らくお前とは最後の会話だろうから」
「最後?……ああ成程東京に戻るのですね、この辺りに巣食って『いた』排他的な組織の排除命令を終えて」
「貴様が、幹部の『星光』が仲間を裏切りCCGを手引きしたからな……これはその礼だ」

組織の中で最強と目される女性は喰種らしからぬ温厚な性格でかねてから反目していた。
手引き後組織とCCGとの戦いのドサクサ紛れに女性は一端姿を消した。
それが何故再び、しかも有馬の前に出たかはわからないが、連れている少女が関係していると有馬は直感する。

「……この少女をお預けしたいのです、有馬」
「何だと?」

女性が喰種にしては温厚で積極的に人は襲わないのは知っていた、だが実際に人を気にかけるのを見ると唖然とする。

「彼女は組織の下っ端がどこからか浚ってきました、組織とCCGの戦いに巻き込まれないよう連れ出したのですが……」
「連れ出したはいいが……どう返すかの段で途方に暮れたか」
「……はい、お恥ずかしながら」
「やれやれ……良いだろう、俺の伝手で必ず帰す」

溜息を吐きながら有馬は女性が連れていた少女を預かった。
座って目線の高さを合わせると少女に問いかける。

「俺は有馬だ、君の名前は?」
「―――です、おじさん」
「おじっ……お兄さんと言って欲しいな」
「くすっ……」
「笑うな、狩るぞ、レイ」
「……失敬」

笑う女性を有馬は睨みつけ黙らせる、有馬は少女の手を引いて数歩下がった。
まるでどう動いても対処できるような距離だ。
有馬と女性の間にピリピリとした緊張感が走る。

「怖い顔ですね、止してください……私は消えるつもりなのですから」
「そうか……西日本一帯に勢力を伸ばそうとした『アオギリ』を裏切ったからな、いっそその方が安全か」
「……とはいえ唯では見逃してくれないでしょうし、これでご勘弁を」

女性は布で包まれた何かを有馬の足元に放った、そこで初めて女性の脇腹が大きく裂かれていることに気付いた。
それは喰種だけが持つ器官『赫胞』があった場所だ。
そこから形成する異形の武器である赫子(かぐね)彼女の場合特に殺傷力の高い鱗赫に分類される、かなり独特な性質だが。

「……自ら抉ったか」
「ええ、消えるなら力は不要、それに私の『クインケ』が作られれば死んだと思われるはずですから」
……さようなら、有馬……その少女のことを頼みましたよ」
「ああ……さらばだ、レイ、いや『レイジングハート』」

そして、女性は疾風の如き速度で駆け出すと瞬く間に姿を消した。
レイあるいはレイハ、それは女性の本当の名を縮めた名、異国から来たらしい女性はこのまま消えるだろう。
もしかしたら故郷、彼女がいたらしい異国かもしれないし日本の別の場所かもしれない。
わかっているのは人喰いらしからぬ女が最後までそうだったことだけだ。
レイを見送った後有馬は少女の方へと振り向き、己の体で真っ赤な包みを隠しつつ、先ほど聞いた名を口にした。

「……行こうか、『なのは』」
「はい……レイさんは行っちゃったか、お礼を言い損ねた……」
「まああいつにも事情があるからな……(アオギリを敵にした以上は報復される、悠長にしている時間もない)」

有馬は例が言えず残念がる少女、なのはを宥めながら手を引いた。



この後有馬は行方不明の捜索願からなのはの家族を探し出して帰すことになる。
喰種の餌として浚われた少女は奇しくも同じ喰種に助けられた、この後彼女は日常に帰ってその内忘れるだろう。
そう本来ならこのことは忘れられるはずなのだが、数年後有馬はCCGの訓練施設で頭を抱えることとなった。
レイジングハートの赫子を加工した対喰種装備『クインケ』を見事に操る少女がいたからだ。

「素晴らしい、クインケ……レイハver1.1を操るとは……それもこんな少女がなあ」
「えへへ、頑張って覚えました……あ、有馬さん、CCGに入局する予定なので今後よろしくお願いします」
「……いや待て何でだ」
「あのお姉さんに会う方法がこれしか思いつかなくて……その後どうするかは考えてませんけど」

これは奇縁を経て西日本のエースと呼ばれることとなったあるCCG局員の物語である。



ガンゴン、部屋の外で戦闘と思われる轟音がする、なのははその度にひっと身を竦めた。
幼く無力な少女、元々内向的だったがその上今は誘拐された身だから当然だ。

「ちっ、襲撃だと、白鳩(ハト)か!?」
「……押されてるらしい、逃げないと不味いぞ」

顔を真っ青にした見張り役がなのはの方をちらりと見た。

「このガキはどうする?」
「幹部にやる予定の非常食だが、だがこんなのに関ってる場合じゃないだろ」
「……だからだよ、上が気にする暇は無い、俺等で喰っちまおうって言ってるんだ」
「確かに暫く逃げるから今の内に腹を満たすのは悪くないか……荷にならない程度に切り分けるぞ」

彼らは頷くと体を震わせる、ビキリと音を立てて、有機的な異形の尾が背から飛び出した。
なのはを見る見張り達の目は異様に真っ赤に光っていた。

「……つうわけだ、旨そうなとこだけ持ってくわ」
「動くなよ、楽に死にたいだろ、ガキ?」
「……う、うう、だ、誰か助け……」
『……馬鹿め、助けなんてどこにも……』

ザシュ

「ええ、助けてあげますよ……逃げる前のついでですが」

ひゅんと何かが風を切った、なのはにはそうとしか見えなかった。
だが、次に起きた現象は余りに驚くべきことだった。
一瞬までいなかったのに一人の女性がなのはに現れ、次の瞬間ゆっくりと見張りの体が上下にずれる。
女性は仮面を被っていた、真っ赤な宝石が埋め込まれ何となくなのはは夜空に輝く『星』を連想した。

「……見ちゃ駄目!」
「は、はい!」

女性の鋭い声になのはは思わず従う、目を閉じて数秒後ビシャリと何かが流れる音とドサリと重い物が落ちる音がした。

「そのまま眼を閉じていて、真っ赤で刺激的だから……このままアジトの外へ行くわ」
「……はい、ありがとうございます、お姉さん」
「レイよ、レイハでも良い」

女性、レイは眼を瞑ったままのなのはを抱き上げる、そして足早に歩き出した。
この後なのははレイと共に喰種のアジトを抜け出し、紆余曲折あって捜査官の有馬に託された。



恐らくこの出会いが決定的だったのだろう。
なのはにとって喰種は自分を食べようとした恐ろしい存在で、同時に自分を助けた存在でもある。
だから、彼等に関ろうと思った、有馬を追うようにCCGに入った。
悪い喰種をやっつけるという子供っぽい思い、恩人にもう一度会いたいという憧れ混じりの思い、微妙に矛盾する二つの思いを抱いて。


そんな昔の夢をなのはは見ていた。


「……高町二等、現場についたで、起きい」
「ふわあ……起こしてくれてありがとう、八神三等」

喰種対策局のトレーラーの後部座席で仮眠していたなのはを同年代、二十幾らか手前の少女が起こす。
眼を擦りながら起きたなのははうんと唸りながら体を伸ばした。
懐かしい夢を見てなのはは懐かしがるが直ぐに真剣な表情になる、何故なら彼女は西日本のある都市の管轄を預かるからだ。
何時までも寝ぼけていられない、それに恩人のいた地に危険な喰種に居座られるのも気に入らない。

「ふう、もう大丈夫」
「なんや、疲れてるようやな」
「……レイハver1,2の調整に時間が掛かっちゃって」
「相変わらずクインケ狂いやね、高町二等は……」

同僚の少女、生来の半身の麻痺から後方担当の同僚が呆れる。
こういうのはなのはにとって何時ものことである、クインケの成り立ちを考えれば当然とはいえる。
倒すべき喰種の一部を加工した武器、おぞましいそれを大事に扱う姿は一見狂気を疑う物だろう。

(……このクインケ『レイハ』だけは少し違うんだけどな)

恩人が取引に有馬に渡したと知るなのはにとってこれだけは別だ。
とある特別な機能から扱いが難しく思い入れからか彼女だけが使いこなせた。
彼女以外に特等クラスなら使いこなせる者も居たが彼らには既に専用の物が有り死蔵よりマシと支給された。
それがクインケ『レイハ』、彼女の就任以来愛用してきた自慢の相棒である。

「ところで夢見てたみたいやけど……どんな夢やった、唸ってたし悪夢?でも後半笑ってたし逆?」
「……生きてて一番怖いと思った、でも恩人と会った時の夢でもあるから悪夢では断じて無いかな」
「ふうん……まあ早く眼を覚まして出動頼むで、あの『梟』の事件からもう八年、上も世代交代を期待してるんやから」

なのはは頷くと、もう一度伸びをした後トランクケース、待機状態のクインケを手に持ち立ち上がる。
トレーラーを出て目的地、数人の喰種が潜む廃屋を見上げた。
仲間と話している時の少女と同一人物と思えぬ冷たい目だ、もし『ある捜査官』を知る者は有馬貴将に重ねるだろう。



「……囲まれてやがる」
「白鳩か……」

数人の喰種が緊張した様子で話し込んでいた。
白鳩、白い羽根の装飾から彼等は喰種対策局をそう呼んだ。
だが脅威は白鳩等という呼び名に相応しくない、何故なら喰種は狩られるか難攻不落のコクリア送りかのどちらかだからだ。

かつかつ

「しっ、足音だ、一人だな」
「一人か、奴等は何を考えてやがる?」
「……中にいる喰種たちに勧告します、投降しなさい」

扉越しに喰種たちにそんな言葉が掛けられる。
それは対策局らしくない言葉、はっと喰種の一人が鼻で笑って赫子を出した。

「舐めんな、だれがそんなもん聞くかよ!」

鋭い刃が扉を両断し、その奥にいる捜査官をも切り裂こうとする。
しかし眩い白の輝きが一閃、攻撃仕掛けた男の赫子を根元から切り落とした。

「……ああ残念だ」
「え、ぐ、ぐあああ!?」

根元から吹き飛び宙を舞う己の赫子に喰種が呆然とした後悲鳴を上げた。
その光景に他の喰種たちは激しく動揺し、そこへ壊れた扉も赫子の残骸も踏み越えて現れた女性捜査官、なのはが口を開く。
捜査官の代名詞の重厚なコートを翻し、白く輝くクインケを喰種たちに突きつけて二度目の警告をした。

「もう一度だけ言うよ、投降を……」
「だ、誰が手前等なんかに……がっ!?」
『ひいっ……』

痛みに我を忘れ先程の喰種が仕掛けようとしたが、次の瞬間吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
今度は閃光に胸を穿たれて彼はぴくりともしない。
槍に近いクインケ、穂先の代わりに翼を広げたような形状の得物を一振りしただけでそうなった。
元々鋭い鱗赫だがその赫子は他を圧倒する鋭さで、又赫子表面の曇り無き刃のような構造から光を反射あるいは収束させる。
これによりクインケ『レイハ』はそれこそ羽赫に匹敵する破壊力の砲撃をも可能としていた。

「これが最後だよ、投降して」
「……わかった」

三度目の警告を喰種たちはついに受け入れた。
一人を残酷に叩きのめし脅迫からの屈服、けれど捜査官と喰種としては破格の光景だった。



「一人を除いてコクリア送りか、高町二等は優しいのか怖いのかわからないなあ」
「……恐れられる方が喰種は隠れるからね、彼等にとって窮屈だろうけど死ぬよりマシでしょ」
「そういう喰種の事情を考えるような発言はどうかと思うで?」
「おっと……上司には内緒ね、戦いじゃ手加減はしないからさ」

報告書を書いていたなのはは同僚に手を合わせ内緒にするよう頼む。
バツ悪げに笑う少女、つい先程喰種を惨殺したと誰がわかろうか、だが紛れも無く彼女も喰種と戦う捜査官なのだ。
これに関してはなのはの甘さを憂いた最強の捜査官の念入りの矯正で、彼女は戦いに於いてはそれを見せることはない。
副作用と言うべきかまるで別の人格になったようだと噂される原因だが。

「……本当は話し合えたら良いんだけどね」
「こら、問題発言二度目やで……くれぐれも喰種に手心加えたりしたらあかんよ」
「ごめん、忘れて……」

友人の警告にすまなそうな顔をする、傍からは大分危なっかしく見えるらしい。
ぺこぺこと頭を下げるなのはに同僚の少女ははあと溜息をついた。
何か問題が起きなければ良いが、なのはを見ていると良くそう思う。

「気をつけるよ、八神三等……はい、報告書完成、それじゃ帰るね」
「うん、気をつけてな……それじゃまた、それとクインケ調整は程々に」



「……またやっちゃった、ああいう言動はするなって有馬さんにも言われてたのに」

喰種への微妙な感情から時々ああいった捜査官に相応しくないことを言ってしまうことがあり注意されていた。
またやってしまったとなのはは自省しながらとぼとぼと帰路に着く。
気分は暗く、その上任務もあって疲れている、自省してたら今度は歩きでの通勤に思考が飛んだ。

(お金次第だけどバイク買おうかな、いざという時任務入っても使えるし……でも、バイクは乗捨てからの爆発オチが……)

対策局ではそういうことが偶に在ると噂されているのでどうしようかとなのはは悩んだ。
特に東京ではそれが結構な問題になっているらしい、よりによって馬鹿高いハーレーの被害とかで。

「どうしようかな、近くに引っ越すか思い切って買うか……ちっ、帰り途中で血の匂いとか」

悩んでいたなのは仕事で良く嗅ぐ匂いに嫌そうな顔をする、真っ暗な路地からそれは漂っていた。

「う、うう、あの方を……助け……」
「……ねえ、怪我してるの?」

壁にもたれかかるようにしていた怪我だらけの男、なのははそっと抱え起こす。
だが、男の顔を、いや眼を見てぎょっとする、彼の瞳は真っ赤に染まっていた。

(赫眼……この人、喰種!)

興奮時、あるいは喰種の能力を出さねばならない時喰種の眼光は赤く輝く、闇の中でもわかるくらいに。
目の前の男もそうだ、もっとも喰種の人外の体力でなくば命を落とすという意味での赫眼だが。

「……何があったの?」
「王が、聖王の末裔が、正統なる欧州の喰種の王が……あの方は生きて血を繋ぎ……がはっ!」

なのはの問いに朦朧としながら男は答え、けれど途中で血を吐き沈黙する。
彼を揺するも動かない、限界を超えたらしい。

(……すごい忠誠心だ、死の淵まであの方とやらを案じてた)

こう感じてしまうのもなのはが喰種を憎んでいないからだろう、なのはは何かを感じ立ち上がる。
男の足元に意識を向けた、点々とする血の方を、つまり男が来たと思われる方を見る。

「……まあ感心したけど、王をどうするかはこれからか、捜査官としては喰種は放っておけないし」

男の必死さに心動く自分に言い訳しつつ血の後を追った。



齢は三つか四つくらいだろうか、少女は泣いていた。
普段はその瞳は美しい深緑なのだが心昂ぶると片目が赫眼として赤く染まる、今もそうだ。

「ひく、うう……ねえ、起きて、お願い」

彼女は先程まで自分を守っていた守り手に縋って泣いていた。
だがその人は動かない、何故なら追っ手が振るった赫子に切り裂かれ命を落としたから。
もう一人仲間もいたが助けを呼ぶと別れた、だが怪我をしていたから駄目かもしれない。
元々ある理由で故郷の欧州から逃げてきたがその逃走先のこの国でも追われていた。

「ふん、こんなガキが王の末裔ねえ?」
「……こう見えて、ヨーロッパ辺りを支配してたらしいぜ、まあご先祖様はだが」
「没落したんだろ」
「ああ代々仕えるのも減って数人程度、でさっきのが最後でこいつ一人になったが……だが捕まえりゃ良い金で売れるぜ」
「ヨーロッパの喰種か、対策局も有馬なんて化け物もいねえから大分幅利かせてるって話だが……ま、一応恩を売っとくか」

追っ手たち、十を超えているだろうか、といっても少女だけでは一人でも逃げられないが。
彼等は好き勝手言いながら少女に手を伸ばす。
古い血筋の喰種である少女を捕らえればその勢力は大きく勢いを増す、その分け前を狙って彼等は少女を狙っていた。、
だが、喰種たちの手が届く寸前彼等は恐ろしい声を聞いた、怒りに震える声を。

「……レイハさんの同類は一人位いないものか、全く多人数でこんな下種なことを良く出来るよ」
「誰だ!」
「貴方たちの天敵だよ、そっちの子は伏せて……」

言葉と共に閃光が放たれる、それは喰種たちを容赦無く貫いた。
避けようとした者はまず足を吹き飛ばされ動けない所を撃たれ、赫子を盾に防ごうとした物はそれごと光にぶち抜かれる。

「駆逐完了……」

翼のような刃の槍を持った女性捜査官に少女がびくりとする。
女性捜査官、つまりなのはは少女を安心させようと優しく声を掛けた。

「私は敵じゃない、安心して……大丈夫?」
「……う、うん」

少女は突然の乱入者に驚きながらも頷く。

「こっちの人は……ああ駄目か(やっぱり最後まで守ったみたいね、それじゃこの子が王かな)」
「……貴女はCCGですよね、クインケ使ってるし、それなのにどうして助けたんですか?」
「相手の物言いに腹を立てたから、それと忠誠に感心したからかな」

少女はなのはの答えに不思議そうな顔をする、まあ喰種なら当然の反応か。

「私は喰種だよ、それだけで?」
「……王という肩書きを利用する為、今は兎も角成長した貴女を傀儡に喰種に影響を与える、喰種対策局にとって得でしょ」

少し悩んだ後なのはそれらしいことを、局にとってプラスとなる理由をでっち上げた。
まあ何のことは無く『昔の自分』と重ねた等自分の立場で、捜査官の立場で言えることではない。
人間の自分が喰種の女性に助けられたから、逆に喰種の少女を助ける気になったから、そんななのはの私情は彼女の心の奥に秘められた。

「……追っ手が来るかもしれない、行きましょう」
「わかりました、私の死を仲間は望んでいないと思うので従います、彼等の為にも無駄死にしたくないから……」

すっ

悲しそうに言う彼女になのはは思わず手を伸ばした。

「君は良い子だね、白鳩(ハト)であるわたしの言葉は嬉しくないかもしれないけど……」

気丈に頷く少女、王だった者としての誇りか涙を堪える少女を優しく撫でた。
思わずそうしていた、ああ捜査官らしくないなと自嘲する。
なのはは自分のことを笑った後不思議そうな少女を優しく抱き上げた。

「約束する、後になるけど貴女の仲間の亡骸は必ず弔うから」
「……ありがとうございます」

少女の謝辞になのはは僅かに顔を赤くすると、彼女を抱き上げ駆け出した。
その途中で忘れていたと、あることを思い出す。

「行こう……そうだ、名前を聞いてなかったね、君は?」
「……ヴィヴィオです」
「私は高町なのは、まあどのくらいの付き合いかはわからないけどよろしく」

なのはの肩で少女、ヴィヴィオはぺこりと頭を下げた。
二人はこの時点では思ってもみなかった、これがとても長い付き合いになるとは。



「……聖王の行方がわからないだと?」
「はい、ドクター……一時は地元の喰種がかなり近くまで行っていたのは確認していますが」
「やれやれ、娘たちを……そうだな、トーレ、チンク、それにセッテとノーヴェを行かせなさい。
……我が友、カノウの理論を実践するには強力な喰種が必要だ、聖王の末裔ならばそれに相応しい」

闇の中で人間の技術者、だがある意味喰種より危険な男が動き出した。



「報告は?」
「……ボス、聖王って奴はCCGのある支部の近くで消息を絶っています、捕縛の可能性も在り得ると思いますぜ」

東京の片隅で鍛え抜かれた巨躯を持つ大男が仲間から報告を受けていた。

「CCGか……」
「一人、若いが厄介そうな捜査官がいます、資料はこちらです」
「クインケ『レイハ』?まさかレイ!?……行くか」
「ボス、どうされました?……ちょっ、どこへ、おい誰か誰かいないか、ボスがご乱心だ!」

そして、狂人に続きもう一人、CCGにとって(あるいは狂人にとっても)イレギュラーが向った。

「ところでそのレイって人とはどんな関係で?」
「……ぽっ」
「は?何で顔を赤くって……まさかボスってばその人に惚れて……」
「し、しまっ……恥ィ!」
「ボ、ボス、照れ隠しに赫子を出さないでください……ちょっ、掠った、殺す気っすか!」

鯱と言う男の意外な純情さを知り、その代わりに彼の部下達は地獄を見た。


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