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No.37930の一覧
[0] 万事屋はやてちゃん(リリカルなのは×銀魂)[ファルコンアイズ](2013/09/16 03:07)
[1] プロローグ 雪の中の誓い[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:23)
[2] 第1話 高町なのは 魔法少女始めます 前編[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:25)
[3] 第2話 高町なのは 魔法少女始めます 中編[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:25)
[4] 第3話 高町なのは 魔法少女始めます 後編[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:27)
[5] 第4話 星光と孔雀姫[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:28)
[6] 第5話 星光と夜王[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:31)
[7] 第6話 星光と醜蜘蛛[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:32)
[8] 第7話 親の心子知らず 子の心親知らず[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:33)
[9] 第8話 目覚める魔導書[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:33)
[10] 第9話 新しい家族[ファルコンアイズ](2013/06/25 00:34)
[11] 第9.5話 星光と月光[ファルコンアイズ](2013/12/05 20:50)
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[37930] プロローグ 雪の中の誓い
Name: ファルコンアイズ◆49c6ff3b ID:5ab2f191 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/25 00:23
 永遠を生きろ、そしてその知識を次代へ繋げろ。それが主の最後の言葉だった。
 私がただの本だった頃の話だ。おとぎの国から流れた力が原因で、全ての世界が戦乱に呑まれた地獄のような時代に主は生まれた。
 とても聡明な人だった。優しさや思いやりという言葉をどこかに忘れてしまった人間ばかりの世界で、主は嘆き苦しむ人に手を差し伸べ続けた。生まれた時から備えられていた人知を超えた知識と力を決して自分の私腹を肥やす為に使う事は無く、逆に世界の全てを幸福にする為に力を使い続けた。
 どうかしている、その知識と力を自分の為に使わないのは愚かだ、皆がそう言って彼を指差した。だがその度に主は微笑んでこう答える。

「……使っていますよ、自分の為に。皆が幸せになる事が私の望みですから」

 それが本心からの言葉だと信じる人はいなかったが、それでも主は変わらずにその力を誰かの為に使い続けた。
 それはとても危うかったが、同時に誇らしかった。この人の願う世界を作る手助けが出来る事が、彼という人間が私に頼ってくれる事が嬉しかった。彼がその力で誰かを助けた時はいつも思う。この人の望みが成就するのは決して遠くない未来だと。  
 ……だが現実はそんな純粋な願いを裏切り続けた。誰もが自分の為だけに銃を取り、相手を踏みにじって行く、そして最後には別の相手に踏みにじられる。主が人の為に努力をしようと人は、いや世界は変わらなかった。
 どれだけ周りの人を幸福にしても、外ではその何十倍もの人が不幸になる。どれだけ次元の海を渡ろうと、幸福ではなく不幸が渡ってしまっていた。
 何十年と不幸ばかりを見て、所詮は無駄な事だったのだろうかと私は諦めかけていた。いくら主が人を幸福にしようと頑張っても、この世界を覆う絶望の前には呑まれるしかないのか、その時の私には分からなくなっていた。
 だがそんな状況であろうと主は諦めずに信じ続けていた、人の本質は善意で出来ていて、自分の考えが理解されれば必ず世界の全てを幸福に出来ると。
 しかしその希望も、今まで助けてきた人達が、自分のせいで死んでしまった事によって絶望に変わった。
 そして気づいてしまった、不幸を振りまいているのは世界でも人でもなく、力を行使している自分自身だということに。その姿は本を通して私に伝わった。信じた世界に裏切られ、自分が招いた死に嘆く主の姿は悲しかった、だが慰めようにも私には声を掛ける口が無ければ抱きしめる体も無い、それがあまりにも腹立たしかった。
 主は散々悩み続け、その結果自害の道を選んだ、だが全ての世界を幸福にするという願いを捨て切れなかった主は、次の時代に任せようとした。その為に今までの力と知識を私に託してこう言ってくれた。

「どれだけ想いと力が強くとも、一人の人間は時代の前では無力だ。私はそれに気づかなかったせいでこの世界に最大の不幸を招いてしまった、すべては私の傲慢が引き起こしてしまった結果だ。だから私の想いと力を託す、それを次の時代、次の持ち主に与えてほしい。人は悪を知っても悪に染まらぬ事が出来る、こんな荒んだ時代でなければ、私の想いを理解してくれる人が現れる。だから永遠を生きろ、そしてその知識を次代へ繋げろ」

 それを最後に主を見なくなった。人を信じ、世界を信じた主は自分の全てを後世に託す為に、私にその役目を与えてくれた。元はただの本にそれまでの研究を書き連ねる都合で力を与えられたに過ぎない私にはあまりにも重過ぎる役目。
 だけどその想いに応えたい、主が信じた世界を形にしたい。共に見てきたからこそ分かる、どれだけ周りから非難されようと、どれだけ絶望に塗り固められようと、主がこの世界を愛していた事、そして世界を幸福にするためだけににその力を使い続けた事、その想いだけは嘘じゃなかったのだから。
 私は本に過ぎないが、主と同じようにこの世界を幸福にしたい。祝福を与える風になりたい。

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 ある少女の話をしよう。
 誰よりも家族を愛し、自分の為に他人の不幸を望まない気高い魂を持った可憐な、この物語を彩る少女の話を。


 それは雪の降る日だった。少女は普段からお世話になっている知り合い、知人の間ではお登勢の名で通っている老婆に車椅子を押してもらって両親の墓参りに向かっていた。肌を突き刺す12月の寒気は雪と共に、まだ小学校に上がっていない幼い少女の体に容赦なく降り注ぐが、お登勢は持っていた和傘を少女の乗る車椅子を覆うようにかざす。

「お登勢さん、私は平気ですから無理しんといてください」

 自分を気遣っている事に気づいた少女は関西弁交じりの言葉を遠慮がちに言いながら和傘を退けようと両腕をバンザイするが、お登勢は和傘を持つ右手を少し上に上げ、少女の射程外へと避難する。年齢の割に背筋をまっすぐに伸ばしている彼女の背は高く、その彼女に高く上げられた傘を少女がどけるのはかなり無理があった。

「……ガキがいっちょまえに遠慮してんじゃないよ、私はアンタと違ってこの程度の寒さなんざなんともないのさ」

 そう言ってお登勢は自分を伺う少女の顔を見る。
 少し長い程度の茶色いおかっぱ頭と、くりっとして可愛らしい眼をした小柄の女の子。将来は間違いなく上玉になると、お登勢の経営しているスナックの常連達に評判の少女は、心配そうな表情で彼女を見る。

「で、でも肩や頭にたくさん雪が積もってるし、遠目から見ると傘を差してるのに雪まみれになってる変な人に見られますよ? ただでさえお登勢さん顔が濃いから妖怪みたいに見えるのに」

「随分な言い草だなオイ!? テメエは普段から私の事をそういう風に見てたのか! ここで捨ててやろうか!」

 恐らく本心から心配してるからこそ出てきた少女の言葉は、しかしお登勢がキレるのに十分な暴言だった。っというか余計なお世話にも程がある。
 だが少女はそんな反応が面白かったのか、ただにっこりと笑って返すだけだった。邪気のない笑顔を見せられてお登勢はそれ以上怒る気力もなくなり、やれやれと言いながら言葉を続ける。

「とにかく余計な気遣いなんかいらないよ、ババアの親切は素直に受けるのが子供の仕事だよ」

「むぅ、人が心配してるのに子供扱いは止めてくださいよぉ」

「アンタみたいなチンチクリンは世間じゃガキとして扱って正解なんだよ。せめてこの傘に手が届くくらいでかくなってから言うんだね」

「うぅ~、お登勢さんの意地悪!」

 完全に子供扱いされていることに気を悪くした少女は両方の頬を膨らませ、お登勢から眼を背けた。そんな微笑ましい姿に、大人ぶっていてもまだまだ子供だねと思う反面、そんな子供っぽい姿を見せてくれる事に、彼女は心のどこかで安堵していた。
 少女は同年代の子供達に比べて非常にしっかりしていた。両親がいないことが影響しているのか、周りの大人に迷惑を掛けられないと考えている節がある、生まれつき足が不自由である事にも悲観せず、一応は親代わりをしている自分にさえ面と向かって頼った事が無い。

「……いつまでもそんなんじゃ困るけど、今のうちだけでも頼りな」

 聞こえないようにお登勢はぼそっと呟く。
 目の前の少女が良くできているのは分かっている、両親を生まれて間もなく無くして、さらに歩けない体だと知った時、お登勢はまるで自分の事のように憤っていたというのに、当の本人は一度だってそれを理由に弱音を吐こうとしない。
 しかしだからこそ不安になる事がある。自分はこの子の助けになれているのか、またはただの重荷にしかなれていないのか、決して口には出せない不安が彼女にはあった。
 そんな事を考えているうちに町の墓地に着いた。様々な墓石が所狭しと並んでいるが、お登勢は慣れた足取りでその中を歩き、『八神家之墓』と書かれた墓石の前に少女の車椅子を置く。

「着いたよ、でも本当に何もしなくて良いのかい?」

「もう何度も言わせんといて下さいよ、いっつもここまで押してくれるだけでも感謝してるんですから、これくらいは自分でしないと」

 人懐っこい笑顔を向けながら、少女は墓の前で作業を始める。積もった雪を払いのける所から始まり、墓石に水を掛けて洗い清め、線香に火を付けてお供え物のおはぎを墓前に供える。
 見慣れているとはいえ、その手際の良さにお登勢は息を漏らしてしまう。自分は死んだ旦那の墓参りでここまで丁寧にやっていただろうかと思わず考え込むが、少なくとも供え物に手作りのお菓子を持っていく事は気まぐれでもなければやらない事は覚えていた、だが目の前の少女はそれをする為に前日におはぎを作っている。
 お菓子だけではない、せがまれても教えられなかった家事などををいつの間にか覚えて自分でやってしまう。お登勢は何度も止めさせようと説得したが、少女はいつも頑なに拒んでいた。
 それが自分のハンデをハンデと見られたくない少女なりの背伸びなのか、もしくは親代わりのお登勢に迷惑をかけている事に負い目を抱いているのか、本人にしか分からないがそれで折れるのはいつもお登勢だった。

「……情けないね」

 本当なら無理矢理にでも家事を止めさせなければいけないはずの自分が、こんな小娘1人に気圧されている状況は、誰の目から見ても情けない大人と思われてしまうだろう。本人の意志を尊重させていると言えば聞こえは良いが、結局はこの小さい少女の言葉に甘える為の言い訳にすぎないのだという現実に、お登勢は小さく笑う。
 そう考えているうちに少女は墓前で眼を瞑り、手を合わせている。お登勢も少女の隣でしゃがみ込み、同じように手を合わせて黙祷する。その時だ。

「おい、それ食いもんか?」

 墓が二人に語りかける。だがそれは墓が喋ったのではなく、その裏で寄り掛かっている男が喋っているだけだったのだが、真正面から見ると本当に墓が喋っているように見える。
 落ち武者、お登勢は男の生気の無い声と僅かにはみ出ていている白い羽織のボロボロ具合からそう判断した。
 突如飛来した異星人――天人(あまんと)――を相手に、この国を護る為に戦い続けた侍と呼ばれる連中の成れの果て。本当ならそんな危なっかしい奴を見かければすぐにでも少女を遠ざけるべきなのだが、この男はそこまで警戒する必要は無いと彼女は思った。スナックのママとして様々な境遇の人間を見てきた彼女は、雰囲気でどういう人間なのかを漠然と分かるのだ。

「お、お化け!? お登勢さん、お化けや!」
 
 しかし少女はまるでありえないものを見たような表情で墓とお登勢を交互に見て騒ぎ出すが無理も無い。繰り返すが大人ぶってはいてもまだ子供だ、しかし夜ではなく真昼間の時にお化けと勘違いするのもどうかと思うが。

「食べていい? 腹減って死にそうなんだ」

 男はと言うと少女の事を無視して墓前に供えられたおはぎを要求しだした。鼻が良い奴だと呆れたお登勢はこう言った。

「そいつは私じゃなくてこの子が作ったもんだ。食いたきゃこの子に聞きな」

「……えぇ!?」

 これに少女は再び信じられないものを見たような表情でお登勢を見る。確かに作ったのは自分だが、いきなり選択権を与えられるとは思いもよらなかった。
 どうしよう、こんな怪しいお化けに食べさせて良いのだろうか? 混乱した頭で必死に考えるが。

「……嬢ちゃんよぉ、それ食っていいか?」

 その少女の前に突然男が姿を現した。何日も洗っていない事が分かるほど汚れきった白い髪、どこか枯れている印象を与える精気の無い眼に傷だらけの胴当て、そして上から羽織った白い着物の至る所に黒く変色した返り血の後が幼い少女の目に焼き付いた。それと同時に、この男が自分には想像もできないほど苛烈な戦いに身を投じてきた事も理解できた。

「……ぁ」

 そんな怪しい男に対して、少女は不思議と警戒心が薄れていた。お化けではなく足の付いた人間だったという理由もあるが、その顔を見た瞬間、男がどういう人間なのか何となく理解できたのだ。
 あぁ、この人はそんな怖い人やない、そうに違いない。少女はそう確信した。目の前にいる人はテレビに出てくるような悪い人とは程遠い、そもそもそんな人がこんな所にいるはずがない。根拠はまるで無かったが、少女は自分の考えを信じることにした。
 人差し指を口に当て、う~ん、と考えること数秒。

「お母さん達が良いって言うのなら、食べてええよ」

 少女はいつもの調子で冗談交じりにそう答える。

「そうかい」

 それを聞いた男はそのまま迷うそぶりを見せずに墓前のおはぎをその場で食べ始める。まるで遠慮の欠片もない図々しい姿を、少女は何が楽しいのかニコニコしながらジーっと眺めていた。まさか本当に自分の両親と話したと信じているのか。
 おはぎを食べつくした男は何も言わずにまた墓の裏に戻ってしまう。少女は意を決して話しかけた。

「お母さんとお父さん、私の事で何か言ってた?」

 これに男は間髪要れずに答える。

「知らねえ、死人が口利くか」

 その言葉に周りが沈黙で支配されたが、お登勢は内心当然だと思っていた。目の前の男は幽霊でも何でもない、普通に生きた人間である自分達と会話をしている時点で死人と会話が出来るわけが無い。仮に出来たとしてもこの墓に肝心の少女の両親がいる保証なんてどこにもないのだ。

「むぅ、なんやねんそれ、お化けの癖に自分の存在否定すんな!」

 だが少女の方は納得がいかないようだ。冗談とはいえ一応は自分の親の許可を条件に出したというのに、そんな身も蓋もない事を言われて、はいそうですかと割り切る事は出来ない。

「誰がお化けだよ誰が、俺は正真正銘、重力に魂を縛られた人間だ。そんな得体の知れないものと会話なんてニュータイプの仕事だ」

男は男で訳の分からない事を言いながら手に付いたアンコを綺麗に舐める。
 
「人間ならバチ当たりや、それで祟られても知らないからな」

「大丈夫だ、死者に俺を裁く事は出来ねえ。そんな物はいないと信じれば幽霊なんて存在しない事になってんだ」

「どこの子供の理屈や!」

「ある漫画の主人公の妹が言っていた」

「ほんまに子供の理屈やないか!!」

 口論がどんどんエスカレートして何とも子供っぽい言い争いが始まる、すっかり蚊帳の外に置かれたお登勢は頭に手を置いて何度目かのため息を出す。この手の良い性格をした人間は幼い少女には荷が重いだろうと思った時だ。

「死人は口も利かねえしおはぎも食わねえ、だから勝手にテメエの両親に約束してきた」

 それまでの軽薄なものとは違う真面目な口調に、少女はきょとんとした表情で言葉を待った。そして男は僅かな沈黙の後に、こう言った

「この恩はぜってー忘れねえ、アンタ達の子供、これから生きていくには不自由だ。だからその足が治るまで、俺がこいつの足になって護ってやる」

 それが男、坂田銀時との出会い、雪の降る墓場で男は車椅子の少女を護ると誓い、少女はそんな嘘のような話を信じた。
 戦争の傷跡が色濃く残る日本の江戸で、少女、八神はやては最初の家族と出会う。




あとがき
 どうも皆様、ここまで読んでいただきありがとうございました。
 万事屋はやてちゃん、略して『よろはや』は如何だったでしょうか? プロローグは銀さんとはやての出会いを描いたものでしたが、作者の力量不足から原作のお登勢さんの出会いを改変しただけの代物になってしまいました。今後の課題です。


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