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No.33454の一覧
[0] 【チラ裏から】高町なのはの幼馴染(全裸)[全裸](2014/11/12 02:33)
[1] 新人二人と全裸先輩[全裸](2012/06/21 09:41)
[2] 機動六課と雑用担当全裸[全裸](2012/07/02 14:42)
[3] 聖王教会と全裸紳士[全裸](2012/07/15 23:22)
[4] 狂気の脱ぎ魔と稀代の全裸[全裸](2012/07/15 23:23)
[5] 機動六課と陸士108部隊[全裸](2012/08/15 02:00)
[6] ツインテール後輩の苦悩と全裸先輩の苦悩[全裸](2014/11/12 02:33)
[7] オークション前の談話[全裸](2012/10/21 03:18)
[8] オークション戦線[全裸](2012/12/06 04:50)
[9] 女装系変態青年の宣戦布告[全裸](2012/12/06 04:47)
[10] ナース服と心情吐露[全裸](2013/12/07 14:05)
[11] 閑話[全裸](2014/02/01 01:52)
[12] 全裸と砲撃手[全裸](2014/04/15 19:24)
[13] 全裸と幼女[全裸](2014/08/19 01:07)
[14] 全裸と幼女とツンデレと機動六課という魔窟[全裸](2014/11/12 02:42)
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[33454] 【チラ裏から】高町なのはの幼馴染(全裸)
Name: 全裸◆c31cb01b ID:ae743e2c 次を表示する
Date: 2014/11/12 02:33
 高町なのはには幼馴染がいる。
 その幼馴染との出会いについて尋ねると、高町なのはは嫌な思い出を封印するかのように決まって口を固く閉ざす。親友のフェイト・T・ハラオウンや八神はやてらが尋ねても同様に、高町なのはは幼馴染との出会いに関しては誰であろうとも差別することなく、徹頭徹尾のノーコメントを貫く。
 しかも、若干不機嫌になりながらである。管理局のエースオブエースと評される彼女は、仕事に対して真面目で、優しく、誠実に、時々頑固ではあるものの、そう評されるだけの成果は常に挙げてきた。上からも下からも信頼を寄せられ、期待され、それに答えることが出来るのが、エースオブエースと呼ばれるようになった由縁だ。
 そんな彼女が一方的に、理不尽に、有無を言わさず不機嫌になるのが、幼馴染との出会いに関して尋ねられることである。こう考えると、この話題に対する高町なのはの態度がおかしいことに気づくだろう。むしろ、おかしいというレベルを通り越して異常とも言えてしまえる。
 親友の一人であるフェイト・T・ハラオウンはこう答える。

「なのはと会ったばかりの頃だったかな……なのはの傍に気づいたらいる男の子について尋ねたら、露骨に話題を逸らされたことがあるんだ。ああいうのを拒絶っていうのかな……あの頃はそういうのにも慣れていたけど、なのはにやられると結構へこんだなぁ……」

 親友の一人である八神はやてはこう答える。

「軽いコミュニケーションっていうか、そないな理由で聞いたことがあるんよ。なんせ、いつのまにかおる男の子なもんで私も気になってしょうがなくなって、簡単な話題作りのつもりで尋ねたんやけど……あれやな、ジャブで牽制したらガゼルパンチでカウンター食らった感じやったね」

 二人とも相当驚いた経験を持っているらしい。高町なのはが見せた明確な拒絶の記憶を、大人になった今でも鮮明に覚えているようだった。若干顔が青ざめているのも、当時味わった恐怖を連想させる。
 それでは、そんな高町なのはに露骨な拒絶を促してしまえる、件の幼馴染とはどういった人物なのだろうか。
 親友の一人であるフェイト・T・ハラオウンはこう答える。

「えっと……うーん、掴みどころがないっていうか、掴んでいるんだけど実感がわかないっていうか……突拍子もない行動するのが基本なんだけど、それが廻り回っていい方向に転がったり、でもその殆どがどうしようもなくカオスな展開になったり……うーん、私もよく分かっていないのかも。あ、でも言えることが一つだけあるよ」

 親友の一人である八神はやてはこう答える。

「まあ……よう分からん人やなぁ。あれが天然なのか、狙ってやっとるのか……狙ってやっとるんなら大した度胸やけど、天然でも度が過ぎとるレベルやし……あ、いやな、それが不快になるってわけでもないんよ。笑える人やし、たまに鋭いことも言ったりするし……ああ、駄目や。私ではあの人を説明でけへんけど、それでも、言えることが一つだけあるんや」

 二人とも彼のことを上手く説明できないらしい。
 だが、二人とも彼に対する一つの結論めいたものを持っているらしく、一呼吸置いてから同時に言葉にした。

「変態だと思う」
「変態やね」



 第一管理世界ミッドチルダ。次元世界を管理する時空管理局の活動起点となる世界であり、数ある次元世界の中で最も魔法文化が発達している世界でもある。ミッドチルダ式魔法の発祥の地であることからも、ここミッドチルダが次元世界の魔法文化そのものの発展に及ぼした影響は計り知れない。
 そのミッドチルダを代表する都市である首都クラナガン。ミッドチルダにおける時空管理局地上本部のお膝元であるこの都市は、局員たちの日夜弛まぬ努力により犯罪率も低く、全次元世界の中でも治安が良い方だとされている。
 もちろん、いかに時空管理局の起点であるミッドチルダとはいえ、次元犯罪が全くない、というわけでは決してない。魔法文化が最も発達しているということは、犯罪者が魔法を使えるケースが多いということでもある。他にも、魔法資質が無いことを呪った人間が違法な銃火器を用いて自棄を起こしたり、愉快犯的な思考で人口の多い都市で一波乱を起こしたい、といった厄介な犯罪者も少数ながらいるのが事実だ。
 しかし、そういった少数の次元犯罪を抑制し、犯罪率の低下を示す成果が近年挙げられていることからも、やはり首都クラナガンの治安は良く、総じてミッドチルダの治安が良いことにも繋がっていく。
 そんなクラナガンのお昼時でメジャーな光景となっているのが、商業区画を東から西、北から南、まさに縦横無尽に大通りを爆走する全裸の男が、背後から迫る桃色の弾丸に追いかけられる、そんなありきたりな光景だ。
 この時間帯の街中に人は多く、デパートへの買い物客や学校をサボっている学生、主婦仲間の井戸端会議、昼休憩中の管理局局員の姿など、一言で言ってしまえば多種多様である。
 そんな多種多様で片づけられる光景の一つに、“全裸の男が桃色の弾丸に追いかけられる”が街中の人々の間で広く認知されている。道行く人々の反応は様々で、「あっ、全裸だ」、「ああ、もう昼なのか。早く買い物済ませなきゃ」、「この光景も久しぶりだな、謹慎が解けたのか」、「股間のステルス魔法は衰え無しのようだな」、など目の前で繰り広げられる捕り物劇を呑気に観賞する人もいる始末である。

「こらぁぁぁぁ! 謹慎開け早々にストリップ散歩とか本当にいい度胸してるの! 私の休日を返してよ!」
「うおっ!? ちょ、袋にかすった! 俺の息子たちが魔力ダメージで昏倒してる!?」
「どうせすぐに亡くなるんだからどうでもいいの! さっさと捕まりなさーい!』

 股間にステルスを施した全裸男は身体を逸らし、曲げ、うねらせ、柔軟に、強引に、後方から迫る数多の魔力スフィアを回避していくも、数発は回避しきれずにステルスを施した股間を掠めていく。自身の尊厳が傷つけられるスリルに身をやつすも、全裸男は一向に大人しくなる気配がなく、むしろこのスリルがテンションの増長を生んでいるようにも伺える。
 一方、そんな全裸男を後方から追っているのは、空中を飛行している管理局員の女性だった。栗色の髪をツインテールに結わえ、白を基調としたバリアジャケットを身に纏っており、左手にはデバイス、右手は人差し指を伸ばしてスフィアを誘導制御しているようだ。女性の表情は怒りの形相に染まっており、下手したら犯罪者一歩手前の恐ろしさを放っている。数多のスフィアをまとめて誘導制御し、捕縛するために人体急所の一つである全裸男の股間を躊躇いもなく狙い続けるが、股間に施されたステルス魔法に感覚を阻害されているのかなかなかクリーンヒットしない。

「高町のやつ、久しぶりに俺に会えて嬉しいからって張り切り過ぎだろ! 俺のエクスカリバーが砕けちまう!」
『マスターの自意識過剰と自信過剰には頭が下がります』

 全裸男がネックレスにしている蒼い宝石が明滅し、女性の機械音声が聞こえた。全裸男は器用にサイドステップを繰り返して魔力スフィアを回避しつつ、胸元の相棒に話しかける。

「おいおいラファール、気安く俺を褒めるなよ。思わず照れちまうじゃねえか」
『本当に気持ち悪いマスターですね。――ああ、高町様のシューターが後方から二発来ていますので、そのまま左にお避け下さい』
「よし、まかせろ!」

 相棒であるインテリジェントデバイス“ラファール”の言うとおりに避ける全裸。――ラファールの助言通り、左にステップした全裸男の股間を二発の魔力スフィアが掠めていく。

「あひん!? ――おいラファール! お前の言う通りに避けたら股間がヤバイんだが!?」
『ふむ、なかなかクリーンヒットしませんね。マスターのステルス魔法はやはり厄介です』
「あれー? マスターの味方をしないデバイスがここにいるよ?」
『私は治安を守るための最善の助言をマスターに与えているだけですが?』
「くっそ! この裏切り者め、後で覚えてろよ! 高町から逃げ切ったら、ネットの大海から大量のエロ画像や動画をお前にインストールしてやるからな! ウィルスに塗れて喘いでも助けてやんねーからな!」

 まったく悪びれることなく、むしろ当然のことを言っているまでだと言わんばかりのラファール。対する全裸は負け惜しみのセリフを言い捨てて前を向き、自身の逃走経路について思考する。
クラナガンの通りは広く狙われやすいが、通行人を壁にしたりすれば回避することは容易い。
 ただ、自分を見た通行人は大抵が悲鳴を挙げて逃げようとするため、それをバインドで絡め捕ったりして弾幕代わりに空中に放り投げる必要があったりする。それに、壁役となる人間の数にも限りがあり、いつまでも同じ戦法を取っているわけにもいかない。
 こちらからも魔力スフィアで迎撃できれば楽なのだが、この全裸はそういった攻撃魔法にリソースを少しも割いておらず、ラファールにも補助魔法や防御魔法、移動魔法といったものしか登録していないため、迎撃という選択肢は全裸男には存在していない。
 そのため、現在は知り合いから伝授してもらった“ブリッツアクション”で動きを高速化し、股間にはモザイクを兼ねたステルス魔法を施すことで、なんとか股間への魔力スフィアによるダメージを最低限に抑えていた。
 さて、どうするか。
 現在走っているのはクラナガン中央区画の商業エリア。多くの店が立ち並び、人だかりという名の壁役も多数いることから回避に関しては問題ない。いくら高町とはいえ、一般市民を巻き込んだ砲撃魔法をぶち込めるほど人間を棄てていないはずだ。
 だから、高町は誘導制御型の“アクセルシューター”で自分だけを狙い撃ちしているんだろう。――後方斜め右から迫る魔力スフィアを、左から右への高速フェイントを交えて回避し、そのままの勢いで十字路を右折しながら思う。高町の誘導制御は完璧だ。そういった技術には“からっきし”である全裸も、素直に感心してしまう域にある。
 この股間に施されたステルス魔法は、魔導師が“狙って”当てられるようなぬるい隠蔽ではない。全裸の唯一の武器といってもいいステルス魔法、高町風に言えば全力全開の力を込める唯一の魔法だ。ありとあらゆる認識を阻害する魔法、それは誘導制御といった精密な操作を必要とする魔法には相性がいいはずなのだ。適当にぶっ放した流れ弾が“偶然”当たってしまうならあり得るが、“狙って”当てられることはまずないと自負している。
 だから、全裸男は額に流れる汗を拭った。自分が追い詰められているという感覚。なかなか体験することが出来ない最高級のスリルに、全裸男は口端を歪ませる。――こんなスリルを体験したのは、全裸でジェットコースターに乗った時以来だろうか。安全ベルトを外し、生まれたままの姿で全身に風を浴びた記憶が蘇っていく。股間がヒュンとした。

『マスター、どうして私はあなたをマスターと呼ばなければならないのでしょうか』
「いきなり哲学すぎる質問だがどうした?」
『あなたが私のマスターでなければ、もっと早く決断できたでしょうに。やはり、デバイスとしての存在意義が決断を鈍らせるのでしょうか。――デバイスがマスターを危機に陥れることなど、決してあってはならないと』
「おーい?」
『しかし、私も世の平和の為に振るわれるべきでしょう。いかにあなたがマスターであろうとも、街中を全裸で疾走する存在が駆逐されないわけにはいかないのです。――すみません』

 唐突すぎるラファールの謝罪に、全裸男はクエスチョンマークを浮かべるだけだった。
 次の瞬間、全裸男は自分が走っている場所が“人気が全くない”ことに気付く。並び立つ店の入り口にはシャッターが下りていて、ついさっきまで感じていた商業エリアの活気が失われていた。――相棒であるインテリジェントデバイスの言っている意味に気付いたのは、その数秒後のことだった。



 高町が目の前を疾走している全裸男が罠にかかったことを確認するのと同時、相棒であるインテリジェントデバイスのコアが明滅する。

『マスター、ラファールから了解が出ました。“Exceed Mode-A.C.S-”の使用を推奨します』
「了解。行くよ、レイジングハート!」

 その刹那、魔力の奔流が吹き荒れた。
 まず変化が起きたのは、高町のバリアジャケットの形態だ。ミニスカートからロングスカートに、ハイソックスがブーツに、襟のデザインの変更や胸元のリボンが無くなっているなどしている。このバリアジャケットの変化は、先ほどまでの軽量で汎用性に優れ、魔力消費を抑えることで“長時間の汎用的活動用”に適した形態から、高機動、省魔力の概念を取っ払い、絶対的な強度を誇る“完全な戦闘用”へとシフトしたことを示している。
 もう一つ変化が起きているのは、左手に持つインテリジェントデバイス“レイジングハート”の形状だ。先ほどまでは赤色の宝石を先端部にあしらった、いわゆる小説に出てくるような“魔法の杖”だったが、今では先端のフレームが槍状に変化し、安定化を図り命中率を上げるためかグリップが付加されていた。

「レイジングハート、ストライクフレーム展開!」
『イエス、マスター』

 高町の言葉と同時、レイジングハートの槍状となった先端部が左右に展開し、その隙間に魔力で形成された刃が生じる。超高密度の魔力で形成されたそれは、高町の魔力光である桜色を超えて紅に近い輝きを放っている。フレーム付近には六枚の魔力翼が展開し、膨大な魔力の流れがそこにあることを示していた。
 A.C.S展開状態となったことで、瞬間的な出力の増大、飛翔補助による加速効果、ストライクフレームによる攻性フィールド生成機能を得た高町は、周囲の大気を切り裂き、全裸男目掛けて突撃する。
 全裸男を誘導弾で牽制しつつ、前もって一般人を非難させていた方向へ“誘導”出来た。それにより、一般人を巻き込むことなく、心置きなく全力全開で全裸男に一撃をぶちかますことが出来る。――その準備がようやく整ったのだ。
 ちなみに、A.C.Sとは“Accelerate Charge System”の略称であり、この状態の高町が取る戦術は砲撃魔道師であるにも関わらず“瞬間突撃”である。

「うお!? きたねー! きたねーぞ高町! 善良な同僚に対して何だその全力全開は! それでも管理局のエースオブエース(笑)かお前!」
「うるさいの! 善良な同僚が全裸で街中を散歩なんかするわけないでしょ! それにエースオブエースが目の前の変態を見逃せるわけないの! あと(笑)を付けないでよ私も恥ずかしいんだからぁ!」

 高町は激昂する。A.C.S展開状態となったことで、全裸男との距離はみるみる縮まり、目前にまで迫っている。――ストライクフレームで主に狙うのは、腰回りのステルス補助がかかっている場所だ。ストライクフレームの攻性フィールドによりステルス機能を破壊し、周囲に待機させているスフィアで股間を穿つだけ。ステルス補助のせいで魔力スフィアの目測も誤り、バインドで捉えることも出来ない、そんな目前の全裸を捕縛する際に高町が用いる最後の手段である。

「レイジングハート、ごめんね。任務とはいえ、賢一君目掛けて突き出すなんて……」

 思い返せば、股間に直接ストライクフレームを叩き込んだこともあった。あれは自分にとっては忌まわしい記憶の一つに分類されている。忘れたくても忘れられない、そんな記憶だ。――そう考えると、今回のように後方から突っ込む分には、まだ精神的に楽なのかもしれない。

『謝らないでください、マスター。今回で298回目、何度も繰り返している内に慣れましたし見飽きました』

 冷静にして情熱的である長年の相棒はヨゴレ役を担当していた。今日に至るまで幾度となく繰り返されてきた、このありきたりな捕り物劇。それが彼女の精神を摩耗させ、遂には見飽きたとまで言わせてしまう。何度も全裸の下半身目掛けて突き出されることに、彼女はどんな気持ちでいるのだろうか。
 高町は視線を上げる。全ての元凶はあの全裸。自分が休日に駆り出されていることも、情熱的な相棒のやる気が著しく削がれていることも、この捕り物劇がクラナガンで名物となっていることも、そのありとあらゆる全ての恨みを込めて全裸に突撃した。
 ストライクフレームが直撃したのは全裸の尾骨周辺。腰回りを覆っているステルスは破壊され、全裸がステルス無しの文字通りの全裸で衝撃のままに宙を滑空する。続いて、高町は待機させておいた魔力スフィアを全裸の股間目掛けて誘導制御、ステルス補正がかかっていない股間など絶好の的に過ぎない。
 高町は声を高らかに、恒例となっている捕り物劇の終幕を告げた。

「――シュート!」

 合計四発。魔力スフィア四発分の魔力ダメージを股間に負った全裸は、時間にして三十分の逃亡劇が終わったことを示すかのように、静かに地に伏した。



“クラナガン対全裸特別警戒警報”が鳴り止む。これはつまり、エースオブエースが全裸を捕縛したということだろう。一人の中年男性は肩の力を抜き、椅子に体全体を預けるように脱力した。

「……やれやれ。謹慎開け早々やらかしてくれるやつだ」
「あはは。賢一君も相変わらずやなー」

 中年男性の呟きに女性の声が続く。茶髪を肩口まで伸ばしたショートカットの女性は、中年男性とは対照的に笑顔を浮かべている。それはまるで、“出来の悪い弟の奇行を笑い飛ばす姉”のようである。

「笑い事じゃねえぞ、八神。あいつの全裸癖のせいで、また上からとやかく言われんだからよ。――まったく、あいつのせいで煙草の本数が増えちまった」
「ナカジマ三佐にはご苦労様ということで。恨むなら、賢一君のレアスキルを重宝している上層部にでもどうぞ」
「……まあ、結局は高町の嬢ちゃんが片づけてくれるんだから、俺も大して苦労してるわけじゃないんだけどな。上からの苦言つっても、あいつらもそこんとこ割り切ってるからなのか、つまんない小言程度だし」

 だがな、とナカジマ三佐と呼ばれた中年男性は、煙草を灰皿に押し付けながら言葉を続ける。

「あいつの全裸癖はどうにかならんのか? ギンガのやつも口煩く説教してるみたいなんだが、一向に改善される気配がねえ。流石のあいつも心が折れかかってやがる」
「うーん。賢一君の唯一といってもいい特徴ですからねぇ。そこんとこ本人もわかってるみたいですし。――自分の生き様っていうんですかね。昔から「女子の前で股間晒すな!」ときつく言っているんですけれど、数年たった今でもあの調子です」
「……本当に馬鹿なんだな」
「加えて変態ですよ、賢一君は」

 八神の言葉を受けて、ナカジマ三佐は諦めたようにため息を吐く。
 あの全裸馬鹿を受け持ってから早数か月。余所から「もうウチでは扱いきれません!」と泣き言を言われ、情けないと思いながら安請け合いしてしまったツケが来ているのだろうか。噂には聞いていたが、まさかあれほどの馬鹿だとは思ってもいなかった。
 ナカジマ三佐は過去の自分を呪いながら、自分の頭痛の種となっている元凶を忘れるために話題を変える。

「――それで。八神の方はどうなんだよ? 新部隊設立の件は通ったのか?」
「……ああ、はい。まあ、一応」

 八神の表情が一変した。聞いてほしくないことを聞かれたかのような、いわゆる地雷を踏みぬいてしまったことに気付いたナカジマ三佐。
だが、かねてより願い出ていた“自分の部隊”を持つという夢が叶ったのだから、八神は本来なら笑うなどポジティブな態度を示すべきだろう。それなのに、目の前の後輩が浮かべているのはネガティブな笑みだった。
 これは何かおかしい。しかし、下手に踏み込んだら巻き込まれるかもしれない。さて、どうしようかと悩んでいると、逃がさないとばかりに八神が先手を打つ。

「機動六課の設立は通ったには通ったんですけど……」
「いや、まて、聞きたくない。この流れから予測すると、俺がお前に同情するみたいな展開だろ。ただでさえあの馬鹿のせいで胃が痛いんだから、これ以上、俺の負担を煽るのは勘弁してくれ」
「それが、めんどうな条件を提示されてしまいまして」

 八神は聞く耳を持たない。いや、聞いてはいるが聞き流しているだけだ。無駄に度胸が付いたかつての部下の姿は、ナカジマ三佐に時の流れとは残酷なものだ、ということを嫌という程に見せつける。

「私も途中からおかしいとは思っとったんですよ。ほら、私って巷では“夜天の主”とかいう痛いネーミングセンスで呼ばれとるし、昔の事件で好意的に思えへん人も局内に一杯いること知っとるし、こないな簡単に通るわけがないやろ! ……って思っとったら案の定ですわ」
「おい八神、地が出てるから落ち着け」

 ナカジマ三佐の制止も聞く耳持たず、八神は湯呑に注がれたお茶を豪快に一気飲みし、血眼になりながら部隊長室で叫んだ。

「なんで機動六課で賢一君の御守りせなアカンねん!」
「あー……あれだな。高町の嬢ちゃんがいるんなら、あの馬鹿も一緒に放り込んどけば抑止力になるんじゃねえかなーとか思ったんだろうな」
「そないなヨゴレ役はなのはちゃんだけで充分やのに、まさかここでうちにお鉢が回ってくるなんて。――ああ、私も賢一君が全裸でうろついとるの見たら、ついついデアボリック・エミッションを叩き込んでしまうんやろうか……」
「何気に酷いこと言ってるぞお前」

 八神は錯乱している。今までは第三者の立場でいられたからこそ、他人事のように親友と全裸の捕り物劇を楽しむことが出来た。それは絶対的なアドバンテージであり、あの全裸男と接する際には最も失ってはならない条件である。
 だが、そのアドバンテージも失った今、八神は真っ向から全裸と向き合わなければならない。線が交わっているようでいて、微妙にズラすことに成功していた関係が、これからは機動六課の部隊長と部下といったように、交わらざるを得ない関係を築くことになる。それによるストレスが如何ほどになるのか、彼女はこれから嫌というほど知っていくことになるのだろう。
 ナカジマ三佐は目を伏せる。――自分が言えることは何もない。あの全裸の手綱を上手く握れていたならまだしも、自分は一方的に振り回されていただけだ。全裸を抑制するための具体的な策なんて持っていないし、仮にそんなものがあるならこっちが教えて欲しい。
 だから、ナカジマ三佐は多くを語らない。彼女がここに足を運んだ理由が覆されないように先回りして、自分に出来る精一杯の感謝を込めて承認するだけだ。

「陸士108部隊所属、鳴海賢一の機動六課への出向を部隊長権限として許可する。――ありがとう、八神」
「……ナカジマ三佐を恨むのはお門違いなんやろうけれど、今日ばかりは理不尽と思いながらも恨ませてもらいます」
「それぐらい安いもんだ。どうだ、仕事が片付いたら飯にでも行くかよ?」
「そうですね……ご馳走になります」

 これは機動六課発足、その一か月ぐらい前の出来事である。


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