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No.32515の一覧
[0] リリカルなのは+1 Choices of girls (♀オリ主)(チラ裏から)[HE](2012/07/07 12:52)
[1] プロローグ[HE](2012/06/26 18:56)
[2] 1話 記憶と記録[HE](2012/07/13 14:12)
[3] 2話 再生と搬送[HE](2012/06/26 18:57)
[4] 3話 覚醒と偽名[HE](2012/06/26 18:57)
[5] 4話 追求と遭遇[HE](2012/06/26 18:58)
[6] 5話 戦闘と水音[HE](2012/07/13 14:16)
[7] 6話 過去と現在[HE](2012/06/26 18:58)
[8] 7話 出立と学友[HE](2012/06/26 18:59)
[9] 8話 海岸と金色[HE](2012/06/26 18:59)
[10] 9話 虚偽と運命[HE](2012/06/26 18:59)
[11] 10話 決意と因果[HE](2012/06/26 18:59)
[12] 11話 歓迎と歓迎ではないもの・前編[HE](2012/06/26 19:00)
[13] 11話 歓迎と歓迎ではないもの・後編[HE](2012/07/09 22:46)
[14] 12話 追憶と選択[HE](2012/07/10 23:28)
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[32515] 6話 過去と現在
Name: HE◆d79c5ab7 ID:6a56e0f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/26 18:58

夢を、夢を見ている。
遠い昔に過ぎ去った思い出――初めて"選択"した時の夢だ。
暗闇の中、誰かが問いかけてくる。
後悔している? そんな事ない。
じゃあ最良だったと思う? そんな事もない。
何故選択したの? 自分の為に。
その選択に意味はあったの? あったはずだ。
でもきっと心のどこかでもっと別の、最善や最良を求めてる。
それはそうだ。私の選択は常に最悪ではないと言うだけだったのだから。

だってそうでしょう?
声が重なる。

『世界は、いつだって、こんなはずじゃない事ばかりなのだから』


ゆっくりと目蓋が開き、瞳に光りが射し込んでくる。
深夜、本来なら闇に閉ざされているはずのこの部屋は、しかし窓から注がれる月の光りで
美しくも妖艶な姿を晒していた。

「寝れないの?」

隣からこちらを心配するようなアリサの声が聞こえる。
眠そうに眼をしぱしぱさせながらこちらを覗き込むその姿は、射し込む月明かりも合間って
そのまま絵に封じ込めて一生手元に置きたい。そう思わせる程に愛らしい。

「夢見が悪かった」

「ふぅん、どんな夢?」

「昔の」

そう、昔の夢だ。何故今更あんな夢をみたのだろうか。身体と、環境の変化に知らず心が動揺しているのかもしれない。
あの夢は過去の自分を否定……いや、見つめ直せと、他ならぬ自分にそう言われているようで酷く不安定な気分になる。

「……ねぇ、本当の事は話してくれないの?」

「ん」

本当の事とはなんだろうか? アリスは自嘲を浮かべ頭を振る。考えるまでもない、十中八九自分の生い立ちだ。
アリサは賢い子だ。アリスの話に嘘が混ざっているのを敏感に感じ取ってしまったのだろう。
本当の事は聞かせて貰えない、でも知りたい。でも余りしつこくして嫌われたくない。それはとても恐ろしい事だ。
そういう複雑な感情をアリサは整理できていないのだ。

だから、本来なら怒気を込めて問い詰めていい場面でも、アリスの感情を伺うように不安を込め蚊の鳴くような声で
問いかける事しかできない。私を否定しないで、私を拒否しないで、と。

「今はまだ話せない」

「……いつか話してくれる?」

「話したくない訳じゃない。話せない理由があるから、だからダメ」

アリサは哀しげに顔を伏せ布団を被るようにしてベッドの中に埋没する。悲しいのだろうか、寂しいのだろうか
顔を、寝ているアリスの脇あたりに擦りつける。鼻を潜り込ませ、ぐりぐりと脇の下に頭を入れる姿は
自分以外の匂いに包まれたい、自分を守ってほしい、そんな衝動からだろうか。アリスはそれを見て少しだけ微笑み
腕枕をするようにしてアリサの頭を優しく撫でる。

「いつか全部話す」

「むぁぅ……絶対、絶対なんだからね」

「ん」

自分の事を話す、それ自体は別に構わないとアリスは感じていた。管理外世界では魔法や自分達の存在を明かす事は
禁じられている。だが管理局法とアリサ、天秤に掛ければ1秒と持たずにアリサに軍配があがるだろう。
こんな短い時間の中で随分とこの子に入れ込んでしまったものだ、そうアリスは微笑みながら考える。
だけど嫌な気分ではない、むしろ暖かい気持ちが心を通して身体に染み渡っていくようだ。
アリスは人肌を、人と接する事を、心のどこかで渇望していたのかもしれない、そう思う。だってそうだろう
ここ数年、まともな交友関係等築くべくもなかったし、話し相手はあのヘンテコ眼鏡デバイスだけだ。寂しくもなる。
そんな失礼な事を考えていると、その相手から思念通話が入る。

<<(マスター、何か失礼な事を考えていませんでしたか?)>>

「(ない)」

アリスはオラクルの言葉をにべもなく切って捨てるが、そんなツッコミを入れる為だけにこちらに思念通話を
送って来た訳ではないのだろう。オラクルはそのまま続ける。

<<(ロストロギアの魔力発動を感知しました。昼戦ったものよりはかなり小さい魔力反応ですが、如何します?)>>

「(ん……)」

どうしたものか、考える。放置しておいて良いはずがない。すぐに現地へ赴きロストロギアを鎮圧するべきだ。
そう考えるものの、隣で子犬のようにじゃれ付くアリサを見て決意が揺らぐ。
今しがたアリサを不安にさせてしまったばかりだ、この状態の少女を置いて、また何の説明も出来ずに家を出ていき
戦闘行為を行うという選択肢を良心が酷く咎める。

だが……優先順位は分かっている、間違えない。今はロストロギアを止めるのが先。
そう結論付けて、起き上がろうとしたその時

「(僕の声が聞こえる貴方! お願いです、僕に少しだけ力を貸してください!)」

頭に響くように無理やり割り込むその声に、一瞬身体が硬直する。
オラクルも驚きを表すかのようにカチカチとこちらに光を送ってくる。

「(広域思念通話……)」

<<(管理外世界でなんとも無茶な)>>

特定の相手と通話する通常の思念通話と違い、この広域思念通話は魔力素質のある人間に対して
無差別にチャンネルを開き声を届ける性質を持つ。要するに迷惑念話である。
ミッドチルダではこうした広域思念通話は、緊急性のある場合以外は基本的に禁じられていて微細なものだか罰則もある。
時々悪用して政治的な主張を繰り返す輩が居る為だ。そういった人間を昔はよく取り締まったな、等と考えながら
自分はどう行動すべきか考える。

「(迂闊に動けなくなった)」

<<(そうですね、100%ロストロギアと関係のある人物でしょう)」

念話自体は緊急性が感じられる内容で、おそらくはロストロギアの封印に失敗、または力及ばず敗走しているしている為
助けを求めている。と言ったところであろうか。もしここが管理世界ならば直ぐ様飛び出していき
救援を行うところではあるが……

「(オラクル、サーチャーを出して)」

<<(了解しました、マスター。)>>

ここは管理外世界であり、魔力素質等ほとんどの人間が持っていないだろう。そんな場所で広域思念通話である。
要するに怪しすぎるのだ。強力な魔力を保有するロストロギア、それだけでも厄介なのに正体不明の
魔導師の存在まで明らかになった。本当にロストロギアに手を焼いているのか、はたまたロストロギアを餌に
この世界に居る魔導師を炙り出そうと言うのか……判断がつかない。

「(少しだけ様子を見る)」

<<(賢明な判断だと支持します)>>

もしロストロギアの影響を受ける前、幼児化する前にこの状況に出会っていたのならば、警戒はしつつも救援に向かっただろう。
だが今は条件が違う。身体は幼児化し、自身の能力も低下している。しかも昼間行った戦闘行為の疲労もまだ残っている。
とても万全の体制とは言えない。その状態でイレギュラーを抱えてロストロギアの封印を行うのはリスクが高すぎるのだ。

そうしている内にサーチャーが現場に到着し、映像を送ってくる。

「(ねずみ?)」

<<(変身魔法でしょうか。なんででしょうね、どことなく卑猥な形にも見えます)>>

映っていたのは小型の小動物に変身した魔導師、結界を張りロストロギアの魔力体から逃げ回っているようだが……
そこまでは良い、小動物であることは予想外だったが、それ以外は概ね予想通りの展開だ。
だが次の瞬間、まったくの想定外のものが映り込み、アリスは驚愕する。

「(民間人ッ)」

<<(魔力素質があったのでしょうか、危険です)>>

そう、民間人である。歳の頃はアリサと同じ位であろうか。オレンジ色の、この世界では一般的な衣類である
パーカーに赤いスカート。焦るその仕草から魔導師とは思えない。
イレギュラーがさらに増えてしまったが、最早万全な体制などとは言っていられない。無関係の民間人が巻き込まれる様を、
しかもあんなに幼い少女を、危険に晒したまま黙って見ている訳にはいかない。

「(行く)」

<<(了解しました、お早く)>>

しかし身体を起そうとした次の瞬間、サーチャーを通して凄まじい程の魔力の奔流を感じる。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、徐々に理解し、目を見開くようにしてアリスは硬直する。
そこには彼女を軽く上回る程の強大な魔力を放出し、バリアジャケットを展開する先程の少女の姿が映し出されていた。

「(すごい)」

<<(これ程の魔力量……ミッドチルダでもなかなかお目にかかれません。レアですよ)>>

サーチャーから伝わるその魔力だけでも相当なものなのだ、正確に測定したら如何程の魔力が検出されるのだろうか。
彼女の元上司である友人も相当な魔力の持ち主だったが、もしかしたらソレに匹敵するかもしれない。
そんな事を考え……そして、この段階に至ってアリスは現場に向かうのを一旦中止した。

「(あれなら問題ない)」

<<(そうですね、もし魔法が何も使えないとしても、あの貧弱なロストロギアの魔力体ではバリアジャケットに
傷ひとつ付ける事は出来ないでしょう)>>

そうは言いつつも何かあればいつでも出れる心構えだけはしておく。が、それも必要にはならないだろう。そうアリスは考える。
何故なら彼女の手にしている杖型デバイスが、遠目から見るだけでもかなりの一品だということが伺えるからだ。
インテリジェントかアームドかまでは判断できないが、まさか何も魔法がインプットされていない等と言う事はないだろう。
そして、その考えを裏付けるように、少女が桜色のバインドを魔力体に巻き付ける姿が映し出される。

「(終わったかな)」

<<(魔導師としての経験は無さそうですが、類稀な才能をお持ちのようですね)>>

少女は少し戸惑いを見せながらもバインド越しに封印魔法を使い、ついにはロストロギアを鎮圧してしまう。
ここまでものの数分、凄まじい才能だ。封印が完了するまで少女を見守ったアリスはサーチャーを切って深くため息を付く。
本来ならば今からでも少女に接触したほうがいいだろう、なにせ初めての経験なのだ、不安に思っているに違いない。
だが、それでもアリスは動かなかった、いや、動けなかった。

圧倒的な魔力を迸らせ、初めて使うデバイスを器用に使いこなし、飛行、バインド、さらに封印。
まるで物語の始まりを見ているようで、その舞台にノコノコ今から顔出すのはとても憚られた。
これからこの少女はどんな物語を紡いでいくのだろうか。そう、アリスに思わせてしまう程その姿は眩かったのだ。

「(家政婦は見た)」

<<(誠に残念ですがマスターは家政婦でもメイドでもありません)>>

真剣な顔つきでそんな事をのたまうアリスにオラクルが突っ込む。そこには先程までの緊張感は既に無く、もう完全に寝る体制だ。
今日は色々あって疲れたな、考えるのは明日にしよう。そう思い目を瞑ろうとしたアリスだったが、不穏な空気を感じて隣を見やる……
そこには、頬をハムスターのように膨らませ、放置された事に対して拗ねている小動物がいた。
その目は若干潤んでおり、顔もふにゃっとしたものだ。どうやら軽く寝ぼけているらしい。

「余所事考えてたでしょ」

「ごめん」

寝ぼけた子と酔っ払いには敵わない。アリスは即座に言い訳をせず謝る。だがアリサは頬を膨らませたまま
むーっ。っと可愛く唸り、またもいやいやをするように脇に顔をねじ込む。
先ほどと違うのはその動きにちょっと怒ったような無理矢理感を感じるのと……

なぜかパジャマのボタンが全て外れ素肌を晒している自分の姿……なぜ?

「一個づつ外していったのに気が付かないもん」

「さむい」

「布団掛ければ大丈夫よ」

「そういう問題じゃない」

そう抵抗するも、ばさっ、とアリサに頭から布団を被せられる。一緒に布団を被った、ある意味密室空間でアリサは目に若干の涙を
浮かべながらアリスの胸板をちゅっちゅっと小さい口で啄みながら、ぐりぐりと頬を肋骨に擦りつける。
流石に素肌にその行為はくすぐったいのだが、先程まで思いっきり放置してた罪悪感からアリスは大きな抵抗が出来なかった。

「吸ったらなにかでる?」

「出ない」

即答する。何の、どこを、どう吸うのか、等聞く訳にはいかない。嫌な予感がしすぎる。
流石にそれはちょっと勘弁してほしいアリスは彼女の頬に手を這わせ、その頬を撫でるように慈しむ。
すると、その指にアリサがちゅぱちゅぱと吸い付いてきてしまうが、それを見てホッと肩を撫で下ろす。危ないところだった。

「アリスってお母さんみたいよね……」

「ん……」

いや……それは母親に対して失礼なのではないだろうか? そんな事を思って自分の身体を見下ろす。
もしかしてとも思うが――夕飯時に見たアリサの母親は服の上からでも十分に女性的な膨らみが見て取れたので
それは無いだろうと判断する。まぁ見た目の事ではなく醸しだす空気からそんな事を言っているのであろうが
それでもなんとなく負けたような、さもしい気分になったアリスは思考を打ち切ってアリサの頭を抱くようにして寝る体制に入る。

もう寝る。寝るったら寝るのだ。

「くんくんしちゃ、やぁだ……」

「大丈夫」

少し抵抗されるが寝ぼける子はあやすに限る。そんな風に結論づけ、髪を優しく撫でながら意識を暗闇に任せる。
考える事は多い、今日だけで悩み事が二つも増えてしまった。正体不明の魔導師に、現地民間人の魔導師への覚醒。
その少女の驚くほどの魔力量。トラブル続きで頭が痛くなる。だがそれよりも何よりも――
アリサがこのまま肋骨フェチにでもなったらどうしよう……そんな事を一番心配するアリスだった。



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