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No.32515の一覧
[0] リリカルなのは+1 Choices of girls (♀オリ主)(チラ裏から)[HE](2012/07/07 12:52)
[1] プロローグ[HE](2012/06/26 18:56)
[2] 1話 記憶と記録[HE](2012/07/13 14:12)
[3] 2話 再生と搬送[HE](2012/06/26 18:57)
[4] 3話 覚醒と偽名[HE](2012/06/26 18:57)
[5] 4話 追求と遭遇[HE](2012/06/26 18:58)
[6] 5話 戦闘と水音[HE](2012/07/13 14:16)
[7] 6話 過去と現在[HE](2012/06/26 18:58)
[8] 7話 出立と学友[HE](2012/06/26 18:59)
[9] 8話 海岸と金色[HE](2012/06/26 18:59)
[10] 9話 虚偽と運命[HE](2012/06/26 18:59)
[11] 10話 決意と因果[HE](2012/06/26 18:59)
[12] 11話 歓迎と歓迎ではないもの・前編[HE](2012/06/26 19:00)
[13] 11話 歓迎と歓迎ではないもの・後編[HE](2012/07/09 22:46)
[14] 12話 追憶と選択[HE](2012/07/10 23:28)
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[32515] 10話 決意と因果
Name: HE◆d79c5ab7 ID:6a56e0f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/26 18:59

「ねぇ、ユーノ君。どうすればかっこ良くなれるかな?」

海岸からは少し離れた路地……と言っても暗い雰囲気ではなく、立っている家も戸建が多い。
そんな、どちらかと言えば生活道路に近い場所を歩きながら高町なのはは独り言を呟いていた。
橙色のパーカーに赤いスカート、ごくごく一般的な装いの10歳前後の少女である。
身体的な特徴も、特に無いと言って良い。少し茶色掛かった髪、歳相応の背丈、黒の中に薄いブルーを覗かせる瞳が
特徴と言えば特徴だろうか。だが、その程度だ。

別段目を引くような要素が無いはずの少女なのだが、ただ唯一普通の少女とは違った点があった。
それは器用に彼女の肩に居座るイタチのような小動物の存在である。

「ど、どうすればって言われても……」

イタチ、ユーノ・スクライアは困ったように眉を顰める。人には人それぞれの"力"があり、千差万別と言っても良い。
それは自分自身が見出すものだ。まぁアドバイスは位は受けて然るべきだろうが……。
しかし彼は、なのはに進言するのを酷く躊躇った。何故か? それは彼が最初に思い浮かべた高町なのはの力が
最近目覚めた強大な魔の力だったからだ。ユーノは彼女にジュエルシードの封印を手伝って貰ってはいるものの
管理世界に誘う気など毛頭無かった。それはこの第97管理外世界が、そしてこの土地が、とても平和な場所だったからだろう。
もしこれが世紀末的に荒れた世界であったならば違う対応をしていただろうが……彼は今大きな矛盾に苛まれていた。

「あはは、ごめんね。ユーノ君はフェレットだもんね」

「えっ! あー、いやー……ごめん」

今の弱った自分ではジュエルシードを封印する事は難しい。彼女が居なければ不可能だろう。
それを考えると高町なのはと言う協力者を得られた事は、本当に幸運だったと言える。
だがそれは同時に彼女の平穏を乱し、危険な世界へ足を踏み入れさせてしまったとも言えてしまう。
意思の強い彼女の事だ、こんな事を言えばきっと、自分で決めた事だから気にしなくていい。そう答えるだろう。
しかしそう答えさせてしまう切掛を作ったのは間違いなく自分なのだ。責任感が強い彼は自身を許す事が出来ないでいた。

「そういえば、管理世界? ってあんなに小さくてもお仕事に就けるの?」

「へ? あ、あぁ。さっきの執務官……アリスさんだっけ」

「そうそう! 私よりも小さかったの! でもすごくしっかりしてた……」

「管理世界では能力さえあれば年齢制限って言うものはあまり無いんだ。それでも執務官なんて超難関だけどね」

「ほえぇ……そっちの世界って凄いんだね……」

「あはは、いや、あの歳で執務官なんて相当だよ。普通居ないよ」

管理世界、その中でも管理局の能力主義は特に凄い。ある意味行き過ぎていると言うレベルだ。
なにせ生まれてくる子供に魔力素養が期待出来る、そんな両親からの申し出があれば母体から生まれ落ちてすぐ、魔力検査を行い
そして結果素養ありと診断されれば僅か3歳から管理局が運営する保育所に入り、魔法をカリキュラムに入れた英才教育が始まる。
勿論教育費用は管理局から出るので、この制度を利用する親はそれなりに存在する。言わば管理局による魔導師の青田買いだ。

「それに能力主義が良い事ばかりって訳でもないよ。色々弊害もあるしね」

「う、うーん、良くわからないけど……この世界とは全然違うんだね」

「どうだろうね。僕は海鳴しか知らないから、なんとも言えないけど」

ついと、二人の会話が途絶える。
別に気まずい空気が流れている訳ではないが、二人して考え込むような表情をしている様は仲違いでもしたのだろうか?
そんなふうに見えなくもない。まぁ一人と一匹、はたから見れば可笑しい事など何もないのではあるが。

「わたしも」

「ん?」

「わたしもなれるかな? そんなふうに」

呟く様にして聞いてくるなのはに、ユーノはしばし考える。そんな"ふう"になる、彼女は何を想定して
どんなものになりたいのか? 執務官か? いや、そうではないだろう。何せ彼は執務官に関して彼女が憧れるような
説明を一切していない。それがどういう職業なのかさえも。では、何になりたいのか。簡単な事だ。
彼女はなりたいのだ。魔導師に。ただ漠然と、そう考えているのだろう。

「……なれるよ、なのはなら」

「そ、そうかな? えへへ」

言いながら、少し硬い声色になってしまったな。ユーノはそう消沈する。
彼にしてみればなのはが魔導師を目指す事に関して諸手を挙げて賛成、と言った具合には出来ない。
ならば反対なのか? というと反対とも言い切れない。そうあの魔力を、あの溢れんばかりの才能を、眼にしてしまった後では。
硬い表情のユーノを他所に、それを聞いたなのはは、少し照れながらはにかむようにして笑みを浮かべる。

その純粋で、とても愛らしい笑顔を見たユーノは消沈した意気はどこへやらドキリとしてしまい、そして次の瞬間には
こんな状況で劣情をなのはに向けるなんて僕はどうかしている! 煩悩退散煩悩退散! と頭を抱えてしまうのだが……
そんな仕草を見せる彼の方こそ純粋であろう。

「わたし、がんばるね」

「えっ!? あっ、あぁ、うん」

焦りの余りつい適当に頷いてしまったユーノだったが、決意を新たにしたなのはは別に気にしていないようで……
いや、ただ単に気がついていなかっただけか。ユーノは彼女の瞳にピンク色の闘士を見たような気がして、静かに息を吐く。
ジュエルシードの事だけでも良心が痛むのに、さらにこのままでは罪の軽減を彼女頼んでしまったかのような格好だ。
いけない、これでは、いけない。そう思うのだが、彼女の真剣な面持ちにユーノは二の句が継げないでいた。

「それにしてもアリスちゃん、すごい無表情だったよね。やっぱりお仕事はああ言う威厳が大切なのかな」

「い、いや……どうだろう? あれは素な気がしたけど……」

先程現れた執務官の事を思い出しながら思う。なのはには威厳と風格を持った少女のように見えたようだが
ユーノにはただただ無感情無表情な、そんな少女に見えていた。
事件の話も、ほとんどデバイスが進めていたようなものだったので、そのせいもあるだろうが。

「絶対驚いたりしなさそうだよね」

「はは、そうだね。驚いてる姿が想像できないや」

そう言い合いながら、お互い不意に無表情な顔を作り見つめ合う。
そして――

「あはっ、あはははは! 変な顔しないでよユーノ君」

「ぷふっ! な、なのはだってやった癖に!」

「えー! あはは、してないよぉ! ……あ、あれ?」

「どうしたの? なのは」

「あ、うん。金髪で、無口で、アリス……なんか、つい最近どこかで聞いた気がして……」

「ぷぷぷー! またまたぁ、なのはは人を笑わせようとして! あんな人ポコポコ居る訳ないよ」

あんまりな言い様ではあるが、先程の無表情タイムが腹筋を良い感じに刺激したのか、笑いながらユーノがそう答える。

「そ、そっかなぁ。そう、だよね。あはは」

「そうだよ、ぶふふっ」

こうして、アリスを肴にしながら一人と一匹は家路に着いたのだった。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「え?」

「……」

海岸に繋がる階段。その中腹辺りで、語り合う様にして二つの金色が海風に乗って揺らいている。
この土地ではあまり見ない金色の髪をした二人の少女、そんな二人が訳ありな表情で佇むその様は幻想的であり
絵に封じ込めればどれ程の価値が付くだろうか。まぁ片方の表情が幻想とは程遠い事になってはいるのだが。

「アリシア……じゃない?」

「人違い、だと思います……」

驚愕の表情を少しだけ、そう、ほんの少しだけ緩めアリスはもう一度目の前の少女を観察する。
自分の金髪とは比べものにならない、美しく煌めく金色の髪、宝石のように輝く赤い瞳、そして透き通るような白い肌。
どこをどう見ても、最近夢に見る……彼女の記憶にある少女、アリシアと符号する。
だが、居る筈が無い。居る筈が無いのだ。なぜなら彼女は――死んだのだから。

「アリシア・テスタロッサ……」

「えっ!? なんで……テスタロッサって」

「?」

会話が噛み合わない。アリスは徐々に高揚した気分を落ち着けるが、同時に何か、決定的な"ズレ"を感じていた。
何かが違う。自分の記憶に、未知の歯車が合わさってしまった。波が引くように身体から熱が失われる。
コレ以上は詮索しないほうがいい……頭のどこかでアラームが鳴り響き、背中に氷柱を差し込まれたかのような
薄ら寒ささえ、感じてしまう。

「母親は……母親はプレシア・テスタロッサ?」

「!?」

今度こそ驚愕でそのルージュの瞳を目を丸くし、焦るようにして金髪の少女はアリスから距離を取るが――
元々横幅があるとは言えない、手すりさえ無い灰色の階段である。急に後ろに下がれば、どうなるか。
(危ない!)アリスは咄嗟に手を差し出し少女の手を掴む。が、些か力を入れすぎたのか、彼女が後ろに下がる力との
均衡は得られなかったようで、少女は反対にアリスの方へ引き寄せられ二人で縺れながら倒れるような格好になる。

「……」

「……」

唇が触れ合いそうな程に近づき、お互いがお互いを凝視する。
黄色と紅色の視線が交わり二人の間には僅かに漏れる吐息以外は存在を許されない。永遠にも感じらるその時間。
……実際にはものの数秒であったのだろうが。

「貴女は……」

「ん」

「貴女は"誰"なんですか……?」

赤い瞳の少女は戸惑う。本来ならすぐに飛び退き、必要であるならば戦闘態勢に入らなければいけない。
そして彼女にはそれが出来るだけの訓練が施されていたし、出来ない理由は無い。その筈だった。
だが、動けない。まるで目の前の金色の瞳を持つ少女に対して、彼女自身の"記憶"が"その少女は無害である"
とでも言ってるかのような不思議な感覚に、知らず動きを止めてしまっていた。

「私は……アルテッサ」

「アルテッサ?」

「プレシアとは、友人」

流れるようにしてアリスは嘘を付く。嘘であるはずだ。彼女とアリスの間に友情などと言うものは存在しなかったのだから。
プレシア・テスタロッサ、その名は様々な意味を持つ。
オーバーSランク。稀代の魔女。深淵の大魔導師。どれも彼女の異才を称える呼び名だ。
だがアリスにとっての彼女は……アルテッサ・グレアムにとっての彼女は――
世界崩壊の立役者。スペルジェノサイダー。そう呼ばれた、被告人としてのプレシア・テスタロッサだった。

「……本当に?」

「多分」

「た、多分って……」

信じるべきではない、いや誰が聞いても怪しい。こんな言い草を信じる者は居ないだろう。
しかし赤い瞳の少女は何故かそれが本当の事のように思えてしまう。
明らかに異常だ。信じるべきではないと思いながらも、アリスを信用したい。そんな矛盾した感覚に少女は苛まれていた。

「少なくても、敵じゃない」

「敵じゃない?」

「多分」

「……も、もう!」

アリスの歯切れの悪い物言いに、少女は頬を膨らませて軽く睨みつける。
だが次に出てきた彼女の言葉に驚き、怒りをすぐに霧散させてしまう。

「プレシアに会いたい」

「えっ!」

「私はジュエルシードを二つ持ってる。納得すれば、プレシアに渡す。」

「でもそんなの母さんが……」

少女の警戒はもっともだ。もし案内したとして、アリスがいきなりプレシアに牙を剥けばどうなるか。
そんな危険を犯す事など出来ようはずもない。だがアリスはその危惧を見越していたかのように少女に語りかける。

「私ではプレシアには勝てない。だから平気」

「で、でも……」

「それに貴女が守るんでしょう?」

「ッ! 当たり前」

キッ、と今度こそ赤い瞳に敵意を乗せて少女はアリスを睨みつける。
その射抜くような視線を、しかし包むように柔らかく受け止めて、アリスは少女の手を握りながら囁く。

「大丈夫」

「…………分かりました」

長い、長い沈黙の後、少女は折れるようにして頷く。
アリスはその姿を見て、一息つくと共に、これから起こるであろうプレシアとの邂逅に頭を痛めた。
会いたいと、自分から言い出しておいてなんだが、状況からして悪い予感しかしないのである。

「さっそく?」

「いえ、転送魔法はここでは落ち着かないから……」

「ん。家に来るといい」

そう言いながらアリスは灰色の階段から腰を上げ、少女を先導するようにして歩きだす。
アリスの急な提案と有無を言わさぬ行動に赤い瞳の少女は少し呆気に取られるも、すぐに頷き彼女の横に並ぶようにして歩を合わす。

「そういえば」

「?」

歩き出したアリスだが、急に横に振り向き少女にまるで世間話でもするように気軽に問いかける。

「名前、聞いてなかった」

「私は、フェイトです。フェイト・テスタロッサ」

「フェイト……運命、か」

誰に対する、何の運命なのか。普通、子供に付けるような単語では決して無い。
アリスは考える。プレシアは何を思ってこの子をフェイトと名付けたのか? そもそもこの子は"誰"なのか?
疑問は尽きないが今考えても仕方のない事であるし、その疑問を解きに今から彼女に会いに行くのである。
それが良い結果を産むのか悪い結果を産むのか、それは、まだ分からない。
運命と言えば、この少女、フェイトとここで会ったのもまた私の運命なのかもしれない。そんな事をアリスは考え、自嘲する。

「はい?」

「なんでもない。私の事はアリスと呼んで」

「アリス? アルテッサじゃ」

「愛称、というもの」

「……わかった。アリス……これでいい?」

「ん」

その返答に満足気に、しかし表情は変えずにアリスは頷き、再び静かに歩き始めるのだった。




「なに、やってんだかねぇ?」

二人の少女のやや後方、そんな位置で橙色の獣はその様子を首を傾げるようにして見ていた。
もしあの金髪の娘が、ウチの娘――フェイトに危害を加えようものなら即座に跳びかかり喉元を噛みちぎってやる。
そんな意気込みで警戒しながら推移を見守っていたのだが、なんだか妙な方向で纏まってしまったらしい事を
少女との精神リンクでその獣は感じ取っていた。そして同時にフェイトの、アルテッサと名乗った少女への信用と
何故か感じる暖かい気持ちも。

「なんなんだろうねぇ……まぁなるようになるか。あたしゃ知らないよもう」

不貞腐れるように息を吐き、のそのそ二人の少女の後を追う。その尻尾が楽しむように振れている事に
その獣は気が付かないでいた。



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