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No.30786の一覧
[0] 目が覚めたら私があの子になっていた(ネタ)[この小説はPCから投稿されています](2011/12/07 10:49)
[1] 第二話[この小説はPCから投稿されています](2011/12/10 06:28)
[2] 第三話[この小説はPCから投稿されています](2011/12/21 08:50)
[3] 第四話[この小説はPCから投稿されています](2012/03/20 22:19)
[4] 目が覚めたら私が別人みたいになっていた[この小説はPCから投稿されています](2012/03/29 04:47)
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[30786] 目が覚めたら私が別人みたいになっていた
Name: この小説はPCから投稿されています◆955184bb ID:c440fc23 前を表示する
Date: 2012/03/29 04:47
 どこかで目覚ましみたいに電子音が鳴ってる。それが私の認識だった。目覚まし時計はかけてあるけど、それは携帯のはずだからこんな音じゃない。でも、ちょっとうるさいなぁ。そう思いつつ仕方ないので目を開ける。音の出所を探して眠い目を擦りながら視線を動かすけど……あれ?

「どこ、ここ……」

 目に入った景色は見慣れた私の部屋じゃない。しかも、何となく目線が高いような気もするし胸の辺りに違和感がある。とりあえず音を止めようとそのする方へ近付く。でも、そこには私が見た事も聞いた事もないような装置があって、それが電子音を出していた。
 どう止めたらいいのか分からず困惑する事数十秒。すると急に聞き慣れない声が後ろから聞こえてくる。それに驚いて振り向くと大きめのベッドの上に金髪の小さな女の子と同じ髪の女の人がいた。女の子の方はまだ寝てるみたいで可愛いパジャマ姿だからいいんだけど、声を掛けてきた女の人はその……恰好がちょっとすごい。

 黒の下着姿で横になってるんだもん。しかも綺麗でモデルさんとかかなって思うぐらい。で、その人と私はしっかり視線が合った。でも、どこか視線が合った瞬間その人が戸惑う。
 えっと、人見知りする人なのかな? あ、知らない相手がいきなりいるから戸惑ってるんだ。そう考えれば当然だ。そうやって自分を納得させて私はその人の言葉を待った。

「あ、えっと……それ、点滅してる部分を押せば止まるはずです」

「ほんと?」

 問いかけるとお姉さんは小さく頷いてくれた。なので早速点滅している場所を押してみる。……本当に止まった。さすが大人だな。そんな風に思いつつも軽くそこで違和感を感じた。今、あの人子供んの私に丁寧語使ってなかったかな?

「あの、ちょっといいですか?」

 なので思い切って聞いてみる事にした。ここがどこで女の人が誰なのか。これが夢かもって一瞬考えたけど、それなら起きた時に眠気なんか感じないはずだし。そう思って私は目の前の女の人へ尋ねた。ここはどこで貴方は誰ですかって。何故かそれまで女の人は困ったように部屋の中を見渡してたけど、私の問いかけに目を見開いて驚いた。
 それがどこか可愛らしく見えて私はつい笑ってしまう。大人っぽくなかったんだ。うちのお母さんにもこういうところあるけど、意外とこういう部分って誰にもあるんだなぁって思えて嬉しくなった。あ、でもこの人外国人みたいだけど日本語出来るんだ。

 そんな場違いな事を考えながら私は目の前の女の人を見つめた。その視線をやや困惑気味に受ける女の人を内心で不思議に思いながら、私はただ質問の答えを待った。

「あ、あの私はフェイト・テスタロッサって言います。でも、その……」

「フェイトさんですね。私は高町なのはって言います」

 やっぱり外国人だ。フェイトさん、か。綺麗な名前だなぁ。と、そこで私はふと目に入った写真に目をやった。ベッド脇に置かれたお化粧台に何故か私と小さい頃のフェイトさんみたいな子が写っているものがあった。
 もしかしたら小さいフェイトさんは妹さんとかかもしれないけど、一緒に写ってるのは間違いなく私だ。でもどうして? 私に金髪のお友達はアリサちゃんしかいないし、こんな写真撮った覚えもないよ?

 私が視線を写真に向けている事に気付いたのか、フェイトさんも視線を写真へ向けた。そして……何故か驚いた声を出した。

「えっ?! 私、こんな写真知らない!」

「ええっ?!」

「あ、アルフどこ? お願い出てきて。母さんとも念話が通じないし、起きたら知らない人と知らない部屋にいるし……」

「ちょ、ちょっと待って。フェイトさん、今何て言いました?」

 信じられない言葉が飛び出した。あれ? てっきり私はフェイトさんの部屋だと思ってたのに。あと念話って何? とりあえず混乱するフェイトさんを落ち着かせてお互いの状況を整理しよう。そう思って私はフェイトさんへ自分の事を説明する。でも、なんだろう。段々フェイトさんが不思議そうに小首を傾げ出した。

「なのはさんって九歳なの?」

 信じられないみたいな声でフェイトさんが問いかけてくる。何か変な事でも言ったかなぁ。ちょっと前に誕生日を迎えたばかりなんだけど。そう思った時、私はある事に気付いた。さっきから大人のフェイトさんと話してるのに目線がしっかり合ったままな事に。慌てて鏡を探した。そして見つけた鏡に映ったのは―――見た事のない女の人だった。

 髪の色はお母さんそっくりで、髪を下ろしてるから余計そんな印象が強い。見た感じは若い頃のお母さんかな。でも、何となく分かった。これはお母さんじゃないって。だってお母さんだとしたら納得いかない事ばかりだもん。お母さんは外国のお友達がいるけど、フェイトなんて名前は聞いた事がないから。

「……えっと、私の疑問分かってもらえました?」

「…………はい」

 軽く項垂れる私にフェイトさんはそう申し訳なさそうに声を掛けてきた。どうも下着姿なのが恥ずかしいみたいで、ベッドのシーツで体を隠してる。それがすごく似合ってて思わずため息を吐いた。色気があるってこういう事言うんだ。
 すると、フェイトさんは私の反応に小さく首を傾げる。それが意外と違和感がなくて可愛い。私も大きくなったらこんな大人になりたいな。そう思ったけど、今の私は何故か大人だった事を思い出してまた軽く項垂れる。ううっ、夢なら覚めて欲しいよぉ。

 そんな風に思いながらこれからどうしようとフェイトさんへ相談しようとした時だった。突然頭の中に聞き覚えのない声が響いてきたのは。

【あの、なのはさん、起きてますか? もう全員集合してるんですが……】

「えっ? 今、声がした……?」

「声?」

「あ、その……こう頭の中に」

 詳しい説明をしようとするも、また同じ声で起きているかを確認する声が聞こえてくる。どうしようと思いながらとりあえずフェイトさんへ説明。それでフェイトさんは理解してくれたのか、何かを探し出した。そしてすぐに金色の物を見つける。
 それを手にして安心するような息をフェイトさんは吐いた後、それへ声を掛けた。それが何を意味するのか知らない私としては興味津々で見つめるしかない。すると信じられない事が起きた。

「バルディッシュ、お願いがあるんだけどいい?」

”何なりと”

「すごい……喋った」

 男の人みたいな声がそのバルディッシュっていう名前の物から聞こえてきた。それにフェイトさんは笑顔をみせると、私へ呼びかけている相手に心当たりはないかって尋ねてくれた。それに即座に返事を返すバルディッシュ。うわ、私もこういうの欲しいな。パソコンとかをいじるの好きだし、いつかはこんな機能つけてみたい。
 でも、これって確実に今の技術じゃ無理だよね。……あ、そっか。今は未来にきてるんだもんね。じゃ、私もその内こういうの買えるんだ。そんな事を考えつつ、私はフェイトさんとバルディッシュの会話を聞いていた。

 そのままフェイトさんはバルディッシュにお願いして念話という事をしてる人へメールで連絡してくれた。文面はちょっと大変な事になったのでそっちには行けませんだって。

「うん、これでいいはず。でも、念話を知らないって事は魔法も知らない?」

「魔法? 魔法ってあのゲームとか絵本とかに出てくる?」

「……やっぱりそうなんだ。じゃ、なのはさんは魔法文化のない世界で暮らしてたんだ」

 私の反応にフェイトさんはそう言って考え込んでしまった。それと同時にまた聞き覚えのない声が聞こえてきた。でも、それは頭の中じゃなくて耳に直接聞こえてくるもの。機械のようで人のような不思議な、なのにすごく心落ち着く声。
 その声の相手は私が寝ていた場所の近くにいた。綺麗に輝く赤い宝石がついたネックレス。その宝石が点滅して私へ呼びかけてた。マスター、何故教導へ行かないのですかって。

「えっと、一つ教えてくれるかな?」

”何でしょう?”

「あなたの名前は? その、信じてもらえないかもしれないけど今の私は九歳の子供なんだ」

”分かりました。私の名はレイジングハート・エクセリオン。レイジングハートと呼んでください。初めて出会った日から貴女と共にあるインテリジェンスデバイスです”

 私のとんでもない言葉を疑う事無く赤い宝石―――レイジングハートはすぐに名前を教えてくれた。それが何だかとっても嬉しくて、思わず私はレイジングハートを優しく持ち上げた。ネックレスなんてつけるのは初めてだけど、無性に身に着けたくなったから。
 でも中々上手く出来ないで苦戦してると、それを見たフェイトさんが近付いてきた。しかも、そのまま私の後ろへ回ってレイジングハートを着けてくれたんだ。

「ありがとうございます」

”感謝します”

「ど、どういたしまして」

 私とレイジングハートがお礼を言うとフェイトさんは戸惑いながら返事をした。でも、その顔がどこか嬉しそうに見えて私も微笑んだ。あまり笑ってくれない人だけど、すごくいい人だっていうのは分かったから。
 でも、これからどうしよう? これが夢じゃないなら大変だし、そうだとしてもこれからが色々困る事になりそう。レイジングハートから教えてもらわなきゃいけない事がたくさんあるな。そう思いながら私はフェイトさんやレイジングハートへ今の自分が知りたい事を尋ねていくのだった……





「……そっか。なら一先ずさん付けを止めた方がいいかもね。一緒の部屋で暮らしてるぐらいだし」

「うん。なら……フェイト、ちゃんでいい?」

 そう言ってなのはは私を見つめる。それに私は小さく頷いた。本当は凄く嬉しかった。だって母さんやアルフにリニス以外の人と話すのは初めてだったし、年上の人だったから結構緊張したけど同い年ぐらいって分かって安心出来たから。
 バルディッシュが教えてくれたのは、私となのははその、と、友達で……しかもこの一年一緒の部屋で暮らしていた相手という事。それと、今も寝息を立ててる女の子はヴィヴィオと言って、私となのはが親代わりをする事になった孤児みたいな存在らしい。

 母さんや父さんもいない子だって、そう聞いた時は私はヴィヴィオに同情した。もし私も同じ事になったら生きていけないから。母さんがいなくなったらなんて考えるだけでも怖いし悲しい。リニスがいなくなった時も悲しかったけど、きっと母さんがいなくなったらそれ以上の苦しさを感じただろうし。
 だからバルディッシュへ気になって母さんの今を確認した時は嬉しかった。管理局に入って今も元気に働いているんだって。それも私やなのは達が頑張った結果。そうバルディッシュもそしてレイジングハートも教えてくれたんだ。

 だからなのはと私はつい自然と嬉しくなって笑顔を見せ合った。もしこれが未来の予知みたいなものだとしても、いつか出会えるはずだからその時にまた頑張ろう。そう言ってなのはは私を励ましてくれたし。あ、思い出したらまた涙が出そうだ。

「どうかしたの?」

「ううん、何でもない。でも、困ったね」

「そうだね。お互いいきなり大人になっててお仕事してるって言われても……」

「とりあえず他の人達に説明して分かってもらうしかないんじゃないかな。その、大人の私達の知り合いがいるんだし」

「それしかないね。じゃ、とりあえず着がえよっか」

 考えても仕方ない。そう思って私達は動き出す。着る物はバルディッシュ達が教えてくれたからいいんだけど、下着を着けるのが凄く恥ずかしい。なのはも同じように戸惑ってるし私も困る。ブラジャーの付け方なんてリニスにも教えてもらってないし、どうしようか。
 そう思ってると、なのはが私の背中へ回って着けてくれた。思わずお礼を言いそうになるけど、それを遮るようになのはが笑ってこう言った。さっきのお返しだからって。……な、何だろう? こういうやり取りは慣れてないから反応に困るよ。

 それでも私もなのはのブラジャーを着けてあげてお互い様にした。その後は着た事のないワイシャツを着て、初めて見る管理局の制服をお互いに手に取った。

「何かお仕事する人って感じだね」

「そうだね。でも、違和感が凄いする」

「にゃは、私も。学校の制服なら慣れてるんだけどなぁ」

「学校に行ってるんだ。どんな所なの?」

 なのはの口から出た単語につい反応しちゃった。私はずっとリニスに教えてもらう事しか出来なかったから、学校という場所が分からない。着がえを終えて私はなのはの話へ耳を傾ける。初めて聞く事の連続で疑問や興味は尽きないけど、そうもしていられないとバルディッシュ達が教えてくれて私達は慌てて部屋を後にしようと動き出す。
 ドアの前に立ち、後は出るだけとなった私達二人はそこで揃って同じ方向へ目を向けた。未だに眠るヴィヴィオの事をどうしようと思ったんだ。置いて行った方がいいのか。また連れて行くべきなのか。その答えを出そうとする私達へ聞こえてくる声があった。

【なのはっ! フェイトっ! 悪いけど今すぐあたしらの部屋へ来てくれ! 大変な事になってんだよ!】

「今のって……」

「念話、だね。しかもかなり焦ってる。バルディッシュ、今の念話相手は誰?」

”騎士ヴィータです。よろしければ部屋までご案内しますが?”

 私の問いかけに即座に反応してくれるバルディッシュを頼もしく思い、私は小さく頷いた。期せずして事情を話させそうな相手に呼ばれた。これで少しはこれからの事を相談出来るかもしれない。そう思って私はバルディッシュの言葉に頷いた。

「お願い。行こう、なのは」

「うん。でもあの子はどうする?」

”大丈夫ですマスター。もう少しすれば寮母の方が来られます。その方がヴィヴィオを見ていてくれますので”

 なのはの心配にレイジングハートがはっきりと答える。うん、マスター想いのいいデバイスだ。その答えになのはが息を吐いて安心するのを合図に私は走り出した。それに続く形でなのはが走り出して―――大きくバランスを崩す。あ、廊下に倒れた。

「ううっ、体の大きさが変わったせいで上手く動けないよ」

「だ、大丈夫?」

 あまりにも見事な転び方だったから思わず止まっちゃったけど、結構大きく転んだ。怪我とかしてないといいんだけどな。そう思ってなのはを起き上がらせる。するとなのはは苦笑してこう言った。転ぶのは慣れてるから平気と。
 ……多分なのはは速く走るのが苦手なんだろう。そう判断して私は心持ち速度を落として走る事にした。なのはもそれなら大丈夫なのか転ぶ事無くついて来てくれる。こうして私達はバルディッシュの案内でヴィータという人が待つ部屋へ向かう。そこで更なる混乱が待っているとも知らないで……





「それで、本当に私達を覚えてないのね?」

「う、うん。何や知らんけどごめんなさい。わたし、今まで一人やったから」

 わたしがそう言うとシャマルさんちゅうお姉さんが寂しそうな顔を見せた。シャマルさんだけやない。シグナムさんやヴィータちゃんなんかもどこか悲しそうや。さっきからわたしの右肩に乗ってるリインちゃんなんかは悲しみとかやなくて困惑が顔に浮かんでるし。
 いや、目ぇ覚ましたらやけに足が軽いし胸が大きくなってた時はホンマ驚いたわ。でも一番驚いたんはやっぱり今の状況やろな。わたしは大人になってて家族が出来てる事。寝る前は一人やったんがいきなり五人もの家族がおるってすごい変化や。

 周囲の光景は見慣れない景色。わたしはベッドに座って目の前のシャマルさん達を見つめてる。ザフィーラちゅう狼さんもお喋り出来るんには思わず大声出してまったけど、もう今は平気。ヴィータちゃんはリインちゃんとわたしの傍にいてくれてる。
 どうもわたしがみんなと出会う前の頃の年頃やって知って寂しくならんようにしてくれてるみたい。……これ、夢やないかな? でも夢にしてはやけにはっきりしてる。それにわたしが大きくなってるのも納得出来ないから現実なんやろうけど……

「はやてちゃん、本当にお姉ちゃんの事も覚えてないんですか?」

「えと……ごめんな。ホンマにわたし目ぇ覚ますまで家で一人暮らししとったんよ」

「リイン、はやてはこんな嘘言わねぇよ。きっと本当にあたしらと出会う前の記憶しかねーんだ」

 ヴィータちゃんがそう言うとリインちゃんが何とも言えない顔をした。それがわたしの心を締め付ける。小さな妖精みたいな妹。それを慰める事も出来ん自分の情けなさに。でも、せめて少しぐらいはわたしも年上らしくしたい。
 そう思って恐る恐るリインちゃんの頭を撫でる。ゆっくりと柔らかくを意識しながら。今は覚えてないけど、これから覚えるようにするな。そう笑顔で言って。それにリインちゃんが少しずつ嬉しそうな顔になってく。

「はやてちゃん……やっぱりはやてちゃんはいくつでもはやてちゃんです!」

「それは何や嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになる言葉やな。でも、きっとええ意味でわたしは変わらんって言ってくれたんやな?」

 わたしの確認にリインちゃんは元気よく頷いてくれた。心なしかそれにヴィータちゃんも笑顔を浮かべてくれとる。と、気付けばシャマルさん達もわたしを見て笑みを見せてくれとった。それがわたしは大きくなっても今と同じような振る舞いをしてた証に思えて安心出来た。これならわたしも何とか大人の自分らしくやってけるかもしれん。
 そないな風にわたしが現状へ自信を持ち始めた途端、それをぐらつかせる話が聞こえてきた。それはシャマルさん達の話す内容。子供のわたしでも分かる厄介事をどうするかについて相談しとった。

「それにしても、今日は解散式があるのにはやてちゃんがこれじゃ……スピーチはなしの方向にする?」

「最悪そうするか。このままではご自分だけで課員達へ話は難しいしな。まず、ありきたりになってしまうがそれらしい短い内容を考えるしかあるまい」

「それがいいだろうが、主の事だ。きっと今日という日のために何か良い話を考えていたはず。どこかにメモでもあれば利用出来るのだが」

「せめて少しでもはやてちゃんの言葉を、ね。ザフィーラ、あなたの気持ちは分かるけどさすがに」

 うん、なんや今日大事な集まりがあるようや。でも、何でわたしが話をする事になるんやろ? そう思ってヴィータちゃんへ問いかけてみる。どうしてわたしが話をするとかになってるのかを。

「な、ヴィータちゃん。どうしてわたしが話をする事になるん?」

「ええっと、今日でこの機動六課って部隊が解散になるんだ。で、今のはやてはここの部隊長って言って……要するに一番偉い立場なんだよ」

 ヴィータちゃんの言った言葉にわたしは思わず目を点にした思う。いや、いきなり自分が一番偉い人や言われてもなぁ。でもそれが事実なんはさっきの話から分かる。シャマルさん達もわたしの方を見てどないしようかと考えてる。
 リインちゃんはヴィータちゃんと一緒でどこか不安そうな表情をわたしへ向けてた。心配してくれとるんやね。確かにわたしは今まで大勢の人の前で話をした事もなければ、そもそも大勢の人と会った事さえないわ。

 それでも一番のお偉いさんが記念になりそうな日に話をせん訳にもいかへんからな。何を話したらええかは分からんけど、とりあえず話をする事はやったろ。そう思ってシャマルさん達へ笑顔で言った。わたしなりにスピーチしてみるわって。
 わたしはてっきりそれにみんなが驚く思った。でも、誰一人驚かんとむしろ微笑んでる。理由が分からず不思議そうにしとるとそれにシャマルさんが苦笑しながら教えてくれた。

「はやてちゃんならそう言うかもって思ったから」

「……そうなんか?」

「はい。主は昔からしっかりしておいででした。ですので、今回の事もご自分なりに頑張るかもしれないと」

 シグナムさんが笑みを浮かべながら言い切ってくれた言葉が無性に嬉しくて少しだけ視界がぼやける。ああ、ホンマに家族なんやなって……そう思えたから。と、そこで何かヴィータちゃんが見つけたのか枕元へ近付いた。
 どうもこの時代……の言うんがええのかな。大人のわたしが残してたスピーチのメモがあったらしい。でも内容は話すものを書いてある訳ではないらしい。言いたい事の要素だけを抜き出してあった。

 ヴィータちゃんからそのメモを渡してもらって目を通す。それぞれの道とか人との繋がりとかホンマに部分部分の言葉しかなかった。これでどんな話するつもりやったんやろうか? そう思いながらメモを眺めてると、シャマルさん達もその中身が気になったみたいでわたしの手元へ視線が集まってちょうくすぐったい。
 でも、さすが十年以上一緒におるからか、みんなはこれだけで大人のわたしがどういう事を話そうしとったかを分かったみたいや。何せ同時に納得の声出したもん。いや、息ぴったりでわたしは驚いたぐらいやったから。

「これでみんなは分かるんか?」

「ええ、大体は」

「はやてちゃんらしいなぁって思うぐらいだけど」

「実に主らしい内容です」

「だな。はやてならではって感じだ」

「リインでもそう思うですよ」

 わたしの質問にみんな笑顔で返してくる。それが嬉しく思えるけど、何やろ? ちょう羨ましくもある。わたしにはみんなと出会った記憶はないしこれまでの時間も知らん。その時間を知ってるもう一人の自分へ嫉妬してまうわ。むー、何とかその間の事を教えてもらいたいな。
 そないな事を思って質問をしよ思った時や。誰かが部屋を訪ねてきたみたいでシャマルさん達が動き出した。わたしもそれに続く形で腕で体を動かして―――車椅子がない事に気付いてはたと思い出す。今の自分はもう自分の足で動ける事を。

 恐る恐るゆっくり立ち上がる。大丈夫やって分かってるのにそうなってしまうんはしょうがない。初めての感覚に戸惑いながらもわたしはしっかりと二本の足で立ち上がる。それが何とも言えん気持ちをわたしに与える。感無量ってこういう時に使うんかな?
 そないな事を考えて立ち尽くすわたしへリインちゃんが不思議そうな顔を見せた。小首を傾げるとこがかなりかわええわ。小動物みたいな感じやし、ホンマ癒し系やなぁ。

「はやてちゃんどうしたですか?」

「あ、その……私、自分の足で立つの初めてなんよ」

「あっ! そうでした。はやてちゃん、昔は車椅子だったって言ってたです」

 納得がいったとばかりに手を打つリインちゃん。あれ? リインちゃんはわたしが車椅子やった事を聞いた事しかないんやろか? それがちょう気になったので早速質問。何でリインちゃんはわたしが車椅子やった事を知らないのかを。

 シャマルさん達の話やとみんなは九歳の誕生日に出会った言うてた。でも、その時は車椅子やったのは多分間違いない。と、そこでわたしはふと気付いた。みんなの名前聞いた時、リインちゃんだけ名前が長かった事を。
 リインフォースツヴァイ言うてたもんなぁ。でも、みんなリインって呼んでる。ツヴァイまでが名前やったらツヴァイって呼べばええ気がするし、わざわざリインって呼ぶ必要ないような……? 呼び易いからやろかな。そう思ってわたしはリインちゃんの答えを待つ。

「リインはシャマル達よりもはやてちゃんと会ったのが遅いんです。お姉ちゃんははやてちゃんが車椅子の頃に会ってますけど、リインが出会った頃はもう普通に立ってましたから」

「て事はリインちゃんのお姉ちゃんはシャマルさん達と同じ時に出会ったんか。ん? なら今その人はどこに?」

「かなり昔に遠い旅に行っちゃいました。でも、今もはやてちゃんの事を大事に思ってますよ」

 その言葉と表情でわたしは何となくリインちゃんに辛い事を話させてしまったと気付いた。儚い感じの微笑み。そんなん浮かべて旅に出た言われたらな。やって、わたしももしお母さんやお父さんの事を聞かれたら似たような雰囲気になってまうやろうから。
 リインちゃんのお姉ちゃんはもうこの世におらん。そう分かったわたしは申し訳なく思ってリインちゃんへ謝った。でも、それにリインちゃんは平然と気にしないでええからって言ってくれた。その顔はすごく綺麗な笑顔。

「お姉ちゃんはリインの中にいます。これは今のはやてちゃんにも言わなかった事ですよ? リインはお姉ちゃんと夢の中でお話しした事があるんですから」

「……夢の中で、か」

 リインちゃんのようにわたしも夢の中でええからお母さんやお父さんと会ってみたいな。そないな事を思って俯いた時やった。突然シャマルさん達の驚くような声が聞こえてきた。それにわたしとリインちゃんは反応して部屋を出る。
 そしてシャマルさん達がおる場所へ行くとそこには二人の女の人がおった。かなりの美人さんで、格好からしてここの関係者ちゅうのは分かる。すると、とんでもない言葉が聞こえてきた。

―――だから、ここにいる私達は局員になる前の高町なのはとフェイトちゃんなんです。

 ……どうやらわたしの仲間が出来たようや。そないな事を考えながらわたしは目の前の二人を見つめる。混乱する周囲を余所にわたしはどこか遠い目をした。これからどないなってまうんやろうな? とりあえず頑張るだけか。そう自分へ言い聞かせて……



作者のつぶやき
逆行した三人娘と入れ替わりで未来へきたなのは達。長編には出来ないと思って中編程度でまとめようと思っての展開です。急な方向転換で申し訳ありません。
次回はこの後からスタート。局員としての日々を知らない三人なりの六課最後の日になります。


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