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No.30786の一覧
[0] 目が覚めたら私があの子になっていた(ネタ)[この小説はPCから投稿されています](2011/12/07 10:49)
[1] 第二話[この小説はPCから投稿されています](2011/12/10 06:28)
[2] 第三話[この小説はPCから投稿されています](2011/12/21 08:50)
[3] 第四話[この小説はPCから投稿されています](2012/03/20 22:19)
[4] 目が覚めたら私が別人みたいになっていた[この小説はPCから投稿されています](2012/03/29 04:47)
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[30786] 第四話
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Date: 2012/03/20 22:19
「大丈夫?」

「あ、ありがとう。君は僕の声を聞いて来てくれたんだね」

「そう。で、わたしはどうしたらいいの?」

 目の前には黒い影みたいな存在。周囲はある程度壊されたらしく地面に穴があったり病院の壁が崩れたりしとる。さっと状況を確認しつつ戸惑いを浮かべながら足元のユーノ君へ問いかける。正直何をすればええかは知っとるし怖くもないけど、いきなりレイジングハート渡して言うたらあかんからな。なので今はいかにも何も知りませんって顔して話しとる。
 わたしの問いかけにユーノ君は首にかけた赤い宝石を渡そうとしとる。詳しい説明をせんのはちゃんと状況を理解しとるからか。今は悠長に話を出来る場合やない。小さくてもユーノ君はユーノ君や。さ、問題はここや。わたしが果たしてなのはちゃんと同じようにデバイスを展開出来るかどうか。それがまず一つ目の不安。次に魔法を使えるかどうかやな。

「これを使って」

「……分かった。何て言って使えばいい?」

「あ、それは今から僕が言う言葉を続けて言って」

 わたしはそんなユーノ君の言葉に目が思わず点になった。は? ちょっとユーノ君、そないな暇ないんやけど? レイジングハートセットアップ言えば展開されるちゃうの? なのはちゃんはいつもそうやっとったよ? そう思いながらもわたしはユーノ君が喋る長い言葉を律儀に言っていく。

「不屈の心はこの胸に! レイジングハート、セットアップ!」

 ……ホントはこないな事言わなあかんのか。なのはちゃん、危機的状況で冷静にこれ言えたんは尊敬するわ。わたし、今までの経験なかったらちょう怖いもん。と、そないな事感じとる間に見慣れた格好へと姿が変わった。白いバリアジャケットに赤い宝石のついた杖。うん、見事ななのはちゃんスタイルや。
 そないな事を考えとると影が飛び掛かってきた。それでプロテクションが勝手に発動したんは驚いたな。ま、確かに身を守らなとは思うた。でも、それだけで魔法使えるとかどんだけなのはちゃんの体は凄いんや? なのはちゃんは天才的な魔法の才を持ってるいうユーノ君の評価はどうか思うとった。でもそれが正しいと証明されたわ。うん、なのはちゃんは才能と努力であれだけの強さを得たんか。

 プロテクションで弾き飛ばされたから相手が動かなくなった。それを見てユーノ君とわたしは揃って頷いた。好機はここや。そこでユーノ君がくれた指示は……

「さあ! 封印魔法を!」

「それはいいけどどうすればいいの?」

 予想通りのものやったけど、実はわたし、なのはちゃんが封印魔法を使うたところ見た事ない。やからどうすればええのか今一つ分からへんからな。ユーノ君がおそらくなのはちゃんに魔法を教えた先生やし、それを頼れば間違いない思うから尋ねるのは正解やと思う。
 わたしの問いかけにユーノ君ははっきりとこう言うた。わたしだけの呪文を唱えてって。……結構人任せな説明やな。これで即座に反応したなのはちゃんはかなり素直やったのか、それとも魔法の才能ちゅうんがそこまで作用したのか。ま、ええわ。呪文、呪文っと……

 そう考えた瞬間、頭に浮かんだのはある言葉。正直二十歳で言うんは抵抗ある言葉やった。そうか、なのはちゃんがこの言葉を使うてたのは封印魔法の時か。いつだったかフェイトちゃんがからかい半分で言っとった言葉。それはここで生まれたんやなぁ。

―――リリカルマジカル、ジュエルシードシリアル21封印!

 恥ずかしい思いながら呪文を唱えたその瞬間、レイジングハートからピンクのリボンみたいな物が出現した。おー、これは見事なもんやな。それがあっという間に影を包んで動きを止めた思うと消滅する。残ったのはひし形の宝石みたいな物だけ。これがジュエルシードやな。
 そないな事を思うてレイジングハートをそれに近付けた。いや、ユーノ君がそうして言うからなんやけど。これでどうなる……おおっ! ジュエルシードがレイジングハートへ吸い込まれた! 成程。こうやって保管しとったんか。

「これでいい。ありがとう、助けてくれて」

「別にいいよ。で、とりあえず……詳しい話を聞きたいしここから移動しない?」

 わたしがちょう困り顔で周囲を見渡してからそう問いかけるとユーノ君も察してくれたようで即座に了承してくれた。うん、何せ今までの戦闘……言うたら言い過ぎか。とにかくごたごたであちこち被害が出とる。大半は最初からやけど、きっとそんなん関係ないわな。
 結界魔法使えたらこうはならへんかったけど、わたしもなのはちゃんもそれが得意やないからしゃーないわ。ユーノ君は多分使いたかったけど使えんかったと思う。何せ体にはまだ傷残っとるもんなぁ。そもそも本調子やったら自分で封印しとるはずや。

 そんな時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。それに小さくごめんなさいと呟いてからその場を後にする。ユーノ君はわたしの腕の中へいらっしゃいやね。まだ怪我も完全に治ってへんし、これから行く場所はここからちょう距離あるから。
 向かうは当然わたしの家。いや、一応八神家と呼ぼか。これから話す事は本来なら人に聞かれたら不味い事。あ、フェイトちゃんもユーノ君に会えたら喜んでくれるかもしれんな。色々取り留めもない事を考えながらわたしは走る。

「それでどこへ行くの?」

「わたしの親友の家。今日はそこにお泊りしてるんだ」

「えっ? よく外に出れたね?」

「うん、その子はちょっと訳ありで一人暮らししてるの。とっても仲良しの優しい子で、わたしが頭の中で声が聞こえるって言ったのを信じてくれたんだ。だからこうして外に出れたって訳」

「念話の事を信じてくれた、か……。本当に仲がいいんだね、君とその子は」

「勿論っ!」

 ユーノ君の言葉にわたしは自信満々に返す。当然や。何せわたしとフェイトちゃんは十年以上の付き合いがある。あ、そうや! なのはちゃんが来るまではユーノ君にフェイトちゃんの傍にいてもらおか。今はフェレット状態やけど、その気になれば元の姿に戻れるはずやし。
 小さいとはいえ男の子やから力仕事をやってもらえる。おおっ、これはええお手伝いさんになるわ。そうと決まれば早速提案や。善は急げやないけど速度を落として一旦停止。ええと周囲に人は―――おらんわなぁ。なら何も警戒する必要もないか。一旦ユーノ君を下ろしてっと……

 わたしが止まって周囲を見渡した辺りから不思議そうにしとったユーノ君。その疑問符がありありと雰囲気に滲んどる。小首を傾げてわたしを見上げる様はほんまに可愛い。見つめ合う事十秒ぐらいでユーノ君がこう切り出した。

「どうしたの?」

「えっと、この辺りで一旦自己紹介しようと思って。わたし、高町なのは」

「あ、そういう事か。僕はユーノ、ユーノ・スクライア」

 わたしの自己紹介にちょう戸惑いながらも自己紹介を返してくれるんはユーノ君らしいな。その優しさと律儀さに微笑みつつ、わたしは本題を話す。

「じゃユーノ君だね。実はユーノ君にお願いがあるんだ」

「えっと、何?」

「今から行くわたしの親友なんだけど、一人暮らしなのは言ったよね?」

「うん、それがどうしたの?」

「その子いつも一人で寂しい思いしてるんだ。それに車椅子だから色々と不便なの。だから、もしよかったらこっちにいる間一緒に暮らしてあげて欲しいなって」

 ユーノ君がその言葉にどう答えてくれるか。それをわたしは受けてくれると確信しとる。ごめんな、ユーノ君。きっと優しいユーノ君はこないな事頼まれて嫌と言えるはずない。その証拠に今もちょう困った感じやけど拒否する雰囲気はない。
 そのまま考え込む事数分ぐらい。遂にユーノ君は何か意を決したように頷くとわたしを見つめてきた。お、結構凛々しい気ぃする目や。見た目フェレットやからどこか締まらんけど。ま、それはご愛嬌か。

「なのはさん、一つだけいいかな?」

「何? それとさんはいらないよ」

「じゃあなのは、助けてくれた君のお願いは叶えたい。でも、僕は男なんだ。君の親友は多分女の子でしょ? いくら何でも手伝える事と手伝えない事があるよ。例えばお風呂とかね」

 あー、そうか。ユーノ君はそこ心配しとるんか。まだ子供言うても考え方はしっかり男の子やな。確かにそれはそうか。でも、さすがにもう少ししたら親友がもう一人来るから心配ないとは言えへんしなぁ。今はとりあえず話し相手としてだけでもええ言うか。……わたしの一番寂しかったんはそこやし。
 わたしの事を真剣な眼差しで見つめるユーノ君へ少しだけ笑みを返すと、若干その眼差しが緩む。うん、ユーノ君の気持ちは分かったからな。それをちゃんと伝えよう。そう思って声に嬉しさを込めて告げる事にした。

「それは心配しないで。お風呂とかはヘルパーさんを呼んでるから。ユーノ君にお願いしたいのは基本的に話し相手なんだ」

「そうなんだ。それなら僕でも大丈夫だけど、この姿で僕が話せる事を知ったら怖がらないかな?」

「わたしが頭の中で声がするっていうのを信じてくれた子だよ?」

 わたしがそう言うとユーノ君は一瞬だけ呆気に取られてから苦笑交じりに頷いてくれた。うん、これでええ。さ、早く家に行こか。そう思うて動き出そうとした瞬間、わたしとユーノ君の目の前から信じられん相手が現れた。
 その相手はわたしとユーノ君を見て小さく頷くと静かに近付いてくる。わたしとしては正直今にも名前を呼んで色々確認を取りたい相手や。ユーノ君は目の前の相手が誰か気になっとるみたいで不思議そうに小首を傾げとる。

―――こんばんは、なのは。

―――フェイトちゃん……?

 そこにおったんは金髪の女の子。わたしの親友フェイトちゃんやった。でも、すぐ分かった。このフェイトちゃんの中身は予想通りなのはちゃんやって。何せ躊躇いなくなのはちゃんの名前を口に出したもん。やっぱこうなってくると私たち三人揃って入れ替わりしとるんやな。しかし、何でここにおるんやろ?
 そう疑問を抱いたけど、とりあえず念話を送る事にした。相手は勿論目の前の親友。まずはどう挨拶しよか。あ、そうや。どうせやからわたしがはやてやって教えたろ。そう軽い悪戯心が働いて、わたしはほんの少しなのはちゃんを慌てさそとした。

【まさかもうこっち来る思わんかったわ。行動早いな、なのはちゃん】

【えっ? その喋り方ははやてちゃんなの?! 何で!? どうしてっ!?】

 予想通り混乱した。とそこで状況を思い出した。ここには何も知らんユーノ君もおるし、あまり取り乱させるんもよくないな。自分でやっといて何やけど……。そない思うてもう一度念話を送る。落ち着いてもらうために出来るだけ声の感じは穏やかな風に心がけて。

【詳しい話は後でするな。今はわたしについてきてくれるか?】

【わ、分かった。もしかしてはやてちゃんの体にはフェイトちゃんが?】

【ま、そんなとこや】

 そう話を締め括りわたしはなのはちゃん―――見た目はフェイトちゃんを不思議そうに見とるユーノ君へちらりと目を向ける。色々聞きたい事もあるやろうけど今はそれを後回しにしてもらおか。さて、そのためにはユーノ君向けのお芝居をせなあかんな。よし、ここはなのはちゃんへ軽く目配せしてと……

「フェイトちゃん、もしかしてはやてちゃんの家に行くの?」

「え? あ、うん。もしかしてそっちも?」

「そう。今日お泊まりしてるんだ」

「そうなんだ。じゃ、一緒に行こうか」

「うん。一緒に行こう」

 さすがなのはちゃん。すぐにわたしの目配せの意味を悟ってくれたわ。しかし我ながらなんちゅう三文芝居や。ユーノ君も疑問が消えないらしく、わたしの腕へ戻される時も小首を傾げたままやった。なのはちゃんが苦笑しとるんはそういう事やろ。ま、ええわ。
 一応ユーノ君は今のやり取りからわたし達の関係を推察してくれたようやし、これで説明する手間が省けた思えばええか。でもこれ、今日一日で戻ったら色々ユーノ君に申し訳ないなぁ。というか混乱しか起きへんちゃうかな?

 ……考えたらなんや軽く頭痛なってきた。これ以上この事考えるのはやめよ。そう結論付けてわたしとなのはちゃんはユーノ君と一緒にフェイトちゃんが待つ八神家へと向かった。そこでこの状況が明日以降も続いた時のための事を話し合うために……





「あ、帰ってきた」

 はやてが出て行って十分は経ったかな。そろそろ帰ってくるだろうって思っていたら予想通りのタイミングで玄関から人の気配がした。でもなんとなくはやてだけじゃない気がするけど……きっとユーノがいるからだ。そう答えを出したところで飲み物を用意してあげよう。
 そう思って車椅子を動かす。食器棚から二人分のグラスを用意して麦茶を取り出すために次は冷蔵庫へ。あ、その頃はユーノって動物の姿してたっけ。じゃあ申し訳ないけど小皿にミルクで我慢してもらおう。そんな事を考えながら準備してるとはやてがリビングへ入って……あれ?

「何でわた―――っ……フェイトちゃんがおるの?」

 あ、危なかった。思わず私って言いそうになったよ。何とか言わずに踏みとどまれたのは、はやてと一緒になのはも口に指を当てて注意を促してくれたから。でも何でここになのはがいるの? 私が海鳴へ来るのはもう少し後になるはずなのに。
 疑問を浮かべながら何とか自分を落ち着けようとしてると、ユーノが私の傍へやってきた。そして一度だけはやての方を見て何かを確認してるみたい。あれ? はやてが少し笑いながら小さく頷いた。それを見てユーノが私の肩へ登ってくる。ちょっとくすぐったいな。そして私の耳元へ顔を近付けてくる。何するんだろうと思っていると、その瞬間はやてが私に向かってこう言ってきた。

「驚かないでね、はやてちゃん」

「えっと……どういう事?」

「はじめましてはやて。僕はユーノ・スクライア。よろしく」

 少し身構えているとユーノが自己紹介をしてきた。うん、これなら驚かないよ? だって私は知って―――この頃のはやては知らないよね。だから驚かないでってはやては言ったのか。でも、今更驚くのも変だし……どうしようかな?
 そう思ってるとユーノは何かに気付いたのか少し優しい声で謝ってきた。どうもさっきの言葉で私が驚き過ぎて呆気に取られたって思ったみたい。その気遣いに私は思わずユーノらしいと思って笑みが浮かんだ。

「気にしないでいいよ。確かに驚いたけど平気や。ユーノ君、やね。私は八神はやて。よろしくな」

「うん、よろしくはやて」

 これでいいのかな? そう思ってはやてへ視線を送ると、はやてはこっちを見てなかった。なのはと二人で何か話してるみたい。表情が少し真剣だから真面目な話をしてるんだろうけど……何だか仲間はずれにされたみたいで悲しいです。
 するとユーノが私の頬へ体をすり寄せてきた。きっと悲しいって気持ちが顔に出てたんだろうね。ユーノはその温かさで私へ一人じゃないよって言ってくれてるみたいだった。ふふっ、ユーノはやっぱり優しいな。

「ありがとな、ユーノ君」

「どういたしまして」

 返してくる声もとっても優しい。こんなに優しいユーノなのに、どうしてクロノは仲良くしてあげないんだろう? いつも会うと言い合いをしそうな会話しかしない二人。何とかして二人を仲良しに出来ないかな? あ、なのはに相談してみよう。多分二人がどうしてああいう関係になったかを知ってるだろうし。

 思い出すのは初めてクロノとユーノと過ごした時の事。私があの事件での裁判を受けている頃だ。いつもは優しい二人が何故か互いの顔を見ると喧嘩するような言葉を言い合うのが不思議でしょうがなかった。
 クロノもユーノも相手の事が嫌いとかじゃないのは分かってるんだ。それにそういうやり取りが二人にとっては自然だったとも思う。だけどやっぱり出来る事ならもっと笑顔で話して欲しかった。私やなのは達みたいな友達として。

「はやてちゃん、ちょっといい?」

「え? あ、うん」

 考え事をしてると不意にはやてが声をかけてきた。見ればもうなのはがいない。どこに行ったんだろう。すると私の視線ではやてはその疑問に気付いたみたいで小さく笑った。うん、こうして笑うとやっぱり見た目はなのはだ。

「フェイトちゃんは話したい事があるみたいなんだ。で、先に部屋の前で待ってるって」

「そっか。分かった」

「ユーノ君はここで少し待っててもらっていいかな? さっきの事に関する詳しい話はまた後にして欲しいんだ」

「分かった。僕の事は気にしなくていいから」

 ユーノに見送られる形で私ははやてに車椅子を押してもらいながら部屋へ向かう。そこは当然はやての部屋。廊下に出るとなのはが本当に部屋の前で待ってた。それを見てはやてが小さく苦笑しながら「入っててもいいって言ったのに」って呟いた。
 私も同じ気持ちだ。私も結構言われるけどなのはも基本律儀なんだよね。とりあえず三人で部屋へ入る。昔のはやての部屋で三人揃って話すなんて何年振りだろう? そんな風に思っていると自然と懐かしさで頬が緩んでくる。どうやら二人も軽く笑ってるところを見ると同じ事を考えたみたいだ。

「えっと、まずはなのはちゃんがどうやってこっちに来たかを教えてもらおか」

「その……プレシアさんへ軽く偵察してくるって言ってここへ来たんだ。座標も私が覚えてたから、アルフさんへはプレシアさんから座標は聞いたって誤魔化してアリサちゃんのコテージ前へ転送魔法でね」

「そっか。それでアルフはどうしたの?」

「アルフさんはそこから別行動中なんだ。アルフさんはアルフさんでジュエルシードを探してる」

 なのははそう言って少しだけ苦笑い。アルフだけに働かせてるみたいで嫌なんだね。でも母さん……か。分かってはいたけど、ここだとまだ会えるんだよね。なのははやっぱり母さんの事を良く思ってないんだろうな。なのはからしたら母さんが私にしてた事は許せる事じゃないだろうから。
 海鳴にいる間は大丈夫だろうけど時の庭園へ戻った時が問題だ。あの途中で戻った時だって私は……。思い出すのは鞭を持った母さんの姿。あの時は怖い顔をしていたように思った。でもこうして思い返してみると違う気がする。

 母さん、本当は悲しかったんじゃないかって。アリシアを生き返らせる事が出来ない事や私とアルフを頼るしかない事に対して。そう、自分が無力だと言われてるって感じてたのかもしれない。

「それにしても思い切った事したな。自分のした事で未来変えてまうとか考えんかった?」

「むしろ変えたかったから動いた、かな。このままじゃプレシアさんを助ける事が出来ないから」

 なのはが私を見つめてそう言い切った。それは私への宣言だった。母さんを助けたいって。そうなのはの目は言ってた。姿が昔の私だからか、どこかそれはあの頃の自分から言われたみたいにも思えて返す言葉が出てこない。
 なのはは本当に優しいね。あの時は私を助けてくれて、今度は母さんを助けようとしてる。でも私はまた何も出来ない。今のはやての体じゃ魔法は使えないし満足に動く事も出来ないからだ。そう思うと涙が出てきた。一つは自分の無力さに、もう一つははやての現状を少しでも疎ましく思った自分に対して。

 最低な事を考えた。そう思って泣いている私を見てなのはとはやてが揃って少し驚きを見せた。でも、すぐに微笑んで私の手を握ってくれる。

「フェイトちゃん、心配しないで。絶対プレシアさんを助けてみせるから」

「勿論や。わたしとなのはちゃんで何とかしてフェイトちゃんとプレシアさんが笑えるようにしてみせるな」

「でも、それにはフェイトちゃんの力も必要だからね」

「せや。フェイトちゃんの覚えとる今後のプレシアさんとの事、それが何かの手助けになるかもしれんし」

「なのは……はやて……」

 二人のぬくもりが手から伝わってくる。三人で頑張ろうって私へ言ってくれているようで余計に涙が流れてくる。でも、それはさっきまでの嫌な涙じゃない。それは喜びの涙だ。私が無力じゃないって二人は言ってくれた。うん、やっぱり私は幸せだ。こんなにも優しい親友が傍にいるんだから。
 その感謝の気持ちを込めて二人の手を握り返す。それで二人も私の気持ちを感じ取ってくれたみたいで、嬉しそうな笑みを返してくれた。その笑顔で私も笑顔に戻れた。ありがとうなのは、はやて。もう私悩まないから。母さんを絶対助けてみせるんだ!





 フェイトちゃんの表情に明るさが戻った。それを確認して私ははやてちゃんと小さく息を吐く。プレシアさんの名前はフェイトちゃんに少なからずいい影響を与えないって分かってはいたけど……まさかあそこまでとは思わなかった。でも、それって今でも大好きだからだよね。
 そう思えばフェイトちゃんらしいといえる。と、そこで思い出す事があった。あまりに自然過ぎて忘れてたけど、私はやてちゃんと念話したよね? あの時、はやてちゃんはどうやって念話したんだろう? フェイトちゃんと思って念話を送った? それともやっぱり私―――高町なのはと思って送ったのかな?

「あの、はやてちゃんに聞きたい事があるんだけど」

「あ、それはいいけどちょっと待って」

「ん? どないしたフェイトちゃんって……あ~」

 急にフェイトちゃんが待ったをかけた。その理由をはやてちゃんが聞こうとして何かを思い出したみたいに苦笑してる。私にはまったく分からないんだけど何かあったっけ?

「なのはちゃん、悪いけど当分は私をはやてとして扱ってくれるか?」

「え? フェイトちゃん、急にどうしたの?」

「わたしが説明するね。実は、わたしとフェイトちゃんはそれぞれになりきっておかないと周囲に気付かれるって思ったんだ。特にわたしの口調は癖が強いからいきなり話せるものじゃないし」

「で、しばらく練習としてお互いに口調や呼び方も真似る事にしたんよ。やからお願い」

 突然の申し出に戸惑いを隠せないけど意図してる事は分かった。確かに私もそこは最初に気付いた事だし、そういう事なら頑張ろう。でも、三人でいる時も気を抜けないのは辛いなぁ。

「分かった。じゃあ改めて……なのはに聞きたい事があるんだ」

 ううっ、自分で自分の名前呼ぶって凄い違和感。しかも呼び捨て。きっと同じ気持ちを二人も味わったんだろうって思った。だって、呼ばれたはやてちゃんも聞いたフェイトちゃんも妙な顔してる。それはそういう事だよね。
 それでもお互いに苦笑してすぐにいつもの感じになるから凄いかも。うん、これが私達の雰囲気だよ。友達が宝物って言葉が分かる瞬間だ。

「私と会った時念話してくれたよね。それ、どうやったかを教えて欲しいんだ」

「えっと……あ、そうか。無意識でやってたけど、今のわたし達って複雑な状態だもんね」

「そう、体と心が別々なんだ。だから念話ってどういう捉え方で送ればいいのかなって」

「その時、なのはちゃんはどうやったん?」

「「あ、あの時は」」

「あー、フェイトちゃんやなくてなのはちゃんに聞いたんやけど?」

「……ごめんなさい。間違えました」

 うわ、これ結構難しい。つい自分がなのはだって思ってるから無条件に反応しちゃうよ。そんな私の心境を理解してるのか、はやてちゃんもフェイトちゃんも苦笑いで気にしないでいいからって言ってくれた。しっかり意識してないと駄目だ。今の私はフェイトちゃんなんだから。

「じゃあ気を取り直して……実はあの時、わたしは相手がなのはって分かってた。だからなのは相手へ念話を送ったの」

「なら、念話はその心へ呼びかけるって事?」

「どうだろうね? 頭に話しかけたい相手を思い浮かべてする魔法だし、もしかしたら大事なのはその人の認識じゃないかな?」

 どういう意味だろう。そう思ったのは少しだった。きっと念話を使う相手が送る相手をどう捉えているかで念話は成立している。だから、私達は互いの外見が違っても念話が出来る。逆に私達が入れ替わってるって知らない人は外見で私達を本人だと思い込んで念話出来る。
 つまり、今のプレシアさんにとってのフェイトちゃんは私。心が高町なのはのフェイト・テスタロッサなんだ。だからプレシアさんからフェイトちゃんへの念話は私へ聞こえる。そうはやてちゃんは言いたいんだ。よし、それを確かめるためにも後でユーノ君に……あっ。

「どうしたんや、フェイトちゃん?」

「えっと……ユーノ、には私の事教えた方がいいかな?」

「魔法が使えるって事? うーん、それは明日次第かな。これが今日で終わる事も有り得ない話じゃないし」

「何の前触れもなくやったもんね。あ、もんなだった」

「こほん、はやてちゃん? それを言うなら、もんなやった……だね」

「あぅ、気をつけます」

 しまったって顔のフェイトちゃん。何か凄い新鮮な光景だ。だって反応は確かにフェイトちゃんのものなのに外見ははやてちゃんだもん。はやてちゃんがそんな顔するのあまりないからなぁ。だから素直に可愛いなって思う。こういう仕草とかでも分かる人は別人だって分かるかもしれない。うん、気をつけよう。アルフさんやプレシアさんへ接する時は普段以上にフェイトちゃんらしく、だね。

 そう自分へ言い聞かせていると、同じような事をはやてちゃんがフェイトちゃんへ言っていた。それを聞いてフェイトちゃんは困り顔。そうだよね。中々仕草まで変えられないよね。私もフェイトちゃんらしい仕草は無理かも。それに私らしい仕草って何があるのかも分からないし。
  その後はやてちゃんがユーノ君へ念話を送ってもらってさっきの仮説の実証をした。ユーノ君は私―――つまり高町なのはへ念話を返したにも関わらず聞こえたのははやてちゃん。これで私がプレシアさんから抱かれた疑念のようなものが気のせいだったと分かった。

「で、これからだけどフェイトちゃんはどうする?」

「私は一旦帰るよ。それでもしこのままなら明日ここへ来るから。えっと……母さんにはジュエルシードが落ちた街で空き家が見つかったって嘘吐いて」

「あ、なら今日手に入れたジュエルシードを持っていくといいよ。偵察の時に空き家を見つけた街にあるって証拠になるから。なのはちゃん、お願い」

 私が告げた言葉にフェイトちゃんがそう言ってはやてちゃんを見た。その言葉を受けてはやてちゃんがレイジングハートからジュエルシードを取り出す。手渡されたそれを受け取り、私は小さく頷いた。一つだけならプレシアさんも使いようがない。しかも、これで海鳴へ滞在するキッカケが出来る。
 プレシアさんからはとりあえずお金の面だけどうにかしてもらおう。それならすぐにでも用意出来るはず。そこまで考え、私はふとある事を思い出してバルディッシュを取り出した。そしてレイジングハートを持つはやてちゃんにも視線を向ける

「バルディッシュ、今日のこの会話は絶対誰にも―――」

 教えないで。そう言おうと思った。でも、その時ある顔が思い浮かんできた。その相手に、今後の可能性を考えて少しだけ謝罪の意味も込めてこの事を知る事が出来るようにしておこうと。

「ユーノ以外へ教えちゃ駄目だよ。あとは今後何かあった時も話題に出しちゃいけないから。ユーノ以外は例外なくでお願い。例え私から聞かれてもね」

”イェッサー”

「そうか。レイジングハート、こっちもだよ。決してユーノ君以外へは教えちゃいけないし話題にしないようにね。仮にわたしが教えてって言っても」

”分かりました”

 バルディッシュとレイジングハートが了解してくれた事で私はほっと息を吐いた。この会話は今の私達三人以外に聞かれたらいけないもの。それを彼らが話題に挙げるかもしれない。その可能性を無くしておきたかった。
 もし明日私達が戻ってしまって、この体のフェイトちゃん達が覚えていない行動を確かめようとした時にも知られる事はないように。ユーノ君だけはもう誤魔化しが出来ないけどそれは諦める。さすがに人の記憶まで操作出来ないからね。

 それに……実はちょっと淡い期待もある。ユーノ君なら私達が戻ってしまった後に今日の出来事とこれからの出来事で真実に気付いてくれるんじゃないかって。そうなればユーノ君はデバイス達へ問いかけてみるかもしれない。今の私達の話を聞いている唯一の存在である大切な二人の仲間から。

 この後、私は八神家を出てある程度移動した所でアルフさんへ連絡し合流。アルフさんへはジュエルシードの事は内緒にする。今後の動きに備えてね。そして時の庭園へ戻りプレシアさんへジュエルシードを見つけたと報告ついでに渡すと一瞬驚きを浮かべたものの、特に何の労いの言葉もなかった。
 それでもいい。別に褒めてもらいたくてやってるんじゃないから。でも、少しだけ悲しいのは否めない。この頃のフェイトちゃんだったら、きっとここで褒めてもらえるって思っただろうから。だからちょっとだけ気持ちが沈む。それを振り切ってるようにあの事を告げた。

 それは街の近くに空き家を見つけたという嘘。明日にはそこを拠点としたい事を提案すると思った通りすぐに許可が出た。なので資金面だけ準備をお願いして部屋へと戻る。アルフさんへは思いの外早く拠点が用意出来たため、明日からそこへ行く事になったと説明。
 すると、それを聞いてアルフさんの表情が歪む。うわ、これはあまりいい感情を抱いてないや。これでもフェイトちゃんの前だから抑えてるんだろうけど、それでもかなり顔に出てるところからして普段からプレシアさんを良く思ってないって分かる。

「ふぅん、さすがに手回しが早いね」

「明日ある程度の資金を受け取って出発するから。転送場所はあの湖畔ね」

「了解。明日から忙しくなるねぇ」

「うん、そうだね」

 アルフさんへ神妙な声で返した。それにアルフさんが何も言わなかったのは今のがフェイトちゃんらしかったのかな? でも、明日から忙しくなる。もし戻ったらの可能性だけが怖いけど、そうじゃないなら明日からが本番だ。
 私達が知る未来。それよりも少しでもいい結末を手にするために。出来る事なら全ての人達を助けたいけど、私達は三人しかいないし神様じゃない。自分達の周囲で手一杯だろうね。だからごめんなさい。自分勝手ですけど今はプレシアさんを助ける事だけ考えます。

 もしかしたらプレシアさんがいればリインフォースも助けられた可能性がある。プレシアさんは大魔導師なんて呼ばれた人だし、元々は研究者だった。なら、夜天の魔導書の管制プログラムだったリインフォースの事も何か手を打ってくれたかもしれないんだ。
 一つの命を守る事から派生して他の命を守れるかもしれないんだ。それがはやてちゃんやフェイトちゃんが危惧した事態の悪化へ繋がるかもしれないけど、それでもやっぱり私は変えられるのなら変えたい。

 届かなくても最後の最後まで精一杯手を差し出して、こっちへ必死の想いで伸ばされた手を掴むために。一つの命を助ける事が多くの命を助ける未来へ繋がると信じて……



作者のつぶやき
あけましておめでとうございます。やっとの三話目。これで三人集合……なんですが、少々展開を考え直して長くても中編ぐらいの話にします。
次回はおそらく予想外の話になりますので、更新をお待ちください。


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