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No.30451の一覧
[0] 【完結】気になる彼女は高町なのは[オリ主・原作キャラ転生もの][GDI](2011/12/11 16:16)
[1] ヴァイスたちと飲み会に行きました[GDI](2011/11/20 12:29)
[3] 二刀流の遣い手[GDI](2011/11/20 12:27)
[4] 母と子の情景[GDI](2011/12/22 19:20)
[5] 御神最強の剣士[GDI](2011/11/23 18:27)
[6] 不破士郎の戦い 前編[GDI](2011/11/28 21:42)
[7] 不破士郎の戦い 後編[GDI](2011/11/29 20:10)
[8] 託された言葉、彼の進む道[GDI](2011/12/03 23:30)
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[30451] 【完結】気になる彼女は高町なのは[オリ主・原作キャラ転生もの]
Name: GDI◆9ddb8c33 ID:97ddd526 次を表示する
Date: 2011/12/11 16:16
前書き

初めましての人も、久しぶりの人もこんにちわ、GDIです。
この話は転生系のオリジナル主人公(一応)ものです。若干そうとは言えないかもしれませんが、そのはずです。相変わらず短編しか書けない人間なので、今回も短編ですが楽しんでいただければ幸いです。
なお、この話に感想を書きこめば幸せになります(作者が)
誤字脱字のご指摘なども頂ければありがたいです。









 最後に見た光景は一人の少女。その小さな体、大事な友人の娘が無事であることを見届け、己の意識がゆっくりと闇に落ちていく。

 脳裏に浮かぶ家族の顔、妻と息子に、今は娘となってる妹の子も。彼等を残して逝くことを、そしてなによりこれから生まれてくる娘の顔を見てやれなかったことに強い悔いを残した。 



 ピピピピピピピピピ

 電子音によって覚醒させられた気分はいつもの通りの悪さ。人によっては最悪といってよいだろうが、流石にもう慣れてしまった。

 「といっても、流石に自分が死ぬ夢というのは慣れたいもんじゃないけどな……」

 その青年ことアルバート・キューブはそうひとりごちながら、ベッドから起き上がり身支度を始めた。

 彼はアルバートという自分の名前がいたく気に入っていた。その理由は分からないがとにかく気に入っている名前だった。顔も知らない両親には、五体満足健康な体と、この名前をくれたことにはいたく感謝してる。

 時空管理局の地上部隊に努める彼は、外見的にも能力的にもとりわけ特出しているわけでもない普通の若者だが、一つほど自分でも普通じゃないだろうと思う事がある。

 それは夢だ。毎日というわけではないが、まるで自分とは関係ないと思うような夢を見る。それも結構な頻度でだ。

 夢の内容はまちまちで、目覚めると覚えていないことも多々あるが、共通することは主観である”自分”が今の自分ではないことである。

 まだ若いが子供ではない、今より年を取っていた。自分は明るい茶色の髪で瞳も同じだが、夢の”自分”は黒髪黒目、体格はほぼ同じだろう。

 そんな”自分”の夢をみる。特に多いのが己の死の瞬間の夢。

 どこかのパーティ会場だろうか、そこで起きた爆発テロで、1人の少女をかばって死ぬ、そんな夢。あまりに多く見るから、はっきりと情景を思い浮かべれるほどになっている。

 もっとも、その”自分”がなんと呼ばれているかは何故か聞き取れず、現れる人物達の名前を夢から醒めた後に覚えてることは無かった。それさえ覚えていれば、この不可思議な現象を解明する糸口になったかもしれないのだが。

 これはいったいなんなのだろうか、といつも思う。夢というのは心の奥の願望が表れることもあるというが、まさかその類ではないだろう。

 少女を庇って死ぬ、なるほど死に方としては格好いい。もし死に方を選べるとしたら、そんな死に方もあるかと思えるくらいには見栄えがいい。だが、かといって自分に滅びの美学などという高尚なものはないし、死ぬよりは生きているほうが何倍もいいに決まってる。

 少なくても、今の自分に不満は無い、やりたいこと、行きたい所などは際限なくあるが、きっとそれは誰だってそうで、子供の癇癪じゃあるまいし、駄々をこねるように飢えて求めているわけじゃない。

 なので友人知人にもこの夢のことを相談してみたのだが、誰も確たる答えを示してはくれなかった。まあ、当然だろうな、とは思っているが。
 
 だけど、色々仮説は立ててくれた。その中でも一番納得いっているのが先輩のヴァイス・グランセニックが言ったもので、この夢が「前世の自分」の姿で、それを思い出してるのが、自分に起こっている現象なのだろう、というもの。

 前世、即ちいまの自分になる前の人生。それは確かに頷ける仮説で、そうであるならばまるで見た目が違う人間を”自分”と思えることにも一通りの説明はつく。ただ、不思議なのは知り合いに同じ体験をしてるのが誰もいないということ。

 なのでどうして自分だけが、という思いはある。よほどの未練があったのか……と考えれば心当たりが無いわけでもない。前世の自分は家族を残して逝くことを、強烈なまでに悔いていた。特に、これから生まれてくる娘を抱いてやれないことを申し訳なく思っていた。

 「なあ、アンタはこうやって夢に現れて、俺にどうして欲しいんだ?」

 局員の制服を着、支度を終えたときにそう自問する。もちろん答えは返ってこない。

 ただ思う。もしその未練を晴らす手立てが分かれば、それをしてやろうと。他ならぬ”自分”のことだし、夢でみる”自分”は決して悪い男ではなかったから。

 今や習慣のようになった”自分”への問いかけのあと、彼は部屋を出て、新しい今日という一日を迎え入れた。





 アルバートがこの職場に来て早や2ヶ月近く、そろそろ慣れてきたが、やはり色々と訳有りな場所だというのは肌で感じる事が出来る。

 機動六課というこの新しい職場は、同じ首都防衛部隊であるヴァイス陸曹の誘いで来た。1年間という短期間の実験部隊だというのが名目だが、どうもそれだけではないという事が、ただの平隊員の彼でも察することは出来る。というか、同じ交代部隊の同僚達も、上司がいない場所ではそのことを囁きあっているのだ。愚痴交じりの雑談ではあるが。

 アルバートの今の主な仕事は、陸士部隊と合同しての捜査、場合によっては踏み込んでの検挙など、陸士部隊の手助けのような内容だ。

 部隊そのものは、ロストロギア・レリックの対策と独立性の高い部隊の設立が名目で、陸と海の融和の先駆けになることを目標としているらしいのだが。

 「どうも、ちぐはぐというか、継ぎ接ぎというか」

 彼個人の印象としてはそんなところだろうか。今一この部隊の目指す先が不透明なのだ。それを強く感じさせるのは、この六課自体の設立経緯だが――まあ、そのあたりは自分が考えることではないだろう。

 それに、日々の仕事に文句があるわけではない。もともと「いま以上」を望む性格ではないし、ここ数日は特に自分に向いた仕事をしているので、気持ちよく仕事が出来ている。前の首都防衛隊でも、自分のスキルは少々特殊ではあったので、それに適した仕事が多かった。

 即ち、要人警護。

 何故か自分に合った仕事だった。自然と周囲の様子を伺い、ごく当たり前の様に違和感に気づく。そのため要人警護の仕事があると、ほぼ必ず自分に割り当たったものだ。

 警護する相手が、尊敬に値する人物だったりすると、やる気が漲ってくる。特に理想をもって、かつ現実を見ながら歩む男を見ると、何が何でも守ってみせる、という意思が湧いてくる。

 宿泊の警備の配置の手配や、移動時、特に車などの乗り降りの際の警戒の仕方など、どうして自分がそう、まるで以前からそうやっていたように出来るのか、の理由はいまいち分からないが。

 それでも、そうした仕事は好きだった。まあ、なかにはあまり好ましくない人物の警護だったりもするが…… そうした時はあくまで淡々と仕事をこなすだけ。無論手を抜いたりはしないが、熱がはいることもない。

 そうした現在の自分の周囲の状況を嫌ってはいない。けれど、全体的にどこか仕事に身が入らないのもまた事実、その理由も先で挙げた部隊そのものの方針がぼやけていることが原因だとも分かってはいるが、つまりそれは……

 「よおアル、お疲れ」

 などと考え事をしながら歩き、今日の日報を纏めるため六課隊舎へ向かっていると、若い男の声で話しかけられた。その方向を見ると、以前の職場から一緒に異動してきたヴァイス・グランセニックが工具箱を片手に立っている。どうやらヘリの整備を終えた後らしい。

 「お疲れ様です、ヴァイス先輩、そっちも今終わりですか?」

 「ああ、昨日ちょっと遠出したし、そうでなくても日々の整備は欠かせないからな」

 「ホテル・アグスタでしたっけ」

 「ホテルとしては一流どころだったぜ、仕事でもなけりゃ一生行かねぇだろうな、きっと」

 「んなこたないと思いますけどね、彼女を連れて行ったら喜ばれるんじゃないですか?」

 「嫌味かお前、俺が今フリーなの知ってるだろ」

 そう言って軽く拳をアルバートの顎に当てるヴァイス。2人はそういったやり取りが普通にできる、気の置けない友人であった。

 「そんならラグナを連れてってやればどうです? 多分すっごく喜ぶと思いますよ」

 ヴァイスの妹のラグナは大のお兄ちゃんっ子であることを、長い付き合いのアルバートは知ってる。互いの家――といってもアルバートに家族はいないが――からみの付き合いだったから。

 「あのな、この年になって妹と2人旅行とかありえるか」

 「いや、別にありえてもいいと思いますけど」

 「つか、お前もここ最近来てないだろウチ。ラグナも会いたがってるぞ」

 「そーですか? そんじゃ明日にでも」

 「早いなオイ」

 もともとアルバートが陸士学校を卒業して武装隊に配属され、その際に出会ったそのときから2人は馬が合った。ヴァイスはバイクが好きで、アルバートは乗り物全般が好きだったから、どこのヤツが性能がいいとか、改造するにはここだろうとか、そういう共通した趣味の話題ですぐに打ち解けたのだ。

 年齢差は5歳、ちょうど兄貴分と弟分のような関係での友人づきあい。

 もっとも、アルバートの「乗り物全般」はマシンだけに留まらず、馬だろうとラクダだろうと魔法生物だろうと、乗り物と聞けば乗りたくなる性質ではある。同じ六課のキャロ・ル・ルシエという少女に頼み込んで、アルザスの飛竜に乗ろうというのが最近の目標だ。

 そうした2人だが、家族ぐるみの付き合いになったのは、ある事件がきっかけだった。

 今から6年前、アルバートが配属されてわりと間もなくの頃、強盗事件の犯人が、ラグナを人質に立てこもるという事件が発生した。

 その対処に兄であるヴァイスを充てることを、肉親ゆえに普段どおりの能力発揮できるかどうかを当時の指揮官は悩んだが、彼の腕前を信用し、ヴァイスを狙撃手として配置した。

 だが、それを横で見ていたアルバートは、ヴァイスがどれほどラグナを大事にしているかを、まだ付き合いが短いとはいえ知っていたので、彼にさせるわけにはいかないと思い、自分に突入させてくれと頼み込んだ。

 アルバートが古代ベルカ式の遣い手で、その瞬間的な速度が他の群を抜いているのを指揮官は知っていたので、まだ若輩ながら判断力も的確なアルバートの頼みを承諾し、突入を許可した。

 だが、その途中で悲劇が起きた。

 アルバートが突入するので、ヴァイスにはその援護に当たるよう指示を入れようとしたら、なんと通信デバイスが故障したのだ。

 これが本局の武装隊なら、デバイスや、専用通信機なしでも念話でその旨を伝える事が出来たかもしれない。しかし、その時のチームは運悪く魔導師がヴァイスとアルバートと、その他に1人しかおらず、その1人も念話を苦手としていた。

 指揮官はまずいと思い、拡声器でアルバートを呼び戻そうとしたが、そのとき既に彼は彼にしか体感できないモノクロの領域に入っており、その声が聞こえなかった。しかし、逆に犯人はその声に驚き、注意をそっちに向けすぎたため、ラグナを拘束する力を緩めてしまった。

 その瞬間を逃さず、ラグナは犯人の腕からするりと抜け出し、当然の話としてそれをヴァイスが逃すはずも無い。彼は既に標準を定めていたので、刹那の間も迷わずに引き金を引いた。

 犯人に向け一直線に進む魔力弾。本来ならそのまま犯人に当たるはずだったが、その射線上にヴァイスが思いもよらぬものが出現した、アルバートの頭である。

 無論直撃した、無論後頭部だった、無論気絶した。

 そのあと、目の前にいきなり局員が現れたかと思うと、何故かそれに魔力弾があたり気絶するという事態を前に、呆気に取られた犯人は、数瞬遅れて放たれたヴァイスの二目射で倒されて、あえなく御用となった。

 幸い、アルバートの怪我はたんこぶで済んだ。彼は保有魔力が低いのでバリアジャケットは纏ってはいなかったが、魔導師ではあるので一応の防御フィールドは展開してたし、なにより生来の石頭のおかげで一切後遺症などの心配はなかったが、弾が当たった部分が硬貨状のハゲになってしまった。

 その際のやり取りはこんな感じ。

 「どうしてくれんですかこの頭! コレじゃ人前歩けませんよ!」

 「俺のせいじゃないだろ、通信機がぶっ壊れたのが原因なんだから」

 「なんでピンポイントに人の後頭部にブチ当てんですか!」

 「知らねえよ、いきなり射線上に入ってくるヤツが悪ィだろ!!」

 「魔力弾の軌道修正するなり、色々あるでしょ!」

 「速度第一の狙撃弾でそんな芸当出来てたまるか! Sランクのエースだって無理だよんな事!」

 「そこを何とかするのが狙撃のプロってもんじゃないんですか!?」

 「そんならお前全力で踏み込んでからの90°方向転換とかできるか!?」

 「2回くらいなら」

 「できんのかよ!?」

 そんな不毛な口論は、ラグナが仲裁に入るまで続いた。だがその事件はグランセニック兄妹とアルバートを深く結びつける一件となった。

 余談だが、ヴァイスの弾が当たったハゲを隠すために、ラグナがヴィッグを用意してくれたので、人前に出ることは出来た。

 この機動六課に2人して異動したのも、先に六課入りが決まったヴァイスがアルバートを引っ張ってきた形だ。隊長陣のランクと平隊員のランク差が著しく大きい六課では、彼の能力は有用だろうと思ったからこそ彼を勧誘した。ちなみに、アイツなら遠慮はいらない、とヴァイスは首に縄つけても引っ張ってくるつもりではあった。まあ、アルバートはあっさりと了承したのだが。

 アルバートも自分と同じB+。自分ほど一芸特化というわけではないが、結構能力に偏りがあるため、遂行可能な任務を計るため設定されてる管理局ランクは低い。最も、保有魔力ランクならもっと低いだろうが。アルバートとヴァイスは大体同等の魔力値だ。

 そうしてかれこれ6年間の付き合いの先輩後輩の2人が、六課入り口の前で世間話を始める。二人とも手すりに寄りかかり、傍目にはあまり行儀がよい光景には見えないだろう。

 「ホテルの料理とかどうでした? 美味かったですか?」

 「いや、俺は食ってない。別にパーティがあったわけでもないし、あったとしてもヘリパイが呼ばれるわけもないし」

 「そいつは残念ですね。ホテルといえば、かわいいシェフがとびきり美味いデザートとか出してくれるもんですよ?」

 「そんなもんかね」

 「それに、ホテルの警備なら、むしろ俺の領分ですけどね」

 「流石のお前でも、アレだけの大人数は無理だろ」

 「確かにそうなんですが、やっぱりホテルってのは似たり寄ったりが多いんで、キナくさいところとか、重要なポイントとか、慣れてるほうが咄嗟に動けるのは確かですよ」

 「まあそうだろうが、ところで……」

 そうしてヴァイスは少し声の調子を落とし、話題を変える。

 「なんかすっきりしない顔してたけど、今の六課(ココ)になんか不満でもあるのか?」

 流石に鋭いな、とアルバートは感心する。やはり長年の付き合いだと顔色一つで心境が読まれてしまうものか。それとも狙撃手ゆえの洞察力か。

 「御見それしますよ、その眼力。てゆうか男の顔色なんか見てないで、狙ってる女の顔色の方を見るべきでしょ。先輩、交代部隊(ウチ)のリーダー狙いですよね?」

 「シグナムの姐さんか? んー、今はまだ狙いっていうんじゃなくて、憧れの段階だな。そこから動かねえかもしれないし、俺は恋愛はゆっくりやる主義なんだよ。んで? なにが気に入らないんだ?」

 「いや、気に入らないって言うよりはですね……」

 アルバートは一たん言葉を切り、思っていることを明確な形へと整えていく。

 「ただ、隠し事はして欲しくないな、ってトコでしょうか」

 「へぇー…… お前さんもか、ティアナも似た感じのこと言ってたな」

 ティアナという固有名詞を聞いて一瞬頭の中の人物辞典の照会をかけたアルバートだが、すぐに該当の頁が見つかった。

 「ああ、あのオレンジの娘ですか、ティアナ……ランスターでしたっけ」

 「おお、アイツもこの部隊にはなんかあるんじゃないか、みたいな事言ってたよ。まあ入局3年目のヤツが気づくくらいだ、お前が気づいていても不思議じゃないよな」

 その言葉は、ヴァイスもまたこの機動六課という組織に疑問を持っているという事実を示している。もっとも、このような場所で気軽に話しているからには、そう深刻な疑問というわけでも無さそうだが。

 「なんていうか、チグハグというか、突貫工事というか、まあそんな印象ありますからね、六課(ココ)」

 本局から直接指示を受け、聖王教会との繋がりも持ち、けれど地上の部隊として、隊舎も地上本部の近く。

 一体何処に属するのか分からない組織である。地上と本局の融和の先駆け、と言われれば、まあそうかとも思えなくも無いが、それにしてももっと上手い方法はありそうなものだ、と一介の局員に過ぎないアルバートですら思う。

 「突貫工事か、まあそう見えるな。一応構想自体は結構前からあったっていう話だが、強引な立ち上げって言われたら、確かにと言うしかない」

 「場合によっちゃあ、本局の尖兵っていうか、陸の併呑の第一弾みたいに思われても仕方ないですよ。このやり方」

 現に、交代部隊の何人かはそういう疑問を強く持っていた。つまるところ、ただの平局員からみても、どこかおかしい部隊ではあるのだ。

 「でもま、陸士部隊とは仲良くやれてんだろ?」

 「そりゃ元々俺等は陸士ですし、仲いいのは当然ですよ。でもどれだけ下同士が仲良くても、上同士がいがみ合ってたら意味無いでしょ」

 「まあ、その辺は上だって分かっちゃいるだろ、分かった上でこのやり方に踏み切ったんだろうし」

 そのヴァイスの言葉に、それこそ自分が言いたい所だと、表情を真剣にしてアルバートは切り出す。

 「ええ、だから、です。誰がみても”訳あり部隊”なんだから、その真意を少しでいいから教えてほしいな、と思うんですよ」

 何も、情報全てを提示しろなんて馬鹿なことは言わない。対場が上になればなるほど秘匿するべき情報は増えるだろうし、全部が全部さらけ出すのも指揮官として問題だ。ただ、同じ部隊で働き、部隊長である八神はやては言うなれば己の命を預けた存在であるわけなのだ。

 ならば、こっちのことを少しは信頼して欲しい。無論まだ知り合って僅かだし、たかだかB+の陸士ごときが生意気言っていると自分でも思うが、隠し事されているということは信用されていないということであり、つまりは期待されていないと思ってしまう。

 そんな気持ちが心のしこりとしてあるために、イマイチ六課の仕事に全力で向き合えないのだ。

 「部隊構成も偏ってますし。コッチ(交代部隊)は期待されてない、ただの数合わせじゃないか、って言うやつも多いですからね」

 そういう愚痴は部隊内で囁きあっている。アルバート1人が思っていることではない。

 「まあ、その辺は確かに言える。片やエース級がゴロゴロいて、片や普通の陸士で構成されてる、と来たら」

 スターズ分隊、ライトニング分隊、ロングアーチという六課の顔となるメンツは、管理局全体でも希少なオーバーSランクが3人もおり、AAA+総合AAAなどの高ランク魔導師が揃っている。

 その一方で交代部隊はC~Dの通常の陸士部隊と同程度、リーダーのシグナムだけはS-で、その次はアルバートのB+、その差が大きい。どう贔屓目に見ても「数合わせ」感が否めない。

 「それに、向こうは、身内の寄り合い所帯だ、なんて陰口を叩くヤツもいるくらいですから」

 そして、その”表”の部隊の人員のほとんどが部隊長である八神はやてとプライベートな交流が深い人物であることも、六課が悪意ある噂の対象にされる一端である。やはりそういう話は隊の内外で尽きないものだ。

 「そこはしゃあないだろ、なんせ部隊長は今まで未経験の19歳の女で、見方を変えれば針の筵のような部隊に、好き好んできてくれる執務官や教導官なんていなかったんだから」

 そして、ロングアーチではやてに次ぐ立場にあるグリフィスは准尉、彼の立場に本来は少なくとも二尉か三尉で無くてはならないはずだ。つまりは来てくれる人がいなかった為、結局知り合いの伝手に頼るしかなかったという悲しい事実を物語ってる。

 「まあ確かに、進んで火中の栗を拾うヤツは変人ですね」

 そう言ってヴァイスの顔をニヤリという笑いをしながら見る。それの意味することは無論言うまでも無い。

 「ここにいる以上、お前も同じだ。まあ、一応方々に打診したらしいけど、結果はもちろんNo。だから頼れるのは身内しかおらず、そのせいで身内人事と陰口叩かれる悪循環、と。世知辛いな」

 「ええ、そうですね。だから、そんな世知辛い思いをしてまで、この部隊を立てた理由は何なのか……」

 即応性のある行動を取るために独立性を重視した実験部隊、という表向きの目的もまああるのだろう。だが、それだけでないことは誰の目にも明らかだ。

 「ちなみにお前はどう思う?」

 「うーん、まあ一応こうじゃないか、ってのはありますけど、ただそれは俺個人じゃなく部隊の皆の予想というか」

 彼はあくまで平隊員に過ぎず、把握できる情報も少ない。六課の表向きの業務である新人育成、レリック対策の裏の目的が何なのか、それが直感で分かるほどの超能力は持っていない。だから、言えるのはせいぜい他人と予想しあった結論くらいだ。

 「いいから聞かせてみろよ」

 「聖王教会、ですかね、やっぱり」

 六課の後見として、本局の提督の他に聖王教会がついているのだ。もしこれがただの海と陸の融和を目的とした部隊なら、そこに聖王教会が入ってくるのはおかしい。

 かならず何らかの関係があるはずという予想は、平局員どころか陸士学校の候補生でもできるだろう。逆に言えば、アルバートの立場ではそれくらいしか分からないし、そもそも彼自身そこまでわだかまりを持っている訳でもない。

 「カリム・グラシア?」

 「そこしかないでしょ」

 聖王教会の重鎮カリム・グラシア。まだ若いが管理局の理事をし、少将待遇の権限をもつ才媛だ。なにより特筆すべきは彼女の希少技能だろう。

 「たしか、予言だっけか」
 
 「ええ、あんまり知られてませんが、俺もまあ、古代ベルカ式だから、この得物作るときもアッチの鍛冶師に頼んだし、警護対象で教会関係者も結構いたりで、俺は聞く機会けっこうありましたから」

 厳密にいえばアルバートの技は古代ベルカではなく、彼独自のオリジナル技なのだが、大別すれば古代ベルカになる。

 「んでお前は、それに懐疑的だと」

 「いや、騎士グラシアの技能自体は疑ってませんよ。ただ問題なのが”解読”というワンクッション必要なところで」

 古代ベルカ語で示された予言は、解読しなければただの模様だ。だから解読が必要なのは当然だが、それが出来るのも聖王教会関係者というところに問題がある。

 つまり、聖王教会に都合が良い様に解釈している、という猜疑の目が向けられる余地を作ってしまっているということ。

 事実の有無は問題ではない。そう捉えられてしまうということが問題なのだ。

 「歴史を紐解いても、予言者は詐欺師か、民衆扇動のプロパガンダか、権力者への媚を売る手段かですからね、あまり鵜呑みにはできないというか」

 「もしこの部隊の設立理由がそうだとしたら、たしかに公には言えないな。俺でも流石に胡散臭いと思っちまう」

 「でしょ、まあそう決まったわけじゃないけど。俺の中ではそれが有力ですかね」

 そうしてアルバートは己の蟠りを吐き出す。誰かに胸の内を語るという行為をしてスッキリしたのか、彼はさらに言葉を続けた。

 「ただ、俺は八神部隊長に否定的であったり、まして嫌悪感持ってたりはしないですよ。むしろ逆です」

 「そりゃわかるよ、お前さんが言ってることは、つまり頼って欲しいってことだろ。嫌いなやつにそんなこと思うヤツはいない」

 「ええ、あの人の立場は、ちょっと視点を変えればトカゲの尻尾にされかねないですからね。その上地上本部、本局、聖王教会と3つに常に気を配らないといけいない、はっきり言って胃が持ちません。俺なら即入院モンです」

 しかも、彼女は自分と同い年だ。あの小さな背中で、本来まだ背負わなくてもいいものを背負わされてる感じがアルバートにはする。

 「あの人は、結構なんでも自分ひとりで背負い込む所あるからなぁ」

 「でしょうね、そういうタイプだ。だから交代部隊(おれたち)をないがしろにしてるんじゃなく、巻き込みたくないっていうか、やっぱり自分達だけでなんとかしようとしてるっていうか」

 今回のホテルの件にしてもそうだ、聖王教会の要望を断れなかったのがその事実。あちらもこちらも立てないといけないから、いつか抱えきれない負荷になって彼女を圧殺してしまう。

 しかも今回現れたガジェットは、ホテルの襲撃ではなく、六課の戦力分析の意味合いが強い。警備に来た六課がかえって危険を呼び寄せた、というその事実もまた八神はやてを苦しめている。

 アルバートは人を見る目には自信がある。あの設立時のはやての演説を聞いた時から、彼女はこの人の手助けをしてやりたい、とも思わせる人物だった。だからこそ、真意を明かしてくれない現状を歯痒く思う。

 「まあなんだ、その辺はやっぱ色々あるんだろうさ。部隊長本人もなんだかんだで訳ありだしな」

 「そうですね、そのことについても一応は知ってますよ。10年前の闇の書事件」

 ただ、情報の開示があまりされていないので、細かい顛末は知らない。その秘匿されているという事実が、かえって関係者や過去の事件の被害者などの神経を逆なでしているのかもしれないが。

 「そのあたりは、どう思うんだお前?」

 「闇の書事件についてですか? うーん、俺としてはもう終わったことをあまり掘り返すのは好きじゃないですね。憎い気持ちを持ってる人がいるのも分かりますが、だからって復讐に走ってもしょうがないだろ、って感じですか」

 「ああ、お前は復讐とか否定派だったっけ」

 「いや、別に否定してるわけじゃないですよ。自分でもどうしようもない気持ちってのもあるだろうし。ただ、後ろをみて生きるよりは、前を見て生きたほうが楽しみは多いんじゃないかって、そう思うだけです。妹にもそう言ったら、あの時は怒られたなぁ」

 そう口に出して違和感を覚えた。妹? あの時? なんのことだ。いったいいつそんなことを言った? いやそもそも自分は――

 「ん? お前妹なんていたっけ?」

 そうだ、いない。自分は小さい頃から親なしで、どうも自分は毎回親兄弟とあまり縁が無いと思って―― いや、この考えも良く考えればおかしい、”毎回”とはなぜ思った。俺の人生は一度、親も2人のはずだろう。

 「………ええ、いませんよ、おかしいな、なんでこんなこと言ったんだろ」

 自分の言葉に訝しむ様子のアルバートに、ヴァイスはああ、と心当たりを見つけて聞いてみた。

 「もしかしてあれか、前世の記憶」

 「そうなん、ですかね」

 ”夢”のことを前世の記憶といったのはヴァイス(厳密にはラグナが言いだしてヴァイスが伝えた)なので、今更変には思わず、そろそろここでの立ち話もなんだろう、と思い、隊舎に戻るよう促がした。

 アルバートも別に否やは無いので、2人で隊舎に入り、それぞれの今日の日報を纏まるべく、分かれる間際。

 「そういえば、なのはさんが、なんかお前に頼みたい事があるって言ってたわ」

 何気なく思い出したヴァイスの言葉に、彼は常とは異なる反応を示す。

 「高町一尉が、俺に?」

 そのアルバートの様子にヴァイスが悪戯っぽく笑い、言葉を続ける。

 「ああ、なんでも教導で手伝って欲しい事があるんだと、アピールするいいチャンスじゃないか?」

 「いや、俺はべつに彼女に対してそういう訳じゃ……」

 「照れんなって、そんじゃあな」

 そうして去っていくヴァイスの背中を見ながら、彼は自分の心を占めている不思議な感覚を持て余していた。


 高町なのは

 
 その名前を聞くたびに、どこか落ち着かない気持ちになる。彼女の姿を見つければ、自然と目で追っている自分に気づく。

 管理局が誇る若きエース・オブ・エース。幾分宣伝が目的もあるだろうが、その実力が折り紙付きであることは周知の事実で、年下の年代には彼女に憧れる者も多い。

 また、同年代では芸能界のアイドルのような感じで彼女のことを話題することもある。

 だが、自分の気持ちはそうした同年代が話題にしてる感覚とは違う。では恋か? 彼女に一目ぼれして、だから自然と彼女を見てしまうのか。

 それも違う。たしかに彼女は見目良い少女だし、異性として魅力的だろう。しかし断言できる、自分の気持ちはそうしたものではない。

 そう確信できる理由はそう、高町なのはとという少女に強い感情を抱いたのが、彼女を見た瞬間ではなく、彼女の名前を聞いた時だからだ。

 名前を聞いただけで恋に落ちるなんてこと、生まれてまだ19年だが一度も聞いた事が無い。だからこれは恋ではないと断言できる。

 だが、気になる、彼女が気になって仕方がないのだ。どうしてか”一つでいい、彼女のためになにかをしてやりたい”と強く思ってしまうのだ。

 その理由の一つとして、「高町なのは」というその名前を初めて聞いた時に思ったことが


 (そうか、なのはにしたのか)


 であったから。


 彼女が自分に用があるというのなら、いい機会だ、この気持ちがどこから来てどこへ行くものなのか、彼女と接してハッキリさせておくべきだろうと思いながら、彼は自分のデスクがある事務室へ向かっていった。
 



あとがき

さて、今回も短編、おそらく前中後編になるのではないかと思っております。
この話も一応”神様転生系”です。主人公を転生させたのは神様です、抱擁の慈愛に溢れた黄昏の女神様が転生させてくれました。
……分かる人にしか分からないネタですみません。元ネタはとあるPCゲームですが。
チラ裏の方に投稿しようかなーと思いましたが、やっぱり「とらハ」板のほうがいいかと思いこっちに投稿しました。
次の投稿は未定です、気長にお待ちください、短編ですから、もちろん完結はさせるつもりです。
てか、リリなのSSなのに野郎2人しかしゃべってませんね



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