<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

とらハSS投稿掲示板


[広告]


No.27519の一覧
[0] 転生妄想症候群 リリカルなのは(転生オリ主TS原作知識アリ)【空白期終了】[きぐなす](2013/11/24 21:34)
[1] 第一話 目が覚めて[きぐなす](2011/10/30 12:39)
[2] 第二話 ファーストコンタクト[きぐなす](2011/10/30 12:46)
[3] 外伝 レターオブ・アトランティス・ファイナルウォリアー[きぐなす](2011/11/27 11:19)
[4] 外伝2 真・ゼロ話[きぐなす](2012/01/06 18:20)
[5] 第三話 好感度イベント 三連投[きぐなす](2011/05/25 18:56)
[6] 第四話 裏返る世界[きぐなす](2011/05/06 00:33)
[7] 第五話 希とカナコの世界[きぐなす](2011/05/25 18:57)
[8] 第六話 入学式前の職員会議[きぐなす](2011/05/25 21:56)
[9] 第七話 ともだち[きぐなす](2011/05/09 01:17)
[10] 第八話 なのはちゃんのにっき風[きぐなす](2011/05/08 10:13)
[11] 第九話 シンクロイベント2[きぐなす](2011/05/25 19:05)
[12] 無印前までの人物表[きぐなす](2011/05/09 21:24)
[13] 無印予告編 アトランティス最終戦士とシンクロ魔法少女たち[きぐなす](2011/05/13 17:58)
[14] 第十話 いんたーみっしょん[きぐなす](2011/05/12 20:38)
[15] 第十一話 シンクロ魔法少女ならぬ○○少女?[きぐなす](2011/05/15 10:56)
[16] 第十二話 ないしょのかなこさん[きぐなす](2011/05/16 21:30)
[17] 第十三話 魔力測定と魔法訓練[きぐなす](2011/05/20 07:54)
[18] 第十四話 初戦[きぐなす](2011/05/28 11:40)
[19] 第十五話 やっぱりないしょのかなこさん[きぐなす](2011/05/28 13:40)
[20] 第十六話 ドッジボールとカミノチカラ[きぐなす](2011/06/01 21:14)
[21] 第十七話 アリサと温泉とカミ[きぐなす](2011/06/03 18:49)
[22] 第十八話 テスタロッサ視点[きぐなす](2011/06/05 14:04)
[23] 第十九話 フェイト再び[きぐなす](2011/06/12 01:35)
[24] 第十九・五話 プレシア交渉             23/7/4 投稿[きぐなす](2011/07/04 10:26)
[25] 第二十話 デバイス命名と管理局のみなさん[きぐなす](2011/06/12 15:20)
[26] 第二十一話 アサノヨイチ[きぐなす](2011/06/15 10:50)
[27] 外伝3 おにいちゃんのお葬式[きぐなす](2011/06/25 12:59)
[28] 第二十二話 猛毒の真実 [きぐなす](2011/07/03 23:20)
[29] 第二十三話 悪霊[きぐなす](2011/07/04 13:50)
[30] 第二十四話 おにいちゃんとわたし ……おかーさん[きぐなす](2011/07/10 06:51)
[31] 第二十五話 浅野陽一のすべて[きぐなす](2011/07/17 19:15)
[32] 第二十六話 復活と再会 [きぐなす](2011/07/24 15:55)
[33] 第二十七話 再び管理局と女の友情[きぐなす](2011/08/11 19:20)
[34] 第二十八話 三位一体[きぐなす](2011/08/11 19:10)
[35] 第二十九話 すれ違いの親子[きぐなす](2011/08/11 20:38)
[36] 第三十話 眠り姫のキス[きぐなす](2011/08/20 21:51)
[37] 第三十一話 次の戦いに向けて[きぐなす](2011/08/29 17:50)
[38] 外伝4 西園冬彦のカルテ [きぐなす](2012/03/30 00:12)
[39] 無印終了までの歩みと人物表及びスキル設定[きぐなす](2012/03/29 23:49)
[41] 空白期予告編 [きぐなす](2012/04/03 00:34)
[42] 第三十二話 アースラの出来事 前編 [きぐなす](2012/04/07 19:33)
[43] 第三十三話 アースラの出来事 後編 [きぐなす](2012/04/17 22:13)
[44] 第三十四話 梅雨の少女とさざなみ寮[きぐなす](2012/05/05 18:58)
[45] 第三十五話 わかめスープと竜の一族[きぐなす](2012/05/12 00:36)
[46] 第三十六話 見えない悪意と魔法少女始まるよっ![きぐなす](2012/05/20 15:50)
[47] 第三十七話 アトランティスの叫び 前編[きぐなす](2012/05/29 17:34)
[48] 第三十八話 アトランティスの叫び 後編[きぐなす](2012/06/07 00:32)
[49] 第三十九話 幽霊少女リターンズ[きぐなす](2012/07/11 00:38)
[50] 第四十話 暗躍と交渉、お泊まり会 [きぐなす](2012/09/02 23:51)
[51] 第四十一話 トラウマクエスト そして最終伝説へ… 前編[きぐなす](2012/12/01 14:37)
[52] 第四十二話 トラウマクエスト そして最終伝説へ… 後編[きぐなす](2013/03/09 22:08)
[53] 第四十三話 暴走と愛憎の果てに行き着いた先 前編[きぐなす](2013/04/07 22:40)
[54] 第四十四話 暴走と愛憎の果てに行き着いた先 後編[きぐなす](2013/05/25 14:36)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27519] 第四十話 暗躍と交渉、お泊まり会 
Name: きぐなす◆bf1bf6de ID:142fb558 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/02 23:51
第四十話 暗躍と交渉、お泊まり会



幽霊事件は片づいた。しかし、俺たちにほっとしている時間はない。むしろこれからが本番といえる。慣れない工作活動をしなければならない。はやてちゃんからのメールとリンディ提督への手紙と資料ですべてが決まってしまうと考えると身が引き締まる。



それとは全く関係なく、ある日、一本のVHSが希ちゃん宛に届けられた。

劉さんから軍隊を壊滅させた魔法生物に関することについての報告だった。悪竜指定を受けたその生き物はブルンジのタンガニーカ湖およびルジジ川に生息するワニが突如巨大化して暴れ回ったという。

元々そのワニは『ギュスターブ』という有名な人喰いで推定100歳で300人以上の人間を襲っている。何度も射殺が試みられたが、ライフル弾も受け付けず防弾チョッキの異名を持つ。

一時は軍隊まで動員したが重火器や砲弾が全く通らず。一方的に蹂躙されたそうだ。同行していた珍獣ハンターがおとりにならなければもっと被害が出ていたらしい。VTRにはセーラー服を着たマジックで書いたような太い眉の女性が涙目になりながら山ほどあるワニから逃げる映像が映っていた。

この人日本人か? VTRの紹介では名前はイモなんとかというらしい。

その後、劉さんのかかえるハンターや他のつてを頼ったけれど、倒しきれず外に出ないように結界を施したまま。歴代最強のG級ハンターグレアムとは連絡を取ろうとしているが、結局取れなかったらしい。管理局につてがあるなら秘密裏に繋いで依頼して欲しいのがVHSを送った理由のようである。

このままでは最終的には英国王室を通じて依頼するか、竜討伐の長い歴史を持つヴァチカンに頼むしかなくなる。その場合、素材関係はすべて持って行かれるので、すでに莫大な費用を投じて討伐依頼と情報統制をしている竜の一族としてはそうしたくないらしい。

世話になったから力になってあげたいところだけれど、残念ながら俺ができることはないな。グレアムと接触を試みるのはいろんな意味でリスクを伴う。闇の書事件を前に刺激したくない。近いうちに断りの返事を書こう。



次の日、はやてちゃんからメールが届いた。騎士たちと協議した結果、蒐集を始めているそうだ。俺が知るより約一ヶ月半くらい早い計算になる。場所は人の住めない地域で現地の凶暴な魔法生物を狩る方針らしい。魔導師とは基本的には戦わない。逃げきれない場合のみ戦うという。その点ははやてちゃんも妥協せざる得なかったようだ。

安心していいのだろうか?

いや、ヴォルケンリッターは良くも悪くもはやてちゃんのために動く。いざというときは誓いに背くことも十分考えられるからヴォルケンリッター対策は今後も続けていくべきだ。

カナコも同様の考えのようで、闇の書事件が終わるまではできるかぎり対策をしていくらしい。

少し気になる情報もあった。前回グレイたちを倒したG3が協力を申し出て、強力な魔法生物の生息地域や管理局の魔導師のパトロール区域の情報を提供してくれたそうだ。

G3一体何者だろう? 管理局の情報を提供できるということはたぶんグレアムの手札の猫姉妹の変装した姿だろうけど、シグナムさんが舌を巻くほど巨大魔法生物との戦いに優れていたという話に違和感を感じる。あのふたりの戦闘スタイルに合致しないからだ。でもあのふたりの他に優秀な魔導師がいるのは考えにくい。まあ考えてもあのふたりの能力を完全に知っているわけじゃないし、実物を見てないので今は考えても仕方ないだろう。

ふとギル・グレアム本人の可能性がよぎった。G級ハンターだし、いやまさかな。第一線は退いていたはずだから高齢な御大将自らなんていくらなんでもないない。

メールで今は味方だけど、グレアム側の人間で闇の書を完成させるためにページがたまってきたら闇の書に騎士たち自身を蒐集させて、はやての覚醒の引き金を引き、氷結の杖ディランダルで主ごと封印するつもりなのかもしれないと連絡しておいた。この辺の情報はすでにレムリア都市連合物語で示唆してあったから気づいているだろうけど、念のためである。

ん? 待てよ。この間の依頼の件ヴォルケンリッターがいるじゃないか! 蒐集もできて一石二鳥だよ。

巨大ワニの討伐依頼をメールに添える。

はやてちゃんからは人助けになるならと快く承諾をもらえたので、劉さんのところへ強力な魔導師を派遣すると連絡を打っておいた。

後日、劉さんから素材は無事に手に入り黒字の見通し立ったが、もっとも高価な竜玉だけ縮んで素材として使えなかったことが残念だったこと、彼らについて教えて欲しいことがメールに書かれていた。実は騎士たちは竜を倒して用意した報酬も受け取らずさっさと消えてしまったらしい。

もらえるものなら受け取ればいいのに…

また、解体の結果、この竜は人為的な方法で魔力を注入された痕跡があるそうだ。その技術は竜の一族が代々受け継いできたものでもあるが、効率が悪く技術も伝える者がいなくなり失伝に近い状態だった。戦時中に旧帝国軍で非人道的な方法で人造竜を再現し軍事利用しようとしたが、暴走し甚大な被害を出しあげく、退魔師と強力な霊刀を持ち出してようやく封印することができた。今回のギュスターブは高齢で多くの人間を殺しているので、自然に悪竜になる可能性はあった。しかし、それが人為的にされたとなると、少し事情が変わってくる。今どこの誰がやったのか捜索しているらしい。

なんか急にうさんくさい話になってきた。旧帝国軍の人造竜か、神咲さんあたりに聞けば何かわかるかもしれない。それに月の民の話にもそんな技術をしてたような気がする。そのうち詳しく聞いてみるかね。

彼らについては詮索無用と報酬については連絡を待つように返信を書いた。



依頼達成後、はやてちゃんから悪竜は手強い相手だったこと蒐集したらかなりページを稼ぐことができたと騎士たちは言っていたと書かれていた。

劉さんからの報酬についてたずねるといらないということだった。欲がないね。まあ彼らの一番の目的ははやてちゃんとの穏やかな生活だから気にならないのだろう。はやてちゃん的には人助けできたことが嬉しかったようだ。

この日は一度パソコンを閉じてテレビの前に座る。恐らくもう一回ひやひやしながら開くことになるとは思うが、とうとうこの日を迎えた。迎えてしまった。

魔法少女リリカルなのはAsの放送が始まってしまう。さっきから今か今かと固唾を飲んで待ちかまえている。

前期の魔法少女リリカルなのはは監督の半端ないアレンジとスポンサーの思惑が絡まり妙なオプションがついたせいで、なのはちゃんたちへの迷彩になっていた。とはいえ管理局やジュエルシード事件についてはネタバレ全力全開で特にクロノ君やリンディさんが見たら卒倒ものだろう。原作の本は発売こそ事件後だけど、制作されたのはジュエルシード事件より前だからちょっとしたオカルトである。

さらにもれなくアレな属性がついているからそういう意味では関係者から怒りを買いそうでもある。ひどい人になると性別を間違えてたりしてるからな。

オープニングが始まる。

なのはちゃんと前期の後半で青白い妖魔風から金髪色白美少女変身したフェイトちゃんが登場した。掲示板の人気も鰻登りで、今年の薄い本でも人気のジャンルに数えられているそうだ。一部青い頃が良かったという意見もあったが、ごく少数派だよな? 潤んだ目で見つめお互いに手と手を繋ぎあっている姿は穿ってみると百合百合しい。

変身するとムチムチ八頭身なのも以前と同じ、詮無いことだけどストライカーズになったらどうするつもりだろ?

う~ん。それにしても狙ってんな~ ここまでは想定内。



次はクロノ君×ユーノ君、前期に成立したもう一組のカップルの登場だ。ふたりとも細身八頭身瞳キラキラ耽美系で別の作品から登場しているような作画である。同姓カップルに誰もつっこまないし、何の疑問を持たない言動をしてるあたりこのアニメにはカードキャプター的な狂気を感じるな。あの濃厚なクロノ攻ユーノ受は放送限界にチャレンジしたと語り草になっている。前期の前にふたりはすれ違いから一度別れて、ジュエルシード事件で運命の再会を果たす。そして事件をきっかけに元竿…… いや元鞘に収まる。ところが腐女子層からは濃厚すぎて妄想する余地がないと逆カプのユーノ攻クロノ受が一大勢力を築いたから腐女子の心理はよくわからない。また、正カプと逆カプとの間で激しく対立しているらしい。同じようなものじゃないの? 思っていたが、ふたつは同じカップリングながら決してわかりあうことはなく、近くて遠い存在というのが、八尾井純子の見解だ。

さらに亜流の勢力としてどちらかをショタ化して極めて本物に近づいたカップリングを推奨してるグループもあるというから、偶然とはいえ本物に近づいた腐女子の妄想とは恐ろしい。本物見たらピラニアのように群がるじゃないだろうか? 

別に知らなくてもいいことだったが、ユークロを推奨するスレ80とか、アルフという漢を語るスレ、クロユーは当たり前すぎてつまらない、とか読んでいるうちに詳しくなってしまった。



オープニングでバラをバックに上半身裸でお互いに絡み合う。それを前回はほぼ空気だったエイミィさんが意味ありげな目で見ていた。

あの監督にしては表現ひかえめである。ここまでは普通。普通と思えるのが恐ろしい。

さて真打ちのはやてちゃんとヴォルケンリッターの登場である。

……

……

視聴終了。なんとか最後まで見ることができたけど、まばたきすらできなかった。この気持ちをどう表現したらいいかわからない。つっこみを入れることも忘れて見入っていた。

はやてちゃんは容姿はイメージ通り。リンゴを素手で握りつぶして、車椅子の車輪が火花散らしながら高速移動しなければね。これで病弱アピールするのは詐欺だ。



ヴォルケンリッターは……  



闇を駆ける。4つの影、その名をべルカ式忍術使いヴォルケン忍者。


この路線は想定外っ!?

てっきりBLとかTS要素を入れてくると思ったんだけどなあ。

闇の書は巻物に変えられリインフォースは白装束いう和風テイスト全開だった。

しかも、明らかに管理局の魔導師を殺している辺りどう収拾をつけるつもりなのか。アニメとはいえはやてちゃん的にはいいのかな? 

赤い忍者ヴィータは口元に覆面をした赤い忍者で手裏剣や丸い爆弾を投げるし昔ながらの大筒も使用している。しかもロリじゃない。背は高いし巨乳である。これはこれでありかもしれない。でもすでにヴィータじゃないな。シグナムは紫の忍者で刀で斬りまくり返り血浴びて目つきがヤバい。そして、ふと我に返って落ち込んだような表情になる。狂戦士みたいなものかな? シャマルはくのいち衣装を身にまとい水晶にピアノ線みたいな武器を敵の首に巻き付けて障害物を軸に吊り上げ、ピンとはじくと敵がカクンっとなる伝統的な使い方をしている。似合ってるけど金髪は減点。ザフィーラは袈裟を着た僧侶で南無阿弥陀と拝みながら素手で殴っていた。一応これでも入道系の忍者で当然丸坊主である。 ……哀れな。

何でも忍者って言えばいいとか思ってないか? ザフィーラは忍者じゃないだろっ!

もうね。つっこみどころ多すぎて何も言えなくなった。脱力感でいっぱいである。

夜になってはやてちゃんからメールが届いた。

「あんなんできたらいいな~ 今練習してるんよ」

と力が抜けそうなコメントをいただいた。

意外にも騎士たちには好評なようで、日本文化を吸収すべく張り切っているという。忍びの心は彼らの琴線に触れるものがあったそうだ。はやてちゃんもそんな熱心な騎士たちに心を打たれて、手始めに『くのいち忍法帳』とかみんなで見るらしい。

そのラインナップってどうなのよっ! ほぼ間違いなくVシネマ系列でお茶の間に氷結魔法がかかるのは必至だ。唯一のくのいちシャマルさんがおいろけの術とか房中術とか使いだしたら… いや、これはこれでありか! 騎士たちの中で一番女性的な魅力を感じるのはシャマルだし、意外と合うかもしれん。

後はどうなるか全く予想できない。


さらに数日が経過した。

「こんにちわ。希さん」

目の前にはにこにこ顔の女性。一児の母にして提督とはとても思えない若々しい格好。何、その遠方からおねーさん来ちゃったみたいな雰囲気はっ!

そろそろリンディさんからの連絡もあるかと思ってたけど、まさかの本人が直接やってきた。

……

ひえええええええええええ。

マジでビビった。一瞬ドアを閉めようかと思ったくらいである。バクバクする心臓に手を当てながらひきつった笑顔で挨拶を返す。前にも使ったことがあるホテルでなのはちゃんも交えて今回の事件について話すことになった。

クロノ君、エイミィさん、フェイトちゃん、アルフは裁判が大詰めのため来ていないそうな。なのはちゃんは少し残念そう。

開口一番に言われたのは深刻な顔でどうして私たちにすぐに連絡くれなかったのかという心配の言葉だった。確かにあの場での最善の手段は管理局へ連絡することだったかもしれない。奴らの存在は管理局でも把握してなかったようで俺の報告と月の民が渡したデータでちょっとした騒ぎになったそうだ。リンディ提督が仕事で直接出向いてきたのだからそれだけ大ごとなのだろう。

リンディさんはなんともいえない表情をしながらため息をつきながら諭すように話し始めた。

「希さん、もらった資料とデータを見た限り、月の民は技術レベルが高く管理局が地球に進出している以上、今後交渉が必要な相手だと判断しました。希さんから漏れた情報はエイミィの触れられる情報レベルで考えると処分の対象なのだけど、あなたは地球の住人だから処罰するわけにはいかないし、結果論でいうならその情報が地球の危機を救ったわけだから… 」

少し濁したように言うリンディさん、俺たちはミッドチルダにも管理局にも所属していないから管理局の法は適用されない。その場合、責任の所在はエイミィさんとクロノ君、リンディさんになるのだろう。そして、結果はどうあれ処分は下されるそうだ。

う~ん。自分で責任取るつもりだったけど、よく考えれば俺には責任を取る資格もないわけか。それもなんかイヤだ。自分の不始末が他人に迷惑をかけるのは後ろめたいし、何より申しわけなくて恐縮してしまう。

(俺が責任取るキリッって言ってたのは誰かしら?)

(頼むから言わないで)

カナコが一番言われたくないことを耳元でささやいてきた。鬼だコイツ。とはいえ何らかの償いはしないといけないだろう。義務ではないが道義的な責任はあるのだ。

「なんかすいません。ご迷惑かけて、できることなら聴聞でも証言でもしますんで」

「リンディさん、希ちゃんが早く来てくれなかったら、私どうなっていたかわからないんです」

恐縮する俺となのはちゃんにリンディさんはにっこり微笑んで、

「いいのよ。わかってる。今回の事件はちゃんと裏が取れれば、緊急事態ということで処分も軽くなると思うし、まだ決定したわけじゃないの。今は月の民についてもっと希さんたちの口から聞いておきたいわ」

と言ってくれた。

だったらリンディさんたちが仕事しやすいようにできる限り協力しよう。

そこでなのはちゃんの了承を得て、今回の事件の全容をカナコのシンクロを通して公開した。俺の視点から追体験できるので話が早いし、時間も短時間で済む。そのくらいはしないと申しわけない。なのはちゃんが王であること、危険な力を有していることもである。

(ある程度は端折るわよ。基本的にはあなたの目で見て聞いたこと言ったことが伝わるから)

(いいよ十分だ)

知った直後のリンディさんはしばらく眉間にしわを寄せて30分くらい考えこんでいたけど、やや厳しい顔のまま月の民と直接交渉がしたいと申し出てきたのでその迫力に押されるように月の管制人格に連絡を入れておいた。

なんかさっきより怖くないか? ピリピリした空気を感じる。特に俺に視線が集まっているように見えた。

「希さん、いえ、陽一さん、あなたはいったい? 」

なんか間違えたかな? 俺はなのはちゃんとレイジングハートを助けるために最善の方法を取っただけだぞ。

「リンディさん、俺は途絶えたアトランティスの王を復活させただけなんです」

なんかいっそう目が鋭くなったんですけど…

「なのはさんついてはどう考えているの? 」

ああ、なるほど、なのはちゃんの心配をしてるわけね。いくらレイジングハートを助けるためとはいえ王に据えちゃったわけだから心配なんだろう。

「確かに今はなのはちゃんが王です。俺の記憶を見たならわかると思うんですけど、あくまで処分されるレイジングハートを救うためのものですよ」

ほっとしたような表情になり視線がゆるむ。さすが歴戦の提督、すごいプレッシャーだった。リンディさんはしばらく口元に手を当てて考えた後、目を伏せて口を開いた。

「ごめんなさい。疑うようなこと言って、でも月の基地での手際といい。演説といい。他にもいろいろなことを知っているようだから、あなたが何者か気になったの」

「今回の件は希ちゃんがムーと月の民の正当な血統だったからこそ上手くいったと考えてます。今ここにいる元アトランティス王国戦士団の最終戦士をやっていた浅野陽一個人としては王の復活は素直に嬉しいです」

浅野陽一本人はアトランティスとも、ムーとも、レムリアともなんの縁もなく、ただ好きで勝手に主張していただけである。ただそこには古代の王の復活というロマンがあっただけだ。

「アトランティス王国戦士団? そう… 」

あれっ!? なんかリンディさん目が一瞬鋭くなったように感じたんだけど気のせいか? そうだよな。ただのサークル集団だし。

月の管制人格からの返事はすぐに来て、時間と場所、人物まで指定してきた。いろいろまとめて11月にリンディ提督とアースラのスタッフと軌道上で交渉するつもりらしい。奇しくも俺の知るAsの時期と符合する。どういうつもりなのか訊いてみたけど、「猿の分際で知恵がまわるようですが、我々のスケジュール調整の結果です」としか教えてくれなかった。

……だから猿言うなと。

何かたくらんでいるのかもしれないが、月の施設に行かない限り俺たちには管理者権限は効力を発揮しないのでこれ以上は無駄な労力だから考えるだけ無駄だろう。

ただちょうどフェイトちゃんの裁判も終わるので、クロノ君たちはひと段落着く。その時期にフェイトちゃんが希ちゃんたちの学校に転入できるようにするとリンディさんが言ってくれたので、この辺は良かったのかもしれない。なのはちゃんもすごく喜んでくれた。

当然直接交渉は俺たちとなのはちゃんも立ち会うことになっている。不可侵とはいえ細かい条件や例外的なことについては折衝しなければいけないということだそうだ。

具体的には広域次元犯罪者の取り扱い、緊急捜査権とか不可侵であっても入国する状況を想定して取り決めをしないといけないらしい。俺とかは聞いているだけで頭が痛くなってきたが、執務官や提督クラスは日常的に業務で使う言葉だそうな。

一時は執務官とか憧れたこともあったけど、俺には無理そうだな。法とか条約とか聞いてるだけで頭が痛くなってくるし、それを十代前半で戦闘までこなすとかありえんわ。本当の意味でクロノ君たちすげえと思ったのはこれが初めてかもしれない。

最後にリンディさんは念を押すように俺たちに忠告した。

「なのはさん、希さん、レイジングハートの持つ力については親しい人でも言わないように、これは絶対です。すでに個人の力の範疇を逸脱してます。正直私もどう扱ったらいいかすぐには思いつかないわ。それからクロノも言っていたことだけど、地球の現地調査はやり直さないといけないみたい。前回より明らかに強力な魔力反応が増えているそうだから」

なるほどそっちの心配か。月の民の話はここまでだった。雑談ではリンディさんの口からみんなの近況を聞かせてくれた。

ユーノ君はメガネをかけると強気なのは相変わらず、クロノ君にご執心だそうな。エイミィさんの話題になるとリンディさんはため息をついて「若いわね~ 」とだけつぶやいた。フェイトちゃんは嘱託魔導師に合格し、なんとクロノ君に敗北を刻んだ。魔力と身体能力が急激に伸びているらしい。調べてみたところ竜の髭に含まれる魔力の因子がフェイトちゃんの魔力と恐ろしいくらい親和性が高いことが原因で一時期ほぼ毎日スープを飲んでいたこともその要因として考えられるそうだ。

やめなさいって言ったのに、今度のビデオレターで注意しておこう。

クロノ君は最近ますます色気が出てきて男女問わず惹き寄せてしまう。リンディさんははっきりと言わなかったが、嘱託魔導師試験でも何かあったらしい。さらに執務官の仕事に加えてユーノ君、エイミィさん、フェイトちゃんの相手で最近疲れ気味で親子の時間がなかなか取れないとため息をついた。どうして疲れているかは教えてくれなかった。ただニコニコしてだけなのに聞くなという雰囲気が伝わってきたからやめて正解だったかもしれない。

こうしてリンディさんは引き上げていった。



夏も終わり。秋を過ぎて10月に終わりが近づいた頃、いつもようにはやてちゃんにメールして蒐集状況を確認していた。

リンディさんたちにもそれとなく探りを入れてみたが、現段階で魔導師が襲われてリンカーコアから魔力を蒐集されたということは聞いていない。はやてちゃんからのメールでも魔導師と接触してないと言っていたから、まだ見つかってはいない。いまのところページは順調に集まっているようだ。

蒐集が終わったらどうするか? そこが問題ではある。現在は半分くらい。管理局側で頼ることができるのはリンディさんたちしかいない。そのリンディさんでさえグレアムの息がかかっている。どのタイミングで話すべきか俺にはわからなかった。ただ残りが百ページくらいを切るとおそらくヴォルケンリッターを生け贄にすれば完成すると思われるので、あの姉妹が動くことを念頭に入れてページ数を把握しながらタイミングを計るべきだろう。



今日は土曜日、昼過ぎにおじいちゃんの家に来ていた。訪れるのは二回目。他にも雨宮夫婦、なのはちゃんとすずかちゃんとアリサちゃんも誘って二泊三日のお泊まり女子会だ。希ちゃんはお休み中、カナコも今日のためにいろいろ準備をしていて今は眠っている。夜二時には起きるらしい。

門をくぐるとお城のような屋敷と日本庭園が広がる。何度見ても立派だな~。三人とも目を輝かせているのがわかった。

ありさちゃんとすずかちゃんは家は洋風なので、こんな日本家屋は新鮮らしく楽しげに見て回っている。なのはちゃんはウチの道場より広いとしきりに感心していた。考えてみれば道場がある家っていうのもあまりないよな。走り回るなのはちゃんたちを私と雨宮夫妻は微笑ましく眺めていた。

「みーちゃんのお友達はとってもいい子たちね」

「うんっ! 」

おかーさんに友達をほめられるとうれしい。お互いに笑いあう。最近は主に夢でイヤなこともあるし、緊張感や決断を求められる場面も多いからストレスも多い。こうしていると幸せだと感じられる。ふとみるとアリサちゃんがからかうような目でこっちに近づいてきた。どうしたんだろう?

「くすくす、みーちゃんって小さい子みたい」

「たはは」

確かにそうだね。恥ずかしさもあったけど、半年近くも呼ばれているとこれじゃないと落ち着かない。なんだか俺と百合子さんの絆のような気もするのだ。俺はくすくす笑うアリサちゃんに愛想笑いで誤魔化す。

そんな俺の様子を見て百合子さんがそばに来た。

どうしたんだ?



そして、いつものあの笑顔のまま耳元でささやいた。

「じゃあ、もうみーちゃんは卒業ね。大きくなったし、これからは希ちゃんって呼ぶわね 」

「……えっ!? 」

まるで夕ご飯のおかずでも決めるように軽い感じで言うおかーさんに俺は声を上げる。おかーさん何を言い出すんだ。そのままでもいいじゃない。それは亡くなった自分の子供の死を認めるってこと?

「百合子それは… 」

ん? おとーさんも唖然とした表情でこちらをみている。ということは同じ結論に達したということだろう。おかーさんが私を希と呼ぶことは他人にはわからないけど、重大な意味を持つことなのだ。

「私、先に行ってますね」

百合子さんはそそくさと家の中に入っていった。少しだけ誤魔化すように言ったけど、それ以外は不自然な様子はない。残ったのは冷や水をかけられたかのように固まった表情の俺とおとーさん。

「百合子っ! 」

「えっ? えっ? 」

おとーさんは我に返ると叫ぶような声でおかーさんを呼ぶと矢のように追いかけていった。そして、残されたのは何が起こったかわからないアリサちゃんたち。

一瞬にして空気が変わってしまった。

「ねえ、希、私、また無神経なこと言ったの? 」

おずおずと消えそうな声で言うアリサちゃん、またとかそんなこと思わなくていいのに、彼女に悪気があったわけではない。俺も軽く流すつもりだったし、そんなふうにオチがつくとばかり思っていた。予想外だったのはおかーさんの発言だ。それにおとーさんのあの驚愕の表情と緊迫した声が何かがおかしいと周囲に知らせる結果になってしまった。ここ俺が説明しないといけないらしい。おかーさん恨むぞ。まだ混乱しているが、俺なりにいつかこうなるかもしれないと思っていた気持ちを口にする。

「アリサちゃん、あの人がおかーさんじゃないのは知っているよね? 」

「うん。……あっ、そうか」

アリサちゃんは何かに気づいて顔が曇ってきた。

「それは違うよ。アリサちゃん、きっと私とおかーさんだけの間じゃこうなることはなかったと思う。おとーさんやおじいちゃんにもね。だってとても居心地の良いもので、幸せそうで壊すなんてできなかった。でも心のどこかでこれは間違っているってわかってた。だってお互いが本当の相手を見てないから。たぶんきっかけが欲しかったんだよ」

ズルズル引き延ばしたのはただの俺のわがままだ。闇の書事件が終わったらというくらいの気持ちではいた。言うべきタイミングはいくらでもあったと思う。

「でも、私が」

なお食い下がるアリサちゃん。温泉のときのような空気はごめんだ。せっかく楽しみにきたのに。

「アリサちゃんはそんなつもりなかったかもしれないけど、誰にもできなかったことをやってくれたんだよ。だから気にしなくていいんだよ」

まるで今までのことが嘘になったようで、穴が開いたような喪失感を感じていた。本当は少しだけ泣きたい。でもここで感情が出てしまうと目の前のアリサちゃんは悪くないのにきっと自分を責めて悲しむだろう。

だからちゃんと堪えないと、もちろんアリサちゃんにも気づかれてはいけない。

(所詮人間は孤独に生き、孤独に死ぬのよ)

黙れ。黙れ。こんなときにイヤなこと言うな。俺の傷を抉るな。右手に力を込めて隅に追いやった。右手の痣はまたひときわ色が濃くなった気がする。

「希? 」

「いいから気にしないで、それに今日のことはすぐに結果が出る問題じゃないの。落ち着いてきたらちゃんと改めて話すから、今は楽しもう? 」

まだ何か言いたげなアリサちゃんだったが、強引に話を別の方向に持っていく。そうしてお泊まりイベントは始まった。

最初は遊んでいる間も物憂げな表情をしていたアリサちゃんもみんなで遊んでいるうちに徐々に笑顔になっていく。そうそう気にしなくていいんだ。今楽しまないともったいからね。

さて、今回の趣旨はまだ年若く経験も少ない私たちがお互い切磋琢磨して女子力アップすることが目的。



……ということになっている。

まあそれは名目だけで遊び倒すだけだ。それに真の目的は別に存在している。それは希ちゃんの負の感情の中枢の黒い女を消滅させてトラウマを軽減することにあるのだ。

いろいろあったけど、今日がその仕上げだ。俺たちは今日という日を迎えるため、これまで入念に準備して、このタイミングしかないというカナコの判断だった。

来週にはフェイトちゃんやリンディさんたちが来るし、月の民との交渉などいろんな意味で忙しい。12月では闇の書関係でそれどころではなくなるだろう。

前提として黒い女の存在は良くも悪くも希ちゃん次第である。封印を解放する過程でつらい過去をどうしても対面する必要があり、戦わなければならない。



まだ数えるほどではあるが、この数ヶ月でアリサちゃんやすずかちゃんとも遊び、少しずつではあるが希ちゃんも心を開きつつあった。

今日は初めて一緒にお風呂に入った。女の子同士の楽しんでいるようだ。カナコがシンクロして見守り、紳士の俺は図書館で音だけを聞いていた。しかし、なのはちゃんくらいの歳の子には女性的なものは感じないけれど、音だけ聞くと妄想力もあって異様に興奮した。

…ダメじゃん俺。紳士失格。仕方がないので聴覚も遮断して、巨大なカマキリの幻影とエア格闘をしているバーチャプレシアを眺めて時間をつぶした。このプログラムはどこへ行こうとしてるんだろう? そのうちフェイトにエア味噌汁でも作ってもらおうか。

そういえば3人ともつきあいかたにも特徴が出ていると思う。

好感度ナンバーワンのなのはちゃんには希ちゃんの方から関わりを持とうする。早朝魔法トレーニングやフェイトちゃんたちのことでふたりだけの共通話題も多いから仲は良い。しかし、希ちゃん自身がまだ友達との距離の取り方をわかっていないところがあるので、変なテンションでグイグイ来る希ちゃんに振り回され戸惑い気味で、なのはちゃんは優しいから拒まないし、困っていても指摘できないのが難点である。親しき仲にも礼儀ありというように適切な距離感を掴んで欲しいと考えている。

まあ小学生に対して気にすることではないのかもしれない。

アリサちゃんはすごく積極的に動いてくれる。普段は俺と話しているけど、機会を見ては引っ込っでいる希ちゃんを呼び出し、一緒に話したり、遊ぼうと誘ってくれる。そういう意味でありがたい存在だと思う。ただタイプが正反対のせいかマイペースでのんびりな希ちゃんは苦手なようで、この間は強制的に交代させられた。「アリサはうるさくてイヤ」と一刀両断。自分のペースを乱されるのに慣れていないせいだと俺は見てる。でも悪態はつきながらも呼ばれたらちゃんと出て行くし、対抗しようとするし、唯一の呼び捨てというところも親愛の現れだと思う。苦手なだけで嫌いというわけではないのだろう。

すずかちゃんには一番難しい役割をしてもらっている。アリサちゃんがガンガン行き過ぎないようにそれとなく会話を反らしたり、すねた希ちゃんのフォローや逆になのはちゃんに行き過ぎたとき緩衝材になってもらったり、潤滑油とか縁の下の力持ちのような存在である。希ちゃん本人とは俺の本を通じて交誼を深めている。ただ斎ちゃんシリーズを勧めるのは辞めて欲しい。あとたまに好物を目の前にして我慢してる獣のような目で見るのも勘弁してね。そのせいで友人としての距離感は絶妙なのにいまいち仲良くなりきれないところがある。たまに怖いと希ちゃんは言っていた。

良いところ悪いところもあるけれど、欠点を補いながら良い友人関係を構築していると思う。もちろんこれで終わりではない。今の希ちゃんは他の三人に大きく寄りかかっている状態だから、今後は精神的に成長してお互いに支えるようになって欲しいと願っている。

こうして大きな精神的支柱に支えられ封印解放のときを迎えることができた。ここ数日はカナコの部屋から漏れていた黒い霧さえ見えず、黒い霧を発するまがまがしい封印も目に見えて弱々しくなり、たしかにこれなら封印を解いてもたいしたことはできないように見える。友情の力は偉大だ。




ここから始まる。

問題はいまいちやる気のない希ちゃんをどうやってその気にさせるか苦慮してした。そこで一ヶ月前に思いついたのが夢の世界を使ってゲームを作ることとシンクロ状態でなのはちゃんたちを夢の世界へ招いてRPG風に一緒に楽しくトラウマを攻略する方法である。

アリサちゃんとすずかちゃんはすでにこちらの事情は知っているし、ゲームを通してなら人見知りな希ちゃんでも負担は少ない。友情のちからにあやかろうという考えだ。

希ちゃんはこの世界のRPGは浅野陽一と少し一緒にやったことがある。今回は俺の話から以前から興味を持っていたゲームを体験できるということで希ちゃんの関心を引きつけることができた。

さすがにまんまパクるのはどうかと思ったので、ドラ○エ3をベースに他のドラク○からもネタを借用して、台本は俺が書いた。

タイトルはトラウマクエスト 

舞台は夢の世界なのでなんでもありだ。広大な景色を見せたり、現実ではできないことができたり、自由に世界を作りルールを決めることも可能だ。いくらでも感覚を誤魔化すことができるのである。

俺とカナコはゲームマスターで基本的には姿は見えない。シナリオの登場人物は中身のない人形にしゃべらせる。出し入れも自由自在でモンスターも適当に用意した。感覚的には青狸の秘密道具クラスのRPGツクールみたいなものかもしれない。

カナコは普段の修行に加えて、マスターアップ前のゲーム会社のデスマーチのごとく準備を進め完成させた。意外と大変なのかパラメーター数値設計である。ここがゲームの面白さの鍵を握るのだが、なにしろ手間がかかるのである。おかげで何日か徹夜するハメになった。そうしてカナコは三日前から完全休養に入っている。今日一日は寝ていて起きることはなかった。夜中の二時くらいに目を覚まして行動を起こすことになっている。その時間が睡眠も深くちょうどいいという計算らしい。ちなみに普通RPGは何十時間とかかるが時間の心配はいらない。どんなに長くても一晩で見る夢とは変わらないように調整される。精神と時の部屋みたいなもので、さすがに一日を一年とかべらぼうな真似はできないけれど、十倍くらいは時間を引き伸ばせるそうだ。

泊まり会の醍醐味の畳の広い部屋で川の字のなって一緒に寝ていた。今は夜の九時くらいでお泊まり会で寝るには少々早いけど、よく眠れるようにほど良く疲れる遊びを選んだし、長いこと遊んでみんな疲れているからちょうどいいだろう。

案の定、なのはちゃんは布団に倒れ込んでしゃべる暇もなくノックダウン、おしゃべりすると息巻いていたアリサちゃんも布団の魔力に勝てず30分くらいで眠りについた。最後は吸血的な意味でできれば早めに寝て欲しいすずかちゃんとお話しながら待っていたところ、ようやく根負けして11時くらいにはすずかちゃんもうつらうつらし始めた。おやすみと言って電気を消す。

のど乾いたな。寝る前になんか飲むか。

俺は部屋から出ると潤すために台所に向かう。この家やたら広いから少し時間がかかるが難点だ。明るさを感じて見るとまだ障子を通して淡い光が漏れていた。話し声も聞こえるからまだ誰か起きているのだろう。

なんとなく忍び足で歩き聞き耳を立ててみる。中にいるのはおかーさんとおとーさん、おじいちゃんのようだ。

「お義父様、この間の件はありがとうございました」

「いやいいんじゃ。幽霊に憑かれるなんて災難じゃったのう。金払うだけで済んでよかったわい」

幽霊? もしかしてこの間の件か。那美さんが浄化されてるって言ってたけどそのことなのかもしれない。

「まさか病院で見かけたあの子とは思いもしませんでした」

「この世に未練のある死者は自分に同情してくれる優しい人間に憑いてしまうそうじゃ。聞けばあの女の子は寂しい家庭環境にあったらしい。自分が死んだとき悲しんでくれた百合子さんに惹かれたのは無理もないのかもしれん」

「冷たい言い方になるが、死んだ人間に入れ込み過ぎないということだな。縛り付けてしまうのは生きた人間なんだろう」

「百合子さんや。希の件はいいのかね? 」

「お義父様、もう決めたことです。希ちゃんは私の姪です。今こそ正面から向きあうべきだと思うのです。美里の死と希ちゃんの将来と 」

思わず唾を飲み込む。何気ないつもりだったが、大人同士で重大な話に変わっていた。

「美里の死は百合子さんのせいでは…」

おじいちゃんは百合子さんをいたわるようにかばう。

「いいえ。お義父さま、美里の死は私の運転のせいです。今までずっとつらくて美里が帰ってくるんじゃないかと思ったり、みーちゃんと呼んで応えてくれる希ちゃんに甘えていましたが、もういいんです」

「そうか。車は平気になったんだったな。それだけでも私には驚きだよ。だがな、希ちゃんだと思うということはおまえにとって希ちゃんが友達と遊んでいる姿は酷く残酷な光景なのではないか? 私はつらい。どうしてあの中に美里が入っていないのかと思うとな、ましておまえは」

心臓が跳ね上がる。考えてみればそうだ。今の言葉は総一郎氏の本音なのだろう。

「私もそう思うと苦しいの。つらくて苦しくて、どうして美里は死んだのにあなたたちは楽しそうに生きてるのって大声で叫んでぶつけてしまいたい衝動にかられることもあるわ。醜い嫉妬ね。でもね。そんなものあの子一緒にいるだけで幻のように消えてしまうの。あの子を想うだけで私は満たされる。救われる。自分の黒い感情が他愛のないものだと思える」

最初は淡々と語り徐々に熱がこもってきた。初めておかーさんではなく百合子さんの本音を聞いた気がする。つらい気持ちを内に秘めていることはなんとなく感じてはいたが、ここまで深い闇を持っているとは思わなかった。こうして盗み聞きしなければ百合子さんの口から私に告げられることは決してなかったと確信を持って言える。

「私はまだどこかであの子の心の傷を甘く見ていたの。今まで見てたのはあの子のほんの表面に過ぎないんだって、自分のことだけであの子の怒りを悲しみをちゃんと見ていなかったんだって、ようやく思い知ったの。本当に愚かよね。私はまだ足りない。希ちゃんのためにいつまでも下を向いていられませんっ! 私は今度こそあの子の母親に… 」

百合子さんは涙声で最後まで言えなかった。この人はどこまで希ちゃんのために尽くすつもりなのだろう。実の子でもないのに、百合子さんの抱える心の傷は想像することさえできない。今でも苦しんでいて、希ちゃんのために乗り越えようとしているのだ。まだ話は続いている。

「そうか。百合子さん、わしは希のことで話しておかないといかんことがある。今はまだ言うことはできんが、これだけは知っていてくれんか。今のあの子はあの子なりに百合子さんを大切に想っているんじゃ」

「そうですか」

ほっとしたような百合子さんのため息が聞こえた。俺としてもおじいちゃんが俺のこと話すんじゃないかと心配したけど杞憂だったようだ。

「若菜のことは正直諦めとるよ。警察の捜査では渓流に身投げをした可能性が高いそうじゃ。時期的に極寒の冬、まず助からん。身元不明の自殺者の線に切り替えたそうじゃ。だがあの子の気持ちを思うとな」

「私は希ちゃんのために生きてて欲しい思います。でもお義父様の聞く限り可能性は低いみたいですね。それよりもし亡くなっていたときあの子にどう話せばいいか。私も正直わかりません。お葬式に出させないわけにはいかないし、この間のようにならなければいいのですが」

お葬式か… 

もし死体がみつかれば、お葬式をしないわけにはいかないし、希ちゃんは必ず出ないといけないだろう。

希ちゃんはまだ母親がどこかで生きていると信じている。その希望が絶望へ変わったりとき、希ちゃんの悲しみを思うと今までにない不安と恐怖で震えてくる。

自分のことならいい。想像できるからだ。でも希ちゃんのことを想うと保護者的な感情がどこまでも広がって心配で心配で胸が苦しい。恐らく百合子さんも同じ気持ちなのだろう。同じ気持ちだと思うと少し嬉しかった。

そのおかーさんの影に目を向けると頭を触れるような動作をする。

「そういえば額の傷は希ちゃんにつけられたものじゃったの」

(なっ!! )

悲鳴を上げそうになったが、なんとかこらえる。

額の傷? 俺がやったのか? 

百合子さんの額には痣がまだ残っていた。化粧やセットで巧く誤魔化してはいたが近づくとよくわかる。百合子さんの顔に傷をつけるなんてっ!!

希ちゃんのおかーさんが死んでいる可能性高いことをつきつけられたことももちろんショックだ。しかし、今の俺は身に覚えないことを言われて愕然として、そのことをちゃんと考えることすらできなかった。

足下がおぼつかない。世界がぐにゃりとねじ曲がり頭がガンガンしてどうかなりそうだった。クラクラと倒れそうな体をなんとか支えながら気持ちを落ち着かせようすとするがうまくいかない。

当時の状況を思い出そうとしていた。三人の会話は聞こえていて確かに記憶にと留めることはできてはいたが、もはやそれどころではない。

ここでは落ち着いて考えることもできないので俺はおかーさんたちにはバレないようにゆっくりと部屋に戻ると必死に記憶を辿る。

あの日のことで覚えているのは倒れている百合子さんが目に入って赤い包丁を見た瞬間、景色が歪み、名前を呼ばれていつのまにか百合子さんに抱きしめられていた。

「うっ! あたまいたい」

景色が歪んでからの記憶を思いだそうとすると、冷や汗が出て頭痛がする。そのまま布団に倒れ込む。そして、得体の知れない恐怖とも怒りともつかない感情で塗りつぶされて意識が遠くなっていた。




……夢を見てたんだ……二度と思い出したくない……あの日の……

全身をかけめぐる地獄の業火……むせかえるような灯油と肉の焼ける臭い……

痛い……痛い……誰か助けてくれ……すごく苦しくて息ができないんだ……

辺りは濁ったように暗い。しかし、俺の焼く炎が部屋の様子を照らしていた。まるでろうそくが生命の輝きそのものであるように、そして、それが消えたとき俺の命と尽きるのだとどこか冷静に考えていた。

やっと……終わった……

全身血塗れの女が惚けたように立ち尽くしているのが目に入る。はじめの頃こそ激情にかられ夜叉のような顔をしていたが、徐々に能面のように感情を感じさせなくなり、今では無機質で人間の顔の形をしたナニカにしか見えなかった。

「つまらない」むなしさと虚無に満ちた言葉が聞こえた気がした。ああ、これは抜け殻なんだ。燃え上がる感情が強すぎて果たした後には何の感情も残らなかったのだろう。

やっと……終われる……

命が尽きるというのに俺の気持ちは安堵の気持ちでいっぱいだった。永遠に続くかと思われた恐怖と拷問もこの炎で終わるのだ。俺が最期に見るのは赤い炎の光景か。それも悪くない。しかし、最後に走馬燈のように心に蘇る約束。

俺は……まだ……あの子に……



そう言いかけて目が覚めたんだ……

October Rain……冷たい雨が窓ガラスを打ちつけてた……

どこか暖かさを感じさせる畳の部屋で、三人の天使たちは安息の眠りにつく。その寝顔は穏やかで先ほどまで荒れ狂っていた俺を心をわずかばかり癒してくれた。だが砂漠に水を垂らしてもすぐ渇いてしまうように俺の心は瞬く間に干上がったしまった。悪いが彼女たちでは俺を満たすことはできないのだ。満たすことができるのはあの女だけ……

じっとりとした胸元をぬぐい……また夢に捕らわれる…その前に……

俺は黒い十字架を握りしめると、バリアジャケットを身にまとい、天使の眠りを妨げないようにこっそり窓から外に出たんだ。

冷たい雨に打たれている……星も見えない暗黒がどこまでも広がり心は深く暗く冷たくなるばかり。



……そう俺は思い出したのだ。

最初の気持ち、忘れてはいけない気持ち、遠い時の彼方で風化してしまった気持ち。




虐げ奪われ続けた者の憎悪と氷のように冷たい復讐。

心の声はこう叫ぶ「決して許すな」と、そして、その理由を論理的な考察を加えて確かなものにしていく。

場所があの家じゃないってことは犯行は突発的ではなく計画的もの?

俺に気づかれずに運んだってことは誰か協力者がいる?

最後に火で焼いたのは恨みでなくて証拠隠滅のため?

俺まだ死体が見つかってない?

奴が俺を憎んでいるを知っているのはいない。そのはずだ。奴は表面的には俺の面倒を見てたし、追い出したときも自立させるためとか嘯いてた。

……じゃあ、警察は? ただの行方不明扱いで処理されて、奴は罪に問われることはない?

奴はのうのうと生きてる?



ソンナノユルセルワケナイ。オレハイマモクルシンデイルノニ。ユルサナイユルサナイ

俺が黒く染まっていく。決して許すな。絶対に許すな。義母はただ自分の鬱憤を晴らすためだけに俺を拷問し殺したのだ。しかも、死体は無惨に捨てられ弔られることもない。

そう裁きの力を。

復讐は正当なものだ。俺は間違ってない。



しかし、この場に奴はいない。その渇きは決して満たされることはないのだ。それを思うとやり場のない怒りが劇薬のように全身を巡り俺を苛むのだ。

……ちっ、冗談じゃねえ。

……

…… 


(いい感じで詩人になっているようだが、少しは収まったか? )

最終戦士の声が聞こえる。肝心なときに働かない。おまえはいつもそうだったな。

(ああ、俺はいつも通りだ)

(やれやれ。もはや気づかんのか? この状態でも負の感情に飲まれつつあるようだな。仕方あるまい。同じマイナスでもましなほうで攻めるか。……禿 ……斎の結婚)

(ぎゃあああああああああああああああああ。わかったからそれ以上言うな。せっかく忘れていたのに思い出させるなっ! それから言ってはならんことを言ったな。それだけは絶対に許さんっ! )

(ふっ、ようやく戻ったな)

最悪だ。何が戻ったなだ! 意味が分からん。

俺どうしたんだ? あの日のことを思い出そうとしたら、何か真っ黒に染まって、感情をなんとかしようとしてたら詩が思い浮かんできてそれで、奴の言葉がとんでもないこと言ってきたのだ。

俺は禿じゃない! ちょっと髪の毛が人より細いだけだ。

それに結婚? 結婚だとお。ああ、もう。思い出しちゃったよ。

斎の結婚は俺にとってはショックが大きい。心臓ひとつ分の穴があいているようだ。そこをひゅーひゅー風が吹いてしみている。カナコの言う通り理性的に考えればめでたいことなのは間違いない。

興信所で相手を調べたけど、大学時代からの友人で恋人になったのは俺が死んでからになる。俺が死んだことをいいことになあっ! 
そのため友人だった期間が長い。なんてしつこい男だ。あきらめろよっ! 
興信所の評価は申し分のない相手だそうだ。なにそれムカつく。婚活したら女性参加者全員でバトルロワヤルが起こっても不思議ではないと太鼓判を押された。そこまで言うか。
それに斎の選んだ相手だ。そこが一番気にいらない。ただ結局誰が来ても気に食わないのは同じなのかもしれない。

俺の斎に対する気持ちはどうなるのという醜い独占欲を思うと自己嫌悪でどうにかなってしまいそうだ。

(貴様と俺は今は対極にあるのかもしれんな)

(どういうことだ? )

ジークフリードがシリアスに応える。キャラ作ってんじゃねーよ。

(正と負、ポジティブとネガティブ、光と闇ということだ。同じ存在で感情や記憶を共有しているのはずなのに、一向に融合する様子もなく、むしろ反発しているように感じる。本来なら時間の経過とともに私は貴様の中に融けて統合されて消えていくはずなのだ)

(俺が負の存在かよ? )

(そうだ。我ながらネガティブだとは思っていたがここまでとはな。言っておくが俺という存在は浅野陽一が希に見せていた正の側面だけを強化した歪な存在だ。貴様という存在がいなければ存在を保つこともできないだろう。)

(自分に慰められたんじゃ世話ないな)

(話はちゃんと聞けっ! 確かに貴様の力は官能小説家といいカミノチカラといい本来の力は負の側面から生まれていると言える。しかし、コントロールできているうちはいい。今の貴様は負の側面が誰かによって強化されてる気がするのだ。このままでは何かきっかけに暴走する)

(誰かって誰だよ? )

(それは分からん。俺は内在している意志に過ぎないから本体である貴様のように五感を感じることができない。外のことは貴様の心と記憶を二次的に感じているから、こうして把握できるのだ。おまえの見る悪夢に何かヒントがあるのではないか? )

(夢は夢だろ。梅雨のときの夢は幽霊の仕業だったし、悪い夢見るのは俺の心の問題だろ? )

(カナコに夢のこと話したらどうだ? )

夢のことはカナコには一度も相談してない。一番の理由は恥ずかしいからである。なんせ俺の中では30年近くも前のことで、そんなことをうじうじと引きずるなんて、格好悪い。

カッコワルイ。

男の粘着質なんてキモいだけだ。それにこの間の件もあって言い出しにくい。

(いいよもう。右手が心配なら封印グッズで押さえりゃなんとかなるだろ。え~と、封印よ。我が衝動を拘束せよっ! )

夢の世界で俺の容姿が変貌を始める。まず右手の封印を押さえるための穴のあいた革手袋と金属の指輪を身につける。なんか右手の痣は見つめていると魅了されて、ふと我に返ったときに恐ろしくなってきたので見えないようにしている。腕には細かくルーン文字が書かれた包帯が巻かれていく。赤銅色に染まってきた腕を隠す意味もあるのだ。右目は独眼竜正宗風の眼帯が巻き付く。今の俺は左右の目の色が変わっているためだ。眼帯を外すと赤く輝く仕様である。服は赤い外套、胸のところははだけてややセクシーではある。足には鎖、寝るときにゴツゴツするのが痛い。武器はこの間の折れた霊刀を使っている。

銘は「聖乗十字」を言うそうだ。カッケーなおい!

せっかくだから直したいところだけれど、許可が出なかったのでそのまま使っている。まあ仮に直したところで心得のない刀なんて使いこなせない。手首を痛めるのがオチだ。しかし、このままでも風情があっていいから使っても良いだろう。

冷静に見るとジークフリートも目じゃないコスプレ不審者にしかみえないが、中二が天元突破してるカナコやまだ分別がつかず俺によってカッコいいものと刷り込まれている希ちゃんは特に気にしないだろう。

この格好になることで右手の封印の力を強め、冷静にみた恥ずかしさと感覚的にみたカッコいいと思う相反するアンビバレンツな感情がせめぎあい、お互いを高めることで化学反応が起こり強力なちからを生むのだ。

(確かに負の力は増しているにもかからずコントロールできているようだな。激しく揺れ動き相反する感情を波乗りのように操作しているのか? 一種の才能だなこれも )

感心した様子のジークフリード、そうそう。心配しすぎ。これから内側から包むように押さえているから漏れ出すこともないし、この間悪霊になった要領で強い出力を出すこともできる。

……俺は闇の力に目覚めている。その力は下手したら身を滅ぼすだろう。諸刃の刃なのだ。右腕を解放して使う技にも名前をつけた。

その名をダークネスブラスターという。



では最後はなんか和むものを。

俺は部屋に戻りみんなの顔を見つめる。アリサちゃんとすずかちゃんとなのはちゃんなら俺の横でスヤスヤ寝てる。

うん、和む。

ふう。やれやれ。何とかいつもの精神状態に戻ることができた。今回はやたら苦労した気がする。心が乱れたままでは万が一のときに失敗する可能性があるから、平常心は保っておきたい。

再び寝ている三人に目を向ける。するとドアを開ける音がした。カナコが出てきたようだ。

(陽一、起きたわ。そろそろ準備なさい。…あらっ!? その格好、気合いは十分みたいね)

どこか嬉しいそうに言う。やはり大丈夫だったようだ。

(ああ、悪いなジーク時間切れだ。引っ込めよ)

(まあいい。俺は俺で備えよう。貴様の姿に負けはせん)

寝ていたカナコはきっちり二時に目を覚まして行動を開始する。

(ねえ、何かあった? )

(いや何もないぞ)

俺は精神状態は不安定だ。でも、今日というタイミングを逃すことはできない。それに今日の主役は俺たちではない。希ちゃんとなのはちゃんたちがメインで俺たちはサポートになる。だから特に問題はないはずだ。

さてなぜ一緒に寝る必要があるかというと、これほど近ければシンクロが容易できるからである。元々は広域洗脳魔法のアレンジで対象に魔力がなくとも手順を踏めばできる方法をカナコは編み出していた。その条件のひとつがシンクロ対象者が眠った状態で近くにいることだった。

お泊まり会がこの状況を自然に演出している。すべてこのときのためだ。

下準備のために同意をとってキャラ設定と世界観とゲームのルールは刷り込ませてある。



(希は準備できてるわ。じゃあ希のトラウマを終わらせに行くわよ)

カナコのこの言葉と共に光に包まれゲームは始まった。





作者コメント

話が進まぬ。空白期は次回で終わる予定が一話多くなってしまった。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.028751850128174